M字はげの原因は遺伝だけじゃない?生え際後退を加速させるNGな生活習慣と対策

M字はげの原因は遺伝だけじゃない?生え際後退を加速させるNGな生活習慣と対策

M字はげ、つまり生え際が後退していく状態に、一人で悩んでいませんか。「遺伝だから仕方ない」と諦めてしまうのは、まだ早いかもしれません。

確かにM字はげの進行にはAGA(男性型脱毛症)が大きく関わっており、遺伝的要因は無視できません。しかし、その進行スピードは、日々の何気ない生活習慣によって大きく左右されることも事実です。

食生活の乱れ、睡眠不足、ストレス、間違ったヘアケアなど、知らず知らずのうちに生え際の後退を後押ししている「NG習慣」が存在します。

この記事では、M字はげの根本的な原因を解説するとともに、進行を加速させる可能性のある生活習慣の問題点を具体的に指摘し、今日から始められる対策を丁寧に紹介します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

M字はげとは?その特徴と見分け方

M字はげの定義と特徴

M字はげとは、その名の通り、額の生え際がアルファベットの「M」の字のように後退していく薄毛の症状を指します。

具体的には、こめかみの上あたり、いわゆる「剃り込み」と呼ばれる部分から髪の毛が細く、薄くなり始め、徐々に後退していくのが特徴です。

正面から見たときに、中央部分は残り、両サイドが後退するため、M字型が目立つようになります。

これはAGA(男性型脱毛症)の典型的な進行パターンの一つであり、多くの男性がこの形で薄毛を自覚し始めます。

生え際後退の初期サイン

M字はげは、ある日突然始まるわけではありません。多くの場合、 subtle な変化から始まります。初期サインを見逃さないことが、早期対策の第一歩です。

例えば、「以前よりも額が広くなった気がする」「生え際の髪の毛が細く、柔らかくなった」「髪にコシがなくなり、セットがしにくくなった」といった感覚は注意信号です。

また、シャンプー時や朝起きたときの抜け毛が目立って増えた場合も、ヘアサイクルが乱れ始めている可能性があります。鏡で生え際の状態を定期的にチェックし、以前の写真と比較してみるのも良い方法です。

他の薄毛タイプとの違い

薄毛の進行パターンはM字型だけではありません。頭頂部から薄くなる「O字型(つむじはげ)」や、生え際全体が後退する「U字型」などもあります。

M字はげは特に生え際の両サイドから進行する点が特徴的です。人によっては、M字型とO字型が同時に進行する場合もあります。

どのタイプであっても、主な原因はAGAであることが多いですが、進行の仕方によって視覚的な印象や本人が感じる悩みも異なります。

自分の薄毛がどのタイプに当てはまるのかを客観的に把握することは、適切なケアや対策を考える上で重要です。

M字はげの最大の原因「AGA(男性型脱毛症)」を理解する

AGA(男性型脱毛症)とは何か

AGAは “Androgenetic Alopecia” の略で、日本語では「男性型脱毛症」と呼ばれます。成人男性に見られる進行性の脱毛症で、M字はげやO字型(つむじはげ)の主な原因とされています。

思春期以降に発症し、徐々に進行するのが特徴です。AGAは病気というよりも、体質的な現象と捉えられますが、放置すると薄毛は進行し続けます。

髪の毛が太く長く成長する前に抜け落ちてしまうため、徐々に地肌が目立つようになります。

遺伝的要因の役割

M字はげの進行に遺伝が関わっていることは広く知られています。具体的には、「男性ホルモンの影響の受けやすさ」が遺伝すると考えられています。

AGAの発症には、男性ホルモンを受け取る「アンドロゲンレセプター(受容体)」の感受性が関係します。この感受性が高いと、後述する脱毛シグナルを受け取りやすくなり、薄毛が進行しやすくなります。

この感受性の高さは、母親から受け継ぐX染色体上にある遺伝子の影響が大きいとされています。

そのため、「母方の祖父が薄毛だと自分も薄毛になりやすい」と言われることがありますが、父親からの遺伝的影響も関わるため、一概には言えません。

悪玉男性ホルモン「DHT」の影響

AGAの直接的な引き金となるのが、「DHT(ジヒドロテストステロン)」と呼ばれる強力な男性ホルモンです。

DHTは、体内の「テストステロン」という善玉の男性ホルモンが、「5αリダクターゼ」という酵素と結びつくことによって生成されます。

このDHTが、毛根にあるアンドロゲンレセプターと結合すると、髪の成長を抑制する脱毛シグナル(TGF-βなど)が発信されます。

特にM字部分(前頭部)と頭頂部には、このDHTを生成する5αリダクターゼが多く存在するため、AGAの影響を受けやすいのです。

ヘアサイクルの短縮化

健康な髪の毛には、「成長期(髪が伸びる期間)」「退行期(成長が止まる期間)」「休止期(髪が抜ける準備期間)」というヘアサイクル(毛周期)があります。

通常、成長期は2年~6年ほど続きますが、AGAを発症すると、この成長期が極端に短くなります。

DHTによる脱毛シグナルの影響で、髪が十分に太く長く成長する前に、数ヶ月から1年程度で退行期・休止期へと移行してしまうのです。

これにより、細く短い「うぶ毛」のような髪の毛が増え、結果として地肌が透けて見えるM字はげの状態が進行します。

遺伝だけではない! M字はげを加速させるNGな生活習慣

食生活の乱れと栄養不足

髪の毛は、私たちが食べたものから作られる「ケラチン」というタンパク質を主成分としています。

しかし、日々の食事がジャンクフードやインスタント食品、高脂肪食に偏っていると、髪の成長に必要な栄養素が慢性的に不足してしまいます。

特にタンパク質、亜鉛、ビタミン類は健康な髪を育む上で欠かせません。これらの栄養が不足すると、髪の毛はやせ細り、抜けやすくなります。

また、高脂肪食や高糖質食は皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させる一因ともなります。

髪の成長に関わる主な栄養素

栄養素主な働き多く含む食品例
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、赤身肉、チーズ
ビタミンB群頭皮の新陳代謝を促す、皮脂分泌を調整豚肉、レバー、青魚、納豆、卵

睡眠不足による成長ホルモンの減少

睡眠は、単に体を休ませるためだけのものではありません。私たちが眠っている間、特に深いノンレム睡眠時には「成長ホルモン」が大量に分泌されます。

この成長ホルモンは、体の細胞分裂を促し、ダメージを受けた組織を修復する働きがあります。これには頭皮や毛母細胞も含まれます。

睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、成長ホルモンの分泌が減少し、毛母細胞の働きが鈍くなります。

その結果、髪の成長が妨げられ、ヘアサイクルが乱れ、M字はげの進行を早めてしまう可能性があります。

ストレスが頭皮に与える悪影響

現代社会においてストレスをゼロにすることは難しいですが、過度なストレスは髪にとって大敵です。強いストレスを感じると、自律神経のうち交感神経が優位になります。

交感神経は体を緊張状態にし、血管を収縮させる働きがあります。頭皮の毛細血管が収縮すると、血流が悪化し、髪の毛の成長に必要な酸素や栄養素が毛根まで十分に行き渡らなくなります。

これが長期的に続くと、毛母細胞の活動が低下し、抜け毛やM字はげの進行につながるのです。また、ストレスはホルモンバランスの乱れや睡眠障害を引き起こすこともあり、複合的に悪影響を与えます。

喫煙と飲酒の習慣

喫煙や過度な飲酒も、M字はげを加速させる要因となります。タバコに含まれるニコチンには、強力な血管収縮作用があります。ストレスと同様に、頭皮の毛細血管を収縮させ、深刻な血行不良を引き起こします。

また、喫煙は体内の活性酸素を増やし、細胞の老化を早めるとも言われています。

一方、過度な飲酒は、アルコールを分解する過程で、髪の主成分であるタンパク質の合成に必要な「亜鉛」や「ビタミンB群」を大量に消費してしまいます。

適度な飲酒はリラックス効果もありますが、習慣的な深酒は髪の栄養不足を招くことになります。

喫煙・飲酒が髪に与える影響

習慣主な影響詳細
喫煙血行不良・ビタミン消費ニコチンが血管を収縮させ、頭皮への血流を妨げます。ビタミンCなども破壊します。
過度な飲酒栄養消費・睡眠の質低下アルコールの分解に亜鉛やビタミンB群が使われ、髪に必要な栄養が不足しがちです。

頭皮環境の悪化がM字はげを招く

間違ったシャンプー方法

頭皮を清潔に保つためのシャンプーも、方法を間違えると逆効果になります。

例えば、「皮脂を落とさなければ」と1日に何度もシャンプーをしたり、洗浄力の強すぎるシャンプーを使ったりすると、頭皮を守るために必要な皮脂まで奪ってしまいます。

すると頭皮は乾燥し、バリア機能が低下します。逆に、乾燥から頭皮を守ろうと皮脂が過剰に分泌されることもあります。

また、爪を立ててゴシゴシ洗う行為は、頭皮を傷つけ、炎症の原因となります。すすぎ残しは、シャンプー剤が毛穴に詰まり、頭皮トラブルや抜け毛につながります。

頭皮の血行不良

前述のストレスや喫煙だけでなく、長時間のデスクワークによる肩こりや首こり、運動不足も頭皮の血行不良を引き起こします。頭部は心臓から遠い位置にあるため、もともと血流が滞りやすい場所です。

血流は、髪の成長に必要な栄養素と酸素を運ぶ唯一のルートです。このルートが滞れば、いくらバランスの良い食事を摂っても、栄養が毛根まで届きません。

栄養不足に陥った毛母細胞は正常な活動ができなくなり、髪は細く弱々しくなり、やがては抜け落ちてしまいます。

M字はげが気になる部分の頭皮が硬くなっている場合、血行不良が起きているサインかもしれません。

皮脂の過剰分泌と毛穴詰まり

頭皮の皮脂は、本来、頭皮を乾燥や外部刺激から守るバリアの役割を果たしています。

しかし、食生活の乱れ(高脂肪食など)やホルモンバランスの乱れ、間違ったヘアケアによって皮脂が過剰に分泌されることがあります。

過剰な皮脂が、古い角質やホコリなどと混ざり合って毛穴に詰まると、雑菌が繁殖しやすい環境が生まれます。

これにより「脂漏性皮膚炎」などの頭皮トラブルを引き起こし、炎症が毛根にダメージを与え、抜け毛を誘発することがあります。

ベタつくからと洗浄力の強いシャンプーで洗いすぎることが、さらに皮脂分泌を促す悪循環に陥るケースも少なくありません。

紫外線のダメージ

顔や腕の紫外線対策はしていても、頭皮の紫外線対策は見落としがちです。頭皮は体の中で最も高い位置にあり、直射日光を浴びやすいため、顔の2倍以上の紫外線を浴びているとも言われます。

紫外線は、頭皮の細胞にダメージを与え、乾燥や炎症を引き起こします。また、髪の毛そのもの(ケラチンタンパク質)も傷つけ、キューティクルを剥がし、髪のパサつきや切れ毛の原因となります。

さらに深刻なのは、紫外線が頭皮の「光老化」を引き起こし、毛母細胞の働きを低下させることです。これが抜け毛や薄毛の進行につながるため、特に日差しの強い季節の対策は重要です。

今すぐ見直したい M字はげ対策としての生活習慣改善

バランスの取れた食事を心がける

M字はげ対策の基本は、内側からのケア、すなわちバランスの取れた食事です。

髪の毛は食べたもので作られています。特定の食品だけを食べるのではなく、「タンパク質」「ビタミン」「ミネラル」をまんべんなく摂取することを意識しましょう。

髪の主成分であるタンパク質(肉、魚、大豆製品)、タンパク質の合成を助ける亜鉛(牡蠣、レバー)、頭皮環境を整えるビタミンB群(豚肉、マグロ)は特に重要です。

外食やコンビニ食が多い方も、一品加える工夫(例:サラダ、ゆで卵、納豆)から始めてみましょう。

特に、以下のような偏った食事が中心になっている場合は注意が必要です。

  • 高脂肪食(揚げ物、ジャンクフード)
  • 高糖質食(甘いお菓子、清涼飲料水)

これらの食事は皮脂の過剰分泌を招いたり、髪に必要なビタミンやミネラルの吸収を妨げたりする可能性があります。

髪の健康をサポートする食品例

栄養素カテゴリ期待できる役割食品例
タンパク質髪の主材料鶏むね肉、豆腐、サバ、卵
ビタミンA・C・E頭皮の健康維持、血行促進緑黄色野菜、果物、ナッツ類
ミネラル(特に亜鉛)髪の合成サポート牡蠣、レバー、わかめ(海藻類)

質の高い睡眠の確保

髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。特に、入眠後すぐの深い眠り(ノンレム睡眠)の際に最も多く分泌されると言われています。

単に長く寝るだけでなく、「睡眠の質」を高めることが重要です。そのためには、毎日なるべく同じ時間に寝て、同じ時間に起きる規則正しい生活リズムを作ることが大切です。

就寝1〜2時間前に入浴して体を温めたり、寝る直前のスマートフォンやPCの使用を控えたりすることも、質の高い睡眠につながります。寝室の環境(温度、湿度、光、音)を整えることも試してみましょう。

効果的なストレス解消法を見つける

ストレスによる頭皮の血行不良は、M字はげの大敵です。ストレスを溜め込まないよう、自分に合った解消法を見つけることが大切です。

激しい運動である必要はなく、ウォーキングやジョギングなどの軽い有酸素運動は、血行促進とリフレッシュの両方に効果的です。

また、趣味に没頭する時間を作ったり、ゆっくりと湯船に浸かってリラックスしたりするのも良いでしょう。

友人や家族と話すこと、あるいは一人の静かな時間を持つことなど、自分が「心地よい」と感じる方法で、こまめに心身の緊張をほぐす習慣をつけましょう。

禁煙と適度な飲酒

もし喫煙習慣があるなら、M字はげ対策を本気で考える上では、禁煙を強く推奨します。ニコチンによる血行不良は、髪の成長に深刻な悪影響を与え続けます。

すぐに禁煙するのが難しい場合は、本数を減らす、禁煙外来を利用するなど、具体的な行動を起こすことが重要です。

飲酒については、適量であればリラックス効果も期待できますが、過度な飲酒は避けるべきです。

アルコールの分解で髪に必要な栄養素が奪われることを意識し、「休肝日を設ける」「深酒はしない」といったルールを自分の中で決め、節度ある楽しみ方を心がけましょう。

M字はげのための正しいヘアケアと頭皮ケア

自分に合ったシャンプーの選び方

毎日のシャンプーは、M字はげ対策において重要な頭皮ケアの一つです。自分の頭皮タイプに合ったシャンプーを選びましょう。

市販されているシャンプーの多くは「高級アルコール系」で、洗浄力が強く泡立ちが良い反面、頭皮への刺激が強く、乾燥を招くことがあります。

頭皮の乾燥やフケが気になる方、敏感肌の方は、洗浄力がマイルドで頭皮に優しい「アミノ酸系シャンプー」や「ベタイン系シャンプー」を選ぶことをおすすめします。

皮脂が多いと感じる方でも、洗いすぎは逆効果になるため、マイルドな洗浄力のもので丁寧に洗うことを試してみてください。

シャンプーの種類と特徴

主な洗浄成分洗浄力特徴
高級アルコール系強い泡立ちが良い。皮脂が多い人向けだが、乾燥しやすい。
アミノ酸系マイルド頭皮に優しく保湿性が高い。乾燥肌・敏感肌向け。
石けん系強いさっぱりするが、髪がきしみやすく、アルカリ性に傾きやすい。

正しいシャンプーの手順と洗い方

シャンプーの目的は「髪」ではなく「頭皮」を洗うことです。まず、シャンプーをつける前に、ぬるま湯(38度程度が目安)で1〜2分かけて髪と頭皮をしっかり「予洗い」します。

これだけで汚れの7割程度は落ちると言われています。次に、シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、頭皮につけます。洗う際は、爪を立てずに指の腹を使い、頭皮を優しくマッサージするように動かします。

特にM字部分や生え際は、洗い残しやすすぎ残しが多いため、意識して丁寧に行いましょう。最後は、泡が完全になくなるまで、時間をかけてしっかりとすすぎます。

シャンプー剤が残ると、頭皮トラブルの原因になります。

頭皮マッサージによる血行促進

頭皮の血行を良くするために、頭皮マッサージを習慣にすることも有効です。シャンプー中や、入浴後の体が温まっているときに行うと効果的です。

指の腹を頭皮に密着させ、頭蓋骨から頭皮を動かすようなイメージで、優しく揉みほぐします。

M字部分が気になるからといって、その部分だけを強くこするのは避け、側頭部や後頭部も含めて頭皮全体をマッサージしましょう。

血流が改善されることで、毛根に栄養が行き渡りやすくなります。毎日続けることが大切なので、リラックスタイムの一部として取り入れてみてください。

頭皮マッサージのポイント

ポイント方法目的・注意点
タイミングシャンプー中や入浴後頭皮が清潔で柔らかい状態で行う
強さ指の腹で優しく押す・揉む頭皮を傷つけない「気持ちいい」程度の圧。爪は立てない。
時間1回あたり3〜5分程度毎日継続することが重要。

育毛剤の活用

M字はげの予防や、進行を緩やかにするためには、育毛剤の使用も有効な選択肢の一つです。育毛剤は「医薬部外品」に分類され、主な目的は「頭皮環境を整え、今ある髪を健康に育てること」にあります。

血行を促進する成分、頭皮の炎症を抑える成分、毛母細胞の働きをサポートする成分などが含まれています。

AGAの進行を直接止める「治療薬」とは異なりますが、生活習慣の改善や正しいヘアケアと併用することで、頭皮環境を良好に保ち、抜け毛を防ぎ、ハリやコシのある髪を育む助けとなります。

自分の頭皮の状態や悩みに合った成分が含まれているかを確認して選びましょう。

紫外線対策の重要性

頭皮の「光老化」を防ぐため、紫外線対策は年間を通して行うことが望ましいです。特に日差しが強い季節や、屋外での活動時間が長い日は注意が必要です。

最も簡単な対策は、帽子や日傘を使用することです。通気性の良い帽子を選び、蒸れを防ぐことも大切です。

最近では、髪にも使えるスプレータイプのUVカット製品や、頭皮用の日焼け止めも販売されています。TPOに合わせてこれらを活用し、頭皮を紫外線ダメージから守る意識を持ちましょう。

M字はげ対策でよくある誤解と注意点

「海藻類を食べれば髪が生える」は本当か

「わかめや昆布を食べると髪が増える」という話をよく聞きますが、これは半分正しく、半分誤解です。海藻類には、髪の健康維持に必要なミネラル(特にヨウ素や亜鉛)や食物繊維が豊富に含まれています。

これらは頭皮環境を整えたり、髪の成長をサポートしたりする上で重要な栄養素です。

しかし、海藻類だけを大量に食べたからといって、それだけでM字はげが改善したり、髪の毛が新しく生えてきたりするわけではありません。

髪の主成分はタンパク質であり、ビタミン類も必要です。あくまで「バランスの取れた食事」の一環として、海藻類も適度に取り入れることが大切です。

「頭皮を叩くと血行が良くなる」の危険性

一昔前には、頭皮の血行促進をうたって「ヘアブラシなどで頭皮を叩く」といった健康法が紹介されることもありました。しかし、この行為は非常に危険です。

硬いもので頭皮を叩くと、デリケートな頭皮の毛細血管や毛根を傷つけてしまう可能性があります。

刺激によって一時的に赤くなり、血行が良くなったように感じるかもしれませんが、長期的には炎症を引き起こしたり、頭皮が硬くなったりする原因となり、かえって抜け毛を悪化させるリスクがあります。

血行促進を目指すなら、前述したように、指の腹を使った優しいマッサージに留めてください。

自己判断での対策の限界

この記事で紹介した生活習慣の改善やヘアケアは、M字はげの進行を予防したり、頭皮環境を整えたりする上で非常に重要です。これらは、いわば「髪が育ちやすい土壌」を作るための対策です。

しかし、M字はげの最大の原因であるAGAは進行性です。生活習慣を見直しても、生え際の後退が明らかに進行し続けていると感じる場合、セルフケアだけでは限界があるかもしれません。

AGAは遺伝やホルモンが関わる体質的な側面が強いため、より積極的な対策を望む場合は、皮膚科や薄毛治療を専門とするクリニックに相談することも一つの選択肢です。

専門家は、個々の状態に合わせて医学的な観点からのアドバイスや治療法を提案できます。

M字はげ対策の比較

対策方法期待できること注意点・特徴
生活習慣・食事改善頭皮環境の土台作り、予防即効性は期待しにくいが、全ての基本となる。
正しいヘアケア頭皮環境の維持・改善頭皮トラブルを防ぐ。間違った方法は逆効果。
育毛剤(医薬部外品)育毛促進、抜け毛予防頭皮環境を整える。継続使用が必要。

よくある質問

M字はげは何歳から始まりますか?

M字はげの主な原因であるAGA(男性型脱毛症)は、早い人では思春期を過ぎた10代後半から20代前半で症状が現れ始めることがあります。

一般的には30代から40代にかけて自覚する人が多いですが、発症時期には個人差が大きいです。遺伝的要因や生活習慣によって、その開始時期や進行速度は異なります。

「まだ若いから大丈夫」と過信せず、生え際の変化に気づいたら早めに生活習慣を見直すことが大切です。

M字はげは治りますか?

AGAは進行性のため、生活習慣の改善やヘアケアだけで「完治」させ、元のフサフサな状態に完全に戻すことは難しいとされています。

しかし、対策を講じることで、その進行を大幅に遅らせたり、頭皮環境を改善して毛髪を太く健康に育てたりすることは可能です。

育毛剤の使用や、専門クリニックでの治療など、早期から適切なケアを継続することで、薄毛が目立たない状態を維持することは十分に目指せます。諦めずにケアを続けることが重要です。

シャンプーの際、抜け毛が多いのが心配です

健康な人でも、ヘアサイクルによって1日に50本から100本程度の髪の毛は自然に抜けます。

シャンプー時は、その日に抜ける予定だった髪がまとめて洗い流されるため、特に抜け毛が多く見えることがあります。

排水溝にたまる毛の量が「以前と比べて明らかに増えた」と感じる場合や、抜けた毛が「細く短い毛(成長しきる前に抜けた毛)」が多い場合は、ヘアサイクルが乱れているサインかもしれません。

量だけでなく、抜け毛の質にも注目してみてください。

育毛剤と発毛剤の違いは何ですか?

「育毛剤」は、主に「医薬部外品」に分類されます。その目的は、今ある髪の毛を健康に育て、抜け毛を防ぎ、頭皮環境を整えることです。血行促進や抗炎症作用が中心です。

一方、「発毛剤」は「医薬品」に分類され、M字はげの原因であるAGAの進行を抑えたり(5αリダクターゼ阻害薬)、毛母細胞に直接働きかけて新しい髪の毛を生やしたりする(ミノキシジルなど)効果が認められています。

発毛剤は医師の処方や薬剤師の説明が必要なものが多く、より積極的な治療に用いられます。

Reference

HAMED, Ahmed Mohammed, et al. Relation between Androgenic Alopecia with Metabolic Syndrome. The Egyptian Journal of Hospital Medicine (January 2024), 2024, 94: 1207-1211.

ASADI, S. The role of mutations on gene AR, in androgenetic alopecia syndrome. Int J Mol Biol Open Access, 2020, 5.2: 46-9.

VILA-VECILLA, Laura; RUSSO, Valentina; DE SOUZA, Gustavo Torres. Genomic markers and personalized medicine in androgenetic alopecia: a comprehensive review. Cosmetics, 2024, 11.5: 148.

ANASTASSAKIS, Konstantinos. Female pattern hair loss. In: Androgenetic Alopecia From A to Z: Vol. 1 Basic Science, Diagnosis, Etiology, and Related Disorders. Cham: Springer International Publishing, 2022. p. 181-203.

ASADI, S. The Role of Mutations on Gene AR. Androgenetic Alopecia Syndrome. Immunogenet Open Access, 2020, 5.127: 10.

MARKS, Dustin H.; SENNA, Maryanne M. Androgenetic alopecia in gender minority patients. Dermatologic clinics, 2020, 38.2: 239-247.

MOGHADAM-KIA, Siamak; FRANKS, Andrew G. Autoimmune disease and hair loss. Dermatologic clinics, 2013, 31.1: 75-91.

TREVISAN, M., et al. Baldness and coronary heart disease risk factors. Journal of clinical epidemiology, 1993, 46.10: 1213-1218.

PHILLIPS III, J. Hunter; SMITH, Sharon L.; STORER, James S. Hair loss: common congenital and acquired causes. Postgraduate Medicine, 1986, 79.5: 207-215.

OLSEN, Elise A. Female pattern hair loss. Journal of the American Academy of Dermatology, 2001, 45.3: S70-S80.

目次