抜け毛の原因と対策方法｜放置すべきでない症状と受診のタイミング

薄毛や抜け毛は加齢による自然な現象と考えがちですが、実際には早い段階から対策を考えたほうがよい事例もあります。

日頃の生活習慣やストレス、遺伝的な影響など、髪が抜けやすくなる要因は多岐にわたります。

特にAGA（男性型脱毛症）に関しては進行性が認められるため、抜け毛の傾向を自覚したら生活習慣を見直し、早めに専門家へ相談することも大切です。

抜け毛の基本的な仕組み

抜け毛は、髪の成長サイクルや頭皮環境の変化など、さまざまな要因によって生じます。

健康な髪も一定の周期を経て自然に抜けますが、その周期に乱れが起こると髪が細くなり、抜けやすくなる状態が続きます。

髪の成長周期

髪は「成長期」「退行期」「休止期」という流れで生え変わります。成長期には髪が太く長く伸び、退行期になると髪の成長が止まり、休止期で抜けて新しい髪が生まれるというサイクルを繰り返します。

この周期が安定していれば、抜け毛と新たに生える髪のバランスが保たれて髪量を維持できます。

しかし、何らかの要因で成長期が短縮されると、髪が十分に太く長く成長できないまま抜け落ちやすくなります。

成長周期に影響を及ぼす要因

• ホルモンバランスの乱れ
• 栄養不足
• 遺伝
• ストレス
• 頭皮環境の不調

男女で異なる抜け毛の傾向

男性と女性ではホルモンや生活リズムなどに違いがあります。

男性の抜け毛は主に前頭部や頭頂部から始まりやすく、進行が進むと頭頂部の地肌が目立つことが増えます。一方で女性の抜け毛は頭頂部に広がりを感じるケースが多く、髪全体が徐々に細くなって量が減ったように見える特徴があります。

生活習慣と抜け毛の関係

睡眠不足や栄養バランスの乱れ、過度のアルコール摂取などは、頭皮の血行不良を招いて抜け毛を増やすリスクを高めます。

髪を育てるための栄養素が不足すると、髪の成長期が十分に続かず、抜け毛の原因へとつながりやすくなります。

また、喫煙も血管収縮により頭皮への栄養供給が滞る一因です。

頭皮環境が与える影響

頭皮のかゆみや炎症、皮脂の過剰分泌などが持続すると、毛穴が詰まりやすくなり、髪の生え変わりにも悪影響を及ぼします。

頭皮を清潔に保ち、十分な潤いを与えることが、健やかな髪を育てるために重要です。

合わないシャンプーや整髪剤を使うと頭皮トラブルを悪化させる場合もあるため、日常のケアでは自分の頭皮に合う製品を選ぶ意識を持ちましょう。

健康な頭皮の特徴

AGAや薄毛の特徴的な症状

抜け毛が多い状態が長く続く場合、AGA（男性型脱毛症）や女性特有の薄毛が疑われます。

なかでもAGAは進行しやすいため、薄毛の状態を放置すると自然回復が難しくなることもあります。

AGAにみられる進行パターン

AGAは男性ホルモン（ジヒドロテストステロン）が毛根に影響し、成長期を短縮して抜け毛を増やします。

前頭部や生え際、頭頂部に特に抜け毛が集中し、放置すると徐々に広範囲にわたって髪が薄くなります。

進行速度は個人差がありますが、初期段階で対策を始めると髪の維持や回復の可能性が高まります。

前頭部と頭頂部の抜け毛の違い

AGAでは前頭部と頭頂部が同時に薄くなるケースが多いですが、前頭部だけが後退するタイプ、頭頂部だけが目立って薄くなるタイプなど、症状の出方は人によって異なります。

部分的に進行するため、初期には周囲が気づいても本人は気づきにくい点が特徴です。

女性の薄毛の特徴

女性の薄毛は、びまん性と呼ばれる全体的に髪が細くなり量が減るパターンが多いです。特に分け目や頭頂部が目立つようになり、髪のボリュームダウンを実感しやすくなります。

更年期のホルモン変化や、生活習慣の乱れ、過度なダイエットなどが関連して抜け毛が増える場合があります。

女性の抜け毛で考えられる要因

• ホルモンバランスの変動
• 鉄分など栄養の不足
• 髪を強く結ぶなどの負荷
• 出産後の一時的なホルモン変化

産後に増える抜け毛の特徴

産後はホルモンバランスが急激に変化し、一時的に抜け毛が増えることがあります。これは一般的に「分娩後脱毛症」と呼ばれ、出産後数カ月たってから抜け毛が増えるのが特徴です。

多くの場合、時間が経つと元の状態へ緩やかに戻りますが、食事や睡眠などの生活環境が不安定だと状態が長引く可能性があります。

出産後に意識するとよい生活習慣

放置しないほうがよい抜け毛の兆候

抜け毛が起こっていても、必ずしも病的な状態とは限りません。ただし、いくつかの兆候は進行を示している可能性があるため、対処や受診の検討をおすすめします。

ここでは、放置しないほうがよい抜け毛の特徴や見分け方について紹介します。

慢性的なかゆみや炎症

頭皮にかゆみや赤み、フケの増加が続く場合は、頭皮の環境が不安定になっているサインかもしれません。

真菌（カビ）の増殖やアレルギー反応などが関与し、毛穴を詰まらせるリスクが高まります。

症状が長引くようであれば専門家に診てもらうのが得策です。

朝起きたときの抜け毛の量

枕元や布団に大量の髪が落ちているときは、抜け毛が増えている可能性があります。

通常の抜け毛でも寝起きに数本ほどは見られますが、その量が明らかに増えた場合は注意が必要です。

また洗髪時にごっそり髪が抜ける感覚があるときも、放置を避けたほうがよいサインです。

朝の抜け毛が増えやすい生活習慣

• 夜更かし・睡眠不足
• 喫煙やアルコールの過剰摂取
• ストレスフルな就寝前の過ごし方
• 血行を妨げる枕や寝具の使用

満遍なく髪が細くなるケース

前頭部や頭頂部など特定の部分ではなく、全体的に髪が細くボリュームがなくなる場合は、女性のびまん性脱毛や他の全身的な原因が関係しているかもしれません。

気づきにくいケースも多いので、髪質や地肌の見え方に変化があれば早めに対策を考えましょう。

その他の体調不良との関連

髪の状態は身体の内部環境とも密接に関係しています。貧血や甲状腺機能の異常などがあると、抜け毛の増加が見られることがあります。

体全体のだるさや体重の変化、肌トラブルなど複合的な症状を感じるなら、一度検査を受けて原因を特定するとよいでしょう。

抜け毛と関連が疑われる症状

抜け毛の原因を見極める方法

抜け毛を抑えたいと考えるときは、まずは原因を明らかにすることが大切です。原因に合った対処をしないと、抜け毛の進行を止めるどころか逆効果になる場合もあります。

ここでは、ストレスやホルモン、遺伝など主要な要因と、その見極め方を取り上げます。

ストレスとの関係

ストレスが増えると血行が悪くなり、頭皮や毛母細胞への栄養供給が滞ります。

またストレス時にはホルモンバランスや自律神経が乱れ、睡眠不足や食欲不振といった生活習慣の乱れを招きやすくなります。

結果的に抜け毛の原因が重なり合って悪化するケースが多いです。

• ストレスを軽減するための運動や趣味を見つける
• 規則正しい睡眠を心がける
• 過度の飲酒やタバコを控える

ホルモンバランスの乱れ

男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンの増加は、AGAの主な要因です。

女性でもエストロゲンの減少が髪の成長を阻害するときがあります。

さらに妊娠・出産や更年期を迎えると体内のホルモンが大きく変化するため、抜け毛が急に増える方も珍しくありません。

ホルモンバランスと抜け毛の関係

遺伝的な要因

親族にAGAの人が多いと、遺伝的に同様の症状が現れる可能性があります。ただし、遺伝があるからといって必ず薄毛になるわけではなく、食生活や頭皮ケア、睡眠などの生活習慣が大きく関係します。

予防や対策は遺伝に関係なく早めにスタートするとよいでしょう。

食生活の影響

髪の主成分はタンパク質なので、良質なタンパク質が不足すると健康な髪を育てにくくなります。

また亜鉛や鉄などのミネラル不足も抜け毛を増やす原因の１つです。

カロリーばかりを気にして炭水化物ばかりに偏ると、髪を作るための栄養素が不足しがちです。野菜や果物、良質な油などをバランスよく摂取すると良いです。

抜け毛の対策方法

原因を押さえたうえで、日常生活から実践できる抜け毛の対策を行うことが大切です。

食事改善や頭皮マッサージなどのセルフケアはもちろん、専門の治療を検討する段階になっても継続して取り組むのが望ましいです。

バランスのよい食事の心がけ

抜け毛の対策には、髪を育てる栄養をしっかりと摂取する必要があります。

日常の食事で以下のポイントを意識すると、頭皮や毛根に必要な成分が行き渡りやすくなります。

• タンパク質を毎食バランスよく摂る
• ビタミンやミネラルを含む野菜や果物を積極的に食べる
• 良質な油を適度に取り入れ、血行をサポートする

血行促進を意識した頭皮ケア

頭皮の血行を促すことで、毛根に十分な栄養が届きやすくなります。

シャンプー前のブラッシングや、シャンプー時の頭皮マッサージなどを習慣にすると、髪が育ちやすい土台を整えられます。

また、湯船につかって全身の血行を高めるのも効果的です。

血行促進のために実践しやすい方法

メディカルシャンプーや育毛剤の活用

市販のシャンプーには洗浄力が強すぎるものもあり、頭皮の潤いを奪ってしまう場合があります。

一方で医療機関が監修する育毛シャンプーや育毛剤は、頭皮への刺激を抑えつつ必要な成分を補う設計になっています。

ただし、使用感や効果の現れ方は個人差があるため、自己判断で使うだけでなく専門の医師や薬剤師のアドバイスを受けると良いでしょう。

負担を減らすヘアアレンジ

強く髪を結ぶ、パーマやカラーリングを頻繁に行うなどの行為は、毛根や髪に大きな負担をかけます。

髪型をアレンジするときは、髪の生え際を強く引っ張らないように注意し、結ぶ位置を変えるなどの工夫をするとトラブルを減らせます。

定期的に頭皮や毛髪を休ませる期間を作るのもポイントです。

• まとめ髪は緩めに結ぶ
• 同じ分け目を続けるのを避ける
• ヘアカラーは短期間に何度も行わない

受診するタイミングとクリニックの選び方

抜け毛の原因が分からなかったり、セルフケアを行っても改善が見られなかったりする場合は、受診による専門的な診断や治療を検討してみてください。

ここでは、受診のタイミングやクリニックの選び方について解説します。

初期症状を見逃さないために

抜け毛や薄毛は早い段階で対処したほうが、症状の進行を抑えやすくなります。

髪にハリやコシがなくなった、分け目が広がった、頭皮が透けて見えるようになったなどの変化を感じたら、一度専門家に相談することをおすすめします。

自己判断だけで頭皮ケアを続けると、原因が深刻な場合に進行を見過ごすリスクがあります。

クリニックでの検査内容

専門クリニックでは、頭皮や毛穴の状態をマイクロスコープで確認したり、血液検査でホルモンや栄養状態を調べたりします。

これにより、AGAや女性の薄毛、その他の病気による抜け毛なのかを見分けられます。正確な診断に基づき、適切な治療計画を立てるのが重要です。

AGA専門外来と一般皮膚科の違い

抜け毛の原因がAGAの疑いが強い場合は、AGA専門外来に相談すると多角的な治療プランを組み立てやすくなります。

一般皮膚科でも診断は可能ですが、AGAに特化した治療薬や施術を取り扱っていないところもあるため、選択肢の幅が変わってくることがあります。

まずは近隣の皮膚科で受診し、必要があれば専門外来を紹介してもらう方法もあります。

カウンセリング時に確認すべき事項

医師とのカウンセリングでは、治療のメリットや考えられる副作用、費用などをきちんと確認することが望ましいです。

治療期間や通院頻度、費用負担などは人によって異なるため、自分の生活スタイルに合わせたプランを提案してくれるクリニックかどうかを見極めましょう。

• 治療内容と期間の目安
• 治療薬の副作用やリスク
• 支払い方法や費用の詳細
• アフターケアやサポート体制

薄毛治療で検討される治療法

抜け毛の原因が判明し、治療の必要がある場合には、医療機関での治療が選択肢に入ります。内服薬や外用薬、注入療法など多彩な方法が存在し、それぞれに特徴があります。

内服薬や外用薬の役割

AGA治療では、男性ホルモンに働きかける内服薬や育毛を促す外用薬がよく用いられます。

特に内服薬はホルモンの働きを抑制することで抜け毛を減らす効果が期待でき、外用薬は毛根に直接作用して髪の成長を促します。

これらは医師の処方や指示に従って使用するのが前提です。

内服薬と外用薬の違い

頭皮への施術と注入療法

一部のクリニックでは、頭皮に直接栄養成分や成長因子を注入する療法を提供しています。

薬剤を毛根の周辺に届けることでより集中的に効果を狙いますが、通院が必要になったり費用が高額になったりする場合もあります。施術方法の選択は医師と相談のうえ、自分の症状や希望に合った治療を選ぶとよいでしょう。

生活習慣の見直しによる改善

治療薬や施術だけに頼るのではなく、生活習慣の見直しが並行して必要になります。

睡眠時間の確保や栄養バランスを整えると、薄毛治療の効果が高まりやすくなります。適度な運動やストレスケアを意識することも、治療の成功率を上げるポイントです。

メンタルケアの重要性

抜け毛や薄毛に悩むことで、精神的なストレスが増し、それがさらに髪や健康に影響するという悪循環に陥りやすくなります。

クリニックによってはカウンセリング体制やメンタル面のサポートも充実しているため、必要に応じて医師や心理カウンセラーに相談するのも一つの手段です。

普段のヘアケアと日常生活の注意点

治療の有無にかかわらず、日頃のヘアケアや生活スタイルを整えることが抜け毛対策には欠かせません。簡単に取り入れられる習慣を続けるだけでも、頭皮や髪の状態が良好に保たれやすくなります。

洗髪方法と頻度の目安

髪や頭皮に過度の負担をかけないためには、洗髪時の力加減や回数にも気を配る必要があります。

皮脂が多い方は1日1回の洗髪が適切ですが、乾燥が気になる方は洗浄力の強いシャンプーを毎日使うと頭皮が荒れる場合があります。

お湯の温度は38度前後が望ましく、過剰に高温のお湯は皮脂を奪いすぎるため注意が必要です。

• 38度前後のぬるま湯で洗い流す
• 爪を立てずに指の腹で優しく洗う
• 洗い残しがないようにしっかりすすぐ

紫外線から髪と頭皮を守る

紫外線は肌だけでなく、髪や頭皮にもダメージを与えます。紫外線を浴びると頭皮の乾燥や髪のタンパク質破壊が進み、抜け毛の原因になりやすいです。

特に夏場や屋外で長時間活動するときは、帽子や日傘を活用するなどの対策を行うと良いでしょう。

紫外線対策に取り入れたいアイテム

過度なダイエットの影響

体重を落とすために極端に食事量を減らすと、タンパク質やビタミン、ミネラルなど髪に必要な栄養素が不足しやすくなります。

結果として抜け毛の増加や髪質の低下を引き起こすケースがあるため、健康的なダイエットを心がけることが大切です。急激な減量を試みるのではなく、適度な運動とバランスの良い食事を併用するとよいでしょう。

クリニックと連携しながら続けるセルフケア

薄毛治療を受けている方も、受けていない方も、日頃のセルフケアの見直しが抜け毛対策に有用です。

治療を受けている場合は、医師の指導に基づいて生活習慣を整えると治療効果が高まりやすくなります。

受診していない方でも、日常生活での対策を取り入れれば抜け毛の進行を緩やかにし、髪を健やかに育てる基盤をつくることにつながります。

• 定期的に頭皮の状態を確認する
• 自分に合ったシャンプー・育毛剤を使う
• ストレスをためすぎないように工夫する

抜け毛の原因は多岐にわたるため、対策方法も複数あります。生活習慣の改善やクリニックでの治療などを行い、健康的な髪を目指しましょう。

参考文献

OLSEN, Elise A., et al. Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss. Journal of the American Academy of Dermatology, 2005, 52.2: 301-311.

RUSHTON, D. H., et al. Causes of hair loss and the developments in hair rejuvenation. International journal of cosmetic science, 2002, 24.1: 17-23.

LEE, Won-Soo, et al. A new classification of pattern hair loss that is universal for men and women: basic and specific (BASP) classification. Journal of the American Academy of Dermatology, 2007, 57.1: 37-46.

PRICE, Vera H. Treatment of hair loss. New England Journal of Medicine, 1999, 341.13: 964-973.

BANKA, Nusrat; BUNAGAN, MJ Kristine; SHAPIRO, Jerry. Pattern hair loss in men: diagnosis and medical treatment. Dermatologic clinics, 2013, 31.1: 129-140.

ALESSANDRINI, A., et al. Common causes of hair loss–clinical manifestations, trichoscopy and therapy. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2021, 35.3: 629-640.

PHILLIPS, T. Grant; SLOMIANY, W. Paul; ALLISON, Robert. Hair loss: common causes and treatment. American family physician, 2017, 96.6: 371-378.

RHODES, Thomas, et al. Prevalence of male pattern hair loss in 18–49 year old men. Dermatologic surgery, 1998, 24.12: 1330-1332.