薄毛や抜け毛の予防を考えたとき、「スカルプ育毛剤」は心強い味方です。しかし、市場には多種多様な製品があり、どれが自分に合っているのか迷ってしまう方も多いでしょう。
実は、育毛剤選びで大切なのは、ご自身の「頭皮タイプ」を理解し、それに合った成分や処方の製品を選ぶことです。頭皮環境は人それぞれ異なり、乾燥している方もいれば、皮脂が多い方もいます。
この記事では、スカルプ育毛剤の基本的な知識から、頭皮タイプ(乾燥肌・脂性肌・敏感肌)別の選び方のコツ、さらには効果的な使い方まで、詳しく解説していきます。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
スカルプ育毛剤とは?一般的な育毛剤との違い
スカルプ育毛剤は、特に「頭皮環境(スカルプ)」の改善に焦点を当てた育毛剤(医薬部外品)を指す場合が多いです。
一般的な育毛剤も頭皮環境を整える目的を含みますが、「スカルプ」と明記されている製品は、フケ、かゆみ、乾燥、過剰な皮脂といった頭皮トラブルへ積極的にアプローチする成分を配合している傾向があります。
薄毛や抜け毛の直接的な原因が、乱れた頭皮環境にある場合に適しています。
スカルプケアの目的に焦点を当てた成分
「スカルプ」という言葉が示す通り、これらの製品は髪の毛そのものよりも、髪が育つ土壌である「頭皮」の健康を第一に考えています。
例えば、乾燥を防ぐ保湿成分、フケやかゆみを抑える抗炎症成分、皮脂のバランスを整える成分などが豊富に含まれていることが特徴です。
これらの成分が頭皮を健やかな状態に導き、結果として抜け毛を予防し、髪が育ちやすい環境をサポートします。髪の成長を直接促進するというよりは、育毛の「土台作り」を重視する製品と言えます。
頭皮環境を整えることが主な役割
スカルプ育毛剤の主な役割は、頭皮環境の正常化です。頭皮が乾燥しすぎていると、外部からの刺激に弱くなり、かゆみやフケが発生しやすくなります。
逆に、皮脂が過剰に分泌されると、毛穴が詰まり、炎症を引き起こすこともあります。スカルプ育毛剤は、こうしたアンバランスな状態をケアし、頭皮の水分と油分のバランスを適切に保つことを目指します。
健康な頭皮環境が維持されることで、今ある髪を丈夫に保ち、未来の抜け毛を予防する効果が期待できます。
医薬品の育毛剤(発毛剤)との明確な違い
市場には「育毛剤」と「発毛剤」がありますが、これらは法律(医薬品医療機器等法)によって明確に区別されています。スカルプ育毛剤を含む「育毛剤」の多くは「医薬部外品」に分類されます。
これは、主に「予防」や「衛生」を目的とし、効果・効能が認められた有効成分が一定濃度で配合されていますが、人体への作用は比較的緩やかです。
一方で、「発毛剤」は「医薬品」に分類されます。これは「治療」を目的とし、新しい髪の毛を生やす「発毛」効果が認められた成分(例:ミノキシジルなど)を含みます。
医師の診断が必要な場合もあります。
スカルプ育毛剤は、あくまで今ある髪の健康維持や抜け毛予防、頭皮環境の改善を目的とするものであり、積極的に新しい髪を生やす「発毛」を目的とする医薬品とは異なる点を理解しておく必要があります。
育毛剤(医薬部外品)と発毛剤(医薬品)の比較
| 分類 | 主な目的 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 医薬部外品(育毛剤) | 予防・衛生 | 育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛 |
| 医薬品(発毛剤) | 治療 | 壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防 |
なぜ頭皮タイプ別にスカルプ育毛剤を選ぶ必要があるのか
スカルプ育毛剤を選ぶ上で、ご自身の頭皮タイプを知ることは非常に重要です。
なぜなら、頭皮の状態に合わない製品を使用すると、期待する効果が得られないばかりか、逆に頭皮トラブルを悪化させてしまう可能性があるからです。
例えば、脂性肌の方が高保湿タイプの育毛剤を使うと、頭皮のベタつきが助長されることがあります。適切なケアは、まず自分の頭皮を知ることから始まります。
頭皮タイプは主に4種類
一般的に、顔の肌質と同じように、頭皮もいくつかのタイプに分類できます。主に「普通肌」「乾燥肌」「脂性肌(オイリー肌)」「敏感肌」の4種類に分けられます。
普通肌は水分と皮脂のバランスが取れている理想的な状態です。
しかし、生活習慣の乱れや季節の変化、間違ったヘアケアによって、乾燥肌や脂性肌、あるいは外部刺激に弱い敏感肌に傾いてしまうことがあります。
主な頭皮タイプの特徴
| 頭皮タイプ | 主な特徴 | 起こりやすいトラブル |
|---|---|---|
| 乾燥肌 | 水分も皮脂も不足気味。カサカサしている。 | 細かいフケ、かゆみ、つっぱり感 |
| 脂性肌 | 皮脂分泌が過剰。ベタつきやテカリがある。 | ベタつくフケ、毛穴詰まり、ニオイ、炎症 |
| 敏感肌 | バリア機能が低下。刺激を感じやすい。 | 赤み、かゆみ、ヒリヒリ感、湿疹 |
自分の頭皮タイプを見極める簡単な方法
自分の頭皮がどのタイプに当てはまるか、簡単なセルフチェックで大まかに把握できます。まず、夜にシャンプーをした後、翌朝(または日中)の頭皮の状態を確認してみましょう。
指の腹で頭皮を優しく触ってみてください。もしカサカサしていて、細かいフケが落ちるようなら「乾燥肌」の可能性があります。
逆に、指がベタつく、あるいは脂っぽくテカるようなら「脂性肌」が疑われます。
また、シャンプーや育毛剤がしみたり、特定の製品を使うとすぐにかゆみや赤みが出たりする場合は「敏感肌」の可能性が高いです。
洗髪後、数時間で適度にしっとりし、特にトラブルがなければ「普通肌」に近いと考えられます。
タイプに合わない選び方のリスク
頭皮タイプと合わないスカルプ育毛剤を選んだ場合、いくつかのリスクが伴います。
例えば、乾燥肌の方が、脂性肌向けに作られた皮脂抑制効果の高い製品や、清涼感を出すためにアルコール(エタノール)が多く含まれる製品を使用すると、必要な皮脂まで奪われ、乾燥がさらに進行してしまいます。
その結果、かゆみやフケが悪化し、頭皮のバリア機能が低下してしまいます。
反対に、脂性肌の方が、乾燥肌向けの油分や保湿成分がリッチな製品を使うと、ただでさえ多い皮脂に油分が加わり、毛穴詰まりやベタつきを悪化させる原因になります。
毛穴が詰まると、雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮ニキビや炎症、抜け毛につながる恐れもあります。
頭皮環境の改善が薄毛予防の第一歩
薄毛や抜け毛を予防するためには、髪の毛そのものに栄養を与えること以上に、髪が育つ土壌である頭皮環境を健やかに保つことが大切です。
畑が荒れていると作物が育たないのと同じで、頭皮が乾燥や炎症、皮脂詰まりなどの問題を抱えていると、健康な髪は育ちにくくなります。
スカルプ育毛剤は、その土壌を耕し、整備するためのアイテムです。
自分の頭皮タイプという「畑の状態」を正しく把握し、それに合った「肥料(育毛剤)」を選ぶことが、効果的なスカルプケアと薄毛予防の第一歩となります。
【頭皮タイプ別】スカルプ育毛剤選びのコツ「乾燥肌」編
乾燥肌の頭皮は、水分と皮脂の両方が不足している状態です。頭皮のバリア機能が低下しやすく、外部からのわずかな刺激にも敏感に反応しがちです。
したがって、スカルプ育毛剤選びでは「徹底した保湿」と「低刺激」がキーワードになります。頭皮にうるおいを与え、バリア機能をサポートする成分が含まれた製品を選びましょう。
乾燥肌の頭皮の特徴と起こりやすいトラブル
乾燥肌の頭皮は、見た目にもカサついており、洗髪後につっぱり感を感じることが多いです。皮脂が少ないため、頭皮を守る皮脂膜が十分に形成されません。
その結果、頭皮の水分が蒸発しやすく、外部からのホコリや花粉、紫外線などの刺激を直接受けやすくなります。
こうした状態から、パラパラとした細かい乾性のフケが発生したり、頭皮がムズムズとかゆくなったりします。
かゆいからといって掻きむしると、頭皮が傷つき、さらにバリア機能が低下するという悪循環に陥りがちです。
注目したい保湿成分
乾燥肌の方がスカルプ育毛剤を選ぶ際は、成分表示を確認し、保湿効果の高い成分が配合されているかをチェックしましょう。頭皮に水分を補給し、それを保持する働きのある成分が重要です。
これらの成分が、乾燥した頭皮にうるおいを与え、柔軟に保つのを助けます。
乾燥肌向けの主な保湿成分の例
| 成分カテゴリー | 代表的な成分名 | 期待される働き |
|---|---|---|
| アミノ酸系 | グリシン、アラニン、セリン | NMF(天然保湿因子)の主成分で、水分を保持する |
| 多糖類・高分子系 | ヒアルロン酸Na、コラーゲン | 高い保水力を持ち、頭皮表面にうるおいの膜を作る |
| その他 | セラミド、グリセリン、BG | 角質層の水分を保持し、バリア機能をサポートする |
刺激の少ないアルコールフリーや無添加処方
乾燥肌や、乾燥によって敏感になっている頭皮には、刺激となり得る成分はなるべく避けたいところです。特に注意したいのが「アルコール(エタノール)」です。
アルコールには殺菌作用や清涼感を与えるメリットがありますが、揮発性が高く、頭皮の水分を奪って乾燥を助長する可能性があります。また、スーッとする使用感が刺激に感じることもあります。
「アルコールフリー」や「ノンアルコール」と表示されている製品を選ぶとよいでしょう。また、香料、着色料、パラベン(防腐剤)などが無添加の製品も、頭皮への負担を減らす選択肢となります。
洗浄力がマイルドなシャンプーとの併用
スカルプ育毛剤でのケアと同時に、毎日のシャンプーも見直すことが大切です。
洗浄力が強すぎるシャンプー(高級アルコール系など)を使っていると、頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥を悪化させます。これでは、せっかく育毛剤で保湿しても追いつきません。
シャンプーは、アミノ酸系やベタイン系といった、洗浄力がマイルドで保湿力のあるタイプに切り替えることをおすすめします。
育毛剤での「与えるケア」と、シャンプーでの「洗いすぎないケア」の両立が、乾燥肌改善の鍵です。
【頭皮タイプ別】スカルプ育毛剤選びのコツ「脂性肌(オイリー肌)」編
脂性肌(オイリー肌)の頭皮は、皮脂腺の働きが活発で、皮脂が過剰に分泌されている状態です。
このタイプの方は、頭皮のベタつきやニオイ、毛穴詰まりといったトラブルを抱えやすいため、スカルプ育毛剤選びでは「皮脂コントロール」と「清潔さの維持」が重要なポイントになります。
皮脂の分泌を抑えつつ、毛穴を清潔に保ち、炎症を防ぐ成分に着目しましょう。
脂性肌の頭皮の特徴と皮脂トラブル
脂性肌の頭皮は、洗髪して数時間も経つと、指で触ると脂っぽさを感じたり、髪の毛が束になってベタついたりするのが特徴です。皮脂分泌が多いため、頭皮がテカって見えることもあります。
過剰な皮脂は、古い角質やホコリと混ざり合い、ベタベタとした湿性のフケの原因となります。
さらに、この皮脂をエサにしてマラセチア菌などの常在菌が異常繁殖すると、かゆみや赤み、脂漏性皮膚炎といった炎症トラブルを引き起こすリスクが高まります。
また、皮脂が毛穴に詰まると、髪の健やかな成長を妨げる一因にもなります。
皮脂の過剰分泌を抑える成分
脂性肌向けのスカルプ育毛剤には、皮脂のバランスを整える成分が配合されていることが多いです。これらの成分は、皮脂腺の過剰な働きを穏やかにし、テカリやベタつきを軽減するのに役立ちます。
ビタミンC誘導体や、一部の植物エキスなどがこれに該当します。ただし、皮脂を強力に取り去るのではなく、あくまでバランスを整えることを目的とした製品を選ぶことが大切です。
皮脂を取りすぎると、かえって頭皮が乾燥を感じ、さらに皮脂を分泌しようとする「インナードライ」状態を招くこともあるため注意が必要です。
毛穴詰まりを防ぐ清涼感のある使用感
脂性肌の方は、さっぱりとした使用感を好む傾向があります。スカルプ育毛剤の中には、メントールやハッカ油などを配合し、塗布した際にスーッとした清涼感が得られるものがあります。
こうした使用感は、ベタつきがちな頭皮をリフレッシュさせ、気分的にも心地よくお手入れを続ける助けになります。
また、適度なアルコール(エタノール)配合の製品は、余分な皮脂を拭き取り、毛穴を引き締める収れん効果や、殺菌効果が期待できるため、脂性肌の方にとってはメリットとなる場合もあります。
ただし、アルコールに敏感な方は注意が必要です。
抗炎症成分の重要性
過剰な皮脂は、毛穴詰まりや雑菌の繁殖を招き、頭皮の炎症(赤み、かゆみ、ニオビなど)を引き起こしやすくなります。炎症が慢性化すると、頭皮環境は悪化し、抜け毛にもつながりかねません。
そのため、脂性肌の方は、炎症を未然に防いだり、鎮めたりする「抗炎症成分」が配合されたスカルプ育毛剤を選ぶことが重要です。
有効成分として「グリチルリチン酸ジカリウム」や「アラントイン」などが代表的です。
脂性肌向けの主な有効成分の例
| 成分カテゴリー | 代表的な成分名 | 期待される働き |
|---|---|---|
| 抗炎症成分 | グリチルリチン酸2K、アラントイン | 頭皮の炎症や荒れを防ぎ、かゆみを抑える |
| 皮脂抑制・調整 | ビタミンC誘導体、ピリドキシンHCl(ビタミンB6) | 皮脂の過剰な分泌を抑え、バランスを整える |
| 殺菌成分 | イソプロピルメチルフェノール、ピロクトンオラミン | 雑菌の繁殖を防ぎ、フケやかゆみ、ニオイを抑える |
【頭皮タイプ別】スカルプ育毛剤選びのコツ「敏感肌」編
敏感肌の頭皮は、外部からの刺激に対して非常にデリケートな状態です。
頭皮のバリア機能が低下しており、健康な肌なら問題ないようなわずかな刺激にも、かゆみ、赤み、ヒリヒリ感といった反応を示してしまいます。
したがって、スカルプ育mol剤選びでは、何よりも「頭皮へのやさしさ」と「低刺激処方」を最優先に考える必要があります。
新しい髪を育てる以前に、まずは頭皮を健やかな状態に戻すことが先決です。
敏感肌の頭皮の特徴と刺激への反応
敏感肌の頭皮は、乾燥やアレルギー、体調の変化、ストレスなど、様々な要因によってバリア機能が弱まっています。
そのため、シャンプーやヘアケア製品に含まれる特定の成分、汗、紫外線、さらには髪の毛の摩擦といった日常的な刺激にも過敏に反応しがちです。
季節の変わり目や体調が優れないときに、特に頭皮トラブル(かゆみ、フケ、赤み)が出やすいという方も多いです。
育毛剤に含まれるアルコール(エタノール)やメントールの清涼感が、ヒリヒリとした刺激に感じられることもあります。
低刺激処方(無添加)の確認
敏感肌の方がスカルプ育毛剤を選ぶ際は、成分表を注意深くチェックし、刺激となる可能性のある成分ができるだけ含まれていない製品を選びましょう。
「敏感肌用」「低刺激処方」といった表記がある製品が選択肢になります。また、「無添加」を謳う製品も多いですが、何が「無添加」なのかは製品によって異なります。
一般的に刺激になりやすいとされる成分が含まれていないかを確認することが大切です。
注意したい可能性のある主な添加物
- エタノール(アルコール)
- 合成香料
- 合成着色料
- パラベン(防腐剤)
- シリコン
- 鉱物油
アレルギーテスト・パッチテスト済みの表示
敏感肌の方にとって、「アレルギーテスト済み」や「パッチテスト済み」といった表示は、製品選びの一つの目安になります。
※すべての人にアレルギーや皮膚刺激が起こらないというわけではありません。
これらのテストは、製品が皮膚に対してアレルギー反応や刺激を引き起こしにくいかどうかを、一定の基準で確認したことを示しています。
特に肌がデリケートな方は、こうした安全性の確認に配慮された製品を選ぶと、より安心して使用を開始できるでしょう。
シンプルな成分構成の製品を選ぶ
高機能な育毛剤ほど、多くの種類の成分が配合されている傾向があります。
しかし、敏感肌にとっては、配合されている成分の種類が多ければ多いほど、いずれかの成分が肌に合わない(刺激になる)リスクも高まります。
そのため、あえて有効成分や保湿成分の種類を絞り込み、シンプルな処方で作られている製品を選ぶのも一つの方法です。
まずは頭皮の保湿と保護を基本とし、肌の状態が安定してきたら、育毛効果を期待する成分がプラスされた製品へと移行していく、という考え方も良いでしょう。
スカルプ育毛剤の選び方で他に考慮すべきポイント
頭皮タイプに合った製品を選ぶことは大前提ですが、それ以外にもスカルプ育毛剤を選ぶ上で確認しておきたいポイントがいくつかあります。
特に医薬部外品である育毛剤は、配合されている「有効成分」の効果・効能が認められています。
ご自身の薄毛や抜け毛の悩みに、より的確にアプローチできる成分が含まれているかどうかもチェックしましょう。
薄毛・抜け毛の原因に対応する有効成分
ひとくちに薄毛・抜け毛と言っても、その原因は様々です。血行不良による栄養不足、男性ホルモンの影響、頭皮環境の悪化などが考えられます。
スカルプ育毛剤(医薬部外品)には、これらの原因に働きかける様々な有効成分が配合されています。ご自身の状態に合わせて、必要な成分が配合されているかを確認しましょう。
主な有効成分とその働き
| 期待する働き | 代表的な有効成分 | 主なアプローチ |
|---|---|---|
| 血行促進 | センブリエキス、酢酸トコフェロール(ビタミンE誘導体) | 頭皮の血流を良くし、毛根に栄養を届けやすくする |
| 抗炎症 | グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン | フケやかゆみ、炎症を抑え、頭皮環境を整える |
| 毛母細胞の活性化 | パントテニルエチルエーテル(ビタミンB群) | 毛根にある細胞の働きを助け、育毛を促進する |
継続しやすい価格帯と使用感(テクスチャ)
育毛剤でのスカルプケアは、短期間で結果が出るものではありません。
頭皮環境を改善し、ヘアサイクル(毛周期)を整えるためには、最低でも3ヶ月から6ヶ月、あるいはそれ以上の期間、毎日継続して使用することが重要です。
そのため、経済的に負担なく続けられる価格帯であることは非常に大切なポイントです。
高価な製品をたまに使うよりも、無理のない価格の製品を毎日欠かさず使う方が、結果的に効果を実感しやすいと言えます。
また、毎日のことだからこそ、使用感(テクスチャ)の好みも重要です。
液だれしにくい「とろみタイプ(ジェル状)」、広範囲に塗布しやすい「ミストタイプ(スプレー)」、ピンポイントで塗布しやすい「液体タイプ(ローション)」などがあります。
ベタつきが苦手な方はサラッとした液体タイプを選ぶなど、ご自身が心地よく使えるものを選びましょう。
塗布しやすいボトルの形状
使用感を左右するもう一つの要素が、ボトルの形状(塗布口)です。育毛剤を頭皮に直接、的確に届けるためには、塗布口が使いやすいかどうかもチェックポイントです。
ボトルの主な形状タイプ
- スプレー(ミスト)タイプ:広範囲に噴霧できるが、髪の毛に付着しやすい側面も。
- ノズルタイプ:先端が細くなっており、髪をかき分けて頭皮に直接塗布しやすい。
- ジェットスプレータイプ:勢いよく噴射され、頭皮にダイレクトに届きやすく清涼感も。
- スポイトタイプ:1回分の使用量を正確に測りやすいが、やや手間がかかる。
ご自身の髪の長さや、どの部分(生え際、頭頂部など)に重点的に塗りたいかに合わせて、使いやすい形状を選びましょう。
香りの有無や強さ
スカルプ育毛剤には、無香料のものから、メントールなどの清涼感のある香り、あるいはシトラス系やハーブ系などの香料が添加されているものまで様々です。
香りは好みが分かれる部分であり、毎日使うものだからこそ、ストレスに感じない香りであることも大切です。
特に、普段から香水や整髪料を使う方は、香りが混ざらないように無香料タイプを選ぶのが無難かもしれません。テスターなどで確認できる場合は、事前に試してみることをおすすめします。
スカルプ育毛剤の正しい使い方と効果を高める頭皮ケア
自分に合ったスカルプ育毛剤を見つけたら、次は「正しく使う」ことが重要です。どんなに良い製品でも、使い方を間違っていては十分な効果を発揮できません。
また、育毛剤だけに頼るのではなく、頭皮マッサージや生活習慣の改善といったトータルケアを意識することで、より健やかな頭皮環境を目指すことができます。
使用するタイミングは「洗髪後の清潔な頭皮」
スカルプ育毛剤を使用するタイミングとして推奨されるのは、1日のうちで最も頭皮が清潔になる「洗髪後」です。
シャンプーで頭皮の皮脂や汚れ、整髪料などをしっかりと洗い流した後が、育毛剤の成分が最も浸透しやすい状態です。
ただし、髪がびしょ濡れのままだと、育毛剤が薄まったり、流れ落ちたりしてしまいます。シャンプー後は、まずタオルで髪と頭皮の水分を優しく拭き取ります。
その後、ドライヤーで頭皮を中心に8割程度乾かします。完全に乾かしきる手前、少し湿り気が残るくらいが、育毛剤を塗布するのに良いタイミングです。
塗布する際の基本的な手順
育毛剤を塗布する際は、髪の毛ではなく「頭皮」に直接つけることを意識します。まず、気になる部分(生え際、頭頂部など)を中心に、髪をかき分けて頭皮を露出させます。
ボトルのタイプ(ノズル、スプレーなど)に応じて、適量を頭皮に塗布します。この時、一箇所に大量につけるのではなく、数カ所に分けて塗布し、頭皮全体に行き渡るようにするのがコツです。
塗布し終わったら、すぐにマッサージするのではなく、まずは指の腹を使って、育毛剤を頭皮全体に優しくなじませます。
頭皮マッサージの併用で血行促進
育毛剤を頭皮になじませた後、頭皮マッサージを取り入れるとさらに効果的です。
マッサージによって頭皮の血行が促進されると、毛根にある毛母細胞へ栄養が届きやすくなり、育毛剤の成分の浸透もサポートされます。
マッサージは、爪を立てず、指の腹を使います。両手の指で頭皮全体を掴むようにし、「押す」「もむ」「引き上げる」といった動きで、頭皮を柔らかくほぐしていきます。
生え際から頭頂部へ、側頭部から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上へ向かって行うと良いでしょう。1回3分から5分程度、心地よいと感じる強さで行います。
生活習慣の見直しも忘れずに
健康な髪を育てるためには、スカルプ育毛剤による外側からのケア(外的アプローチ)と同時に、体の中から整える(内的アプローチ)ことも大切です。
髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。偏った食生活は、髪に必要な栄養素の不足を招きます。
また、睡眠不足や過度なストレス、喫煙習慣は、血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こし、頭皮環境や髪の成長に悪影響を与えます。
育毛剤の効果を最大限に引き出すためにも、日々の生活習慣を見直してみましょう。
健やかな頭皮のための生活習慣ポイント
| 項目 | 意識したいポイント | 理由 |
|---|---|---|
| 食事 | タンパク質、ビタミン、ミネラル(特に亜鉛)をバランス良く摂る | 髪の毛の主成分や、頭皮の健康維持に必要な栄養素を補給する |
| 睡眠 | 質の良い睡眠を6〜7時間程度確保する | 成長ホルモンの分泌を促し、頭皮や髪の細胞の修復を助ける |
| ストレス | 適度な運動や趣味などで、ストレスを溜めない工夫をする | 過度なストレスによる血管収縮(血行不良)を防ぐ |
よくある質問
- スカルプ育毛剤はどれくらいで効果を実感できますか?
-
スカルプ育毛剤は、頭皮環境を整え、ヘアサイクルを正常化させることを目的としています。髪の毛には「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルがあり、この一巡りには数ヶ月から数年かかります。
そのため、効果を実感するまでには個人差がありますが、一般的には最低でも3ヶ月から6ヶ月程度、毎日継続して使用することが推奨されます。
すぐに結果が出ないからといって諦めず、根気よくケアを続けることが大切です。
- 使用を中止するとどうなりますか?
-
スカルプ育毛剤の使用によって頭皮環境が良好に保たれていた場合、使用を中止すると、徐々に元の頭皮状態に戻っていく可能性があります。
育毛剤(医薬部外品)は、主に抜け毛の「予防」や頭皮環境の「維持」を目的としているため、健やかな状態をキープしたい場合は、継続して使用することが望ましいです。
ただし、発毛剤(医薬品)とは異なり、使用をやめたからといって、急激に抜け毛が増えるといったことは考えにくいです。
- 複数の育毛剤を併用してもよいですか?
-
基本的には、複数の育毛剤を併用することは推奨されません。
異なる製品を同時に使用すると、それぞれの製品が持つ成分が干渉し合い、期待した効果が得られなかったり、予期せぬ頭皮トラブルを引き起こしたりする可能性があるからです。
また、どの製品が自分に合っているのかも判断しにくくなります。まずは一つの製品を一定期間(3〜6ヶ月)じっくりと使用し、その効果を見極めるようにしましょう。
- 女性用の製品を男性が使っても問題ありませんか?
-
女性用の育毛剤は、女性の薄毛の原因(ホルモンバランスの乱れや血行不良など)に合わせて成分が配合されていることが多いです。
男性が使用しても大きな問題が生じることは考えにくいですが、男性特有の薄毛の原因(男性ホルモンの影響など)へのアプローチは弱い可能性があります。
男性は、男性の頭皮環境や薄毛の原因を考慮して開発された、男性用のスカルプ育毛剤を選ぶ方が、よりご自身の悩みに合ったケアができると考えられます。
- スカルプ育毛剤に副作用はありますか?
-
スカルプ育毛剤(医薬部外品)は、医薬品に比べて人体への作用が緩やかであり、重篤な副作用が起こる可能性は低いとされています。
ただし、体質や頭皮の状態によっては、配合されている成分(アルコールや植物エキスなど)が肌に合わず、かゆみ、赤み、かぶれといったアレルギー反応や皮膚刺激が起こることがあります。
使用中に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、水かぬるま湯で洗い流してください。症状が改善しない場合は、皮膚科専門医に相談することをおすすめします。
Reference
YORK, Katherine, et al. A review of the treatment of male pattern hair loss. Expert opinion on pharmacotherapy, 2020, 21.5: 603-612.
OLSEN, Elise A. Current and novel methods for assessing efficacy of hair growth promoters in pattern hair loss. Journal of the American Academy of Dermatology, 2003, 48.2: 253-262.
OLSEN, Elise A., et al. Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss. Journal of the American Academy of Dermatology, 2005, 52.2: 301-311.
MANABE, Motomu, et al. Guidelines for the diagnosis and treatment of male‐pattern and female‐pattern hair loss, 2017 version. The Journal of Dermatology, 2018, 45.9: 1031-1043.
JIMENEZ, Joaquin J., et al. Efficacy and safety of a low-level laser device in the treatment of male and female pattern hair loss: a multicenter, randomized, sham device-controlled, double-blind study. American journal of clinical dermatology, 2014, 15.2: 115-127.
TOSTI, Antonella; SCHWARTZ, James R. Role of scalp health in achieving optimal hair growth and retention. International journal of cosmetic science, 2021, 43: S1-S8.
SINCLAIR, Rodney, et al. Hair loss in women: medical and cosmetic approaches to increase scalp hair fullness. British Journal of Dermatology, 2011, 165.s3: 12-18.
VAN NESTE, D. J. J.; RUSHTON, D. H. Gender differences in scalp hair growth rates are maintained but reduced in pattern hair loss compared to controls. Skin Research and Technology, 2016, 22.3: 363-369.
BANKA, Nusrat; BUNAGAN, MJ Kristine; SHAPIRO, Jerry. Pattern hair loss in men: diagnosis and medical treatment. Dermatologic clinics, 2013, 31.1: 129-140.
WOLFF, Hans; FISCHER, Tobias W.; BLUME-PEYTAVI, Ulrike. The diagnosis and treatment of hair and scalp diseases. Deutsches Ärzteblatt International, 2016, 113.21: 377.

