増毛スプレーのメリット・デメリット|雨や汗で落ちる?頭皮への影響と選び方

増毛スプレーのメリット・デメリット|雨や汗で落ちる?頭皮への影響と選び方

薄毛が気になり始めた時、手軽に見た目の印象を変えられる「増毛スプレー」は非常に魅力的な選択肢です。

しかし、購入を検討する一方で、「本当に自然に見えるのか?」「大事な場面で雨や汗によって落ちることはないか?」「使い続けることで頭皮に悪い影響はないか?」といった多くの疑問や不安を抱えているのではないでしょうか。

この記事では、増毛スプレーの基本的な仕組みから、具体的なメリットとデメリット、多くの方が心配する耐水性や頭皮への安全性、そしてご自身に合った製品の選び方まで、詳しく掘り下げて解説します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

増毛スプレーとは?基本的な仕組みと特徴

薄毛や地肌の透けが気になる部分に吹きかけるだけで、瞬時に髪が増えたように見せるアイテム、それが増毛スプレーです。

その手軽さと即時性から多くの人に利用されていますが、まずはその基本的な仕組みと特徴を正しく理解することが重要です。

増毛スプレーの概要と主成分

増毛スプレーは、一般的に「着色された微粉末(カーボンブラックや酸化チタンなど)」と「それらを定着させるための樹脂(スプレー糊のような働きをする成分)」が主な構成要素です。

製品によっては、髪の毛に近い質感を出すために「微細な繊維(レーヨンやナイロンなど)」を含むタイプもあります。

これらを高圧ガス(LPGやDMEなど)と共に噴射することで、頭皮や今ある髪の毛(産毛含む)に付着させ、視覚的にボリュームアップさせます。

育毛剤や発毛剤のように髪の毛自体を生やしたり、太くしたりするものではなく、あくまで「メイクアップ」や「スタイリング」の一環と捉えるのが適切です。

どのように髪が増えて見えるのか

増毛スプレーが薄毛を目立たなくするのには、二つの主な働きがあります。一つ目は「頭皮の着色」です。スプレーの着色料が頭皮(地肌)に直接付着し、髪の色に近づけます。

これにより、髪と頭皮の色のコントラスト(色の差)が小さくなり、地肌の透けが目立たなくなります。二つ目は「髪への付着」です。

微粉末や微細繊維が、既存の髪の毛一本一本に付着します。これにより、髪の毛が物理的に太くなったように見え、全体の密度とボリューム感が増します。

特に細くなった毛や産毛にもしっかりと付着するため、密度が高まった印象を与えるのです。これら二つの相乗効果によって、薄毛部分を自然にカバーします。

他の薄毛対策との違い

薄毛対策には様々な方法がありますが、増毛スプレーは特に「即時性」と「手軽さ」において大きな違いがあります。他の代表的な対策(育毛剤、ウィッグ)と比較してみましょう。

主な薄毛対策の比較

対策方法目的・特徴即効性・持続性
増毛スプレー微粉末や繊維を吹き付け、視覚的に増やす(隠す)。即効性(高)。持続性(低、1日限り)。
育毛剤・発毛剤頭皮環境を整える、または毛周期に働きかけ、毛髪の成長を促す。即効性(無)。継続使用(数ヶ月単位)が必要。
ウィッグ(かつら)人工毛または人毛で作られたものを装着し、広範囲をカバーする。即効性(高)。持続性(装着時のみ)。

このように、育毛剤が未来の髪を「育てる」ためのものであるのに対し、増毛スプレーは現在の見た目を「補う・隠す」ためのものです。

また、ウィッグは広範囲を一度にカバーできますが、初期費用やメンテナンスの手間、装着感の慣れなどが異なります。ご自身の目的やライフスタイルに合わせて使い分けることが大切です。

増毛スプレーの主なメリット

増毛スプレーが多くの人に選ばれる理由は、その手軽さだけではありません。具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。

手軽に素早くボリュームアップできる即時性

最大のメリットは、何と言ってもその「即時性」です。朝の忙しい時間でも、ヘアセットの仕上げとして気になる部分に数秒スプレーするだけで、瞬時に見た目の印象を変えることができます。

「今すぐ何とかしたい」というニーズに応える力が非常に強いアイテムです。鏡を見ながら自分で微調整ができるため、美容室や専門店に足を運ぶ必要もありません。

結婚式や同窓会、大事な会議など、特定のイベントの時だけ使用するといった柔軟な使い方ができるのも大きな強みです。

気になる部分をピンポイントでカバー可能

薄毛の悩みは人それぞれです。「全体的に薄い」という悩みだけでなく、「つむじ周りだけ地肌が目立つ」「分け目がくっきりしてきた」「M字部分の後退が気になる」といった局所的な悩みを持つ方も多いです。

増毛スプレーは、そのような特定の気になる箇所だけを狙って使用できます。広範囲に使う必要がないため、自然な仕上がりを追求しやすく、コストパフォーマンスの面でも無駄がありません。

ご自身のウィークポイントだけを的確に補強できるのは、大きな利点と言えます。

比較的リーズナブルなコスト

他の本格的な薄毛対策と比較して、導入コストが低い点も大きな魅力です。

専門機関での施術やオーダーメイドのウィッグには高額な費用がかかることもありますが、増毛スプレーは1本数千円程度から購入可能です。

「まずは試してみたい」という方でも、気軽に手を出しやすい価格帯です。継続的に使用する場合でも、使用頻度や範囲によってコストをコントロールしやすいです。

主な薄毛対策のコスト比較(目安)

対策方法初期費用目安継続費用目安(月額)
増毛スプレー2,000円~5,000円程度(1本)使用頻度による(数千円~)
育毛剤5,000円~15,000円程度(1本)5,000円~15,000円程度
ウィッグ(オーダー)200,000円~メンテナンス費用(数千円~)

ヘアスタイルと合わせて使用できる

増毛スプレーは、現在のヘアスタイルを活かしながら使用できる点も便利です。

ワックスやジェルなどで髪型をある程度セットした後、最後の仕上げとしてボリュームが欲しい部分や地肌が透ける部分にスプレーします。

髪の毛自体をコーティングするように付着するため、スタイリング剤とも比較的併用しやすいです(製品の相性によります)。

ただし、スプレー後に強くブラッシングしたり、何度も手ぐしを通したりすると微粉末が落ちてしまうため、スタイリングの「後」に使用するのが基本です。

知っておきたい増毛スプレーのデメリット

手軽で便利な増毛スプレーですが、使用する前に必ず理解しておくべきデメリットや注意点も存在します。これらを知らないまま使用すると、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。

あくまで一時的な効果である点

増毛スプレーは、根本的な薄毛の悩みを解決するものではありません。スプレーの成分が髪の毛や頭皮環境を改善したり、発毛を促したりする効果は一切ありません。

あくまで「その日限りの見た目対策」であり、対症療法であることを深く理解しておく必要があります。使用をやめれば、当然ながら元の状態に戻ります。

もし根本的な改善を目指すのであれば、育毛剤の使用や専門機関への相談など、他の対策と並行して考える必要があります。

独特の質感や不自然さが出る可能性

増毛スプレーは微粉末や樹脂で髪をコーティングするため、どうしても独特の質感が出やすいです。

スプレーした部分は、元の髪のような自然なツヤや手触りが失われ、ゴワゴワしたり、マットな質感になったりすることがあります。

また、使用量が多すぎたり、地毛の色と合っていない製品を選んだりすると、明らかに「何かを付けている」という不自然さが出てしまいます。

特に至近距離で見られたり、髪に触れられたりした際に、バレてしまうリスクは常に伴います。自然に見せるためには、色選びと使用量の調整に慣れが必要です。

衣服や寝具への色移りリスク

スプレーの微粉末は、定着しているとはいえ、強い摩擦によって落ちることがあります。

特に、スプレーが完全に乾ききる前や、汗をかいた後などに、Yシャツの襟元や帽子、車のヘッドレスト、ソファの背もたれなどに色移りする可能性があります。

白や淡い色の衣服を着用する際は特に注意が必要です。また、増毛スプレーを使用した日は、就寝前に必ずシャンプーで洗い流す必要があります。

そのまま寝てしまうと、枕カバーを汚すだけでなく、後述する頭皮トラブルの原因にもなります。

毎日の丁寧なシャンプーが必須

増毛スプレーは耐水性を持たせるために、定着力の高い樹脂成分を含んでいます。そのため、通常のシャンプーだけでは落としにくい場合があります。

微粉末や樹脂成分が頭皮や毛穴に残ったままだと、毛穴詰まりや炎症を引き起こす原因になりかねません。そのため、毎日の丁寧な洗髪が求められます。

製品によっては専用のクレンジング剤を推奨している場合もあり、日々のヘアケアに手間がかかると感じるかもしれません。この洗浄の手間も、デメリットの一つとして認識しておくべきです。

雨や汗で落ちる?耐水性と持続性への疑問

増毛スプレーを使用する上で最も心配な点の一つが、「外出先で雨に降られたらどうなるのか」「夏場の汗で流れ落ちてしまわないか」という耐水性でしょう。

この点の真実と対策について解説します。

増毛スプレーの耐水性レベル

現在の増毛スプレーは技術が進歩しており、多くの製品が「耐水性」や「ウォータープルーフ」を謳っています。

スプレーに含まれる定着用の樹脂成分が微粉末を髪や頭皮にしっかりとコーティングし、軽い雨や日常生活でかく汗程度では簡単に流れ落ちないように作られています。

小雨に少し濡れる程度や、額に汗がにじむくらいであれば、慌てて鏡を確認しなくても、見た目を維持できる製品が多いです。

しかし、あくまで「耐水」であり、「完全防水」ではないため限界があります。

汗や皮脂による影響

雨よりも注意が必要なのが、大量の汗、そして「皮脂」です。樹脂成分は油分に弱い傾向があります。

そのため、スポーツなどで大量の汗をかいた場合や、頭皮がオイリー肌(脂性肌)で皮脂分泌が活発な場合、定着力が弱まりやすくなります。

汗がスプレーの粉末と混ざり合い、黒いや茶色い汗が垂れてくる…といった最悪の事態も起こり得ます。

特に夏場の屋外での活動や、満員電車、暖房の効いた室内など、汗をかきやすいシチュエーションでは注意が必要です。

シチュエーション別・落ちやすさの目安

シチュエーション落ちやすさ(目安)主な対策
小雨・霧雨低い(多くの製品は対応可能)念のため折りたたみ傘を携帯する。
土砂降りの雨・シャワー非常に高い(流れ落ちる)すぐに雨宿りし、タオルで押さえるように拭く。
日常生活の汗(じんわり)低い~中程度ハンカチでこまめに汗を押さえる(こすらない)。
激しい運動・サウナ非常に高い(使用を推奨しない)使用を避けるか、専用ミストで厳重に固める。

落ちにくくするための工夫と対策

増毛スプレーの持続力を高め、万が一の事態を防ぐためには、いくつかの工夫が有効です。最も重要なのは、「スプレー前に頭皮を清潔・乾燥させる」ことです。

頭皮に皮脂や水分が残っていると、スプレーの定着力が著しく低下します。朝シャンプーをするか、少なくともスプレー前には頭皮の油分をティッシュなどで軽く押さえておきましょう。

また、不安だからと一度に大量にスプレーすると、定着しきれない余分な粉末が浮いてしまい、かえって落ちやすくなります。薄くスプレーし、乾かしてから重ね付けするのがコツです。

専用定着ミストの併用効果

増毛スプレーの耐水性・耐摩擦性をさらに高めたい場合、多くのメーカーが別売りで用意している「専用定着ミスト(ハードスプレー)」の併用を強く推奨します。

これは、増毛スプレーの上からさらに強力なコーティングを施し、雨や汗、摩擦から微粉末を守るためのものです。定着ミストを併用することで、持続力が格段に上がります。

絶対に失敗したくない日や、夏場で汗をかきやすい時期、スポーツをする可能性がある日などは、この定着ミストを「お守り」として活用すると安心感が高まります。

頭皮への影響と安全性

毎日使う可能性のあるものだからこそ、頭皮や髪への影響は気になるところです。増毛スプレーの安全性と、使用する上での注意点を掘り下げます。

配合成分が頭皮に与える影響

増毛スプレーの主成分は、前述の通り「着色用の微粉末(カーボンブラックなど)」と「定着用の樹脂(アクリル系樹脂など)」、そして「噴射剤(DME、LPGなど)」です。

これらの成分自体は、化粧品や日用品にも広く使われているものであり、適切に使用し、その日のうちに洗い流す限り、直ちに頭皮に深刻なダメージを与える可能性は低いです。

しかし、肌が敏感な方の場合、樹脂成分や噴射剤、製品に含まれるエタノール(アルコール)や香料などが刺激となり、かゆみ、赤み、発疹などのアレルギー反応や接触性皮膚炎を引き起こす可能性があります。

毛穴詰まりのリスクと洗浄の重要性

増毛スプレー使用における最大の懸念点は「毛穴詰まり」です。着色粉末や定着樹脂は非常に粒子が細かく、粘着性もあります。

これらがシャンプーで完全に落としきれず頭皮に残留すると、皮脂や古い角質と混ざり合って毛穴を塞いでしまいます。

毛穴が塞がれると、頭皮の正常なターンオーバー(新陳代謝)や皮脂の排出が妨げられます。

これが長期間続くと、頭皮環境が悪化し、かゆみ、ニオイ、フケの原因になるだけでなく、既存の髪の毛の健やかな成長を妨げ、薄毛を助長してしまう危険性さえあります。

頭皮の健康を維持するためには、徹底した洗浄が何よりも重要です。

頭皮トラブルを防ぐ洗浄のポイント

ポイント具体的な方法
予洗いの徹底シャンプー前にぬるま湯で1~2分しっかりすすぎ、表面の汚れを落とす。
二度洗いの推奨1回目で髪の汚れ、2回目で頭皮の毛穴を意識して丁寧に洗う。
クレンジングの活用落ちにくい場合、週に数回、頭皮用のクレンジングオイルなどを併用する。

肌が弱い人向けの製品選び

肌がデリケートでかぶれやすい方は、成分に配慮した製品を選ぶことをおすすめします。最近では、頭皮への負担を軽減するために、以下のような配慮がされた増毛スプレーも増えています。

頭皮への優しさを考慮した成分例

  • 香料・パラベン(防腐剤)・鉱物油などが無添加
  • 植物性の保湿成分(センブリエキス、オタネニンジン根エキスなど)を配合
  • アレルギーテスト・パッチテスト済み(すべての人にアレルギーが起きないわけではありません)

初めて使用する際は、いきなり頭皮全体に使うのではなく、まずは腕の内側などで少量を試し、24時間〜48時間様子を見て、赤みやかゆみが出ないか確認するパッチテストを行うと、より安心して使用できます。

後悔しない増毛スプレーの選び方

増毛スプレーは種類が豊富で、どれを選べばよいか迷ってしまいがちです。仕上がりの自然さや使いやすさ、安全性に関わる重要な選択基準を解説します。

色の選び方(地毛とのマッチング)

不自然に見える最大の原因は「色のミスマッチ」です。増毛スプレーの色が地毛の色と合っていないと、スプレーした部分だけが浮いて見え、非常に目立ちます。

選び方の基本は、「ご自身の地毛の色より、ワントーン暗い色を選ぶ」ことです。明るい色を選ぶと、その部分だけが膨張して見え、かえって不自然になります。

暗めの色の方が影のように馴染みやすく、失敗が少ない傾向にあります。

多くの製品でブラック、ダークブラウン、ライトブラウンなどのカラーバリエーションが用意されているため、ご自身の髪色に最も近い、少し暗めの色を選びましょう。

迷った場合は、まずダークブラウンを試してみるのが一般的です。白髪混じりの方は、グレー系の色展開があるかも確認します。

仕上がりの自然さ(繊維タイプ vs 樹脂タイプ)

増毛スプレーは、主成分によって大きく「繊維タイプ」と「樹脂(粉末)タイプ」に分けられます。仕上がりの質感が異なるため、ご自身の髪質や悩みに合わせて選びます。

増毛スプレーのタイプ別特徴

タイプ特徴おすすめの人
繊維タイプ微細な繊維(ファイバー)が髪に静電気などで付着し、立体感を出す。ふんわりとした仕上がり。髪が細く、全体のボリューム感を出したい人。
樹脂タイプ(粉末)着色した微粉末がメイン。頭皮への着色力が高く、地肌の透けをしっかり隠す。マットな仕上がり。分け目やつむじなど、地肌がはっきり見える人。
ハイブリッドタイプ繊維と粉末の両方を配合。ボリュームアップと地肌隠しを両立しやすい。どちらの効果も欲しい人。(現在の主流)

最近では、両方の良い点を合わせた「繊維+粉末」のハイブリッドタイプが主流になっています。

店頭テスターやインターネット上の口コミ動画などで、仕上がりの質感(ツヤの有無、ふんわり感など)をチェックするのも良い方法です。

成分の確認(頭皮への優しさ)

前述の通り、頭皮への負担は無視できません。特に毎日使用する可能性がある方は、パッケージや公式サイトで成分表を確認する習慣をつけましょう。

肌が弱い自覚がある方は、アルコール(エタノール)フリーや、パラベンフリー、無香料といった表記のある製品を選ぶと安心材料になります。

また、センブリエキスやオタネニンジン根エキスなど、何らかの頭皮ケア成分や保湿成分が配合されている製品は、メーカーの頭皮への配慮が感じられます。

コストパフォーマンスと内容量

増毛スプレーは消耗品です。継続的に使用する場合、コストパフォーマンスも重要な選択基準となります。単純な販売価格だけでなく、「内容量(g)」を必ず確認しましょう。

価格が安くても内容量が少なければ、すぐに使い切ってしまい、結果的に割高になることもあります。

「1本で約何か月分」といった目安が記載されている場合もありますが、使用範囲や頻度によって大きく異なります。

まずは標準的なサイズを試し、ご自身の使い方でどのくらい持つかを把握してから、お得な大容量サイズや複数本セットを選ぶのが賢明です。

増毛スプレーの効果的な使い方と注意点

せっかく増毛スプレーを購入しても、使い方が間違っていると不自然な仕上がりになったり、すぐに落ちてしまったりします。

効果を最大限に引き出し、トラブルを防ぐための正しい使い方とコツをマスターしましょう。

使用前の準備(スタイリングと乾燥)

仕上がりを左右する最も重要な工程が「準備」です。スプレーの定着力を高め、頭皮トラブルを防ぐために、以下の準備を徹底してください。

スプレー使用前の準備

手順内容ポイント
1. 頭皮・髪の清浄シャンプーで頭皮の皮脂や汚れを落とす。皮脂が残っていると定着力が激減します。(朝シャンプーが推奨)
2. 完全な乾燥ドライヤーで髪と頭皮をしっかり乾かす。水分や湿気が残っているとムラやダマの原因になります。
3. ヘアスタイリングワックスなどで先に髪型をセットする。スプレー後に触ると粉が落ちるため、髪型は先に整えます。
4. 衣服の保護タオルやケープで首元や肩を覆う。衣服への粉末の付着を防ぎます。洗面台周りも新聞紙などで保護します。

自然に仕上げるスプレーの距離と角度

スプレーする際は、頭皮や髪から「15cm~20cm」程度離すのが基本です。これは製品によって異なる場合があるため、必ず説明書を確認してください。

近すぎると、一箇所にベッタリと噴射剤や粉末が付着してしまい、不自然な「塗りつぶした感」が出てしまいます。また、毛穴にも詰まりやすくなります。

スプレーは、缶を立てた状態で、円を描くように常に手を動かしながら少しずつスプレーするのがコツです。

地肌に直接吹き付けるというより、「地肌近くの細い髪の毛に粉末を乗せていく」イメージを持つと自然に仕上がります。

生え際や分け目を自然に見せるコツ

いかにも「スプレーしました」という状態を避けるには、特に目立つ部分へのテクニックが必要です。

自然に見せるためのテクニック

一気にやろうとしない

一度に広範囲をカバーしようと長く噴射し続けると、ムラや厚塗りの原因になります。「シュッ、シュッ」と短く区切りながら、鏡で確認し、少しずつ重ね付けしていきます。

生え際は特に慎重に

おでこの生え際(M字部分など)は、特に目立ちやすい場所です。スプレーしすぎると境界線がクッキリしすぎて不自然になります。

生え際は特に薄めにスプレーし、少し離れた位置からスプレーの霧が届く程度にするか、手やクシで額をガードしながらスプレーします。専用のパフや綿棒で軽く叩いてぼかすと、より自然に馴染みます。

スプレー後は触らない・しっかり乾かす

スプレー後は定着するまで数分間(製品による)待ちます。乾かないうちに手で触ると、粉が指に付着し、せっかくの仕上がりが台無しになります。

ドライヤーの冷風を軽く当てて乾燥を早めるのも有効です。

正しい落とし方とシャンプーの方法

増毛スプレーの洗浄は、通常よりも丁寧に行う必要があります。頭皮トラブルを防ぐため、以下の手順を参考にしてください。

まず、シャンプー剤をつける前に、38~40℃程度のぬるま湯で、1分~2分ほどかけて頭皮と髪をしっかりすすぎます。お湯で流せる汚れや、表面の粉末をこの段階で大まかに落とします。

次に、シャンプーをしっかり泡立て、一度目のシャンプーは髪に付着した樹脂や粉末を落とすイメージで、髪全体を優しく洗います。

軽くすすいだ後、二度目のシャンプーで、指の腹を使って頭皮の毛穴をマッサージするように、頭皮そのものを丁寧に洗います。シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて念入りにすすぎます。

特に耳の後ろや襟足は残りやすいので注意します。

毎日使用する場合や、落としにくいと感じる場合は、週に数回、シャンプー前に頭皮用のクレンジングオイルなどを利用して、毛穴の奥の汚れまでしっかりリセットすることを推奨します。

Q&A

増毛スプレーに関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。

増毛スプレーをしたまま寝ても大丈夫ですか?

いいえ、絶対に避けてください。増毛スプレーの成分が頭皮に残ったまま長時間経過すると、毛穴詰まりや雑菌の繁殖を引き起こし、頭皮環境の悪化につながる可能性があります。

フケやかゆみ、炎症の原因となるだけでなく、健やかな髪の成長を妨げることにもなりかねません。また、樹脂や粉末が枕カバーに付着し、寝具を汚す原因にもなります。

どんなに疲れていても、その日のうちに必ずシャンプーで洗い流してから就寝してください。

育毛剤と併用できますか?

併用は可能ですが、使用する順番とタイミングが非常に重要です。育毛剤は清潔な頭皮に塗布し、成分を角質層まで浸透させる必要があります。

したがって、育毛剤を使用するのは「夜のシャンプー後、頭皮が清潔で完全に乾いた状態」が基本です。

一方、増毛スプレーは「朝のスタイリング時」に使用します。

育毛剤を塗布した直後に増毛スプレーを使用すると、育毛剤の浸透を妨げるだけでなく、スプレーの定着も悪くなるため避けてください。

「夜は育毛剤で根本ケア、日中は増毛スプレーで見た目カバー」という明確な使い分けが正しい方法です。

他の人にバレませんか?

使い方と製品選びによります。

現在の増毛スプレーは非常に進化しており、ご自身の髪色に合った色を選び、適量を守って正しく使用すれば、日常生活における通常の距離(1メートル程度)であれば、他人にバレる可能性は低いです。

しかし、至近距離でまじまじと見られたり、髪を触られたりした場合、独特の質感やツヤのなさ、手触りのゴワつきで気づかれる可能性はゼロではありません。

また、使用量が多すぎると不自然な厚塗り感が出ます。最初は少量から試し、鏡でよく確認しながら最適な量を見つけることが重要です。

どのくらいの期間使えますか?

1本あたりの使用可能期間は、スプレーの内容量と、使用する範囲・頻度によって大きく異なります。

例えば、つむじ周りだけに毎日使用する場合と、頭頂部全体に時々使用する場合では、消費ペースは全く違います。

一般的なサイズ(150g~200g程度)の製品で、部分的な使用(つむじなど)であれば、毎日使っても1ヶ月~2ヶ月程度持つことが多いですが、あくまで目安です。

初回購入時は、ご自身の使用ペースを把握することから始めましょう。

フケやかゆみが出た場合はどうすればよいですか?

すぐに使用を中止してください。フケやかゆみは、スプレーの成分が肌に合っていない(アレルギーや刺激)か、またはシャンプーで十分に落としきれておらず毛穴詰まりや炎症が起きている可能性があります。

使用を中止しても症状が改善しない場合や、赤み、湿疹などが広がる場合は、自己判断せず、速やかに皮膚科専門医に相談してください。

その際、使用した製品を持参すると診断の助けになります。

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