鏡を見るたび、枕に残る髪の毛を見るたび、「何かできることはないか」と食生活に目を向ける方も多いのではないでしょうか。
「増毛につながる食べ物」が本当にあるなら、ぜひ知りたいですよね。
残念ながら、特定の食品を食べさえすれば髪がフサフサになる、という魔法のような食べ物は存在しません。しかし、髪の毛も体の一部であり、日々の食事から作られています。
この記事では、髪の毛の材料となる重要な栄養素、それらを効率よく摂取できる食品、そして逆に健やかな髪の成長を妨げる可能性のあるNGな食事について、わかりやすく解説します。
食生活を見直すことが、未来の髪を育む大切な一歩になります。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
増毛と食べ物の関係性についての基本
増毛に直接効く特定の食べ物は存在しませんが、髪の毛の成長に必要な栄養素をバランスよく摂取することが、健康な髪を育む土台となります。
髪も皮膚や爪と同じように、私たちが食べたものから得られる栄養素によって作られているからです。したがって、食生活の乱れは、髪の健康状態に直結する可能性があります。
髪の毛は何でできている?
私たちの髪の毛は、その約90%が「ケラチン」というタンパク質で構成されています。残りの成分は水分、脂質、メラニン色素、微量元素などです。
つまり、髪の毛の主原料はタンパク質であるといえます。このケラチンは18種類のアミノ酸が結合してできており、特にシスチンというアミノ酸を多く含むことが特徴です。
健康な髪を育むためには、まずこの主原料であるタンパク質を食事から十分に摂取することが基本中の基本となります。
食事が髪の健康に与える影響
食事は、髪の健康状態に非常に大きな影響を与えます。
髪の毛は毛根部にある「毛母細胞」が分裂・増殖することによって作られますが、この毛母細胞が活発に働くためには、血液を通じて十分な栄養素が送り届けられる必要があります。
栄養バランスの取れた食事は、毛母細胞が必要とするエネルギーと材料を供給し、髪の成長サイクル(ヘアサイクル)を正常に保つために役立ちます。
逆に栄養が偏ったり不足したりすると、毛母細胞の働きが鈍くなり、髪が細くなったり、抜けやすくなったりする原因になり得ます。
栄養不足が引き起こす髪のトラブル
特定の栄養素が極端に不足すると、髪の健康は損なわれます。例えば、髪の主成分であるタンパク質が不足すれば、新しい髪の毛が作られにくくなります。
また、タンパク質の合成を助ける亜鉛が不足すると、タンパク質を効率よく髪の毛に変えることができません。
さらに、ビタミン類が不足すると頭皮環境が悪化し、血行不良や皮脂の過剰分泌などを引き起こし、健康な髪が育ちにくい状態になります。
無理なダイエットや偏った食生活は、こうした栄養不足を招きやすく、薄毛や抜け毛のリスクを高める要因となります。
髪の毛の主成分「タンパク質」を補給する
髪の約90%を占めるケラチンというタンパク質を生成するために、良質なタンパク質の摂取は非常に重要です。
毎日の食事で、肉、魚、卵、大豆製品などから意識的にタンパク質を摂り入れることが、健やかな髪の土台作りにつながります。
ケラチンとは?
ケラチンは、髪の毛だけでなく、皮膚の角質層や爪などを構成する主要なタンパク質の一種です。繊維状の構造を持ち、非常に丈夫で弾力性があるのが特徴です。
この強さは、ケラチンを構成するアミノ酸の中でも特に「シスチン」という含硫アミノ酸が多く含まれ、それらが強く結合していることによります。
食事から摂取したタンパク質は、一度体内でアミノ酸に分解され、その後、髪の毛としてケラチンに再合成されます。
このため、ケラチンの材料となる多様なアミノ酸を、タンパク質から摂取することが必要なのです。
タンパク質が豊富な食べ物
タンパク質は、様々な食品に含まれています。
特に肉類、魚介類、卵、乳製品などの動物性タンパク質源、そして大豆製品、穀類などの植物性タンパク質源からバランスよく摂取することが望ましいです。
どちらか一方に偏るのではなく、多様な食品を組み合わせることで、ケラチン合成に必要な各種アミノ酸を効率よく補給できます。
タンパク質を多く含む食品の例
| 食品名 | 100gあたりのタンパク質量(目安) | 分類 |
|---|---|---|
| 鶏むね肉(皮なし) | 約23.3g | 動物性 |
| さけ(しろさけ) | 約22.3g | 動物性 |
| 卵(全卵) | 約12.3g | 動物性 |
| 木綿豆腐 | 約7.0g | 植物性 |
| 納豆 | 約16.5g | 植物性 |
動物性タンパク質と植物性タンパク質
タンパク質には「動物性」と「植物性」の2種類があります。動物性タンパク質(肉、魚、卵など)は、体内で合成できない必須アミノ酸をバランスよく含んでいる「良質なタンパク質」とされます。
一方、植物性タンパク質(大豆、穀類など)は、必須アミノ酸のバランスが動物性に比べてやや劣るものもありますが、脂質が少なく、食物繊維やビタミン、ミネラルを同時に摂取できるという利点があります。
髪の健康のためには、どちらかに偏るのではなく、両方をバランスよく食事に取り入れることが重要です。例えば、肉ばかりでなく魚や大豆製品も積極的に食べるように心がけましょう。
1日に必要なタンパク質摂取量の目安
1日に必要なたんぱく質の量は、年齢、性別、活動量によって異なりますが、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18歳以上の男性の推奨量を1日65gとしています。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。日常的に運動をする人や、体格が大きい人はより多くのタンパク質が必要です。
自分の体重1kgあたり1.0g〜1.2g程度を目安にするのも一つの方法です。例えば体重60kgの人なら60g〜72g程度となります。
毎食、手のひらサイズ程度のタンパク質源(肉、魚、卵、大豆製品など)を摂ることを意識すると、必要量を満たしやすくなります。
タンパク質の合成を助ける「亜鉛」
亜鉛は、摂取したタンパク質を髪の毛の成分であるケラチンに再合成する際に不可欠なミネラルです。
いくらタンパク質を多く摂っても、亜鉛が不足していると効率よく髪の毛を作ることができません。そのため、髪の健康を維持する上で非常に重要な役割を担っています。
亜鉛の役割と重要性
亜鉛は体内で非常に多くの酵素の構成成分として働き、細胞の新陳代謝をサポートする重要なミネラルです。特に、タンパク質の合成やDNAの複製に深く関わっています。
髪の毛は毛母細胞が分裂・増殖することで成長しますが、この細胞分裂の際にも亜鉛が必要です。
つまり、亜鉛は「タンパク質を髪の毛に変える」プロセスと、「髪の毛を生み出す細胞分裂」の両方で重要な働きをしているのです。このため、亜鉛が不足すると、髪の成長が妨げられる可能性があります。
亜鉛不足が髪に与える影響
亜鉛が不足すると、タンパク質からケラチンへの合成がスムーズに行われなくなり、健康な髪の毛が作られにくくなります。
その結果、髪の毛が細くなったり、弱くなったり、成長が遅れたりすることが考えられます。
また、亜鉛は味覚を正常に保つ働きもありますが、不足すると味覚障害を引き起こすことがあるように、細胞の新陳代謝が活発な場所で影響が出やすいとされます。
髪の毛も新陳代謝が非常に活発な組織の一つであるため、亜鉛不足の影響を受けやすい部分と言えます。
亜鉛を多く含む食べ物
亜鉛は、特に牡蠣(かき)に非常に多く含まれていることで知られています。その他、レバー、牛肉(特に赤身)、チーズ、卵黄、ナッツ類、豆類などにも比較的多く含まれています。
日常の食事では、これらの食品を意識的に取り入れることが大切です。ただし、亜鉛は体内に蓄積しにくく、汗などと一緒に排出されやすいため、毎日継続して摂取することが望まれます。
亜鉛を多く含む食品の例
| 食品名 | 100gあたりの亜鉛含有量(目安) | 主な分類 |
|---|---|---|
| 牡蠣(生) | 約14.5mg | 魚介類 |
| 豚レバー(生) | 約6.9mg | 肉類 |
| 牛もも肉(赤身・生) | 約4.4mg | 肉類 |
| パルメザンチーズ | 約7.3mg | 乳製品 |
| アーモンド(乾) | 約3.6mg | ナッツ類 |
亜鉛摂取時の注意点
亜鉛は重要なミネラルですが、摂取にはいくつかの注意点があります。まず、亜鉛はビタミンCやクエン酸(レモンや梅干しなどに含まれる)と一緒に摂ると吸収率が高まるとされます。
逆に、加工食品に多く含まれるリン酸塩や、穀類や豆類に多いフィチン酸、コーヒーや緑茶に含まれるタンニンなどは、亜鉛の吸収を妨げる可能性があります。
また、アルコールの分解にも亜鉛が消費されるため、お酒をよく飲む人は亜鉛が不足しがちです。
さらに、亜鉛は摂りすぎても過剰症(吐き気、下痢など)を引き起こす可能性があるため、サプリメントなどで補う場合は、耐容上限量(成人男性で1日40〜45mg程度)を超えないよう注意が必要です。
基本は食事からバランスよく摂取することを心がけましょう。
頭皮環境を整える「ビタミン類」
各種ビタミンは、頭皮の血行を促進したり、皮脂の分泌をコントロールしたりすることで、健康な髪が育つための土壌を整えます。
髪の毛そのものを作る材料ではありませんが、髪が健やかに成長するためのサポート役として非常に重要です。
ビタミンAの働き
ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康を維持する働きがあります。頭皮も皮膚の一部であり、ビタミンAが不足すると頭皮が乾燥しやすくなり、フケやかゆみの原因となることがあります。
乾燥した頭皮はバリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなるため、健康な髪が育ちにくい環境になってしまいます。
ビタミンAは、頭皮のターンオーバー(新陳代謝)を正常に保ち、潤いのある健康な頭皮環境を維持するために役立ちます。
レバー、うなぎ、卵黄や、緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃ、ほうれん草など)に多く含まれます。
ビタミンB群の働き
ビタミンB群は、エネルギー代謝を助ける重要なビタミンで、特に髪の健康とは深い関わりがあります。
中でもビタミンB2は皮脂の分泌をコントロールする働きがあり、不足すると皮脂が過剰になって脂漏性皮膚炎などを引き起こし、抜け毛の原因になることがあります。
ビタミンB6は、タンパク質(アミノ酸)の代謝を助ける働きがあり、タンパク質からケラチンを合成する際にも関与します。
また、ビオチン(ビタミンB7とも)も皮膚や髪の健康維持に関わるビタミンとして知られています。ビタミンB群は互いに協調して働くため、単体ではなく複合的に摂取することが望ましいです。
主なビタミンB群と髪への働き
| ビタミン名 | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| ビタミンB2 | 皮脂の分泌調節、皮膚・粘膜の健康維持 | レバー、うなぎ、卵、納豆 |
| ビタミンB6 | タンパク質(アミノ酸)の代謝補助 | まぐろ、かつお、鶏肉、バナナ |
| ビオチン | 皮膚や髪の健康維持に関与 | レバー、卵黄、ナッツ類 |
ビタミンCの働き
ビタミンCは、強力な抗酸化作用を持つビタミンです。体内で発生する活性酸素は、細胞を酸化させて老化を促進し、毛母細胞の働きを低下させる可能性があります。
ビタミンCは、この活性酸素から細胞を守る働きがあります。また、ビタミンCは頭皮の弾力や強度を保つコラーゲンの生成に必要です。
健康な頭皮は、毛細血管をしっかりと支え、髪に栄養を届ける基盤となります。さらに、ビタミンCは鉄分の吸収を助ける働きもあるため、貧血予防の観点からも髪の健康に寄与します。
ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類などに多く含まれます。
ビタミンEの働き
ビタミンEもビタミンCと同様に強い抗酸化作用を持ち、「若返りのビタミン」とも呼ばれます。体内の脂質の酸化を防ぎ、細胞の老化を抑制する働きが期待できます。
また、ビタミンEには末梢血管を拡張させ、血行を促進する作用があります。頭皮の毛細血管の血流が良くなることで、毛母細胞に酸素や栄養素が届きやすくなり、髪の成長をサポートします。
ビタミンCと一緒に摂ることで、抗酸化作用がより高まるとされます。アーモンドなどのナッツ類、植物油(ひまわり油、オリーブオイルなど)、アボカド、かぼちゃなどに多く含まれます。
ビタミンA・C・Eを多く含む食品
| ビタミン名 | 多く含む食品例 | 期待される働き |
|---|---|---|
| ビタミンA | レバー、うなぎ、緑黄色野菜 | 頭皮の健康維持、乾燥防止 |
| ビタミンC | ピーマン、ブロッコリー、柑橘類 | 抗酸化作用、コラーゲン生成補助 |
| ビタミンE | ナッツ類、植物油、アボカド | 抗酸化作用、血行促進 |
髪の成長をサポートするその他の栄養素
タンパク質、亜鉛、ビタミン以外にも、鉄分やイソフラボン、カプサイシンなど、髪の健康維持を間接的にサポートする栄養素があります。
これらもバランスよく摂取することで、より健やかな髪を育む環境づくりに役立ちます。
鉄分
鉄分は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの主成分であり、全身に酸素を運搬する重要な役割を担っています。頭皮の毛母細胞も、活動するために多くの酸素を必要とします。
鉄分が不足して貧血状態になると、頭皮に運ばれる酸素の量が減少し、毛母細胞の働きが低下してしまいます。その結果、髪の成長が妨げられたり、抜け毛が増えたりする可能性があります。
特に女性は月経により鉄分が不足しやすいため注意が必要です。鉄分はレバー、赤身の肉、あさり、ほうれん草、小松菜などに多く含まれます。
イソフラボン
イソフラボンは、大豆や大豆製品に多く含まれるポリフェノールの一種で、女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造と働きを持つことから、植物性エストロゲンとも呼ばれます。
男性型脱毛症(AGA)の一因とされる男性ホルモン(ジヒドロテストステロン:DHT)の働きを抑制する可能性が示唆されています。
エストロゲンは髪の成長期を維持し、髪のハリやコシを保つ働きに関与しているため、イソフラボンを摂取することが、ホルモンバランスの観点から髪の健康維持に役立つのではないかと期待されています。
納豆、豆腐、豆乳などの大豆製品から摂取できます。
カプサイシン
カプサイシンは、唐辛子に含まれる辛味成分です。
カプサイシンを摂取すると、胃腸の知覚神経が刺激され、それが脳に伝わることで「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質の放出が促されます。
このCGRPが血流を促進する作用を持つとされます。また、CGRPは毛乳頭細胞に働きかけて、髪の成長を促す因子(IGF-1)の産生を増やす可能性も研究されています。
唐辛子を使った料理などで適度に取り入れると良いかもしれませんが、胃腸への刺激が強いため、摂りすぎには注意が必要です。
その他の注目栄養素
| 栄養素名 | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| 鉄分 | 酸素の運搬(貧血予防) | レバー、赤身肉、あさり、ほうれん草 |
| イソフラボン | 女性ホルモン様の作用 | 大豆製品(納豆、豆腐、豆乳) |
| カプサイシン | 血行促進の可能性 | 唐辛子 |
注意したい!増毛の妨げになるNGな食事
髪の健康を考える上で、特定の栄養素を摂ること同様に、髪の成長を妨げる可能性のある食事を避けることも大切です。
日々の食習慣が、知らず知らずのうちに頭皮環境を悪化させ、薄毛や抜け毛の原因となっているかもしれません。
高脂肪・高カロリーな食事
揚げ物や脂身の多い肉、スナック菓子などの高脂肪・高カロリーな食事を日常的に続けていると、血液中の中性脂肪やコレステロールが増加し、血液がドロドロになりやすくなります。
血液の粘度が高まると、頭皮の毛細血管のような細い血管では血流が悪化しやすくなります。その結果、毛母細胞へ酸素や栄養素が十分に届かなくなり、髪の成長が妨げられる可能性があります。
また、過剰な脂質は皮脂の分泌を増加させ、頭皮環境を悪化させる一因にもなります。
過度な塩分・糖分の摂取
塩分の摂りすぎは、高血圧を引き起こす要因の一つです。高血圧の状態が続くと、血管に負担がかかり、動脈硬化を促進します。これには頭皮の毛細血管も含まれ、血流の悪化につながる可能性があります。
また、糖分の過剰摂取も問題です。糖分を摂りすぎると、体内でタンパク質と糖が結びつく「糖化」という反応が起こりやすくなります。
糖化によって生成されるAGEs(最終糖化産物)は、血管や頭皮のコラーゲンを硬化させ、弾力性を失わせるため、頭皮環境の悪化や老化を早める原因となります。
アルコールの過剰摂取
適度なアルコールは血行を良くする面もありますが、過剰な摂取は髪に悪影響を与えます。アルコールが体内で分解される際には、アセトアルデヒドという有害物質が発生します。
このアセトアルデヒドを無害化するために、体はアミノ酸(特にシスチン)やビタミンB群、そして亜鉛を大量に消費します。
これらはすべて、髪の毛の生成や健康維持に重要な栄養素です。つまり、お酒を飲みすぎると、髪の毛を作るための材料がアルコールの分解に使われてしまい、髪の成長が妨げられることになります。
インスタント食品やファストフード
インスタント食品やファストフードは、手軽で便利な反面、高脂肪・高塩分・高糖分である場合が多く、ビタミンやミネラルなどの髪に必要な栄養素が不足しがちです。
また、保存料や着色料などの食品添加物が多く含まれていることもあります。これらの添加物の一部は、体内で処理される際にビタミンやミネラルを消費したり、亜鉛の吸収を妨げたりする可能性があります。
日常的にこれらの食品に頼った食生活を送っていると、栄養バランスが大きく偏り、髪の健康を維持するのが難しくなります。
避けたい食習慣とその理由
| 避けたい食習慣 | 髪への潜在的影響 | 具体例 |
|---|---|---|
| 高脂肪・高カロリー食 | 血行不良、皮脂の過剰分泌 | 揚げ物、脂身の多い肉、スナック菓子 |
| 過度な塩分・糖分 | 血行不良(高血圧)、糖化による頭皮の老化 | 濃い味付け、清涼飲料水、菓子類 |
| アルコールの過剰摂取 | 髪に必要な栄養素(アミノ酸、亜鉛、ビタミン)の消費 | 毎日の深酒、多量の飲酒 |
| インスタント・ファストフード中心 | 栄養バランスの偏り、添加物の影響 | カップ麺、ハンバーガー、コンビニ弁当 |
栄養バランスを考えた食事のポイント
特定の食品に偏るのではなく、髪に必要な様々な栄養素を日々バランスよく摂取することが、健やかな髪への近道です。
完璧を目指す必要はありませんが、いくつかのポイントを意識するだけで、食生活は大きく改善できます。
「まごわやさしい」を意識する
栄養バランスの良い食事の合言葉として、「まごわやさしい」が役立ちます。これは、健康な体を維持するために推奨される、伝統的な日本の食生活に基づいた食材の頭文字をとったものです。
これらの食材を意識的に食事に取り入れることで、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランスよく摂取しやすくなります。
「まごわやさしい」の食材
- ま:豆類(大豆、納豆、豆腐など)
- ご:ごま(ナッツ類も含む)
- わ:わかめ(海藻類)
- や:野菜
- さ:魚(特に青魚)
- し:しいたけ(きのこ類)
- い:いも類
毎食すべてを揃えるのは難しくても、1日の中でこれらの食材をできるだけ多く食べるように意識してみましょう。
1日3食規則正しく食べる
食事を抜いたり、食べる時間が不規則だったりすると、体は栄養不足の状態に陥りやすくなります。
特に朝食を抜くと、エネルギー不足で日中の活動効率が下がるだけでなく、体は次の食事で栄養を過剰に吸収しようとし、血糖値の急上昇や脂肪の蓄積につながりやすくなります。
また、空腹時間が長くなると、体は生命維持に重要な臓器へ優先的に栄養を送ろうとします。髪の毛は生命維持の優先順位が低いため、栄養が後回しにされがちです。
1日3食をなるべく決まった時間に食べることで、体内の栄養状態を安定させ、髪にも栄養が届きやすい環境を作ることが大切です。
無理なダイエットは避ける
体重を減らすために極端な食事制限を行う無理なダイエットは、髪の健康にとって非常に危険です。
食事量を急激に減らすと、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど、髪の成長に必要な栄養素が慢性的に不足します。体は生命維持を最優先するため、髪の毛への栄養供給は真っ先にカットされます。
その結果、髪が細くなったり、ツヤがなくなったりするだけでなく、抜け毛が急激に増えることもあります。
健康的に体重を管理する場合でも、髪の主成分であるタンパク質や、代謝を助けるビタミン・ミネラルは不足しないよう、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。
Q&A
増毛と食べ物に関する、よくあるご質問にお答えします。
- わかめや昆布を食べると髪は増えますか?
-
わかめや昆布などの海藻類を食べると髪が増える、あるいは黒くなる、とよくいわれますが、残念ながら医学的な根拠は明確ではありません。
海藻類にはヨウ素(ヨード)というミネラルが豊富に含まれており、これは甲状腺ホルモンの材料となります。甲状腺ホルモンは体の新陳代謝を活発にするため、髪の成長にも間接的に関わっています。
しかし、ヨウ素を過剰に摂取すると逆に甲状腺の機能低下を引き起こす可能性もあり、食べ過ぎは推奨されません。
海藻類は食物繊維やミネラルも含む健康的な食品ですが、「海藻類だけを食べれば髪が増える」というわけではありません。
- サプリメントで栄養を補うのは効果がありますか?
-
基本的な栄養は食事からバランスよく摂取することが大原則です。しかし、忙しい現代の食生活では、どうしても特定の栄養素が不足しがちになることもあります。
そのような場合に、不足している栄養素(例えば亜鉛やビタミンB群など)をサプリメントで補うことは、髪の健康維持の一助になる可能性があります。
ただし、サプリメントはあくまで「補助」です。特定の栄養素だけを過剰に摂取しても効果が高まるわけではなく、むしろ過剰症のリスクもあります。
食事バランスを整える努力をまず行い、その上で補助的に利用することを検討するのが良いでしょう。
- 食生活を変えたらどれくらいで効果が出ますか?
-
食生活の改善による髪への影響は、すぐには現れません。髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、今生えている髪の毛は、数ヶ月から数年前に作られ始めたものです。
食生活を改善して頭皮環境が良くなったとしても、その影響が新しく生えてくる髪に現れ、見た目として実感できるようになるまでには、最低でも半年から1年程度の時間が必要です。
髪の変化は非常にゆっくりであるため、焦らずに、健康的な食生活を「続ける」ことが何よりも大切です。
- プロテインを飲むと薄毛になりますか?
-
プロテイン(タンパク質のサプリメント)を飲むこと自体が、直接的に薄毛の原因になることは考えにくいです。
髪の毛はタンパク質でできているため、材料補給という意味ではむしろプラスに働く可能性があります。ただし、プロテインの過剰摂取には注意が必要です。
一度に大量のタンパク質を摂取しても体内で処理しきれず、余剰分は脂肪として蓄積されたり、腎臓に負担をかけたりする可能性があります。
また、プロテインに頼りすぎて他の食事がおろそかになり、ビタミンやミネラルが不足してしまっては本末転倒です。あくまで食事の補助として、適量を守って利用することが重要です。
Reference
RAJENDRASINGH, J. R. Role of non-androgenic factors in hair loss and hair regrowth. J Cosmo Trichol, 2017, 3.2: 118.
GUO, Emily L.; KATTA, Rajani. Diet and hair loss: effects of nutrient deficiency and supplement use. Dermatology practical & conceptual, 2017, 7.1: 1.
RUSHTON, D. Hugh. Nutritional factors and hair loss. Clinical and experimental dermatology, 2002, 27.5: 396-404.
RAJPUT, Rajendrasingh. A scientific hypothesis on the role of nutritional supplements for effective management of hair loss and promoting hair regrowth. J Nutrition Health Food Sci, 2018, 6.3: 1-11.
TRÜEB, Ralph M. The hair cycle and its relation to nutrition. In: Nutrition for Healthy Hair: Guide to Understanding and Proper Practice. Cham: Springer International Publishing, 2020. p. 37-109.
GOKCE, Nuriye, et al. An overview of the genetic aspects of hair loss and its connection with nutrition. Journal of preventive medicine and hygiene, 2022, 63.2 Suppl 3: E228.
RAJENDRASINGH, Rajesh Rajput. Nutritional correction for hair loss, thinning of hair, and achieving new hair regrowth. In: Practical Aspects of Hair Transplantation in Asians. Tokyo: Springer Japan, 2017. p. 667-685.
ABDO, Farida Samy. Hair Integrity and Health with Dieting. NILES journal for Geriatric and Gerontology, 2025, 8.3: 273-288.
RUSHTON, D. H., et al. Causes of hair loss and the developments in hair rejuvenation. International journal of cosmetic science, 2002, 24.1: 17-23.
GOLUCH-KONIUSZY, Zuzanna Sabina. Nutrition of women with hair loss problem during the period of menopause. Menopause Review/Przegląd Menopauzalny, 2016, 15.1: 56-61.

