薄毛や抜け毛に悩む男性にとって、「増毛シャンプー」という言葉は非常に魅力的に響きます。しかし、増毛シャンプーと謳われる製品は本当に髪の毛そのものを生やす効果があるのでしょうか。
また、似たような目的で使われる「ボリュームアップシャンプー」との間には、どのような違いがあるのか疑問に感じる人も多いでしょう。
この疑問を解消し、ご自身の髪の悩みや頭皮の状態に適した製品を正しく選択できるように、
本記事では増毛シャンプーの定義と限界、ボリュームアップシャンプーとの明確な違い、そして製品を選ぶ際に注目すべき重要な成分と正しい使用方法について、親切丁寧に解説します。
知識を深めて、毎日のシャンプー時間を健やかな頭皮環境を育むための大切な時間に変えていきましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
増毛シャンプーの基本的な定義とその限界
増毛シャンプーがもたらす物理的な効果
一般的に「増毛シャンプー」と呼ばれる製品は、厳密には髪の毛を新しく生み出す、いわゆる“発毛”を促す作用を持つものではありません。
これらのシャンプーが目指すのは、今ある髪の毛に対して物理的なアプローチを施すことです。具体的には、髪一本一本の表面をコーティング成分や被膜成分で覆い、太く見せる効果を提供します。
これにより、髪全体にハリやコシが生まれ、薄毛が目立ちにくくなり、結果として髪が増えたように感じられます。
しかし、この効果はシャンプーを洗い流せばなくなってしまう、一時的なものです。増毛シャンプーの多くは、見た目のボリューム感を向上させるためのスタイリング補助剤としての役割が強いと理解するべきです。
「髪を生やす」という期待に応えられない理由
「髪を生やす」という作用は、医学的に「発毛」と呼ばれ、毛根の細胞に直接働きかけ、休止期にある毛包を成長期へと移行させる作用を指します。
日本において、この発毛効果を謳えるのは、厚生労働省が認可した特定の有効成分(ミノキシジルなど)を配合した医薬品(発毛剤)だけです。
シャンプーというカテゴリーの製品は、その性質上、頭皮や髪の毛を洗浄し、清潔に保つことを主な目的としています。
頭皮に塗布してすぐに洗い流すシャンプーで、毛根の深部にある毛母細胞に作用して発毛を促すことは構造的に困難であり、「増毛シャンプー」が髪を生やすという消費者の期待に直接応えることはできません。
過度な期待は持たず、あくまで頭皮環境の整備とボリュームアップのためのアイテムとして捉える必要があります。
医薬部外品・化粧品としての分類
増毛シャンプーやボリュームアップシャンプーは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)上、「化粧品」または「医薬部外品」に分類されます。
化粧品は、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、健やかに保つことを目的としたもので、人体に対する作用が緩和なものです。
一方、医薬部外品は、化粧品と医薬品の中間に位置し、特定の「有効成分」を配合することで、予防や衛生を目的とした効能効果が認められています。
例えば、「ふけ・かゆみを防ぐ」「毛髪・頭皮を清浄にする」といった効果が挙げられます。
増毛シャンプーの場合、洗浄力を高めたり、頭皮を保湿したりする成分を配合することで、「頭皮環境を整える」という間接的なサポートを目的としており、この点が、直接「髪を生やす」医薬品とは決定的に異なります。
ボリュームアップシャンプーとは何か?増毛との決定的な違い
ボリュームアップシャンプーの作用原理
ボリュームアップシャンプーは、増毛シャンプーと混同されがちですが、その作用原理には明確な違いがあります。
ボリュームアップシャンプーの主な役割は、髪の毛の根元を立ち上がらせるための「ベース作り」と、髪の内部および外部に働きかけ、ハリ・コシを与えることにあります。
具体的には、髪の表面にあるキューティクルを整えることで光の反射率を高めてツヤを出し、健康的な印象を与えます。
さらに、シャンプー後のトリートメント効果として、髪の内部の空洞を埋める成分や、髪を支える弾力性を高める成分を浸透させることで根元からのふんわりとした立ち上がりをサポートします。
これにより、髪の毛一本一本が重力に負けにくくなり、視覚的にボリュームが増したように見せることを目指します。
増毛シャンプーとボリュームアップシャンプーの成分の違い
増毛シャンプーとボリュームアップシャンプーは、どちらも髪を太く見せることを目指しますが、そのアプローチに差があります。
増毛シャンプーは、主にポリマーなどのコーティング成分に重点を置きます。この成分が髪の表面に吸着し、髪を物理的に太くする作用が中心です。
洗髪後の仕上がりが重たくなりすぎず、ふんわりとした手触りを意識して設計されています。
一方、ボリュームアップシャンプーは、髪の内部補修成分(ケラチンなど)や、根元を支えるための軽さやハリを与える成分を重視します。
また、シリコンフリーやアミノ酸系の洗浄成分を採用し、頭皮への負担を抑えつつ、髪を根元からすっきりと洗い上げ、軽やかな仕上がりを目指す傾向があります。
どちらを選ぶかは、髪の太さそのものの見た目を変えたいのか、それとも髪の立ち上がりと軽やかさを重視したいのかで判断します。
増毛シャンプーとボリュームアップシャンプーの作用の違いを比較
| 項目 | 増毛シャンプー | ボリュームアップシャンプー |
|---|---|---|
| 主な作用点 | 髪の表面(コーティング) | 髪の内部と根元 |
| 期待できる効果 | 一本一本の太さアップ(視覚的) | 根元の立ち上がり、ハリ・コシ |
| 主要な成分 | ポリマー、被膜形成剤 | ケラチン、アミノ酸系洗浄成分 |
効果の持続性に関する比較
増毛シャンプーとボリュームアップシャンプーのどちらも、その効果は一時的であり、髪を生やすという長期的な持続性はありません。しかし、見た目の効果の持続性には違いが見られます。
増毛シャンプーによるコーティング効果は、次の洗髪まで持続します。髪の毛が水を吸いにくくなり、湿気によるボリュームダウンを防ぐ作用も期待できますが、激しい運動や発汗により効果が薄れる場合もあります。
ボリュームアップシャンプーは、髪の内部補修や根元の軽さに着目しているため、ドライヤーでセットした直後が最も効果を発揮しやすいです。
髪の軽さが持続すれば、数時間から半日はふんわり感が保たれますが、時間が経つにつれて髪の自重や皮脂の影響で根元が倒れやすくなります。
どちらも毎日継続して使用し、正しいスタイリングと組み合わせることで、常に見た目の満足感を維持する必要があります。
増毛シャンプーの選び方毛髪への負担を減らす重要成分
洗浄成分の種類と頭皮への影響
シャンプーの品質を決定づける最も重要な要素は、洗浄成分(界面活性剤)です。洗浄成分は、頭皮の皮脂や汚れを落とす役割を果たしますが、その種類によって洗浄力と刺激の強さが大きく異なります。
増毛シャンプーを選ぶ際は、ボリュームアップ効果だけでなく、長期的に頭皮環境を健やかに保てる成分かどうかを判断することが重要です。
特に注意すべきは、高級アルコール系と呼ばれる「ラウリル硫酸Na」や「ラウレス硫酸Na」などです。
これらは非常に洗浄力が高く泡立ちも良いですが、必要以上に皮脂を取り去り、頭皮を乾燥させてしまう可能性があります。
乾燥は頭皮のバリア機能を低下させ、かゆみやフケ、さらには抜け毛の原因にもなりかねません。
薄毛対策としてシャンプーを選ぶなら、アミノ酸系やベタイン系などの低刺激でマイルドな洗浄成分を主成分とするものが適切です。
シャンプーの主な洗浄成分を比較して理解する
| 分類 | 代表的な成分 | 特徴(洗浄力/刺激) |
|---|---|---|
| アミノ酸系 | ココイルグルタミン酸Naなど | マイルドな洗浄力/低刺激 |
| ベタイン系 | コカミドプロピルベタインなど | 非常にマイルド/低刺激(赤ちゃん用にも使用) |
| 高級アルコール系 | ラウレス硫酸Naなど | 高い洗浄力/刺激が強い |
避けるべき刺激の強い添加物
洗浄成分だけでなく、シャンプーに含まれる添加物にも注意を払う必要があります。特に、肌が敏感な方や頭皮トラブルを抱えている方は、以下の添加物が含まれていないか確認するべきです。
まず、パラベンなどの防腐剤は、製品の品質を保つ上で重要ですが、人によってはアレルギー反応や刺激を引き起こす可能性があります。
次に、合成着色料や合成香料も、色や香りを良くするために加えられますが、天然由来のものと比較して肌への刺激になる場合があるため、可能な限り避けることが賢明です。
さらに、一部のシャンプーには、泡立ちや使用感を良くするために鉱物油が含まれることがありますが、これらは毛穴を詰まらせる原因となる可能性も指摘されています。
頭皮を健やかに保ち、育毛環境を整えるためには、極力シンプルな処方で、不要な刺激物を含まない製品を選択することが大切です。
頭皮環境を整える保湿成分の重要性
健康な髪の毛は、健康な頭皮から生えてきます。頭皮が乾燥していると、皮膚のターンオーバーが乱れたり、外部刺激から頭皮を守るバリア機能が低下したりして、抜け毛の原因になり得ます。
増毛シャンプーを選ぶ際には、見た目のボリュームアップ効果だけでなく、頭皮の保湿とコンディショニング作用を持つ成分が含まれているかどうかを確認する必要があります。
具体的な保湿成分としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミドなどが挙げられます。
また、アロエベラエキスや海藻エキスといった天然由来の成分も、頭皮に潤いを与え、フケやかゆみを抑える作用が期待できます。
シャンプーによって適度な潤いが保たれた頭皮は、育毛剤などの有効成分が浸透しやすい状態になり、育毛ケア全体の効果を高める土台作りにつながります。
正しいシャンプー方法が効果を最大限に引き出す
予洗いの大切さと適切な湯温
どんなに高品質な増毛シャンプーを選んでも、使い方が誤っていると、期待通りの効果を得ることはできません。正しいシャンプー方法の最初にして最も重要なのは「予洗い」です。
予洗いとは、シャンプー剤をつける前に、お湯だけで頭皮と髪をしっかりと洗い流すことです。
この予洗いだけで、髪の表面についたホコリや、頭皮の約7割の汚れを落とせると言われています。
これにより、シャンプーの泡立ちが格段に良くなり、シャンプー剤の量を節約できるだけでなく、洗浄成分が頭皮に長時間留まるのを防ぎ、刺激を軽減できます。
湯温は、38度から40度程度の「ぬるま湯」が適切です。熱すぎるお湯は、頭皮に必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥や皮脂の過剰分泌を招くため、避けるべきです。
泡立て方と頭皮マッサージのコツ
シャンプー剤を直接頭皮につけるのは、刺激が強いため避けてください。シャンプー剤は手のひらに取り、少量のぬるま湯を加えて十分に泡立ててから使用することが基本です。
きめ細かく弾力のある泡を作ることで、泡がクッションとなり、洗髪時の摩擦から髪と頭皮を守ります。
洗髪する際は、爪を立てず、指の腹を使って頭皮全体を優しくマッサージするように洗います。
特に、皮脂腺が多く汚れがたまりやすい、生え際、耳の後ろ、後頭部などを意識して、円を描くように揉み洗いします。
このマッサージは、頭皮の血行を促す作用もあり、頭皮環境の改善に寄与します。ただし、力を入れすぎると頭皮を傷つけるため、あくまで気持ち良いと感じる程度の力加減を心がける必要があります。
すすぎ残しが招く頭皮トラブル
洗髪以上に時間をかけるべきなのが「すすぎ」です。シャンプーやコンディショナーの成分が頭皮に残ってしまうと、それが雑菌のエサとなり、様々な頭皮トラブルを引き起こす原因になります。
増毛シャンプーの成分は髪に残りやすい性質を持つものもあるため、特に念入りなすすぎが必要です。
すすぎ残しが引き起こす頭皮の主な問題
- 毛穴の詰まりによる炎症やニキビの発生
- シャンプー成分の酸化による頭皮の臭いの発生
- フケやかゆみを引き起こす常在菌の異常繁殖
- 頭皮の乾燥や赤みを招く皮膚炎の発症
すすぎ残しを防ぐためには、シャンプーした時間の倍の時間をかけてすすぐことを目安にします。
髪の長い方は、髪の毛ではなく頭皮に直接お湯を当てる意識を持ち、泡が完全に消えてもさらに数分間流し続けることが重要です。
増毛シャンプーをサポートする日常のケア
育毛剤や発毛剤との併用の考え方
増毛シャンプーは、頭皮を清浄にし、髪を太く見せるサポートをしますが、それだけで薄毛の問題を根本から解決することはできません。
薄毛対策を本格的に行う場合は、育毛剤や発毛剤といった、より直接的に毛根に作用する製品との併用を検討するべきです。
シャンプーは頭皮の「土壌整備」の役割を果たします。頭皮の汚れを落とし、保湿をすることで、育毛剤や発毛剤に含まれる有効成分が浸透しやすい状態を作ります。
育毛剤は抜け毛を予防し、健やかな髪の成長を助ける効果、発毛剤は実際に髪を生やす効果を期待できます。これらは作用の異なる製品であるため、適切な順番で使用することで相乗効果を発揮させることが可能です。
シャンプーで頭皮を清潔にした後、しっかりと乾燥させてから、育毛剤や発毛剤を塗布する流れを習慣化すると良いでしょう。
育毛ケア製品の役割と使用目的
| 製品カテゴリ | 主な役割 | 使用目的 |
|---|---|---|
| 増毛シャンプー | 頭皮の清浄化、毛髪のコーティング | 見た目のボリュームアップと土台整備 |
| 育毛剤 | 抜け毛予防、頭皮の血行促進 | 今ある髪の成長サポート |
| 発毛剤(医薬品) | 毛根への直接作用 | 新しい髪を生やすこと |
生活習慣と食事が頭皮に与える影響
頭皮環境は、日常の生活習慣と密接に関連しています。どんなに高価なシャンプーを使っても、生活習慣が乱れていると、その効果は半減してしまいます。
髪の毛は、タンパク質を主成分とし、ビタミンやミネラルといった栄養素によって健康が保たれます。
特に、バランスの取れた食事は、頭皮の血行を促進し、髪の成長に必要な栄養素を供給するために必要です。
タンパク質(肉、魚、大豆など)、亜鉛(牡蠣、レバーなど)、ビタミン類(緑黄色野菜など)を意識して摂取するべきです。
また、睡眠不足や過度なストレスは、自律神経やホルモンバランスを乱し、血行不良を招き、抜け毛を増加させる可能性があります。
質の良い睡眠を確保し、適度な運動でストレスを発散させることも、育毛環境を整える上で非常に大切です。シャンプーと並行して、体の中から頭皮環境をサポートする意識を持つ必要があります。
生活習慣の改善が頭皮にもたらす作用
| 改善項目 | 頭皮・毛髪への作用 | ポイント |
|---|---|---|
| バランスの良い食事 | 髪の主成分となる栄養供給 | タンパク質、亜鉛、ビタミンを意識 |
| 質の高い睡眠 | 成長ホルモンの分泌促進 | 7時間以上の睡眠を確保する |
| 適度な運動 | 全身の血行促進、ストレス軽減 | 有酸素運動が効果的 |
【目的別】増毛シャンプーのおすすめの活用方法
薄毛初期段階での使用
薄毛が始まったばかりで、髪の細りや分け目の目立ちが気になり始めた初期段階では、増毛シャンプーをボリュームアップと頭皮環境の予防的ケアとして活用することが適切です。
この段階で重要なのは、髪を太く見せるコーティング効果に加えて、刺激の少ない洗浄成分(アミノ酸系)を選ぶことです。
刺激の強いシャンプーで頭皮環境を悪化させると、薄毛の進行を早めてしまう可能性があるからです。初期段階のケアは、焦らず、頭皮を優しく洗い、清潔で潤いのある状態を維持することに重点を置くべきです。
また、頭皮マッサージを組み合わせることで、血行を改善し、後の本格的な育毛ケアへの準備を進めることができます。
頭皮の乾燥やかゆみが気になる場合
シャンプー後に頭皮の乾燥や、かゆみを感じやすい方は、洗浄力が強すぎるシャンプーを使っている可能性があります。
このような場合は、増毛効果よりも「保湿力」と「低刺激性」を最優先で考える必要があります。
シャンプーに含まれる保湿成分として、ヒアルロン酸やセラミドなどが高配合されているものを選んでください。また、洗浄成分はベタイン系や低刺激性のアミノ酸系を主成分とするものが適切です。
乾燥によるかゆみやフケは、頭皮のバリア機能が低下しているサインです。
このサインを無視せず、頭皮を鎮静させる効果が期待できる、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症成分が配合された医薬部外品のシャンプーを検討することも一つの手です。
洗浄後の保湿ケアを徹底することで、頭皮トラブルの悪化を防げます。
頭皮の状態別おすすめの成分選択
| 頭皮の状態 | 重点を置く成分 | 期待できる作用 |
|---|---|---|
| 初期の薄毛、細毛 | アミノ酸系洗浄成分、ケラチン | 毛髪のハリ・コシ強化、頭皮の優しさ |
| 乾燥、かゆみ、フケ | ヒアルロン酸、セラミド、抗炎症成分 | バリア機能の回復、保湿と鎮静 |
| 皮脂が多くベタつく | 石鹸系(適度な洗浄力)、天然ハーブ | 余分な皮脂の除去、頭皮のさっぱり感 |
髪のハリ・コシを強化したい場合
髪の毛自体はまだ十分にあるものの、年齢とともにハリやコシが失われ、スタイリングが決まりにくくなってきたと感じる方は、髪の補修成分に特化した増毛シャンプーやボリュームアップシャンプーが役に立ちます。
この目的に対しては、髪の主要構成成分であるタンパク質を補給する加水分解ケラチンやアミノ酸が配合されているシャンプーを選ぶと良いでしょう。
これらの成分は、髪の内部に浸透し、髪一本一本に強度と弾力を与える作用が期待できます。
また、髪の根元を立ち上がらせるためのボリュームアップ効果が高い製品と組み合わせることで、より効果的に若々しい印象のヘアスタイルを作り上げることができます。
シャンプー後のトリートメントやコンディショナーも、同様の補修成分を含むものを使用することで、相乗的な効果を得られます。
増毛シャンプーの誤解と真実を理解する
シャンプーの刺激性と薄毛の進行の関係
シャンプーの選択が増毛対策において重要視されるのは、洗浄力の強さが薄毛の進行に間接的に関わるためです。
前述したように、洗浄力の強いシャンプーは、頭皮の皮脂を過剰に洗い流し、頭皮の乾燥やバリア機能の低下を招きます。
頭皮が乾燥すると、それを補おうと皮脂が過剰に分泌されたり、外部からの刺激に対して弱くなったりします。
この頭皮環境の悪化は、健康な髪の成長を妨げる要因となり、結果として抜け毛や薄毛の進行を加速させる可能性があります。
増毛シャンプーを選ぶことは、髪を直接生やす行為ではなく、薄毛の原因となる「頭皮環境の悪化」を防ぎ、「髪が育ちやすい環境」を整えるための予防的な行動であることを深く理解する必要があります。
そのため、シャンプー選びは、洗浄力と刺激性のバランスを考慮することが極めて重要です。
頭皮クレンジングとシャンプーの適切な使い分け
増毛シャンプーだけでは落としきれない、毛穴に詰まった頑固な皮脂やスタイリング剤の残留物を除去するために、定期的な頭皮クレンジングを取り入れるべきです。
頭皮クレンジング剤は、シャンプー前の乾いた頭皮に使用し、毛穴の詰まりを浮き上がらせることに特化した製品です。
増毛シャンプーが日常の「優しく洗う」役割を担うのに対し、頭皮クレンジングは「毛穴を徹底的にリセットする」役割を担います。
皮脂の分泌が多い方は週に1〜2回、乾燥しやすい方は月に数回程度の頻度で、頭皮クレンジングを行い、その後に増毛シャンプーで優しく洗い上げると、頭皮環境がさらに健やかに保たれます。
この適切な使い分けにより、増毛シャンプーの持つ頭皮ケア成分が、より深く浸透しやすい状態を作り上げることができます。
増毛シャンプーと頭皮クレンジングの役割比較
| 製品名 | 使用頻度 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 増毛シャンプー | 毎日(または洗髪時) | 日常の清浄、毛髪のボリュームアップ |
| 頭皮クレンジング | 週1〜2回(肌質による) | 毛穴の頑固な皮脂や詰まりの除去 |
| 育毛剤/発毛剤 | 洗髪後の毎日 | 毛根への直接的な栄養・活性作用 |
よくある質問
- 増毛シャンプーを使い始めたら、いつ頃から効果を実感できますか?
-
増毛シャンプーが提供する「ボリュームアップ効果」は、髪の毛をコーティングする作用による一時的なものなので、使用した直後や、洗髪後のドライヤーで乾かした際にすぐに実感できます。
一方、頭皮環境の改善や、抜け毛の減少といった根本的な変化については、ターンオーバーの周期があるため、最低でも3ヶ月から半年程度の継続使用で判断する必要があります。
即効性を期待するのではなく、長期的な頭皮ケアの一環として取り組むことが大切です。
- 増毛シャンプーは女性が使っても問題ありませんか?
-
はい、基本的に問題ありません。増毛シャンプーの多くは、髪のボリュームアップや頭皮環境の清浄を目的としているため、性別に関係なく使用できます。
ただし、男性向けに開発された製品は、皮脂分泌の多い男性の頭皮に合わせて洗浄力がやや強めに設定されている場合があります。
女性が使用する際は、洗浄力がマイルドなアミノ酸系洗浄成分を主成分とする製品を選ぶなど、ご自身の頭皮の状態に合わせて選択することが賢明です。
- 増毛シャンプーの使用を止めると、髪はすぐに元に戻ってしまいますか?
-
増毛シャンプーによるボリュームアップ効果は、髪の表面のコーティングによるものなので、使用を止めたり、他のシャンプーに切り替えたりすると、コーティング成分が洗い流され、見た目のボリュームはすぐに元に戻ります。
しかし、頭皮環境の改善効果(フケやかゆみの軽減など)については、生活習慣や使用していたシャンプーの成分によります。ボリューム感を維持するためには、継続的な使用が必要です。
- 増毛シャンプーは敏感肌でも使用できますか?
-
敏感肌の方でも使用できる製品は多く存在しますが、全て使えるわけではありません。
特に、香料や着色料、刺激の強い防腐剤などが含まれている製品は、肌トラブルの原因になる可能性があります。
敏感肌の方は、アミノ酸系洗浄成分を主とし、無香料、無着色、アルコールフリーなど、低刺激処方であることを明記している製品を選ぶことが重要です。
事前にパッチテストを行うか、全成分表示を必ず確認して、ご自身の肌に合わない成分が含まれていないかチェックしてください。
- 増毛シャンプーは毎日使用する必要がありますか?
-
頭皮と髪を清潔に保つというシャンプー本来の目的を考えると、増毛シャンプーも一般的なシャンプーと同様に、基本的には毎日使用することが推奨されます。
特に、皮脂の分泌が多い方は、毎日の洗髪で頭皮の汚れをリセットすることが、健康な頭皮環境を維持するために必要です。
ただし、頭皮が乾燥しやすい方は、洗いすぎも乾燥を招くため、ご自身の頭皮の状態に合わせて洗髪回数を調整したり、保湿力の高い製品に切り替えたりする柔軟な対応が大切です。
Reference
TRÜEB, Ralph M. Shampoos: ingredients, efficacy and adverse effects. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft, 2007, 5.5: 356-365.
MAHAJAN, Apoorva. Advancements in polymers used in hair care: a review. Int J Res Cosmet Sci, 2016, 6.6: 16.
ROBBINS, Clarence R. Polymers in hair products. In: Chemical and physical behavior of human hair. Berlin, Heidelberg: Springer Berlin Heidelberg, 2011. p. 489-535.
FENG, Chengcheng, et al. Analysis of common treatment drugs and allergen sensitization in hair loss patients. Journal of Cosmetic Dermatology, 2025, 24.2: e16798.
BUSCH, Loris, et al. Follicular delivery of caffeine from a shampoo for hair retention. Cosmetics, 2023, 10.4: 104.
ANZAI, Alessandra, et al. Efficacy and safety of a new formulation kit (shampoo+ lotion) containing anti‐inflammatory and antioxidant agents to treat hair loss. Dermatologic Therapy, 2020, 33.3: e13293.
MUSA, Osama M.; TALLON, Michael A. Hair care polymers for styling and conditioning. In: Polymers for personal care and cosmetics. American Chemical Society, 2013. p. 233-284.
LOCHHEAD, R. Y., et al. The use of polymers in cosmetic products. Cosmetic science and technology: Theoretical principles and applications, 2017, 13: 171-221.
SRIVASTAVA, Ankita; SRIVASTAVA, Ankur Kumar; PANT, A. B. Strategic Developments for Pre-clinical Safety/Efficacy Studies of Hair Care Products. In: Hair Care Products: Efficacy, Safety and Global Regulation. Singapore: Springer Nature Singapore, 2024. p. 223-273.
DUBIEF, C., et al. Hair care products. In: The Science of Hair Care. CRC Press, 1986. p. 155-196.

