

前田 祐助
AGAメディカルケアクリニック 統括院長
【経歴】
- 慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
- 慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
- 大手AGAクリニック(院長)を経て、薄毛・AGA治療の2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設
- 2020年に2院目となるAGAメディカルケアクリニック横浜院を開設
- 2023年に3院目となるAGAメディカルケアクリニック東京八重洲院を開設
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
- 3万人以上※
- ※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
頭皮のべたつきやフケにお悩みの方が少なくないようです。特に脂性の頭皮は不快なだけでなく、かゆみや臭い、さらには抜け毛といったトラブルの原因にもなり得ます。
フケにも種類があり、脂っぽい「脂性フケ」とカサカサした「乾性フケ」では原因も対処法も異なります。
ご自身のフケのタイプを確認して適切なケアを行うことが、脂性頭皮の改善への第一歩です。
脂性頭皮とは? – その原因と特徴
頭皮には皮脂腺が多く存在し、皮膚を乾燥や外部刺激から守るために皮脂を分泌しています。
この皮脂分泌が過剰になると、頭皮がべたつき、脂っぽい状態、いわゆる脂性頭皮となります。
頭皮がべたつく仕組み
皮脂の分泌量はホルモンバランスや遺伝、生活習慣やストレス、気候などさまざまな要因によって変動します。
特に男性ホルモンは皮脂腺の働きを活発にする作用があるため、男性の方が脂性頭皮になりやすい傾向があります。
また、頭皮に存在する常在菌(マラセチア菌など)が過剰な皮脂をエサにして増殖し、炎症やかゆみを引き起こすケースもあります。
脂性頭皮になりやすい人の特徴
脂性頭皮になりやすいかどうかは、いくつかの要因が関わっています。ご自身に当てはまるものがないか確認してみましょう。
体質・遺伝
もともと皮脂腺が大きく、皮脂分泌が活発な体質の方は脂性頭皮になりやすいです。家族に脂性肌の人がいる場合も、遺伝的に脂性頭皮になりやすい可能性があります。
ホルモンバランス
特に思春期や男性は、男性ホルモンの影響で皮脂分泌が増加しやすいです。女性でも、ホルモンバランスの乱れが原因となる場合があります。
生活習慣
脂っこい食事や糖質の多い食事が中心の方、睡眠不足やストレスが多い生活を送っている方は、皮脂の分泌が過剰になりやすい傾向があります。
誤ったヘアケア
洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や、逆に洗い方が不十分で皮脂や汚れが残っている場合、頭皮環境が悪化し脂性頭皮を招く可能性があります。
脂性頭皮が引き起こすトラブル
脂性頭皮を放置すると、単なるべたつきだけでなく、様々な頭皮トラブルを引き起こす可能性があります。早めの対処が大切です。
脂性頭皮による主なトラブル
トラブルの種類 | 詳細 | 関連症状 |
---|---|---|
フケ(脂性フケ) | 過剰な皮脂と古い角質が混ざり合い、大きめで湿ったフケが発生します。 | かゆみ、べたつき |
かゆみ・炎症 | 過剰な皮脂をエサに常在菌が増殖し、その代謝物が頭皮を刺激してかゆみや炎症を引き起こします。 | 赤み、湿疹、ヒリヒリ感 |
臭い | 皮脂が酸化したり、雑菌が繁殖したりすることで、不快な臭いが発生します。 | 頭皮の臭い、枕の臭い |
ニキビ | 毛穴が皮脂や汚れで詰まり、アクネ菌が増殖することで頭皮ニキビが発生します。 | 痛み、化膿 |
脂漏性皮膚炎 | 脂性頭皮が悪化し、慢性的・強い炎症が起こる皮膚疾患です。 | 強いかゆみ、赤み、大量のフケ |
脂漏性脱毛症 | 脂漏性皮膚炎が進行し、毛穴の炎症や詰まりによって髪の成長が妨げられ、抜け毛が増える状態です。 | 抜け毛、薄毛 |
フケの種類と見分け方 – あなたのフケはどのタイプ?
フケは頭皮のターンオーバー(新陳代謝)によって剥がれ落ちる古い角質ですが、その見た目や性質によって大きく2つのタイプに分けられます。
ご自身のフケが、脂性フケと乾性フケのどちらに当てはまるかを確認しましょう。
脂性フケの特徴と原因
脂性フケは過剰に分泌された皮脂と古い角質が混ざり合ってできる、大きめで湿り気を帯びた黄白色のフケです。
頭皮にべったりと付着しやすく、指で触ると油っぽい感触があります。
主な原因は、皮脂の過剰分泌です。過剰な皮脂は頭皮の常在菌であるマラセチア菌の増殖を招き、菌が出す代謝物が頭皮を刺激してターンオーバーを異常に早め、フケの発生につながります。
脂っこい食事やストレス、ホルモンバランスの乱れ、不適切なヘアケアなどが皮脂の過剰分泌を助長します。
乾性フケの特徴と原因
乾性フケは頭皮の乾燥によって角質が細かく剥がれ落ちる、小さくてカサカサした白色のフケです。肩などにパラパラと落ちやすいのが特徴です。
主な原因は、頭皮の水分不足とバリア機能の低下です。洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や洗いすぎ、空気の乾燥や紫外線、加齢などが頭皮の乾燥を招きます。
乾燥した頭皮はターンオーバーが乱れやすく、未熟な角質が細かく剥がれ落ちて乾性フケとなります。
脂性フケと乾性フケの見分け方
ご自身のフケがどちらのタイプかを見分けることは、適切なケアを選ぶ上で非常に重要です。
比較項目 | 脂性フケ | 乾性フケ |
---|---|---|
見た目・大きさ | 大きめ、湿っている、黄白色 | 小さめ、カサカサしている、白色 |
頭皮への付着 | べったりと付着しやすい | 頭皮から剥がれやすく、肩などに落ちやすい |
頭皮の状態 | べたついている、赤みやかゆみを伴うことがある | 乾燥している、つっぱり感やかゆみを伴うことがある |
主な原因 | 皮脂の過剰分泌、マラセチア菌の増殖 | 頭皮の乾燥、バリア機能の低下 |
関連する悩み | 頭皮のべたつき、臭い、かゆみ、脂漏性皮膚炎 | 頭皮の乾燥、かゆみ、つっぱり感 |
もし判断が難しい場合や、両方の特徴が見られる場合は、自己判断せずに皮膚科医や専門クリニックに相談することをお勧めします。
タイプ別!フケの正しい対処法
フケのタイプによって原因が異なるため、対処法も変える必要があります。ここでは、脂性フケと乾性フケ、それぞれのタイプに応じた正しいケア方法とフケ対策全般で注意すべき点について説明します。
脂性フケへの対策
脂性フケの改善には、過剰な皮脂を取り除き、原因菌の増殖を抑えることが重要です。適切な洗浄力を持つシャンプーを選び、正しい方法で洗髪するのが基本となります。
皮脂をしっかりと洗い流しつつも、頭皮に必要な潤いを奪いすぎない、アミノ酸系やベタイン系の洗浄成分を配合したシャンプーがおすすめです。
抗菌・抗真菌成分(ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミンなど)が配合された薬用シャンプーも有効な場合があります。
洗髪時は指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないように十分時間をかけて洗い流しましょう。
脂性フケ対策のポイント
対策項目 | 具体的な方法 | 目的 |
---|---|---|
シャンプー選び | アミノ酸系・ベタイン系洗浄成分、抗菌・抗真菌成分配合のものを選ぶ。 | 過剰な皮脂や汚れを除去しつつ、頭皮への刺激を抑える。原因菌の増殖を抑制する。 |
洗髪方法 | ぬるま湯で予洗いし、指の腹でマッサージするように洗い、時間をかけて十分にすすぐ。 | 皮脂や汚れを効果的に落とし、シャンプー剤のすすぎ残しを防ぐ。 |
生活習慣 | 脂っこい食事や糖質を控え、ビタミンB群を摂取する。十分な睡眠、ストレス管理。 | 皮脂分泌を正常化し、ホルモンバランスを整える。 |
その他 | 枕カバーなどを清潔に保つ。必要に応じて医療機関を受診する。 | 雑菌の繁殖を防ぐ。重症化している場合は専門的な治療を受ける。 |
乾性フケへの対策
乾性フケの対策は、頭皮の乾燥を防いで潤いを保つ取り組みが中心となります。洗浄力がマイルドで保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸、グリセリンなど)が配合されたシャンプーを選びましょう。
洗いすぎは乾燥を悪化させるため、洗髪の頻度調整を検討するのも有効です。熱いお湯での洗髪は皮脂を取りすぎてしまうため避け、ぬるま湯を使用します。
洗髪後はドライヤーで根本からしっかり乾かしますが、熱風を長時間当てすぎないように注意しましょう。頭皮用の保湿ローションやオイルの使用のも効果的です。
フケ対策で注意すべきこと
フケ対策を行う上で、いくつか注意すべき点があります。まず、フケを気にするあまり、爪を立ててゴシゴシ洗うのは絶対にやめましょう。頭皮を傷つけ、かえってフケを悪化させたり、炎症を引き起こしたりする原因になります。
また、シャンプーやコンディショナーのすすぎ残しは毛穴詰まりや刺激の原因となるため、丁寧に洗い流すようにします。
フケが改善しない、かゆみや赤みが強い、抜け毛が増えたなどの症状がある場合は自己判断でケアを続けるのではなく、早めに皮膚科医や薄毛治療クリニックなどの専門家に相談しましょう。脂漏性皮膚炎など、治療が必要な状態かもしれません。
自宅でできる脂性頭皮の改善ケア
脂性頭皮の改善には、日々の正しいヘアケアが欠かせません。シャンプー選びから洗い方、そして頭皮マッサージやケア用品の活用まで、自宅で実践できる効果的なケア方法を確認しましょう。
正しいシャンプーの選び方と方法
脂性頭皮では皮脂や汚れをきちんと落とすのが重要ですが、洗浄力が強すぎると必要な皮脂まで奪ってしまい、かえって皮脂の過剰分泌を招くケースもあります。
適度な洗浄力と頭皮への優しさを両立するシャンプーを選びましょう。
脂性頭皮向けシャンプーの選び方
成分タイプ | 特徴 | おすすめの洗浄成分例 |
---|---|---|
アミノ酸系 | マイルドな洗浄力で、頭皮への刺激が少ない。保湿効果も期待できる。 | ココイルグルタミン酸TEA、ラウロイルメチルアラニンNa など |
ベタイン系 | ベビーシャンプーにも使われるほど低刺激。コンディショニング効果もある。 | コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン など |
薬用シャンプー | 抗菌・抗真菌成分や抗炎症成分が配合され、脂性フケや脂漏性皮膚炎の症状緩和が期待できる。 | ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミン、グリチルリチン酸2K など |
洗髪の手順も大切です。まず、シャンプー前にお湯だけで頭皮と髪を十分にすすぎ(予洗い)、ホコリや軽い汚れを落とします。
次に、シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。爪を立てるのは厳禁です。
最後に、シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧にすすぎましょう。特に髪の生え際や耳の後ろはすすぎ残しが多い箇所なので注意が必要です。
頭皮マッサージの効果とやり方
頭皮マッサージは、血行を促進して頭皮環境を整えるのに役立ちます。血行が良くなると毛根への栄養供給がスムーズになり、健やかな髪の成長をサポートできます。
また、リラックス効果も期待でき、ストレスによる皮脂の過剰分泌を抑える助けにもなります。シャンプー中や頭皮用ローションをつけた後に行うのがおすすめです。
指の腹を使い、頭皮全体を優しく揉みほぐします。側頭部、頭頂部、後頭部と、場所を変えながら心地よいと感じる強さで行いましょう。強く押しすぎたり爪を立てたりしないように注意してください。
頭皮マッサージのポイント
- 指の腹を使う
- 心地よい強さで
- 頭皮全体を動かすように
- リラックスして行う
頭皮ケア用品の選び方
シャンプー以外にも、頭皮環境を整えるためのさまざまなケア用品があります。脂性頭皮向けには、過剰な皮脂を抑えたり、毛穴の汚れを落としたり、抗菌作用のある成分が配合されたものがおすすめです。
頭皮用クレンジングオイルはシャンプー前に使用し、毛穴に詰まった皮脂汚れを浮かせて落としやすくします。
頭皮用ローションやトニックは洗髪後の清潔な頭皮に使用し、保湿や血行促進、皮脂バランスの調整や抗菌などの効果が期待できます。
エタノール(アルコール)が多く配合されているものは、乾燥を招く可能性があるので注意が必要です。ご自身の頭皮の状態に合ったものを選び、継続して使用することが大切です。
生活習慣の見直しで脂性頭皮を改善
頭皮の状態は、毎日の生活習慣と密接に関わっています。食事や睡眠、ストレスや運動といった要素を見直して、体の内側から脂性頭皮の改善を目指しましょう。
食生活で気をつけるポイント
食生活は皮脂の分泌量に直接的な影響を与えます。
脂っこい食べ物や糖質の多い食品の過剰摂取は、皮脂腺を刺激して皮脂分泌を増加させる可能性があります。これらの摂取は控えめにしましょう。
一方で、皮脂の分泌をコントロールし、頭皮環境を健やかに保つために積極的に摂りたい栄養素もあります。
頭皮環境を整える栄養素
栄養素 | 栄養素 | 多く含む食品 |
---|---|---|
ビタミンB2 | 皮脂の分泌を抑制し、皮膚や粘膜の健康を維持する。 | レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品 |
ビタミンB6 | タンパク質の代謝を助け、皮膚の新陳代謝を促進する。皮脂分泌抑制にも関与。 | カツオ、マグロ、鶏肉、バナナ、にんにく |
ビタミンC | 抗酸化作用があり、頭皮の炎症を抑える。コラーゲン生成を助ける。 | パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類 |
ビタミンE | 血行を促進し、頭皮への栄養供給を助ける。抗酸化作用もある。 | アーモンド、ナッツ類、アボカド、植物油 |
亜鉛 | 髪の主成分であるケラチンの合成に関与。皮膚の新陳代謝を助ける。 | 牡蠣、レバー、牛肉、チーズ、ナッツ類 |
バランスの取れた食事を心がけ、これらの栄養素を意識的に摂取することが、健やかな頭皮環境への近道です。
睡眠とストレスの影響
睡眠不足や質の低い睡眠は自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮脂の過剰分泌につながるケースがあります。
毎日決まった時間に寝起きするなど、規則正しい睡眠習慣を心がけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は、睡眠の質を低下させる可能性があるため控えるのが賢明です。
また、精神的なストレスもホルモンバランスを乱し、皮脂分泌を増加させる大きな要因です。ストレスを完全になくすのは難しいですが、自分なりのストレス解消法を見つけて溜め込まないようにすると良いでしょう。
ストレス軽減のヒント
- 趣味や好きなことに没頭する時間を作る
- 適度な運動(ウォーキング、ヨガなど)
- ゆっくり入浴する
- 友人や家族と話す
- 十分な休息をとる
運動習慣の重要性
適度な運動は血行を促進し、頭皮への栄養供給を改善します。また、汗をかくことで毛穴の汚れや老廃物の排出を助ける効果も期待できます。
さらに、運動はストレス解消にもつながり、自律神経のバランスを整える助けとなります。
ウォーキングやジョギング、水泳やヨガなど、自分が続けやすい有酸素運動を週に数回、定期的な実践を目指しましょう。
運動後は汗や皮脂を洗い流し、頭皮を清潔に保つのも忘れないでください。
脂性頭皮・フケと薄毛(AGA)の関係
脂性頭皮やフケが直接的な薄毛の原因となるわけではありませんが、頭皮環境の悪化は髪の健やかな成長を妨げ、薄毛のリスクを高める可能性があります。
頭皮環境の悪化が薄毛につながる?
健康な髪は、健康な頭皮から生えてきます。脂性頭皮によって過剰な皮脂が毛穴に詰まると、髪の毛の成長に必要な酸素や栄養が届きにくくなる可能性があります。
また、皮脂をエサに増殖した雑菌が炎症を引き起こすと毛根にダメージを与え、髪が細くなったり、抜けやすくなったりする可能性が考えられます。
特に、脂性フケを伴うような状態は頭皮のターンオーバーが乱れているサインであり、放置すると髪の成長サイクルにも悪影響を及ぼしやすいです。
そのため脂性頭皮やフケの症状が見られる場合は、それ自体が薄毛の原因でなくとも、薄毛を進行させやすい頭皮環境であると言えます。適切なケアで頭皮環境を整えることが、将来的な薄毛予防にもつながります。
脂漏性脱毛症とは
脂漏性皮膚炎が悪化し、抜け毛・薄毛の症状が現れた状態を「脂漏性脱毛症」と呼びます。
脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌とマラセチア菌の増殖が主な原因で起こる慢性の皮膚炎です。頭皮に強いかゆみや赤み、大量の脂っぽいフケが見られます。
炎症が毛穴周辺に及ぶと毛根がダメージを受けたり毛穴が詰まったりして、髪の毛が正常に成長できなくなり、結果として抜け毛が増加して薄毛が進行します。
脂漏性脱毛症はAGAとは異なる原因で起こる脱毛症ですが、併発するケースもあります。
脂漏性皮膚炎の症状が見られる場合は、自己判断せずに皮膚科医や専門クリニックを受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
AGA治療との関連性
AGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモン(DHT:ジヒドロテストステロン)や遺伝が主な原因で起こる進行性の脱毛症です。脂性頭皮やフケがAGAの直接的な原因ではありません。
しかし、AGAを発症している方が脂性頭皮や脂漏性皮膚炎を併発しているケースは少なくありません。
AGA治療では、内服薬や外用薬を用いてDHTの生成を抑制したり、毛母細胞の働きを活性化させたりしますが、同時に頭皮環境を良好に保つ工夫も治療効果を高める上で大切です。
脂性頭皮やフケ、炎症があるときはAGA治療と並行して、これらの頭皮トラブルに対する治療やケアも行うことが推奨されます。
専門家への相談 – クリニックでの治療法
セルフケアで脂性頭皮やフケが改善しないときや、症状が悪化している場合、また薄毛が気になる方は、皮膚科医やAGA・薄毛治療を専門とするクリニックに相談することをお勧めします。
専門家による診断と適切な治療が、悩みの解決につながるでしょう。
医師に相談するタイミング
以下のような症状が見られる場合は、早めに専門医の診察を受けましょう。
症状 | 具体的な状態 |
---|---|
症状の持続・悪化 | セルフケアを続けてもフケやかゆみ、べたつきが改善しない、または悪化している。 |
強いかゆみや炎症 | 日常生活に支障が出るほどの強いかゆみや、頭皮の赤み、湿疹、痛みがある。 |
大量のフケ | フケの量が異常に多く、特に脂っぽく大きなフケが出る(脂漏性皮膚炎の可能性)。 |
抜け毛の増加 | 明らかに抜け毛が増え、薄毛が気になり始めた。 |
臭いが強い | 頭皮から強い臭いがする。 |
これらのサインは単なる脂性頭皮やフケではなく、脂漏性皮膚炎や他の皮膚疾患、あるいはAGAが進行している可能性を示唆しています。自己判断は避け、専門家の診断を仰ぐことが大切です。
クリニックで行われる検査
クリニックでは、まず問診で症状や生活習慣、既往歴などを詳しく伺います。その後、視診や触診で頭皮の状態(赤み、炎症、フケの種類や量、皮脂の分泌状態、毛穴の状態など)を直接確認します。
より詳しく調べるために、より詳しい検査を行うもあります。
主な頭皮検査
検査名 | 検査内容 | 目的 |
---|---|---|
マイクロスコープ | 高倍率のカメラで頭皮や毛穴、毛髪の状態を拡大して観察します。 | 皮脂の詰まり具合、炎症の程度、毛髪の太さや密度、フケの状態などを詳細に確認します。 |
真菌検査 | フケや頭皮の一部を採取し、顕微鏡でマラセチア菌などの真菌の有無や量を調べます。 | 脂漏性皮膚炎の原因菌の特定などに役立ちます。 |
血液検査 | 必要に応じて、ホルモンバランスや栄養状態、炎症反応などを調べるために行うことがあります。 | 全身的な要因が頭皮環境に影響していないかを確認します。 |
主な治療法と選択肢
診断結果に基づき、患者さんの症状や状態に合わせた治療法を選択します。脂性頭皮や脂漏性皮膚炎に対しては、以下のような治療が一般的です。
クリニックでの主な治療法
治療法 | 内容 | 主な目的・効果 |
---|---|---|
外用薬(塗り薬) | 抗真菌薬(ケトコナゾールなど)、ステロイド外用薬(炎症が強い場合)、ビタミンB群配合外用薬などが処方されます。 | マラセチア菌の増殖抑制、炎症やかゆみの鎮静、皮脂分泌の調整。 |
内服薬(飲み薬) | 抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)、抗真菌薬(重症の場合)、ビタミン剤(B2, B6など)、抗生物質(細菌感染を伴う場合)などが処方されることがあります。 | 体の内側からかゆみや炎症を抑える、原因菌を抑制する、皮脂分泌を調整する。 |
薬用シャンプーの処方 | 症状に合わせて、抗真菌成分や抗炎症成分が配合された医療用のシャンプーが処方されることがあります。 | 日常的なケアとして、原因菌のコントロールや炎症の抑制を目指します。 |
生活指導 | 食生活、睡眠、ストレス管理、正しいヘアケア方法など、生活習慣全般に関するアドバイスを行います。 | 根本的な原因にアプローチし、再発を予防します。 |
AGA治療(併発時) | AGAを併発している場合は、フィナステリドやデュタステリドの内服薬、ミノキシジルの外用薬など、AGAに対する標準的な治療を並行して行います。 | 男性型脱毛症の進行を抑制し、発毛を促進します。 |
よくある質問
さいごに、脂性頭皮やフケに関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
毎日シャンプーしてもべたつくのはなぜ?
毎日シャンプーしていても頭皮がべたつく場合、いくつかの原因が考えられます。
まず、シャンプーの洗浄力が強すぎて必要な皮脂まで落としてしまい、体がそれを補おうとして逆に皮脂分泌を過剰にしている可能性があります。
また、すすぎが不十分でシャンプー剤が頭皮に残り、それが刺激やべたつきの原因になっている方も見受けられます。
さらに、ホルモンバランスの乱れや食生活、ストレスなども皮脂分泌に影響するため、シャンプー方法だけでなく生活習慣全体の見直しも有効です。
フケが多いとAGAになりやすい?
フケが多いこと自体が直接AGA(男性型脱毛症)の原因になるわけではありません。AGAは主に男性ホルモンや遺伝的要因によって引き起こされます。
しかし、フケ(特に脂性フケ)が多い状態は、頭皮環境が悪化しているサインです。過剰な皮脂や炎症は毛髪の健やかな成長を妨げる可能性があり、AGAの進行を助長する一因となり得ます。
そのため、フケが多い場合は適切なケアで頭皮環境を整える取り組みが、AGAの予防や治療効果を高める上でも重要です。
市販の薬用シャンプーは効果がある?
市販の薬用シャンプーには、フケやかゆみを抑える有効成分(抗真菌成分、抗炎症成分、殺菌成分など)が配合されており、軽度の脂性フケや乾性フケに対して効果が期待できる場合があります。
ただし、症状の原因や程度は人それぞれであり、市販品がすべての人に合うとは限りません。
特に、脂漏性皮膚炎など症状が重い場合や、長期間使用しても改善が見られない場合は、自己判断を続けずに専門医に相談し、医療用のシャンプーや他の治療法を検討することをお勧めします。
食事で頭皮環境はどれくらい変わる?
食生活は頭皮環境、特に皮脂の分泌量に大きく影響します。脂質や糖質の多い食事を続けると皮脂分泌が過剰になりやすく、脂性頭皮や脂性フケの原因となります。
逆に、ビタミンB群(特にB2、B6)やビタミンC、E、亜鉛など、皮脂バランスを整えたり、頭皮の新陳代謝を助けたりする栄養素をバランス良く摂取すると頭皮環境の改善が期待できます。
即効性があるわけではありませんが、長期的に健やかな頭皮を保つためには、日々の食生活の見直しが非常に大切です。
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