薄毛の種類(M字・O字・U字)|パターン別の原因と、対策法

薄毛の種類(M字・O字・U字)|パターン別の原因と、対策法

鏡を見るたびに、生え際や頭頂部が気になっていませんか?「もしかして薄毛が始まっているのでは…」と感じる不安は、多くの方が抱える悩みです。

薄毛と一口に言っても、その現れ方にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や適した対策法が異なります。

この記事では、代表的な薄毛の種類である「M字」「O字」「U字」のパターン別に、その原因とご自身で取り組める対策法を詳しく解説します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

あなたの薄毛はどの種類?代表的な3つのパターン

薄毛の現れ方には個人差がありますが、進行の仕方によっていくつかの典型的なパターンに分類できます。ご自身の状態がどれに当てはまるかを知ることが、適切な対策の第一歩です。

ここでは、男性の薄毛としてよく見られる3つの主な種類について解説します。

生え際が後退する「M字ハゲ(A型)」

M字ハゲは、額の生え際、特に両サイド(こめかみの上あたり)から後退していくパターンです。正面から見たときに、生え際がアルファベットの「M」の字のように見えることから、このように呼ばれています。

日本人男性に比較的多く見られる種類の一つで、初期段階では気づきにくいこともありますが、進行すると額が徐々に広くなっていくように感じます。

このパターンは、生え際の髪の毛が細く、短くなることから始まります。

以前よりも前髪のセットがしにくくなったり、生え際のボリュームが減ったと感じたりする場合は、M字型が進行している可能性があります。

頭頂部から進行する「O字ハゲ(O型)」

O字ハゲは、頭のてっぺん、いわゆる「つむじ」周辺から円形(アルファベットの「O」の字)に薄くなっていくパターンです。

頭頂部は自分自身の目で直接確認しにくいため、家族や友人から指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。

合わせ鏡を使ったり、スマートフォンで撮影したりして、定期的にチェックすると状態を把握しやすくなります。

頭頂部の髪の毛が細くなり、地肌が透けて見えるようになってきたら、O字ハゲのサインかもしれません。

M字ハゲと比べ、比較的ゆっくりと進行するように感じる場合もありますが、放置すると薄い部分が徐々に拡大していきます。

M字とO字が同時に進行する「U字ハゲ(複合型)」

U字ハゲは、生え際の後退(M字)と頭頂部の薄毛(O字)が同時に進行していくパターンです。

前から見ても上から見ても薄毛が目立つようになり、最終的に生え際と頭頂部の薄い部分が繋がり、側頭部と後頭部の髪だけが残る状態(アルファベットの「U」の字を逆さにしたような形)になることから、U字ハゲと呼ばれます。

これは、M字とO字の複合型であり、薄毛の進行が比較的早いと感じる方もいます。広範囲にわたって薄毛が進行するため、悩みも深くなりがちです。

薄毛のパターンの簡易比較

ご自身の状態を客観的に把握するために、各パターンの特徴をまとめます。

種類(通称)薄くなる部位特徴
M字ハゲ(A型)額の生え際(両サイド)生え際がM字型に後退していく。
O字ハゲ(O型)頭頂部(つむじ周辺)頭頂部がO字型(円形)に薄くなる。
U字ハゲ(複合型)生え際+頭頂部M字とO字が同時に進行し、繋がる。

なぜ薄毛になるのか?パターン別の主な原因

M字、O字、U字といった薄毛のパターンが異なるのは、原因や体質が関係しています。

これらの薄毛の多くは「AGA(男性型脱毛症)」と呼ばれる状態が関与しており、その背景には遺伝や男性ホルモン、生活習慣などが複雑に影響し合っています。

M字・O字・U字に共通するAGA(男性型脱毛症)とは

AGA(AndrogeneticAlopecia)は、成人男性に見られる進行性の脱毛症です。

主な原因は、男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、頭皮に存在する「5αリダクターゼ」という酵素の働きによって、より強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されることです。

このDHTが、毛根にある「男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)」と結合すると、髪の毛の成長期が短縮されます。

通常、髪の毛は数年かけて太く長く成長しますが(成長期)、DHTの影響を受けると、十分に成長する前に抜け落ちてしまいます(退行期・休止期)。

これがヘアサイクルの乱れです。この乱れが繰り返されることで、髪の毛は細く、短く、弱々しくなり、最終的には地肌が目立つようになります。

遺伝が及ぼす影響

薄毛のなりやすさには、遺伝的な要因が強く関係しています。特に、「5αリダクターゼ」の活性度の高さと、「男性ホルモン受容体」の感受性の強さは、遺伝によって受け継がれやすいと考えられています。

両親や祖父母に薄毛の方がいる場合、ご自身も薄毛になりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。

ただし、遺伝的要因があるからといって必ず薄毛になるわけではなく、あくまで「なりやすさ」の問題です。他の要因と組み合わさることで、薄毛が表面化すると考えられます。

生活習慣の乱れ(食生活・睡眠・ストレス)

遺伝やホルモンの影響だけでなく、日々の生活習慣も髪の健康に大きく影響します。特にM字型やO字型に関わらず、薄毛全般の進行を早める要因となります。

髪の毛は、私たちが食べたものから作られます。栄養バランスの偏った食事、特に脂質の多い食事や過度な飲酒は、頭皮の皮脂分泌を過剰にし、毛穴を詰まらせる原因になります。

また、髪の主成分であるタンパク質や、その合成を助けるビタミン、ミネラル(特に亜鉛)が不足すると、健康な髪は育ちません。

睡眠不足も大敵です。髪の成長に必要な「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。質の良い睡眠が取れていないと、髪の成長が妨げられ、ヘアサイクルが乱れる一因となります。

さらに、精神的なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させます。その結果、頭皮への血流が悪くなり、髪の毛を作る毛母細胞へ十分な栄養が届かなくなってしまいます。

頭皮環境の悪化(皮脂・血行不良)

頭皮は髪の毛が育つ土壌です。この土壌の状態が悪いと、健康な髪は育ちません。前述の生活習慣の乱れに加え、間違ったヘアケアも頭皮環境を悪化させます。

洗浄力の強すぎるシャンプーで必要な皮脂まで落としすぎると、頭皮が乾燥し、かえって皮脂の過剰分泌を招くことがあります。

逆に、シャンプーが不十分で皮脂や汚れが毛穴に詰まると、炎症を引き起こし、髪の成長を妨げます。

また、運動不足や喫煙、ストレスなどによる血行不良は、頭皮に栄養を運ぶ毛細血管の働きを低下させます。

特にM字部分(生え際)やO字部分(頭頂部)は、心臓から遠く、血流が滞りやすい部位とも言われています。

薄毛を引き起こす主な要因

薄毛は単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発生します。

要因カテゴリー具体的な要因髪への影響
ホルモン・遺伝AGA(DHTの影響)ヘアサイクルを短縮させ、髪が細く短くなる。
ホルモン・遺伝遺伝的体質5αリダクターゼの活性や受容体の感受性に影響。
生活習慣栄養バランスの偏り髪の材料不足、皮脂の過剰分泌。
生活習慣睡眠不足成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が停滞。
生活習慣ストレス血行不良を引き起こし、栄養不足に。
頭皮環境不適切なヘアケア乾燥、皮脂詰まり、炎症などを引き起こす。
頭皮環境血行不良毛母細胞への栄養供給が滞る。

【パターン別】薄毛の進行度とセルフチェック法

薄毛の進行度は、生え際の後退の深さ(M字)や頭頂部の地肌の見え方(O字)、あるいはその両方(U字)で判断します。ご自身の状態を客観的に把握することが早期対策には重要です。

M字・O字・U字のパターン別に、進行度の目安とセルフチェックの方法を紹介します。

M字ハゲの進行度チェック

M字ハゲの進行度は、生え際の後退の深さで判断します。鏡を用意し、額を出した状態で確認してください。

  • 初期段階:以前と比べて、おでこが広くなったように感じる。生え際(特にこめかみの上)の髪が細くなってきた。
  • 中期段階:両サイドの剃り込み部分が明らかに後退し、M字の谷間が深くなってきた。中央部分の髪は残っているため、M字の形がはっきりとわかる。
  • 後期段階:M字の谷間がさらに深くなり、頭頂部に向かって後退が進む。中央部分の髪も薄くなり始めることがある。

セルフチェックとしては、「眉毛を上げたときにできる一番上のシワ」と「生え際の中央」の間に、指が何本入るかを定期的に確認する方法があります。

また、昔の写真と見比べてみるのも客観的な判断材料になります。

O字ハゲの進行度チェック

O字ハゲは頭頂部で進行するため、合わせ鏡やスマートフォンのカメラ機能を使って確認する必要があります。家族やパートナーに見てもらうのも良い方法です。

  • 初期段階:つむじ周辺の髪が細くなり、地肌が少し透けて見える。髪のボリュームが減り、セットがしにくくなる。
  • 中期段階:地肌が透けて見える範囲が広がり、円形(O字)にはっきりとわかるようになる。つむじの渦がぼやけて見える。
  • 後期段階:O字の部分がさらに拡大し、生え際の後退(M字)と繋がるU字ハゲへと移行し始めることもある。

O字ハゲのチェックでは、「頭頂部の髪の密度」と「地肌の見え方」に注目してください。光の当たり具合で見え方が変わるため、明るい場所で複数の角度から確認することが大切です。

U字ハゲ(複合型)の進行度チェック

U字ハゲはM字とO字が同時に進行するパターンです。M字とO字、両方のチェック項目に当てはまる場合、U字ハゲ(複合型)の可能性があります。

進行度は、M字部分の後退とO字部分の拡大がどの程度進んでいるかで判断します。特に注意したいのは、M字の後退部分とO字の円形部分が繋がり始める段階です。

この段階になると、薄毛が広範囲に及ぶため、対策が難しくなる傾向があります。

M字とO字、両方の進行度を個別にチェックし、どちらも進行しているようであれば、早めの対策を検討することが重要です。

自分でできる!薄毛の種類に応じた対策法【セルフケア編】

薄毛の種類(M字・O字・U字)に関わらず、薄毛対策の基本は「頭皮環境を整え、髪の成長をサポートすること」です。

これらはAGAの進行を直接止めるものではありませんが、髪が育ちやすい環境を作る上で非常に重要です。今日から始められるセルフケアを紹介します。

生活習慣の見直し(食事・睡眠・運動)

健康な髪は、健康な体から作られます。まずは日々の生活習慣を見直しましょう。

髪の成長を支える栄養素

バランスの取れた食事が基本です。特に髪の成長に必要な栄養素を意識して摂取しましょう。

栄養素主な働き多く含む食材
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料となる。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛タンパク質の合成を助け、毛母細胞の分裂を促す。牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ
ビタミンB群頭皮の新陳代謝を促し、皮脂の分泌を調整する。豚肉、レバー、マグロ、納豆、卵
ビタミンE血行を促進し、頭皮に栄養を運びやすくする。ナッツ類、アボカド、植物油、うなぎ

これらの栄養素を偏りなく摂取することが大切です。脂っこい食事やインスタント食品は控えめにし、野菜や海藻類も積極的に取り入れましょう。

睡眠は、質と量の両方が重要です。就寝前のスマートフォン操作を控えるなど、リラックスできる環境を整え、毎日6〜7時間程度の睡眠時間を確保するよう心がけてください。

また、適度な運動は、全身の血行を促進し、ストレス解消にも役立ちます。ウォーキングやジョギングなど、続けやすい運動を習慣にしましょう。

正しいシャンプーと頭皮ケアの方法

毎日のシャンプーは、頭皮環境を清潔に保つための基本です。ただし、洗いすぎや不十分なすすぎは逆効果になります。

シャンプーは、洗浄力がマイルドなアミノ酸系や、頭皮ケア成分(グリチルリチン酸2Kなど)を含む薬用シャンプー(医薬部外品)を選ぶと良いでしょう。洗う際は、以下の点を意識してください。

1.洗う前にブラッシングで髪のもつれをほどき、汚れを浮かせます。
2.ぬるま湯(38℃程度)で頭皮と髪をしっかりと予洗いします。
3.シャンプーを手のひらで泡立ててから、髪ではなく頭皮につけます。
4.指の腹を使い、頭皮をマッサージするように優しく洗います。爪を立てるのは厳禁です。
5.すすぎ残しはフケやかゆみの原因になるため、シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧に洗い流します。

シャンプー後は、タオルでゴシゴシ擦らず、優しく押さえるように水分を拭き取ります。ドライヤーで頭皮からしっかりと乾かし、雑菌の繁殖を防ぎましょう。

また、シャンプー時や入浴後に、指の腹で頭皮全体を優しく動かす頭皮マッサージを取り入れるのも良い方法です。頭皮の血行を促進し、リラックス効果も期待できます。

ストレス管理とリフレッシュ法

現代社会においてストレスをゼロにすることは難しいですが、溜め込まない工夫が重要です。過度なストレスは自律神経を乱し、頭皮の血行不良や皮脂の過剰分泌を引き起こします。

ご自身に合ったリフレッシュ法を見つけ、こまめにストレスを発散させましょう。趣味に没頭する時間を作る、ゆっくりと入浴する、軽い運動で汗を流す、友人と話すなど、何でも構いません。

仕事や日常生活の中で緊張状態が続いていると感じたら、意識的に深呼吸をするだけでも、心身の緊張を和らげるのに役立ちます。

育毛剤の選び方|薄毛のパターンと悩みに合わせる

育毛剤(医薬部外品)は、頭皮環境を整えて抜け毛を予防し、今ある髪を健康に育てることを目的とした製品です。

M字・O字・U字などのパターンやご自身の頭皮の悩みに合わせて、配合されている有効成分(血行促進、抗炎症など)を確認して選ぶことが大切です。

M字・O字・U字|AGA進行パターンと育毛剤

M字、O字、U字のいずれのパターンであっても、AGAが背景にある場合、ヘアサイクルの乱れや頭皮環境の悪化が考えられます。育毛剤は、これらのパターンが気になる初期段階からの使用に適しています。

M字(生え際)は、皮膚が比較的厚く、皮脂分泌が多い傾向があります。また、頭頂部(O字)も皮脂分泌が活発な部位です。

これらの部位には、血行を促進する成分や、皮脂の過剰分泌を抑える成分、抗炎症成分が含まれた育毛剤が適しています。

U字(複合型)の場合は、広範囲に塗布する必要があるため、液だれしにくく、広範囲にスプレーしやすいタイプのものが使いやすいでしょう。

育毛剤の主な有効成分とその働き

育毛剤(医薬部外品)には、厚生労働省が承認した様々な有効成分が配合されています。ご自身の頭皮の状態や悩みに合わせて、どのような成分が含まれているか確認しましょう。

育毛剤(医薬部外品)の主な有効成分例

成分の系統主な働き代表的な成分例
血行促進系頭皮の血流を改善し、毛母細胞へ栄養を届ける。センブリエキス、ビタミンE誘導体(酢酸トコフェロール)、ニンジンエキス
抗炎症系頭皮の炎症(かゆみ、フケ)を抑え、頭皮環境を整える。グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)、アラントイン
皮脂抑制系過剰な皮脂分泌を抑え、毛穴の詰まりを防ぐ。ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)、イオウ
毛母細胞活性系毛母細胞の働きをサポートし、発毛・育毛を促す。t-フラバノン、パントテニルエチルエーテル(パンテノール)

これらの成分が単体、あるいは複数組み合わさって配合されています。ご自身の頭皮が乾燥しがちか、脂っぽいか、かゆみがあるかなどを考慮して選ぶことが重要です。

育毛剤を使い始めるタイミング

育毛剤は、薄毛がかなり進行してから使うよりも、「抜け毛が増えたかも」「髪にハリ・コシがなくなってきた」「生え際や頭頂部が少し気になる」といった初期段階で使い始める方が、その働きを実感しやすいと言われています。

薄毛は進行性です。特にAGAの場合、何もしなければゆっくりとですが進行し続けます。

早めに頭皮ケアを習慣化し、育毛剤で頭皮環境をサポートすることが、5年後、10年後の髪の状態を左右する可能性があります。

育毛剤使用時の注意点と継続の重要性

育毛剤を使う際は、まず頭皮を清潔にすることが前提です。シャンプー後、髪と頭皮をしっかり乾かしてから使用しましょう。

製品に記載されている用法・用量を守り、気になる部分だけでなく、頭皮全体に揉み込むように塗布するのが基本です。

最も重要なのは「継続」です。ヘアサイクル(髪が生え変わる周期)を考えると、育毛剤を使い始めてすぐに劇的な変化が現れることはありません。

頭皮環境が整い、髪の状態に変化を感じるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要です。

数週間で「変わらない」と諦めず、日々のセルフケアの一環として、根気よく続けることが大切です。

使用中に赤み、かゆみ、刺激などの異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、皮膚科専門医に相談してください。

専門家による対策|セルフケアで改善しない場合

セルフケアや育毛剤の使用を続けても、抜け毛が減らない、あるいは薄毛の進行が止まらないと感じる場合は、専門の医療機関(皮膚科やAGA専門クリニック)に相談することを検討しましょう。

M字・O字・U字のパターンがはっきりしており、AGAの進行が疑われる場合は、専門家による診断と適切な対策が有効です。

皮膚科や専門クリニックでの相談

皮膚科やAGA専門クリニックでは、薄毛の原因を特定するための診察や検査を行います。

医師による問診や視診、マイクロスコープを使った頭皮の状態チェック、場合によっては血液検査などを通じて、ご自身の薄毛がAGAによるものか、あるいは他の原因(円形脱毛症、脂漏性皮膚炎など)によるものかを判断します。

ご自身の薄毛の原因を正しく知ることは、適切な対策を選ぶ上で非常に重要です。自己判断で悩みを深める前に、一度専門家の意見を聞いてみるのも一つの方法です。

クリニックで受けられる主な対策

AGAと診断された場合、医療機関では主に内服薬や外用薬を用いた対策が行われます。これらは市販の育毛剤とは異なり、医師の処方が必要な医薬品です。

医療機関での主な対策(医薬品)

種類主な働き備考
内服薬(AGA用)AGAの原因物質(DHT)の生成を抑え、ヘアサイクルを正常化に導く。医師の処方が必要。M字・O字・U字に共通するAGAの進行を抑える。
外用薬(発毛剤)毛母細胞に直接働きかけ、発毛を促し、髪の成長を助ける。市販(第1類医薬品)も存在するが、濃度や処方は医療機関で相談。

これらの対策は、AGAの進行を抑えたり、発毛を促したりするものであり、専門家の指導のもとで継続的に行う必要があります。

M字型、O字型、U字型といったパターンに関わらず、AGAの進行度合いや体質に応じて、適切な対策法を提案してもらえます。

相談する前に知っておきたいこと

医療機関での対策は、セルフケアや育毛剤(医薬部外品)とは異なり、医薬品を用いた積極的なアプローチです。

そのため、どのような働きがあるのか、どのような副作用の可能性があるのか、費用はどれくらいかかるのかなど、事前にしっかりと説明を受け、納得した上で開始することが重要です。

また、これらの対策を始めたからといって、すぐに生活習慣を乱して良いわけではありません。

セルフケアで紹介した食事や睡眠、ストレス管理は、医薬品による対策の効果を最大限に引き出すためにも、引き続き重要です。

薄毛対策で誤解されやすいポイント

薄毛対策に関しては、「白髪の人はハゲない」「帽子をかぶると進行する」といった俗説が多くありますが、科学的根拠がないものも多いです。

誤解されやすいポイントを理解し、正しい知識で対策を行うことが重要です。

「頭皮が硬い」と薄毛の関係

「頭皮が硬いと薄毛になる」とよく言われます。頭皮が硬い状態とは、多くの場合、頭皮の血行不良や乾燥、筋肉の緊張によって引き起こされます。

頭皮の血流が悪くなれば、髪の成長に必要な栄養が毛母細胞に届きにくくなるため、薄毛の「一因」にはなり得ます。

しかし、頭皮が硬いこと自体が薄毛の「直接的な原因」ではありません。あくまでAGAや生活習慣の乱れといった根本的な要因があり、その結果として頭皮環境が悪化し、硬くなっている可能性があります。

頭皮マッサージで血行を促進することは良いことですが、それだけで薄毛が根本的に改善するわけではないことを理解しておく必要があります。

「白髪の人はハゲない」は本当か?

これは科学的根拠のない俗説です。髪を黒くする「メラノサイト」の働きと、髪を成長させる「毛母細胞」の働きは、異なる仕組みに基づいています。

加齢などによりメラノサイトの働きが低下すれば白髪になり、AGAや他の要因で毛母細胞の働きが低下すれば薄毛になります。

白髪であってもAGAは進行しますし、逆に黒々とした髪でも薄毛になる人はいます。白髪と薄毛は、それぞれ別々の要因で起こる現象です。

「帽子をかぶる」と薄毛は進行する?

帽子をかぶること自体が、薄毛の直接的な原因になることはありません。むしろ、帽子には頭皮を紫外線から守るという重要な役割があります。

紫外線は頭皮にダメージを与え、乾燥や炎症を引き起こすため、適度に帽子で防ぐことは頭皮ケアにとってプラスです。

ただし、長時間帽子をかぶり続けることで頭皮が蒸れ、汗や皮脂で雑菌が繁殖しやすい環境になることは問題です。これが毛穴の詰まりや炎症を引き起こし、頭皮環境を悪化させる可能性があります。

帽子をかぶる場合は、通気性の良い素材を選び、こまめに汗を拭き、帰宅後は早めにシャンプーで頭皮を清潔に保つことが大切です。

薄毛に関する俗説と事実

俗説・疑問解説
海藻類(ワカメなど)を食べると髪が増える?海藻類に含まれるミネラルは髪の健康に良いが、それだけで発毛するわけではない。バランスの良い食事が重要。
シャンプーで皮脂を完全に取り除いた方が良い?皮脂の取りすぎは頭皮の乾燥を招き、逆効果。適度な洗浄力で優しく洗うことが必要。
髪を頻繁に洗うと抜け毛が増える?シャンプー時に抜ける髪は、すでに休止期に入っていた髪。洗髪が原因で抜け毛が増えるわけではない。頭皮を清潔に保つ方が重要。

よくある質問

薄毛の進行はどのくらいの速さで進みますか?

薄毛の進行速度には個人差が非常に大きいです。AGA(男性型脱毛症)の場合、一般的にはゆっくりと何年もかけて進行します。

しかし、遺伝的要因や生活習慣、ストレスの度合いによって、進行が早いと感じる方もいます。

M字型、O字型、U字型といったパターンによっても、ご自身が感じる進行速度は異なるかもしれません。

育毛剤はどれくらいで変化を感じ始めますか?

ヘアサイクル(髪の毛が生え変わる周期)を考慮すると、育毛剤(医薬部外品)の効果を実感するまでには、一般的に最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要とされています。

育毛剤は頭皮環境を整え、抜け毛を予防し、今ある髪を健やかに育てることが目的です。数週間で諦めず、根気よくケアを続けることが重要です。

親が薄毛だと自分も必ず薄毛になりますか?

必ずしもそうとは限りません。薄毛の「なりやすさ」という体質(5αリダクターゼの活性度や男性ホルモン受容体の感受性など)は遺伝する可能性が高いです。

しかし、遺伝要因を持っていても、必ずしも薄毛が表面化するわけではありません。

生活習慣や頭皮ケア、ストレスの有無など、後天的な要因も大きく影響するため、日々の対策次第で進行を遅らせたり、予防したりすることは可能です。

薄毛対策は何歳から始めるべきですか?

薄毛対策を始めるのに「早すぎる」ということはありません。AGAは早い人では20代前半から始まることもあります。

「最近抜け毛が増えた」「髪のボリュームが減った」「生え際や頭頂部が気になる」など、ご自身で変化を感じ始めた時が、対策を始める一つのタイミングです。

特に遺伝的な要因を心配されている方は、予防的な観点から、早めに健康的な生活習慣や正しい頭皮ケアを心がけることが大切です。

Reference

SINCLAIR, Rodney. Male pattern androgenetic alopecia. Bmj, 1998, 317.7162: 865-869.

YORK, Katherine, et al. A review of the treatment of male pattern hair loss. Expert opinion on pharmacotherapy, 2020, 21.5: 603-612.

YORK, Katherine, et al. Treatment review for male pattern hair-loss. Expert Opin Pharmacother, 2020, 21.5: 603-612.

OLSEN, Elise A., et al. Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss. Journal of the American Academy of Dermatology, 2005, 52.2: 301-311.

CRANWELL, William; SINCLAIR, Rodney. Male androgenetic alopecia. 2015.

ASFOUR, Leila; CRANWELL, William; SINCLAIR, Rodney. Male androgenetic alopecia. Endotext [Internet], 2023.

MANABE, Motomu, et al. Guidelines for the diagnosis and treatment of male‐pattern and female‐pattern hair loss, 2017 version. The Journal of Dermatology, 2018, 45.9: 1031-1043.

MIRMIRANI, Paradi. Age-related hair changes in men: mechanisms and management of alopecia and graying. Maturitas, 2015, 80.1: 58-62.

STARACE, Michela, et al. Female androgenetic alopecia: an update on diagnosis and management. American journal of clinical dermatology, 2020, 21.1: 69-84.

HERSKOVITZ, Ingrid; TOSTI, Antonella. Female pattern hair loss. International Journal of Endocrinology and Metabolism, 2013, 11.4: e9860.

目次