お風呂の排水溝や朝起きた時の枕を見て、「最近、抜け毛が増えたかも…」と不安に感じていませんか。
「1日の抜け毛の平均はどれくらい?」「50本や100本は普通なの?」こうした疑問は、多くの方が抱くものです。
この記事では、健康な状態での1日の平均的な抜け毛本数をはじめ、季節による変動、そして最も重要な「正常な抜け毛」と「注意すべき危険な抜け毛」の見分け方を徹底的に解説します。
本数だけに一喜一憂せず、抜け毛の質や頭皮の状態を知ることが、あなたの髪を守る第一歩です。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
1日の抜け毛の平均本数はどれくらい?
抜け毛の本数を意識し始めると、毎日何本抜けているのか気になって仕方がない、という方も多いでしょう。しかし、髪の毛は毎日抜けて、毎日新しく生え変わっています。
まずは、健康な状態での平均的な抜け毛の本数について理解を深めましょう。
健康な人の平均的な抜け毛本数
一般的に、健康な成人の場合、1日に抜ける髪の毛の本数は約50本から100本程度と言われています。この数字を聞いて「そんなに多いのか」と驚くかもしれません。
日本人の髪の毛の総数は平均で約10万本とされています。そのうちの50本から100本が日々、自然な生え替わり(ヘアサイクル)によって抜け落ちているのです。
もちろん、これはあくまで平均値です。髪の量や太さには個人差があるため、抜け毛の本数にも個人差が生じます。
大切なのは、平均値と厳密に比較することよりも、自分自身の「普段の抜け毛の本数」を把握し、それと比べて急激に増えていないかどうかに注目することです。
抜け毛100本は正常範囲内か
前述の通り、1日100本の抜け毛は、多くの場合、正常な生理現象の範囲内と考えられます。
特に、髪の毛の量が多い方や、髪が長い方(抜け毛が目立ちやすいため)にとっては、100本程度は決して珍しい数字ではありません。
ただし、「100本だから安心」と一概には言えません。もし、以前は明らかに50本程度だったのに、ここ数ヶ月で100本近くに増えた、という場合は注意が必要です。
また、抜けた毛の状態(細さや短さ)によっては、100本以下であっても薄毛が進行しているサインである可能性も否定できません。本数はあくまで一つの目安として捉えましょう。
抜け毛の本数を数える簡単な方法
正確に1日の抜け毛を数えるのは困難ですが、おおよその目安を知る方法はあります。最も抜け毛が目立つのはシャンプー時です。
シャンプーの際に排水溝に溜まった毛を回収し、その本数を数えてみましょう。一般的に、1日の抜け毛のうち約6割から7割がシャンプー時に抜けると言われています。
もし排水溝の抜け毛が60本であれば、1日全体では約100本程度と推測できます。
この方法を数日間続けて行い、平均値を出すことで、ご自身の抜け毛のおおよその基準値を知ることができます。
朝起きた時の枕元の抜け毛や、日中ブラッシングした際の抜け毛も合わせて確認すると、より傾向が掴みやすくなります。
ヘアサイクル(毛周期)と抜け毛の関係
髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」と呼ばれる一定の周期があります。
これは、髪が「成長する時期(成長期)」、「成長が止まる時期(退行期)」、そして「抜け落ちる時期(休止期)」を繰り返すことです。
私たちが日々目にしている「抜け毛」のほとんどは、このヘアサイクルの「休止期」を迎えた髪の毛です。
休止期に入った髪は、毛根の活動が停止し、新しい髪の毛(次の成長期の髪)が下から生えてくることによって押し出され、自然に抜け落ちます。
したがって、毎日一定量の髪が抜けること自体は、健康なヘアサイクルが機能している証拠であり、全く心配する必要はありません。
ヘアサイクルの各期間の目安
| 期間 | 特徴 | 期間の目安(男性) |
|---|---|---|
| 成長期 | 髪が活発に成長する時期 | 2年〜6年 |
| 退行期 | 髪の成長が止まり、毛根が縮小する時期 | 約2週間 |
| 休止期 | 髪が抜け落ちるのを待つ時期 | 約3ヶ月〜4ヶ月 |
薄毛の悩みは、このヘアサイクルが乱れ、本来長く続くべき「成長期」が短くなることで生じることが多いのです。
抜け毛50本でも危険なサインとは?
「1日の抜け毛が平均以下の50本程度だから安心だ」と考えるのは、少し早いかもしれません。抜け毛対策において重要なのは、本数と同時に「抜け毛の質」をチェックすることです。
本数が少なくても、薄毛のサインが隠れている場合があります。
本数だけでなく「抜け毛の質」に注目
正常なヘアサイクル(休止期)を経て抜け落ちた髪は、太く、しっかりとしたコシがあるのが特徴です。毛根部分もマッチ棒の先端のように丸く膨らんでいます。
一方で、本数が平均以下であっても、抜けた毛が細く、短い場合は注意が必要です。これは、髪が十分に成長しきる前(成長期の途中)に抜けてしまっている可能性を示唆しています。
ヘアサイクルが乱れ、成長期が短縮されているサインかもしれません。
危険な抜け毛の特徴(細い・短い毛)
ご自身の抜け毛を手に取り、じっくりと観察してみてください。特にシャンプー時や枕元で見つけた毛をチェックするのが良いでしょう。
以下のような特徴を持つ毛が多い場合、頭皮環境やヘアサイクルに何らかの問題が起きている可能性があります。
注意すべき抜け毛の質
| 特徴 | 考えられる状態 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 細く、弱々しい毛 | 髪が十分に成長できていない | ヘアサイクルの乱れ、栄養不足 |
| 短い毛(産毛のような毛) | 成長期が極端に短くなっている | AGA(男性型脱毛症)、頭皮環境の悪化 |
| 毛根がない、または細く尖っている | 成長途中で抜けた可能性 | AGA、強いストレス、牽引 |
これらの「質の悪い抜け毛」の割合が増えてきたと感じたら、たとえ全体の抜け毛本数が50本程度であっても、早めの対策を検討する必要があります。
頭皮の状態もチェックしよう
抜け毛の質と合わせて、頭皮の状態も確認しましょう。健康な頭皮は青白い色をしていますが、不健康な状態になると色々なサインを発します。
例えば、「頭皮が赤い」場合は炎症を起こしている可能性があります。皮脂の過剰分泌や乾燥、シャンプーのすすぎ残しなどが原因です。
「頭皮が茶色い・黄色い」場合は、皮脂が酸化しているか、血行不良のサインかもしれません。「フケやかゆみが多い」場合も、頭皮環境が悪化している証拠です。
頭皮は髪を育む土壌です。土壌の状態が悪ければ、健康な髪は育ちません。抜け毛の本数と質、そして頭皮の状態。この3点を総合的に見て判断することが大切です。
以前と比べて抜け毛が増えたと感じたら
平均本数(50本〜100本)という数字はあくまで一般的な目安です。大切なのは「自分自身の過去との比較」です。
「以前は排水溝の抜け毛はこんなに多くなかった」「枕につく毛が明らかに増えた」「手ぐしを通すたびに毛が抜けるようになった」など、ご自身の感覚値で「増えた」と感じる場合は、それが重要なサインとなります。
たとえ本数を数えて100本以内であったとしても、ご自身の基準値から倍増しているのであれば、何らかの原因(生活習慣の変化、ストレス、季節の変わり目、あるいはAGAの進行など)が潜んでいる可能性があります。
季節別に見る抜け毛の目安と変動要因
抜け毛の本数は、一年を通して一定というわけではありません。
季節によっても変動する傾向があります。特に抜け毛が増えやすいとされる季節とその原因を知っておくことで、過度な不安を和らげ、適切な季節ケアにつなげることができます。
春の抜け毛の特徴
春は、環境の変化が最も大きい季節の一つです。新生活や異動、転勤などに伴うストレスや生活リズムの乱れが、自律神経やホルモンバランスに影響を与え、一時的に抜け毛が増えることがあります。
また、冬の間に蓄積された頭皮の乾燥ダメージや血行不良が、春になって一気に出てくることも。
さらに、花粉や黄砂などのアレルゲンが頭皮に付着し、かゆみや炎症を引き起こし、抜け毛につながるケースも見られます。
夏の抜け毛の原因
夏は、強い紫外線と大量の汗・皮脂が頭皮にダメージを与える季節です。紫外線は髪の毛そのものだけでなく、頭皮にも直接降り注ぎ、毛母細胞の働きを低下させる原因となります。
また、汗や皮脂が毛穴に詰まると、雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮環境が悪化します(脂漏性皮膚炎など)。
冷房による冷えで頭皮の血行が悪くなりがちな点や、夏バテによる食欲不振で栄養が偏りがちな点も、夏の抜け毛を助長する要因です。
秋に抜け毛が増える理由
一年で最も抜け毛が増えやすいと言われるのが秋です。これには複数の理由が考えられています。
一つは、夏に受けた紫外線や頭皮ダメージの影響が、数ヶ月遅れて(ヘアサイクルの休止期を経て)秋に現れるという説です。
また、動物の毛が生え替わる「換毛期」の名残で、人間も秋になると抜け毛が増えるという説もあります。
いずれにせよ、秋の抜け毛の増加は一時的な生理現象である場合も多いため、過度に心配しすぎず、夏のダメージを回復させる頭皮ケアを心がけることが重要です。
ただし、他の季節に比べて明らかに多い状態が続く場合は注意が必要です。
冬の抜け毛と乾燥
冬は、空気の乾燥と寒さによる血行不良が抜け毛の主な原因となります。空気が乾燥すると、頭皮も水分を奪われ乾燥しやすくなります。
頭皮が乾燥すると、フケやかゆみが出やすくなるだけでなく、頭皮を守ろうとして逆に皮脂が過剰に分泌されることもあります。
また、寒さで血管が収縮すると、頭皮の血行が悪化します。髪の毛を成長させるために必要な栄養素は血液によって運ばれるため、血行不良は髪の成長を妨げ、抜け毛や細毛の原因となります。
季節別の主な頭皮ケアポイント
| 季節 | 主な頭皮悩み | ケアのポイント |
|---|---|---|
| 春 | 環境変化のストレス、花粉・アレルゲン付着 | リラックス、丁寧な洗浄、頭皮の保護 |
| 夏 | 紫外線ダメージ、汗・皮脂の詰まり | 紫外線対策(帽子・日傘)、適切な皮脂洗浄 |
| 秋 | 夏のダメージ蓄積、一時的な増加 | 保湿ケア、頭皮マッサージ、栄養補給 |
| 冬 | 乾燥、血行不良 | 保湿(育毛剤・ローション)、防寒、血行促進 |
正常な抜け毛と危険な抜け毛の見分け方
抜け毛の本数以上に重要視すべきなのが、「抜け毛の質」です。
正常なヘアサイクルを終えて自然に抜けた毛と、何らかのトラブルによって抜けてしまった毛(危険な抜け毛)とでは、見た目に明らかな違いが現れます。
この違いを見極めることが、薄毛対策の鍵を握ります。
毛根の状態で判断する
抜け毛をチェックする際、最も注目してほしいのが「毛根」の状態です。毛根は、髪の毛が頭皮の中でどのように育っていたかを示すバロメーターです。
正常な毛根(棍棒状)
正常な抜け毛(休止期脱毛)の場合、毛根部分は白っぽく、マッチ棒の先端のように丸く膨らんでいます。
これは「毛棍(もうこん)」と呼ばれ、髪が天寿を全うし、自然に抜け落ちた証拠です。
毛根の周りに透明なゼリー状の「毛包(もうほう)」が付着していることもありますが、これも正常な証ですので心配ありません。
危険な毛根(細い・皮脂詰まり)
一方、危険な抜け毛の場合、毛根の形状に異常が見られます。
例えば、毛根部分が細く尖っていたり、ギザギザしていたり、あるいは毛根自体がほとんど見られない場合は、髪が成長期や退行期の途中で抜けてしまった可能性が高いです。
これはAGA(男性型脱毛症)や円形脱毛症などのサインであることがあります。
また、毛根部分にベタっとした白い塊(皮脂)が付着している場合は、皮脂の過剰分泌により頭皮環境が悪化している(脂漏性皮膚炎など)可能性が考えられます。
毛穴の詰まりが抜け毛を引き起こしている状態です。
毛根の状態比較
| 状態 | 毛根の特徴 | 判断 |
|---|---|---|
| 正常な抜け毛 | 丸く膨らんでいる(棍棒状)。白っぽい。 | ヘアサイクルによる自然な抜け毛 |
| 危険な抜け毛 | 細く尖っている、または毛根がない。黒っぽい点。 | 成長期脱毛(AGA、円形脱毛症など) |
| ベタついた皮脂の塊が付着している。 | 頭皮環境の悪化(脂漏性皮膚炎など) |
抜け毛の太さと長さ
毛根と合わせて、抜け毛自体の太さと長さも確認しましょう。
正常な抜け毛は、頭皮に生えている他の毛髪と同様に、太く、しっかりとしたコシがあります。長さも十分にあります。
しかし、危険な抜け毛は、細く、弱々しく、フニャフニャとしています。
また、明らかに短い毛(数センチ程度)や、産毛のような細い毛が抜け毛の中に多く混じっている場合は、ヘアサイクルが著しく短縮されている証拠です。
これはAGA(男性型脱毛症)の典型的な症状の一つであり、新しい髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまっている状態を示しています。
抜け毛以外の頭皮トラブル
危険な抜け毛は、多くの場合、頭皮のトラブルを伴っています。抜け毛の状態をチェックすると同時に、鏡でご自身の頭皮を観察してみてください。
- 頭皮が全体的に赤い、または赤みがかっている
- フケ(乾燥したフケ、湿ったフケ)が多い
- 頭皮にかゆみや痛み、できものがある
- 頭皮を触るとベタつく、またはカサカサしている
これらの症状は、頭皮環境が悪化しているサインです。炎症や皮脂の異常が、健康な髪の成長を妨げ、抜け毛を増やしている可能性があります。
AGA(男性型脱毛症)の初期症状
もし、抜け毛の本数が100本前後かそれ以上あり、かつ「細く短い毛が多い」「毛根が細い」「生え際や頭頂部の地肌が目立ってきた」という特徴が当てはまる場合、AGA(男性型脱毛症)を発症している可能性を考える必要があります。
AGAは進行性の脱毛症です。自然に治ることはなく、放置すると薄毛は徐々に進行していきます。AGAによる抜け毛は、ヘアサイクルが乱れ、成長期が短縮することで起こる「危険な抜け毛」の典型です。
早期に発見し、適切な対策(専門クリニックでの診断や治療薬の使用など)を開始することが、進行を食い止める上で非常に重要です。
抜け毛が増える主な原因を探る
「危険な抜け毛」が増えている場合、その背景には様々な原因が潜んでいます。AGAのような疾患以外にも、日々の生活習慣が大きく影響していることが少なくありません。
ご自身の生活を振り返り、当てはまる点がないかチェックしてみましょう。
生活習慣の乱れ
特に影響が大きいのが「睡眠不足」と「喫煙」です。髪の毛は、私たちが寝ている間に分泌される成長ホルモンによって成長が促されます。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられてしまいます。
また、喫煙は血管を収縮させる作用があります。頭皮には毛細血管が張り巡らされていますが、喫煙によってこれらの血管が収縮すると、頭皮の血行が悪化します。
結果として、髪の成長に必要な栄養素が毛根まで届きにくくなり、抜け毛や細毛の原因となります。
ストレスの影響
現代社会において、ストレスを完全になくすことは難しいですが、過度なストレスは髪にとって大敵です。強いストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位な状態が続きます。
交感神経が優位になると、血管が収縮し、頭皮の血行不良を引き起こします。また、ホルモンバランスの乱れにもつながり、皮脂の過剰分泌を招くこともあります。
これらの要因が複合的に絡み合い、頭皮環境の悪化やヘアサイクルの乱れを招き、抜け毛(円形脱毛症や休止期脱毛)を引き起こすことがあります。
食生活と栄養バランス
髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。日々の食生活が乱れ、栄養バランスが偏っていると、健康な髪を育てることはできません。
髪の主成分は「タンパク質(ケラチン)」です。そのため、タンパク質の摂取が不足すると、髪が細くなったり、弱くなったりします。
また、タンパク質を髪の毛に変える際には「亜鉛」が、頭皮の健康を保つためには「ビタミンB群」や「ビタミンC、E」が必要です。
ファストフードやインスタント食品、脂っこい食事が多いと、これらの重要な栄養素が不足しがちになるだけでなく、皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させる原因にもなります。
髪の健康に必要な主な栄養素と食材例
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食材例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | タンパク質をケラチンに合成する | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促す、皮脂分泌を調整 | 豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、納豆 |
誤ったヘアケア
良かれと思って毎日行っているヘアケアが、逆に頭皮にダメージを与え、抜け毛を増やしている可能性もあります。
例えば、「洗浄力の強すぎるシャンプー」の使用です。
頭皮がベタつくからといって、必要な皮脂まで洗い流してしまうと、頭皮が乾燥し、フケやかゆみ、あるいは皮脂の過剰分泌(乾燥から守ろうとする防御反応)を招きます。
また、「シャンプーのすすぎ残し」は、シャンプー剤が毛穴に詰まり、炎症を引き起こす原因となります。
「頭皮をゴシゴシと強く洗いすぎる」ことも、頭皮を傷つけ、健康な髪の成長を妨げます。1日に何度もシャンプーする「洗いすぎ」も同様に問題です。
抜け毛が気になり始めた時の対策
抜け毛の本数が増えたり、「危険な抜け毛」のサインに気づいたりした場合、まずはご自身でできる対策から始めてみましょう。
AGAのように専門的な治療が必要なケースもありますが、生活習慣やヘアケアを見直すだけで、頭皮環境が改善し、抜け毛が落ち着くことも少なくありません。
まずは生活習慣の見直しから
抜け毛の原因がAGAではなかった場合、生活習慣の改善は最も基本的かつ重要な対策です。特に「睡眠」「食事」「運動」の3つの柱を見直しましょう。
睡眠の質を高める
髪の成長を促す成長ホルモンは、深い睡眠中(特に就寝から最初の3時間)に最も多く分泌されます。単に長く寝るだけでなく、「質の高い睡眠」を確保することが重要です。
寝る直前のスマートフォンやPCの使用は避け、リラックスできる環境を整えましょう。毎日決まった時間に就寝・起床するリズムを作ることも、自律神経を整え、睡眠の質を高めるのに役立ちます。
バランスの取れた食事
前述の通り、髪はタンパク質、亜鉛、ビタミン群など、多様な栄養素から作られています。特定の食品だけを食べるのではなく、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
特に、外食やコンビニ食が多い方は、意識的に野菜や海藻類、大豆製品などを取り入れ、脂質や糖質の過剰摂取を控えるようにしましょう。
生活習慣の見直しチェックポイント
| 項目 | 見直しのポイント | 髪への好影響 |
|---|---|---|
| 睡眠 | 7時間程度の確保、就寝前のリラックス | 成長ホルモンの分泌促進 |
| 食事 | タンパク質、亜鉛、ビタミンをバランス良く | 髪の材料補給、頭皮環境の正常化 |
| 運動 | ウォーキングなど軽い有酸素運動を習慣に | 全身の血行促進、ストレス解消 |
| 喫煙・飲酒 | 禁煙を試みる、飲酒は適量に控える | 頭皮の血行改善、肝臓の負担軽減 |
正しいシャンプー方法
毎日のシャンプーは、頭皮環境を左右する重要なケアです。以下の点に注意して、頭皮を優しく清潔に保ちましょう。
- シャンプー前にブラッシングと予洗いを徹底する
- シャンプーは手でよく泡立て、爪を立てず指の腹で洗う
- すすぎは「洗い」の倍の時間をかけ、徹底的に行う
- シャンプー後はすぐにドライヤーで頭皮から乾かす
シャンプーは1日1回、夜に行うのが基本です。朝シャンは、日中の紫外線などから頭皮を守る皮脂まで落としてしまう可能性があるため、避けるのが賢明です。
また、ご自身の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌など)に合ったシャンプー剤(アミノ酸系など)を選ぶことも重要です。
ストレス管理の重要性
過度なストレスは自律神経を乱し、頭皮の血行不良を招きます。ご自身なりのストレス解消法を見つけ、溜め込まないようにすることが大切です。
適度な運動は、血行促進とストレス解消の両方に効果的です。また、趣味に没頭する時間を作ったり、ゆっくりと入浴したりするなど、心身ともにリラックスできる時間を意識的に確保しましょう。
育毛剤の使用を検討する
生活習慣やヘアケアを見直しても抜け毛が減らない場合や、頭皮環境(乾燥、血行不良など)が気になる場合は、育毛剤の使用を検討するのも一つの方法です。
育毛剤は、主に「頭皮の血行促進」「頭皮環境の改善(保湿、抗炎症)」「毛母細胞の活性化」などを目的とした医薬部外品です。
AGAのように「発毛」を促す(医薬品)ものではありませんが、現在生えている髪を健康に育て、抜け毛を予防する効果が期待できます。
ご自身の頭皮の悩みに合った成分(血行促進成分、保湿成分、抗炎症成分など)が配合された育毛剤を選び、正しい方法(清潔な頭皮に使用し、マッサージするなど)で継続して使用することが大切です。
それでも抜け毛が減らない場合の相談先
セルフケアを一通り試してみても、抜け毛が一向に減らない。あるいは、細く短い毛が増え続け、地肌が明らかに目立ってきた。
そのような場合は、AGA(男性型脱毛症)など、専門的な対処が必要な状態かもしれません。一人で悩み続けず、専門家の助けを借りることを強く推奨します。
皮膚科での相談
まずは、お近くの皮膚科に相談するのも良いでしょう。抜け毛の原因がAGAなのか、あるいは脂漏性皮膚炎や円形脱毛症など、他の皮膚疾患なのかを診断してもらえます。
特に、頭皮に強いかゆみ、フケ、赤み、痛みなどを伴う場合は、皮膚科での治療が優先されます。皮膚科でもAGAの治療薬(内服薬や外用薬)を処方しているクリニックは多くあります。
AGA専門クリニックでの診断
「生え際が後退してきた」「頭頂部が薄くなってきた」など、AGA特有の症状が強く見られる場合は、最初からAGA専門クリニックに相談するのが最も近道です。
専門クリニックでは、頭皮の状態や毛根を詳細にチェックするマイクロスコープ診断や、場合によっては遺伝子検査なども行い、薄毛の原因を正確に特定します。
その上で、個々の進行度や体質に合わせた最適な治療法(内服薬、外用薬、注入治療など)を提案してくれます。
AGA治療は保険適用外の自由診療となりますが、専門的な知見に基づいたアプローチが期待できます。
早期発見・早期対策の重要性
AGA(男性型脱毛症)は進行性です。対策を講じない限り、薄毛はゆっくりと、しかし確実に進行していきます。
抜け毛の原因がAGAであった場合、対策を始めるのが早ければ早いほど、毛根がまだ生きている(毛母細胞が活動している)状態の髪を守ることができ、改善の効果も出やすくなります。
「まだ大丈夫だろう」「そのうち治るだろう」と先延ばしにすることが、将来的な後悔につながる可能性があります。抜け毛の「質」の変化に気づいた時点が、行動を起こすベストなタイミングです。
一人で悩まないで
抜け毛や薄毛の悩みは非常にデリケートであり、他人に相談しづらいものです。しかし、現代では薄毛に悩む多くの男性が、適切な対策や治療によって悩みを改善しています。
インターネットの情報だけで自己判断したり、一人で不安を抱え込んだりする必要はありません。抜け毛の本数や質が気になるという事実は、あなたの体が発している重要なサインです。
そのサインを真摯に受け止め、専門家の客観的な意見を聞いてみることが、解決への第一歩となります。
よくある質問
- シャンプー時の抜け毛が多い気がします。何本までなら大丈夫ですか?
-
1日の抜け毛の約6〜7割がシャンプー時に抜けると言われています。1日の平均が50〜100本ですので、シャンプー時だけで30本から70本程度抜けていても、多くは正常範囲内です。
ただし、これも個人差が大きいため、本数そのものよりも「以前と比べて急に増えていないか」「抜けた毛が細く短くないか」という点を重視してください。
- 枕についている抜け毛の本数も数えるべきですか?
-
朝起きた時の枕元の抜け毛をチェックすることは、抜け毛の傾向を知る上で有効です。
毎日数えて記録する必要はありませんが、例えば10本以上ついている日が続くようであれば、抜け毛が増加傾向にあるサインかもしれません。
特に、細く短い毛が目立つ場合は注意深く観察を続けましょう。
- 抜け毛予防に効果的な食べ物はありますか?
-
特定の食べ物だけで抜け毛を完全に防ぐことはできませんが、髪の健康をサポートする栄養素を積極的に摂ることは重要です。
髪の主成分である「タンパク質」(肉、魚、卵、大豆製品)、タンパク質の合成を助ける「亜鉛」(牡蠣、レバー、赤身肉)、頭皮環境を整える「ビタミンB群」(豚肉、マグロ、納豆)などをバランス良く摂ることを心がけましょう。
- 育毛剤はいつから使い始めるのが良いですか?
-
育毛剤は、薄毛が進行してから使うものというよりは、抜け毛が気になり始めた段階や、頭皮環境(乾燥、フケ、かゆみ、血行不良など)を改善したいと感じた時から使い始めるのがおすすめです。
健康な頭皮環境を維持し、抜け毛を予防する目的で使用するものですので、早期からセルフケアの一環として取り入れるのが良いでしょう。
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