「髪が生える サプリ」と検索しているあなたは、サプリメントで本当に薄毛の悩みが解決するのか、その真実を知りたいと思っているはずです。
誇大広告のような情報に惑わされず、正しい知識を得たいと考えるのは当然のことです。
この記事では、育毛サプリが「嘘」と言われる理由と「本当」の役割、そして「発毛剤」として知られる医薬品との決定的な違いを詳しく解説します。
さらに、健やかな髪を育てるために必要な栄養素についても掘り下げ、あなたの疑問に明確に答えます。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
「サプリで髪が生える」は本当か?誤解と真実
薄毛に悩む多くの男性が、手軽に始められる対策としてサプリメントに注目しています。しかし、「サプリを飲むだけで髪がフサフサになる」といったイメージは、残念ながら現実とは異なります。
この見出しでは、サプリメントが持つ本来の役割と、薄毛対策におけるその位置づけについて、誤解と真実を明らかにします。
サプリメントの基本的な役割と位置づけ
まず理解しておくべき最も重要な点は、サプリメントは「食品」であるということです。法律上(健康増進法)、医薬品とは明確に区別されます。
医薬品が特定の病気の「治療」や「予防」を目的とするのに対し、サプリメントは日々の食事では不足しがちな栄養素を「補給」することを目的としています。
したがって、育毛サプリやヘアケアサプリと呼ばれる製品も、その本質は「髪や頭皮の健康維持に必要な栄養素を補う食品」です。
薄毛の原因(例えばAGA=男性型脱毛症)を直接治療したり、失われた毛髪を再生させたりする力はありません。
あくまで、髪が育ちやすい健やかな頭皮環境を維持するための「サポート役」と考えるのが正しい位置づけです。
「髪が生える」の定義 育毛・発毛の違い
「髪が生える」という言葉には、実は二つの異なる意味合いが含まれています。それは「育毛」と「発毛」です。
「育毛」とは、現在生えている髪を太く、強く、長く育てることを指します。髪の成長を促し、抜け毛を防ぎ、頭皮環境を良好に保つ取り組み全般を指します。
一方、「発毛」とは、毛母細胞が活動を停止し、髪が抜けてしまった毛穴から、新しい髪を再び生やすことを指します。これは医学的なアプローチが必要な領域です。
この違いを理解することは、薄毛対策を考える上で非常に重要です。
多くの育毛剤(医薬部外品)やサプリメントが目指すのは、主に「育毛」のサポートです。「発毛」をうたうことができるのは、臨床試験でその効果が認められた「医薬品」だけです。
サプリが直接「発毛」させるのは難しい理由
前述の通り、サプリメントは食品であり、医薬品のような直接的な発毛効果はありません。
AGA(男性型脱毛症)の主な原因は、男性ホルモン(テストステロン)が特定の酵素(5αリダクターゼ)によって、より強力な脱毛ホルモン(DHT=ジヒドロテストステロン)に変換されることです。
このDHTが毛乳頭細胞の受容体と結合し、髪の成長期(ヘアサイクル)を短縮させることで、髪が十分に育つ前に抜け落ち、薄毛が進行します。
サプリメントには、このDHTの生成を抑制したり、毛母細胞の活動を直接的に再開させたりするような、医学的に証明された強力な作用はありません。
サプリの役割は、あくまで髪の材料となる栄養を補給し、頭皮の血流や代謝をサポートすることで、「育毛」に適した体内環境を整えることにあるのです。
なぜサプリが薄毛対策として注目されるのか
では、直接的な発毛効果がないにもかかわらず、なぜ多くの育毛サプリが販売され、薄毛対策として注目を集めているのでしょうか。
それは、髪の健康が体内の栄養状態と密接に関連しているからです。サプリメントには、医薬品とは異なる形での重要な役割があります。
頭皮環境を整える栄養補給
髪は「畑の作物」に例えられます。良い作物を育てるには、良い土壌(頭皮)が必要です。頭皮が乾燥したり、皮脂が過剰に分泌されたり、血行が悪くなったりすると、健康な髪は育ちにくくなります。
ビタミンB群やビタミンE、亜鉛などの栄養素は、頭皮の新陳代謝を促し、皮脂のバランスを整え、血流をサポートする働きがあります。
サプリメントは、これらの栄養素を補給することで、頭皮環境を健やかに保つ手助けをします。これが、育毛におけるサプリの大きな役割の一つです。
髪の成長をサポートする成分
髪の毛の約90%は、「ケラチン」というタンパク質で構成されています。タンパク質が不足すれば、当然ながら髪は作られません。
ケラチンは18種類のアミノ酸から構成されていますが、特に「メチオニン」や「シスチン(システイン)」といった含硫アミノ酸が重要です。
サプリメントには、これらのアミノ酸や、アミノ酸からケラチンを再合成する過程で必要となる亜鉛やビタミンB群が含まれていることが多く、髪の「材料」を補給する役割を果たします。
現代人の食生活と栄養不足
現代社会では、外食、インスタント食品、加工食品の利用が増え、食生活が不規則になりがちです。
その結果、カロリーは十分でも、髪の成長に必要なビタミンやミネラル、良質なタンパク質が不足しているケースが少なくありません。
特に、過度なダイエットや偏った食生活は、栄養不足による薄毛(びまん性脱毛症など)を引き起こすこともあります。
自分で完璧な栄養バランスの食事を毎日続けるのが難しいと感じる人にとって、サプリメントは不足分を手軽に補える便利な手段として注目されています。
育毛サプリと医薬品(発毛剤)の決定的な違い
薄毛対策を考える際、多くの人が混同しがちなのが「育毛サプリ」と「医薬品(発毛剤)」です。これらは目的も作用も、そしてリスクも全く異なります。
この違いを明確に理解することが、自分に合った対策を選ぶ第一歩です。
目的の違い「サポート」対「治療」
最も大きな違いは、その「目的」です。
育毛サプリの目的は、あくまで「栄養補給」と「健康維持」です。食事の補助として、髪の成長や頭皮環境に必要な栄養素を補い、育毛を「サポート」します。いわば、守りのケア、環境整備です。
一方、医薬品(発毛剤やAGA治療薬)の目的は、「薄毛の治療」です。AGAなどの特定の原因に対し、医学的な作用機序(薬が効く仕組み)に基づいて、発毛を促進したり、抜け毛を抑制したりします。
こちらは、攻めのケア、直接的な介入です。
成分と作用の違い
目的に応じて、含まれる成分と作用も根本的に異なります。
育毛サプリの主な成分は、ビタミン、ミネラル(亜鉛など)、アミノ酸といった「栄養素」です。これらは体の機能を正常に保つために必要な成分です。
加えて、ノコギリヤシやイソフラボンなど、古くから健康維持に用いられてきた植物エキスなどが「サポート成分」として配合されることもあります。
一方、日本で薄毛治療用の医薬品として承認されている主な成分は、「ミノキシジル(外用薬)」、「フィナステリド(内服薬)」、「デュタステリド(内服薬)」です。
ミノキシジルは、元々高血圧の薬として開発され、血管を拡張し血流を改善する作用があります。頭皮に塗布することで毛母細胞の働きを活性化させ、発毛を促します。
フィナステリドとデュタステリドは、AGAの原因であるDHTの生成に必要な酵素(5αリダクターゼ)の働きを阻害します。これにより、ヘアサイクルを正常化させ、抜け毛を防ぎ、髪の成長を助けます。
入手方法と副作用のリスク
育毛サプリは「食品」扱いのため、ドラッグストアやインターネット通販などで誰でも比較的簡単に購入できます。正しく摂取する限り、重篤な副作用のリスクは低いとされています(ただし、アレルギーや過剰摂取には注意が必要です)。
医薬品は、その効果が認められている反面、「副作用」のリスクも伴います。
例えば、ミノキシジル外用薬では頭皮のかゆみやかぶれ、内服薬(フィナステリドなど)では性機能の低下や肝機能障害などが報告されています。
そのため、ミノキシジル外用薬の一部(低濃度のもの)はドラッグストアで購入できますが(第一類医薬品)、内服薬は医師の診断と処方が必要です。
サプリメントと医薬品の比較
| 項目 | 育毛サプリメント | 医薬品(発毛剤・AGA治療薬) |
|---|---|---|
| 分類 | 食品(健康食品) | 医薬品 |
| 目的 | 栄養補給・健康維持(育毛サポート) | 薄毛(AGAなど)の治療・発毛促進 |
| 主な成分 | ビタミン、ミネラル、アミノ酸、植物エキス等 | ミノキシジル、フィナステリド、デュタステリド等 |
| 入手方法 | 通販、ドラッグストア等 | 医師の処方、薬剤師の指導(第一類医薬品) |
| 副作用 | 比較的少ない(過剰摂取やアレルギーに注意) | 成分に応じたリスクあり(医師の管理が必要) |
髪の成長に重要とされる栄養素とは
サプリメントの役割が「栄養補給」である以上、どのような栄養素が髪の健康に必要なのかを知っておくことが大切です。
髪は体の一部であり、他の臓器や組織と同様に、日々の食事から得られる栄養によって作られています。特に重要な栄養素を解説します。
タンパク質(アミノ酸) 髪の主成分
私たちの髪の毛は、そのほとんどが「ケラチン」というタンパク質でできています。
タンパク質は、肉、魚、卵、大豆製品などに多く含まれていますが、体内で一度アミノ酸に分解されてから、再びケラチンとして合成されます。
このケラチンを構成するアミノ酸の中でも、特に重要なのが「L-シスチン」です。L-シスチンは髪の強度や弾力性を保つ役割があり、これが不足すると髪が細くなったり、脆くなったりする可能性があります。
L-シスチンは、体内で必須アミノ酸の「L-メチオニン」から合成されます。したがって、良質なタンパク質をバランスよく摂取することが、丈夫な髪の土台となります。
亜鉛 ミネラルの王様
亜鉛は、髪の健康において非常に重要なミネラルです。その最大の役割は、アミノ酸からケラチンを合成する際の「酵素」の働きを助けることです。
どれだけタンパク質を摂取しても、亜鉛が不足していると、効率よく髪の毛を作ることができません。
また、亜鉛は新陳代謝を活発にし、頭皮の健康を保つためにも必要です。さらに、AGAの原因となる5αリダクターゼの働きを抑制する可能性も示唆されていますが、これについてはまだ研究段階です。
亜鉛は牡蠣やレバー、牛肉(赤身)などに多く含まれますが、汗とともに失われやすく、また加工食品の摂取が多いと吸収が阻害されやすいため、不足しがちな栄養素の一つです。
ビタミンB群 代謝と血行をサポート
ビタミンB群は、単体ではなくチームとして働くことで、エネルギー代謝や細胞の再生をサポートします。髪にとっても重要な役割を担っています。
特に重要なのが「ビタミンB2」と「ビタミンB6」です。ビタミンB2は、皮膚や粘膜の健康維持を助け、頭皮の皮脂バランスを整える働きがあります。
不足すると脂漏性皮膚炎などを起こし、頭皮環境の悪化につながることもあります。ビタミンB6は、タンパク質の代謝(アミノ酸への分解・再合成)を助ける役割があり、ケラチンの合成に深く関わります。
また、「ビオチン」もビタミンB群の仲間で、皮膚や髪の健康を保つ働きで知られています。「パントテン酸(ビタミンB5)」も、多くの代謝に関わる重要なビタミンです。
主なビタミンB群と髪への働き
| ビタミンの種類 | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| ビタミンB2 | 皮脂分泌の調整、頭皮の健康維持 | レバー、うなぎ、卵、納豆 |
| ビタミンB6 | タンパク質(ケラチン)の代謝・合成を助ける | かつお、まぐろ、バナナ、鶏肉 |
| ビオチン (B7) | 皮膚や髪の健康維持を助ける | レバー、卵黄、ナッツ類 |
| パントテン酸 (B5) | エネルギー代謝の補酵素、ストレス緩和 | レバー、鶏肉、納豆、アボカド |
ビタミンE 抗酸化作用と血流
ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、その強力な「抗酸化作用」で知られています。抗酸化作用とは、体内で発生する活性酸素による細胞のサビつき(酸化)を防ぐ働きのことです。
頭皮の細胞が酸化すると、血行が悪くなったり、毛母細胞の働きが低下したりします。
ビタミンEは、この活性酸素から頭皮を守るとともに、末梢血管を拡張させて血流を良くする働きがあります。
頭皮の血流が改善すれば、毛母細胞に髪の成長に必要な栄養素や酸素が届きやすくなり、育毛環境が整います。アーモンドなどのナッツ類、植物油、アボカドなどに多く含まれます。
薄毛対策サプリに含まれる注目のサポート成分
基本的な栄養素に加えて、多くの育毛サプリには、特定の目的を持って配合される「サポート成分」があります。
これらは医薬品ではありませんが、男性の薄毛の要因にアプローチする可能性が研究されている成分です。
ノコギリヤシ
ノコギリヤシ(ソーパルメット)は、北米に自生するヤシ科の植物で、古くから北米先住民によって健康維持のために利用されてきました。近年、男性の薄毛対策サプリの成分として非常に注目されています。
その理由は、ノコギリヤシの果実エキスに含まれる成分が、AGAの原因となる酵素「5αリダクターゼ」の働きを阻害するのではないか、という研究報告があるためです。
医薬品のフィナステリドとは異なるアプローチですが、AGAの要因に働きかける可能性が期待されています。ただし、その効果は医薬品に比べて穏やかであり、あくまで食品成分としてのサポートです。
イソフラボン
イソフラボンは、主に大豆に含まれるポリフェノールの一種です。化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)と似ているため、「植物性エストロゲン」とも呼ばれます。
男性の薄毛(AGA)には男性ホルモンが関わっていますが、イソフラボンが体内で女性ホルモン様(よう)の働きをすることで、ホルモンバランスを整え、相対的に男性ホルモンの影響を抑える可能性が期待されています。
また、イソフラボンにも5αリダクターゼの働きを阻害する可能性を示唆する研究があります。
カプサイシン
カプサイシンは、唐辛子の辛味成分です。カプサイシンを摂取すると、体内の知覚神経が刺激され、IGF-1(インスリン様成長因子-1)という成長因子の分泌が促されるという研究があります。
IGF-1は、細胞の成長や再生を促す働きがあり、毛母細胞の活性化にも関わっていると考えられています。
また、カプサイシンには血行を促進する働きもあります。
前述のイソフラボンとカプサイシンを同時に摂取することで、IGF-1の産生をより高めるという報告もあり、この二つをセットで配合したサプリメントも見られます。
注目のサポート成分と期待される役割
| 成分名 | 期待される役割 | 特徴・由来 |
|---|---|---|
| ノコギリヤシ | 5αリダクターゼへのアプローチ | ヤシ科植物の果実エキス |
| イソフラボン | ホルモンバランスのサポート、5αリダクターゼへのアプローチ | 大豆などに含まれるポリフェノール |
| カプサイシン | 成長因子(IGF-1)のサポート、血行促進 | 唐辛子の辛味成分 |
育毛サプリの賢い選び方と注意点
市場には数多くの育毛サプリが存在し、どれを選べばよいか迷ってしまう人も多いでしょう。
医薬品と違って「効果」が保証されているわけではないからこそ、成分や品質を見極める「賢い選び方」が重要になります。
配合成分と含有量を確認する
サプリメントを選ぶ際、最も重要なのが「成分表示」の確認です。まず、前述したような髪の基本栄養素(亜鉛、ビタミンB群など)がしっかり含まれているかを確認します。
これらが不足していると、他のサポート成分を摂取しても土台がぐらついている状態になります。
次に、ノコギリヤシやイソフラボンなど、自分が期待するサポート成分が含まれているかを確認します。
その際、単に「配合している」という事実だけでなく、「含有量」が明記されている製品を選ぶことが大切です。含有量が少なすぎれば、期待するサポートを得られない可能性があります。
成分表示は、含有量が多い順に記載されているのが基本です。
安全性と品質(GMP認定など)
サプリメントは毎日口にするものですから、安全性と品質は絶対に譲れないポイントです。信頼できるメーカーの製品か、品質管理体制が整っているかを確認しましょう。
一つの目安となるのが「GMP(Good Manufacturing Practice)」認定です。
これは、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための製造工程管理基準です。
GMP認定工場で製造された製品は、品質管理のレベルが高いと判断できます。また、不要な着色料や保存料などの添加物が使われていないかもチェックポイントです。
サプリ選びのチェックポイント
| チェック項目 | 確認する理由 | 具体例 |
|---|---|---|
| 成分と含有量 | 必要な成分が十分な量入っているか確認するため | 亜鉛 ○mg、ノコギリヤシエキス ○mg など |
| 品質管理 | 安全に摂取できる製品か見極めるため | GMP認定工場での製造、国内生産 |
| 価格(継続性) | 長期間続けられる現実的な価格か判断するため | 1日あたりのコストを計算する |
継続しやすい価格か
サプリメントは、医薬品のように短期間で劇的な変化をもたらすものではありません。
ヘアサイクル(髪が生え変わる周期)を考えても、最低でも3ヶ月から6ヶ月は継続して摂取し、体内の栄養状態を良好に保つことが必要です。
そのため、いくら良い成分が含まれていても、経済的に負担が大きすぎて続けられない価格では意味がありません。
1ヶ月あたりのコスト、1日あたりのコストを計算し、自分が無理なく継続できる価格帯の製品を選びましょう。高価なサプリが必ずしも優れているとは限りません。
過剰摂取のリスクを理解する
「体に良いものなら、たくさん飲んだ方が効果がある」と考えるのは間違いです。
特に脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)やミネラル(特に亜鉛)は、体内に蓄積しやすいため、過剰摂取による健康被害(過剰症)を引き起こす可能性があります。
例えば、亜鉛の過剰摂取は、銅や鉄の吸収を妨げ、貧血や免疫力の低下を招くことがあります。ビタミンAの過剰摂取も、頭痛や吐き気、長期的には肝障害などを引き起こすことが知られています。
サプリメントを利用する際は、必ず製品に記載されている「1日の摂取目安量」を守り、他のサプリや食事とのバランスも考えることが重要です。
サプリ摂取時の主な注意点
- 脂溶性ビタミン(A, D, E, K)の過剰摂取
- ミネラル(特に亜鉛)の過剰摂取
- アレルギー成分の有無
サプリメントだけに頼らない総合的なヘアケア
育毛サプリは、あくまで薄毛対策の「補助」です。サプリを飲んでいるからといって、他の生活習慣が乱れていては、その効果も半減してしまいます。
健康な髪を育てるためには、体全体を健やかに保つ総合的なアプローチが必要です。
バランスの取れた食生活
サプリは栄養「補助」食品です。基本となるのは、日々の食事です。
髪の材料となるタンパク質(肉、魚、卵、大豆)、代謝を助けるビタミン(野菜、果物)、ミネラル(海藻、ナッツ)をバランスよく摂取することを第一に考えましょう。
特に、高脂肪・高カロリーな食事や、糖分の多いジャンクフード、アルコールの過剰摂取は避けるべきです。
これらは皮脂の過剰分泌を招いたり、血流を悪化させたり、髪に必要なビタミンやミネラルを浪費したりする原因となり、頭皮環境を悪化させます。
髪のために見直したい食習慣
| 推奨される食品群 | 避けるべき傾向 |
|---|---|
| タンパク質(赤身肉、鶏肉、魚、大豆) | 脂質の多いジャンクフード |
| ビタミン・ミネラル(緑黄色野菜、海藻) | 糖分の多い菓子類・清涼飲料水 |
| 良質な脂質(青魚、ナッツ類) | アルコールの過剰摂取 |
適切な睡眠とストレス管理
髪の成長は、夜間の睡眠中に活発になります。特に、入眠から最初の3時間程度に多く分泌される「成長ホルモン」は、毛母細胞の分裂を促し、髪の成長に深く関わっています。
睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられます。毎日6〜7時間程度の質の良い睡眠を確保するよう努めましょう。
また、過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させます。これにより頭皮の血流が悪化し、毛根に十分な栄養が届かなくなる可能性があります。
ストレスをゼロにすることは難しいですが、適度な運動や趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
生活習慣の見直しポイント
- バランスの取れた食事(特にタンパク質・ビタミン・ミネラル)
- 質の良い睡眠(6〜7時間目安)
- 適度な運動とストレス発散
正しいシャンプーと頭皮ケア
頭皮環境を清潔に保つことは、育毛の基本です。しかし、洗いすぎは逆効果です。皮脂を落としすぎると、頭皮が乾燥し、かえって皮脂の分泌が過剰になることがあります。
洗浄力の強すぎるシャンプーを避け、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選びましょう。
シャンプーは1日1回、夜に行うのが理想的です。指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗い、すすぎ残しがないよう十分注意します。
洗髪後はドライヤーでしっかり乾かし、頭皮の雑菌繁殖を防ぎましょう。頭皮マッサージを習慣にし、血行を促進することも有効なケアです。
Q&A
最後に、育毛サプリに関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で答えます。
- サプリはどれくらい続ければよいですか?
-
サプリメントは食品であり、即効性はありません。髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、新しい髪が成長し、その変化を実感できるようになるまでには時間がかかります。
一般的に、頭皮環境や体内の栄養状態が改善し、その影響が髪に現れるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続が必要とされます。
短期間で効果が出ないと諦めず、生活習慣の見直しと並行して、根気よく続けることが重要です。
- 医薬品と併用しても大丈夫ですか?
-
AGA(男性型脱毛症)の治療でフィナステリドやミノキシジルなどの医薬品を使用している場合、育毛サプリを併用すること自体は、基本的には可能です。
医薬品が「治療」を担い、サプリが「栄養サポート」を担うという考え方です。
ただし、サプリに含まれる成分(特にノコギリヤシなど)が、医薬品の働きに何らかの影響を与える可能性もゼロではありません。
また、肝臓に負担がかかる場合も考えられます。
医薬品を処方してもらっている医師に、現在使用している(または使用したい)サプリの成分を見せ、併用しても問題ないか必ず相談してください。
- サプリをやめるとまた薄くなりますか?
-
サプリメントは、あくまで不足しがちな栄養素を補うものです。
もし、あなたの薄毛や髪質の低下の原因が「栄養不足」にあった場合、サプリの摂取をやめれば、再び体は栄養不足の状態に戻る可能性があります。
その結果、髪のハリやコシが失われたり、抜け毛が増えたりするように感じるかもしれません。サプリに頼るだけでなく、根本的な食生活の改善を心がけ、健康な状態を維持することが大切です。
AGAが原因の場合、サプリをやめてもAGAの進行が直接早まるわけではありませんが、頭皮環境のサポートは失われます。
- 女性用のサプリを男性が飲んでもよいですか?
-
女性用の育毛サプリには、大豆イソフラボンやプラセンタなど、女性ホルモンをサポートする成分が多く含まれている傾向があります。
一方、男性用のサプリには、ノコギリヤシなど男性特有の悩みにアプローチする成分が含まれていることが多いです。
髪に必要な基本的な栄養素(亜鉛、ビタミン、アミノ酸)は男女共通ですが、ホルモンバランスへのアプローチが異なります。
男性が女性用サプリを飲んで大きな問題が起こることは稀ですが、男性特有の薄毛(AGA)対策を考えるならば、男性向けに設計されたサプリを選ぶ方が合理的です。
Reference
DRAKE, Lara, et al. Evaluation of the safety and effectiveness of nutritional supplements for treating hair loss: a systematic review. JAMA dermatology, 2023, 159.1: 79-86.
ZANZOTTERA, F., et al. Efficacy of a nutritional supplement, standardized in fatty acids and phytosterols, on hair loss and hair health in both women and men. J Cosmo Trichol, 2017, 3.121: 2.
RAJPUT, Rajendrasingh. A scientific hypothesis on the role of nutritional supplements for effective management of hair loss and promoting hair regrowth. J Nutrition Health Food Sci, 2018, 6.3: 1-11.
GUO, Emily L.; KATTA, Rajani. Diet and hair loss: effects of nutrient deficiency and supplement use. Dermatology practical & conceptual, 2017, 7.1: 1.
MILANI, Massimo; COLOMBO, Francesca; GFM‐O‐TRIAL INVESTIGATORS GROUP: CHIARA BARALDO (PADOVA), MAURO BARBARESCHI (MILANO), PAOLO CHIECO (RUVO DI PUGLIA), LAURA COLONNA (ROMA), MANDEL VICTOR DESMOND (MODENA), MARIA CRISTINA FIORUCCI (GENOVA). Efficacy and tolerability of an oral supplement containing amino acids, iron, selenium, and marine hydrolyzed collagen in subjects with hair loss (androgenetic alopecia, AGA or FAGA or telogen effluvium). A prospective, randomized, 3‐month, controlled, assessor‐blinded study. Skin Research and Technology, 2023, 29.6: e13381.
BHATIA, Neal, et al. A Randomized, Double‐Blind, Placebo‐Controlled Study to Evaluate the Safety and Efficacy of a Nutraceutical Supplement With Standardized Botanicals in Males With Thinning Hair. Journal of Cosmetic Dermatology, 2025, 24.1: e16778.
HORNFELDT, Carl S. Growing evidence of the beneficial effects of a marine protein‐based dietary supplement for treating hair loss. Journal of Cosmetic Dermatology, 2018, 17.2: 209-213.
YORK, Katherine, et al. A review of the treatment of male pattern hair loss. Expert opinion on pharmacotherapy, 2020, 21.5: 603-612.
AHMED, Azhar, et al. Herbal Remedies for Hair Loss: A Review of Efficacy and Safety. Skin Appendage Disorders, 2025.
OLSEN, Elise A., et al. Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss. Journal of the American Academy of Dermatology, 2005, 52.2: 301-311.

