「コーヒーをやめたら抜け毛が減る」という噂を聞いて、毎日のコーヒー習慣を見直すべきか悩んでいませんか? コーヒーに含まれるカフェインは、私たちの体に様々な影響を与えます。
それは髪の毛にとっても例外ではありません。
この記事では、カフェインが髪に与えるメリットとデメリットを徹底的に解説します。コーヒーと髪の健康の本当の関係を知り、ご自身の抜け毛対策に役立ててください。
コーヒーをやめるべきか、それとも上手に付き合っていくべきか、その答えを見つけるヒントを提供します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
コーヒーと抜け毛の関係 本当のところは?
多くの方が日常的に楽しんでいるコーヒー。しかし、抜け毛との関係については様々な情報が飛び交っています。実際のところ、コーヒーは髪に良いのでしょうか、それとも悪いのでしょうか。
まずは、この疑問の核心に迫ります。
「コーヒーをやめたら抜け毛が減る」説の真偽
結論から言えば、「コーヒーをやめただけで抜け毛が劇的に減る」という直接的な医学的根拠は、現時点では明確に示されていません。
この説が広まった背景には、カフェインの持ついくつかの作用が関係していると考えられます。
例えば、カフェインの過剰摂取による睡眠の質の低下や、利尿作用による栄養素の排出などが、間接的に髪の健康に影響する可能性はあります。
しかし、それはあくまで「過剰摂取」した場合の話です。適量であれば、コーヒーが抜け毛の直接的な原因になる可能性は低いと考えます。
大切なのは、コーヒーを悪者と決めつけるのではなく、その特性を理解し、自分の体質や生活習慣に合った飲み方を見つけることです。
カフェインが体に与える主な作用
カフェインは、コーヒー豆、茶葉、カカオ豆などに含まれる天然の成分です。私たちがカフェインを摂取した際、体には主に以下のような作用が現れます。
- 覚醒作用(眠気を覚ます)
- 利尿作用(尿の量を増やす)
- 血管収縮作用(一部の血管を収縮させる)
- 胃酸分泌促進作用(胃の働きを活発にする)
これらの作用は、適度であれば集中力を高めたり、リフレッシュ効果をもたらしたりします。しかし、過剰になると不眠や頻尿、胃の不調などを引き起こすこともあります。
髪への影響を考える上でも、これらの基本的な作用を理解しておくことが重要です。
髪の成長サイクル(ヘアサイクル)の基本
私たちの髪の毛は、一定の周期で生え変わっています。これを「ヘアサイクル(毛周期)」と呼びます。ヘアサイクルは、大きく分けて「成長期」「退行期」「休止期」の3つの期間で構成されます。
健康な髪の毛の約85〜90%は「成長期」にあり、この期間(通常2〜6年)に髪は太く長く成長します。
その後、成長が止まる「退行期」(約2週間)、そして髪が抜け落ちる準備をする「休止期」(約3〜4ヶ月)へと移行し、やがて新しい髪に押し出される形で自然に抜け落ちます。
抜け毛が気になる状態とは、何らかの要因でこのヘアサイクルが乱れ、成長期が短くなったり、休止期にとどまる髪の割合が増えたりしている状態を指します。
カフェインの影響を考える際も、このヘアサイクルにどう作用するかが一つの焦点となります。
カフェインが髪に与える「メリット」
コーヒーが髪に悪い影響ばかり与えるわけではありません。いくつかの研究では、カフェインが髪の健康にプラスに働く可能性も示唆されています。
ここでは、カフェインが持つ「メリット」の側面を見ていきましょう。
血流促進の可能性
カフェインの覚醒作用は、中枢神経を刺激し、一時的に体の活動性を高めます。この過程で、血圧が上昇し、心拍数が増加することがあります。
これにより、全身の血流が活発になり、結果として頭皮への血流も一時的に増加する可能性が考えられます。
頭皮の血流が良くなれば、髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛根(毛母細胞)に届きやすくなります。
ただし、この血流促進効果は一時的なものである可能性が高く、持続的な育毛効果を期待できるかは、まだ研究が必要です。
DHT(ジヒドロテストステロン)抑制の可能性
男性型脱毛症(AGA)の主な原因物質とされるのが、DHT(ジヒドロテストステロン)です。DHTは、男性ホルモンのテストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素によって変換されて生成されます。
このDHTが毛乳頭細胞の受容体と結合すると、髪の成長期を短縮させ、抜け毛を促進します。
いくつかの研究(主に実験室レベル)では、カフェインがこの5αリダクターゼの働きを阻害したり、毛乳頭細胞に対するDHTの影響を弱めたりする可能性が示唆されています。
これが事実であれば、カフェインはAGAの進行を抑制するのに役立つかもしれません。
しかし、これはまだ確定的な情報ではなく、実際の人間(特に飲むコーヒー)においてどれほどの効果があるかは、さらなる検証が必要です。
抗酸化作用による頭皮環境サポート
コーヒーには、カフェインだけでなく「ポリフェノール(クロロゲン酸など)」も豊富に含まれています。ポリフェノールには強力な「抗酸化作用」があります。
抗酸化作用とは、体内で発生する「活性酸素」を除去する働きのことを指します。
活性酸素は、紫外線、ストレス、喫煙、不規則な生活などで過剰に発生し、細胞を酸化させて(錆びさせて)老化を促進します。
頭皮も例外ではなく、活性酸素によって毛母細胞の働きが低下したり、頭皮環境が悪化したりすることが、抜け毛や薄毛の一因となります。
コーヒーからポリフェノールを摂取することで、この活性酸素によるダメージから頭皮や毛母細胞を守り、健康な頭皮環境を維持するサポートが期待できます。
コーヒーに含まれるポリフェノール
コーヒーに含まれる主なポリフェノールは「クロロゲン酸」です。
クロロゲン酸は、抗酸化作用のほか、脂肪の蓄積を抑える働きや、血糖値の上昇を緩やかにする働きなども報告されており、健康維持に役立つ成分として注目されています。
髪の健康は体全体の健康と密接に関連しているため、こうした副次的な効果も間接的にプラスとなると考えられます。
カフェインが髪に与える「デメリット」
一方で、カフェインの摂取、特に「過剰摂取」は、髪の健康にとってマイナスに働く可能性も秘めています。メリットだけでなく、デメリットもしっかりと理解しておくことが大切です。
睡眠の質の低下
カフェインの最もよく知られた作用が「覚醒作用」です。これは、脳内で眠気を誘う物質(アデノシン)の働きをブロックすることで起こります。
適量であれば集中力を高めますが、過剰に摂取したり、就寝前に摂取したりすると、寝つきが悪くなる(入眠障害)や、夜中に目が覚める(中途覚醒)など、睡眠の質を著しく低下させます。
髪の毛は、私たちが眠っている間に分泌される「成長ホルモン」によって成長・修復されます。特に、入眠後の深いノンレム睡眠時に成長ホルモンの分泌はピークを迎えます。
カフェインによって睡眠が妨げられると、この成長ホルモンの分泌が不足し、髪の健やかな成長が阻害され、抜け毛や髪質の低下につながる可能性があります。
栄養素排出の懸念(利尿作用)
カフェインには「利尿作用」があり、尿の量を増やします。
これにより体内の余分な水分を排出できますが、同時に、髪の成長に必要な水溶性のビタミン(ビタミンB群など)やミネラル(特に亜鉛)も、尿と一緒に体外へ排出されやすくなる懸念があります。
特に「亜鉛」は、髪の主成分であるケラチンというタンパク質を合成する上で非常に重要なミネラルです。亜鉛が不足すると、新しい髪が作られにくくなったり、髪が細くなったりする可能性があります。
コーヒーを多く飲む人は、意識してこれらの栄養素を補うか、コーヒーとは別に十分な水分補給を心がけることが重要です。
頭皮血流の阻害(血管収縮)
カフェインは、中枢神経を興奮させる一方で、末梢の血管(手足や頭皮など)を収縮させる作用も持っています。
メリットの項目で「血流促進の可能性」を挙げましたが、これは主に脳などの中枢における一時的な作用であり、頭皮のような末梢部分では、逆に血管が収縮して血流が悪くなる可能性も指摘されています。
頭皮の血流が悪くなると、毛根に十分な栄養や酸素が届かなくなり、髪の成長が妨げられ、抜け毛の原因となり得ます。
どちらの作用が強く出るかは、摂取量や個人差にもよると考えられます。
ストレスホルモン(コルチゾール)の増加
カフェインは、副腎を刺激し、「コルチゾール」というホルモンの分泌を促します。コルチゾールは、ストレスに対抗するために分泌されるため、「ストレスホルモン」とも呼ばれます。
適度なコルチゾールは体を活動的に保つために必要ですが、過剰に分泌され続けると、体に様々な悪影響を及ぼします。
過剰なコルチゾールは、血管を収縮させて血流を悪化させたり、ホルモンバランスを乱したりすることで、頭皮環境にマイナスの影響を与え、抜け毛を誘発する可能性があります。
特に、すでにストレスが多い生活を送っている人がカフェインを過剰摂取すると、このリスクを高めることになりかねません。
メリットとデメリットの比較
これまで見てきたように、カフェインは髪に対してプラスの側面とマイナスの側面を併せ持っています。
どちらの影響が強く出るかは、個人の体質、そして何よりも「摂取量」と「摂取する時間帯」に左右されます。
髪への影響まとめ
カフェインが髪に与える可能性のあるメリットとデメリットを整理します。
| 側面 | 髪への影響 (可能性) | 主な理由 |
|---|---|---|
| メリット | 育毛サポート (AGA抑制) | DHT抑制作用 (研究レベル) |
| メリット | 頭皮環境のサポート | 抗酸化作用 (ポリフェノール) |
| デメリット | 髪の成長阻害 | 睡眠の質の低下 (覚醒作用) |
| デメリット | 栄養不足 (細毛・抜け毛) | 栄養素の排出 (利尿作用) |
| デメリット | 栄養供給の阻害 | 頭皮の血流悪化 (血管収縮) |
影響は「量」と「時間」が鍵
この表からもわかるように、デメリットの多くは「過剰摂取」によって引き起こされます。
適量(1日2〜3杯程度)を守り、睡眠に影響を与えない時間帯(例: 午後3時以降は控える)に飲むのであれば、デメリットを最小限に抑え、むしろポリフェノールなどのメリットを享受できる可能性もあります。
「コーヒーをやめたら抜け毛が減る」と感じる人がいるとすれば、それは恐らく、それまでカフェインを過剰摂取しており、やめたことで睡眠の質が改善したり、栄養素の排出が正常化したりした結果、間接的に髪の健康が改善したと考えられます。
カフェイン感受性の個人差
カフェインを分解する能力(カフェイン感受性)には、大きな個人差があります。遺伝的にカフェインの分解が速い人もいれば、遅い人もいます。
分解が遅い人は、少ない量でも不眠や動悸などの影響が出やすくなります。
「自分はコーヒーを飲んでも平気」という人も、体質的に平気な場合と、単に刺激に慣れてしまっている(慢性的な睡眠不足に気づいていない)場合があります。
ご自身の体調(寝つき、日中の眠気、胃腸の調子など)を注意深く観察し、自分にとっての「適量」を見極めることが大切です。
カフェイン摂取の適量と注意点
では、髪の健康を考えた場合、コーヒー(カフェイン)は1日にどれくらいまでなら飲んでも良いのでしょうか。具体的な目安と注意点を確認します。
1日の摂取目安量
日本の厚生労働省は、カフェインの1日摂取許容量について明確な基準を設定していません。しかし、海外の多くの機関が目安を示しています。
例えば、欧州食品安全機関(EFSA)やカナダ保健省は、健康な成人であれば、1日あたり400mg(妊婦や授乳中の方は200mg〜300mg)までのカフェイン摂取は、健康リスクを増加させないとしています。
1日400mgをコーヒーで換算すると、ドリップコーヒー(1杯150mlあたり約90mg)で約4杯強に相当します。
ただし、これはあくまで目安であり、前述の通り個人差が大きいため、体調を見ながら調整することが重要です。
過剰摂取のサイン
もしコーヒーを飲んだ後や、日常的に以下のような症状を感じる場合は、カフェインの摂取量がご自身の許容量を超えている可能性があります。
- 寝つきが悪い、夜中に目が覚める
- 日中に理由のない不安感や焦燥感がある
- 動悸やめまいがする
- 胃が痛む、または吐き気がする
- トイレが異常に近い(頻尿)
これらのサインに心当たりがある方は、コーヒーの量を減らしたり、飲む時間帯を見直したりすることを推奨します。
コーヒーを飲むのに適した時間帯
カフェインの覚醒作用は、摂取してから30分〜1時間ほどでピークに達し、その効果が半分になるまで(半減期)は、健康な成人で約4時間かかると言われています(個人差あり)。
夜の睡眠への影響を避けるためには、ご自身の就寝時間から逆算して、少なくとも就寝の6時間前からはカフェインの摂取を控えるのが賢明です。
例えば、夜12時に寝る人であれば、夕方6時以降はコーヒーを飲まない、といったルールを決めておくと良いでしょう。
主な飲料のカフェイン含有量
カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶、緑茶、エナジードリンクなど多くの飲料に含まれています。1日の総摂取量を管理するために、他の飲料の含有量も把握しておきましょう。
| 飲料の種類 | 分量目安 | カフェイン含有量 (目安) |
|---|---|---|
| ドリップコーヒー | 150ml (カップ1杯) | 約90mg |
| インスタントコーヒー | 150ml (カップ1杯) | 約65mg |
| 紅茶 | 150ml (カップ1杯) | 約30mg |
| 緑茶 (せん茶) | 150ml (カップ1S杯) | 約30mg |
| エナジードリンク | 100mlあたり | 30〜50mg (製品による) |
※エナジードリンクは1本(250ml〜500ml)あたりの総量が多くなりがちなので特に注意が必要です。
コーヒーの「飲み方」が頭皮環境に影響する
抜け毛を気にする場合、コーヒーに含まれるカフェインだけに注目しがちですが、実は「どう飲むか」も頭皮環境に大きく影響します。
コーヒーそのものよりも、一緒に入れるものが問題となるケースも少なくありません。
砂糖やミルクの過剰摂取
ブラックコーヒーが苦手で、砂糖やミルク(コーヒーフレッシュ)をたっぷり入れて飲む方も多いでしょう。しかし、糖分や脂質の過剰摂取は、髪の健康にとってマイナスです。
糖分を過剰に摂取すると、体内で「糖化」という現象が起こり、老化を促進する物質(AGEs)が生成されます。これは頭皮の弾力を失わせ、血流を悪化させる一因となります。
また、糖分や脂質は皮脂の分泌を過剰にし、頭皮環境を悪化させ、脂漏性脱毛症などの原因になることもあります。
コーヒーを飲む際は、できるだけブラックで飲むか、砂糖やミルクの量は控えめにすることを心がけましょう。
髪の栄養吸収とコーヒー
髪の健康には、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど様々な栄養素が必要です。しかし、コーヒーに含まれる成分が、これらの栄養素の吸収を妨げてしまう場合があります。
特に注意したいのが、カフェインと「タンニン」(ポリフェノールの一種)です。これらが特定の栄養素の吸収にどう影響するかを知っておきましょう。
| 栄養素 | 髪への役割 | コーヒーの影響 (可能性) |
|---|---|---|
| 亜鉛 | ケラチン(髪の主成分)の合成 | カフェインの利尿作用で排出されやすい |
| 鉄分 | 頭皮への酸素運搬 | タンニンが吸収を阻害する (特に食事中) |
| ビタミンB群 | 頭皮の代謝、血行促進 | カフェインの利尿作用で排出されやすい |
特に鉄分は、コーヒーに含まれるタンニンと結合しやすく、吸収率が低下します。
貧血気味(鉄分不足)は抜け毛の原因にもなるため、鉄分を多く含む食事(赤身肉やほうれん草など)を摂る際は、食中や食後すぐにコーヒーを飲むのは避け、1時間ほど時間を空けるなどの工夫が有効です。
代替飲料の活用(デカフェ・ハーブティー)
コーヒーの風味や香りが好きで、リラックスのために飲んでいるという方も多いでしょう。もしカフェインの摂取量を減らしたいのであれば、代替飲料を活用するのも一つの方法です。
「デカフェ(カフェインレス)コーヒー」は、特殊な製法でカフェインを90%以上除去したコーヒーです。風味は通常のコーヒーに近いものが多く、カフェインによる睡眠や利尿作用への影響を気にせず楽しめます。
また、ハーブティー(カモミールやペパーミントなど)や、ルイボスティー、麦茶などはカフェインを含まないため、夜のリラックスタイムにも適しています。
カフェインを控える工夫
いきなりコーヒーをやめるのが難しい場合でも、少しの工夫でカフェイン摂取量をコントロールすることは可能です。
| 工夫の方法 | 具体例 | 期待できること |
|---|---|---|
| 飲む時間を制限する | 午後3時以降は飲まない | 睡眠の質への影響を軽減 |
| サイズや濃さを変える | LサイズをMサイズに。お湯で薄める。 | 1回あたりの摂取量を削減 |
| 代替飲料と併用する | 3杯中1杯をデカフェや麦茶に変える | 1日の総摂取量を無理なく削減 |
コーヒー以外で髪に良いとされる飲み物
カフェインを気にするなら、積極的に髪に良いとされる飲み物を選ぶのも良いでしょう。
- 水(白湯)
- 麦茶
- ルイボスティー
- 豆乳
特に水(または白湯)は、体内の循環を良くし、老廃物の排出を促す基本の飲み物です。豆乳には髪の材料となるタンパク質や、女性ホルモンに似た働きのイソフラボンが含まれます。
抜け毛が気になる場合の根本的な対策
コーヒーの飲み方を見直すことは、抜け毛対策の一環として有効ですが、それだけで抜け毛の問題がすべて解決するわけではありません。
もし抜け毛が深刻に気になる場合は、より根本的な生活習慣の見直しが必要です。
バランスの取れた食生活
髪は「食べたもの」から作られます。
髪の主成分である「タンパク質」(肉、魚、卵、大豆製品)、タンパク質の合成を助ける「亜鉛」(牡蠣、レバー、赤身肉)、頭皮の血行を良くする「ビタミンE」(ナッツ類、アボカド)、頭皮の新陳代謝を促す「ビタミンB群」(豚肉、マグロ、納豆)などをバランス良く摂取することが、何よりも大切です。
質の高い睡眠の確保
前述の通り、髪は睡眠中に分泌される「成長ホルモン」によって成長します。
カフェインの摂取を控えることはもちろん、就寝前のスマートフォン操作をやめる、寝室の環境(温度、湿度、光)を整えるなど、質の高い睡眠を確保するための努力が重要です。
毎日決まった時間に寝て、起きる習慣をつけることも効果的です。
正しいヘアケアの実践
頭皮環境を清潔に保つことは、抜け毛予防の基本です。しかし、洗いすぎや間違った洗い方は逆効果になります。
シャンプーは、洗浄力が強すぎるもの(高級アルコール系)を避け、頭皮に優しいアミノ酸系やベタイン系のものを選ぶことを推奨します。
洗う際は、爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないよう十分すぎるほど洗い流しましょう。
洗髪後は、濡れたまま放置せず、速やかにドライヤーで根本から乾かすことが雑菌の繁殖を防ぎます。
すぐに始められる頭皮ケア
- シャンプー前のブラッシングで汚れを浮かす
- ぬるま湯(38度程度)で予洗いする
- シャンプーはしっかり泡立ててから髪につける
- 頭皮マッサージを習慣にする
専門家への相談
セルフケアを続けても抜け毛が減らない場合や、特定の場所(生え際、頭頂部など)から急激に薄くなってきた場合は、AGA(男性型脱毛症)が進行している可能性があります。
AGAは進行性のため、放置しておくと薄毛は進んでしまいます。
AGAは、コーヒーの飲み方やセルフケアだけで改善することは困難です。
抜け毛の原因がAGAかどうかを特定するためにも、一度、皮膚科や薄毛治療を専門とするクリニック、または育毛サロンの毛髪診断士などに相談することを強く推奨します。
抜け毛対策で見直すべき生活習慣
抜け毛対策として取り組むべき項目には優先順位があります。コーヒーの飲み方を見直す前に、確認すべきことが多くあります。
| 優先度 | 見直すべき項目 | 髪への影響 |
|---|---|---|
| 高 | 睡眠 | 成長ホルモンの分泌(髪の成長・修復) |
| 高 | 食事 | 髪の材料(タンパク質・亜鉛・ビタミン)の供給 |
| 中 | ストレス管理 | 血流悪化やホルモンバランスの乱れを防ぐ |
| 中 | ヘアケア | 頭皮環境の悪化(毛穴の詰まり・炎症)を防ぐ |
| 低 | コーヒーの飲み方 | 上記の要因に比べ、髪への直接的な影響は限定的 |
このように、抜け毛が気になる場合、まずは食事や睡眠といった土台となる生活習慣を見直すことが最も重要です。
よくある質問
- コーヒーをやめたら、どれくらいで抜け毛は減りますか?
-
コーヒーをやめることと、抜け毛が減ることの直接的な因果関係は医学的に証明されていません。そのため、「やめたら何日で効果が出る」と断言することは不可能です。
もしコーヒーの過剰摂取が原因で睡眠不足や栄養不足が起きていた場合、コーヒーをやめる(または適量に減らす)ことで体調が改善し、その結果として数ヶ月単位で髪の状態が良くなる可能性はあります。
しかし、抜け毛の原因が他(AGA、ストレス、食生活など)にある場合、コーヒーをやめても抜け毛は減らない可能性が高いです。
- デカフェコーヒーなら髪に影響はありませんか?
-
デカフェコーヒーは、カフェインがほとんど含まれていないため、カフェインによるデメリット(睡眠妨害、利尿作用による栄養素排出、血管収縮など)は避けることができます。
その点では、通常のコーヒーよりも髪への影響は少ないと言えます。
ただし、コーヒーに含まれるタンニン(鉄分の吸収を阻害)はデカフェにも残っている場合があります。
また、デカフェであっても砂糖やミルクを大量に入れて飲めば、糖分・脂質の過剰摂取となり、頭皮環境には良くありません。飲み方には引き続き注意が必要です。
- コーヒーの代わりにエナジードリンクを飲むのはどうですか?
-
推奨できません。多くのエナジードリンクには、コーヒー以上のカフェインが含まれているだけでなく、大量の糖分(角砂糖10個分以上になることも)が含まれています。
カフェインと糖分の同時過剰摂取は、睡眠の質の低下、栄養不足、皮脂の過剰分泌、糖化による頭皮の老化など、髪にとって非常に多くのデメリットをもたらす可能性があります。
抜け毛を気にするのであれば、エナジードリンクの常用は避けるべきです。
- 抜け毛予防に効果的なコーヒーの飲み方はありますか?
-
コーヒーを「抜け毛予防」のために積極的に飲むことは推奨しませんが、楽しむ上での「髪への悪影響を減らす飲み方」はあります。
まず、1日の摂取量を守ること(健康な成人で1日400mg目安、コーヒー2〜3杯程度)。次に、睡眠への影響を避けるため、就寝の6時間前(例: 午後3時〜4時)以降は飲まないこと。
また、食事からの栄養吸収(特に鉄分)を妨げないよう、食事中や食後は避け、食間(食事から1〜2時間後)に飲むことを推奨します。
そして、砂糖やミルクは極力控えるか、ブラックで飲むことが理想です。
Reference
SZENDZIELORZ, Ewelina; SPIEWAK, Radoslaw. Caffeine as an active molecule in cosmetic products for hair loss: its mechanisms of action in the context of hair physiology and pathology. Molecules, 2025, 30.1: 167.
FISCHER, T. W., et al. Differential effects of caffeine on hair shaft elongation, matrix and outer root sheath keratinocyte proliferation, and transforming growth factor‐β2/insulin‐like growth factor‐1‐mediated regulation of the hair cycle in male and female human hair follicles in vitro. British Journal of Dermatology, 2014, 171.5: 1031-1043.
CHEN, Dongxiao, et al. Anti‐hair loss effect of a shampoo containing caffeine and adenosine. Journal of Cosmetic Dermatology, 2024, 23.9: 2927-2933.
MUANGSANGUAN, Anurak, et al. Hair growth promotion and anti-hair loss effects of by-products arabica coffee pulp extracts using supercritical fluid extraction. Foods, 2023, 12.22: 4116.
FISCHER, Tobias W.; HIPLER, U. C.; ELSNER, P. Effect of caffeine and testosterone on the proliferation of human hair follicles in vitro. International journal of dermatology, 2007, 46.1: 27-35.
SZENDZIELORZ, Ewelina; SPIEWAK, Radoslaw. Caffeine as an active ingredient in cosmetic preparations against hair loss: A systematic review of available clinical evidence. In: Healthcare. MDPI, 2025. p. 395.
VÖLKER, Jörn Michael, et al. Caffeine and its pharmacological benefits in the management of androgenetic alopecia: a review. Skin pharmacology and physiology, 2020, 33.3: 153-169.
NATARELLI, Nicole; GAHOONIA, Nimrit; SIVAMANI, Raja K. Integrative and mechanistic approach to the hair growth cycle and hair loss. Journal of clinical medicine, 2023, 12.3: 893.
LY, Nathalie, et al. 44578 Caffeine supplementation to improve hair growth: a systematic review. Journal of the American Academy of Dermatology, 2023, 89.3: AB131.

