「男がトリートメントなんて必要なのか?」「短髪だし、リンスやコンディショナーで十分だろう」そう考えている男性は少なくないかもしれません。
確かに、髪が短ければダメージも目立ちにくく、日々のケアを簡略化したい気持ちもわかります。
しかし、実は男性の髪や頭皮も、紫外線や乾燥、スタイリング剤の使用など、日々様々な外的要因にさらされています。
この記事では、男性こそトリートメントを使うべき理由や、短髪でも得られる具体的なメリット、さらにはリンスとの違いや正しい選び方・使い方まで、あなたの疑問に徹底的に答えます。
この記事を読み終える頃には、トリートメントが単なる「女性のもの」ではなく、健康的な髪を維持するために「男性にも必要なケア」であることが理解できるはずです。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
結論:男性にもトリートメントは必要か?
結論から言うと、髪のダメージやパサつき、広がりが気になるのであれば、男性にもトリートメントは必要です。
短髪であっても、髪の内部補修や表面保護というトリートメント本来の役割は、健康的な髪を保つ上で大きな助けとなります。
男性がトリートメントを「不要」と感じる一般的な理由
多くの男性がトリートメントを不要と感じる背景には、いくつかの共通した理由があります。まず、「髪が短いからダメージがない」という思い込みです。
確かに短髪は長髪に比べてダメージが蓄積しにくいですが、ゼロではありません。また、「リンスやコンディショナーとの違いがわからない」ため、すでに使っているもので十分だと考える人も多いでしょう。
さらに、「ベタつくのが嫌だ」「面倒くさい」といった使用感や手間に対する抵抗感も、トリートメントを遠ざける一因となっています。
これらの理由は、トリートメントの本当の役割や効果、正しい使い方を知ることで解消できる場合がほとんどです。
短髪・坊主でもトリートメントが必要な根拠
「短髪や坊主なら、なおさら必要ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、短髪でも髪は日々伸びており、毛先は(短いながらも)ダメージを受けています。
特に坊主スタイルであっても、数ミリ伸びた髪は紫外線や摩擦の影響を受けます。トリートメントは、その短い髪1本1本をコーティングし、指通りを滑らかにしたり、外部の刺激から守ったりする役割を果たします。
また、髪がパサついていると、短くても清潔感が損なわれがちです。トリートメントで髪の水分バランスを整え、ツヤを出すことは、短髪スタイルの質感を高める上でも重要です。
短髪スタイルの質感維持
短髪の男性が清潔感を保つためには、髪の「質感」が非常に大切です。パサパサと乾燥してツヤのない短髪よりも、適度に潤いがあり、まとまりのある短髪の方が、健康的で洗練された印象を与えます。
トリートメントは、この質感を維持するために役立ちます。髪の表面を滑らかに整えることで、光の反射が均一になり、自然なツヤが生まれるのです。
頭皮への影響は?育毛剤メディアとしての見解
育毛を考える上で、トリートメントの頭皮への影響を心配する声もあります。確かに、トリートメント剤(特に油分の多いタイプ)が毛穴に詰まることは、頭皮環境にとって良くありません。
しかし、これは製品の問題ではなく、「使い方」の問題です。トリートメントは本来、髪の毛をケアするためのものであり、頭皮に直接すり込む必要はありません。
毛先や髪の中間部分を中心に塗布し、頭皮には付着させないように意識することが大切です。
正しく使用すれば、トリートメントが育毛の妨げになることは考えにくく、むしろ髪自体を健康に保つことで、切れ毛や枝毛による見た目のボリュームダウンを防ぐ助けになります。
トリートメントとリンス・コンディショナーの根本的な違い
トリートメント、リンス、コンディショナーは、すべてシャンプー後に使うものですが、その役割と目的は明確に異なります。
これらの違いを理解することが、自分に合ったヘアケアを選ぶ第一歩です。
それぞれの役割と目的の明確化
リンスとコンディショナーは、主に髪の「表面」を保護する役割を持ちます。シャンプー後の髪はアルカリ性に傾き、キューティクル(髪の表面を覆うウロコ状の組織)が開きやすい状態です。
リンスやコンディショナーは、髪の表面に油分の膜を作り、キューティクルを整えて指通りを滑らかにし、きしみを防ぎます。
一方、トリートメントは、髪の「内部」にまで浸透し、ダメージを補修したり、栄養分を補給したりする役割を持ちます。
髪のパサつきやダメージが気になる場合は、表面的なケアだけでは不十分であり、内部補修が可能なトリートメントの出番となります。
ヘアケア製品の役割比較
| 種類 | 主な役割 | 作用する場所 |
|---|---|---|
| リンス | 表面保護、きしみ防止、指通り向上 | 髪の表面 |
| コンディショナー | 表面保護、保湿、状態を整える | 髪の表面(リンスより高機能) |
| トリートメント | 内部補修、栄養補給、ダメージケア | 髪の内部と表面 |
男性の髪質や悩みに適しているのはどれ?
どの製品が適しているかは、その人の髪の状態や悩みによって決まります。例えば、特にダメージはなく、シャンプー後のきしみが気になる程度であれば、リンスやコンディショナーで十分かもしれません。
しかし、ヘアカラーやパーマ、毎日のドライヤーやヘアアイロンの使用で髪が傷んでいる場合、あるいは元々の髪質が乾燥しやすくパサつきがちな場合は、トリートメントによる内部からのケアが必要です。
男性でも、スタイリングのためにカラーやパーマをしている人、あるいは紫外線を浴びる機会が多い人は、トリートメントの使用を検討する価値が十分にあります。
トリートメントが髪内部にどう作用するか
トリートメントには、ケラチンやアミノ酸、セラミドといった髪の補修成分や保湿成分が含まれています。これらの成分が、開いたキューティクルの隙間から髪の内部(コルテックス)に浸透します。
内部でダメージによって流出してしまったタンパク質や水分を補い、髪の強度を高めたり、水分保持能力を向上させたりします。
その結果、髪のパサつきが抑えられ、ハリやコシが戻るのです。リンスやコンディショナーが「コーティング」だとしたら、トリートメントは「補修・補強」というイメージです。
男性の髪が受けるダメージの主な原因
男性の髪は短いためにダメージに気づきにくいですが、日常生活の中で様々な要因によって傷んでいます。自分では意識していなくても、髪は日々負担を強いられています。
紫外線によるダメージとパサつき
紫外線は肌だけでなく、髪にも深刻なダメージを与えます。髪の主成分であるタンパク質(ケラチン)は、紫外線を浴びることで変性・分解されてしまいます。
その結果、髪は強度を失い、もろくなります。また、キューティクルも紫外線によって傷つき、剥がれやすくなります。
その結果、髪内部の水分が蒸発しやすくなり、パサつきやゴワつき、色あせ(カラーリングしている場合)を引き起こします。
特に屋外での活動が多い男性は、紫外線ダメージを受けやすい環境にあると言えます。
ヘアカラーやパーマによる化学的ダメージ
おしゃれのためにヘアカラーやパーマを楽しんでいる男性も多いでしょう。
しかし、これらの施術は髪に大きな負担をかけます。カラー剤やパーマ液に含まれるアルカリ剤や還元剤は、キューティクルを開き、髪内部の構造を変化させます。
この過程で、髪内部のタンパク質や脂質が流出しやすくなり、髪は乾燥し、強度が低下します。施術後に適切なケアを怠ると、ダメージは進行し、枝毛や切れ毛の原因となります。
ドライヤーの熱や摩擦による物理的ダメージ
日常生活の中にもダメージの原因は潜んでいます。例えば、シャンプー後のタオルドライです。ゴシゴシと強くこすると、濡れてデリケートになっているキューティクルが傷つき、剥がれてしまいます。
また、ドライヤーの使い方も重要です。
髪に近づけすぎたり、同じ場所に長時間熱風を当て続けたりすると、髪のタンパク質が熱変性を起こし(いわゆる「タンパク変性」)、髪が硬くなったり、内部に空洞ができてもろくなったりします。
短髪だとすぐに乾くため、ドライヤーを雑に使いがちな男性も注意が必要です。
日常生活に潜む主なダメージ要因
| 要因カテゴリ | 具体的な例 | 髪への影響 |
|---|---|---|
| 物理的要因 | 強いブラッシング、ゴシゴシ拭くタオルドライ | キューティクルの損傷、摩擦による摩耗 |
| 熱的要因 | ドライヤーの過度な熱、ヘアアイロン | タンパク変性、水分の過度な蒸発、乾燥 |
| 化学的要因 | ヘアカラー、パーマ、プールの塩素 | キューティクルを開く、内部成分の流出 |
| 環境的要因 | 紫外線、乾燥した空気 | タンパク質の変性、水分の蒸発、パサつき |
加齢による髪質の変化と乾燥
年齢を重ねると、髪質にも変化が現れます。一般的に、髪の毛は細くなり、ハリやコシが失われがちです。
また、頭皮の皮脂分泌量も変化し、髪の潤いを保つ力が弱まることで、乾燥しやすくなる傾向があります。加齢によるこれらの変化は、髪をさらにダメージを受けやすい状態にします。
若い頃と同じヘアケアを続けていると、髪のパサつきやうねりに対応しきれなくなることもあります。年齢に応じた適切なケアとして、トリートメントで栄養や水分を補うことの重要性が増してきます。
トリートメント使用で得られる具体的なメリット
トリートメントを日々のケアに取り入れることで、男性の髪にも多くの具体的なメリットがあります。
単に「髪に良い」というだけでなく、見た目の印象や日々の扱いやすさに直結する効果が期待できます。
パサつきや広がりを抑え、まとまりやすい髪へ
トリートメントの最もわかりやすい効果の一つが、保湿と補修によるまとまりの向上です。ダメージや乾燥によってパサついた髪は、水分バランスが崩れ、広がりやすくなっています。
トリートメントで髪内部に水分と油分、補修成分を補給することで、髪1本1本がしっとりと潤い、重みが出ます。
このため、朝のスタイリングが格段にしやすくなり、雨の日などの湿気が多い日でも髪が広がりにくくなります。
特にくせ毛で悩んでいる男性にとっても、髪の水分量を均一に整えることは、くせを扱いやすくする上で助けとなります。
指通りを滑らかにし、摩擦ダメージを軽減
髪がギシギシ、ゴワゴワしていると、指やブラシが引っかかりやすくなります。
この引っかかりは、それ自体がストレスになるだけでなく、無理に指を通そうとすることでキューティクルをさらに傷つけ、摩擦ダメージを悪化させる悪循環を生みます。
トリートメントは、髪の表面を滑らかにコーティングし、キューティクルを整える効果もあります。それによって、指通りが劇的に改善し、日常生活での摩擦によるダメージを最小限に抑えることができます。
短髪でも、洗髪時やスタイリング時の手触りが良くなることを実感できるでしょう。
髪の水分バランスを整え、潤いを保持
健康な髪は、適度な水分量(約11〜13%)を保持しています。しかし、ダメージを受けた髪は、キューティクルが剥がれたり、内部のタンパク質が流出したりすることで、水分を保持する力が弱まっています。
トリートメントに含まれる保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなど)や補修成分(ケラチンなど)は、髪内部の水分を抱え込み、外部に逃げないようにサポートします。
このため、髪の乾燥を防ぎ、しなやかで弾力のある状態を保つことができます。
頭皮環境ではなく「毛髪」環境を整える
育毛剤メディアとして明確にしておきたいのは、トリートメントの主な役割は「頭皮環境」ではなく「毛髪環境」を整えることにある、という点です。
育毛剤が「これから生えてくる髪」や「頭皮」に働きかけるのに対し、トリートメントは「すでに生えている髪」をケアするものです。これらは役割が異なりますが、互いに補完し合います。
例えば、トリートメントで髪を健康に保ち、切れ毛を防ぐことは、見た目のボリューム感を維持するために重要です。
髪自体が健やかであれば、スタイリングもしやすく、結果的に頭皮への負担を減らすことにも繋がる可能性があります。
髪の悩みとトリートメントの関連性
| 男性に多い髪の悩み | 原因の一例 | トリートメントによる期待効果 |
|---|---|---|
| パサつき・乾燥 | 紫外線、ドライヤーの熱、水分不足 | 保湿成分による潤い補給、水分保持力の向上 |
| 広がり・まとまらない | ダメージによる水分バランスの乱れ、くせ毛 | 内部補修による髪の均一化、表面コーティング |
| 切れ毛・枝毛 | カラー・パーマ、摩擦、乾燥 | 栄養補給による強度向上、指通り改善で摩擦軽減 |
男性のための正しいトリートメント選び方
いざトリートメントを使おうと思っても、多種多様な製品の中からどれを選べば良いか迷うかもしれません。
男性がトリートメントを選ぶ際は、自分の髪質や悩み、そして好みの使用感に合わせて選ぶことが大切です。
髪質(硬い・柔らかい・くせ毛)に合わせた選び方
髪質によって、適したトリートメントのタイプは異なります。髪が硬くゴワつきやすい人は、油分が多めで、髪を柔らかくしっとりまとめるタイプのトリートメントが適しています。
逆に、髪が細く柔らかい(猫っ毛)人は、重いタイプを使うと髪がペタッとしてボリュームダウンしてしまうため、油分が少なく、ハリ・コシを与えるような軽い仕上がりのタイプを選ぶと良いでしょう。
くせ毛の人は、髪内部の水分バランスを整える保湿力の高いタイプや、髪の表面をコーティングして湿気の影響を受けにくくするタイプがおすすめです。
髪質別トリートメント選びの目安
| 髪質 | 悩みやすい点 | おすすめのタイプ |
|---|---|---|
| 硬い・太い | ゴワつき、広がやすい | 油分多め、しっとり系、保湿力重視 |
| 柔らかい・細い | ペタッとしやすい、ボリュームが出ない | 油分少なめ、さらさら系、ハリ・コシタイプ |
| くせ毛 | うねり、広がり、パサつき | 保湿力重視、水分バランスを整えるタイプ |
悩み(ダメージ・乾燥・ボリューム)別のおすすめ成分
自分の髪の悩みに焦点を当てて、配合されている成分で選ぶ方法も有効です。
ダメージがひどい場合は、髪の主成分であるケラチン(加水分解ケラチンなど)やアミノ酸系の補修成分が配合されたものを選びましょう。
乾燥やパサつきが気になるなら、セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、植物性オイル(アルガンオイル、シアバターなど)といった保湿成分が豊富なものが適しています。
逆にボリュームを出したい場合は、髪の内部にハリを与える成分(ペリセアなど)を含みつつ、シリコン(ジメチコンなど)の配合量が少ないか、ノンシリコンタイプを選ぶと、ふんわりとした仕上がりが期待できます。
主な悩みと対応する成分:
- ダメージケア: 加水分解ケラチン、ヘマチン、アミノ酸(アルギニン、グリシンなど)
- 乾燥・パサつきケア: セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、グリセリン、植物オイル
- ボリュームアップ: ペリセア(ジラウロイルグルタミン酸リシンNa)、加水分解シルク
香りの強さや種類で選ぶポイント
男性用ヘアケア製品も、香りのバリエーションが豊富になっています。毎日使うものだからこそ、自分が心地よいと感じる香りを選ぶことも大切です。
シトラス系やミント系のさっぱりとした香りは、リフレッシュ効果も期待でき、男性にも人気があります。一方で、香りが強すぎると、特にビジネスシーンなどで不快感を与える可能性もゼロではありません。
無香料タイプや、香りが残りにくい微香性のものを選ぶのも一つの方法です。自分の好みやライフスタイルに合わせて選びましょう。
市販品とサロン専売品の違い
トリートメントは、ドラッグストアなどで手軽に購入できる市販品と、美容室などで販売されているサロン専売品に大別されます。
市販品は、比較的安価で、誰が使っても一定の効果が得られるようにバランス良く作られているのが特徴です。
一方、サロン専売品は、価格は高めですが、特定の悩み(ハイダメージなど)に対して高濃度の補修成分を配合しているなど、より専門的なケアを目指した製品が多くなります。
まずは市販品から試してみて、それでも物足りなさを感じるようであれば、サロン専売品にステップアップする、という選び方も良いでしょう。
効果を高める!トリートメントの正しい使い方
せっかくトリートメントを使っても、使い方が間違っていては十分な効果が得られません。
トリートメントの効果を最大限に引き出すためには、いくつかの簡単なコツを押さえることが重要です。
シャンプー後の水気をしっかり切る
トリートメントを使う最も重要な準備段階が、シャンプー後の水気を切ることです。髪がびしょ濡れのままだと、トリートメント剤が水分で薄まってしまい、髪内部への浸透が悪くなります。
また、髪から水分が滴り落ちる際に、せっかく付けたトリートメント剤も一緒に流れ落ちてしまいます。シャンプーをすすいだ後、手で髪を優しく絞るようにして、できるだけ水気を切りましょう。
短髪の男性でも、タオルで軽く押さえて水分を取る(タオルドライ)ひと手間を加えると、より効果的です。
髪の中間から毛先を中心になじませる
トリートメントを手に取ったら、まずは手のひらで軽く伸ばします。そして、髪に塗布する際は、頭皮ではなく、髪の中間から毛先にかけて(特にダメージが気になる部分)を中心になじませていきます。
短髪の男性の場合は、髪全体に均一にいきわたらせる必要がありますが、その際も頭皮にベッタリと付ける必要はありません。
指の腹を使って、髪の毛1本1本に優しく揉み込むようにしてなじませると、浸透力が高まります。
頭皮には付けないように注意
前述の通り、トリートメントは髪の毛をケアするものです。
油分やコーティング成分を多く含むトリートメント剤が頭皮に付着し、すすぎ残しがあると、毛穴を詰まらせる原因となり、かゆみやフケ、ベタつきといった頭皮トラブルを引き起こす可能性があります。
育毛を気にする方なら、なおさら頭皮環境は清潔に保ちたいはずです。塗布する際は、頭皮から数センチ離れた部分から毛先に向かって付けることを意識しましょう。
もし頭皮に付いてしまった場合は、すすぎの際にしっかりと洗い流すことが大切です。
適切な放置時間とすすぎの目安
トリートメントは、塗布してからすぐに洗い流すのではなく、一定時間放置することで、補修成分や保湿成分が髪内部に浸透します。
製品によって推奨される放置時間は異なりますが、一般的には3分から5分程度が目安です。
この間に、蒸しタオルやシャワーキャップで髪全体を覆うと、温度と湿度でキューティクルが開きやすくなり、さらに浸透効果が高まります。 放置時間が過ぎたら、すすぎに入ります。
ここでのポイントは「すすぎすぎない」こと。シャンプーのようにキュッキュッとなるまですすぐ必要はありません。
髪のぬめり感が少し取れ、しっとりとした手触りが残る程度がベストです。逆にぬめり感が残りすぎていると、乾かした後にベタつきの原因になるため、適度なすすぎ加減を見つけることが重要です。
トリートメントの放置時間と効果
| 放置時間 | 状態・期待できる効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 0分(すぐ流す) | 表面的なコーティング(コンディショナー程度) | 内部補修効果はあまり期待できない |
| 3分〜5分(推奨) | 成分が内部に浸透し、補修・保湿効果が高まる | 製品の推奨時間を守るのが基本 |
| 10分以上(長すぎ) | 効果が頭打ちになるか、逆にベタつく可能性 | 時間を置けば置くほど良いわけではない |
トリートメントと育毛・薄毛ケアの両立
育毛剤メディアとして、トリートメントと育毛ケア(育毛剤の使用など)をいかに両立させるかは重要なテーマです。
両者の役割を正しく理解し、適切な順序で使用することで、毛髪と頭皮の両方を健やかに保つことができます。
育毛剤や発毛剤との併用順序
育毛剤や発毛剤の多くは、清潔な頭皮に直接塗布し、浸透させることで効果を発揮します。したがって、使用する順序が非常に重要です。
基本的な順序は「シャンプー → トリートメント(毛髪に) → すすぎ → タオルドライ → 育毛剤(頭皮に)」となります。
トリートメントの油分やコーティング成分が頭皮に残っていると、育毛剤の浸透を妨げる可能性があるため、トリートメントのすすぎは丁寧に行い、頭皮をクリーンな状態にしてから育毛剤を使用しましょう。
ヘアケアと育毛ケアの正しい順序
| ステップ | 行うケア | 主な対象 |
|---|---|---|
| 1. 洗浄 | シャンプー | 頭皮と毛髪 |
| 2. 補修・保護 | トリートメント | 毛髪(中間〜毛先) |
| 3. すすぎ | トリートメントをしっかり洗い流す | 毛髪と頭皮 |
| 4. 乾燥 | タオルドライ(+ドライヤー) | 頭皮と毛髪 |
| 5. 育毛ケア | 育毛剤・発毛剤 | 頭皮 |
トリートメントが毛穴に詰まるという誤解
「トリートメント=毛穴に詰まる=薄毛の原因」というイメージは、前述の通り、主に「誤った使い方」によって生じた誤解です。
頭皮にすり込まず、毛先中心に使用し、すすぎをしっかり行えば、毛穴詰まりを過度に心配する必要はありません。
むしろ、トリートメントを使わずに髪がパサパサ、ギシギシの状態だと、ブラッシングやシャンプー時に髪が絡まり、健康な髪まで抜けてしまう(切れ毛・抜け毛)リスクが高まる可能性もあります。
髪のコンディションを整えることは、不要な抜け毛を防ぐ一助にもなります。
髪の健康を保つことが頭皮環境にもたらす間接的影響
トリートメントは直接頭皮に作用するものではありませんが、髪の健康を保つことを通じて、間接的に頭皮環境に良い影響を与える可能性があります。
例えば、髪が潤い、まとまりやすくなると、スタイリング剤の使用量を減らせるかもしれません。スタイリング剤の使用量が減れば、シャンプー時の頭皮への負担も軽減されます。
また、髪が滑らかになれば、ドライヤーの時間も短縮できるかもしれません。熱風を頭皮に当てる時間が短くなれば、頭皮の乾燥防止にも繋がります。
このように、髪を健やかに保つことは、巡り巡って頭皮の健康維持にも貢献するのです。
Q&A
- トリートメントは毎日使用してもいいですか?
-
製品の特性によります。毎日使用できる「デイリータイプ」と、週に1〜2回の使用が推奨される「スペシャルケアタイプ(ヘアマスク、ヘアパックなど)」があります。
市販されているものの多くはデイリータイプですが、使用頻度については製品のパッケージ記載を確認してください。
短髪の男性の場合、ベタつきが気になるなら、使用量を少なめにするか、2日に1回程度から試してみるのも良いでしょう。
- ベタつくのが苦手ですが、どうすればいいですか?
-
ベタつきの原因は、主に「使用量が多すぎる」「すすぎ残しがある」「頭皮に付けてしまっている」のいずれかです。まずは使用量を現在の半分程度に減らしてみてください。
短髪なら、パール粒1個分程度でも十分な場合があります。また、すすぎを通常よりもしっかり行い、髪のぬめり感がなくなる一歩手前まで流すように意識してください。
それでもベタつく場合は、油分の少ない「さらさらタイプ」や「ノンシリコンタイプ」のトリートメントに変更することを検討しましょう。
- 整髪料(ワックスなど)のノリは変わりますか?
-
変わる可能性があります。トリートメントで髪がしっとりし、表面がコーティングされると、ワックスなどの油性スタイリング剤がなじみにくくなる(滑ってしまう)と感じることがあります。
その場合は、トリートメントの使用量を調整するか、ワックスを付ける前にドライヤーでしっかり乾かし、髪の水分量を整えてからスタイリングしてみてください。
逆に、髪のパサつきが抑えられることで、スタイリング剤が均一に伸び、まとまりやすくなると感じる人もいます。
- 効果はどれくらいで実感できますか?
-
指通りの滑らかさや、髪のまとまりやすさといった「手触り」や「見た目」の変化は、使用した直後から実感できることが多いです。
これは、トリートメントの表面コーティング作用によるものです。一方で、髪内部の補修効果、つまり「髪質の改善」については、即効性よりも継続的な使用が重要です。
ダメージの度合いにもよりますが、まずは1ヶ月程度、正しい使い方を続けてみて、髪の状態がどう変化するかを観察してみてください。
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