「最近、髪の毛が細くなってきた気がする」「ボリュームが減ってスタイリングが決まらない」と感じる男性は少なくありません。
髪の毛が細くなると、全体的に薄く見えてしまうこともあり、深刻な悩みにつながることもあります。髪の毛を太くする育毛剤を探している方は、ハリやコシを与える成分に着目することが大切です。
この記事では、髪の毛が細くなる原因から、育毛剤の役割、選び方のポイント、そして効果的な使い方まで、詳しく解説します。
自分に合った育毛剤を見つけ、自信の持てる髪を目指しましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
なぜ髪の毛は細くなる?主な原因を探る
髪の毛が細くなる現象(軟毛化)は、見た目の印象に大きく影響します。この変化は、髪の毛の成長サイクルであるヘアサイクルが乱れることによって引き起こされます。
太く健康な髪が育つ「成長期」が短くなり、十分に成長しきれないまま抜け落ちてしまうのです。このヘアサイクルの乱れには、いくつかの要因が関係しています。
加齢による変化とヘアサイクル
年齢を重ねると、体のさまざまな機能が低下するのと同様に、髪の毛を生み出す毛母細胞の働きも徐々に鈍くなります。
細胞分裂の速度が遅くなると、髪の毛が太く長く成長する期間、すなわち「成長期」が短縮される傾向にあります。
また、髪の毛の色素(メラニン)を生成する細胞の機能も低下し、白髪が増えるのと並行して、髪の毛自体の構造も細く、弱くなりやすいのです。
生活習慣の乱れの影響
日々の生活習慣は、頭皮環境や髪の成長に直結します。特に食生活の乱れは深刻です。髪の毛は主に「ケラチン」というタンパク質で構成されています。
そのため、偏った食事でタンパク質や、その合成を助けるビタミン、ミネラル(特に亜鉛)が不足すると、健康な髪の原料が足りず、細く弱い髪しか作れなくなります。
また、睡眠不足は成長ホルモンの分泌を妨げ、毛母細胞の修復や成長が十分に行われなくなります。
男性ホルモンと頭皮環境
男性型脱毛症(AGA)は、男性ホルモンが大きく関与しています。テストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素によって、より強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されると、このDHTが毛乳頭細胞の受容体と結合し、髪の成長を妨げる信号を出します。
その結果、成長期が極端に短くなり、髪の毛が太くなる前に抜けてしまうのです。
また、皮脂の過剰分泌などで頭皮環境が悪化すると、毛穴が詰まったり、炎症が起きたりして、健康な髪の成長を妨げる原因にもなります。
ストレスや遺伝的要因
精神的なストレスは、自律神経やホルモンバランスを乱す原因となります。交感神経が優位になると血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。
血流が悪くなると、髪の成長に必要な酸素や栄養素が毛母細胞に届きにくくなり、結果として髪の毛が細くなります。
さらに、AGAの発症しやすさや、髪の毛の太さ・性質は、遺伝的な要因も影響すると考えられています。家族に髪が細い方や薄毛の方がいる場合、体質的に影響を受けやすい可能性も考慮する必要があります。
「髪を太くする」育毛剤の役割とは
「髪の毛を太くする」と聞くと、細い髪が直接的に太い髪に変わるようなイメージを持つかもしれません。
しかし、育毛剤の主な役割は、現在生えている髪そのものを太くすることよりも、これから生えてくる髪が健康に、太く育つための「頭皮環境を整える」ことにあります。
ヘアサイクルを正常化し、成長期を長く保つことで、結果的にハリやコシのある太い髪が育つことを目指します。
育毛剤の基本的な働き
育毛剤は、医薬部外品に分類されるものが多く、その主な目的は「脱毛の予防」「育毛・養毛」です。
具体的には、頭皮の血行を促進して毛母細胞に栄養を届けやすくしたり、頭皮の炎症を抑えてフケやかゆみを防いだり、頭皮に潤いを与えて乾燥を防いだりする成分が含まれています。
これらの働きによって、髪の毛が健やかに育つ土台(頭皮環境)を整え、細く弱々しい髪ではなく、しっかりとハリ・コシのある髪が育つようサポートします。
あくまで「今ある髪を守り、育てる」のが基本的な役割です。
発毛剤やAGA治療薬との違い
育毛剤としばしば混同されるものに「発毛剤」があります。
発毛剤は、医薬品に分類され、「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」といった明確な効果・効能が認められています。
代表的な成分には「ミノキシジル」があり、これは毛母細胞に直接働きかけ、新たな髪を生やしたり、今ある髪を太く成長させたりする作用を持ちます。
一方で、育毛剤(医薬部外品)は、新たな髪を生やす効果(発毛効果)は認められていません。
AGA治療薬(内服薬など)は、医師の診断のもと処方される医薬品であり、AGAの原因である男性ホルモンの働きを抑制するなど、より積極的な治療に用います。
育毛剤と発毛剤の主な違い
| 項目 | 育毛剤(医薬部外品) | 発毛剤(第1類医薬品) |
|---|---|---|
| 分類 | 医薬部外品 | 医薬品(第1類) |
| 主な目的 | 育毛、脱毛予防、頭皮環境改善 | 発毛、育毛、脱毛進行予防 |
| 代表成分 | センブリエキス、グリチルリチン酸2Kなど | ミノキシジル |
ハリ・コシを与えることの重要性
髪の毛が細くなると、1本1本の強度が失われ、全体的にペタッとした印象になりがちです。
育毛剤に含まれる成分の中には、髪の内部や表面に作用し、一時的あるいは継続的に髪の毛にハリやコシを与えるものがあります。
こうした働きによって、髪が根元から立ち上がりやすくなり、全体のボリューム感が増したように感じられます。
髪が太く育つまでの間も、使用感としてボリュームアップを実感できることは、育毛ケアを継続するモチベーションにもつながります。
すべての人が太さを実感できるわけではない理由
育毛剤を使用しても、誰もが同じように「髪が太くなった」と実感できるわけではありません。
髪が細くなる原因は人それぞれであり、育毛剤の成分がその人の原因と合致しない場合、期待する効果は得られにくいです。
例えば、AGAが強く進行している場合、育毛剤による頭皮環境の改善だけでは不十分で、発毛剤や専門的な治療が必要かもしれません。
また、効果を実感するまでには、ヘアサイクル(通常2〜6年)を考慮すると、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要であり、短期間で諦めてしまうケースも多いのです。
髪にハリ・コシを与える!注目すべき育毛剤の成分
髪を太く、健康に育てるためには、育毛剤に配合されている成分を理解することが重要です。特に、頭皮環境を整え、血行を促進し、毛母細胞の働きを助ける成分が、ハリやコシのある髪を育む鍵となります。
ここでは、育毛剤を選ぶ際に注目したい代表的な成分カテゴリーを紹介します。
頭皮環境を整える成分
健康な髪は、健康な頭皮という土壌から育ちます。頭皮が乾燥していたり、逆に皮脂が過剰で炎症を起こしていたりすると、髪の成長は妨げられます。
頭皮環境を整えるためには、保湿成分と抗炎症成分が重要です。
保湿成分の例
頭皮が乾燥すると、バリア機能が低下し、かゆみやフケの原因となります。
また、乾燥を防ごうと皮脂が過剰に分泌されることもあります。
セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、アミノ酸、植物エキス(アロエエキス、オウゴンエキスなど)といった保湿成分が、頭皮に潤いを与え、柔軟に保ちます。
抗炎症成分の例
頭皮の赤み、かゆみ、フケなどの炎症は、髪の成長を阻害する要因です。
グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)やアラントイン、センブリエキスなどは、これらの炎症を抑え、頭皮を健やかな状態に保つ働きがあります。
血行を促進する成分
髪の毛母細胞は、毛細血管から運ばれてくる酸素や栄養素を受け取って分裂・増殖し、髪の毛を作り出します。頭皮の血行が悪くなると、これらの供給が滞り、髪は細く弱々しくなってしまいます。
血行を促進する成分は、育毛剤において非常に重要な役割を果たします。
代表的なものに、センブリエキス、トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE誘導体)、ニコチン酸アミド、ニンジンエキス(オタネニンジンエキス)などがあります。
これらは血管を拡張させたり、血流を促したりすることで、毛母細胞への栄養補給をサポートします。
毛母細胞の活性化をサポートする成分
毛母細胞の働きが活発であるほど、髪は太く健康に育ちます。一部の育毛剤には、毛母細胞のエネルギー代謝を高めたり、細胞分裂を促したりすることを目的とした成分が配合されています。
例えば、t-フラバノン(アスチルビン)や、アデノシン(医薬部外品では有効成分として認められていないが、化粧品として配合される場合がある)、特定のペプチドや植物エキス(ビワ葉エキスなど)が、毛母細胞の活性化をサポートするとされています。
髪の毛の土台を支える成分
育毛剤の中には、頭皮環境や毛根へのアプローチだけでなく、髪の毛自体にハリやコシを与えるための成分を含んでいるものもあります。
これらは主に、髪の毛の主成分であるケラチン(タンパク質)や、キューティクルを補修・保護する成分です。
髪のハリ・コシをサポートする成分例
| 成分カテゴリー | 代表的な成分例 | 期待される働き |
|---|---|---|
| タンパク質・アミノ酸 | 加水分解ケラチン、加水分解シルク、アルギニン、グリシン | 髪の毛の内部を補強し、強度や弾力を与える。 |
| キューティクルケア成分 | ペリセア(ジラウロイルグルタミン酸リシンNa)、リピジュア(ポリクオタニウム-51) | 髪の表面をコーティングし、滑らかさやツヤを与え、外部刺激から守る。 |
| 高分子ポリマー | (ジメチコンなどのシリコーン類や、カルボマーなど) | 髪の表面に皮膜を作り、手触りを良くし、ボリューム感を出す。(※配合は製品による) |
これらの成分は、直接的に髪を「太くする」わけではありませんが、髪の毛1本1本を物理的に補強し、ハリやコシを与えることで、全体的なボリュームアップ感を演出し、育毛ケアの満足度を高めます。
【メンズ向け】髪を太くしたい人の育毛剤選びのポイント
市場には数多くの男性向け育毛剤があふれており、どれを選べば良いか迷ってしまう方も多いでしょう。
髪を太く、健康に育てるという目的を達成するためには、自分の頭皮の状態や悩みに合った製品を見極めることが大切です。成分や価格、使用感など、選ぶ際に考慮すべきポイントを解説します。
自分の頭皮タイプ(乾燥肌・脂性肌)に合わせる
育毛剤は毎日頭皮に直接使用するものですから、自分の頭皮タイプに合ったものを選ぶことが基本です。
頭皮が乾燥しがちなのか、それともベタつきやすいのかによって、適した育毛剤は異なります。
頭皮タイプ別のおすすめの選び方
| 頭皮タイプ | 特徴 | 育毛剤選びの傾向 |
|---|---|---|
| 乾燥肌 | 洗髪後つっぱりやすい、フケがカサカサしている | 保湿成分(ヒアルロン酸、セラミドなど)が豊富なもの。アルコール(エタノール)の配合量が少ない、または無配合の低刺激なもの。 |
| 脂性肌(オイリー肌) | 日中ベタつく、フケが湿っぽい、ニオイが気になる | 皮脂の分泌を調整する成分(ビタミンC誘導体など)や、抗炎症成分(グリチルリチン酸2Kなど)を含むもの。さっぱりとした使用感のもの。 |
| 混合肌 | Tゾーンはベタつくが、他はカサつく(頭皮にも同様の傾向) | 保湿を基本としつつ、ベタつきにくいテクスチャーのものを選ぶ。 |
自分の頭皮タイプがわからない場合は、洗髪後、何もつけずに数時間後の頭皮の状態をチェックしてみると良いでしょう。
カサつくなら乾燥肌、ベタつくなら脂性肌の可能性があります。
配合されている成分で選ぶ
前のセクションで解説したように、育毛剤にはさまざまな目的の成分が配合されています。自分の悩みに合わせて、必要な成分が含まれているかを確認しましょう。
例えば、「抜け毛が増えてきた」と感じる場合は、血行促進成分(センブリエキスなど)や毛母細胞の活性化をサポートする成分が重要です。
「フケやかゆみが気になる」場合は、抗炎症成分(グリチルリチン酸2K)や保湿成分が配合されているかがポイントになります。
髪のボリュームダウンが一番の悩みであれば、ハリ・コシを与える成分(ケラチンなど)に注目するのも良いでしょう。
継続しやすい価格と使用感
育毛剤は、魔法の薬ではありません。効果を実感するためには、ヘアサイクルを考慮し、最低でも3ヶ月から6ヶ月、場合によってはそれ以上継続して使用することが必要です。
そのため、経済的に負担なく続けられる価格帯であることは非常に重要です。高価な製品でも、1回きりでは意味がありません。 また、使用感も継続の鍵を握ります。
毎日使うものなので、液だれしやすい、ベタつきがひどい、香りが強すぎるといった製品は、使うのが億劫になってしまいます。
スプレータイプ、ノズルタイプ、スポイトタイプなど、塗布のしやすさも異なります。自分のライフスタイルや好みに合わせて、ストレスなく使えるものを選びましょう。
無添加・低刺激処方かどうかも確認
頭皮は顔の皮膚よりもデリケートな場合があります。特に敏感肌の方や、過去に化粧品でかぶれた経験がある方は、刺激となりうる成分を避けたほうが賢明です。
例えば、アルコール(エタノール)は清涼感や防腐効果がありますが、乾燥肌や敏感肌の方には刺激になることがあります。
その他、香料、着色料、防腐剤(パラベン)、鉱物油、シリコーンなどが無添加(フリー処方)となっている製品も増えています。
全成分表示を確認し、アレルギーテスト済み、パッチテスト済みといった表記があるかどうかも、低刺激な製品を選ぶ際の参考になります。
育毛剤の正しい使い方と効果を高めるコツ
せっかく選んだ育毛剤も、使い方が間違っていては期待する効果を得られません。
育毛剤の成分を頭皮の奥(角質層)までしっかりと浸透させ、その働きを最大限に引き出すためには、正しい使用方法をマスターすることが重要です。
日々の少しの工夫で、育毛ケアの質は大きく変わります。
使用するタイミングと頻度
育毛剤を使用する最適なタイミングは、洗髪後の清潔な頭皮です。シャンプーで頭皮の汚れや余分な皮脂を落とした状態が、最も成分が浸透しやすいからです。
ただし、髪がびしょ濡れのままでは育毛剤が薄まってしまうため、タオルドライでしっかりと水分を拭き取り、ドライヤーで頭皮と髪を7〜8割程度乾かしてから使用するのが理想です。
使用頻度は、製品の指示に従うのが基本ですが、多くは朝晩の1日2回を推奨しています。
特に夜の洗髪後は、髪の成長を促す成長ホルモンが分泌される睡眠時間にも重なるため、欠かさずケアすることをおすすめします。
1回の適量を守る
「たくさんつければ、それだけ効果も高まるはず」と考えるのは間違いです。
一度に大量に使用しても、頭皮が吸収できる量には限界があり、余った分は蒸発したり、流れ落ちたりするだけで無駄になってしまいます。
むしろ、過剰な塗布は頭皮のベタつきや、かゆみなどのトラブルを引き起こす原因にもなりかねません。
各製品に記載されている「1回の使用目安量」を必ず守りましょう。量が少ないと頭皮全体に行き渡らず、効果が半減してしまいます。
適量を守り、それを毎日継続することが何よりも大切です。
頭皮マッサージの併用方法
育毛剤を塗布した後は、頭皮マッサージを行うことで、成分の浸透を助け、さらに頭皮の血行を促進する相乗効果が期待できます。ただし、強い力でゴシゴシこするのは禁物です。
爪を立てず、指の腹を使って優しく行うのがポイントです。
育毛剤塗布後の頭皮マッサージ
| ステップ | マッサージの方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. なじませる | 指の腹で、育毛剤を塗布した部分を軽く押さえる | こすらず、優しく押さえて浸透をイメージする |
| 2. ほぐす | 両手の指の腹で頭皮全体をつかむように置き、円を描くようにゆっくり動かす | 頭皮自体を動かすイメージで。爪を立てない |
| 3. 引き上げる | 生え際から頭頂部へ、側頭部から頭頂部へと、指の腹で優しく引き上げるようにマッサージする | 血流を頭頂部へ送る意識で |
マッサージの時間は、全体で1〜2分程度で十分です。リラックスした状態で行うと、ストレス解消にもつながり、より効果的です。
すぐに効果が出なくても焦らない
育毛剤を使い始めてすぐに髪が太くなるわけではありません。髪の毛には「ヘアサイクル」があり、新しい髪が生えてから成長し、抜け落ちるまでに数年の時間がかかります。
育毛剤の効果は、このサイクルに働きかけ、次に生えてくる髪を健康に育てることにあるため、目に見える変化を感じるまでには時間がかかります。
一般的には、最低でも3ヶ月、できれば6ヶ月は同じ製品を継続して使用し、頭皮や髪の状態の変化をじっくりと観察することが重要です。
短期間で効果が出ないと焦って使用をやめたり、次々と製品を変えたりするのは、最も避けるべきことです。
育毛剤と併用したい!髪を太くするための生活習慣
育毛剤による外側からのケアは重要ですが、それだけで髪の毛が太く健康に育つわけではありません。髪は「体の一部」であり、日々の生活習慣がその状態を大きく左右します。
体の中から髪の成長をサポートする、バランスの取れた食事、良質な睡眠、適切なストレス管理、そして正しいヘアケア。これらすべてが揃って初めて、育毛剤の効果も最大限に発揮されます。
栄養バランスの取れた食事
髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質でできています。そのため、良質なタンパク質の摂取は、太く丈夫な髪の土台作りに必要です。
しかし、タンパク質だけを摂取しても、体内で効率よくケラチンに再合成することはできません。その合成を助けるビタミンやミネラルも同時に摂取することが重要です。
髪の成長に必要な主な栄養素
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食材例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の毛(ケラチン)の主成分 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | ケラチンの合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | タンパク質の代謝、頭皮の健康維持 | レバー、うなぎ、マグロ、カツオ、豚肉、納豆 |
| ビタミンC・E | 抗酸化作用、血行促進 | 緑黄色野菜、果物、ナッツ類、植物油 |
これらの栄養素を特定の食材に偏らず、多様な食品からバランスよく摂取することを心がけましょう。
インスタント食品や脂っこい食事は避け、和食中心の食生活を目指すのが理想です。
質の良い睡眠を確保する
睡眠中、特に深いノンレム睡眠の間に「成長ホルモン」が活発に分泌されます。この成長ホルモンは、体の細胞の新陳代謝を促し、毛母細胞の分裂や髪の毛の成長にも深く関わっています。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、成長ホルモンの分泌が妨げられ、髪の成長に悪影響を及ぼします。
毎日6〜8時間の睡眠時間を確保するよう努め、就寝前はスマートフォンやパソコンの画面を見るのを避け、リラックスできる環境を整えることが大切です。
ストレス管理と解消法
過度なストレスは、自律神経のバランスを崩し、頭皮の血管を収縮させて血行不良を引き起こします。血流が悪くなれば、毛母細胞に十分な栄養が届かず、髪は細く、抜けやすくなります。
現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、自分なりの解消法を見つけることが重要です。適度な運動は、血行促進とストレス解消の両方に効果的です。
趣味に没頭する時間を作ったり、ゆっくりと入浴したりするなど、心身ともにリラックスできる時間を持つよう意識しましょう。
正しいシャンプー方法の見直し
育毛剤の効果を高めるためにも、頭皮環境を清潔に保つシャンプーは基本中の基本です。
しかし、洗いすぎや間違った洗い方は、逆に頭皮を傷つけ、乾燥や皮脂の過剰分泌を招くことがあります。
正しいシャンプーの手順
- ぬるま湯(38度程度)で頭皮と髪を十分に予洗いする
- シャンプーを手のひらでよく泡立て、髪ではなく頭皮を洗う
- 指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗う(爪は立てない)
- すすぎ残しがないよう、時間をかけて念入りに洗い流す
特にシャンプー剤やコンディショナーのすすぎ残しは、毛穴の詰まりや頭皮の炎症につながるため、生え際や襟足まで丁寧にすすぐことが重要です。
また、洗髪後は濡れたまま放置せず、速やかにドライヤーで乾かし、雑菌の繁殖を防ぎましょう。
育毛剤使用時の注意点と限界
育毛剤は、髪の悩みを抱える多くの男性にとって心強い味方ですが、万能薬ではありません。
使用する上での注意点を理解し、その効果の限界も知っておくことが、過度な期待や失望を避け、現実的なヘアケアを続けるために重要です。
場合によっては、専門家への相談も必要になります。
副作用や肌トラブルの可能性
育毛剤(医薬部外品)は、医薬品に比べて作用が穏やかで、副作用のリスクは低いとされています。しかし、体質や頭皮の状態によっては、アレルギー反応や肌トラブルが起こる可能性はゼロではありません。
使用後に赤み、かゆみ、発疹、ひりひり感などの異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、水かぬるま湯で洗い流してください。
症状が改善しない場合や、悪化するようであれば、製品を持参して皮膚科専門医に相談することが必要です。
特にアレルギー体質の方や敏感肌の方は、使用前に目立たない部分(腕の内側など)でパッチテストを行うことをお勧めします。
効果が実感できない場合の対処法
「推奨される期間(3〜6ヶ月)使い続けたのに、まったく変化を感じない」という場合、いくつかの要因が考えられます。
第一に、選んだ育毛剤の成分が、自分の髪が細くなった原因と合っていない可能性があります。例えば、血行不良が主な原因なのに、保湿中心の製品を使っているなどです。
第二に、育毛剤の使い方や、生活習慣(食事、睡眠、ストレス)に改善すべき点が多く残っている場合です。 まずは、使用方法や生活習慣を再度見直してみましょう。
それでも改善が見られない場合は、異なる成分アプローチの育毛剤を試してみるか、次のステップに進むことを検討する必要があります。
AGA(男性型脱毛症)が進行している場合
髪の毛が細くなる原因として、AGA(男性型脱毛症)が強く関わっている場合、育毛剤(医薬部外品)によるケアだけでは、進行を食い止めたり、髪の太さを回復させたりするのが難しいケースがあります。
育毛剤の主な役割は、あくまで「頭皮環境を整え、脱毛を予防すること」です。
生え際が後退してきた、頭頂部が目立ってきたなど、AGAの典型的な症状がみられる場合、育毛剤でのケアと並行して、あるいは育毛剤では不十分と感じた時点で、AGAの専門クリニックや皮膚科を受診し、医師の診断を仰ぐことが賢明です。
AGAは進行性の脱毛症であり、早期の対策が重要です。
専門家への相談も選択肢に
育毛剤を試しても効果が見られない、抜け毛が異常に多い、あるいは自分の頭皮の状態や脱毛の原因が何なのか正確に知りたい場合は、専門家である皮膚科医やAGA専門クリニックの医師に相談しましょう。
医師であれば、マイクロスコープで頭皮の状態を詳細に診断したり、血液検査などで他の病気が隠れていないかを確認したりすることができます。
その上で、ミノキシジル外用薬(発毛剤)や、フィナステリド・デュタステリドといった内服薬の処方など、医学的根拠に基づいた治療法を提案してもらうことが可能です。
自己判断で悩み続けるよりも、専門家の知見を借りることは、解決への確実な一歩となります。
よくある質問
- 育毛剤はどれくらいの期間使えば効果が出ますか?
-
髪の毛には成長期・退行期・休止期というヘアサイクルがあります。育毛剤は、このサイクルに働きかけて頭皮環境を整え、健康な髪が育つのをサポートするものです。
新しく健康な髪が生え、それが育つのを目で見て実感できるようになるまでには、個人差はありますが、一般的に最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要とされています。
短期間で効果を判断せず、根気よくケアを続けることが大切です。
- 育毛剤の使用をやめるとどうなりますか?
-
育毛剤の使用によって頭皮環境が良好に保たれていた場合、使用をやめると、そのサポートがなくなり、元の頭皮の状態に戻っていく可能性があります。
例えば、血行促進成分の効果で保たれていた血流が元に戻ったり、保湿成分で抑えられていた乾燥が再び現れたりすることが考えられます。
その結果、再び髪が細くなったり、抜け毛が増えたりする可能性はあります。育毛剤は、継続的なケアの一環として考えるのが良いでしょう。
- 複数の育毛剤を併用しても良いですか?
-
複数の育毛剤を同時に使用することは推奨されません。異なる製品を混ぜて使うと、それぞれの成分が予期せぬ反応を起こしたり、互いの効果を打ち消し合ったりする可能性があります。
また、どの製品が自分の肌に合っているのか、あるいはトラブルの原因となったのかが分からなくなってしまいます。
基本的には、一つの製品を決め、その使用方法を守って一定期間継続することが重要です。
- 育毛剤は朝と夜、いつ使うのがおすすめですか?
-
多くの育毛剤は、1日2回(朝・夜)の使用を推奨しています。特に重要なのは、夜のシャンプー後の使用です。
シャンプーによって頭皮の汚れや皮脂が落ち、清潔な状態になっているため、育毛剤の成分が最も浸透しやすいからです。
また、就寝中は髪の成長を促す成長ホルモンが分泌されるため、その時間に合わせて頭皮環境を整えておくことは効果的です。
朝の使用は、スタイリング前に行い、頭皮を清潔にした状態で使用するのが良いでしょう。
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