前頭部のマッサージはM字はげ(AGA)に効く?頭皮の血行を促す方法

前頭部のマッサージはM字はげ(AGA)に効く?頭皮の血行を促す方法

鏡を見るたび、前頭部やM字部分の後退が気になり、「前頭葉のマッサージが効くかもしれない」と情報を探していませんか。その気持ち、とてもよく分かります。

薄毛の悩みは深刻ですが、何か自分でできることはないかと考えるのは自然なことです。

この記事では、前頭部のマッサージがM字はげ(AGA)に対してどのような意味を持つのか、そして頭皮の血行を促すための具体的な方法について詳しく解説します。

マッサージが持つ可能性と限界を正しく理解し、育毛剤など他の対策とどう組み合わせるべきか、あなたの疑問に答えます。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

前頭部のマッサージとM字はげ(AGA)の関係性

前頭部のマッサージがM字はげ(AGA)に直接的な治療効果を持つわけではありませんが、頭皮環境を整え、髪の成長をサポートする上で無関係ではありません。

AGAは主に男性ホルモンの影響で起こるため、マッサージだけで進行を止めることは困難です。しかし、マッサージによる血行促進は、毛根へ栄養を届ける助けとなります。

M字はげ(AGA)が進行する主な要因

M字はげ、いわゆる男性型脱毛症(AGA)の進行には、複数の要因が関わっています。最も大きな要因は遺伝的な素因と男性ホルモンの影響です。

具体的には、テストステロンという男性ホルモンが、5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。

このDHTが毛乳頭細胞にある受容体と結合することで、毛髪の成長期が短縮され、毛髪が細く短くなり、最終的には抜け落ちてしまいます。

特に前頭部や頭頂部はこのDHTの影響を受けやすいとされています。

遺伝的に5αリダクターゼの活性が高い、あるいはアンドロゲン受容体の感受性が高い体質を持つ人は、AGAを発症しやすい傾向があります。これらに加えて、生活習慣の乱れも無視できません。

ストレス、睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、喫煙などは、頭皮の血行不良を引き起こし、毛髪の健やかな成長を妨げる要因となります。

AGAの根本原因はホルモンと遺伝ですが、これらの環境要因が進行を早める可能性があります。

マッサージが頭皮に与える直接的な影響

頭皮マッサージは、物理的な刺激を頭皮に与える行為です。指の腹や専用の器具を使って頭皮を動かすことで、主に二つの直接的な影響が期待できます。

一つ目は、頭皮の血行促進です。頭皮には毛細血管が張り巡らされており、血液を通じて毛根にある毛母細胞へ酸素や栄養素が運ばれます。

マッサージによって血管が刺激され、血流が改善することで、これらの栄養素が毛根に行き渡りやすくなります。

二つ目は、頭皮の柔軟性の改善です。ストレスや長時間のデスクワークによる緊張で、頭皮は硬くなりがちです。硬くなった頭皮は血行不良を招くだけでなく、毛穴の詰まりや皮脂の過剰分泌にも関連することがあります。

マッサージによって頭皮の筋肉(前頭筋、側頭筋、後頭筋)の緊張をほぐし、頭皮全体を柔らかく保つことは、健康な髪が育つ土壌を整える上で重要です。

血行促進が毛髪にもたらすメリットとは

頭皮の血行が促進されると、毛髪の成長サイクル(ヘアサイクル)に良い影響を与えます。毛髪は、毛根の最深部にある毛乳頭が毛細血管から栄養を受け取り、毛母細胞が分裂・増殖することで成長します。

血流が滞ると、毛母細胞は十分な栄養や酸素を受け取れず、活動が鈍化してしまいます。

血行が促進され、毛根への栄養供給がスムーズに行われるようになると、毛母細胞の活動が活発化し、健康で太い髪が育ちやすくなります。

また、血液は栄養を運ぶだけでなく、老廃物を運び去る役割も担っています。

血行が良い状態を保つことで、頭皮の新陳代謝が促され、老廃物が溜まりにくいクリーンな頭皮環境を維持することにもつながります。

これは、抜け毛の予防や育毛において基礎的ながら非常に大切な要素です。

マッサージだけでAGAは改善するのか

結論から言うと、前頭部のマッサージだけでAGAを根本的に改善したり、進行を完全に止めたりすることは難しいです。

前述の通り、AGAの主な原因は男性ホルモンDHTの影響であり、マッサージはこのDHTの生成を抑制したり、毛乳頭への作用をブロックしたりするものではないからです。

マッサージはあくまで「頭皮環境の改善」や「血行促進」を目的とした補助的なケアと位置づけるのが適切です。

AGAの進行を抑制するためには、育毛剤の使用や、必要に応じて専門のクリニックで処方される内服薬(5αリダクターゼ阻害薬など)や外用薬(ミノキシジルなど)による治療が中心となります。

マッサージは、これらの本格的なAGA対策の効果を最大限に引き出すための「土台作り」として非常に有効な手段と言えるでしょう。

前頭部のマッサージは本当に効果があるのか

前頭部のマッサージは、AGAの直接的な治療にはならないものの、頭皮環境を整えるという点で一定の効果が期待できます。

特に「頭皮の硬さ」を感じている人にとっては、マッサージによる血行促進と柔軟性の回復は、薄毛対策の重要な一環となります。

頭皮の硬さが引き起こす問題

「頭皮が硬い」と感じる状態は、多くの場合、頭蓋骨の上にある筋肉(帽状腱膜やそれに付随する前頭筋・側頭筋・後頭筋)が緊張し、こわばっていることを示します。

この緊張は、精神的なストレスや長時間の同じ姿勢(特にPC作業やスマートフォンの使用)によって引き起こされます。

頭皮が硬くなると、その下を走る毛細血管が圧迫され、血流が悪化します。血流が悪化すれば、当然ながら毛根への栄養供給が滞り、髪の成長が妨げられます。

また、頭皮の柔軟性が失われると、皮脂や古い角質が毛穴に詰まりやすくなり、炎症やかゆみといった頭皮トラブルの原因にもなり得ます。

前頭部、特にM字部分は皮膚が薄く、筋肉の動きも少ないため、特に硬くなりやすく、血行不良の影響を受けやすい部位です。

マッサージによる頭皮環境の変化

頭皮マッサージを継続的に行うことで、硬直した筋肉がほぐれ、頭皮に柔軟性が戻ってきます。頭皮が柔らかくなると、圧迫されていた毛細血管が解放され、血流が改善します。

指で頭皮を動かしたときに、頭皮が頭蓋骨の上をスムーズに動く感覚が得られるようになれば、柔軟性が改善しているサインです。

血流が改善すれば、毛根への栄養デリバリーが向上するだけでなく、頭皮のターンオーバー(新陳代謝)も正常化しやすくなります。

その結果、フケやかゆみなどのトラブルが減少し、髪が育ちやすい健康な頭皮環境へと変化していくことが期待できます。

科学的根拠はどこまであるのか

頭皮マッサージと発毛・育毛に関する研究は、AGA治療薬ほど多くはありませんが、いくつか注目すべき報告があります。

例えば、特定の研究では、頭皮マッサージ(特に頭皮を物理的に伸縮させるような刺激)が毛乳頭細胞に働きかけ、毛髪の太さを増加させる可能性が示唆されています。

また、マッサージによる血流増加は、多くの研究で確認されています。

血流の増加が直接的に発毛につながるという確固たる証拠はまだ限定的ですが、育毛剤の成分(例えばミノキシジル)が血行促進作用を持つことからも、血流が毛髪の成長に重要であることは広く認められています。

ただし、これらの研究結果が、AGAによる薄毛の進行を完全に逆転させることを保証するものではない点には注意が必要です。

過度なマッサージの潜在的リスク

良かれと思って行うマッサージも、やり方を間違えれば逆効果になる可能性があります。特に「強く揉めば効く」という誤解は危険です。

強い力で頭皮を擦ったり、爪を立てたりすると、頭皮の表面(角質層)が傷つき、バリア機能が低下します。このため、炎症や乾燥を引き起こし、かえって頭皮環境を悪化させる恐れがあります。

また、すでに弱っている毛髪(AGAによって細く短くなった毛髪)を強く引っ張ることで、抜け毛を助長してしまう可能性もゼロではありません。マッサージは「優しく、心地よく」が基本です。

マッサージの注意点

項目避けるべき行為推奨される行為
力の強さ爪を立てる、強く擦る、痛みを感じる強さ指の腹を使い、「痛気持ちいい」と感じる程度
方法頭皮を強く引っ張る、叩く頭皮を動かす意識で、ゆっくり揉みほぐす
頻度1日に何回も行う、長時間のマッサージ1回数分程度を、1日1〜2回(例:入浴時)

自宅でできる前頭部の正しいマッサージ方法

前頭部のマッサージは、正しい方法で行えば頭皮の血行を促し、リラクゼーション効果も得られます。

自己流で強く擦るのではなく、頭皮そのものを動かす意識で、丁寧に行うことが大切です。

マッサージを行う前の準備

マッサージを始める前に、まずは手を清潔に洗いましょう。汚れた手で頭皮を触ると、雑菌が付着し、頭皮トラブルの原因になることがあります。

また、リラックスした状態で行うことが重要です。入浴中や入浴後の、体が温まり血行が良くなっているタイミングは特におすすめです。

乾いた頭皮にマッサージを行うと摩擦が大きくなりすぎる場合は、頭皮用のローションや育毛剤を塗布してから行うのも良い方法です。

ただし、育毛剤を使用した場合は、その後に強く擦りすぎないよう注意が必要です。基本的には、シャンプー時に泡の上から行うか、入浴後の清潔な頭皮に行うのが良いでしょう。

基本的な指の動かし方と圧の強さ

マッサージの基本は、指の腹を使うことです。爪を立てると頭皮を傷つけてしまうため、絶対に避けてください。

指の腹を使う

両手の5本指(あるいは親指を除いた4本指)の腹をしっかりと頭皮に密着させます。指先だけでなく、第一関節までの広い面を使うイメージです。

圧の強さと動かし方

圧の強さは、「痛い」と感じる一歩手前の「痛気持ちいい」程度が目安です。

指を頭皮に固定したら、皮膚の表面を擦るのではなく、頭皮そのものを頭蓋骨から動かすように、円を描いたり、前後左右にスライドさせたりします。

ゆっくりとしたリズムで、深く呼吸しながら行うとリラックス効果も高まります。

M字部分(前頭部)へのアプローチ

M字部分は特に気になる部位ですが、皮膚が薄くデリケートなため、より優しく行う必要があります。両手の指の腹(人差し指・中指・薬指がやりやすい)を生え際に当てます。

まずは、指を固定したまま、頭皮をゆっくりと上下に動かします。次に、小さな円を描くように、優しく揉みほぐします。この時、生え際の髪を強く引っ張らないよう注意してください。

前頭部だけでなく、その上にある前頭筋(おでこの筋肉)や、こめかみ付近の側頭筋も一緒にほぐすと、前頭部全体の緊張が和らぎ、血流が改善しやすくなります。

こめかみは、指の腹で円を描くように優しくマッサージしましょう。

マッサージの適切な頻度と時間

マッサージは「毎日少しずつ」継続することが大切です。やり過ぎは頭皮への負担となり逆効果です。1回のマッサージ時間は、全体で3分から5分程度を目安にしましょう。

前頭部だけでなく、頭頂部、側頭部、後頭部もバランスよく行うことが、頭全体の血行促進につながります。

頻度としては、1日1回、多くても2回(朝晩など)で十分です。特に入浴時は、シャンプーの泡を利用して摩擦を減らしながら行えるため、習慣化しやすいタイミングと言えます。

マッサージ頻度の目安

タイミング時間頻度
入浴時(シャンプー中)約3分毎日1回
入浴後(タオルドライ後)約3〜5分毎日1回
その他(例:仕事の合間)約1〜2分(リラックス目的)1日1〜2回

マッサージ効果を高める頭皮の血行促進テクニック

前頭部のマッサージを行う際、ただ揉むだけでなく、いくつかのテクニックを取り入れることで、より効果的に頭皮の血行を促すことができます。

頭皮全体を一つのつながりとして捉え、ツボなども意識してみましょう。

頭皮全体を動かす意識

M字部分や前頭部だけを集中的にマッサージするよりも、頭皮全体(特に側頭部と後頭部)をしっかりと動かすことが重要です。頭頂部や前頭部は筋肉が少なく、帽状腱膜という硬い膜で覆われています。

この帽状腱膜は、側頭筋や後頭筋とつながっています。

つまり、側頭部(耳の上あたり)や後頭部(首の付け根あたり)の筋肉をほぐすことで、結果的に前頭部や頭頂部の血流も改善しやすくなるのです。

マッサージの際は、まず側頭部や後頭部を念入りにほぐし、頭全体の緊張を緩めてから前頭部に取り掛かると効果的です。両手で頭を包み込むように持ち、頭皮全体を大きく動かすイメージで行いましょう。

ツボ押しを取り入れたマッサージ

東洋医学の観点では、頭部には多くのツボ(経穴)が存在します。

これらのツボを意識してマッサージに取り入れることで、血行促進だけでなく、自律神経を整えたり、眼精疲労を緩和したりする効果も期待できます。

百会(ひゃくえ)

頭頂部のほぼ中央、両耳の先端を結んだ線と顔の中心線が交わるあたりにあります。自律神経を整え、ストレス緩和や血行促進に良いとされる万能なツボです。

両手の中指を重ねて、心地よい強さでゆっくりと5秒ほど押し、ゆっくり離す、を数回繰り返します。

角孫(かくそん)

耳を前に折りたたんだ時に、耳の先端が当たるくぼみの部分(側頭部)にあります。血行促進や、眼精疲労、頭痛の緩和に効果が期待できます。

人差し指や中指の腹で、円を描くように優しく揉みほぐします。

マッサージ器具(スカルプブラシなど)の活用法

指でのマッサージが難しい、あるいはもっとしっかりとした刺激が欲しいという場合は、頭皮マッサージ専用の器具(スカルプブラシやマッサージャー)を活用するのも一つの方法です。

シャンプー時に使用するシリコン製のスカルプブラシは、指では届きにくい毛穴の汚れをかき出しながら、心地よい刺激で頭皮をマッサージできます。

電動のマッサージャーは、自動で頭皮を揉みほぐしてくれるため、手が疲れることなく効率的にマッサージが可能です。

器具使用時の注意点

器具を使用する場合も、指で行うマッサージと同様に「やり過ぎ」は禁物です。特に電動タイプのものは刺激が強くなりがちなため、使用時間を守り、頭皮に強く押し当てすぎないよう注意が必要です。

また、器具の素材や形状が自分の頭皮に合っているかどうかも重要です。使用中に痛みやかゆみを感じた場合は、すぐに使用を中止してください。

主なマッサージ器具の比較

器具の種類主な特徴使用時のポイント
スカルプブラシ(手動)シャンプー時に使用。毛穴洗浄とマッサージを同時に。強く擦らず、頭皮を動かすように。シリコン製がおすすめ。
電動マッサージャー自動で揉みほぐし。手が疲れない。防水仕様のものを選び、入浴時に使うと効率的。押し当てすぎない。
櫛(くし)タイプ木製や獣毛など。ブラッシングによる刺激。先端が丸いものを選び、頭皮を傷つけないように優しくとかす。

マッサージ以外のM字はげ(AGA)対策

前頭部のマッサージは頭皮環境を整える上で有効ですが、M字はげ(AGA)の進行を食い止めるには不十分です。

AGAは進行性の脱毛症であるため、マッサージと並行して、より根本的な対策に取り組む必要があります。

生活習慣の見直しが重要な理由

髪の毛は、私たちが日々摂取する栄養素から作られ、睡眠中に分泌される成長ホルモンによって成長が促されます。

生活習慣が乱れていると、いくらマッサージや育毛剤で外側からケアをしても、髪が育つための内側からのサポートが不足してしまいます。

睡眠の質と時間

毛髪の成長を促す成長ホルモンは、主に深い睡眠中(ノンレム睡眠時)に分泌されます。

睡眠時間が不足したり、眠りが浅かったりすると、成長ホルモンの分泌が妨げられ、毛髪の成長に悪影響を及ぼします。毎日6〜7時間程度の質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。

栄養バランスの取れた食事

髪の主成分はケラチンというタンパク質です。そのため、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)の摂取が重要です。

また、タンパク質の合成を助ける亜鉛(牡蠣、レバー、ナッツ類)や、頭皮の血行を良くするビタミンE(アーモンド、アボカド)、頭皮環境を整えるビタミンB群(豚肉、マグロ、バナナ)などもバランス良く摂取することが大切です。

ストレス管理と頭皮への影響

過度なストレスは、自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させる原因となります。血管が収縮すれば、当然ながら頭皮への血流が悪化し、毛根への栄養供給が滞ります。

また、ストレスは男性ホルモンのバランスにも影響を与え、AGAを悪化させる一因となる可能性も指摘されています。

ストレスを完全になくすことは難しいですが、自分なりの解消法(適度な運動、趣味の時間、リラックスできる入浴など)を見つけ、上手に管理していくことが、頭皮の健康を守る上でも重要です。

育毛剤や発毛剤の併用

マッサージで頭皮環境を整えた上で、育毛剤や発毛剤を併用することは、M字はげ対策として非常に効果的です。

育毛剤は、主に頭皮環境を整え、今ある髪を健康に育てる(抜け毛予防やハリ・コシのアップ)ことを目的としています。

一方、発毛剤は、新しい髪を生やし、毛髪の数を増やすことを目的とし、医学的に効果が認められた成分(ミノキシジルなど)が含まれています。

AGAの進行を抑えたい、あるいは改善したい場合は、発毛剤の使用を検討するのが一般的です。マッサージで血行が良くなった頭皮に塗布することで、有効成分の浸透が助けられる可能性も期待できます。

主な育毛・発毛成分

分類代表的な成分期待される主な働き
発毛成分(医薬品)ミノキシジル毛母細胞の活性化、血行促進、発毛促進
育毛成分(医薬部外品)センブリエキス、グリチルリチン酸2K血行促進、抗炎症、頭皮環境改善
育毛成分(医薬部外品)t-フラバノン、アデノシン毛母細胞の活性化サポート

専門クリニックでの相談

M字はげの進行が早い、あるいはセルフケアだけでは不安が残る場合は、AGA専門のクリニックで医師の診断を受けることを強く推奨します。AGAは早期の対策が重要です。

クリニックでは、マイクロスコープによる頭皮診断や血液検査などに基づき、その人のAGAの進行度や体質に合った適切な治療法を提案してくれます。

主な治療法には、5αリダクターゼの働きを阻害する内服薬(フィナステリド、デュタステリド)や、ミノキシジルの外用薬などがあります。

マッサージや生活習慣の改善は、これらの専門的な治療と並行して行うことで、最大の効果を発揮します。

頭皮マッサージに関する誤解と正しい知識

頭皮マッサージは手軽にできるケアだからこそ、間違った情報や誤解も少なくありません。効果を正しく得るため、そして逆効果を避けるために、正しい知識を身につけておきましょう。

「強く揉めば効く」という誤解

最も多い誤解の一つが、「力を入れて強くマッサージするほど効果が高い」というものです。前述の通り、強い力で頭皮を擦る行為は、頭皮のバリア機能を破壊し、炎症や乾燥を招きます。

また、毛細血管を逆に圧迫してしまったり、毛根を傷つけて抜け毛を増やしたりするリスクもあります。

マッサージの目的は、筋肉の緊張をほぐし、血流を「促す」ことです。「痛い」と感じるほどの強さは不要で、「心地よい圧」で頭皮そのものを動かすことが正解です。

マッサージオイルやローションは必要か

乾いた状態でのマッサージは、摩擦が大きくなりやすく、頭皮や髪に負担がかかることがあります。そのため、滑りを良くする目的でオイルやローションを使用すること自体は問題ありません。

ただし、使用する製品には注意が必要です。ヘアオイル(髪をコーティングするもの)ではなく、頭皮用のクレンジングオイルやスカルプローションを選びましょう。

オイルを使用した場合は、マッサージ後にシャンプーでしっかりと洗い流し、毛穴にオイルが残らないようにすることが大切です。

最も手軽なのは、シャンプーの泡を利用するか、入浴後の保湿ローションや育毛剤を塗布したタイミングで行う方法です。

マッサージで逆に抜け毛が増える?

マッサージを始めた直後に、一時的に抜け毛が増えたと感じることがあります。

これは、マッサージの刺激によって、すでに成長期を終えて休止期に入っていた毛髪(自然に抜け落ちる予定だった毛髪)が抜け落ちるためと考えられます。

正しい方法(強く擦らない、引っ張らない)で行っている限り、マッサージが原因で健康な髪が抜けることはありません。この初期脱毛は一時的なものであることがほとんどです。

しかし、明らかに抜け毛が増え続ける、あるいは頭皮に痛みやかゆみが出る場合は、マッサージの方法が間違っているか、頭皮に合っていない可能性があるため、一度中止して様子を見るか、やり方を見直してください。

効果を実感できるまでの期間

頭皮マッサージは、薬のような即効性はありません。頭皮環境や血行は、日々の積み重ねによって少しずつ改善していくものです。

「頭皮が柔らかくなった」「フケやかゆみが減った」といった頭皮環境の変化は、早ければ数週間から1ヶ月程度で感じられるかもしれません。

しかし、それが髪の毛の太さやハリ・コシの変化として現れるには、ヘアサイクル(毛髪が生え変わる周期)を考慮すると、最低でも3ヶ月から6ヶ月は継続する必要があります。

焦らず、日々の習慣として気長に続けることが成功の鍵です。

AGA対策と期待される期間

対策目的変化を感じ始める目安
頭皮マッサージ頭皮環境改善、血行促進数週間〜1ヶ月(頭皮の柔軟性)、3〜6ヶ月(髪質)
生活習慣改善体内の環境整備1〜3ヶ月(体調の変化)
育毛剤(医薬部外品)抜け毛予防、頭皮環境改善3〜6ヶ月
発毛剤(医薬品)発毛促進4〜6ヶ月(継続使用が必要)

前頭部の血行を促す日常的な習慣

特別なマッサージの時間を設けなくても、日常生活の中で少し意識を変えるだけで、前頭部を含む頭皮の血行を促すことは可能です。日々の習慣に取り入れやすい方法を紹介します。

シャンプー中のマッサージのコツ

毎日のシャンプーは、絶好のマッサージタイムです。シャンプーをしっかりと泡立てたら、その泡をクッションにして、指の腹で頭皮をマッサージします。

ここでも「擦る」のではなく「揉み動かす」意識が大切です。特に洗い残しやすいM字部分や生え際は、指を細かく動かして丁寧に洗いましょう。

耳の上(側頭部)から頭頂部へ、襟足(後頭部)から頭頂部へと、下から上へ向かって血流を引き上げるようにマッサージするのがコツです。

最後にシャワーで洗い流す際も、すすぎ残しがないよう、生え際までしっかりとお湯を当ててください。

入浴(湯船に浸かる)の効果

シャワーだけで済ませず、湯船に浸かる習慣も頭皮の血行促進に非常に有効です。湯船に浸かって体が芯から温まると、全身の血管が拡張し、血流が良くなります。もちろん、頭皮の毛細血管も同様です。

体が温まると副交感神経が優位になり、リラックス効果も得られます。

ストレスによる血管の収縮を防ぐ意味でも、毎晩10分から15分程度、ぬるめのお湯(38〜40度程度)にゆっくり浸かる時間を持つことをおすすめします。

入浴中に、首や肩を軽く回してほぐすのも効果的です。

適度な運動と血流改善

デスクワーク中心の生活で体が凝り固まっていると、首や肩の筋肉が緊張し、頭部への血流が妨げられます。適度な運動は、全身の血行を促進し、筋肉の緊張をほぐすために重要です。

激しい運動である必要はありません。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、心肺機能を高め、全身の血流を効率よく改善します。

また、ストレッチやヨガは、筋肉の柔軟性を高め、リラックス効果も期待できます。

血行促進に良い運動例

  • ウォーキング(1日20〜30分)
  • ストレッチ(特に首・肩・背中)
  • ヨガ
  • 軽いジョギング

姿勢(特にデスクワーク)と頭皮血流

M字はげを気にする人の中には、PC作業などで長時間前傾姿勢になりがちな人も多いのではないでしょうか。

猫背やストレートネックといった悪い姿勢は、首や肩の筋肉に大きな負担をかけ、常に緊張状態にします。

首は、脳と体をつなぐ重要な血管(頸動脈)が通る場所です。この部分の筋肉が硬直すると、頭部全体への血流が著しく悪化します。

デスクワーク中は、モニターの高さを目線に合わせる、1時間に一度は立ち上がって首や肩を回すなど、意識的に姿勢を正し、こまめに緊張をリセットする習慣をつけましょう。

正しい姿勢を保つことは、前頭部の血行を守るための隠れた、しかし重要な対策の一つです。

よくある質問

前頭部のマッサージはいつ行うのが効果的ですか?

マッサージは、血行が良くなっている時に行うのが最も効果的です。特におすすめなのは、入浴中(シャンプー時)または入浴後(体が温まっている状態)です。

シャンプー時は泡が摩擦を軽減してくれますし、入浴後は頭皮が清潔で柔らかくなっています。また、夜のリラックスタイムに行うことで、睡眠の質を高める効果も期待できます。

マッサージをしても前頭部の頭皮が硬いままです

前頭部の硬さが取れない場合、前頭部だけをマッサージしていても改善が難しいかもしれません。

頭皮は一枚の皮でつながっており、特に側頭部(耳の上)や後頭部(首の付け根)の筋肉の緊張が、前頭部や頭頂部を引っ張り、硬くしていることが多いです。

側頭筋や後頭筋を念入りにほぐすようにマッサージしてみてください。

また、長時間のデスクワークによる姿勢の悪さや、眼精疲労、ストレスも頭皮を硬くする原因です。生活習慣全体の見直しも必要かもしれません。

M字はげがマッサージで悪化することはありますか?

正しい方法で行っている限り、マッサージがM字はげ(AGA)を直接悪化させることはありません。しかし、方法を間違えると逆効果になる可能性があります。

爪を立てて頭皮を傷つける、強い力で擦りすぎて炎症を起こす、弱った毛を強く引っ張る、といった行為は抜け毛を助長し、頭皮環境を悪化させます。

必ず「指の腹」で「優しく」「頭皮を動かす」ように行ってください。

頭皮マッサージ以外で前頭部の血行を良くする方法は?

日常生活での血行改善が重要です。

具体的には、湯船にしっかり浸かって体を温めること、ウォーキングなどの適度な有酸素運動を習慣にすること、首や肩のストレッチをこまめに行うことが挙げられます。

また、喫煙は血管を収縮させ血行を著しく悪化させるため、禁煙することも非常に大切です。

バランスの取れた食事を心がけ、血流を妨げるドロドロ血の原因となる脂質の多い食事を控えることも有効です。

育毛剤はマッサージの前と後、どちらで使うべきですか?

一般的には、マッサージの「後」に育毛剤を使用することを推奨します。まずシャンプーとマッサージ(シャンプー中または入浴後)で頭皮の汚れを落とし、血行を促進させます。

その後、タオルドライで頭皮の水分をしっかり拭き取り、清潔で血行が良くなった状態の頭皮に育毛剤を塗布することで、成分が角質層まで浸透しやすくなると考えられます。

ただし、製品によっては使用順序が指定されている場合もあるため、使用する育毛剤の説明書を確認してください。

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