感染症関連検査 – 梅毒やHIVも薄毛の原因に

感染症関連検査|梅毒やHIVも薄毛の原因に

なかなか改善しない薄毛や、急に始まった脱毛にお悩みではありませんか。薄毛の原因は男性型脱毛症(AGA)や加齢だけとは限りません。

実は、梅毒やHIV、肝炎ウイルスといった特定の感染症が、脱毛を引き起こすことがあります。

これらの感染症は自覚症状が乏しい場合もあり、気づかないうちに進行して毛髪に影響を及ぼすケースも少なくありません。

この記事では、薄毛の原因となりうる感染症の種類、それぞれの特徴的な脱毛症状、そして原因を特定するために重要な「感染症関連検査」について、専門的な観点から詳しく解説します。

ご自身の症状と照らし合わせ、不安の解消や早期発見の一助としてください。

目次

感染症と薄毛の知られざる関係

薄毛の悩みを持つ多くの方が、その原因を遺伝や生活習慣、ストレスなどに求めます。しかし、見過ごされがちな原因の一つに「感染症」の存在があります。

特定の病原体が体内に侵入し、免疫系の異常や栄養状態の悪化、血行不良などを引き起こすことで、毛髪の正常な成長サイクルが乱れ、結果として脱毛につながるのです。

感染症が薄毛を招く仕組み|病原体→免疫反応→毛周期乱れの流れ

感染症による脱毛は、原因となる疾患を特定し、適切な治療を行うことで改善が見込めるため、その可能性を知っておくことは非常に重要です。

なぜ感染症で髪が抜けるのか

感染症が脱毛を引き起こす背景には、いくつかの要因が複雑に関与しています。まず、病原体に対する体の免疫反応が挙げられます。

免疫システムが過剰に反応すると、毛根の細胞を誤って攻撃してしまい、毛髪の成長が阻害されます。これを「自己免疫反応」と呼びます。

また、梅毒のように病原体そのものが毛包に影響を与え、脱毛を引き起こす場合もあります。

さらに、HIV感染や慢性肝疾患のように、全身の栄養状態を悪化させたり、ホルモンバランスを崩したりすることで、間接的に毛髪の健康を損なうケースも存在します。

これらの要因が単独、あるいは複合的に作用することで、感染症に関連する脱毛症状が現れるのです。

薄毛を引き起こす代表的な感染症

脱毛の原因となりうる感染症は多岐にわたりますが、特に注意が必要なのが梅毒、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、そして肝炎ウイルス(HBV、HCV)です。

梅毒・HIV・肝炎と脱毛タイプの違い

これらの感染症は、それぞれ異なる形で毛髪に影響を与えます。例えば、梅毒では特徴的な「虫食い状」の脱毛が見られることがあります。

HIV感染では、免疫力の低下に伴う様々な皮膚症状の一つとして脱毛が現れることがあります。慢性肝疾患では、体全体の栄養障害から、髪が細く弱々しくなる傾向があります。

主な感染症と脱毛の関連性

感染症名主な脱毛のタイプ特徴
梅毒梅毒性脱毛後頭部や側頭部に虫食い状・びまん性の脱毛斑が出現
HIV感染症HIV関連の脱毛休止期脱毛、びまん性脱毛、時に円形脱毛症様の症状
B型・C型慢性肝炎慢性肝疾患に伴う脱毛髪全体のボリューム低下、毛髪が細くなる、ハリ・コシの消失

早期発見が鍵となる感染症由来の脱毛

感染症による脱毛の最大の特徴は、原因疾患の治療によって改善する可能性がある点です。放置すれば感染症自体が重症化するだけでなく、脱毛症状も進行し、回復が難しくなる恐れがあります。

そのため、原因不明の脱毛に気づいた際には、感染症の可能性も視野に入れ、早期に専門の医療機関で検査を受けることが大切です。

特に、他の脱毛症とは異なる特徴的な症状が見られる場合や、脱毛以外に体調の変化(発熱、倦怠感、発疹など)がある場合は、速やかな行動が求められます。

自己判断せず専門機関へ相談する重要性

「ただの抜け毛だろう」と自己判断で放置したり、市販の育毛剤だけで対処しようとしたりするのは危険です。もし背景に感染症が隠れていた場合、根本的な解決にはつながりません。

薄毛の専門クリニックや皮膚科、あるいは感染症を専門とする内科など、適切な医療機関を受診し、医師による正確な診断を受けることが、健康な毛髪を取り戻すための第一歩です。

問診や視診に加え、血液検査などの客観的なデータに基づいて原因を特定することが、治療方針を決定する上で極めて重要になります。

梅毒性脱毛の症状と梅毒検査(RPR・TPLA)

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌によって引き起こされる性感染症です。近年、国内外で報告数が増加傾向にあり、決して過去の病気ではありません。

感染後、数週間から数ヶ月の潜伏期間を経て、様々な症状が現れます。その一つが「梅毒性脱毛」であり、薄毛の原因として見過ごせない症状です。

梅毒性脱毛の特徴的な抜け方

梅毒性脱毛のパターン|虫食い状とびまん性の2タイプ

梅毒性脱毛は、主に感染から数ヶ月が経過した第2期梅毒の症状として現れます。最も典型的なのは、後頭部から側頭部にかけて、境界が不明瞭な小さな脱毛斑が多発する「虫食い状」の脱毛です。

また、全体的に髪の毛が薄くなる「びまん性脱毛」の形をとることもあります。眉毛の外側3分の1が抜けることも、特徴的な所見の一つです。

  • 後頭部や側頭部に多発する小さな脱毛斑
  • 全体的に髪がまばらになるびまん性の脱毛
  • 眉毛の外側が抜けることがある

これらの脱毛症状は、かゆみや痛みを伴わないことがほとんどです。

AGA(男性型脱毛症)が生え際や頭頂部から進行するのに対し、梅毒性脱毛は側頭部や後頭部に現れやすいという違いがあります。

梅毒の進行と脱毛症状

病期感染からの期間(目安)脱毛症状の有無
第1期約3週間~3ヶ月通常なし
第2期約3ヶ月~3年虫食い状・びまん性の脱毛が現れることがある
後期(第3期・第4期)数年~数十年通常なし(他の重篤な症状が出現)

RPR検査でわかること

梅毒の診断には血液検査が用いられます。その一つが「RPR検査」です。

これは、梅毒に感染した際に体内で作られる特定の脂質抗体を検出する検査で、主に活動性の梅毒感染を調べるスクリーニング検査として利用されます。

RPR検査の数値は病気の活動性と関連しており、治療によって数値が低下するため、治療効果の判定にも役立ちます。

ただし、梅毒以外の疾患(自己免疫疾患など)でも陽性になる「偽陽性」の可能性があるため、確定診断には後述のTPLA検査を組み合わせることが一般的です。

TPLA検査の役割と精度

「TPLA検査」は、梅毒の病原体である梅毒トレポネーマに対する特異的な抗体を検出する検査です。RPR検査と異なり、一度感染すると治療後も生涯にわたって陽性反応が続くことが多いという特徴があります。

そのため、過去に梅毒に感染したことがあるかどうか(既往感染)を調べるのに適しています。

RPR検査が偽陽性を示す可能性があるのに対し、TPLA検査は非常に特異度が高く、梅毒感染の確定診断に重要な役割を果たします。

スクリーニングでRPR検査が陽性だった場合、このTPLA検査を追加で行い、両方の結果を総合的に判断して診断を下します。

RPR検査とTPLA検査の比較

梅毒検査RPRとTPLAの違い
検査項目RPR検査TPLA検査
検出対象脂質抗体(カルジオリピン)梅毒トレポネーマ抗体
主な目的スクリーニング、治療効果判定確定診断、既往感染の確認
治療後の反応陰性化する陽性が持続することが多い

梅毒検査を受けるべきタイミング

原因不明の脱毛、特に虫食い状の脱毛斑が見られた場合は、梅毒性脱毛の可能性を疑い、検査を検討するべきです。

また、脱毛以外に、手のひらや足の裏を含む全身に赤い発疹(バラ疹)が出た場合や、性器や口にしこりができた場合も、梅毒を疑うサインです。

不安な性交渉から3週間以上経過していれば、検査で陽性反応が出始める可能性があります。

梅毒検査の受検タイミング|曝露からの目安と病期

症状がなくても、パートナーの感染が判明した場合や、不特定多数との性交渉がある場合は、定期的な検査が推奨されます。

HIV関連の脱毛とHIV抗体検査の意義

HIVは、免疫機能の中心であるCD4陽性Tリンパ球に感染し、免疫力を低下させるウイルスです。

HIV感染が進行し、免疫力が著しく低下すると、日和見感染症などを発症し、エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)と呼ばれる状態になります。

このHIV感染の過程で、脱毛を含む様々な皮膚症状が現れることがあります。

HIV感染が毛髪に与える影響

HIV感染が直接的に毛髪を攻撃するわけではありません。

しかし、感染によって引き起こされる免疫不全、栄養吸収障害、薬の副作用、精神的ストレスなどが複合的に作用し、「HIV関連の脱毛」を引き起こすことがあります。

免疫力が低下すると、頭皮の環境が悪化し、健康な髪が育ちにくくなります。また、栄養状態の悪化は、毛髪の主成分であるタンパク質の不足を招き、髪が細く、もろくなる原因となります。

HIV関連の脱毛を引き起こす要因

HIV関連の脱毛メカニズム
要因毛髪への影響
免疫機能の低下頭皮の感染症リスク増加、毛包へのダメージ
栄養吸収障害髪の成長に必要な栄養素(タンパク質、亜鉛など)の不足
抗HIV薬の副作用一部の薬剤で脱毛が報告されている
精神的ストレス自律神経の乱れによる血行不良、ホルモンバランスの変動

HIV関連の脱毛で見られる症状

HIV関連の脱毛では、特定のパターンではなく、様々なタイプの脱毛が見られます。最も多いのは、髪の毛が全体的に薄くなる「びまん性脱毛」や、一時的に抜け毛が増加する「休止期脱毛」です。

これは、全身状態の悪化に伴い、多くの毛髪が一斉に成長を止めて休止期に入ってしまうために起こります。

また、免疫系の異常から円形脱毛症を発症したり、脂漏性皮膚炎が重症化して脱毛につながったりするケースもあります。

HIV感染者に特有というわけではありませんが、これらの脱毛症状が他の皮膚症状(発疹、口内炎など)や全身症状(長期にわたる微熱、体重減少、倦怠感)とともに見られる場合は注意が必要です。

HIV抗体検査による早期発見のメリット

HIV感染症は、早期に発見し、適切な抗HIV療法を開始することで、ウイルスの増殖を抑制し、免疫力を正常に近いレベルに維持することが可能です。

これにより、エイズの発症を防ぎ、健康な人と変わらない生活を送ることが期待できます。脱毛症状がHIV感染のサインである場合、HIV抗体検査を受けることは、自身の健康を守る上で極めて重要です。

早期治療は、脱毛症状の改善につながる可能性もあります。現在では治療法が進歩しており、HIV感染は「死の病」ではなく、「コントロール可能な慢性疾患」となっています。

検査を受ける場所とプライバシー

匿名・無料のHIV検査フロー

HIV抗体検査は、全国の保健所や、指定された医療機関で受けることができます。保健所では、多くの場合、無料で匿名での検査が可能です。

プライバシーは厳重に守られており、検査結果が本人の同意なく他者に知られることはありません。医療機関では、他の病気の診察と合わせて検査を受けることもできます。

検査は通常、少量の採血のみで完了します。不安なことがあれば、まずは保健所の相談窓口や、信頼できる医療機関に問い合わせてみましょう。

慢性肝疾患に伴う脱毛と肝炎ウイルス(HBV・HCV)検査

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、機能がかなり低下するまで自覚症状が現れにくいことで知られています。

B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行するリスクがあります。

そして、この慢性的な肝機能の低下が、全身の健康状態に影響を及ぼし、薄毛や脱毛の原因となることがあります。

肝機能低下が脱毛を引き起こす理由

肝臓は、体内で栄養素を代謝し、貯蔵する中心的な役割を担っています。毛髪の主成分であるケラチン(タンパク質)の合成にも、肝臓の働きが深く関わっています。

慢性肝疾患によって肝機能が低下すると、食事から摂取したタンパク質を効率よくアミノ酸に分解し、毛髪の材料として供給することが難しくなります。

また、ホルモンの代謝にも影響が及び、特に女性ホルモン(エストロゲン)のバランスが崩れることで、脱毛が促進されることがあります。

さらに、血中のアンモニア濃度が上昇し、全身の血行が悪くなることも、頭皮への栄養供給を妨げる一因となります。

肝機能低下と髪の関係

肝炎ウイルス(HBV)と毛髪の関係

B型肝炎ウイルス(HBV)は、主に血液や体液を介して感染します。感染後、一部の人は慢性肝炎へと移行します。

HBVによる慢性肝炎が長期化すると、前述の栄養代謝障害やホルモンバランスの乱れが生じ、髪の毛が細くなったり、ハリやコシが失われたりする傾向が見られます。

これは、髪の成長に必要な栄養が毛根まで届きにくくなるために起こる現象です。

特定の脱毛パターンがあるわけではなく、髪全体のボリュームが徐々に減少していく「びまん性脱毛」の形をとることが多いです。

肝炎ウイルス(HCV)感染と脱毛リスク

C型肝炎ウイルス(HCV)も血液を介して感染し、高い確率で慢性肝炎に移行します。HCV感染は、HBV感染と同様に、肝機能低下を通じて間接的に脱毛を引き起こします。

特に、C型慢性肝炎は自己免疫疾患を合併しやすく、その一環として円形脱毛症を発症するリスクが高まるという報告もあります。

肝臓の状態が悪化し、肝硬変へと進行すると、栄養状態はさらに悪化し、脱毛症状もより顕著になる可能性があります。

脱毛以外にも、倦怠感、食欲不振、黄疸などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

肝炎ウイルス(HBV/HCV)検査の種類と目的

HBV/HCVのスクリーニング|HBs抗原・HCV抗体からの次ステップ
検査項目目的わかること
HBs抗原検査HBVのスクリーニング現在B型肝炎ウイルスに感染しているか
HCV抗体検査HCVのスクリーニング過去または現在C型肝炎ウイルスに感染しているか
肝機能検査(AST, ALTなど)肝臓のダメージ評価肝細胞がどの程度破壊されているか

肝炎ウイルス検査で健康状態を把握

肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、簡単な血液検査で調べることができます。B型肝炎の場合は「HBs抗原検査」、C型肝炎の場合は「HCV抗体検査」が、最初のスクリーニング検査として行われます。

これらの検査は、地域の保健所や多くの医療機関で受けることができます。

特に、過去に輸血を受けた経験がある方、健康診断で肝機能の異常を指摘されたことがある方、家族に肝炎の患者さんがいる方などは、一度検査を受けておくことをお勧めします。

慢性肝疾患に伴う脱毛は、原因である肝炎を治療することで改善が期待できます。

感染症関連検査の具体的な流れと費用

感染症関連検査の流れと費用の目安|受診→採血→結果→保険/自費のイメージ

薄毛の原因として感染症が疑われる場合、どのような手順で検査を進め、どの程度の費用がかかるのかは、多くの方が気になるところでしょう。

ここでは、検査を受ける際の一般的な流れと、費用の目安について解説します。

検査を受けるまでのステップ

まずは、皮膚科、感染症内科、あるいは薄毛治療を専門とするクリニックを受診し、医師に相談することから始まります。

医師は、脱毛の始まった時期や進行の様子、脱毛以外の自覚症状、既往歴、生活習慣などを詳しく問診します。その後、頭皮や毛髪の状態を視診し、感染症の可能性が考えられる場合に血液検査を提案します。

どの検査を行うかは、問診や診察の結果に基づいて医師が判断します。

検査を受けるべき人の特徴

  • 急激に抜け毛が増えた
  • 虫食い状など、特徴的な脱毛斑がある
  • 脱毛以外に発熱、倦怠感、発疹などの全身症状がある
  • 不特定多数との性的な接触があった

各検査方法の詳細(採血など)

梅毒検査、HIV抗体検査、肝炎ウイルス検査は、いずれも血液検査によって行われます。通常、腕の静脈から少量の血液を採取するだけで、検査自体は数分で終了します。

採血に伴う痛みは、一般的な健康診断の採血と同程度です。特別な準備は必要ありませんが、他の病気で服薬中の薬がある場合は、事前に医師に伝えておくことが大切です。

検査当日は、リラックスして臨みましょう。

検査結果がわかるまでの期間

検査結果が判明するまでの期間は、検査機関や医療機関によって異なります。HIVの迅速検査のように、当日中に結果がわかるものもありますが、一般的には数日から1〜2週間程度かかることが多いです。

結果は、検査を受けた医療機関で直接、医師から説明を受けるのが基本です。

電話や郵送での結果報告に対応している場合もありますが、陽性の可能性も考慮し、直接説明を受けられる体制が整っている医療機関を選ぶと安心です。

保険適用と自費診療の費用目安

脱毛やその他の症状から医師が感染症を疑い、診断のために検査を行う場合は、健康保険が適用されます。一方、症状はないが心配なので検査を受けたい、といった予防的な目的の場合は自費診療となります。

保健所では、梅毒やHIVの検査を無料で受けられる場合があります。費用はあくまで目安であり、医療機関によって異なるため、事前に確認することをお勧めします。

各感染症検査の費用目安

検査項目保険適用(3割負担)自費診療
梅毒検査(RPR+TPLA)1,000円~2,000円程度5,000円~10,000円程度
HIV抗体検査1,000円~2,000円程度3,000円~8,000円程度
肝炎ウイルス検査(HBV+HCV)1,500円~3,000円程度7,000円~15,000円程度

検査結果の解釈と陽性だった場合の対応

検査結果の見方と陽性時の次の行動|陰性/陽性の分岐と専門科受診フロー

検査結果を受け取る際は、不安や緊張を感じるかもしれません。しかし、たとえ陽性という結果が出たとしても、現代の医療では多くの感染症が治療可能です。

大切なのは、結果を正しく理解し、速やかに次の行動に移ることです。

検査結果報告書の読み方

検査結果報告書には、検査項目ごとに「陽性(+)」や「陰性(-)」、あるいは測定値が記載されています。

これらの結果の意味については、必ず医師から直接説明を受けてください。例えば、梅毒検査ではRPRとTPLAの結果の組み合わせで現在の状態を判断します。

自己判断で解釈すると、誤った理解につながる恐れがあります。疑問や不安な点があれば、その場で医師に質問し、納得できるまで説明を求めましょう。

陽性反応が出た場合の専門診療科

検査で陽性反応が出た場合、原因となっている感染症の治療を専門とする診療科への受診が必要です。梅毒やHIV感染症の場合は、感染症内科や皮膚科、泌尿器科などが主な診療科となります。

慢性肝炎の場合は、消化器内科や肝臓内科が専門です。検査を受けた医療機関で紹介状を書いてもらえることがほとんどなので、指示に従って速やかに専門医の診察を受けてください。

早期に治療を開始することが、病状の進行を防ぎ、脱毛症状を含む全身状態の改善につながります。

脱毛治療と感染症治療の連携

感染症が原因の脱毛の場合、治療の優先順位は、まず原因となっている感染症そのものです。感染症の治療が適切に行われ、全身状態が改善すれば、脱毛症状も自然に回復に向かうことが期待できます。

しかし、回復の程度には個人差があり、場合によっては発毛を促進するための補助的な治療(ミノキシジルの外用など)を並行して行うこともあります。

この際、感染症治療を行っている主治医と、脱毛治療を行う皮膚科医や薄毛専門クリニックの医師が連携し、治療方針を共有することが重要です。

パートナーへの告知と検査勧奨

梅毒、HIV、B型・C型肝炎は、性的接触や血液を介して他者に感染する可能性があります。

もしご自身が陽性と診断された場合は、現在のパートナー、そして過去のパートナーにもその事実を伝え、検査を受けるよう勧めることが、感染拡大を防ぐ上で非常に大切です。

これは、パートナー自身の健康を守るためでもあります。どのように伝えればよいか分からない場合は、医師や保健所のカウンセラーに相談することができます。

プライバシーを守りながら、適切な方法を一緒に考えてくれます。

他の脱毛症との違いと見分け方

脱毛の見分け方|感染症由来 vs AGA vs 円形脱毛症の比較

脱毛症には様々な種類があり、それぞれ原因や症状の現れ方が異なります。

感染症による脱毛を疑う際には、最も一般的な脱毛症であるAGA(男性型脱毛症)や円形脱毛症との違いを知っておくことが、早期発見の助けになります。

AGA(男性型脱毛症)との比較

AGAは、男性ホルモンの影響で、主に前頭部(生え際)や頭頂部の髪が細く短くなり、徐々に薄くなっていくのが特徴です。

進行パターンがある程度決まっており、側頭部や後頭部の髪は影響を受けにくい傾向があります。一方、梅毒性脱毛は側頭部や後頭部に虫食い状の脱毛斑が現れることが多く、AGAとは脱毛部位が異なります。

また、AGAの進行は緩やかですが、感染症による脱毛は比較的急速に進行することがあります。

円形脱毛症との症状の違い

円形脱毛症は、自己免疫疾患の一種と考えられており、円形や楕円形の脱毛斑が突然現れるのが特徴です。脱毛斑の境界は明瞭で、脱毛部分の皮膚はつるつるしています。

梅毒性脱毛でも多発性の脱毛斑が見られますが、境界が不明瞭で、まだらに髪が残ることが多い点で異なります。

ただし、HIV感染に関連して円形脱毛症が発症することもあるため、鑑別には専門医による診察と検査が重要です。

感染症由来の脱毛を見極めるポイント

感染症による脱毛を他の脱毛症と見分けるには、いくつかのポイントがあります。

まず、脱毛のパターンです。AGAのように特定の部位からゆっくり進行するのではなく、短期間で広範囲に、あるいはまだらに抜ける場合は注意が必要です。

次に、脱毛以外の随伴症状の有無です。発熱、倦怠感、リンパ節の腫れ、皮膚の発疹、黄疸など、全身に何らかの不調を感じる場合は、背景に感染症が隠れている可能性を考えます。

感染症由来の脱毛と他の脱毛症の比較

項目感染症由来の脱毛AGA(男性型脱毛症)円形脱毛症
進行速度比較的急速緩やか突然発症
主な脱毛部位側頭部・後頭部(梅毒)、びまん性など様々前頭部・頭頂部頭部のどこにでも起こりうる
全身症状伴うことがある(発熱、発疹など)通常なし通常なし(他の自己免疫疾患合併例を除く)

感染症関連検査に関するよくある質問

検査はどこで受けられますか?

皮膚科、感染症内科、泌尿器科などの医療機関のほか、地域の保健所でも受けることができます。保健所では匿名・無料で受けられる場合が多いです。

まずはかかりつけ医に相談するか、お住まいの地域の保健所にお問い合わせください。

検査の前に食事を抜く必要はありますか?

梅毒、HIV、肝炎ウイルスの検査は血液検査ですが、通常は食事の影響を受けないため、事前の絶食は必要ありません。

ただし、同時に他の血液検査(血糖値など)を行う場合は絶食が必要なこともありますので、医療機関の指示に従ってください。

検査結果が陽性でも、症状がなければ治療は不要ですか?

いいえ、症状がなくても陽性と診断された場合は治療が必要です。特に梅毒やHIV、慢性肝炎は、放置すると重篤な健康被害につながる可能性があります。

無症状の時期でも、体内では病気が進行していたり、他者に感染させたりするリスクがあります。医師の指示に従い、必ず治療を受けてください。

一度感染症にかかると、もう髪は生えてこないのでしょうか?

そんなことはありません。感染症が原因の脱毛は、原因疾患の治療を適切に行うことで、毛根の機能が回復し、再び髪が生えてくる可能性が高いです。

ただし、回復までには時間がかかることもありますし、元の状態まで完全に戻るかどうかは個人差があります。諦めずに、まずは根本原因である感染症の治療に専念することが大切です。

検査で偽陽性(本当は感染していないのに陽性になる)の可能性はありますか?

はい、検査によっては偽陽性の可能性があります。例えば、梅毒のRPR検査は、自己免疫疾患や妊娠など、梅毒感染以外の要因で陽性になることがあります。

そのため、スクリーニング検査で陽性だった場合は、より精度の高い確認検査(梅毒ならTPLA検査など)を追加で行い、総合的に診断します。

一つの検査結果だけで判断することはありませんので、ご安心ください。

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