「最近、抜け毛が増えた気がする」「髪のボリュームがなくなってきた」といったお悩みはありませんか。
その原因は、生活習慣や遺伝だけでなく、体内のホルモンバランスの乱れにあるかもしれません。特に、のどぼとけの下にある「甲状腺」が作るホルモンは、髪の健康と深く関わっています。
甲状腺の働きが低下すると、髪の成長が妨げられ、薄毛や脱毛を引き起こすことがあります。この記事では、薄毛の原因を探る上で重要な「甲状腺機能検査」に焦点を当てます。
血液検査でわかるTSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT4(遊離サイロキシン)、FT3(遊離トリヨードサイロニン)といった項目や、橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患の指標となる抗体検査について、一つひとつ丁寧に解説していきます。
甲状腺と髪の毛の深い関係性

甲状腺は、体の新陳代謝を活発にする「甲状腺ホルモン」を分泌する重要な臓器です。
このホルモンは、心臓や脳、筋肉など全身の臓器に働きかけるだけでなく、髪の毛の成長にも大きな影響を与えます。
髪の成長を支える甲状腺ホルモン
髪の毛は、毛根にある「毛母細胞」が分裂を繰り返すことで成長します。甲状腺ホルモンは、この毛母細胞の活動を活発にする働きを担っています。
ホルモンが適切に分泌されることで、毛母細胞はエネルギーを十分に得て、健康な髪の毛を作り出すことができます。
つまり、甲状腺ホルモンは、髪の毛が太く、長く、健やかに育つための土台を支える、大切な存在なのです。
甲状腺機能が低下すると薄毛になる理由
何らかの原因で甲状腺の働きが弱まり、甲状腺ホルモンの分泌量が減少する状態を「甲状腺機能低下症」と呼びます。
この状態になると、全身の代謝が低下し、毛母細胞の活動も鈍くなります。その結果、髪の毛の成長サイクルに異常が生じます。
髪の成長サイクルへの影響
髪の毛には「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルがあります。甲状腺機能が低下すると、髪が伸びる「成長期」が短くなり、逆に髪が抜ける準備段階である「休止期」が長くなる傾向があります。

これにより、十分に成長しないまま抜け落ちる髪が増え、全体的に髪が薄くなってしまうのです。これを「休止期脱毛症」と呼び、びまん性(広範囲)に脱毛が起こるのが特徴です。
また、髪の毛自体も乾燥してツヤがなくなり、細く切れやすくなるなど、毛質の変化を感じることもあります。

自己免疫性甲状腺疾患と脱毛症
甲状腺機能低下症の原因として最も多いのが、「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。橋本病は、本来体を守るはずの免疫系が、誤って自分自身の甲状腺を攻撃してしまう自己免疫性甲状腺疾患の一つです。
この病気により甲状腺に慢性的な炎症が起こり、徐々に甲状腺の機能が低下していきます。橋本病が原因で薄毛が進行するケースは少なくありません。
さらに、自己免疫の異常は、甲状腺だけでなく毛根を攻撃することもあり、「円形脱毛症」を併発する可能性も指摘されています。
甲状腺機能検査の全体像

薄毛の原因として甲状腺機能の異常が疑われる場合、血液検査によってその状態を詳しく調べることができます。
この検査は、甲状腺が正常に働いているか、ホルモンの量は適切か、自己免疫の異常はないかなどを評価するための重要な手がかりとなります。
なぜ血液検査で甲状腺の状態がわかるのか
甲状腺ホルモンは、血液に乗って全身に運ばれます。そのため、採血をして血液中のホルモン濃度を測定することで、甲状腺の働き具合を客観的な数値で把握できます。
また、甲状腺をコントロールする脳下垂体からのホルモンや、甲状腺に対する自己抗体の有無も同時に調べることで、機能異常の原因まで推測することが可能です。
少量の血液で多くの情報が得られるため、甲状腺疾患のスクリーニングや診断において、血液検査は基本となります。
甲状腺ホルモンの主な働き
分類 | 主な働き | 影響 |
---|---|---|
全身の代謝 | エネルギー産生、体温調節 | 低下すると、冷え、むくみ、体重増加など |
循環器系 | 心拍数や血圧の調整 | 低下すると、徐脈、心機能低下など |
精神・神経系 | 精神活動の維持、神経伝達 | 低下すると、眠気、記憶力低下、無気力など |
検査を受ける前の準備と注意点

甲状腺機能検査は、通常、特別な食事制限などは必要ありません。しかし、より正確な結果を得るために、いくつか知っておくと良い点があります。まず、体調が良い日に検査を受けるのが望ましいです。
高熱や極度の疲労がある場合、一時的に数値が変動することがあります。
また、他の病気の治療で薬を服用している場合や、サプリメント(特にヨウ素を含むもの)を摂取している場合は、事前に医師に伝えてください。
薬によっては検査値に影響を与える可能性があるため、正確な診断のためには情報共有が重要です。検査当日は、リラックスして採血に臨みましょう。
検査結果から読み取れることの概要
検査結果の報告書には、TSH、FT4、FT3といった項目が並び、それぞれの測定値と基準値が記載されています。これらの数値を単独で見るのではなく、互いのバランスを見ながら総合的に解釈します。
例えば、TSHが高くFT4が低い場合は甲状腺自体の機能低下が疑われ、TSHもFT4も低い場合は、甲状腺をコントロールする脳下垂体の問題が考えられます。
このように、複数の検査項目を組み合わせることで、どこに問題の原因があるのかを絞り込んでいくことができます。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)- 機能を知る基本の検査
甲状腺機能検査の中で、最も基本的で重要な項目がTSH(Thyroid Stimulating Hormone:甲状腺刺激ホルモン)です。
この数値は、甲状腺の健康状態を知るためのバロメーターの役割を果たします。
TSHとは何か?脳からの重要な指令

TSHは、甲状腺自体から分泌されるホルモンではありません。脳の一部である「下垂体」という場所から分泌され、血流に乗って甲状腺に届きます。
その役割は、その名の通り「甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモン(T4やT3)を作るように指令を出す」ことです。
体内の甲状腺ホルモンが足りなくなると、下垂体はTSHを多く分泌して「もっとホルモンを作れ」と指令を出し、逆に甲状腺ホルモンが多すぎるとTSHの分泌を減らして「ホルモン作りを休め」と指令を出します。
このように、TSHは体内の甲状腺ホルモン量を一定に保つための調整役を担っています。
TSHが示す甲状腺機能の基本的スクリーニングの役割
TSHは、体内の甲状腺ホルモンの過不足に敏感に反応して変動します。
そのため、甲状腺機能に異常がある場合、甲状腺ホルモン(FT4やFT3)の数値に変化が現れるよりも先に、TSHの数値が変動することが多くあります。
この特性から、TSHは甲状腺機能の異常を早期に発見するための、非常に優れたスクリーニング検査として位置づけられています。
まずTSHを測定し、異常があればさらに詳しい検査に進む、という流れが一般的です。
TSHの基準値と数値が変動する原因

TSHの基準値は、検査機関によって多少異なりますが、一般的にはおよそ0.5〜5.0 μIU/mLの範囲内です。この基準値から外れる場合、甲状腺機能に何らかの変化が起きている可能性を考えます。
数値の変動は、甲状腺自体の病気だけでなく、ストレス、妊娠、加齢、服用中の薬など、様々な要因によっても影響を受けます。
TSHの基準値と解釈
TSH値 | 甲状腺の状態(推測) | 考えられる主な疾患 |
---|---|---|
基準値より高い | 機能低下 | 橋本病、原発性甲状腺機能低下症 |
基準値の範囲内 | 正常 | - |
基準値より低い | 機能亢進 | バセドウ病、無痛性甲状腺炎 |
高いTSH値が示唆する甲状腺機能低下症
血液中の甲状腺ホルモンが不足すると、脳下垂体はそれを補おうとしてTSHを過剰に分泌します。その結果、血液検査でTSHの値が高くなります。
特に、FT4の値が正常範囲内であるにもかかわらずTSHだけが高い状態を「潜在性甲状腺機能低下症」と呼びます。
この段階では自覚症状がないことも多いですが、将来的に明らかな甲状腺機能低下症に移行する可能性があるため、注意深い経過観察が必要です。
薄毛や倦怠感などの症状があり、TSHが高い場合は、甲状腺機能低下症がその原因である可能性を考慮します。
FT4(遊離サイロキシン)- 甲状腺ホルモンの前駆体
TSHと並んで重要視されるのが、FT4(Free Thyroxine:遊離サイロキシン)です。これは、甲状腺が実際にどれくらいの量のホルモンを生産しているかを示す指標です。
FT4の役割と体への影響
甲状腺で作られるホルモンのうち、約90%以上がサイロキシン(T4)です。
血液中では、そのほとんどがタンパク質と結合していますが、ごく一部が結合していない「遊離(Free)」の状態で存在します。この遊離しているT4が「FT4」であり、実際に細胞に働きかける能力を持ちます。
FT4は、後述するFT3に変換されることで、より強力な作用を発揮します。全身の細胞に取り込まれて新陳代謝を促進し、私たちが活動するためのエネルギーを生み出す源となります。
FT4が甲状腺ホルモンの前駆体と呼ばれる理由
FT4はそれ自体も生理作用を持ちますが、主な役割は、より活性の高いFT3に変換されるための「材料」となることです。そのため、甲状腺ホルモンの「前駆体(プロホルモン)」とも呼ばれます。
甲状腺はFT4を安定的に血液中に供給し、体は必要に応じて肝臓や腎臓などでFT4をFT3に変換して、ホルモンの作用をきめ細かく調整しています。
この仕組みにより、体の状態に合わせた代謝レベルが維持されます。

FT4の基準値と解釈
FT4値 | TSH値との組み合わせ | 考えられる状態 |
---|---|---|
低い | 高い | 原発性甲状腺機能低下症 |
低い | 低い or 正常 | 中枢性甲状腺機能低下症 |
高い | 低い | 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など) |
FT4の数値からわかる甲状腺の生産能力
FT4の血中濃度を測定することで、甲状腺がホルモンを生産する能力を直接評価することができます。TSHが「指令」の量を示すのに対し、FT4は「生産」されたホルモンの量を示す指標です。
例えば、TSHが高く(指令は出ている)、FT4が低い(生産が追いついていない)場合、甲状腺自体の機能が低下していると判断できます。
このように、TSHとFT4の値を組み合わせて見ることで、より正確な診断が可能になります。
FT3(遊離トリヨードサイロニン)- 活性型甲状腺ホルモン
FT3(Free Triiodothyronine:遊離トリヨードサイロニン)は、甲状腺ホルモンの中で最も生理活性が強いホルモンです。
体の代謝を直接的にコントロールする、いわば「実行部隊」のような存在です。
FT3の重要性-全身の代謝を活発にする活性型ホルモン
FT3は、FT4と比べて血中濃度は低いものの、その作用は数倍強力です。全身のほぼすべての細胞に存在する受容体と結合し、細胞内のエネルギー産生工場であるミトコンドリアの働きを活発にします。
これにより、体温の維持、心臓の拍動、食物の消化・吸収、そして髪の毛の成長といった、生命活動の根幹をなす様々な代謝活動が促進されます。
FT3が不足すると、体のあらゆる機能がスローダウンしてしまいます。
甲状腺機能低下による髪への影響
- 成長期の短縮
- 休止期の延長
- 毛質の変化(乾燥、パサつき)
FT4からFT3への変換と体の調整機能
甲状腺から直接分泌されるFT3は全体の約20%で、残りの約80%は、主に肝臓や腎臓、筋肉などでFT4から変換されて作られます。
体は、この変換を調整することで、状況に応じて甲状腺ホルモンの作用の強さをコントロールしています。
例えば、体が多くのエネルギーを必要とするときには変換を促進し、逆に飢餓状態や大きなストレス下では変換を抑制してエネルギー消費を節約します。
この精巧な調整機能は、体の恒常性を維持するために非常に重要です。
FT3の基準値と解釈
FT3値 | 考えられる状態や影響 | 主な症状 |
---|---|---|
低い | 代謝の低下、エネルギー不足 | 強い倦怠感、冷え、脱毛、抑うつ |
正常 | 代謝が正常に保たれている | - |
高い | 代謝の過剰な亢進 | 動悸、発汗、体重減少、イライラ |
FT3の数値が低い場合の影響

FT3の数値が低い場合、たとえFT4が正常範囲内であっても、体は甲状腺ホルモン欠乏の状態に陥っている可能性があります。
これを「Low T3症候群」などと呼ぶこともあり、強い疲労感、うつ症状、体重増加、そして薄毛といった甲状腺機能低下症と同様の症状が現れることがあります。
FT4からFT3への変換がうまくいかない背景には、栄養不足(特に亜鉛やセレン)、ストレス、肝機能の低下などが関わっていると考えられています。
抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体- 自己免疫性甲状腺疾患の指標
甲状腺機能の異常が、免疫系の誤作動によって引き起こされている場合があります。それを調べるのが、抗TPO抗体と抗サイログロブリン抗体という、2つの自己抗体検査です。

自己免疫とは何か?
免疫とは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの外敵を攻撃し、体を守るためのシステムです。
しかし、この免疫システムに異常が生じると、自分自身の正常な細胞や組織を「敵」と誤認して攻撃を始めてしまうことがあります。これを「自己免疫」と呼びます。
甲状腺は、この自己免疫のターゲットになりやすい臓器の一つです。
検査前の注意点
- 過度なストレスや睡眠不足を避ける
- 服用中の薬やサプリメントを医師に伝える
- ヨウ素の過剰摂取に注意する
橋本病を特定する抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体
橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。この病気の患者さんの血液中には、特定の自己抗体が検出されることが多くあります。
抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)
TPOは、甲状腺ホルモンを合成する際に重要な役割を果たす酵素です。抗TPO抗体は、このTPOを攻撃してしまう抗体で、橋本病の患者さんの約90%以上で陽性となります。
非常に特異性が高く、橋本病の診断において最も重要な指標です。
抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)
サイログロブリンは、甲状腺ホルモンの原料となるタンパク質です。抗サイログロブリン抗体は、このサイログロブリンを攻撃します。
橋本病の患者さんの約70%程度で陽性となり、抗TPO抗体を補完する形で測定します。
自己抗体検査の概要
抗体名 | 攻撃の対象 | 主な関連疾患 |
---|---|---|
抗TPO抗体 | 甲状腺ペルオキシダーゼ(酵素) | 橋本病、バセドウ病 |
抗サイログロブリン抗体 | サイログロブリン(タンパク質) | 橋本病、甲状腺がんの一部 |
これらの抗体が陽性の場合に考えられること
これらの抗体が陽性であるということは、体内に甲状腺を攻撃する免疫異常が存在することを示唆します。
たとえ現時点でTSHやFT4、FT3の数値が正常であっても、将来的に甲状腺機能が低下してくる可能性が高いと考えられます。
抗体が陽性で、かつ薄毛や倦怠感などの症状がある場合は、甲状腺機能の定期的なチェックが重要です。
ただし、抗体が陽性でも生涯にわたって甲状腺機能が正常なまま経過する人もいますので、陽性=即治療ではありません。あくまでも、体質的なリスクを把握するための指標と捉えます。
検査結果の総合的な解釈と薄毛へのアプローチ
甲状腺機能検査の結果が出たら、それぞれの数値を個別に評価するのではなく、全体を関連付けて解釈することが大切です。
そして、その結果を基に、薄毛に対してどのようなアプローチができるかを考えます。
各検査項目の関連性を理解する
TSH、FT4、FT3、そして自己抗体は、互いに密接に関連し合っています。
「脳からの指令(TSH)」と「甲状腺の生産能力(FT4)」、「実際の活性度(FT3)」、そして「免疫系の攻撃の有無(自己抗体)」という4つの側面から甲状腺の状態を立体的に捉えることで、根本的な原因に近づくことができます。
例えば、TSHが高くFT4が低い「原発性甲状腺機能低下症」であり、かつ自己抗体が陽性であれば、「橋本病による甲状腺機能低下が原因」と診断されます。
検査項目組み合わせによる解釈例
TSH | FT4 | 考えられる状態 |
---|---|---|
高値 | 低値 | 原発性甲状腺機能低下症 |
高値 | 正常 | 潜在性甲状腺機能低下症 |
低値 | 低値 | 中枢性甲状腺機能低下症 |
検査結果に基づいた専門医との相談の重要性
検査結果の解釈は専門的な知識を要します。自己判断で一喜一憂するのではなく、必ず医師、特に内分泌代謝科や甲状腺専門医に相談してください。
医師は、検査結果だけでなく、あなたの自覚症状、身体所見、既往歴などを総合的に判断して、診断を下します。
そして、治療が必要かどうか、どのような治療法が適切かを判断します。薄毛という症状を伝えることで、美容的な観点も踏まえたアドバイスを受けられる可能性があります。
甲状腺機能の改善が薄毛対策につながる可能性
もし、薄毛の原因が甲状腺機能低下症にあると診断された場合、適切な治療を行うことで症状の改善が期待できます。
甲状腺機能低下症の治療は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補充するという、比較的シンプルなものです。
ホルモンバランスが正常化し、全身の代謝が改善されると、毛母細胞の活動も再び活発になり、髪の毛の成長サイクルが正常に戻っていきます。
新しい髪が生え、毛質が改善するまでには数ヶ月単位の時間がかかりますが、原因に直接アプローチできるため、非常に効果的な薄毛対策となり得ます。
甲状腺機能検査に関するよくある質問
ここでは、甲状腺機能検査について多くの方が抱く疑問にお答えします。
- 検査はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
-
健康診断などで特に異常を指摘されていない場合は、頻繁に受ける必要はありません。
しかし、薄毛、強い倦怠感、むくみ、冷えなど、甲状腺機能低下を疑う症状がある場合は、一度検査を受けることをお勧めします。
橋本病などで自己抗体が陽性と診断された方や、潜在性甲状腺機能低下症と診断された方は、甲状腺機能が変化する可能性があるため、医師の指示に従い、半年に一度や一年に一度など、定期的に検査を受けることが大切です。
- 検査費用はどのくらいかかりますか?
-
検査費用は、医療機関や調べる項目数によって異なります。症状があり、医師が必要と判断して検査を行う場合は、健康保険が適用されます。
TSH、FT4、FT3の基本的な項目を調べる場合、自己負担3割で数千円程度が目安です。自己抗体検査などを追加すると、費用はもう少し上がります。
自由診療で検査を受ける場合は、全額自己負担となり、より高額になりますので、事前に医療機関に確認するとよいでしょう。
- 食事や生活習慣で数値を改善できますか?
-
橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患や、甲状腺自体の機能が著しく低下している場合、食事や生活習慣だけで数値を正常化することは困難であり、薬による治療が必要です。
しかし、甲状腺ホルモンの働きをサポートするという観点では、バランスの取れた食事や良質な睡眠、ストレス管理は非常に重要です。
特に、ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能に影響を与えることがあるため、昆布の多食やヨウ素含有のうがい薬の常用などは避けた方が賢明です。
また、ホルモン変換に必要な亜鉛やセレン、鉄分などを適切に摂取することも、体の健康維持に役立ちます。
- 検査結果が正常でも薄毛が改善しない場合は?
-
甲状腺機能検査の結果がすべて正常範囲内であった場合、薄毛の原因は甲状腺以外にあると考えられます。
男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)、栄養不足、ストレス、頭皮環境の悪化など、薄毛の原因は多岐にわたります。
その場合は、皮膚科や薄毛治療を専門とするクリニックに相談し、別の角度から原因を探求することが次のステップとなります。
一つの可能性を否定できたことも、原因究明に向けた重要な一歩と捉えましょう。
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