最近、抜け毛が増えた、髪にハリやコシがなくなってきた、あるいは白髪が目立ち始めたと感じていませんか。
男性にとって髪の悩みは深刻です。その対策として育毛剤の使用と並行し、多くの方が頭皮マッサージを試みています。
しかし、ただやみくもにマッサージするだけでは、その効果を十分に引き出せないかもしれません。
頭皮には、育毛や薄毛、白髪、さらには日々のデスクワークによる眼精疲労にもアプローチできる「ツボ」が数多く存在します。
この記事では、東洋医学の観点から頭皮マッサージ(育毛)に効くツボについて、その位置や押し方、期待できる効果を詳しく解説します。
正しい知識を身につけ、日々のセルフケアを格上げしましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
頭皮マッサージとツボ押しの基本
頭皮ケアとしてマッサージを取り入れる際、単に頭皮を動かすだけでなく、「ツボ」を意識することが重要です。
ここでは、頭皮マッサージがなぜ育毛に必要なのか、そしてツボ押しが体にどのような影響を与えるのか、その基本的な関係性を解説します。
なぜ頭皮マッサージが育毛につながるのか
育毛の鍵は、毛髪を作り出す「毛母細胞」にあります。毛母細胞は、毛細血管から運ばれる酸素や栄養素を受け取って分裂・増殖し、髪の毛を成長させます。
しかし、頭皮が硬くなると、その下にある毛細血管が圧迫され、血行不良を引き起こすことがあります。
頭皮が硬くなる原因は様々です。ストレスによる筋肉の緊張、長時間のデスクワークによる眼精疲労、睡眠不足、栄養の偏りなどが挙げられます。
頭皮マッサージは、この硬くなった頭皮を物理的にほぐし、弾力性を取り戻すための有効な手段です。頭皮を柔らかくすることで血行を促進し、毛母細胞へ必要な栄養素を届けやすくする環境を整えます。
これが、頭皮マッサージが育毛につながる基本的な理由です。
ツボ押しがもたらす身体への影響
ツボ(経穴)は、東洋医学において「気」と「血」の通り道である「経絡」上にある特定のポイントを指します。
全身には数百のツボが存在し、それぞれが特定の臓器や器官と深く関連していると考えられています。
ツボを適切に刺激(指圧)すると、その刺激が神経を通じて脳に伝達され、自律神経のバランスを整えたり、血行を促進したりする反応を引き起こします。
また、ツボ押しは筋肉の緊張を緩和し、リラクゼーション効果をもたらします。
頭皮のツボを刺激することは、単に頭皮の血行を良くするだけでなく、全身の調子を整え、育毛に適した体内環境をサポートすることにもつながるのです。
頭皮マッサージを行うタイミング
頭皮マッサージの効果を高めるためには、行うタイミングも大切です。最もおすすめのタイミングは、体がリラックスし、血行が良くなっている「入浴後」です。
シャンプーで頭皮の汚れを落とした清潔な状態で、髪を乾かす前に行うと良いでしょう。体が温まっているため頭皮も柔らかく、マッサージの効果が出やすい状態です。
また、朝のスタイリング前や、日中のリフレッシュしたい時、就寝前のリラックスタイムなども適しています。
ただし、食後すぐや飲酒時は、消化のために血液が胃腸に集中しているため、マッサージは避けるのが賢明です。自分のライフスタイルに合わせて、無理なく続けられる時間を見つけましょう。
マッサージの前に準備すること
効果的な頭皮マッサージを行うために、いくつかの準備を整えましょう。まず、爪が伸びていると頭皮を傷つける原因になります。爪は短く切り、清潔にしておきましょう。
次に、マッサージを行う環境です。リラックスできる静かな場所を選び、楽な姿勢をとりましょう。座っていても、寝転んでいても構いません。
深呼吸を数回行い、心身の緊張をほぐしてから始めると、より効果的です。
また、指の滑りを良くし、頭皮への摩擦を減らすために、専用の頭皮用マッサージオイルやローション、あるいは育毛剤を使用することも推奨します。
特に育毛剤を使用する場合は、マッサージによってその成分の浸透を助ける効果も期待できます。
育毛・薄毛対策に重要な頭部のツボ
頭部には多くのツボが集中していますが、特に育毛や薄毛対策に関心がある男性が注目すべきツボがあります。
これらのツボは、頭皮の血行を促進し、髪の成長に必要な環境を整えるサポートをします。代表的なツボの位置と押し方を学びましょう。
百会(ひゃくえ) 全身の気が集まる万能のツボ
「百会」は、その名の通り「百(多く)の経路が会う(交わる)」場所とされ、全身の様々な不調に対応する万能のツボとして知られています。
頭のてっぺん、左右の耳の穴を結んだ線と、顔の中心線(鼻筋から頭頂部へ)が交差する点にあります。少しへこんでいる部分を探すと分かりやすいでしょう。
このツボは、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。ストレスによる頭皮の緊張や血行不良は、薄毛の大きな原因の一つです。
百会を刺激することで、心身ともにリラックスさせ、頭皮への血流を促します。
両手の中指や人差し指を重ねて、心地よい強さで垂直にゆっくりと押し、「痛気持ちいい」と感じる程度で5秒ほど押し、ゆっくり離す動作を数回繰り返します。
角孫(かくそん) 血行促進と抜け毛予防
「角孫」は、耳のすぐ上、耳を前に折りたたんだ時に耳の先端が当たる、髪の生え際あたりに位置するツボです。左右両方にあります。
この部分は、側頭筋という大きな筋肉があり、ストレスや歯の食いしばりなどで硬くなりやすい場所です。
角孫を刺激することで、側頭部や頭部全体の血行が良くなり、毛根に栄養が届きやすくなると言われています。抜け毛予防や、髪のハリ・コシの改善にもつながります。
人差し指や中指の腹を使って、円を描くように優しくもみほぐしたり、ゆっくりと圧をかけたりすると良いでしょう。特に側頭部が硬いと感じる人におすすめです。
湧泉(ゆうせん) 頭皮の血流を促す足裏のツボ
意外に思うかもしれませんが、育毛に大切なツボは頭部だけではありません。足の裏にある「湧泉」もその一つです。「泉が湧く」という名前の通り、生命エネルギー(気)が湧き出る場所とされています。
足の指を曲げたときに、足裏の中央よりやや上(人差し指と中指の骨の間)にできるくぼみにあります。
湧泉は、全身の血行を促進し、特に下半身に溜まりがちな血液を上半身(頭部)へ巡らせるポンプのような役割をサポートします。
東洋医学では「髪は血の余り(けつよ)」とも言い、全身の血流が良くないと健康な髪は育ちません。両手の親指で強めに押し込むか、ゴルフボールなどを踏んで刺激するのも簡単です。
頭皮マッサージと合わせて行いたいツボです。
育毛・薄毛対策のツボ早わかり
| ツボの名前 | 位置の目安 | 期待できる主な効果 |
|---|---|---|
| 百会(ひゃくえ) | 頭のてっぺん(左右の耳と鼻筋の交差点) | 自律神経調整、ストレス緩和、頭部全体の血行促進 |
| 角孫(かくそん) | 耳を折った先端が当たる生え際 | 側頭部の血行促進、抜け毛予防、リラックス |
| 湧泉(ゆうせん) | 足裏のくぼみ(指を曲げた時) | 全身の血行促進、頭部への血流サポート、疲労回復 |
白髪対策にアプローチするツボ
白髪は、髪の色素を作る「メラノサイト」の働きが低下したり、消失したりすることで生じます。加齢が主な原因ですが、ストレスや栄養不足、血行不良も大きく関係します。
東洋医学では、白髪は特に「腎」の機能低下と関連が深いと考えられています。「腎」は生命エネルギーや成長・生殖を司り、「髪は腎の華」とも呼ばれます。
腎の機能をサポートするツボを刺激し、白髪対策にアプローチしましょう。
腎兪(じんゆ) 髪の栄養と関連する腰のツボ
「腎兪」は、その名の通り「腎」の気を補うとされる重要なツボです。腰にあり、ウエストラインの高さで、背骨から左右それぞれ指2本分(約3センチ)ほど外側にあります。
腰に手を当てたとき、親指が自然に当たるあたりを探してみましょう。
腎の機能が低下すると、髪に必要な栄養が届きにくくなり、白髪や抜け毛が増えやすくなると考えられています。
腎兪を刺激することで、腎の働きをサポートし、エイジングケアや疲労回復を助けます。両手の親指をツボに当て、上半身を少し後ろに反らしながら息を吐き、ゆっくりと圧をかけます。
腰回りを温めながら刺激するのも効果的です。
気血(きけつ) 頭皮の栄養状態をサポート
「気血」というツボは、文献によっては場所が異なりますが、一般的には頭皮の栄養状態に関わるツボとして、耳の上部、角孫からやや後方に位置するツボ群を指すことがあります。
このあたりを広範囲に刺激することで、頭皮の「気」と「血」の巡りを良くする目的があります。
頭皮マッサージの際に、側頭部から後頭部にかけて、指の腹で小さな円を描くように優しくもみほぐしましょう。
特定の1点を強く押すというよりは、血行が悪くなりやすい耳周りを全体的にほぐすイメージです。このエリアの血流が改善すると、メラノサイトへ栄養が運ばれやすくなる環境が整います。
白髪と頭皮環境の関係
白髪の原因は一つではありませんが、頭皮環境の悪化がメラノサイトの働きを妨げる一因になることは間違いありません。
頭皮の血行不良は、メラノサイトが色素を作るために必要な栄養素や酸素を不足させます。また、ストレスや紫外線による活性酸素の増加も、メラノサイトを傷つける原因となります。
ツボ押しやマッサージは、あくまで白髪対策のサポートです。
これらに加えて、頭皮を清潔に保つこと、紫外線対策を行うこと、そして髪の色素の原料となるタンパク質やチロシン、ミネラル(特に銅)などを食事からバランス良く摂取することが、白髪対策には重要です。
白髪対策で注目したいツボ
| ツボの名前 | 位置の目安 | 期待できる主な効果 |
|---|---|---|
| 腎兪(じんゆ) | 腰、背骨から指2本分外側(ウエストライン) | 「腎」の機能サポート、エイジングケア、疲労回復 |
| 気血(きけつ) | 耳の上部から後方(側頭部)の広範囲 | 頭皮の気血の巡りを改善、頭皮の栄養状態サポート |
眼精疲労と頭皮の硬さに関わるツボ
現代の男性は、仕事でのパソコン作業やスマートフォンの長時間使用により、深刻な「眼精疲労」に悩まされていることが多いです。
目の疲れは、単に目だけの問題にとどまらず、頭皮の硬さや血行不良を引き起こし、結果として薄毛や抜け毛に影響を与える可能性があります。
ここでは、眼精疲労の緩和と頭皮ケアに関連するツボを紹介します。
太陽(たいよう) こめかみの疲れを和らげる
「太陽」は、目の疲れを感じた時に無意識に押さえていることが多い、こめかみにあるツボです。眉尻と目尻を結んだ線の中央から、やや後ろ(指1本分)にあるくぼみです。
このツボは、目の周辺や側頭部の血流を良くし、緊張をほぐす効果があります。眼精疲労からくる頭痛や、目の重さを感じるときに刺激すると、スッキリとした感覚を得られるでしょう。
人差し指か中指の腹を当て、強すぎない力で円を描くように優しくマッサージするか、ゆっくりと圧をかけて5秒ほどキープし、離す動作を繰り返します。
風池(ふうち) 首筋のコリと目の疲れに
「風池」は、後頭部、首の付け根にあるツボです。髪の生え際で、首の後ろにある太い2本の筋肉(僧帽筋)の外側にあるくぼみに位置します。左右両方にあります。
「風」は東洋医学で「邪気(病気の原因)」を意味し、それが「池(たまる場所)」とされています。
風池は、首や肩のコリ、眼精疲労、頭痛、鼻づまりなど、頭部全般の不調に有効なツボです。この部分の血流が滞ると、頭部全体への血流が悪くなり、頭皮も硬くなります。
両手の親指をツボに当て、他の4本の指で頭を支えるように持ちます。息を吐きながら、頭の重みを利用して親指でゆっくりと押し上げるように刺激します。非常にリラックス効果の高いツボです。
完骨(かんこつ) 頭痛や眼精疲労の緩和
「完骨」は、耳の後ろにある出っ張った骨(乳様突起)の下端から、指1本分後ろにあるくぼみに位置します。風池よりもやや外側(耳側)にあります。
このツボも、首筋の緊張をほぐし、頭部への血流を改善する効果が期待できます。特に、眼精疲労からくる側頭部の頭痛や、めまい、耳鳴りなどにも使われるツボです。
風池と同様に、親指で頭を支えるように持ち、心地よい圧で押し上げるように刺激します。首周りのデリケートな部分なので、強く押しすぎないよう注意しましょう。
目の疲れが頭皮に与える影響
目を使うとき、私たちは目の周りだけでなく、首や肩、そして側頭部の筋肉も緊張させています。長時間のデスクワークが続くと、これらの筋肉が持続的に緊張し、硬くなります。
特に側頭部や後頭部の筋肉が硬くなると、その上にある頭皮(特に側頭部や後頭部)への血流が直接的に悪化します。
頭皮の血流が悪くなれば、毛母細胞への栄養供給が滞り、健康な髪の成長が妨げられます。これが、眼精疲労が薄毛や抜け毛の間接的な原因となり得る理由です。
育毛を考える上で、目の疲れを溜めないこと、そしてこめかみや首筋のツボをほぐして血流を確保することは、非常に重要なケアと言えます。
効果を高める頭皮マッサージの正しいやり方
ツボの位置を知ったら、次はそれを活かす正しいマッサージの方法を身につけましょう。
力を入れすぎたり、やり方が間違っていたりすると、かえって頭皮を傷つけたり、効果が半減したりすることもあります。
育毛効果を最大限に引き出すためのポイントを押さえましょう。
ツボ押しの強さと時間の目安
ツボ押しで最も大切なのは「強さ」です。よく「痛いほど効く」と誤解されがちですが、それは間違いです。
強すぎる刺激は、筋肉や神経を緊張させ、防御反応として血管を収縮させてしまう可能性があります。また、毛細血管を傷つけることにもなりかねません。
目安は「痛気持ちいい」と感じる強さです。リラックスして深呼吸ができる程度の圧を、ゆっくりとかけます。
1ヶ所のツボを押す時間は、5秒程度を目安にし、それを3〜5回繰り返します。頭皮マッサージ全体としては、1回あたり5分程度で十分です。
毎日続けることが何よりも大切なので、無理のない範囲で行いましょう。
指の腹を使った優しいマッサージ
頭皮マッサージの基本は、指の「腹」を使うことです。爪を立てて頭皮をガリガリと掻くようなマッサージは、頭皮を傷つけ、炎症やフケの原因となります。絶対にやめましょう。
両手の指の腹を頭皮にしっかりと密着させます。そして、頭皮自体を動かすイメージでマッサージします。
指が頭皮の上を滑るのではなく、指の腹は固定したまま、頭蓋骨から頭皮を剥がすように動かすのがコツです。
生え際から頭頂部へ、側頭部(耳の上)から頭頂部へ、後頭部(首の付け根)から頭頂部へと、下から上へ向かって血流を促すように行うのが効果的です。
マッサージオイルやローションの活用
乾いた頭皮を直接マッサージすると、摩擦が大きくなり、髪が絡まったり、頭皮に負担がかかったりすることがあります。
指の滑りを良くするために、頭皮用のマッサージオイルやローション、あるいは育毛剤を活用しましょう。
特に育毛剤を使用する場合、マッサージ前(またはマッサージと同時に)塗布することで、有効成分を頭皮に浸透させやすくなるというメリットがあります。
育毛剤を頭皮に塗布した後、指の腹を使って優しくすり込みながら、そのままツボ押しやマッサージに移行すると効率的です。
ただし、製品によって推奨される使用タイミングが異なる場合があるため、説明書を確認しましょう。
頭皮マッサージの注意点
| 項目 | 注意点 | 理由 |
|---|---|---|
| 爪 | 必ず短く切る | 頭皮を傷つけ、炎症を引き起こすため |
| 強さ | 「痛気持ちいい」程度。強く押しすぎない | 強すぎると筋肉が緊張し、血管が収縮するため |
| 頻度と時間 | 1回5分程度、毎日続けることが理想 | 短時間でも継続することが効果につながるため |
| タイミング | 食後すぐや飲酒時は避ける | 消化活動を妨げたり、体に負担がかかったりするため |
| 頭皮の状態 | 炎症や湿疹、傷がある場合は行わない | 症状を悪化させる危険性があるため |
頭皮マッサージと併用したい生活習慣
頭皮マッサージやツボ押しは、育毛のための強力なサポートとなりますが、それだけで十分ではありません。健康な髪は、健康な体から生まれます。
育毛剤の効果やマッサージの効果を最大限に高めるためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。
質の高い睡眠の確保
髪の毛は、私たちが寝ている間に成長します。特に、入眠後3時間ほどに多く分泌される「成長ホルモン」は、毛母細胞の分裂を活発にし、髪の成長を促すために重要な役割を果たします。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低かったりすると、成長ホルモンの分泌が妨げられます。結果として、髪が十分に成長できなかったり、頭皮の修復が追いつかなかったりします。
毎日7時間程度の睡眠時間を確保し、就寝前はスマートフォンやパソコンの使用を控えてリラックスするなど、質の高い睡眠を心がけましょう。
バランスの取れた食事
髪の毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。そのため、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)が不足すると、健康な髪は作られません。
しかし、タンパク質だけを摂取すれば良いわけではありません。
タンパク質を髪に変えるためには、ビタミンやミネラルがサポート役として必要です。
特に、頭皮の血行を良くするビタミンE、頭皮の新陳代謝を助けるビタミンB群、そしてタンパク質の合成を助けるミネラルである「亜鉛」は、育毛にとって特に重要です。
特定の食品に偏らず、バランスの取れた食事を意識することが大切です。外食やコンビニ食が多い男性は、特に意識して野菜や海藻類を取り入れましょう。
髪に必要な栄養素
- タンパク質(ケラチン)
- 亜鉛
- ビタミンB群
- ビタミンE
ストレス管理の方法
ストレスは、育毛の大敵です。強いストレスを感じると、自律神経のうち交感神経が優位になり、血管が収縮します。これにより、頭皮の血流が慢性的に悪化し、毛母細胞に栄養が届きにくくなります。
また、ストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、男性ホルモンの影響を受けやすくする可能性もあります。
現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、自分なりの解消法を見つけることが重要です。
適度な運動をする、趣味に没頭する時間を作る、ゆっくり入浴するなど、意識的にリラックスする時間を取り入れましょう。
頭皮マッサージ自体も、副交感神経を優位にし、ストレスを緩和する優れた方法の一つです。
育毛剤の正しい使用法
薄毛や抜け毛が気になる場合、育毛剤の使用は非常に有効な対策です。しかし、育毛剤も正しく使わなければ、その効果を十分に発揮できません。
まず、製品の説明書に記載されている使用量と使用回数を守ることが基本です。
多くの場合、朝晩2回、清潔な頭皮に使用することが推奨されます。シャンプー後は、髪をしっかりと乾かしてから(ただし、乾かしすぎない程度に)塗布しましょう。
頭皮マッサージと併用する場合は、育毛剤を塗布した後にマッサージを行うと、成分の浸透を助けることができます。頭皮のツボを刺激しながら、育毛剤を頭皮全体に行き渡らせるイメージで行いましょう。
ツボ押し以外の頭皮ケア方法
頭皮マッサージやツボ押しは血行促進に有効ですが、健康な頭皮環境を維持するためには、日々の基本的なケアも同様に重要です。
特に、毛穴の汚れや皮脂の詰まりは、育毛剤の浸透を妨げ、髪の成長を阻害する原因となります。ツボ押しと合わせて行いたい、基本的な頭皮ケアの方法を見直してみましょう。
正しいシャンプーの手順
毎日のシャンプーは、頭皮ケアの基本中の基本です。しかし、洗い方が間違っていると、必要な皮脂まで取りすぎて乾燥を招いたり、逆に汚れが残って毛穴を詰まらせたりします。
まず、シャンプーをつける前に、お湯(ぬるま湯が基本)で頭皮と髪をしっかりと予洗いします。これだけで汚れの多くは落ちます。次に、シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮につけます。
そして、爪を立てずに指の腹を使って、頭皮を優しくマッサージするように洗います。すすぎは最も重要で、泡が残らないよう、洗う時間の2倍の時間をかけるつもりで徹底的に洗い流しましょう。
頭皮クレンジングの重要性
通常のシャンプーでは落としきれない、毛穴の奥に詰まった皮脂(角栓)や古い角質、整髪料の残りなどは、頭皮の健康を損ねる原因となります。
これらが酸化すると、臭いや炎症を引き起こし、健康な髪の妨げになります。
そこで、週に1〜2回程度、専用の頭皮クレンジングオイルやスカルプクレンザーを使ったスペシャルケアを取り入れることをおすすめします。
シャンプー前に使用し、毛穴の汚れを浮かせてから洗い流すことで、頭皮をリセットできます。育毛剤の浸透も良くなるため、育毛ケアを行っている方には特に有効です。
ブラッシングで血行促進
ブラッシングは、女性が行うものだと思っていませんか。男性にとっても、ブラッシングは優れた頭皮ケアの一つです。
髪のほこりや汚れを落とすだけでなく、ブラシの先が頭皮に適度な刺激を与え、血行を促進するマッサージ効果があります。
| ブラッシングの目的 | 期待できる効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 汚れ除去 | 髪と頭皮のほこりやフケを浮かす | シャンプー前に行うのが効果的 |
| 血行促進 | ブラシの刺激によるマッサージ効果 | 頭皮を傷つけないよう、優しく行う |
| 髪のツヤ | 皮脂を髪全体に行き渡らせる | 清潔なブラシを使用する |
使用するブラシは、先端が丸く、クッション性のあるスカルプブラシやパドルブラシがおすすめです。頭皮を叩くのではなく、優しくとかすように行いましょう。
頭皮ケアアイテムの選び方
現在、男性向けの頭皮ケアアイテムはシャンプーから育毛剤、クレンジング剤まで多岐にわたります。自分の頭皮の状態に合わせて選ぶことが重要です。
| 頭皮タイプ | 特徴 | おすすめのアイテム選び |
|---|---|---|
| 脂性肌(オイリー) | ベタつきやすい、毛穴が詰まりやすい | 洗浄力がやや高めのアミノ酸系シャンプー、皮脂抑制成分配合のローション |
| 乾燥肌(ドライ) | カサカサする、フケが出やすい | 洗浄力がマイルドなアミノ酸系シャンプー、保湿成分(セラミドなど)配合のローション |
| 敏感肌 | 刺激を感じやすい、赤みが出やすい | 無添加・低刺激処方、アルコールフリーのシャンプーや育毛剤 |
自分の頭皮がどのタイプかわからない場合は、専門のサロンやクリニックで相談するのも良いでしょう。
育毛剤を選ぶ際も、含まれている有効成分(血行促進、毛母細胞活性化など)を確認し、自分の目的に合ったものを選びましょう。
よくある質問
ここでは、頭皮マッサージやツボ押しに関して、多くの男性が抱く疑問についてお答えします。
- ツボ押しはどれくらいの期間続ければ効果が出ますか?
-
効果の実感には個人差が大きく、一概に「これだけ」とは言えません。頭皮マッサージやツボ押しは、薬のように即効性があるものではなく、頭皮環境をじっくりと改善していくためのケアです。
髪には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、新しい髪が生えて成長し、抜け落ちるまでには数年かかります。育毛ケアの効果は、このサイクルに沿ってゆっくりと現れます。
まずは3ヶ月から6ヶ月、毎日コツコツと続けることを目標にしてください。
すぐに抜け毛が減ったり、髪が増えたりしなくても、頭皮が柔らかくなってきた、頭がスッキリするといった変化を感じることはできるはずです。
その変化を感じることが、継続のモチベーションになります。
- ツボ押しは痛いほうが効きますか?
-
いいえ、それは誤解です。前述の通り、強すぎる刺激は逆効果になる可能性があります。
痛みを感じるほどの圧は、体が「攻撃された」と認識し、筋肉を硬直させ、血管を収縮させてしまいます。これでは血行を促進するどころか、妨げてしまいます。
ツボ押しは「痛い」ではなく、「痛気持ちいい」または「心地よい」と感じる強さが適しています。リラックスした状態で深呼吸をしながら、ゆっくりと圧をかけ、ゆっくりと離す。
このリズムが、副交感神経を優位にし、血流を良くする正しい刺激です。特に頭皮はデリケートなので、優しく扱うことを心がけてください。
- 頭皮マッサージをしてはいけない時はありますか?
-
はい、あります。まず、頭皮にニキビや湿疹、炎症、かゆみ、傷などがある場合は、マッサージの刺激によって症状が悪化する可能性があるため、行うべきではありません。
これらの症状が治まるのを待つか、皮膚科専門医に相談してください。
また、体調が優れない時、発熱している時、飲酒後、満腹時なども避けましょう。血行が良くなることで、かえって体に負担がかかることがあります。
日焼けで頭皮がヒリヒリしている時も、刺激になるので控えてください。自分の体調や頭皮の状態をよく観察し、無理のない範囲で行うことが大切です。
- 育毛剤はツボ押しマッサージの前と後、どちらで使うのが良いですか?
-
一般的には、育毛剤を頭皮に塗布した「後」にマッサージを行う、あるいはマッサージと「同時」に行うことを推奨する製品が多いです。
理由は、マッサージによって頭皮の血行が良くなることで、育毛剤の有効成分が毛根により深く浸透しやすくなると期待できるためです。
具体的な手順としては、まずシャンプー後、タオルドライで頭皮の水分をしっかり拭き取ります(ただし乾かしすぎない)。次に、育毛剤を頭皮の気になる部分に塗布します。
そして、塗布した育毛剤を頭皮全体に広げるように、指の腹を使って優しくマッサージします。この時に「百会」や「角孫」などのツボを意識して刺激すると、より効果的です。
ただし、製品によっては特定の使用方法が指示されている場合もありますので、必ず説明書を確認してください。
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