ダーマローラーの育毛効果は本当?「効果なし」になる理由と、AGAへの仕組みを解説

ダーマローラーの育毛効果は本当?「効果なし」になる理由と、AGAへの仕組みを解説

ダーマローラーを使った育毛法に注目が集まっています。

「本当に効果があるのか」「育毛剤と併用すると良いらしいが、どうなのだろう」と期待する声がある一方で、「試してみたが効果なしだった」という疑問や不安の声も少なくありません。

特にAGA(男性型脱毛症)に悩む方にとって、その効果の真偽は切実な問題です。

この記事では、ダーマローラーが育毛にどのように作用するのか、その科学的な背景と、なぜ「効果なし」と感じる場合があるのか、その理由を深く掘り下げます。

AGAへの関わりも含め、安全に活用するための知識を詳しく解説します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

ダーマローラーとは?育毛に使われる理由

最近、育毛ケアの一環として「ダーマローラー」という器具が注目されています。これは本来、美容医療の分野で肌の悩み(ニキビ跡、しわ、たるみなど)の改善に用いられてきたものです。

では、なぜこの器具が育毛の分野で使われるようになったのでしょうか。まずはダーマローラーの基本的な特徴と、育毛に注目される背景について解説します。

マイクロニードリングの基本

ダーマローラーは、表面に無数の微細な針(マイクロニードル)が取り付けられたローラー状の器具です。これを肌の上で転がすことで、表皮から真皮にかけてごく小さな穴を意図的に開けます。

この技術を「マイクロニードリング」と呼びます。

肌は、このように微細な傷を負うと、その傷を修復しようとする自然な力(創傷治癒)が働きます。

この修復の過程で、肌の細胞分裂が活発になり、コラーゲンやエラスチンといった肌の弾力を保つ成分の生成が促されます。

美容分野では、この働きを利用して肌質を改善し、若々しい状態へ導くことを目指します。

なぜ髪の毛に注目されるのか

このマイクロニードリングの仕組みが、頭皮、ひいては髪の毛の成長にも良い影響を与えるのではないか、と考えられるようになりました。頭皮も肌の一部であり、同じように創傷治癒の力が働くからです。

頭皮に微細な刺激を与えることで、単に肌を修復するだけでなく、毛の成長に関わる細胞(毛乳頭細胞や毛母細胞)にも何らかのシグナルが送られることが期待されます。

具体的には、細胞の活動を活発にする「成長因子(グロースファクター)」の分泌が促される可能性が研究で示唆されています。これが、ダーマローラーが育毛分野で注目される最大の理由です。

医療用と家庭用の違い

ダーマローラーには、医療機関で使用する「医療用」と、市販されている「家庭用(セルフケア用)」が存在します。両者の最も大きな違いは、針の長さにあります。

この違いが、使用目的や安全性に直結します。

医療用と家庭用ダーマローラーの比較

項目家庭用医療用
針の長さ(目安)0.2mm〜0.5mm程度0.5mm〜2.0mm以上
主な目的美容成分の浸透補助、角質ケア真皮層への刺激、本格的な肌再生
施術者本人医師または看護師

家庭用は、安全性を考慮して針が短く、主に表皮(肌の浅い部分)へのアプローチを目的としています。育毛においては、後述する「育毛剤の浸透補助」が主な役割と考えられます。

一方、医療用は針が長く、真皮層まで到達し、より積極的な創傷治癒を促すことが可能です。

育毛目的でクリニックが用いる場合、家庭用よりも強い刺激を与えることができますが、その分、専門的な知識と衛生管理が必要です。

ダーマローラーが育毛に「効果あり」とされる仕組み

ダーマローラーが育毛に「効果あり」とされる背景には、主に3つの仕組みが関係していると考えられています。

これらは、ダーマローラーによる微細な刺激が頭皮に引き起こす反応に基づいています。それぞれの仕組みがどのように毛髪の成長をサポートするのかを詳しく見ていきましょう。

創傷治癒による成長因子の活性化

ダーマローラーで頭皮に微細な傷をつけると、体は「傷ができた」と認識し、修復作業を開始します(創傷治癒)。この修復過程において、血小板や他の細胞から様々な「成長因子」が放出されます。

成長因子は、特定の細胞の増殖や分化を促すタンパク質の総称です。

育毛においては、特に毛母細胞(髪の毛を作る細胞)や毛乳頭細胞(髪の毛の成長をコントロールする細胞)を活性化させる成長因子が重要です。

マイクロニードリングによってこれらの成長因子が局所的に増えることで、休止期にある毛包が成長期へと誘導されたり、成長期の毛髪がより太く長く成長したりする可能性が期待されます。

一部の研究では、マイクロニードリングが毛包の幹細胞を活性化させる可能性も指摘されています。

血流促進が頭皮環境を整える

ダーマローラーの物理的な刺激は、頭皮の毛細血管にも作用します。微細な針による刺激が、血管の拡張を促し、局所的な血流を増加させると考えられています。

髪の毛の成長には、酸素と栄養素が不可欠です。

これらは血液によって毛乳頭細胞や毛母細胞へと運ばれます。AGA(男性型脱毛症)の頭皮では血流が悪化しているケースも多く、栄養不足が薄毛の進行を早める一因ともいわれます。

ダーマローラーの使用によって頭皮の血流が改善すれば、毛根部へ十分な栄養が供給されやすくなります。これにより、頭皮環境が健やかに保たれ、髪の毛が育ちやすい土壌を整えることにつながります。

育毛剤の浸透を高める(ドラッグデリバリー)

ダーマローラーが育毛分野で注目される非常に大きな理由の一つが、この「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」としての役割です。

通常、頭皮には「角質層」というバリア機能が存在します。これは外部の異物や刺激から頭皮を守る大切な役割を果たしていますが、同時に育毛剤などに含まれる有効成分の浸透も妨げてしまいます。

特に分子の大きな成分は、角質層を通過しにくいという課題がありました。

ダーマローラーは、この角質層に物理的に微細な穴(通り道)を作ります。その結果、穴が開いている間、育毛剤の有効成分が角質層を通過し、より深く、効率的に毛根部へ到達しやすくなります。

ミノキシジルなどの育毛成分と併用することで、その効果を最大限に引き出すサポート役として期待されています。

ダーマローラーによる頭皮への主な作用

作用概要育毛への期待
創傷治癒微細な傷の修復成長因子の放出、毛包の活性化
血流促進物理的刺激による血管拡張毛根部への栄養供給の改善
浸透補助角質層への微細な穴あけ育毛剤(ミノキシジル等)の吸収率向上

ダーマローラーが「効果なし」と感じる主な理由

ダーマローラーの育毛効果に期待が高まる一方で、「試してみたが、まったく効果がなかった」という声も多く聞かれます。

期待していた結果が得られない背景には、いくつかの明確な理由が存在します。なぜ「効果なし」という結果に終わってしまうのか、その主な原因を探ります。

期待する効果と現実のギャップ

「効果なし」と感じる最大の理由の一つに、ダーマローラーに対する過度な期待があります。ダーマローラーは、あくまでも「育毛の補助」や「頭皮環境の改善」を目的とする器具です。

AGA治療薬(フィナステリドやデュタステリドの内服薬)のように、AGAの根本原因である男性ホルモン(DHT)の生成を直接抑制するものではありません。

また、ミノキシジル外用薬のように、発毛を強力に促進する医薬品そのものでもありません。

「これさえ使えば髪が生える」という万能薬のようなイメージで始めてしまうと、現実の緩やかな変化や、主に「育毛剤の浸透補助」という役割とのギャップに失望し、「効果なし」と結論づけてしまいがちです。

AGAの進行度合いとダーマローラーの限界

ダーマローラーの刺激が毛包に届くといっても、その毛包がすでに対応しきれないほど弱っている場合、効果は限定的です。

AGAが長期間進行し、毛包が極度に小さく(ミニチュア化)なってしまったり、毛周期が完全に休止してしまったりしている状態(いわゆる「産毛も生えてこない状態」)では、ダーマローラーで刺激を与えたとしても、再び太く長い髪の毛を育てるのは非常に困難です。

ダーマローラーが効果を発揮しやすいのは、まだ毛包に活力が残っている、比較的初期の段階や、育毛剤の効果をもう一押ししたい、という状況と考えられます。

「効果なし」と感じる場合、AGAの進行度がダーマローラーの対応範囲を超えている可能性があります。

間違った使い方や頻度の問題

ダーマローラーは、正しく使わなければ効果が出ないどころか、逆に頭皮環境を悪化させる危険性があります。自己流の誤った使用法が「効果なし」の原因となっているケースは少なくありません。

例えば、以下のような使い方は問題です。

  • 力の入れすぎ(出血するほど強く押し当てる)
  • 使用頻度が多すぎる(毎日使用するなど)
  • 不衛生な状態での使用(消毒の怠り)

特に使用頻度には注意が必要です。頭皮が創傷治癒を完了し、回復するための「休息期間」を与えなければなりません。

頻繁すぎる使用は、頭皮が常に炎症を起こしている状態を作り出し、かえって毛根にダメージを与え、抜け毛を増やすことにもなりかねません。

継続期間が不足している可能性

育毛ケア全般にいえることですが、ダーマローラーも短期間で劇的な変化をもたらすものではありません。

髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、新しい髪が生えてから成長し、抜け落ちるまでには数年の時間がかかります。

ダーマローラーによる刺激や育毛剤の浸透補助によって毛包が活性化し始めたとしても、その結果が目に見える「発毛」や「毛髪の太さ」として現れるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続的なケアが必要です。

1〜2ヶ月試しただけで「効果なし」と判断するのは早計かもしれません。効果の実感には個人差が大きく、根気強い継続が求められます。

「効果なし」と感じる主な要因

要因詳細対策・見直し
過度な期待ダーマローラー単体での発毛を期待しすぎている。あくまで「補助」と理解し、他の治療と併用する。
AGAの進行毛包の機能がすでに大きく低下している。専門クリニックで現状の進行度を診断してもらう。
使用方法の誤り頻度、強さ、衛生管理が不適切。正しい使用方法(特に頻度と消毒)を再確認する。
継続期間の不足1〜2ヶ月程度で効果を判断している。最低3〜6ヶ月は継続して様子を見る。

AGA(男性型脱毛症)とダーマローラーの関係性

ダーマローラーを育毛目的で使用する人の多くは、AGA(男性型脱毛症)に悩んでいます。では、ダーマローラーはAGAに対してどのような役割を果たし、どのように付き合っていくべきなのでしょうか。

AGAの根本原因と、ダーマローラーの立ち位置について解説します。

AGAの根本原因へのアプローチではない

まず理解しておくべき最も重要な点は、ダーマローラーはAGAの根本原因を解決するものではない、ということです。

AGAは、男性ホルモン(テストステロン)が「5αリダクターゼ」という酵素と結びつくことで、より強力な「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換されることが引き金となります。

このDHTが毛乳頭細胞にある受容体と結合すると、毛母細胞の増殖が抑制され、髪の毛の成長期が短縮されます。その結果、髪の毛が太く長く成長する前に抜け落ち、徐々に薄毛が進行します。

ダーマローラーは、この「DHTの生成」や「受容体との結合」といった、AGAを引き起こす根本的な流れを止める働きはありません。

そのため、ダーマローラーだけを使用していても、AGAの進行を抑制することは困難です。

ダーマローラーは補助的な役割

ダーマローラーの役割は、あくまで「補助」です。AGA治療においては、すでに弱りつつある毛包を刺激し、頭皮環境を整え、そして何よりも「育毛剤の浸透を助ける」というサポート役として価値があります。

AGA治療の基本は、「DHTの働きを抑えること(守り)」と「毛母細胞を活性化させること(攻め)」の二本柱です。

ダーマローラーは、このうち「攻め」の部分、特に育毛剤(ミノキシジルなど)の効果を高めるためのブースターとして機能します。

AGA治療薬(ミノキシジルなど)との併用

ダーマローラーの育毛効果に関する研究の多くは、単体での使用ではなく、ミノキシジル外用薬と併用した際の結果を報告しています。

ミノキシジルには血管を拡張させ血流を改善し、毛母細胞の増殖を促す働きがありますが、先述の通り、頭皮のバリア機能によって浸透が妨げられることが課題でした。

ダーマローラーで微細な穴を開けた直後にミノキシジルを塗布することで、より多くの有効成分を毛根に届けることが可能になります。

「ダーマローラーを試したが効果がなかった」という人の中には、ダーマローラー単体で使用していたケースも多いのではないでしょうか。

AGAに立ち向かうためには、ミノキシジル外用薬や、必要に応じてフィナステリドなどの内服薬(医師の処方が必要)と組み合わせることが、現実的な戦略となります。

AGA治療におけるダーマローラーの立ち位置

治療アプローチ主な手段ダーマローラーの役割
AGAの進行抑制(守り)フィナステリド・デュタステリド内服薬直接的な役割なし
発毛促進(攻め)ミノキシジル外用薬ミノキシジルの浸透補助(ブースター)
頭皮環境改善生活習慣、ヘアケア血流促進、成長因子の活性化(補助)

ダーマローラーの正しい使い方と注意点

ダーマローラーは、頭皮に直接針を刺す器具であるため、その使い方には細心の注意が必要です。効果を高め、トラブルを避けるために、正しい使用方法と衛生管理を徹底することが重要です。

特に家庭用(セルフケア用)を使用する場合は、すべて自己責任となるため、知識を持って臨みましょう。

適切な針の長さの選び方

家庭用ダーマローラーを選ぶ際、最も重要なのが「針の長さ」です。育毛目的でのセルフケアでは、安全性を最優先に考える必要があります。

一般的に、家庭用として推奨される針の長さは0.2mmから0.5mm程度です。0.2mm〜0.3mmのものは、主に育毛剤の浸透補助を目的とします。

痛みはほとんど感じません。0.5mmになると、表皮を越えて真皮層にわずかに届く可能性があり、浸透補助に加えて、成長因子を促す軽い刺激も期待できますが、少しチクチクとした痛みを感じることがあります。

これより長い針(1.0mm以上)は、出血のリスクが高く、衛生管理が不十分だと深刻な感染症を引き起こす可能性があるため、セルフケアでの使用は推奨されません。

まずは0.25mmなどの短い針から始め、頭皮の状態を見ながら慎重に判断することが賢明です。

使用頻度の目安(やりすぎは逆効果)

「早く効果を出したい」という焦りから、毎日ダーマローラーを使おうとする人がいますが、これは絶対に避けるべきです。頭皮には、微細な傷を修復し、回復するための休息期間が必要です。

使用頻度は、使用する針の長さによって異なります。

  • 0.2mm〜0.3mmの場合: 2〜3日に1回程度
  • 0.5mmの場合: 1〜2週間に1回程度

0.5mmの針を使用した場合、頭皮が完全に修復されるまでには数日から1週間以上かかるといわれます。

修復が終わらないうちに次の刺激を与えると、頭皮は常に炎症を起こした状態となり、かえって毛根にダメージを与え、抜け毛や頭皮トラブルの原因となります。

「やりすぎ」は「効果なし」どころか、マイナスの結果を招くことを認識しましょう。

衛生管理の重要性(消毒・保管方法)

ダーマローラーの使用において、衛生管理は最も重要です。これを怠ると、頭皮に雑菌が入り込み、毛嚢炎(もうのうえん)や深刻な感染症を引き起こすリスクがあります。

使用前と使用後は、必ずローラーの針部分を消毒用アルコール(エタノール)に浸すか、スプレーするなどして徹底的に消毒してください。

また、ローラーを保管する際は、専用のケースに入れ、針先が何かに触れないよう清潔に保ちます。

ダーマローラーは消耗品です。針が曲がったり、切れ味が悪くなったりした状態で使い続けると、頭皮を不必要に傷つける原因になります。

使用回数の目安(製品によりますが、数回〜十数回程度)を守り、早めに新しいものと交換しましょう。また、家族であっても他人との共用は絶対にしないでください。

使用を避けるべき頭皮の状態

頭皮が健康な状態でなければ、ダーマローラーを使用すべきではありません。以下のような状態の場合は、使用を中止し、頭皮の状態が改善するのを待つか、皮膚科医に相談してください。

ダーマローラーの使用を控えるべき頭皮状態

状態理由
炎症・かゆみ症状を悪化させる可能性が高い。
湿疹・アトピー皮膚のバリア機能が低下しており、刺激が強すぎる。
傷・ニキビ傷口やニキビから雑菌が入り、感染のリスクが高まる。
日焼け直後頭皮がすでに炎症を起こしているため。

ダーマローラー使用時のリスクと副作用

ダーマローラーは、その仕組み上、いくつかのリスクや副作用が伴います。これらを正しく理解し、万が一トラブルが起きた際に冷静に対処できるようにしておくことも、安全な育毛ケアには必要です。

痛みや出血について

微細とはいえ針を刺すため、痛みは避けられません。特に0.5mm以上の針を使用する場合、チクチクとした痛みを感じるのが一般的です。

痛みの感じ方には個人差が大きいため、我慢できないほどの痛みを感じる場合は、使用を中止するか、より針の短いものに変更する必要があります。

また、針が真皮層に達すると、点状に出血することがあります。特に家庭用で出血するほど強く圧力をかけるのは、力の入れすぎです。

出血は感染のリスクを高めるため、セルフケアでは「わずかに赤みが出る程度」の強さに留めるべきです。

感染症や炎症のリスク

前述の通り、最も注意すべきリスクが感染症です。

消毒が不十分なローラーの使用や、不潔な手で頭皮を触ること、使用直後に清潔でない帽子をかぶる ことなどで、毛穴から雑菌が侵入し、毛嚢炎などを引き起こすことがあります。

また、体質やその日のコンディションによっては、使用後に頭皮が赤く腫れたり、強いかゆみが出たりする炎症反応が続くことがあります。

通常、赤みは数時間から1日程度で引きますが、何日も続くようであれば使用を中止し、皮膚科を受診してください。

金属アレルギーの確認

ダーマローラーの針は、多くの場合、医療用ステンレスやチタンで作られています。

これらの金属に対してアレルギーを持っている人が使用すると、頭皮にかぶれや重度のアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

普段、腕時計やネックレスなどで金属アレルギーの症状が出た経験がある人は、ダーマローラーの材質を必ず確認し、使用を避けるか、事前にパッチテスト(腕などで試す)を行うなど、慎重な判断が求められます。

ダーマローラーの主なリスク概要

リスク主な原因対処法
痛み・出血針の刺激、力の入れすぎ我慢せず中止、圧力を弱める
感染症(毛嚢炎など)消毒不足、不衛生な環境使用前後の徹底消毒、清潔保持
炎症・かゆみ刺激に対する過剰反応赤みが引かない場合は使用中止、冷やす
金属アレルギー針の材質(ステンレス等)材質確認、アレルギー歴のある人は使用を避ける

ダーマローラー以外の育毛アプローチ

ダーマローラーは育毛の一つの補助手段ですが、特にAGAが原因である場合、それだけでは十分な効果が期待できないことが多いです。

薄毛や抜け毛の悩みに対処するためには、ダーマローラーだけに頼るのではなく、より根本的なアプローチや、確立された他の方法と組み合わせることが重要です。

専門クリニックでのAGA治療

AGAの進行を確実に食い止め、本格的な発毛を目指すのであれば、AGA専門クリニックでの治療が最も有力な選択肢です。

クリニックでは、医師が頭皮の状態や薄毛の進行度を正確に診断し、その人に合った治療法を提案します。

主な治療法には、AGAの根本原因であるDHTを抑える「フィナステリド」や「デュタステリド」の内服薬処方、発毛を促進する「ミノキシジル」の外用薬または内服薬(タブレット)の処方があります。

また、クリニックによっては、ダーマローラー(医療用)を用いたり、さらに進んで成長因子そのものを頭皮に直接注入する「メソセラピー」や「HARG療法」といった施術も行っています。

セルフケアでの限界を感じる場合や、何から手をつけてよいか分からない場合は、一度専門医に相談することが解決への近道です。

育毛剤(ミノキシジル外用薬)の活用

日本で「発毛効果」が認められている成分の一つに「ミノキシジル」があります。

これは市販の育毛剤(第一類医薬品)にも配合されており、医師の処方なしでも薬局やドラッグストアで購入可能です(薬剤師の説明が必要です)。

ミノキシジルは、毛母細胞の活性化や血流促進を通じて、発毛を促し、髪の毛を太く育てる効果が期待できます。ダーマローラーは、このミノキシジルの浸透を助ける役割として非常に相性が良いといえます。

AGA対策をセルフケアで考える場合、まずはミノキシジル外用薬の使用を基本とし、その効果を高めるためにダーマローラーの併用を検討する、という順序が合理的です。

ダーマローラー単体での使用よりも、はるかに高い効果が期待できるでしょう。

生活習慣の見直し(食事・睡眠)

髪の毛は、私たちが日々摂取する栄養素から作られています。どれほど強力な治療やケアを行っても、髪の毛の材料となる栄養が不足していては、健康な髪は育ちません。

髪の主成分である「タンパク質(ケラチン)」、その合成を助ける「亜鉛」、頭皮の健康を保つ「ビタミンB群」などを、バランス良く食事から摂取することが大切です。

また、髪の成長は「成長ホルモン」が分泌される睡眠中に活発に行われます。質の良い十分な睡眠時間を確保することも、育毛の土台作りには重要です。

ストレスもまた、血管を収縮させて頭皮の血流を悪化させ、AGAを進行させる要因となり得ます。

適度な運動や趣味の時間を取り入れ、ストレスを溜めない生活を心がけることも、遠回りのようで確実な育毛アプローチの一つです。

Q&A

ダーマローラーの育毛利用に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。

ダーマローラーはどれくらいで効果が出ますか?

効果を実感できるまでの期間には、大きな個人差があります。また、ミノキシジル外用薬などと併用しているか、ダーマローラー単体で使用しているかによっても異なります。

一般的に、ヘアサイクル(毛周期)を考慮すると、目に見える変化(産毛が増えた、髪にコシが出たなど)を感じ始めるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続的な使用が必要とされています。

1〜2ヶ月で明らかな発毛効果が出ることは稀であり、根気強く続けることが求められます。

ダーマローラーの使用を中止するとどうなりますか?

ダーマローラーの使用を中止すると、それによって得られていた効果(血流促進、育毛剤の浸透補助など)は失われます。

特にAGA(男性型脱毛症)が原因である場合、ダーマローラーはAGAの進行そのものを止めるものではないため、使用を中止すれば、AGAは元のペースで進行し続けると考えられます。

育毛剤(ミノキシジルなど)の併用で効果を実感していた場合、中止によって再び抜け毛が増え、薄毛が進行する可能性があります。

育毛剤はダーマローラーの直後に使うべきですか?

はい。ダーマローラーを使用する最大の目的の一つが「育毛剤の浸透を高めること」です。

ダーマローラーによって頭皮の角質層に微細な穴(通り道)が開いている、まさにその直後に育毛剤(ミノキシジルなど)を塗布することで、有効成分が最も効率的に毛根部へ届くと考えられています。

ただし、使用する育毛剤にアルコール(エタノール)が多く含まれている場合、通常よりも刺激(しみる感じ)を強く感じることがあります。

刺激が強すぎる場合は、少し時間を置くか、低刺激性の製品を選ぶなどの調整が必要です。

ダーマローラーは痛いですか?

痛みの感じ方には個人差がありますが、針を刺すため、ある程度の痛みは伴います。

家庭用で一般的に推奨される0.2mm〜0.3mmの短い針であれば、痛みはほとんどなく、「チクチクする」「くすぐったい」と感じる程度が多いです。

0.5mmになると、明確な「痛み」として感じることが増えます。

もし我慢できないほどの強い痛みを感じる場合は、力が入りすぎているか、その針の長さが合っていない可能性があります。

無理して使用を続けると頭皮にダメージを与えるため、中止するか、より短い針のものに変更してください。

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