10代という多感な時期に、抜け毛や薄毛の悩みを持つことは非常につらいものです。「周りの目が気になる」「どうして自分だけ」と不安になる気持ちはよく分かります。
育毛剤を試してみたいけれど、10代が使っても安全なのか、副作用はないのかと心配になるのは当然です。
この記事では、10代の育毛剤使用に関する安全性、デリケートな時期だからこそ知っておきたい選び方の注意点、そして潜在的なリスクについて詳しく解説します。
この記事を読めば、あなたの不安が軽減され、今すべき正しい対処法が分かります。
結論から言うと、10代でも使用できる育毛剤はありますが、製品選びと使い方には細心の注意が必要です。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
10代で薄毛の悩み?まず知っておきたい原因
10代で薄毛が気になる場合、育毛剤の使用を考える前に、まずはその原因を探ることが大切です。
大人の薄毛とは異なり、10代の場合はAGA(男性型脱毛症)よりも、日々の生活習慣や頭皮環境の乱れが大きく影響している可能性が高いです。
原因を理解し、根本的な改善を目指しましょう。
10代特有のホルモンバランスの変化
10代は思春期にあたり、体が大人へと大きく変化する時期です。この時期、男性ホルモン(テストステロン)の分泌が活発になります。
この男性ホルモン自体が直接薄毛を引き起こすわけではありませんが、体内で特定の酵素と結びつくことでDHT(ジヒドロテストステロン)という、より強力な男性ホルモンに変化します。
このDHTが、毛髪の成長サイクルを乱す主な原因の一つとされています。
ただし、10代の場合はホルモンバランスがまだ安定していないため、一時的に皮脂の分泌が過剰になったり、頭皮環境が悪化したりすることも多いです。
ホルモンバランスの変動が落ち着くにつれて、状態が改善することも少なくありません。
生活習慣の乱れ(睡眠不足・食生活)
髪の毛は、私たちが食べたものから作られ、寝ている間に成長します。10代は勉強や部活動、友人との交流などで忙しく、生活リズムが乱れがちです。
特に睡眠不足は、髪の成長に必要な成長ホルモンの分泌を妨げます。成長ホルモンは、入眠後、特に深い眠りの時間帯に多く分泌されます。夜更かしが続くと、この大切な時間が失われてしまいます。
また、食生活の偏りも深刻な問題です。ファストフードやインスタント食品、糖分や脂質の多いお菓子ばかり食べていると、髪の成長に必要なタンパク質、ビタミン、ミネラル(特に亜鉛)が不足しがちです。
栄養が不足すれば、健康な髪を育てることが難しくなります。
過度なストレスとその影響
学校での勉強、試験、部活動のプレッシャー、友人関係や家族関係の悩みなど、10代はさまざまなストレスにさらされています。
強いストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。交感神経が活発になると、血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。
頭皮の血流が悪くなると、髪の毛の成長に必要な酸素や栄養素が毛根まで届きにくくなります。その結果、髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えたりすることがあります。
また、ストレスはホルモンバランスの乱れにもつながり、皮脂の過剰分泌を引き起こすこともあります。
間違ったヘアケア(シャンプーの仕方など)
良かれと思ってやっているヘアケアが、逆に頭皮にダメージを与えているケースもあります。例えば、皮脂や汚れを落とそうと、1日に何度もシャンプーをしたり、爪を立ててゴシゴシと強く洗ったりすることです。
洗浄力の強すぎるシャンプーも、頭皮に必要な皮脂まで奪い去り、乾燥やかゆみ、フケの原因となります。
逆に、シャンプーのすすぎが不十分で、シャンプー剤やコンディショナーが頭皮に残っていると、毛穴を詰まらせ、炎症を引き起こすこともあります。
整髪料を使った日に、それをしっかり落とさずに寝てしまうのも頭皮環境の悪化につながります。
10代が育毛剤を使うのは本当に大丈夫?
10代が育毛剤を使用すること自体は可能ですが、市販されているすべての製品が10代に適しているわけではありません。
大人の使用を前提とした製品も多く、中には10代のデリケートな体や頭皮には刺激が強すぎたり、ホルモンバランスに影響を与えたりする可能性があるものも含まれます。
安全性を最優先に考える必要があります。
基本的に10代でも使用可能な育毛剤とは
10代でも比較的安全に使用できるのは、「医薬部外品」や「化粧品」に分類される育毛剤(育毛トニック、スカルプエッセンスなどとも呼ばれます)です。
これらの製品は、主に頭皮環境を整えること(保湿、血行促進、抗炎症、皮脂バランスの調整)を目的としています。
刺激の強い成分を含まず、天然由来の成分や保湿成分を中心に配合されているもの、アルコールフリーや無添加処方のものなどが10代には適しています。
ただし、これらはあくまで「抜け毛の予防」や「頭皮環境の改善」を目指すものであり、医薬品のような「発毛」効果をうたうものではありません。
「医薬品」と「医薬部外品」の違い
育毛剤と一言で言っても、法律(医薬品医療機器等法)に基づいて「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の3つに分類されます。
10代が使用する場合、この違いを理解しておくことが非常に重要です。
医薬品・医薬部外品・化粧品の違い
| 分類 | 目的 | 特徴・10代の使用 |
|---|---|---|
| 医薬品(発毛剤) | 積極的な治療(発毛) | ミノキシジルなど有効成分の効果が認められている。医師の処方や薬剤師の説明が必要なものが多く、副作用のリスクもあるため、10代の使用は原則として推奨されない。 |
| 医薬部外品(育毛剤) | 予防・衛生(育毛・薄毛予防) | 厚生労働省が許可した有効成分が一定濃度配合されている。頭皮環境を整え、抜け毛を防ぐ。10代でも使用可能な製品が多いが、成分の確認は必要。 |
| 化粧品(スカルプケア) | 清潔・保湿(頭皮ケア) | 頭皮を清潔に保ち、潤いを与えることが目的。効果は最も穏やか。10代が最初に試す頭皮ケアとして適している。刺激も少ないものが多い。 |
10代の使用を推奨していない製品とは
最も注意が必要なのは、「医薬品」に分類される「発毛剤」です。
特に、ミノキシジルを配合した製品(例:リアップシリーズなど)は、臨床試験が成人男性を対象に行われており、未成年者(20歳未満)への安全性や有効性が確認されていません。
そのため、製品の添付文書にも「未成年者は使用しないでください」と明記されています。
また、病院で処方されるAGA(男性型脱毛症)治療薬である「フィナステリド(プロペシア)」や「デュタステリド(ザガーロ)」は、ホルモンバランスに直接作用する薬です。
特に男性胎児への影響があるため女性の服用は厳禁とされているほか、成長期の10代男性が服用した場合の影響も未知数であり、処方されることはありません。
皮膚科専門医への相談の重要性
もし薄毛や抜け毛が深刻で、生活習慣の改善だけでは不安が解消されない場合は、育毛剤を自己判断で購入する前に、必ず皮膚科の専門医に相談してください。
10代の薄毛の原因は多岐にわたり、中には円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、別の病気が隠れている可能性もあります。
医師であれば、頭皮の状態を専門的な視点で診断し、原因を特定してくれます。
その上で、生活指導や適切な頭皮ケアの方法、場合によっては安全に使用できる外用薬(保湿剤や抗炎症剤など)を処方してくれることもあります。
10代の悩みに理解のある医師も多くいますので、勇気を出して相談することが解決への一番の近道です。
危険?10代が避けるべき育毛剤の成分
10代の頭皮は、大人に比べてデリケートでバリア機能も未熟な場合があります。また、体も成長段階にあるため、育毛剤に含まれる成分には細心の注意を払う必要があります。
特に、ホルモンバランスに影響を与えたり、刺激が強すぎたりする可能性のある成分は避けるべきです。
ミノキシジル配合の「発毛剤」のリスク
前述の通り、ミノキシジルは「発毛」効果が認められた医薬品成分ですが、血管を拡張させる作用があります。
もともとは高血圧の治療薬として開発された経緯があり、副作用として頭皮のかゆみ、発疹、かぶれ、頭痛、めまい、動悸などが報告されています。
これらの副作用は成人が使用した場合のものであり、成長期にある10代の体に使用した場合、どのような影響が出るかは分かっていません。
安全性が確立されていない以上、10代での使用は絶対に避けるべきです。
フィナステリド・デュタステリド(AGA治療薬)の注意点
これらはAGAの原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑える「内服薬(飲み薬)」です。育毛剤(塗り薬)ではありませんが、薄毛治療の文脈でよく登場するため注意が必要です。
これらの薬は男性ホルモンの働きに直接介入します。体がまだ成長しきっていない10代が服用すると、正常な性機能の発達や成長に悪影響を及ぼすリスクが否定できません。
そのため、これらの薬は原則として20歳以上の男性にしか処方されません。
インターネットなどで個人輸入することも可能ですが、偽薬や健康被害のリスクが非常に高いため、絶対に手を出してはいけません。
刺激の強い添加物(アルコール、防腐剤など)
育毛剤には、清涼感を出すためや、成分を浸透させやすくするためにエタノール(アルコール)が高濃度で配合されていることがあります。
10代の頭皮、特に乾燥や炎症を起こしている頭皮には、アルコールの刺激が強すぎて、かえって状態を悪化させる可能性があります。
また、品質を保つための防腐剤(パラベンなど)や、香料、着色料なども、人によってはアレルギー反応やかぶれの原因となります。
成分表示を確認し、これらの添加物がなるべく入っていない、または「アルコールフリー」「無添加」と表示されている製品を選ぶ方が賢明です。
10代が特に注意したい成分リスト
| 成分分類 | 主な成分名 | 10代への懸念点 |
|---|---|---|
| 発毛成分(医薬品) | ミノキシジル | 未成年への安全性が未確立。副作用のリスク。 |
| AGA治療薬(内服) | フィナステリド、デュタステリド | ホルモンバランスへの影響。成長期へのリスク。 |
| 刺激物 | 高濃度エタノール(アルコール) | 頭皮の乾燥、かゆみ、刺激を引き起こす可能性。 |
| 添加物 | パラベン、合成香料、合成着色料 | アレルギー反応、頭皮かぶれの原因になる可能性。 |
10代向け育毛剤の安全な選び方
10代が育毛剤を選ぶ際は、「髪を生やす」ことよりも「今ある髪を守り、健やかな頭皮環境を育む」ことを最優先に考えるべきです。
刺激が少なく、頭皮を保湿し、炎症を抑えることを目的とした製品を選ぶことが大切です。
「医薬部外品」または「化粧品」を選ぶ
繰り返しになりますが、10代が手にするべきなのは「医薬品」の発毛剤ではなく、「医薬部外品」の育毛剤、または「化粧品」のスカルプケア製品です。
パッケージや製品サイトに「医薬部外品」または「薬用」と記載されているかを確認しましょう。「化粧品」の場合は「スカルプエッセンス」「頭皮用美容液」といった名称で販売されていることが多いです。
これらの製品は、効果が穏やかな分、副作用のリスクも医薬品に比べて低いのが特徴です。
頭皮環境を整える保湿・抗炎症成分
10代の頭皮は、ホルモンバランスの影響で皮脂が多くなりがちですが、一方でシャンプーのしすぎなどで乾燥している場合もあります。頭皮の水分と油分のバランスを整えることが重要です。
セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの「保湿成分」が配合されているか確認しましょう。
また、かゆみやフケ、赤みがある場合は、頭皮が軽い炎症を起こしている可能性があります。
グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)やセンブリエキスなど、炎症を抑える「抗炎症成分」が配合されている製品も有効です。
10代の頭皮ケアに適した成分例
| 目的 | 主な成分例 | 期待できる働き |
|---|---|---|
| 保湿 | セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、植物エキス(アロエなど) | 頭皮に潤いを与え、乾燥やフケを防ぐ。 |
| 抗炎症 | グリチルリチン酸2K、センブリエキス、アラントイン | かゆみや赤み、炎症を抑え、頭皮を健やかに保つ。 |
| 血行促進 | センブリエキス、ビタミンE誘導体(酢酸トコフェロール) | 頭皮の血流を良くし、毛根への栄養補給を助ける。(効果は穏やか) |
無添加・低刺激処方か確認する
デリケートな10代の頭皮には、できるだけ余計な化学成分を与えない方が安全です。
「アルコール(エタノール)フリー」「パラベンフリー」「無香料」「無着色」「シリコンフリー」など、刺激となる可能性のある成分が無添加であるかをチェックしましょう。
これらの情報は、製品のパッケージや公式サイトに「低刺激処方」「敏感肌向け」といった言葉と共に記載されていることが多いです。
アレルギーテスト・パッチテストの重要性
「低刺激処方」や「無添加」と書かれていても、すべての人にアレルギーが起こらないわけではありません。特にアトピー性皮膚炎や敏感肌の自覚がある人は注意が必要です。
「アレルギーテスト済み」「パッチテスト済み」と記載のある製品は、比較的安全性が高いと考えられますが、それでも万全ではありません。
使用を開始する前には、必ず自分自身でパッチテストを行うことを強く推奨します。
二の腕の内側など、目立たない柔らかい皮膚に少量を塗り、24時間〜48時間様子を見て、赤みやかゆみが出ないかを確認してから頭皮に使用しましょう。
副作用は?使用前に知っておきたいリスク
10代でも安全性が高いとされる医薬部外品や化粧品の育毛剤であっても、体質や頭皮の状態によっては、好ましくない反応(副作用)が起こるリスクはゼロではありません。
使用を開始する前に、どのようなリスクが考えられるかを理解しておくことが重要です。
頭皮のかゆみ・赤み・発疹
最も一般的に見られる副作用は、塗布した部分の皮膚トラブルです。
これは、製品に含まれる何らかの成分(アルコールや植物エキス、防腐剤など)が肌に合わず、アレルギー反応や刺激性皮膚炎を引き起こすことが原因です。
使用中や使用後に、頭皮がピリピリする、かゆくなる、赤みを帯びる、ブツブツとした発疹が出るといった症状が現れた場合は、その育毛剤があなたの肌に合っていない可能性が高いです。
フケの増加
育毛剤を使用したことで、かえってフケが増えてしまうこともあります。
これは、製品に含まれるアルコールの刺激で頭皮が乾燥しすぎたり、逆に製品の油分が毛穴に詰まったりすることが原因として考えられます。
また、頭皮のターンオーバー(新陳代謝)が乱れることでもフケは発生しやすくなります。自分の頭皮が乾燥タイプなのか、脂性タイプなのかを見極め、合った製品を選ぶ必要があります。
アレルギー反応の可能性
頭皮の症状だけでなく、稀に全身的なアレルギー反応(じんましんや息苦しさなど)を引き起こす可能性も否定できません。
特に、植物由来の成分を多く含む製品の場合、特定の植物にアレルギーがある人は注意が必要です。
使用前にパッチテストを行うことは、こうした重篤なアレルギー反応を未然に防ぐためにも非常に有効です。
初期脱毛は起こる?
医薬品のミノキシジルなどを使用した際、ヘアサイクルがリセットされる過程で一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」という現象が知られています。
しかし、10代の使用に適した医薬部外品や化粧品の育毛剤は、作用が穏やかであるため、医薬品のような顕著な初期脱毛が起こる可能性は極めて低いと考えられます。
もし使用開始後に抜け毛が増えたと感じた場合は、初期脱毛ではなく、製品が肌に合わずに頭皮環境が悪化しているか、他の要因(ストレスや生活習慣の悪化)が重なった可能性を疑うべきです。
異変を感じた場合の対処法
育毛剤を使用していて、かゆみ、赤み、フケの増加など、何らかの異変を感じた場合は、すぐに使用を中止してください。
もったいないと思っても、そのまま使い続けると症状が悪化し、治療が必要な状態になる恐れがあります。
使用を中止しても症状が改善しない場合や、症状がひどい場合は、速やかに皮膚科を受診してください。その際、使用していた育毛剤を持参すると、医師が原因を特定する手がかりになります。
育毛剤に頼る前に10代が実践すべきこと
育毛剤の使用を検討する気持ちも分かりますが、10代の薄毛の悩みの多くは、生活習慣やヘアケアの見直しによって改善する可能性があります。
高価な育毛剤に頼る前に、まずは日々の生活を見直し、お金をかけずにできることから実践することが、健やかな髪を育む上で最も重要です。
栄養バランスの取れた食事
髪の毛は主に「ケラチン」というタンパク質からできています。そのため、肉、魚、卵、大豆製品など、良質なタンパク質を毎日の食事でしっかり摂ることが基本です。
また、タンパク質が髪の毛に変わるのを助ける「亜鉛」(牡蠣、レバー、ナッツ類など)や、頭皮の血行を良くする「ビタミンE」(アーモンド、アボカドなど)、頭皮の新陳代謝を促す「ビタミンB群」(豚肉、マグロ、バナナなど)も大切です。
インスタント食品やスナック菓子は控えめにし、野菜や海藻類もバランス良く取り入れた「和食」中心の食生活を心がけましょう。
髪の成長をサポートする栄養素
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の毛の主成分(ケラチン)になる | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促す | 豚肉、レバー、マグロ、カツオ、バナナ |
質の高い睡眠の確保
髪の毛の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。
特に、夜10時から深夜2時の間は「睡眠のゴールデンタイム」と呼ばれ、成長ホルモンの分泌が最も活発になると言われてきました(最近では時間帯よりも「入眠直後の深い眠り」が重要という説が有力です)。
いずれにせよ、十分な睡眠時間を確保することが重要です。10代であれば、毎日最低でも7時間、できれば8時間の睡眠を目指しましょう。
また、寝る直前までスマートフォンやゲームをしていると、ブルーライトの影響で眠りが浅くなります。就寝1時間前からは画面を見るのをやめ、リラックスする時間を作ることが質の高い睡眠につながります。
ストレスの効果的な発散方法
ストレスは自律神経を乱し、頭皮の血流を悪化させます。勉強や人間関係の悩みは尽きないかもしれませんが、ストレスを溜め込まないように、自分なりの発散方法を見つけることが大切です。
適度な運動は、気分転換になるだけでなく、全身の血行を良くするため、頭皮環境にも良い影響を与えます。
部活動で汗を流すのも良いですし、軽いジョギングやウォーキング、ストレッチなどでも構いません。
また、趣味に没頭する時間を作ったり、友人と話したり、音楽を聴いたりして、心身ともにリラックスできる時間を持つように意識しましょう。
正しいシャンプーと頭皮ケア
毎日のシャンプーは、頭皮を清潔に保つために重要ですが、やり方が間違っていると逆効果になります。まず、シャンプー剤は洗浄力がマイルドなアミノ酸系のものを選ぶのがおすすめです。
洗う際は、熱すぎるお湯(40度以上)を避け、38度程度のぬるま湯で頭皮と髪をしっかり予洗いします。
シャンプー剤は手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮につけ、指の腹を使ってマッサージするように優しく洗います。爪を立ててゴシゴシ洗うのは厳禁です。
洗い終わったら、シャンプー剤が残らないように、時間をかけて丁寧にすすぎましょう。シャンプー後は、ドライヤーでしっかり乾かすことも大切です。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなります。
10代のシャンプー選びのポイント
| シャンプーの種類 | 特徴 | 10代への推奨度 |
|---|---|---|
| 高級アルコール系 | 洗浄力が強い。安価な製品に多い。 | △(皮脂が非常に多い場合以外は、刺激が強く乾燥を招く可能性あり) |
| アミノ酸系 | 洗浄力がマイルド。保湿性が高い。 | ◎(頭皮への刺激が少なく、乾燥を防ぎながら優しく洗える) |
| 石けん系 | 洗浄力は中程度。さっぱりするが、髪がきしみやすい。 | ○(アルカリ性のため、リンスでの中和が必要。肌に合えば良い選択肢) |
年齢別に見る薄毛対策の違い
薄毛の原因や有効な対策は、年代によって大きく異なります。10代の薄毛の悩みは、20代、30代以降のそれとは根本的に異なる点が多いことを理解しておく必要があります。
10代はAGA(男性型脱毛症)が本格化することは稀であり、生活習慣や頭皮環境の問題が中心です。
10代の薄毛対策の焦点
10代の薄毛対策で最も重視すべきは、「頭皮環境の正常化」と「生活習慣の改善」です。前述の通り、睡眠不足、栄養の偏り、ストレス、不適切なヘアケアが主な原因であることがほとんどです。
したがって、対策もそこが中心となります。
育毛剤を使用するとしても、それはあくまで補助的な役割です。頭皮の保湿や抗炎症を目的とした低刺激な製品を選び、土台となる生活習慣を整えることが最優先課題です。
20代・30代以降のAGA対策との違い
20代後半から30代以降になると、薄毛の原因としてAGA(男性型脱毛症)の割合が急速に高まります。AGAは、男性ホルモンと遺伝的要因によって引き起こされる進行性の脱毛症です。
この場合、生活習慣の改善だけでは進行を止めるのが難しくなります。
そのため、対策も「発毛の促進」や「抜け毛の抑制」に焦点が移ります。
医薬品であるミノキシジルの外用(発毛促進)や、フィナステリド・デュタステリドの内服(抜け毛抑制)といった、より積極的な治療が選択肢に入ってきます。
これらは10代では使用が推奨されない、強力な対策です。
10代と20代以降のケア比較
10代と20代以降では、推奨されるケアの方法が明確に異なります。
| 項目 | 10代の主な対策 | 20代・30代以降の主な対策(AGAの場合) |
|---|---|---|
| 主な原因 | 生活習慣の乱れ、ストレス、頭皮環境の悪化 | AGA(男性ホルモン、遺伝)、生活習慣の乱れ |
| 対策の焦点 | 生活改善、頭皮環境の正常化、ストレスケア | 抜け毛の抑制(内服薬)、発毛促進(外用薬) |
| 育毛剤・治療薬 | 医薬部外品(保湿・抗炎症)、化粧品(スカルプケア) | 医薬品(ミノキシジル、フィナステリドなど)、医薬部外品 |
年齢に応じたケアの必要性
このように、薄毛の背景が異なるため、年齢や状態に応じた適切なケアを選ぶことが非常に重要です。
10代のうちから、AGA治療薬のような強力な医薬品に頼ろうとすることは、リスクがメリットを上回る可能性が非常に高いです。
まずは自分の年齢で起こりやすい原因を正しく理解し、地道な生活改善から取り組むことが、将来の髪と健康を守るために最も賢明な判断と言えます。
Q&A
10代の育毛剤使用に関して、多くの方が抱く疑問や不安について、Q&A形式でお答えします。
- 育毛剤を使えばすぐに毛が生えてきますか?
-
いいえ、すぐに毛が生えてくることはありません。10代に適した「医薬部外品」の育毛剤は、あくまで頭皮環境を整え、抜け毛を予防することが目的です。
髪の毛には成長サイクル(ヘアサイクル)があり、効果を実感できるとしても、最低でも3ヶ月から6ヶ月は継続して使用し、同時に生活習慣の改善も行う必要があります。
即効性を期待するものではありません。
- 親に相談しにくい場合はどうすればいいですか?
-
薄毛の悩みを親に打ち明けるのは勇気がいることだと思います。しかし、間違った自己判断で高価な製品を買ったり、危険な方法を試したりする前に、一度相談することをおすすめします。
もし直接言いにくい場合は、学校の保健室の先生や、信頼できる他の大人に相談してみるのも一つの方法です。
また、皮膚科を受診したいという形で伝えると、親も真剣に受け止めてくれるかもしれません。
- 女性用の育毛剤を10代男性が使ってもいいですか?
-
女性用の育毛剤は、一般的に保湿成分が豊富で、刺激がマイルドに作られている製品が多いです。そのため、10代男性が使用しても大きな問題が起こる可能性は低いです。
ただし、女性特有のホルモンバランスに着目した成分(大豆イソフラボンなど)が配合されている場合もあり、男性の頭皮に最適とは限りません。
男性用・女性用と分かれている製品よりは、「男女兼用」と記載されている低刺激な製品を選ぶ方が無難かもしれません。
- 育毛剤はいつまで使い続ける必要がありますか?
-
医薬部外品の育毛剤は、使用をやめると頭皮環境が元の状態に戻ってしまう可能性があります。
もし育毛剤を使い始めて頭皮の状態が良くなったと感じるなら、生活習慣の改善を続けながら、頭皮のコンディションを維持するために継続使用することが推奨されます。
ただし、10代の場合は、生活習慣が安定し、ホルモンバランスが落ち着くことで、育毛剤が不要になるケースも十分に考えられます。
- 整髪料(ワックスなど)と併用しても大丈夫ですか?
-
併用しても基本的には問題ありません。ただし、使用する順番が重要です。
育毛剤は清潔な頭皮に直接浸透させる必要があるため、シャンプー後、髪を乾かした後にまず育毛剤を頭皮につけてマッサージします。
育毛剤が乾いて頭皮に馴染んだ後に、整髪料を髪の毛(頭皮につかないよう)につけるようにしてください。
また、整髪料を使った日は、その日のうちに必ずシャンプーでしっかり洗い流し、頭皮に汚れを残さないことが大切です。
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