髪が生える方法について真剣に調べているあなたへ。薄毛の悩みは人には話しづらく、一人で抱え込みがちです。
しかし、現代には科学的根拠に基づいた「発毛」のためのAGA治療と、頭皮環境を整えて髪を健やかに育てる「育毛」という二つの有効なアプローチが存在します。
この両者の違いを理解し、自分の状態に合った方法を選択することが、薄毛の悩みから解放されるための重要な第一歩となります。
自力での対策には限界があり、特に進行性のAGAの場合は専門的な治療が有効な選択肢です。
この記事では、AGA治療の具体的な内容から、今日から始められる生活習慣の改善、正しいヘアケアの方法まで、髪を生やすために必要となる情報を網羅的に、そして親切丁寧に解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
AGA治療(発毛)と自力での育毛の根本的な違い
髪が生えない原因の多くは男性型脱毛症 (AGA)
男性が薄毛や抜け毛に悩む原因の多くは、男性型脱毛症(AGA)に起因します。AGAは進行性の病気であり、一度発症すると自然に治ることはありません。
遺伝的な要因に加え、男性ホルモンであるテストステロンが体内の酵素(5αリダクターゼ)と結びつくことで生成されるジヒドロテストステロン(DHT)が、髪の毛の成長サイクル(ヘアサイクル)を乱してしまうことで引き起こされます。
具体的には、通常2年から6年かけて成長するはずの髪の毛が、数ヶ月から1年程度で成長を終えてしまい、細く短いまま抜け落ちてしまうのです。
この悪循環が続くことで、徐々に髪の毛全体のボリュームが減少し、薄毛が目立つようになります。自力で対処しても改善が見られない場合、このAGAが原因である可能性が高いと言えます。
「発毛」と「育毛」が意味するもの
「髪が生える方法」を考える上で、「発毛」と「育毛」の違いを正しく認識することは非常に重要です。この二つの言葉は混同されがちですが、医学的、薬事的な定義において明確な違いがあります。
発毛とは、すでに毛が抜け落ちてしまった場所や、毛が細くなってしまった場所から、新しく太い毛を生やすことを指します。
これは主に、進行性の脱毛症であるAGAに対して、医学的な根拠に基づいた治療薬や医療機器を用いて行うアプローチです。
日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨される治療薬を用いる場合、一般的に「発毛治療」として扱われます。
一方、育毛とは、今生えている髪の毛を抜けにくくしたり、髪の毛が成長しやすいように頭皮環境を整えたりすることで、髪を健やかに育てることを目的とします。
これは主に、市販の育毛剤や生活習慣の改善によって行われます。進行した薄毛を根本から改善するには「発毛」のアプローチが、将来的な予防や現状維持には「育毛」のアプローチが中心となります。
発毛と育毛の目的と手段
| 区分 | 目的 | 主な手段 |
|---|---|---|
| 発毛(治療) | 新しい毛を生やす、太く長く育てる | AGA治療薬(内服薬、外用薬)、専門医療 |
| 育毛(対策) | 今の髪の毛の維持、頭皮環境を整える | 育毛剤(市販)、シャンプー、生活習慣改善 |
| 対象 | AGAなど進行性の脱毛症 | 薄毛予防、髪のハリ・コシ低下 |
自分の薄毛の進行度を知る重要性
あなたが現在行っている対策や、これから始めるべき方法を決める上で、自身の薄毛の進行度を把握することは極めて重要です。薄毛は進行度合いによって、有効な対策が大きく変わります。
初期の段階であれば自力での育毛対策や市販の育毛剤でも効果を感じやすいかもしれませんが、AGAが進行して毛根が機能しなくなると、生活習慣の改善や育毛剤だけでは満足いく結果を得るのは困難になります。
自分がどの程度の段階にあるのかを知るには、セルフチェックや、より正確には専門のクリニックで診断を受けることが一番確実です。
専門医はマイクロスコープなどを用いて、毛根の状態や薄毛の種類を判断し、適切な治療法を提案できます。
薄毛の進行が早いと感じる場合は、時間との勝負になるため、自己判断で時間を浪費するよりも早めに専門家の意見を聞くことが大切です。
【発毛への近道】専門クリニックでのAGA治療の全容
専門医による正確な診断と治療計画
AGA治療を始める最初の段階は、専門の医師による正確な診断を受けることです。自己判断でAGAと決めつけてしまうと、薄毛の真の原因を見逃してしまう可能性があります。
例えば、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、AGAとは異なる脱毛症が原因である可能性も考えられます。
専門クリニックでは、まず問診や触診、そして頭皮の状態を拡大して観察する視診(マイクロスコープ診断)を行い、AGAかどうか、またどの程度進行しているかを正確に判断します。
この診断結果に基づき、患者さんの体質、薄毛の進行度、生活習慣などを考慮した上で、内服薬や外用薬、あるいはメソセラピーなどの治療法を組み合わせた、個人に合わせた治療計画を策定します。
専門医が患者さんの状態を定期的に評価し、治療内容を調整することで、より効率的かつ安全に発毛効果を引き出します。
AGA治療の具体的な流れと期間
AGA治療は一般的に、内服薬の服用が中心となりますが、その効果が現れるまでには一定の期間を要します。
多くの場合、治療を開始してから効果を実感できるようになるまでには、約6ヶ月以上の継続的な治療が必要と言われています。
最初の3ヶ月程度は、治療薬の影響で乱れたヘアサイクルがリセットされる過程で、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が起こることがあります。
これは薬が効いている証拠であり、その後、休止期の毛包が活性化され、新しい毛が生え始めます。
効果が確認された後も、発毛した状態を維持し、さらに改善を続けていくために、医師と相談しながら治療を継続していくことが一般的です。
治療の長期的な見通しや、期待できる効果について、事前に医師からしっかりと説明を受け、納得した上で取り組むことが、治療を継続するためのモチベーション維持に繋がります。
治療にかかる費用の目安と選び方
AGA治療は自由診療となるため、クリニックや選択する治療法によって費用が大きく異なります。
主な治療法は内服薬、外用薬、注入治療(メソセラピーなど)に分けられますが、一般的に内服薬による治療が最も経済的な選択肢となることが多いです。
治療薬の費用に加え、初診料や再診料、血液検査の費用が発生する場合があります。
費用だけでクリニックを選ぶのではなく、治療経験の豊富さ、医師との信頼関係、無理なく通い続けられる立地や診療時間などを総合的に判断して選ぶことが大切です。
治療を継続することが発毛成功の鍵を握るため、経済的な負担だけでなく、精神的な負担も考慮し、長期的に通院できる環境を選ぶことが重要です。
AGA治療の主な種類と費用相場(月額)
| 治療法 | 目的 | 費用相場(月額) |
|---|---|---|
| 内服薬(守り) | AGAの進行を抑える | 5,000円〜15,000円 |
| 内服薬(攻め) | 発毛を促進する | 8,000円〜18,000円 |
| 注入治療 | 頭皮に有効成分を直接注入 | 50,000円〜150,000円 |
医学的に効果が認められているAGA治療薬
AGAの進行を食い止める内服薬
AGAの治療に用いられる内服薬には、主にAGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制する作用があります。
DHTは、体内のテストステロンが5αリダクターゼという酵素の働きによって変換されて生まれます。
この内服薬は、5αリダクターゼの働きを阻害することでDHTの濃度を下げ、結果としてヘアサイクルが乱されるのを防ぎます。
これにより、毛根が萎縮するのを防ぎ、抜け毛の進行を食い止め、細くなった髪を健康な状態に戻すことを目指します。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、これらの内服薬はAGAの治療において強く推奨されています。
継続して服用することで、初めてその効果を発揮するため、医師の指示に従い毎日欠かさず服用することが成功の鍵となります。
内服薬の主要な成分は以下の通りです。
- フィナステリド
- デュタステリド
- DHT生成抑制
これらの成分は、AGAの進行を食い止める「守り」の役割を担い、特に薄毛の初期から中期にかけて非常に有効です。
医師は患者さんの体質や進行度に応じて、どちらの成分が適切かを判断し処方します。
発毛を促す外用薬と作用
内服薬がAGAの進行を食い止める「守り」であるのに対し、外用薬には主に「攻め」の発毛効果を期待できる成分が含まれます。その代表的な成分がミノキシジルです。
ミノキシジルは元々、高血圧の治療薬として開発されましたが、後に発毛効果があることが発見され、薄毛治療にも転用されました。
外用薬として頭皮に塗布することで、毛包(毛根を包む組織)に直接作用し、髪の毛の成長期を延長させたり、休止期の毛包を刺激して成長期へと移行させたりする作用があります。
さらに、頭皮の血流を改善することで、髪の毛の成長に必要な栄養素や酸素を毛根まで届けやすくする作用もあると考えられています。
内服薬と併用することで、AGAの進行抑制と発毛促進の両面からアプローチすることができ、より高い治療効果が期待できます。
各治療薬の注意点と副作用
AGA治療薬は高い効果を発揮しますが、医薬品であるため、注意点や副作用が存在します。
内服薬(フィナステリド、デュタステリド)の主な副作用には、性機能の低下(性欲減退、勃起不全など)や肝機能障害などが報告されています。
外用薬(ミノキシジル)の副作用としては、頭皮のかゆみ、かぶれ、赤み、初期脱毛などが挙げられます。稀に動悸やめまいといった全身性の症状が出ることもあります。
これらの副作用の発生頻度は低いものの、治療を開始する前には医師から副作用について十分な説明を受けることが重要です。
また、治療中に何らかの異常を感じた場合は、自己判断で服用を中止せず、速やかに医師に相談してください。
AGA治療を安全に進めるためには、医師の指導のもとで正しく薬を使用し、定期的な経過観察を受けることが大切になります。
主なAGA治療薬の作用と副作用
| 成分名 | 主な作用 | 注意すべき副作用 |
|---|---|---|
| フィナステリド | DHT生成抑制、抜け毛の抑制 | 性機能低下、肝機能障害 |
| デュタステリド | DHT生成抑制(より広範囲) | 性機能低下、肝機能障害、胎児への影響 |
| ミノキシジル | 発毛促進、血流改善 | 頭皮の炎症、初期脱毛、動悸 |
自力でできる育毛対策の基本
健やかな髪を育むための体づくり
AGA治療が医学的な「発毛」を担う一方で、自力でできる「育毛」対策は、髪が生える土壌である頭皮と体の健康を整えることに焦点を当てます。
髪の毛は、私たちが摂取した栄養素から作られており、体全体の健康状態が髪に正直に反映されます。
したがって、育毛の基本は、バランスの取れた食生活、十分な睡眠、適度な運動といった、健やかな体づくりにあります。
これらの生活習慣の改善は、血行を良くし、ストレスを軽減し、ホルモンバランスを整える効果があり、結果として髪の成長を妨げる要因を取り除くことに繋がります。
特に、食事の偏りや睡眠不足が続いている方は、これらを改善するだけで髪のハリやコシが回復し、抜け毛が減ることを実感できる場合があります。
育毛対策における生活習慣の重要性
不規則な生活習慣は、自律神経やホルモンバランスを乱し、頭皮の血行不良を引き起こす大きな原因となります。例えば、夜更かしによる睡眠不足は、髪の成長を促す成長ホルモンの分泌を妨げます。
また、喫煙は血管を収縮させ、毛根への栄養供給を阻害するため、育毛の観点からは避けるべき習慣です。過度な飲酒も肝臓に負担をかけ、髪の生成に必要な栄養素の代謝を悪くする可能性があります。
これらの生活習慣を整えることは、育毛剤の効果を最大限に引き出すためにも非常に重要です。いくら高価な育毛剤を使用しても、土台となる体が不健康であれば、期待する効果は得られません。
規則正しい生活を送ることは、お金をかけずにできる、最も重要で効果的な育毛対策の一つと言えます。
自力での育毛効果の限界と見極め
自力での育毛対策は、健康な髪を維持し、細くなった髪にハリ・コシを取り戻す上で非常に有効ですが、その効果には限界があります。
特に、薄毛の原因が進行性のAGAである場合、自力での対策だけで完全に髪を生やすことは極めて困難です。なぜなら、育毛対策はDHTによる毛根への悪影響を根本から止める作用を持たないからです。
もし、数ヶ月間(例えば3ヶ月から6ヶ月)真剣に生活習慣の改善や育毛剤の使用に取り組んでも、抜け毛の減少や髪のボリュームアップといった効果を実感できない場合は、薄毛がAGAによって引き起こされている可能性を考慮し、専門クリニックでの受診を検討する必要があります。
自力での対策で結果が出ないにもかかわらず、治療を先延ばしにすることは、毛根の機能が完全に失われるリスクを高めてしまいます。
育毛のために見直すべき食事と栄養素
髪の主成分となるタンパク質の摂取
髪の毛の約80%から90%は、ケラチンというタンパク質で構成されています。したがって、健康な髪を生成するためには、良質なタンパク質を毎日の食事でしっかりと摂取することが必要です。
タンパク質は肉、魚、卵、大豆製品などに豊富に含まれています。しかし、一度に大量に摂取するのではなく、毎食でバランス良く摂取することが大切です。
特に、ケラチンを構成するアミノ酸を効率よく体内に取り込むためには、動物性と植物性のタンパク質を偏りなく組み合わせるのが望ましいです。
タンパク質が不足すると、体は生命維持に必要な臓器に優先的にタンパク質を供給するため、髪の毛への供給が後回しになり、細く弱々しい髪しか育たなくなります。
薄毛改善を目指すなら、毎日の食卓でタンパク質を意識的に取り入れてください。
髪の成長を助けるビタミンとミネラル
タンパク質が髪の材料であるとすれば、ビタミンやミネラルは、その材料を効率よく加工し、髪の成長をサポートする「潤滑油」のような役割を果たします。
特に、亜鉛はタンパク質の合成を助け、髪の主成分であるケラチンの生成に深く関わる重要なミネラルです。
また、ビタミンB群の一種であるビオチンや、頭皮の血行を改善するビタミンE、抗酸化作用を持つビタミンCなども、健康な髪の成長には必要です。
これらの栄養素は、特定の食品に偏らず、野菜、果物、海藻類など、様々な食品からバランス良く摂取するのが理想的です。
サプリメントで補給することも一つの方法ですが、基本は食事からの摂取を心がけましょう。
育毛に重要な栄養素と主な食品
| 栄養素 | 役割 | 主な食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチンの材料) | 鶏むね肉、魚類、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を促進 | 牡蠣、牛肉、レバー、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | エネルギー代謝を助け、血行を改善 | 玄米、豚肉、レバー、乳製品 |
育毛の妨げとなる食習慣の改善
育毛を成功させるためには、積極的に摂取すべき栄養素だけでなく、避けるべき食習慣も理解し、改善することが大切です。過剰な脂質や糖質の摂取は、皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境の悪化に繋がります。
皮脂が毛穴に詰まると、炎症や雑菌の繁殖の原因となり、健康な髪の成長を妨げます。特に、ファストフードやスナック菓子、甘い清涼飲料水などの摂取頻度が高い方は注意が必要です。
また、過度なダイエットや偏食も、必要な栄養素が不足し、結果として抜け毛や薄毛を進行させてしまう可能性があります。
育毛は体質改善そのものであり、一時的な食事制限ではなく、長期的に継続できる栄養バランスの取れた食習慣を身につけることが重要です。
規則正しい時間に食事を摂り、栄養素を過不足なく補給するよう努めてください。
効果的なヘアケアと頭皮環境の整え方
正しいシャンプーの方法と選び方
頭皮環境は、髪が生える土壌です。この土壌を清潔に保ち、健康な状態に整えるために、シャンプーは非常に重要な役割を果たします。
まず、シャンプーの選び方ですが、洗浄力が強すぎるものは必要な皮脂まで取り除いてしまい、乾燥や炎症の原因となることがあります。
アミノ酸系などの、比較的マイルドな洗浄成分を持つシャンプーを選ぶのが望ましいです。
次に、正しいシャンプーの方法ですが、シャンプー剤を手のひらで泡立ててから、頭皮を指の腹で優しくマッサージするように洗うのが基本です。
爪を立てたり、ゴシゴシと強く擦ったりすることは、頭皮を傷つけ、炎症を引き起こす原因となるので避けてください。
洗髪後は、シャンプーやコンディショナーの成分が頭皮に残らないよう、ぬるま湯で時間をかけて丁寧に洗い流すことが必要です。
血行促進のための頭皮マッサージ
頭皮の血行は、毛根に栄養を運ぶ上で極めて大切です。血行が滞ると、いくら良い栄養を摂取しても、髪の成長に必要な分が毛根まで届きにくくなってしまいます。
頭皮マッサージは、この血行を物理的に改善し、育毛効果を高めるために非常に有効な手段です。シャンプー中やお風呂上がり、あるいはリラックスタイムを利用して、毎日数分間行うことを習慣にしましょう。
マッサージを行う際は、力を入れすぎず、頭皮全体を動かすことを意識しながら、指の腹を使って優しくもみほぐします。
特に、頭頂部や、血行が滞りやすい耳の周りから頭頂部にかけての部分を重点的に行うと良いでしょう。
頭皮マッサージの基本手順
| 手順 | 意識する点 | 時間目安 |
|---|---|---|
| 両手の指の腹を側頭部に当てる | 頭皮を円を描くように優しく動かす | 30秒 |
| 指を後頭部から首筋にかけて移動させる | 下から上へ引き上げるように揉む | 30秒 |
| 頭頂部全体を軽くタッピングする | 血行を促すイメージで刺激を与える | 30秒 |
育毛剤の選び方と正しい使い方
自力での育毛対策において、育毛剤は頭皮環境を整え、髪の成長をサポートする目的で活用されます。育毛剤を選ぶ際には、ご自身の頭皮の状態や目的に合った成分が含まれているかを確認することが大切です。
例えば、頭皮の炎症を抑える成分、血行を促進する成分、保湿成分などが挙げられます。ただし、育毛剤は医薬品であるAGA治療薬とは異なり、新しい毛を発毛させる効果は認められていません。
あくまで今生えている髪の毛を健やかに育てるための「育毛」をサポートするものです。
育毛剤の効果を最大限に引き出すには、正しい使い方が重要になります。使用回数や量は製品によって定められているので、それを守って使用してください。
また、清潔な頭皮に使用することが基本であるため、洗髪後、髪をしっかりと乾かしてから使用するのが効果的です。
育毛剤を塗布した後は、成分を頭皮全体に行き渡らせるために、軽くマッサージを行うのも有効です。継続して使用することで効果が期待できるものなので、最低でも数ヶ月は使い続けることが大切です。
育毛剤に含まれる成分の例としては、以下のようなものがあります。
- センブリエキス
- グリチルリチン酸ジカリウム
- パントテニルエチルエーテル
発毛・育毛効果を高める生活習慣の工夫
質の高い睡眠をとる
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、髪の毛を含む体の細胞の修復と成長を促す役割を果たします。特に、夜間の特定の時間帯に深い睡眠(ノンレム睡眠)をとることで、成長ホルモンは活発に分泌されます。
睡眠不足や質の低い睡眠が続くと、この成長ホルモンの分泌が滞り、髪の成長が妨げられてしまいます。単に長時間眠るだけでなく、規則正しい時間に就寝・起床し、睡眠の質を高める工夫が必要です。
寝る前のスマートフォン操作を控える、カフェインの摂取を避ける、寝室の温度や湿度を快適に保つなど、質の高い睡眠を確保するための環境づくりが育毛効果を高めるために必要となります。
適度な運動で全身の血流を改善
適度な運動は、全身の血流を促進する効果があります。髪の成長に必要な栄養素は血液に乗って毛根まで運ばれるため、血流が良い状態を保つことは育毛にとって重要です。
激しすぎる運動はかえって体に負担をかけ、ストレスホルモンを分泌させてしまう可能性があるため、ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどの有酸素運動を無理のない範囲で継続することが望ましいです。
特に、肩こりや首こりがある方は、これらの血流不良が頭皮の血行にも影響を与えている可能性があるため、運動やストレッチでこれらの部位の緊張をほぐすことも大切になります。
運動によって代謝が上がり、皮脂の分泌が促される場合もあるため、運動後のシャンプーで頭皮を清潔に保つことも忘れないでください。
ストレスを上手に管理する
精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて血行不良を引き起こす大きな要因です。
ストレスが長期的に続くと、頭皮への血流が悪化し、毛根への栄養供給が滞ることで抜け毛が増える可能性があります。
また、過度なストレスは、円形脱毛症などの他の脱毛症を引き起こす引き金になることもあります。
育毛を成功させるためには、ストレスをゼロにすることは不可能だと理解し、ストレスを上手に管理することが大切です。
趣味の時間を持つ、リラックスできる入浴時間を設ける、瞑想や深呼吸を取り入れるなど、自分に合ったストレス解消法を見つけ、定期的に実践してください。
ストレスと薄毛の関係
| ストレスの影響 | 育毛への悪影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 自律神経の乱れ | 血管収縮による血行不良 | リラックス、瞑想 |
| ホルモンバランスの乱れ | ヘアサイクルの乱れを招く | 質の高い睡眠 |
| 免疫機能の低下 | 頭皮環境の悪化や炎症 | 適度な運動、食生活改善 |
よくある質問
- AGA治療をやめるとどうなりますか?
-
AGA治療薬は、服用している間だけAGAの原因物質(DHT)の生成を抑制したり、発毛を促進したりする作用を発揮します。
そのため、治療を中断すると、AGAの進行が再開し、再び抜け毛が増えたり、せっかく生えた髪が細くなったりして、元の状態に戻ってしまう可能性が極めて高いです。
AGAは進行性の脱毛症であることを理解し、効果を維持するためには、医師と相談しながら治療を継続することが大切です。
- 自力での育毛対策で髪が生えることはありますか?
-
「育毛」対策は、髪の成長をサポートし、今ある髪を健康に太く、強く育てる効果は期待できますが、完全に毛が抜けてしまった場所や、AGAによって機能が停止した毛根から新しい毛を発毛させることは困難です。
薄毛の原因がAGAである場合、根本的な改善にはAGA治療薬による医学的なアプローチが必要になります。
自力での対策は、あくまでAGA治療の効果を高める補助的な役割、または薄毛の予防策として考えます。
- どのくらいの期間で効果を実感できますか?
-
AGA治療であっても、自力での育毛対策であっても、髪の毛の成長には一定の期間が必要です。
ヘアサイクルに基づき、毛が生え変わるのには時間がかかるため、効果を実感できるようになるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続が必要とされています。
特にAGA治療の場合は、治療開始直後に一時的に抜け毛が増える初期脱毛を経てから効果が現れるため、焦らずに長期的な視点で取り組むことが重要です。
- 若い世代でもAGA治療を始めるべきでしょうか?
-
AGAは進行性の脱毛症であり、発症年齢に関わらず、進行が始まっているのであれば早めに治療を開始することが望ましいです。
毛根が完全に失われてしまうと、治療薬による効果も得られにくくなります。
20代や30代で薄毛の兆候が見られる場合でも、早期に専門医の診断を受け、進行を食い止める治療を始めることで、将来的な薄毛の悩みを最小限に抑えることができます。
- 女性でも同じ治療や対策で髪は生えますか?
-
女性の薄毛(FAGAやびまん性脱毛症など)は、男性のAGAとは原因や発症の仕方が異なる場合が多いです。女性の薄毛治療には、男性用のAGA治療薬が使えないものもあります。
特に内服薬の中には女性が服用できない、または推奨されない成分があるため、必ず女性の薄毛治療に特化した専門医の診断と指導を受ける必要があります。
自力での育毛対策(食事、睡眠、ヘアケア)は男女問わず有効ですが、治療薬については専門家の指示に従ってください。
Reference
ADIL, Areej; GODWIN, Marshall. The effectiveness of treatments for androgenetic alopecia: a systematic review and meta-analysis. Journal of the American Academy of Dermatology, 2017, 77.1: 136-141. e5.
GUPTA, Aditya K.; BAMIMORE, Mary A.; FOLEY, Kelly A. Efficacy of non-surgical treatments for androgenetic alopecia in men and women: a systematic review with network meta-analyses, and an assessment of evidence quality. Journal of Dermatological Treatment, 2022, 33.1: 62-72.
GUPTA, Aditya K., et al. Efficacy of non‐surgical treatments for androgenetic alopecia: a systematic review and network meta‐analysis. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2018, 32.12: 2112-2125.
YORK, Katherine, et al. A review of the treatment of male pattern hair loss. Expert opinion on pharmacotherapy, 2020, 21.5: 603-612.
FELDMAN, Peter R., et al. Hair regrowth treatment efficacy and resistance in androgenetic alopecia: A systematic review and continuous Bayesian network meta-analysis. Frontiers in medicine, 2023, 9: 998623.
YORK, Katherine, et al. Treatment review for male pattern hair-loss. Expert Opin Pharmacother, 2020, 21.5: 603-612.
GUPTA, Aditya K., et al. Relative efficacy of minoxidil and the 5-α reductase inhibitors in androgenetic alopecia treatment of male patients: a network meta-analysis. JAMA dermatology, 2022, 158.3: 266-274.
POZO-PÉREZ, Lorena; TORNERO-ESTEBAN, Pilar; LÓPEZ-BRAN, Eduardo. Clinical and preclinical approach in AGA treatment: a review of current and new therapies in the regenerative field. Stem cell research & therapy, 2024, 15.1: 260.
NTSHINGILA, Sincengile, et al. Androgenetic alopecia: An update. JAAD international, 2023, 13: 150-158.
VAROTHAI, Supenya; BERGFELD, Wilma F. Androgenetic alopecia: an evidence-based treatment update. American journal of clinical dermatology, 2014, 15.3: 217-230.

