「最近、白髪が増えてきたと同時に、髪のボリュームも減ってきた気がする…」そんな悩みを抱える男性は少なくありません。
白髪と薄毛という二つの問題が同時に現れると、育毛剤で両方ケアできないかと考えるのは自然なことです。
しかし、育毛剤が白髪にも本当に効果があるのか、ましてや黒髪に戻ることはあるのか、疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、白髪と薄毛の根本的な違いから、育毛剤の本来の役割、そして両方の悩みに賢く対処するための具体的なケア方法まで、詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
白髪と薄毛の関係性 – なぜ同時に悩む人が多いのか
鏡を見るたびに増える白髪と、セットが決まらなくなる薄毛。これらが同時期に気になり始めると、「白髪と薄毛は何か関係があるのでは?」と不安になるかもしれません。
しかし、実際にはこの二つの現象は、異なる原因によって引き起こされます。それなのに、なぜ多くの人が同時に悩むことになるのでしょうか。その理由を探ります。
白髪が発生する仕組み
髪の毛はもともと色がついておらず、毛根の奥にある「メラノサイト(色素細胞)」が作り出すメラニン色素によって黒く色付けされます。
白髪は、このメラノサイトの働きが何らかの理由で低下したり、消失したりすることで、メラニン色素が作られなくなり、髪が色のないまま生えてくる状態を指します。
加齢はもちろん、遺伝的な要因、強いストレス、栄養不足、生活習慣の乱れなどが、メラノサイトの働きに影響を与えると考えられています。
薄毛(AGA)が進行する仕組み
一方、男性の薄毛の多くは「AGA(男性型脱毛症)」と呼ばれます。これは主に遺伝や男性ホルモンの影響によって引き起こされます。
男性ホルモン「テストステロン」が特定の酵素(5αリダクターゼ)と結びつき、「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換されます。
このDHTが毛根の受容体と結合すると、髪の成長期が短縮され、髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。
このヘアサイクルの乱れが繰り返されることで、髪の毛全体が細く、少なくなり、薄毛が進行します。
白髪と薄毛は「原因が異なる」という事実
このように、白髪は「色素の問題(メラノサイトの機能低下)」であり、薄毛(AGA)は「ヘアサイクルの問題(毛母細胞の機能低下)」です。つまり、根本的な原因は全く別物です。
「白髪が多いから薄毛になる」あるいは「薄毛の人は白髪になりにくい」といった直接的な因果関係は、医学的には認められていません。それぞれを別の問題として捉え、対処法を考える必要があります。
「加齢」と「頭皮環境の悪化」という共通点
原因は異なりますが、白髪と薄毛には「加齢」という共通の大きな要因があります。年齢を重ねるにつれて、メラノサイトの働きも、毛母細胞の働きも徐々に低下していきます。
また、長年の生活習慣の乱れやストレスが蓄積すると、頭皮の血行が悪くなったり、炎症が起きやすくなったりします。
このような「頭皮環境の悪化」は、メラノサイトにとっても毛母細胞にとっても良い環境とは言えず、白髪と薄毛の両方を助長する要因となり得ます。
これが、多くの人が二つの悩みを同時に抱えやすくなる大きな理由です。
育毛剤の「効果」とは?白髪への直接的な影響
薄毛対策として真っ先に思い浮かぶ「育毛剤」。もしこれが白髪にも効くのであれば、一石二鳥です。しかし、育毛剤は白髪に対してどのような影響を与えるのでしょうか。
その「効果」の範囲を正しく理解することが重要です。
育毛剤(医薬部外品)の役割
日本において、市販されている育毛剤の多くは「医薬部外品」に分類されます。医薬部外品とは、治療を目的とした「医薬品」と、美容を目的とした「化粧品」の中間に位置づけられるものです。
育毛剤(医薬部外品)に認められている主な効果・効能は、「育毛」「養毛」「薄毛・抜け毛の予防」「発毛促進(※今ある髪を育てるという意味)」です。
具体的には、頭皮の血行を促進する成分(センブリエキスなど)や、頭皮の炎症を抑える成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど)、毛母細胞の働きをサポートする成分(ビタミン類など)が含まれています。
これらによって、頭皮環境を健やかに保ち、今生えている髪が抜けにくく、太く長く育つようにサポートするのが育毛剤の主な役割です。
育毛剤は白髪を黒髪に戻す薬ではない
結論から言うと、育毛剤に「白髪を黒髪に戻す」直接的な効果は期待できません。前述の通り、白髪はメラノサイトの機能低下によってメラニン色素が作られなくなることが原因です。
一方、育毛剤の成分は、主に頭皮環境や毛母細胞に働きかけるものであり、活動を停止してしまったメラノサイトを復活させたり、メラニン色素の生成を直接的に促進したりするようには設計されていません。
したがって、育毛剤を使用したからといって、白髪が黒髪に変わることはないのです。
「育毛剤で白髪が減った」と感じるケースの考察
まれに「育毛剤を使い始めたら白髪が減った気がする」という声を聞くことがあります。
これはなぜでしょうか。一つの可能性として、育毛剤の血行促進効果や頭皮環境の改善効果が、メラノサイトの働きにも間接的に良い影響を与えた、という仮説が考えられます。
例えば、メラノサイトの機能が完全に停止したのではなく、栄養不足や血行不良によって一時的に休止していた場合、頭皮環境が整うことで再び活動を再開し、黒髪が生えてくる可能性はゼロではありません。
ただし、これは非常に稀なケースか、育毛剤の効果というよりは、マッサージや生活習慣の改善といった他の要因が複合的に作用した結果と考えるのが妥当です。
多くの場合、一時的な変化や個人の感覚によるものと考えられます。
比較「育毛剤」と「発毛剤」
育毛剤と混同されやすいものに「発毛剤」があります。
この二つは明確に異なります。発毛剤は「医薬品」であり、主に「壮年性脱毛症(AGA)における発毛」という、新しい髪を生やす効果が認められています。
代表的な成分にミノキシジルがあります。育毛剤は今ある髪を守り育てる「予防」や「育毛」が目的であるのに対し、発毛剤は新しい髪を生やす「治療」が目的です。
ただし、発毛剤も育毛剤と同様に、白髪を黒髪に戻す効果はありません。
育毛剤と発毛剤の主な違い
| 分類 | 育毛剤 (医薬部外品) | 発毛剤 (第一類医薬品) | 
|---|---|---|
| 主な目的 | 育毛、薄毛・抜け毛の予防 | 発毛、脱毛の進行予防 (AGA治療) | 
| 期待される効果 | 頭皮環境を整え、健康な髪を育てる | 新しい髪を生やし、髪を太くする | 
| 主な成分例 | センブリエキス、グリチルリチン酸2K | ミノキシジル | 
白髪と育毛剤に関する誤解と正しい理解
白髪と薄毛、どちらも深刻な悩みだからこそ、育毛剤に過度な期待を寄せてしまうことがあります。
しかし、間違った認識のままケアを続けると、期待した結果が得られないばかりか、頭皮トラブルを招く可能性もあります。
ここで、よくある誤解を解き、正しい理解を深めましょう。
誤解1「育毛剤を使えば白髪が黒くなる」
これは最も多い誤解であり、前章でも説明した通り、誤りです。育毛剤の成分は、色素を作るメラノサイトを直接的に活性化させるものではありません。
育毛剤の目的はあくまで「頭皮環境の改善」と「今ある髪の育成・脱毛予防」です。白髪を黒くする効果を期待して育毛剤を使用するのは、製品の目的に沿っていません。
白髪対策は、後述する白髪染めなど、別の方法で行う必要があります。
誤解2「白髪染めと育毛剤は併用できない」
これも誤解です。白髪染め(ヘアカラー)と育毛剤は併用できます。ただし、使い方には注意が必要です。白髪染めに使われる薬剤は、髪や頭皮にとって刺激が強いものです。
特にヘアカラー(酸化染毛剤)は、アルカリ剤でキューティクルを開き、染料を髪の内部に浸透させるため、頭皮が敏感な状態になりがちです。
白髪染めをした当日は、頭皮がデリケートになっているため、育毛剤の使用は避けるのが賢明です。育毛剤に含まれるアルコール成分などが刺激となり、かゆみや赤みを引き起こす可能性があります。
最低でも染めた翌日以降、できれば2〜3日空けて、頭皮の状態が落ち着いてから育毛剤の使用を再開するようにしましょう。
誤解3「白髪が多いと薄毛になりやすい」
「白髪が目立つようになってから、髪も細くなった気がする」と感じることから生まれる誤解です。しかし、前述の通り、白髪(色素の問題)と薄毛(ヘアサイクルの問題)の直接的な因果関係はありません。
白髪が多い人が必ずしも薄毛になるわけではありませんし、その逆も同様です。
ただし、「加齢」や「頭皮環境の悪化」という共通の要因によって、二つの現象が同時期に進行することはあり得ます。
白髪が目立つことで、以前より髪全体の状態に意識が向くようになり、それまで気づかなかった薄毛のサイン(髪のハリ・コシの低下など)を認識しやすくなった、という側面もあるでしょう。
正しい理解「育毛剤は頭皮の土壌を整えるもの」
育毛剤の役割を正しく理解することは、白髪と薄毛の両方に悩む人にとって非常に重要です。育毛剤は、髪を育てる「土壌」である頭皮を整えるためのアイテムです。
畑に例えるなら、硬く乾燥した土地や、雑草だらけの土地(=荒れた頭皮環境)では、良い作物(=健康な髪)は育ちません。
育毛剤は、その土地に水や栄養を与え、耕し(=血行促進、保湿、抗炎症)、作物が育ちやすい環境を整える手助けをします。
白髪も薄毛も、この「頭皮」という土壌から生えてくる以上、土壌の状態を良好に保つことは、どちらの悩みにとっても無関係ではないのです。
育毛剤が「白髪にも薄毛にも効く」と期待される理由
育毛剤は白髪を黒髪に戻さない。それなのに、なぜ「白髪にも薄毛にも効く」という期待が生まれるのでしょうか。
それは、育毛剤の持つ「頭皮環境を改善する」という基本的な働きが、巡り巡って白髪と薄毛の両方にとってプラスに作用する可能性があるからです。
頭皮環境の改善がもたらす総合的なメリット
健康な髪は、健康な頭皮から生まれます。頭皮が乾燥しすぎたり、逆に皮脂が過剰でベタついたり、炎症を起こして赤くなっていたりすると、髪の成長は妨げられます。
育毛剤には、保湿成分や抗炎症成分、皮脂のバランスを整える成分が含まれているものが多くあります。これらが頭皮環境を正常化することで、毛母細胞が働きやすい環境を整え、薄毛の予防につながります。
同時に、頭皮環境が整うことは、色素を作るメラノサイトにとっても良い影響を与えます。
直接メラノサイトを活性化させるわけではなくても、その周辺環境が整えば、まだ機能が残っているメラノサイトが働きやすくなる可能性は考えられます。
これが「白髪にも薄毛にも良い」と期待される一つの理由です。
血行促進による栄養供給の重要性
髪を育てる毛母細胞も、髪に色をつけるメラノサイトも、その活動に必要な栄養や酸素を血液から受け取っています。
頭皮の血行が悪くなると、これらの細胞に十分な栄養が届かず、それぞれの働きが低下してしまいます。薄毛の人は頭皮が硬く、血行が悪い傾向があると言われます。
多くの育毛剤には、頭皮の血管を拡張させたり、血流を促したりする「血行促進成分」が含まれています。育毛剤の使用とともに頭皮マッサージを行うことで、この効果はさらに高まります。
血流が改善し、毛根の隅々にまで栄養が供給されるようになれば、毛母細胞の活性化(薄毛対策)と、メラノサイトの活性維持(白髪予防)の両方にとってプラスに働くと期待できます。
髪の健康に必要な栄養素
頭皮環境を外から整えるのが育毛剤なら、内側からサポートするのが日々の食事です。特に髪の健康を維持するためには、特定の栄養素が重要です。
育毛剤によるケアと合わせて、食生活も見直すことが、白髪と薄毛の両方に対処する上で大切です。
髪の健康維持に役立つ主な栄養素
| 栄養素 | 期待される役割 | 多く含まれる食品 | 
|---|---|---|
| タンパク質 (アミノ酸) | 髪の主成分 (ケラチン) を作る。 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 | 
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助け、ヘアサイクルを整える。 | 牡蠣、レバー、牛肉 (赤身)、チーズ | 
| ビタミンB群 | 頭皮の代謝を助け、皮脂バランスを整える。 | 豚肉、レバー、マグロ、カツオ、納豆 | 
白髪と薄毛、両方に対処するためのケア戦略
白髪と薄毛、二つの悩みに同時に向き合うには、育毛剤だけに頼るのではなく、総合的なケア戦略が必要です。
育毛剤を正しく位置づけ、白髪対策と薄毛対策、そして生活習慣の改善を組み合わせることが重要です。
育毛剤の選び方
育毛剤は、自分の頭皮の状態や悩みに合わせて選ぶことが大切です。
例えば、頭皮が乾燥しがちな人は保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸など)が豊富なものを、逆にベタつきがちな人は皮脂バランスを整える成分(ビタミンB群など)が含まれるものを選ぶと良いでしょう。
また、血行促進を重視するならセンブリエキス、抗炎症を重視するならグリチルリチン酸ジカリウムなど、主要な有効成分に着目するのも一つの方法です。
自分の頭皮タイプが分からない場合は、美容室や専門のカウンターで相談してみるのも良いでしょう。
白髪への具体的な対処法
育毛剤で白髪は黒くなりません。したがって、今ある白髪の見た目を改善するには「染める」または「ぼかす」という対処法が現実的です。
白髪染めにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
白髪染めの種類と特徴
| 種類 | 特徴 | メリット / デメリット | 
|---|---|---|
| ヘアカラー (酸化染毛剤) | 髪の内部までしっかり染める。 | 色持ちが非常に良い / 髪や頭皮への負担が大きい | 
| ヘアマニキュア | 髪の表面をコーティングするように着色する。 | 髪への負担が少ない / 色落ちが早く、汗や雨で色移りしやすい | 
| カラートリートメント | シャンプー後のトリートメントとして使い、徐々に色を補給する。 | 最も手軽で頭皮に優しい / 1回では染まらず、継続使用が必要 | 
頭皮への負担を考えるなら、育毛剤と併用しやすいのはヘアマニキュアやカラートリートメントです。しかし、しっかり染めたい場合はヘアカラーが必要になるでしょう。
その場合は、前述の通り、使用間隔やタイミングに注意が必要です。
薄毛(AGA)への具体的な対処法
薄毛の進行が早い、あるいは明らかに抜け毛が増えている場合、育毛剤(医薬部外品)での予防ケアだけでは不十分かもしれません。薄毛、特にAGAは進行性の脱毛症です。
本気で薄毛を改善したい場合は、「発毛剤(第一類医薬品)」の使用を検討するか、AGA専門のクリニックに相談することをおすすめします。
クリニックでは、ミノキシジル(外用薬)やフィナステリド・デュタステリド(内服薬)など、医学的根拠に基づいた治療を受けることができます。
育毛剤はあくまで頭皮環境を整えるサポート役と割り切り、積極的な「治療」に切り替える判断も重要です。
生活習慣の見直し
育毛剤や白髪染めといった外側からのケアと同時に、体の内側からのケア、すなわち生活習慣の見直しが、白髪と薄毛の両方にとって非常に重要です。健康な髪は、健康な体から作られます。
頭皮ケアのための生活習慣
- 十分な睡眠時間の確保 (成長ホルモンの分泌)
- 栄養バランスの取れた食事 (タンパク質、ビタミン、ミネラル)
- 適度な運動 (全身の血行促進)
- ストレスの上手な発散 (自律神経のバランス)
- 禁煙 (喫煙は血管を収縮させ血行を悪化させる)
育毛剤使用時の注意点と頭皮ケア
育毛剤は、ただ塗れば良いというものではありません。その効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方と、土台となる頭皮のケアが重要です。
特に白髪染めと併用する場合は、細心の注意を払いましょう。
育毛剤の「正しい」使い方
育毛剤の多くは、1日1〜2回、洗髪後の清潔な頭皮に使用することを推奨しています。
髪が濡れた状態ではなく、タオルドライで水気をしっかり取った後、できればドライヤーで軽く乾かしてから使用するのが効果的です。
頭皮が濡れていると、育毛剤の成分が薄まったり、頭皮に浸透しにくくなったりします。塗布する際は、髪ではなく頭皮に直接つけることを意識します。
ノズルを頭皮に近づけ、気になる部分だけでなく頭皮全体に行き渡るように塗布しましょう。一度に大量につけても効果が上がるわけではありません。製品に記載されている用法・用量を守ることが大切です。
頭皮マッサージの併用とその方法
育毛剤を塗布した後は、指の腹を使って優しく頭皮マッサージを行うことを強く推奨します。マッサージには、育毛剤の成分を頭皮に馴染ませる効果と、頭皮そのものの血行を促進する効果があります。
爪を立てず、指の腹で頭皮全体を掴むようにし、心地よいと感じる強さで揉みほぐします。生え際から頭頂部へ、側頭部から頭頂部へと、下から上へ向かって行うと効果的です。
マッサージを習慣にすることで、頭皮が柔らかく保たれ、育毛剤の浸透も良くなります。
頭皮を健康に保つシャンプーの選び方と洗い方
育毛剤の効果を高めるには、その土台となる頭皮が清潔でなければなりません。シャンプーは、頭皮の汚れや余分な皮脂を落とすための重要なステップです。
洗い方のポイントは、「予洗い」と「すすぎ」です。シャンプーをつける前に、お湯だけで1〜2分かけて頭皮と髪をしっかり濡らし、表面の汚れを落とします(予洗い)。
その後、シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、指の腹で頭皮をマッサージするように優しく洗います。最も重要なのが「すすぎ」です。
シャンプー剤が頭皮に残ると、かゆみやフケ、炎症の原因となります。洗う時の倍の時間をかけるつもりで、ヌルつきが完全になくなるまで丁寧にすすぎましょう。
頭皮タイプ別シャンプー選びの目安
| 頭皮タイプ | 特徴 | 推奨されるシャンプー洗浄成分 | 
|---|---|---|
| 乾燥肌・敏感肌 | かゆみ、細かいフケが出やすい | アミノ酸系 (ココイルグルタミン酸~など) | 
| 脂性肌 (オイリー肌) | ベタつき、ニオイが気になる | 高級アルコール系 (ラウレス硫酸~など ※洗浄力高め) | 
| 普通肌 | 特にトラブルがない | アミノ酸系、または石けん系 | 
白髪染めと育毛剤の併用タイミング詳細
前述の通り、白髪染めと育毛剤は併用可能ですが、タイミングが重要です。特にアルカリ性のヘアカラーは頭皮への刺激が強いため、細心の注意が必要です。
白髪染め (ヘアカラー) と育毛剤の併用ステップ
| タイミング | 推奨されるケア | 注意点 | 
|---|---|---|
| 白髪染め 当日 | 育毛剤の使用は休止する | 染毛剤をしっかり洗い流す。頭皮は非常に敏感な状態。 | 
| 白髪染め 翌日~3日目 | 頭皮の状態を見ながら判断 | 赤み、かゆみ、ヒリヒリ感がある場合は、まだ使用を控える。 | 
| 白髪染め 4日目以降 | 頭皮に異常がなければ育毛剤を再開 | カラートリートメントの場合は、当日から併用可能な製品も多い。 | 
白髪と薄毛、両方の悩みに向き合う考え方
白髪と薄毛、どちらも見た目の印象に大きく関わるため、深刻な悩みとなりがちです。両方の問題に同時に直面した時、どのように考え、対処していけばよいのでしょうか。
悩みの優先順位をつける
まずは、自分が「今、どちらをより深刻に悩んでいるか」を整理してみましょう。
「白髪が数本あることより、明らかに地肌が透けて見える薄毛を何とかしたい」のか、「薄毛はそれほどでもないが、白髪が多すぎて老けて見えるのが嫌だ」なのか。悩みの優先順位によって、力を入れるべきケアが変わってきます。
薄毛の進行を止めたいのが最優先であれば、育毛剤でのケアに加え、AGAクリニックへの相談や発毛剤の使用を検討すべきです。
白髪の見た目をすぐにでも改善したいのであれば、白髪染めや白髪ぼかしといったテクニックを優先すべきです。
AGAのセルフチェックと早期対策の重要性
白髪は見た目の問題ですが、薄毛(AGA)は進行性の症状です。AGAは放置しておくと、ヘアサイクルが短縮し続け、毛母細胞が最終的に髪を作る能力を失ってしまいます。
そのため、AGAの疑いがある場合は、早期の対策が非常に重要です。
「生え際が後退してきた」「頭頂部が薄くなってきた」「髪にハリやコシがなくなり細くなった」「家族に薄毛の人がいる」といったサインに当てはまる場合は、AGAの可能性があります。
この場合、白髪対策と並行して、あるいはそれ以上に優先して、薄毛対策(育毛剤での予防、または専門医による治療)を開始することを推奨します。
白髪は「隠す」ケア、薄毛は「守る・育てる」ケア
白髪と薄毛へのアプローチは根本的に異なります。白髪対策の基本は、今ある白髪を「染めて隠す」または「カットする」といった、対症療法的なケアが中心です。
一方、薄毛対策は、今ある髪を「守り育て(育毛)」、抜け毛を「予防」し、場合によっては「発毛」を目指す、未来に向けたケアです。
この違いを認識し、育毛剤に「白髪を黒くする」という役割を期待するのではなく、「薄毛の進行を予防し、頭皮環境を整える」という本来の役割を全うしてもらうことが大切です。
悩み別のアプローチ方法
| 主な悩み | 優先すべきアプローチ | 具体的な対策例 | 
|---|---|---|
| 白髪が目立つ (薄毛は気にならない) | 見た目の改善 (隠す) | 白髪染め、カラートリートメント、白髪ぼかし | 
| 薄毛が進行 (白髪は気にならない) | 進行予防・発毛促進 (守る・育てる) | 育毛剤、発毛剤 (ミノキシジル)、AGAクリニック | 
| 両方気になる | 頭皮環境改善 + 個別対策 | 育毛剤 (頭皮ケア) + 白髪染め (見た目) + AGA対策 (進行度による) | 
Q&A
ここでは、白髪や育毛剤に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。
- 育毛剤を使い始めたら白髪が増えた気がします。
- 
A. 育毛剤の成分が白髪を増やすという直接的な因果関係は考えにくいです。いくつかの可能性が考えられます。 まず、育毛剤を使い始め、頭皮や髪への意識が高まったことで、それまで気づかなかった白髪が目につくようになったという心理的な要因です。 また、育毛剤によって頭皮環境が整いヘアサイクルに影響が出た場合、一時的に髪の生え変わり(初期脱毛など)が起こり、その過程で次に生えてくる予定だった白髪が表面に出てきた可能性もあります。 あるいは、単に育毛剤を使い始めたタイミングと、加齢などによって自然に白髪が増えるタイミングが重なっただけかもしれません。 
- 白髪を抜くと増えますか?薄毛にも関係しますか?
- 
「白髪を抜くと増える」というのは俗説で、医学的な根拠はありません。白髪を1本抜いても、その毛穴から生えてくる髪の色素が周囲の毛穴に影響を与えることはありません。 ただし、白髪を無理に抜くことは絶対におすすめできません。 抜く行為は毛根や毛穴、周囲の頭皮に強い負担をかけます。毛細血管が傷ついたり、炎症を起こして「毛嚢炎(もうのうえん)」になったりする危険性があります。 同じ毛穴から生えてくる次の髪の成長を妨げ、最悪の場合、その毛穴から髪が生えてこなくなる可能性もあり、薄毛のリスクを高めます。 気になる白髪は、抜かずに根元からハサミでカットするようにしてください。 
- 食事やサプリメントで白髪は改善しますか?
- 
髪の色素であるメラニンは、「チロシン」というアミノ酸を原料に、「チロシナーゼ」という酵素の働きによって作られます。この時、銅や亜鉛といったミネラルが補酵素として必要です。 また、頭皮の健康や血行を維持するためにはビタミン類も重要です。これらの栄養素が極端に不足すると、白髪の一因になる可能性はあります。 そのため、栄養バランスの取れた食事を心がけることは、白髪の「予防」という観点からは大切です。 しかし、すでに白髪になってしまった髪が、食事やサプリメントの摂取によって黒髪に戻ることを期待するのは難しいでしょう。 あくまで健康な髪を維持するための土台作りと考えるのが妥当です。 
- 育毛剤に副作用はありますか?
- 
育毛剤(医薬部外品)は、医薬品である発毛剤(ミノキシジルなど)に比べると、作用は穏やかであり、重篤な副作用の心配は低いとされています。 しかし、化粧品などと同様に、体質や頭皮の状態によってはアレルギー反応が起こる可能性があります。具体的には、使用した部分のかゆみ、赤み、発疹、かぶれ、フケなどです。 特にアルコール(エタノール)が多く含まれる製品は、敏感肌や乾燥肌の人には刺激になることがあります。使用前には必ずパッチテスト(腕の内側などで試す)を行うことを推奨します。 もし使用中に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、水で洗い流し、必要であれば皮膚科専門医に相談してください。 
Reference
YALE, Katerina; JUHASZ, Margit; ATANASKOVA MESINKOVSKA, Natasha. Medication-induced repigmentation of gray hair: a systematic review. Skin Appendage Disorders, 2020, 6.1: 1-10.
FENG, Zhaorui; QIN, Yi; JIANG, Guan. Reversing gray hair: inspiring the development of new therapies through research on hair pigmentation and repigmentation progress. International Journal of Biological Sciences, 2023, 19.14: 4588.
PANDHI, Deepika; KHANNA, Deepshikha. Premature graying of hair. Indian journal of dermatology, venereology and leprology, 2013, 79: 641.
MAHENDIRATTA, Saniya, et al. Premature graying of hair: Risk factors, co‐morbid conditions, pharmacotherapy and reversal—A systematic review and meta‐analysis. Dermatologic Therapy, 2020, 33.6: e13990.
ALIJANPOUR, Robabeh; BEJEHMIR, Arash Poorsattar; MOKMELI, Soheila. Successful white hair removal with combined coloring and intense pulsed light (IPL): A randomized clinical trial. Photomedicine and Laser Surgery, 2011, 29.11: 773-779.
DE TOLLENAERE, Morgane, et al. Global repigmentation strategy of grey hair follicles by targeting oxidative stress and stem cells protection. Applied Sciences, 2021, 11.4: 1533.
DO, Monika Kienanh, et al. Hair Graying: Mechanisms, Prevention, and Innovative Treatment Strategies–literature review. Quality in Sport, 2024, 22: 54296-54296.
YAMAGUCHI, Hiroki L.; YAMAGUCHI, Yuji; PEEVA, Elena. Hair regrowth in alopecia areata and re‐pigmentation in vitiligo in response to treatment: Commonalities and differences. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2025, 39.3: 498-511.
KUMAR, Anagha Bangalore; SHAMIM, Huma; NAGARAJU, Umashankar. Premature graying of hair: review with updates. International journal of trichology, 2018, 10.5: 198-203.
KAUR, Kiranjeet; KAUR, Rajveer; BALA, Indu. Therapeutics of premature hair graying: A long journey ahead. Journal of Cosmetic Dermatology, 2019, 18.5: 1206-1214.


 
		 
		