雨に濡れるとはげるって本当?抜け毛対策と湿気から髪を守る方法

雨 はげる

「雨に濡れると、はげる」という話を一度は耳にしたことがあるかもしれません。特に薄毛を気にされている方にとっては雨の日の外出が憂鬱になる原因の一つではないでしょうか。

この都市伝説のような噂に科学的な根拠はあるのでしょうか。

結論から言うと、雨水自体が直接的な脱毛を引き起こすわけではありません。しかし、雨に濡れた後の頭皮環境の悪化が抜け毛のリスクを高めることは事実です。

この記事では雨と抜け毛の本当の関係性を解き明かし、湿気から髪を守るための具体的な対策を専門家の視点から解説します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

「雨に濡れるとはげる」噂の真相を科学的に解明

多くの人が信じているこの噂ですが、医学的な観点から見ると、いくつかの誤解が含まれています。

雨水そのものが持つ力で髪が抜けるわけではありません。問題の本質は雨に濡れた後の状態にあります。

雨水そのものが直接的な脱毛原因ではない

通常の雨水は水道水と成分的に大きく変わるものではありません。微量の不純物を含んでいますが、それが毛根に作用して髪を抜け落とさせるほどの強力な力はありません。

したがって、「雨粒が頭皮に当たったからはげる」と心配する必要はまずありません。

酸性雨は髪を傷めるが、はげるとは言えない

大気中の汚染物質を含む「酸性雨」を心配する声もあります。確かに強い酸性は髪の表面を覆うキューティクルを傷つけ、髪のパサつきやゴワつきの原因になります。

しかし日本の酸性雨のレベルで、毛根を破壊して脱毛症を引き起こすことは考えにくいです。髪のダメージと毛根が死んでしまう「脱毛」は別の問題として捉える必要があります。

雨水に含まれる可能性のある物質とその影響

物質髪への影響脱毛との直接的関連
塵・ホコリ頭皮の毛穴詰まりの原因になる間接的に影響する可能性あり
硫黄酸化物など酸性雨の原因。キューティクルを傷める低い
(通常の水)濡れた状態が続くと雑菌が繁殖する間接的に影響する可能性あり

本当に注意すべきは雨に濡れた「後」の頭皮環境

雨と抜け毛を結びつける最大の要因は、「濡れた状態が続くことによる頭皮環境の悪化」です。

髪や頭皮が長時間湿ったままだと雑菌が繁殖しやすい高温多湿の状態になります。この環境が頭皮の炎症やかゆみを引き起こし、結果として抜け毛につながるのです。

雨と湿気が頭皮環境に与える悪影響

雨の日は、単に髪が濡れるだけでなく、高い湿度が頭皮に様々な悪影響を及ぼします。これらが複合的に作用することで、抜け毛のリスクが高まります。

雑菌の繁殖と頭皮の常在菌バランスの乱れ

頭皮にはもともと多種多様な常在菌が存在してバランスを保っています。しかし雨で濡れて湿度が高まると、特定の菌(特にマラセチア菌など)が異常に増殖しやすくなります。

この菌バランスの乱れが、フケやかゆみといった頭皮トラブルの引き金となります。

頭皮の主な常在菌とその働き

菌の種類通常の働き増えすぎた場合の影響
表皮ブドウ球菌皮膚を弱酸性に保ち、病原菌の侵入を防ぐ(善玉菌のため問題は少ない)
アクネ菌皮脂を分解するニキビや毛嚢炎の原因になる
マラセチア菌皮脂をエサにする脂漏性皮膚炎の原因になり、フケ・かゆみを引き起こす

皮脂や汚れによる毛穴の詰まり

雨水に含まれる大気中のチリやホコリが頭皮の皮脂と混ざり合うと、粘着性の高い汚れとなって毛穴を塞いでしまいます。

毛穴が詰まると皮脂が正常に排出されなくなり、中で炎症を起こして毛根にダメージを与えることがあります。

体温の低下による頭皮の血行不良

雨に濡れて頭皮が冷えると、血管が収縮して血行が悪くなります。

髪の毛の成長に必要な栄養素や酸素は、血液によって毛根に運ばれます。このため、血行不良は毛母細胞の活動を低下させ、健康な髪の成長を妨げる一因となります。

頭皮の雑菌繁殖が引き起こすトラブルと抜け毛

雨に濡れた後の不衛生な環境が続くと具体的な皮膚疾患に発展し、それが直接的・間接的に抜け毛を誘発します。

特に注意すべき頭皮トラブルを見ていきましょう。

かゆみやフケの原因となる脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は皮脂の過剰な分泌とマラセチア菌の異常増殖によって引き起こされる皮膚炎です。頭皮が赤くなり、ベタベタとした湿ったフケやかゆみが生じます。

強いかゆみで頭皮を掻きむしると、物理的なダメージで髪が抜け落ちることがあります。

毛根に炎症を起こす毛嚢炎

毛嚢炎は毛穴の奥にある毛包が細菌に感染して炎症を起こす病気です。

赤いブツブツや膿を持ったできものができ、悪化すると毛根組織を破壊してしまいます。この場合、炎症が治ってもその毛穴から髪が生えてこなくなる「瘢痕性脱毛症」に至るリスクがあります。

頭皮トラブルと抜け毛への影響度

頭皮トラブル主な症状抜け毛への影響度
フケ・かゆみ乾燥したフケ、または湿ったフケ低い(掻き壊さなければ)
脂漏性皮膚炎赤み、強いかゆみ、ベタつくフケ中程度
毛嚢炎膿を持った発疹、痛み高い(瘢痕化のリスク)

悪臭の原因となる菌の活動

頭皮が蒸れて雑菌が繁殖すると、皮脂や汗を分解する過程で不快な臭いが発生します。

頭皮の臭いは衛生状態が悪いサインであり、抜け毛につながる頭皮環境の悪化を示唆している場合があります。

雨の日の正しいヘアケアと応急処置

雨による頭皮へのダメージを最小限に抑えるには、濡れてしまった後のケアが非常に重要です。正しい知識を身につけ、迅速に対処しましょう。

雨に濡れてしまった直後に行うべきこと

もし外出中に雨に濡れてしまったら、まずは清潔なハンカチやタオルで優しく水分を拭き取ります。ゴシゴシ擦るとキューティクルを傷つけるので、髪を押さえるようにして水分を吸収させましょう。

可能であれば、できるだけ早く帰宅してシャワーを浴びるのが理想です。

雨の日の外出時にあると便利なアイテム

  • 折りたたみ傘
  • 吸水性の高いタオルやハンカチ
  • 携帯用のドライシャンプー
  • 通気性の良い帽子

自然乾燥は絶対NG!すぐに乾かす重要性

濡れた髪をそのまま放置する「自然乾燥」は、頭皮ケアにおいて最も避けるべき行為です。髪が湿っている時間が長ければ長いほど雑菌が繁殖し、頭皮トラブルのリスクが高まります。

帰宅後はできるだけ速やかに髪を洗い、ドライヤーで完全に乾かすことを徹底してください。

正しい髪の乾かし方とドライヤーの使い方

シャンプー後は、まずタオルドライで髪の水分をしっかり取ります。

その後ドライヤーを頭皮から15~20cmほど離し、同じ場所に熱が集中しないように小刻みに動かしながら乾かします。根元から乾かし始め、毛先に向かって風を当てるのがポイントです。

8割ほど乾いたら冷風に切り替えて仕上げるとキューティクルが引き締まり、髪にツヤが出ます。

ドライヤー使用時のNG行動

NG行動理由正しい方法
至近距離で当てる熱による頭皮や髪のダメージ15cm以上離す
同じ場所に当て続けるオーバードライ(乾燥させすぎ)の原因常にドライヤーを振りながら動かす
生乾きでやめる雑菌繁殖の原因になる根元から毛先まで完全に乾かす

【独自コンテンツ】「雨の日の抜け毛」はAGA進行のサインかもしれない

「雨の日になると、いつもより抜け毛が多い気がする」。そう感じている方は、雨や湿気だけが原因ではない可能性を考える必要があります。

その感覚の裏には、すでに進行しているAGA(男性型脱毛症)が隠れているかもしれません。

なぜ雨の日に抜け毛が目立つと感じるのか

実際に雨の日にだけ抜け毛が増えるわけではありません。そう「感じる」のには理由があります。

湿気が多いと髪の毛は水分を吸ってうねったり、ボリュームを失ってペタッとしたりします。このことにより髪のセットがうまくいかず、地肌が露出しやすくなります。

普段は髪型でカバーできていた薄毛部分が目立つため、「抜け毛が増えた」と錯覚してしまうのです。

雨の日に薄毛が目立つと感じる心理的・物理的要因

要因内容
髪のボリュームダウン湿気で髪がまとまり、地肌が透けやすくなる
スタイリングの崩れ普段隠せている部分が露わになる
視覚的な錯覚濡れた髪は束になり、地肌とのコントラストが強まる

AGA患者の頭皮はもともとトラブルを起こしやすい

AGAが進行している方の頭皮は皮脂の分泌が過剰であったり、ヘアサイクルが乱れていたりするため、健常な頭皮に比べてバリア機能が低下している傾向にあります。

そのため雨や湿気といった外部からの少しの刺激でも健常な人より頭皮トラブルを起こしやすく、それが抜け毛につながりやすい状態にあると言えます。

「雨のせい」と自己判断せず、根本原因を探る重要性

「雨のせいだから仕方ない」と放置してしまうと、根本的な原因であるAGAは着実に進行していきます。

雨の日の抜け毛や薄毛の実感は、あなたの身体が発している「AGAが進行しているかもしれない」という重要なサインです。

頭皮環境のケアはもちろん大切ですが、それと同時に薄毛の根本原因に目を向け、専門医に相談することが、あなたの髪を守るために最も重要な行動です。

湿気に負けない頭皮環境を作るための日常的な対策

雨の日のトラブルを最小限に抑えるには日頃から頭皮を健康な状態に保っておくことが大切です。毎日の生活習慣を見直し、頭皮の抵抗力を高めましょう。

適切なシャンプー選びと洗髪方法

自分の肌質に合ったシャンプーを選びましょう。乾燥肌なら保湿成分配合のもの、脂性肌なら適度な洗浄力があるアミノ酸系シャンプーなどがおすすめです。

洗髪時は爪を立てずに指の腹で優しく洗い、すすぎはシャンプー剤が残らないよう丁寧に行うことが基本です。

頭皮のバリア機能を高める食生活

健康な髪と頭皮はバランスの取れた食事から作られます。

特に髪の主成分であるタンパク質、皮膚の新陳代謝を助けるビタミンB群、血行を促進するビタミンE、そして頭皮の健康維持に必要な亜鉛などを積極的に摂取しましょう。

頭皮の健康をサポートする主な栄養素

栄養素主な働き多く含まれる食品
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料肉、魚、卵、大豆製品
ビタミンB群皮脂のコントロール、代謝の促進豚肉、レバー、うなぎ、納豆
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、牛肉、チーズ

十分な睡眠とストレス管理

睡眠中に分泌される成長ホルモンは日中に受けた頭皮のダメージを修復し、髪の成長を促します。質の良い睡眠を十分にとることを心がけましょう。

また、過度なストレスは自律神経を乱し、血行不良や皮脂の過剰分泌を招きます。自分なりのリラックス方法を見つけ、ストレスを溜め込まないことも重要です。

薄毛が気になる場合の専門的なアプローチ

セルフケアを続けても頭皮の状態が改善しない、あるいは抜け毛が減らない場合は、AGAなどの脱毛症が進行している可能性があります。

早めに専門のクリニックを受診することを検討しましょう。

セルフケアで改善しない場合の受診の目安

以下のようなサインが見られたら、専門医への相談をお勧めします。

  • 2週間以上フケやかゆみが続く
  • 頭皮に赤みやできものができている
  • 明らかに抜け毛の量が増えた
  • 髪の毛が細く、コシがなくなった

クリニックで行う頭皮の状態診断

クリニックでは医師による問診に加え、マイクロスコープなどを用いて頭皮の状態を詳細に観察します。

毛穴の詰まり具合、炎症の有無、毛髪の太さや密度などを客観的に評価し、薄毛の原因を正確に診断します。

セルフケアとクリニック治療の比較

項目セルフケアクリニックでの治療
目的現状維持、予防原因の特定、根本治療、発毛促進
方法市販のケア用品、生活習慣改善医薬品の処方、専門的な処置
確実性個人差が大きい医学的根拠に基づき高い効果が期待できる

AGA治療薬による根本的な対策

診断の結果、AGAが原因であると判断された場合は進行を抑制する内服薬(フィナステリド、デュタステリドなど)や、発毛を促進する外用薬(ミノキシジル)を用いた治療を開始します。

これらの治療は薄毛の根本原因に働きかけるため、高い改善効果が期待できます。

よくある質問

最後に、雨の日のヘアケアに関して患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

雨の日に帽子をかぶるのは蒸れて逆効果になりませんか?

長時間ぴったりとした帽子をかぶり続けると、確かに蒸れて雑菌が繁殖しやすくなります。しかし雨に直接濡れるよりは良い選択です。

ポイントは通気性の良い素材(メッシュなど)の帽子を選ぶこと、そして室内に入ったらこまめに帽子を脱いで湿気を逃がすことです。

帽子をかぶるメリットとデメリットを理解し、上手に活用しましょう。

酸性雨で髪の色が抜けたりしますか?

日本の酸性雨のレベルで髪の色素(メラニン)が破壊されて色が抜ける、ということはまずありません。

ただし、ヘアカラーをしている髪は酸性の影響で染料が流れやすくなったり、キューティクルが傷んで色あせて見えたりする可能性はあります。

濡れた髪をタオルでゴシゴシ拭いても大丈夫ですか?

絶対にやめてください。

濡れた髪はキューティクルが開いていて非常にデリケートな状態です。タオルでゴシゴシ擦る摩擦は、キューティクルを剥がし、枝毛や切れ毛の大きな原因になります。

タオルで髪を挟み込み、優しくポンポンと叩くようにして水分を吸い取らせるのが正しい拭き方です。

以上

参考文献

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