

前田 祐助
AGAメディカルケアクリニック 統括院長
【経歴】
- 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
- 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
- 大手AGAクリニック(院長)を経て、薄毛・AGA治療の2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設
- 2020年に2院目となるAGAメディカルケアクリニック横浜院を開設
- 2023年に3院目となるAGAメディカルケアクリニック東京八重洲院を開設
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
- 3万人以上※
- ※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
薄毛や抜け毛に悩む男性のなかには、発毛治療が気になっている方も多いのではないでしょうか。特に男性型脱毛症(AGA)は進行性のため、早期に適切な対策を始めることが大切です。
現在、AGA治療には内服薬や外用薬など、医学的根拠に基づいた複数の選択肢があります。しかし、どの治療法が自分に適しているのか、どのように使い分ければ良いのか迷う方も少なくありません。
この記事では、男性向けの発毛治療における内服薬と外用薬の種類、それぞれの特徴や効果的な使い分けについて詳しく解説します。
AGA(男性型脱毛症)とは?その原因と進行パターン
多くの男性が悩む薄毛の代表的な原因がAGA(男性型脱毛症)です。AGAの特性を理解することは、適切な治療法を選択するための第一歩となります。
AGAの主な原因
AGAの主な原因は遺伝的要因と男性ホルモンの影響です。男性ホルモンの一種であるテストステロンが体内の還元酵素「5αリダクターゼ」によって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることが大きく関わっています。
このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると毛母細胞の増殖が抑制され、毛髪の成長期が短縮します。その結果、髪の毛が太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、薄毛が進行するのです。
遺伝的に5αリダクターゼの活性が高い、あるいは男性ホルモン受容体の感受性が高い体質の方は、AGAを発症しやすい傾向があります。
男性ホルモンと薄毛の関係
男性ホルモンであるテストステロン自体が直接薄毛を引き起こすわけではありません。問題となるのは、テストステロンが5αリダクターゼによってDHTに変換されることです。
DHTは毛髪の成長サイクル(ヘアサイクル)に悪影響を与えます。通常、髪の毛は成長期、退行期、休止期というサイクルを繰り返しますが、DHTはこの成長期を著しく短くしてしまいます。
成長期が短くなると髪の毛は十分に成長できず、細く短い「うぶ毛」のような状態のまま抜け落ちてしまいます。これがAGAによる薄毛の仕組みです。
DHT生成に関わる酵素
酵素名 | 主な存在部位 | 役割 |
---|---|---|
5αリダクターゼⅠ型 | 全身の皮脂腺など | 皮脂分泌などに関与 |
5αリダクターゼⅡ型 | 前頭部や頭頂部の毛包 | AGAの進行に強く関与するDHTを生成 |
AGAの進行パターン(ハミルトン・ノーウッド分類)
AGAの進行パターンには一定の傾向があり、その分類法として「ハミルトン・ノーウッド分類」が広く用いられています。薄毛が進行する部位や範囲によって、Ⅰ型からⅦ型までのステージに分けられます。
初期段階では生え際の後退(M字型)や頭頂部の薄毛(O字型)が見られ、進行するとこれらが繋がって広範囲に薄毛が広がっていきます。
ハミルトン・ノーウッド分類の概要
ステージ | 特徴 |
---|---|
Ⅰ型 | 脱毛の兆候なし、または軽度の生え際後退 |
Ⅱ型 | 生え際がM字型に後退し始める |
Ⅲ型 | M字型の後退が明確になる、または頭頂部も薄くなる |
Ⅳ型 | 生え際の後退と頭頂部の薄毛がさらに進行 |
Ⅴ型 | 生え際と頭頂部の薄毛部分が繋がり始める |
Ⅵ型 | 薄毛部分がさらに拡大し、繋がった状態 |
Ⅶ型 | 側頭部と後頭部の一部を除き、ほぼ脱毛した状態 |
ご自身の状態がどのステージに該当するかを知ることは、治療方針を立てる上で参考になります。
自己判断の危険性と早期相談の重要性
薄毛の原因はAGA以外にも、円形脱毛症や脂漏性脱毛症など様々です。自己判断で市販の育毛剤などを使用しても、原因が異なれば効果は期待できません。また、AGAは進行性の脱毛症であり、放置すると徐々に薄毛が進行していきます。
そのため、薄毛や抜け毛が気になり始めたらできるだけ早い段階で皮膚科やAGA専門クリニックを受診し、医師による正確な診断を受けるのが重要です。
早期に適切な治療を開始すると、症状の進行を抑えてより改善効果が期待できます。男性におすすめの発毛剤や治療法についても、医師に相談するのが良いでしょう。
発毛治療の基本|内服薬と外用薬の役割
AGA治療の柱となるのが、内服薬と外用薬を用いた薬物療法です。これらの薬はそれぞれ異なる作用で発毛を促し、薄毛の改善を目指します。
内服薬の働きと種類
AGA治療に用いられる内服薬は、主にAGAの原因物質であるDHTの生成を抑制する働きを持ちます。
DHTの生成に関わる5αリダクターゼという酵素の働きを阻害してヘアサイクルの乱れを正常化し、抜け毛を減らして毛髪の成長を助けます。
日本で承認されている代表的な内服薬には、フィナステリドとデュタステリドがあります。これらは医師の処方が必要な医療用医薬品です。
主なAGA治療内服薬
成分名 | 作用機序 | 特徴 |
---|---|---|
フィナステリド | 5αリダクターゼⅡ型を阻害 | プロペシアのジェネリック医薬品も多数存在する |
デュタステリド | 5αリダクターゼⅠ型およびⅡ型の両方を阻害 | ザガーロのジェネリック医薬品も存在する |
外用薬の働きと種類
外用薬は頭皮に直接塗布することで毛根に作用し、発毛を促進するタイプの治療薬です。代表的な成分としてミノキシジルがあります。
ミノキシジルは、毛母細胞の活性化や頭皮の血行促進作用により毛髪の成長期を延長し、発毛を促す効果が期待されます。
ミノキシジル配合の外用薬は、濃度によって医療用医薬品と一般用医薬品(市販薬)に分けられます。高濃度のものは医師の処方が必要です。
治療薬の効果が現れるまでの期間
発毛治療の効果はすぐには現れません。ヘアサイクルには時間がかかるため、内服薬や外用薬を使用し始めてから効果を実感するまでには、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要です。
効果の現れ方には個人差があり、1年以上継続して初めて効果を実感するケースもあります。焦らず、根気強く治療を続けることが大切です。
治療効果を高めるためのポイント
薬物療法の効果を最大限に引き出すためには、以下の点が重要です。
- 医師の指示に従った正しい用法・用量の遵守
- 治療の継続
- 生活習慣の見直し(食事、睡眠、ストレス管理など)
- 定期的な医師の診察
これらのポイントを押さえて医師と相談しながら治療を進めることが、効果的な発毛への近道となります。
内服薬による発毛治療|効果と注意点
内服薬はAGAの原因に直接働きかけて、体の内側から薄毛の進行を抑制、改善を目指す治療法です。
ここでは、代表的な内服薬であるフィナステリドとデュタステリドの効果、そして服用にあたって知っておくべき副作用や注意点について詳しく解説します。
フィナステリドの効果と作用
フィナステリドは、AGAの原因となるDHTの生成に必要な酵素「5αリダクターゼⅡ型」の働きを阻害する薬です。
Ⅱ型は主に前頭部や頭頂部の毛包に存在するため、フィナステリドはこれらの部位の薄毛進行抑制に効果を発揮します。
DHTの生成が抑えられると短縮された毛髪の成長期が正常化し、抜け毛が減少して徐々に毛髪が太く長く成長するようになります。多くの臨床試験でその有効性が確認されており、AGA治療の第一選択薬の一つとして広く用いられています。
デュタステリドの効果と作用
デュタステリドは、フィナステリドが阻害する5αリダクターゼⅡ型に加え、Ⅰ型も阻害する効果を持つ薬です。Ⅰ型は側頭部や後頭部、皮脂腺にも存在します。
Ⅰ型・Ⅱ型の両方を阻害するため、より強力にDHTの生成を抑制してフィナステリドよりも発毛効果を示しやすいという報告もあります。
特に、フィナステリドで十分な効果が得られなかった場合や、より積極的な発毛効果を期待する場合に選択されることがあります。
フィナステリドとデュタステリドの比較
項目 | フィナステリド | デュタステリド |
---|---|---|
作用対象酵素 | 5αリダクターゼⅡ型 | 5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型 |
主な効果 | 抜け毛抑制、現状維持 | 抜け毛抑制、より強い発毛促進 |
代表的な薬剤名 | プロペシア | ザガーロ |
内服薬の副作用とリスク管理
AGA治療用の内服薬は比較的安全性の高い薬とされていますが、まれに副作用が現れるケースがあります。主な副作用としては、性機能に関するもの(勃起不全、性欲減退、射精障害など)や、肝機能障害、抑うつ気分などが報告されています。
これらの副作用の発現頻度は高くありませんが、服用中に体調の変化を感じた場合は速やかに医師に相談しましょう。医師が患者さんの状態を確認しながら、薬の減量や変更、中止などを検討します。
内服薬の主な副作用(頻度は稀)
副作用の種類 | 具体例 |
---|---|
性機能関連 | 性欲減退、勃起機能不全(ED)、射精障害 |
精神神経系 | 抑うつ気分、めまい |
肝臓関連 | 肝機能障害(AST, ALT上昇など) |
その他 | 乳房の圧痛・腫れ、発疹、頭痛 |
服用期間と継続の重要性
内服薬によるAGA治療は効果が現れるまでに時間がかかり、また効果を持続させるためには継続的な服用が必要です。
服用を中止すると薬の効果がなくなり、AGAが再び進行し始めて治療によって改善した状態が元に戻ってしまう可能性があります。
そのため、自己判断で服用を中断せず、医師の指示に従って根気強く治療を続けましょう。長期的な視点で治療に取り組むことが、満足のいく結果につながります。
外用薬による発毛治療|効果と注意点
頭皮に直接塗布する外用薬は、気になる部分に集中的に働きかけられる発毛治療法です。
ここでは、代表的な外用薬成分であるミノキシジルの効果や正しい使い方、副作用、そして市販薬との違いについて詳しく解説します。男性向け発毛剤選びの参考にもなるでしょう。
ミノキシジルの効果と作用
ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として開発された成分ですが、副作用として多毛が見られたことから、発毛剤として転用されました。
その詳細な発毛の仕組みは完全には解明されていませんが、主に以下の作用により発毛を促進すると考えられています。
- 血管拡張作用
- 毛母細胞への直接作用
これらの作用により、細く短くなった毛髪を太く長く育て、休止期の毛根を刺激して新たな発毛を促す効果が期待できます。
外用薬の正しい使い方と塗布量
ミノキシジル外用薬の効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方を守ることが重要です。
一般的には、1日2回、朝と晩に薄毛が気になる部分の頭皮に直接塗布します。
塗布量は製品によって定められた量を守るのが大切で、多く塗っても効果が高まるわけではありません。むしろ、副作用のリスクを高める可能性があります。
塗布後は、指の腹で軽くマッサージするように馴染ませると良いでしょう。塗布する前には頭皮を清潔にし、完全に乾いた状態で使用するようにします。
ミノキシジル外用薬の使用のポイント
ポイント | 内容 |
---|---|
使用頻度・時間 | 1日2回(朝・晩など)、時間を決めて使用 |
塗布量 | 製品指定の量を守る(通常1回1mL程度) |
塗布方法 | 頭皮に直接塗布し、軽くマッサージ |
使用前の準備 | 頭皮を清潔にし、乾燥させる |
注意点 | 目や粘膜に入らないようにする、塗布後は手を洗う |
外用薬の副作用と対処法
ミノキシジル外用薬の主な副作用は、塗布部位の皮膚症状です。かゆみ、赤み、発疹、フケ、かぶれなどが現れることがあります。
これらの症状はミノキシジル自体への反応のほか、基剤(アルコールなど)に対する刺激によって起こる場合もあります。
また、まれに頭痛、めまい、動悸、むくみなどの全身性の副作用が報告されています。
副作用が現れた場合は使用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。皮膚症状が軽い場合は、使用頻度を減らすなどの調整で改善するケースもありますが、自己判断せず専門家の指示を仰ぐようにします。
市販の発毛剤と処方薬の違い
ミノキシジル外用薬は、ドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品(市販薬)と、医師の処方が必要な医療用医薬品があります。主な違いはミノキシジルの濃度です。
市販薬のミノキシジル濃度は、日本では最大5%までと定められています。一方、クリニックで処方される医療用医薬品には、より高濃度のミノキシジル外用薬が存在する場合があります。
一般的に、濃度が高いほど発毛効果も実感しやすいと期待されますが、同時に副作用のリスクも高まる可能性があります。どの濃度の製品が適しているかは個々の症状や状態によって異なるため、医師に相談して判断します。
男性におすすめの発毛剤として市販薬も選択肢に入りますが、より効果的な治療を求める場合はクリニックでの相談が有効です。
市販薬と処方薬(ミノキシジル外用薬)の主な違い
項目 | 市販薬(一般用医薬品) | 処方薬(医療用医薬品) |
---|---|---|
ミノキシジル濃度 | 最大5%まで | 5%を超える高濃度製剤も存在(医師判断) |
入手方法 | ドラッグストア等で購入可能 | 医師の処方が必要 |
費用 | 全額自己負担 | 自由診療のため全額自己負担 |
その他 | 自己判断で使用 | 医師の診察・指導のもとで使用 |
内服薬と外用薬の使い分け|効果的な組み合わせとは?
AGA治療において、内服薬と外用薬はそれぞれ異なる働きかけで発毛を促します。単独で使用する場合もあれば、両者を組み合わせて使用するケースもあります。
単独使用と併用療法の違い
内服薬の単独使用は、主にAGAの進行を抑制して抜け毛を減らすことを目的とする場合に選択されます。特に、薄毛の進行が初期段階の方や現状維持を希望する方に適しています。
一方、外用薬の単独使用は、頭皮に直接作用して発毛を促したい場合や、内服薬の副作用が心配な場合に検討されます。
併用療法は、内服薬による「守り(抜け毛抑制)」と外用薬による「攻め(発毛促進)」を同時に行う治療法です。内服薬でAGAの進行を抑えつつ外用薬で積極的に発毛を促すことで、単独使用よりも治療効果が期待できます。
併用による相乗効果
内服薬と外用薬は作用機序が異なるため、併用すると相乗効果が期待できます。
内服薬(フィナステリドやデュタステリド)がDHTの生成を抑制し、ヘアサイクルを正常化させる土台を作ります。その上で外用薬(ミノキシジル)が毛母細胞を活性化し、血行を促進するためより力強い発毛を後押しします。
特に、薄毛が進行しているときやより高い発毛効果を求めるときには、併用療法が推奨される場合が多いです。
単独療法と併用療法の比較
治療法 | 主な目的 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
内服薬単独 | 抜け毛抑制、進行予防 | 手軽、全身的な効果 | 発毛促進効果は限定的、副作用リスク |
外用薬単独 | 発毛促進 | 気になる部位に直接作用 | 抜け毛抑制効果は限定的、塗布の手間 |
併用療法 | 抜け毛抑制+発毛促進 | 高い治療効果が期待できる | 費用負担増、副作用リスクの可能性増 |
症状や進行度に合わせた選択
どの治療法を選択するかは、個々のAGAの進行度や薄毛の範囲、治療目標や生活スタイル、予算などによって異なります。
症状や進行度 | 治療内容の目安 |
---|---|
初期段階(軽度の生え際後退や頭頂部薄毛) | 内服薬単独、または外用薬単独から開始 |
中程度から進行期 | 内服薬と外用薬の併用療法が効果的な場合が多い |
副作用が心配な方 | まずは外用薬単独から試す、あるいは副作用の少ない内服薬を選択するなどの配慮が必要 |
最終的な治療方針は、医師が診察結果や患者さんの希望を踏まえて決定します。
医師との相談による治療プラン決定
自己判断で治療法を選択するのではなく、必ず医師に相談することが重要です。医師は、マイクロスコープによる頭皮や毛髪の状態観察、問診、血液検査(必要に応じて)などを通して、AGAの進行度やタイプを正確に診断します。
その上で、患者さん一人ひとりの状況に合わせた治療プランを提案します。治療のメリットだけでなくデメリットや副作用のリスクについても十分に説明を受け、納得した上で治療を開始しましょう。
また、治療開始後も定期的に診察を受け、効果や副作用の有無を確認しながら必要に応じて治療内容を見直していきます。
クリニックでの発毛治療の流れ
専門クリニックでのAGA治療をを検討している方のために、一般的な治療の流れを紹介します。どのような手順で診察や治療が進むのかを事前に知っておくと、安心して治療に臨めるでしょう。
ただし、クリニックによって多少の違いはありますので、詳細は受診するクリニックにご確認ください。
初診・カウンセリングの内容
初めてクリニックを訪れると、まずは問診票の記入から始まります。その後、専門のカウンセラーや医師によるカウンセリングが行われます。
カウンセリングでは、以下のような内容について詳しくヒアリングを行います。
- いつから薄毛が気になり始めたか
- 抜け毛の量や部位の変化
- 家族歴(血縁者に薄毛の人はいるか)
- 既往歴や現在治療中の病気、服用中の薬
- 生活習慣(食生活、睡眠、喫煙、飲酒など)
- これまでの薄毛対策や治療経験
- 治療に関する希望や不安な点
これらの情報をもとに、薄毛の原因を探り、治療方針を立てるための参考にします。
診察と頭皮・毛髪の状態確認
カウンセリングの後は、医師による診察が行われます。視診や触診に加え、マイクロスコープなどを用いて頭皮や毛髪の状態を詳細に確認します。
マイクロスコープ検査では毛穴の状態や皮脂の量、毛髪の太さや密度やヘアサイクルの乱れの有無などを観察し、AGAの進行度やタイプを診断します。
必要に応じて血液検査を行い、ホルモン値や他の病気の可能性などを調べる場合もあります。
診察で確認する主な項目
検査項目 | 確認内容 |
---|---|
問診 | 症状、既往歴、生活習慣などのヒアリング |
視診・触診 | 薄毛の範囲、パターン、頭皮の色や硬さ |
マイクロスコープ検査 | 毛穴の状態、毛髪の太さ・密度、頭皮環境 |
血液検査(任意) | ホルモン値、肝機能、腎機能、甲状腺機能など |
治療計画の立案と説明
診察結果と患者さんの希望を踏まえ、医師が具体的な治療計画を立案します。治療計画には使用する薬剤(内服薬、外用薬の種類や組み合わせ)や治療期間の目安、期待できる効果や起こりうる副作用とその対処法、治療にかかる費用などが含まれます。
医師がこれらの内容を丁寧に説明して患者さんが十分に理解、納得した上で治療を開始します。疑問や不安な点があれば、遠慮なく質問しましょう。
定期的な通院と経過観察
AGA治療は効果が現れるまでに時間がかかり、継続することが重要です。そのため、治療開始後も定期的にクリニックへ通院し、医師の診察を受ける必要があります。
通院時には治療効果の判定や副作用のチェック、頭皮や毛髪の状態の変化などを確認します。写真撮影などで客観的に経過を記録する場合もあります。
診察結果に応じて薬の種類や用量を調整したり、新たな治療法を追加したりするなど、治療計画を見直すときもあります。通院頻度は治療内容や状態によって異なりますが、一般的には1ヶ月から3ヶ月に1回程度です。
発毛治療における生活習慣の重要性
AGA治療において薬物療法は中心的な役割を果たしますが、その効果を最大限に引き出して維持するためには、日々の生活習慣の見直しも非常に重要です。
バランスの取れた食事や質の高い睡眠、ストレスの管理や適切な頭皮ケアが、健やかな髪の成長をサポートします。
バランスの取れた食事と栄養
髪の毛は主にケラチンというタンパク質でできています。そのため、良質なタンパク質の十分な摂取が髪の成長には必要です。肉、魚、卵、大豆製品などをバランス良く食事に取り入れましょう。
また、タンパク質の合成を助ける亜鉛や、頭皮の血行を促進するビタミンE、細胞分裂をサポートするビタミンB群なども髪の健康に関わる重要な栄養素です。
特定の食品ばかりを食べるのではなく、様々な食品からバランス良く栄養を摂取するのを心がけてください。
髪の健康に関わる主な栄養素
栄養素 | 働き | 多く含まれる食品例 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分ケラチンの材料 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
亜鉛 | ケラチンの合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類 |
ビタミンB群 | 代謝を助け、頭皮環境を整える | レバー、豚肉、青魚、玄米、緑黄色野菜 |
ビタミンE | 血行を促進し、抗酸化作用を持つ | ナッツ類、アボカド、植物油、うなぎ |
過度な食事制限や偏った食生活は、髪に必要な栄養が不足する原因となるため避けましょう。
十分な睡眠と質の向上
髪の毛は、私たちが眠っている間に成長ホルモンが多く分泌されることで成長が促されます。睡眠不足や質の低い睡眠は成長ホルモンの分泌を妨げ、髪の成長に悪影響を与える可能性があります。
毎日決まった時間に寝起きするなど、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。また、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控える、寝室の環境を整える、カフェインやアルコールの摂取を控えるなど、睡眠の質を高める工夫も大切です。
一般的に、成人には6時間から8時間程度の睡眠時間が必要とされています。
ストレス管理とリラクゼーション
過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮への血流を悪化させる可能性があります。血行不良は、髪の成長に必要な栄養が毛根に届きにくくなる原因となります。
また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、抜け毛を助長するケースもあります。自分に合ったストレス解消法を見つけ、日頃からストレスを溜め込まないように意識すると良いです。
適度な運動や趣味の時間、入浴や瞑想、友人との会話などリラックスできる時間を作りましょう。
頭皮ケアと適切なシャンプー方法
頭皮環境を清潔で健康に保つ心がけも、発毛のためには大切です。しかし、過剰な洗浄や間違ったシャンプー方法は、かえって頭皮を傷つけたり乾燥させたりする原因になります。
シャンプーは1日1回を目安とし、爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。すすぎ残しがないように、しっかりと洗い流すのも重要です。
シャンプー剤は、自分の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌など)に合った刺激の少ないものを選ぶと良いでしょう。洗髪後は、ドライヤーで頭皮を優しく乾かし、湿ったまま放置しないようにしてください。
よくある質問
AGA治療を始めるにあたり、多くの患者さんが疑問や不安を感じているようです。ここでは、クリニックに寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
治療費用はどのくらいかかりますか?
AGA治療は健康保険が適用されない自由診療となるため、費用は全額自己負担となります。費用は、治療内容(使用する薬剤の種類、組み合わせなど)やクリニックによって大きく異なります。
一般的に、内服薬のみの場合は月額数千円から1万数千円程度、内服薬と外用薬を併用する場合は月額1万数千円から3万円程度が目安です。これに加えて、初診料や再診料、検査費用などがかかる場合があります。
詳細な費用については受診を検討しているクリニックに直接お問い合わせいただくか、カウンセリング時にしっかりと確認すると良いでしょう。
治療効果はいつ頃から実感できますか?
治療効果が現れるまでの期間には個人差がありますが、一般的には治療開始から3ヶ月から6ヶ月程度で抜け毛の減少や産毛の発生といった初期の変化が見られ始める方が多いです。
明確な発毛効果を実感するまでには、半年から1年以上かかる場合もあります。ヘアサイクルには時間がかかるため、すぐに効果が出なくても焦らず、根気強く治療を継続しましょう。
医師が定期的な診察で効果判定を行い、必要に応じて治療内容を調整します。
副作用が心配です。大丈夫でしょうか?
AGA治療薬には、まれに副作用が現れる可能性があります。内服薬では性機能に関する副作用(性欲減退、勃起不全など)や肝機能障害、外用薬では頭皮のかゆみやかぶれなどが報告されています。
ただし、これらの副作用の発現頻度は高くなく、多くの方は問題なく治療を継続できています。万が一、副作用と思われる症状が現れた場合は、自己判断で服用や使用を中止せず速やかに医師に相談してください。
医師が症状を確認し、薬の減量や変更、中止など適切な対処を行います。治療開始前に、医師から副作用のリスクについて十分な説明を受けて理解しておくことも大切です。
治療をやめるとどうなりますか?
AGAは進行性の脱毛症であり、現在の治療法はAGAを完治させるものではなく、症状の進行を抑制したり発毛を促したりする対症療法です。
そのため、内服薬や外用薬の使用を中止すると薬の効果がなくなり、抑制されていたAGAの進行が再開してしまう可能性が高いです。その結果、治療によって改善した毛髪の状態が徐々に治療前の状態に戻っていくことが考えられます。
効果を持続させるためには、医師の指示に従って治療を継続するのが基本となります。治療の中止や変更を希望する場合は、必ず医師に相談しましょう。
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