「最近髪の毛が抜ける」と感じたら。季節性?ストレス?薄毛(AGA)のサイン?

「最近髪の毛が抜ける」と感じたら。季節性?ストレス?薄毛(AGA)のサイン?

最近、シャワーを浴びた後の排水溝や、朝起きた時の枕元に集まる髪の毛の量が増えて、ドキッとしていませんか。

「気のせいかな」と思おうとしても、毎日続くと「もしかして、このまま薄くなっていくのでは…」と不安が募るものです。

一時的なものなら良いのですが、もしそれが深刻な薄毛のサインだったらどうしようと心配になりますよね。

この記事では、「最近髪の毛が抜ける」と感じる主な原因として考えられる季節性の要因、日々のストレス、そしてAGA(男性型脱毛症)の可能性について詳しく解説します。

ご自身の現在の状況と照らし合わせ、不安の正体を探り、適切な対処法を見つけるためのヒントを提供します。まずは抜け毛の原因を知ることが、漠然とした不安を解消する第一歩です。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

「最近 髪の毛 抜ける」と感じる基準は?

「最近髪の毛が抜ける」という感覚は主観的なものですが、多くの場合、ヘアサイクル(毛周期)の乱れや何らかの要因による抜け毛の増加を示しています。

健康な人でも髪の毛は毎日抜けており、その本数には個人差がありますが、一定の範囲を超えると注意が必要です。

正常な抜け毛の本数とは

髪の毛には「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルがあります。ほとんどの髪(約85%〜90%)は成長期にあり、数年間伸び続けます。

その後、退行期を経て休止期に入ると、毛根が浅くなり、やがて新しい髪に押し出されるように自然に抜け落ちます。

この自然なサイクルによる抜け毛は、1日あたり50本から100本程度とされています。もちろん個人差は大きく、季節や体調によっても変動します。

例えば、洗髪時には特に抜けやすく、その際にまとめて数十本抜けることも珍しくありません。

1日に100本程度であれば、それは多くの場合、新しい髪が育っている証拠であり、過度に心配する必要はありません。

「最近増えた」と感じる具体的なサイン

「100本までなら大丈夫」と言われても、実際に自分の抜け毛を数えるのは困難です。そこで、「増えた」と感じる具体的なサインに注目しましょう。

最も分かりやすいのは、洗髪時やドライヤー使用時です。排水溝に溜まる毛の量が明らかに以前より多くなった、手ぐしを通した時に指に絡まる本数が増えた、といった場合は注意サインかもしれません。

また、朝起きた時の枕カバーについている髪の毛の数や、部屋の床に落ちている髪の毛が目立つようになった、というのも客観的な目安になります。

大切なのは、「以前との比較」です。普段から自分の抜け毛の傾向をなんとなく把握しておくと、異常な増加に気づきやすくなります。

抜け毛の増加に気づく主な場面

場面チェックポイント備考
洗髪時排水溝に溜まる毛の塊が大きくなった指に絡まる本数も確認
起床時枕カバーについている毛の本数が増えた特に短い毛が目立つか確認
日常床やデスク周りに落ちている毛が目立つ部屋の掃除頻度と合わせて考慮

抜け毛をチェックする簡単な方法

もし抜け毛が気になるなら、簡単なチェック方法を試してみましょう。洗髪前、乾いた状態の髪の毛を、親指と人差し指で軽くつまみます。そのまま毛先に向かってスッと指を滑らせます。

これを頭部の数カ所(頭頂部、側頭部など)で行ってみてください。

この時、指の間に残る髪の毛が毎回5〜6本以上ある場合や、以前と比べて明らかに抜ける本数が増えている場合は、抜け毛が増加している可能性があります。

ただし、この方法はあくまで簡易的な目安です。1回や2回多いからといって、すぐに問題があるとは断定できません。数日間続けてみて、傾向を掴むことが大切です。

季節による抜け毛の変動

抜け毛は一年中一定というわけではなく、季節によって変動することが知られています。特に「秋」は抜け毛が増えやすい季節とされます。

これにはいくつかの理由が考えられます。一つは、夏の間に浴びた紫外線のダメージが頭皮に蓄積し、秋になってその影響が現れるという説です。

紫外線は頭皮を乾燥させ、毛根にダメージを与える可能性があります。もう一つは、動物の毛が生え変わる「換毛期」の名残という説です。

人間に換毛期は明確にはありませんが、そのリズムが残っており、秋に抜け毛が増える傾向があるのではないかと言われています。

もし秋口に一時的に抜け毛が増えたと感じても、冬にかけて自然に落ち着くようであれば、季節性の要因である可能性が高いでしょう。

考えられる一時的な抜け毛の原因

抜け毛が増えたからといって、すべてが薄毛(AGA)の始まりとは限りません。生活環境や体調の変化による一時的なものであるケースも非常に多いです。

ここでは、季節性以外の主な一時的原因について解説します。

ストレスが髪に与える影響

精神的なストレスは、体にさまざまな影響を及ぼしますが、髪の毛も例外ではありません。強いストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れやすくなります。

自律神経は血管の収縮や弛緩をコントロールしているため、バランスが崩れると頭皮の血流が悪化することがあります。

頭皮の血流が悪くなると、髪の毛を育てる毛母細胞へ十分な栄養や酸素が届きにくくなります。

その結果、髪の成長が妨げられたり、まだ成長途中であったりする髪が休止期に入ってしまい、抜け毛(休止期脱毛)が増えることがあります。

仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、環境の変化などが大きなストレス源となり得ます。

生活習慣の乱れ(睡眠不足・食生活)

髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。栄養バランスの偏った食生活は、健康な髪の育成を妨げます。

特に髪の主成分であるタンパク質(ケラチン)や、その合成を助ける亜鉛、ビタミン類が不足すると、髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。

また、睡眠不足も大敵です。髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。

特に夜10時から深夜2時の間がゴールデンタイムと言われることがありますが、時間帯よりも「深く質の良い睡眠」を確保することが重要です。

睡眠時間が足りなかったり、眠りが浅かったりすると、成長ホルモンの分泌が減少し、ヘアサイクルが乱れる原因となります。

抜け毛に関連する主な生活習慣の乱れ

要因髪への影響対策例
栄養バランスの偏り髪の原料不足(タンパク質、亜鉛など)バランスの良い食事を心がける
睡眠不足成長ホルモンの分泌減少質の良い睡眠を6〜7時間確保する
過度な飲酒・喫煙血行不良、ビタミンの消費控える、または禁煙する

間違ったヘアケア

良かれと思って行っているヘアケアが、逆に頭皮にダメージを与え、抜け毛を増やしている可能性もあります。

例えば、頭皮の皮脂を気にするあまり、1日に何度もシャンプーをしたり、洗浄力の強すぎるシャンプーを使ったりすると、頭皮を守るために必要な皮脂まで洗い流してしまいます。

すると頭皮は乾燥し、バリア機能が低下して、かゆみやフケ、炎症を引き起こしやすくなります。この頭皮環境の悪化が抜け毛につながります。

逆に、シャンプーが不十分で皮脂や汚れ、整髪料が毛穴に詰まったままになるのも問題です。

毛穴が詰まると炎症を起こしやすくなり、これも抜け毛の原因となります。ゴシゴシと爪を立てて洗うのも、頭皮を傷つけるため禁物です。

注意すべき抜け毛のサイン(薄毛・AGAの可能性)

一時的な抜け毛ではなく、進行性の脱毛症であるAGA(男性型脱毛症)が始まっている場合、抜け毛には特有のサインが現れます。

AGAは早期の対策が非常に重要であるため、その特徴を知っておくことが大切です。

AGA(男性型脱毛症)とは何か

AGA(AndrogeneticAlopecia)は、成人男性に多く見られる進行性の脱毛症です。思春期以降に発症し、生え際(M字部分)が後退したり、頭頂部(O字部分)が薄くなったりするのが典型的なパターンです。

主な原因は、男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、「5αリダクターゼ」という酵素の働きによって「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されることです。

このDHTが、毛根にある受容体と結びつくと、髪の成長期を短縮させる信号が出されます。その結果、髪の毛が太く長く成長する前に休止期に入ってしまい、抜け落ちてしまうのです。

このサイクルが繰り返されることで、徐々に薄毛が進行します。

AGAによる抜け毛の特徴

AGAが原因の場合、抜け毛そのものに特徴が現れます。ヘアサイクルが短縮されるため、抜ける髪の毛は「細く」「短く」「コシがない」うぶ毛のようなものが多くなります。

正常なヘアサイクルで抜ける髪は、太くしっかりとした「休止期毛」です。毛根部分が丸く膨らんでいるのが特徴です。

一方、AGAで抜ける髪は、まだ成長途中であるため、細く弱々しい「成長期毛」や、十分に育ちきっていない毛が多く混じります。

枕元や排水溝の抜け毛が、以前より細く短い毛ばかりになったと感じたら、AGAのサインかもしれません。

一時的な抜け毛とAGAの見分け方

一時的な抜け毛(ストレスや季節性など)とAGAによる抜け毛は、原因も対処法も異なります。見分けるためのポイントを整理しましょう。

一時的な抜け毛は、原因が取り除かれれば(例:ストレスが軽減する、季節が変わる)、数ヶ月かけて元の状態に戻ることが期待できます。抜け毛の質も、太い毛も細い毛も混じっていることが多いです。

一方、AGAは進行性です。対策をしなければ、薄毛はゆっくりと、しかし確実に進行していきます。

そして、抜ける毛は前述の通り「細く短い毛」が中心となり、特定の場所(生え際・頭頂部)から薄くなる傾向が強いです。

抜け毛のタイプの比較

項目一時的な抜け毛(休止期脱毛)AGA(男性型脱毛症)
主な原因ストレス、生活習慣、季節、頭皮環境悪化など男性ホルモン(DHT)、遺伝
進行度原因がなくなれば回復傾向進行性(対策しないと悪化)
抜け毛の質太い毛も細い毛も混在細く短い毛(軟毛)の割合が多い
薄くなる場所頭部全体的にボリュームダウン生え際(M字)や頭頂部(O字)から

自己判断の危険性と早期発見の重要性

「最近髪の毛が抜ける」と感じた時、「まだ大丈夫」「一時的なものだろう」と自己判断してしまうことにはリスクが伴います。

もしそれがAGAの初期段階であった場合、対策を先延ばしにしている間に、ヘアサイクルを終えてしまう毛根が増えてしまうからです。

AGAは、毛根が活動している(毛母細胞が残っている)限り、その進行を遅らせたり、毛髪の状態を改善したりする対策が可能です。

しかし、毛根が完全に活動を停止してしまう(いわゆる「死滅」した状態)と、そこから再び髪を生やすのは極めて困難になります。

「ちょっとおかしいな」と感じた早い段階で、自分の抜け毛の質や頭皮の状態を正しく把握し、必要であれば専門家の知見を借りることが、将来の髪を守る上で非常に重要です。

抜け毛のタイプ別セルフチェック

抜け落ちた髪の毛や頭皮の状態を観察することは、現在の頭皮環境や抜け毛の原因を探る上で有効な手がかりとなります。

簡単にできるセルフチェック方法を紹介します。

抜け毛の毛根を観察しよう

自然に抜け落ちた髪の毛の「毛根」部分に注目してみてください。毛根は、髪の毛の根元の少し膨らんだ部分です。

健康なサイクル(休止期)で抜けた髪の毛は、毛根が丸く膨らんでおり、マッチ棒の先端のように見えます。これは、毛母細胞の活動が停止し、自然に抜け落ちる準備ができていた証拠です。

一方、毛根がなかったり、先端が尖っていたり、毛根に白い皮脂のようなもの(毛根鞘とは異なるベタついた塊)が付着していたりする場合は注意が必要です。

何らかの理由で成長途中の髪が抜けてしまったり、頭皮環境が悪化していたりする可能性があります。

抜け毛の太さや長さをチェック

次に、抜け毛全体の「太さ」と「長さ」を見ます。前述の通り、AGAが進行している場合、成長期が短縮されるため、本来ならまだ成長するはずだった「細く短い毛」が多く抜けるようになります。

排水溝や枕に、明らかに細くてコシのない毛や、数センチ程度の短い毛が目立つようになったら、AGAのサインを疑う必要があります。

逆に、太くて長い毛が抜けている場合は、ヘアサイクルを全うした自然な抜け毛である可能性が高いと言えます。

毛根・毛髪の状態セルフチェック

チェック項目健康な状態(目安)注意が必要な状態(目安)
毛根の形状丸く膨らんでいる(マッチ棒状)尖っている、歪んでいる、ほぼ無い
毛根の付着物透明か白っぽい毛根鞘が少量ベタついた皮脂の塊が付いている
抜け毛の太さ太く、ハリ・コシがある細く、フニャフニャしている
抜け毛の長さある程度の長さがある(既存の髪と同様)極端に短い毛が多い

頭皮の状態(色、フケ、かゆみ)も確認

髪の毛が育つ土壌である「頭皮」の状態も、抜け毛と密接に関連しています。鏡を使って、ご自身の頭皮の色をチェックしてみてください。

健康な頭皮は、青白い色をしています。もし頭皮が赤い、あるいは赤茶色っぽくなっている場合は、炎症や血行不良を起こしているサインです。

炎症はかゆみを伴うことも多く、頭皮を掻きむしることでさらに頭皮環境が悪化し、抜け毛が増える悪循環に陥ります。

また、フケの状態も重要です。「乾いたパラパラとしたフケ」は頭皮の乾燥が原因であることが多く、「湿ったベタベタしたフケ」は皮脂の過剰分泌(脂漏性皮膚炎など)が疑われます。

どちらの頭皮環境も、健康な髪の成長を妨げる要因となります。

「最近 髪の毛 抜ける」と感じた時の初期対策

抜け毛が気になり始めたら、それが一時的なものであれ、AGAの初期サインであれ、まずは頭皮環境や生活習慣を見直すことが基本の対策となります。

すぐにできることから始めてみましょう。

まずは見直したい生活習慣

髪は体の一部であり、健康状態が顕著に現れる場所です。不規則な生活は、髪の成長サイクルを乱す直接的な原因となります。まずは、日々の生活を振り返ってみましょう。

特に重要なのが「食事」と「睡眠」です。髪の材料となるタンパク質、亜鉛、ビタミン類をバランスよく摂取することを心がけてください。

外食やインスタント食品が多い方は、意識して野菜や海藻類、大豆製品などを取り入れると良いでしょう。

また、質の良い睡眠を確保するために、就寝前のスマートフォンの使用を控える、リラックスできる環境を整えるなどの工夫も有効です。

生活習慣で見直したいポイント

  • 十分な睡眠時間(6〜7時間)を確保する
  • 栄養バランスの取れた食事(特にタンパク質・亜鉛・ビタミン)
  • 過度な飲酒や喫煙を控える

ストレスとの上手な付き合い方

現代社会でストレスをゼロにすることは難しいですが、溜め込まないように工夫することは可能です。

ストレスが自律神経を乱し、頭皮の血行不良を招くことはすでに述べました。自分なりのリフレッシュ方法を見つけることが大切です。

例えば、軽い運動(ウォーキングやジョギング)は、血行を促進するだけでなく、気分転換にもなります。

趣味に没頭する時間を作る、湯船にゆっくり浸かる、友人と話すなど、心身ともにリラックスできる時間を持つように意識しましょう。

ストレスの原因が明確な場合は、その原因から距離を置くか、解決に向けて行動することも必要かもしれません。

頭皮環境を整えるヘアケアの見直し

毎日行うシャンプーの方法を見直すだけでも、頭皮環境は大きく改善する可能性があります。

洗浄力の強すぎるシャンプーを避け、自分の肌質に合ったアミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のものを選ぶことをお勧めします。

洗い方も重要です。シャンプー前にお湯でしっかりと予洗い(湯シャン)し、汚れの多くを落とします。シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。

爪を立てるのは厳禁です。すすぎ残しはフケやかゆみの原因になるため、シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧に洗い流しましょう。

洗髪後は、ドライヤーでしっかりと乾かします。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮トラブルの原因となります。ただし、熱風を近づけすぎると頭皮や髪を傷めるので注意が必要です。

育毛剤を使用する選択肢

生活習慣やヘアケアの見直しと並行して、頭皮環境を整え、抜け毛を予防するために「育毛剤」の使用を検討するのも一つの方法です。

育毛剤は、薄毛の「予防」や「現状維持」を目的とした医薬部外品です。

育毛剤の役割と目的

育毛剤の主な役割は、すでに生えている髪の毛を健康に育て、抜けにくい状態にすることです。

具体的には、頭皮の血行を促進したり、毛母細胞の働きをサポートしたり、頭皮の炎症やフケ・かゆみを抑えたりする成分が含まれています。

髪の毛が抜けるのを防ぎ、今ある髪を元気に保つことで、髪全体のボリューム感を維持することを目指します。

あくまで「育毛(髪を育てる)」環境を整えるものであり、後述する「発毛剤」とは目的が異なります。

育毛剤が適しているケース

育毛剤の使用が適しているのは、主に以下のような場合です。

  • 最近抜け毛が増えてきたと感じる(予防)
  • 髪にハリやコシがなくなってきた
  • 頭皮の乾燥やフケ、かゆみが気になる
  • AGAかどうかは分からないが、早めにケアを始めたい

AGAが強く疑われる場合でも、頭皮環境を整えることは重要です。ただし、AGAの進行を直接抑制するものではないため、その点は理解しておく必要があります。

発毛剤との違いを理解する

育毛剤と混同されやすいものに「発毛剤」があります。この二つは明確に異なります。

「育毛剤」は医薬部外品であり、主な目的は「抜け毛予防」と「育毛」です。

「発毛剤」は一般用医薬品(第1類医薬品など)であり、「新しい髪を生やす(発毛)」効果が認められた成分(ミノキシジルなど)を含んでいます。

AGAなど、すでに薄毛が進行している場合に用いられることが多いです。目的と作用が異なるため、自分の状態に合わせて選ぶことが重要です。

育毛剤と発毛剤の主な違い

項目育毛剤発毛剤
分類医薬部外品医薬品(第1類など)
主な目的抜け毛予防、育毛(今ある髪を育てる)発毛(新しい髪を生やす)
主な作用頭皮環境改善、血行促進、抗炎症毛母細胞の活性化、発毛促進
適した人抜け毛が気になり始めた人、予防したい人薄毛(AGAなど)が進行している人

育毛剤選びで注目すべき成分

育毛剤にはさまざまな成分が含まれていますが、主に期待される役割によって分類できます。

例えば、「センブリエキス」や「ビタミンE誘導体」は血行促進、「グリチルリチン酸ジカリウム」は抗炎症作用、「ピロクトンオラミン」はフケ・かゆみを防ぐ殺菌作用が期待されます。

自分の頭皮の状態(乾燥しているか、脂っぽいか、炎症があるか)に合わせて、必要な成分が配合されているかを確認すると良いでしょう。

また、アルコール(エタノール)の刺激が気になる方は、アルコールフリーや低アルコールの製品を選ぶといった視点も大切です。

専門家(医師)への相談を検討すべきタイミング

セルフケアを行っても抜け毛が減らない場合や、AGAが強く疑われる場合は、自己判断を続けずに専門家である医師に相談することが賢明です。

皮膚科やAGA専門クリニックでは、客観的な診断と適切なアドバイスが受けられます。

セルフケアで改善が見られない場合

生活習慣を改め、ヘアケアを見直し、育毛剤も数ヶ月試してみた。それでも抜け毛が一向に減らない、あるいは悪化しているように感じる場合は、セルフケアの範囲を超えている可能性があります。

特に、抜け毛の原因がAGAではなく、他の皮膚疾患(脂漏性皮膚炎の悪化など)や内科的な疾患(甲状腺機能の異常など)である可能性もゼロではありません。

このような場合、根本的な原因を特定するために医師の診断が必要です。

AGAが強く疑われるサインがある時

「抜け毛が細く短い毛ばかり」「生え際や頭頂部が明らかに薄くなってきた」といったAGA特有のサインがはっきりと現れている場合は、早めに専門クリニックに相談することをお勧めします。

前述の通り、AGAは進行性であり、対策が遅れるほど改善が難しくなる可能性があります。

専門クリニックでは、医師が頭皮の状態を視診やマイクロスコープで確認し、問診(家族歴など)を行った上で、AGAであるかどうか、またその進行度を診断します。

その上で、内服薬や外用薬(発毛剤)など、医学的根拠に基づいた対策の選択肢を提示してくれます。

急激な抜け毛や円形脱毛症の兆候

「最近」というレベルではなく、短期間に「急激に」髪がごっそり抜けるようになった場合や、一部分だけがコインのように丸く抜けている(円形脱毛症)場合は、AGAとは異なる原因が考えられます。

円形脱毛症は自己免疫疾患の一つと考えられており、早急に皮膚科を受診する必要があります。放置して悪化すると、脱毛範囲が広がることもあるため注意が必要です。

クリニック相談を検討する目安

状態考えられる原因推奨される行動
セルフケアでも抜け毛が続くAGA、頭皮環境の悪化、その他疾患皮膚科またはAGAクリニックへ相談
細い毛が増え、特定部位が薄いAGAの可能性が高いAGAクリニックへの早期相談
急激な脱毛、円形脱毛円形脱毛症、その他急性の原因速やかに皮膚科を受診

クリニックで受けられる相談内容

皮膚科やAGA専門クリニックでは、まず医師による問診と視診が行われます。現在の抜け毛の状態、生活習慣、既往歴、家族歴などを詳しく伝えます。

必要に応じて、マイクロスコープで頭皮や毛根の状態を詳細に観察したり、血液検査を行ったりすることもあります。

これらの情報をもとに、抜け毛の原因がAGAなのか、他の要因なのかを診断します。

AGAと診断された場合は、その進行度に合わせて、どのような対策(内服薬、外用薬、生活指導など)が可能かについて説明を受けます。

不安に思っていることを率直に質問し、納得した上で対策を始めることが重要です。

Q&A

「最近髪の毛が抜ける」と感じる方からよく寄せられる質問にお答えします。

抜け毛が増えたらすぐにAGAを疑うべき?

すぐにAGAと断定する必要はありません。前述の通り、抜け毛の原因はストレス、季節の変わり目、生活習慣の乱れなど多岐にわたります。

まずはご自身の生活習慣やヘアケアを見直し、抜け毛の質(細くないか)や頭皮の状態(赤みはないか)を確認してみてください。

ただし、生え際や頭頂部が薄くなるなど、AGA特有のサインが見られる場合は早めの警戒が必要です。

食生活で特に気をつけることは何ですか?

バランスの良い食事が基本です。特に髪の主成分である「タンパク質」(肉、魚、大豆製品、卵など)は欠かせません。

また、タンパク質の合成を助ける「亜鉛」(牡蠣、レバー、赤身肉など)や、頭皮の血行を良くする「ビタミンE」(ナッツ類、植物油など)、頭皮環境を整える「ビタミンB群」(豚肉、レバー、青魚など)も重要です。

特定の食品だけを食べるのではなく、多様な食材を摂ることを心がけてください。

市販の育毛剤はどれくらいで変化を感じられますか?

育毛剤は、頭皮環境を整え、今ある髪を健康に育てることを目的としています。

ヘアサイクル(髪が生え変わる周期)を考慮すると、何らかの変化を感じるまでには最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要と考えるのが一般的です。

すぐに抜け毛が減ったり、髪が増えたりするものではないため、根気強くケアを続けることが大切です。

抜け毛の相談は何科に行けばよいですか?

まずは一般的な「皮膚科」で相談できます。頭皮の炎症やフケ、かゆみ、円形脱毛症など、皮膚疾患が原因の場合にも対応してもらえます。

もし、抜け毛の原因が明らかにAGA(男性型脱毛症)であり、より専門的な診断や対策(内服薬など)を希望する場合は、「AGA専門クリニック」を受診するのがスムーズです。

どちらに行くべきか迷う場合は、まずは身近な皮膚科医に相談してみると良いでしょう。

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