鏡を見るたび、以前より生え際が後退しているように感じる。特に20代という若さで「もしかしてM字はげ?」と不安になっていませんか。その不安、一人で抱え込む必要はありません。
この記事では、20代で生え際の後退に悩む方へ、M字はげの基準や自分でできるセルフチェック法、そしてAGA(男性型脱毛症)との関係性や具体的な対策について詳しく解説します。
この記事を読むことで、ご自身の現状を客観的に把握し、今後とるべき行動が明確になります。不安を解消し、前向きな一歩を踏み出すために、早期の対策が重要です。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
20代で生え際が後退?M字はげの基準とは
20代で生え際の後退を感じると、それが一時的なものなのか、いわゆる「M字はげ」の始まりなのか、非常に気になるものです。
M字はげとは、生え際の両サイド(こめかみの上あたり)が後退し、正面から見たときにアルファベットの「M」の字のように見える状態を指します。
すべての人に当てはまる明確な定義はありませんが、一般的に認識されている基準や特徴があります。
M字はげとはどのような状態か
M字はげは、主に生え際の前頭部、特に側頭部の上部(いわゆる「剃り込み」部分)から薄毛が進行する状態です。頭頂部から薄くなる「O字型」や、全体的に薄くなる「U字型」とは区別されます。
20代であっても、このM字型に生え際が後退し始めるケースは少なくありません。
M字はげ進行度の目安
M字はげの進行度合いを測る絶対的な基準はありませんが、状態を把握するための一つの目安として、以下のように分類して考えることがあります。
| 進行度の目安 | 状態の説明 | 20代での留意点 |
|---|---|---|
| 初期段階 | 以前と比べて剃り込み部分がわずかに深くなったと感じる。髪型で隠せる程度。 | 最も気づきにくいが、対策を始めるべき重要な時期。 |
| 中期段階 | 誰が見ても生え際が「M」字になっているのがわかる。額が広く見える。 | セルフケアと並行し、専門家への相談も視野に入れる時期。 |
| 進行段階 | M字部分の後退がさらに進み、頭頂部の薄毛と繋がりそうになる。 | 早急な対策が必要。自己判断は難しい場合が多い。 |
正常な生え際との違い
正常な生え際とM字はげの境界線は、実は曖昧です。生まれつき額が広い人や、生え際がM字型(富士額など)の人もいます。重要なのは「以前と比べてどう変化したか」です。
生まれつきの形ではなく、時間とともに生え際が後退している場合、それはM字はげの進行が疑われるサインとなります。特に、産毛が減り、生え際のラインが明確でなくなってきたら注意が必要です。
20代における生え際後退の現状
かつて薄毛の悩みは中高年層のものが中心でしたが、近年は20代で生え際の後退を気にする人が増えている傾向にあります。
食生活や生活習慣の変化、ストレス社会の影響などが背景にあるともいわれますが、最も大きな要因の一つとしてAGA(男性型脱毛症)の早期発症が挙げられます。
20代だから大丈夫、と過信せず、変化を感じたら早めに向き合うことが大切です。深刻に悩みすぎる必要はありませんが、現状を客観的に見つめることが第一歩です。
生え際の形(富士額との違い)
生まれつき生え際の中央がV字型に突出し、両サイドがやや後退しているように見える「富士額」と、M字はげを混同することがあります。富士額は生まれ持った生え際の形で、病的なものではありません。
見分けるポイントは、富士額の場合、生え際のラインがくっきりしており、しっかりとした毛が生えています。
一方、進行性のM字はげの場合、後退部分の毛が細く弱々しくなったり、産毛が多くなったりする特徴が見られます。
あなたは大丈夫?生え際後退のセルフチェック法
「自分の生え際、本当に後退してる?」と疑問に思ったら、まずはセルフチェックを試してみましょう。
過度に心配する必要はありませんが、現状を客観的に把握することは、不安の解消や次のステップを考える上で役立ちます。いくつかの簡単な方法を紹介します。
鏡を使った簡単な確認方法
セルフチェックの基本は、鏡で毎日自分の生え際を観察することです。洗顔後やお風呂上がりなど、髪が濡れて生え際がはっきり見える状態が確認しやすいでしょう。
正面からだけでなく、左右の剃り込み部分がどれくらいの位置にあるか、以前と比べて後退していないかを確認します。
生え際セルフチェック項目
鏡を見ながら、以下の項目に当てはまるものがないか確認してみてください。
| チェック項目 | 具体的な確認内容 | 該当する場合の懸念 |
|---|---|---|
| 生え際のライン | 以前よりラインがぼやけていないか?産毛が増えていないか? | 毛が細く弱くなっている可能性。 |
| 剃り込みの深さ | 左右の剃り込み部分が、以前より深くなっていないか? | M字型の進行が疑われる。 |
| 額の広さ | 眉毛から生え際までの距離が、以前より長くなっていないか? | 全体的な生え際の後退。 |
過去の写真との比較
鏡での確認は主観が入りやすいため、より客観的に判断する方法として、過去の写真と比較するのが有効です。1年前、2年前の写真(特におでこを出しているもの)と、現在の生え際を比べてみてください。
明らかに生え際のラインが後退している、あるいはM字部分が深くなっているようであれば、注意が必要です。スマートフォンのカメラで定期的に同じ角度から撮影し、記録しておくのも良い方法です。
指を使った生え際チェック(額の広さ)
一般的に、額の広さを測る簡単な目安として「指」を使う方法があります。
眉毛の上に人差し指から小指までの指4本をそろえて置き、その上端が生え際よりも下にあれば、生え際が後退している可能性がある、というものです。
ただし、これはあくまで俗説の範囲であり、もともとの骨格や額の広さには個人差が大きいため、参考程度にとどめてください。
この方法で「指4本以上=危険」と短絡的に判断するのではなく、以前の自分と比べて広がったかどうか、という視点が重要です。
抜け毛の状態を確認する
生え際の後退とともに、抜け毛の状態にも変化が現れることがあります。シャンプー時や朝起きた時の枕元の抜け毛をチェックしてみてください。
単に本数が増えただけでなく、以下のような特徴を持つ毛が増えていないか確認しましょう。
- 細く、短い毛
- コシがなく、弱々しい毛
- 毛根がふくらんでいない、または黒い点(毛根鞘)が付着していない毛
これらは、ヘアサイクル(毛周期)が乱れ、髪が十分に成長しきる前に抜けてしまっているサインかもしれません。健康な抜け毛は太く、しっかりとした毛根がついています。
抜け毛の「質」の変化にも注目してください。
なぜ20代で生え際が後退するのか?主な原因を探る
20代という若さで生え際が後退する背景には、いくつかの原因が考えられます。
最も大きな要因としてAGA(男性型脱毛症)が挙げられますが、それ以外にも現代の20代を取り巻く生活環境が複雑に関係している場合があります。
最大の原因?AGA(男性型脱毛症)の影響
20代の生え際後退(M字はげ)において、最も可能性が高い原因はAGA(AndrogeneticAlopecia:男性型脱毛症)です。これは、男性ホルモンや遺伝的要因が関与する進行性の脱毛症です。
AGAは思春期以降に発症する可能性があり、20代で症状が現れ始めることは決して珍しいことではありません。「まだ若いから」と油断せず、AGAの可能性を考えることは重要です。
生活習慣の乱れ(食生活・睡眠)
髪の健康は、体全体の健康と密接に関連しています。20代は仕事や学業、プライベートで忙しく、食生活や睡眠が不規則になりがちです。
ファストフードやコンビニ食が多い偏った食生活では、髪の成長に必要な栄養素(タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちです。
また、睡眠不足は髪の成長を促す成長ホルモンの分泌を妨げ、頭皮の血行不良にもつながります。こうした生活習慣の乱れが、薄毛の進行を助長する一因となることがあります。
ストレスと頭皮環境
精神的なストレスは、自律神経やホルモンバランスを乱し、頭皮の血行を悪化させることがあります。血行が悪くなると、毛根に十分な栄養や酸素が届かなくなり、髪の成長が妨げられます。
また、ストレスによって皮脂が過剰に分泌され、頭皮環境が悪化し、フケやかゆみ、炎症を引き起こすこともあります。これらが複合的に絡み合い、抜け毛や薄毛につながる可能性があります。
遺伝的要因はどの程度関係するか
「薄毛は遺伝する」とよくいわれますが、これはAGAの発症しやすさに関する遺伝的要因を指すことが多いです。
具体的には、男性ホルモンの影響を受けやすい体質(5αリダクターゼの活性度やアンドロゲン受容体の感受性)が遺伝する可能性がある、ということです。
ただし、遺伝的要因があるからといって必ず薄毛になるわけではなく、また遺伝的要因がなくてもAGAを発症することはあります。遺伝はあくまで一つの要因であり、それだけで全てが決まるわけではありません。
AGA以外の脱毛症の可能性
20代の生え際後退の多くはAGAが関連していますが、まれに他の脱毛症が隠れている場合もあります。自己判断は難しいですが、知識として知っておくことも大切です。
| 脱毛症の種類 | 主な特徴 | 生え際への影響 |
|---|---|---|
| 牽引性脱毛症 | 髪を強く引っ張る髪型(ポニーテールなど)が原因。 | 生え際や分け目の毛が抜けることがある。 |
| 円形脱毛症 | 自己免疫疾患の一種。円形や楕円形に毛が抜ける。 | 生え際だけに発症することは稀だが、多発型の場合は重なることも。 |
| 脂漏性脱毛症 | 皮脂の過剰分泌による頭皮の炎症が原因。 | 頭皮全体の環境悪化により、生え際にも影響が及ぶ可能性。 |
M字はげとAGA(男性型脱毛症)の深い関係
20代の生え際後退、特にM字はげの進行を感じる場合、その背景にはAGA(男性型脱毛症)が強く関わっている可能性が高いです。
AGAは特定のパターンで進行することが多く、M字はげはその典型的な初期症状の一つです。なぜAGAが生え際の後退を引き起こすのか、その関係性を理解することは対策を講じる上で非常に重要です。
AGAの基本的な知識
AGA(AndrogeneticAlopecia)は、日本語で「男性型脱毛症」と呼ばれます。成人男性によく見られる脱毛症で、思春期以降に発症し、徐々に進行するのが特徴です。
遺伝的要因と男性ホルモンの影響が主な原因と考えられています。生え際(特にM字部分)や頭頂部(O字部分)から薄毛が始まることが多いのが特徴です。
DHT(ジヒドロテストステロン)の役割
AGAの発生には、DHT(ジヒドロテストステロン)という強力な男性ホルモンが深く関わっています。
体内の男性ホルモン「テストステロン」が、「5αリダクターゼ」という酵素と結合することでDHTが生成されます。
このDHTが、毛乳頭細胞にあるアンドロゲン受容体と結合すると、髪の成長期(ヘアサイクル)を短縮させるシグナルが送られます。
その結果、髪の毛が太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、徐々に薄毛が進行していくのです。特にM字部分や頭頂部には、このDHTの影響を受けやすい受容体が多く存在するといわれています。
AGAの進行パターン
AGAの進行パターンは個人差がありますが、一般的に「ハミルトン・ノーウッド分類」という指標がよく用いられます。
この分類では、生え際の後退(M字)から始まるパターン、頭頂部から始まるパターン(O字)、そして両方が同時に進行するパターンなどに分けられます。
20代の場合、生え際の後退、つまりM字はげから自覚するケースが多く見られます。
AGAは進行性であるため、放置するとM字部分の後退が深くなるだけでなく、頭頂部の薄毛へとつながっていく可能性があります。
20代でのAGA発症は珍しくない
AGAは「中高年の悩み」というイメージがあるかもしれませんが、実際には20代、あるいは10代後半から発症することもあります。
ある調査によれば、日本人男性のAGA発症率は20代で約10%といわれており、決して他人事ではありません。
20代で生え際の後退を感じた場合、それは加齢による自然な変化ではなく、AGAという進行性の脱毛症の初期症状である可能性を真剣に考える必要があります。
早期に気づき、適切な対応を始めることが、将来の髪の状態を左右する鍵となります。
20代から始めたい!生え際後退への具体的な対策
20代で生え際の後退に気づいた場合、「まだ若いから」と放置するのは得策ではありません。AGAであった場合、進行性であるため、対策は早ければ早いほど効果が期待できます。
不安を抱え続けるよりも、まずは行動を起こすことが大切です。セルフケアから専門家への相談まで、20代から始められる具体的な対策を紹介します。
まずは専門家へ相談する重要性
生え際の後退やM字はげの原因がAGAなのか、それとも他の要因(生活習慣、ストレス、他の脱毛症など)なのかを自己判断するのは非常に困難です。
最も確実で推奨される第一歩は、皮膚科や薄毛治療を専門とするクリニックに相談することです。
専門家であれば、頭皮の状態や毛髪の診断(マイクロスコープでの観察など)を通じて、原因を特定し、個々の状態に合ったアドバイスや治療方針を示してくれます。
20代でクリニックに行くのは勇気がいるかもしれませんが、正しい知識を得ることが不安解消と適切な対策への近道です。
セルフケアでできること
専門家への相談と並行して、あるいはまずは自分でできることから始めたいという場合、日々のセルフケアを見直すことも重要です。
特に生活習慣の乱れが気になる場合は、そこから改善を図りましょう。
- 食生活の改善:バランスの取れた食事を心がけ、髪の主成分であるタンパク質や、ビタミン、ミネラルを意識的に摂取します。
- 十分な睡眠:髪の成長を促す成長ホルモンは睡眠中に分泌されます。質の高い睡眠を確保するよう努めましょう。
- ストレス管理:適度な運動や趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス発散法を見つけましょう。
- 適切なヘアケア:頭皮環境を清潔に保つため、正しいシャンプー方法を身につけましょう。洗いすぎや爪を立てる行為は逆効果です。
育毛剤・発毛剤の活用
セルフケアの一環として、育毛剤や発毛剤の使用を検討するのも一つの方法です。ただし、これらは「医薬品」や「医薬部外品」であり、それぞれ目的や成分が異なります。
20代の生え際の後退、特にAGAが疑われる場合は、その原因にアプローチする成分が含まれているかどうかが選択のポイントになります。
次のセクションで詳しく解説しますが、自己判断で選ぶ前に、薬剤師や登録販売者、あるいは専門医に相談するのが賢明です。
医療機関での治療という選択肢
専門医の診断の結果、AGAと診断された場合、医療機関では内服薬や外用薬による治療が行われるのが一般的です。これらは市販の製品よりも高い効果が期待できる一方、医師の処方が必要となります。
20代であっても、AGAが明確であれば治療の対象となります。治療には継続が必要であり、費用も発生するため、医師とよく相談し、納得した上で開始することが大切です。
まずは相談し、どのような選択肢があるのかを知るところから始めましょう。
育毛剤・発毛剤の選び方と正しい使い方
20代で生え際の後退対策として、育毛剤や発毛剤の使用を考える方は多いでしょう。しかし、ドラッグストアやオンラインには多種多様な製品が並んでおり、何を選べばよいか迷ってしまいます。
目的や成分の違いを理解し、自分の状態に合ったものを正しく使うことが重要です。誤った使い方では効果が期待できないばかりか、頭皮トラブルの原因にもなりかねません。
育毛剤と発毛剤の目的の違い
まず、「育毛剤」と「発毛剤」は異なるものであることを理解する必要があります。これらは薬機法(旧薬事法)によって明確に分類されており、期待できる効果(効能)が異なります。
育毛剤と発毛剤の比較
| 分類 | 育毛剤(医薬部外品) | 発毛剤(第1類医薬品) |
|---|---|---|
| 目的 | 今ある髪を健康に育てる(育毛)。抜け毛を予防する。 | 新しい髪を生やす(発毛)。壮年性脱毛症(AGA)の進行を予防する。 |
| 主な効果 | 頭皮環境を整える、血行促進、毛根への栄養補給、フケ・かゆみ防止など。 | 毛母細胞の活性化、ヘアサイクルの成長期延長など。 |
| 主な対象者 | 薄毛・抜け毛を予防したい人。頭皮環境を改善したい人。 | 壮年性脱毛症(AGA)と診断され、薄毛が進行している人。 |
簡単に言えば、育毛剤は「守り(予防・現状維持)」、発毛剤は「攻め(発毛・改善)」の役割を担います。
生え際が後退し始めた20代の場合、AGAの初期段階であれば「発毛剤」の適応となる可能性がありますが、まずは予防や頭皮環境の改善を目指すなら「育毛剤」という選択肢もあります。
ただし、発毛剤には「ミノキシジル」という成分が含まれており、これはAGAへの効果が認められています。
20代の生え際悩みに適した成分
製品を選ぶ際は、パッケージや説明書に記載されている有効成分に注目しましょう。
- 発毛剤(AGA対策):ミノキシジル(外用薬)。毛母細胞に働きかけ、発毛を促進します。
- 育毛剤(予防・頭皮環境):センブリエキス、グリチルリチン酸ジカリウム(抗炎症)、ビタミンE誘導体(血行促進)など。
20代のM字はげ(AGA)対策として考えるなら、ミノキシジル配合の「発毛剤」が第一の選択肢となることが多いです。
ただし、使用には注意点もあるため、薬剤師の説明をしっかり聞くか、医師に相談しましょう。
効果を高める正しい塗布方法
どれだけ良い成分の製品を選んでも、使い方が間違っていては効果は半減します。製品の指示に従うのが基本ですが、一般的に以下の点に注意しましょう。
- 清潔な頭皮に:シャンプー後、髪をしっかり乾かした(または半乾きの)清潔な頭皮に使用します。
- 適量を守る:多くつければ効果が上がるわけではありません。決められた量を守りましょう。
- 気になる部分(生え際)に直接:髪ではなく、頭皮(生え際)に直接塗布します。ノズルタイプやスプレータイプなど、製品の形状に合わせて使い分けます。
- 優しくマッサージ:塗布後、指の腹で頭皮を優しくマッサージし、薬剤をなじませるとともに血行を促進します。(強くこすらないこと)
使用タイミングは、1日2回(朝・晩)が指定されている製品が多いです。特に夜(就寝前)は、成長ホルモンの分泌と合わせて効果が高まりやすいといわれています。
使用を継続する大切さ
育毛剤も発毛剤も、使ってすぐに効果が出るものではありません。ヘアサイクル(髪が生え変わる周期)を考えると、効果を実感するまでには最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要です。
20代の方は効果を急ぎがちかもしれませんが、焦りは禁物です。「生え際の後退が止まった」「産毛が生えてきた」といった小さな変化を見逃さず、根気強く続けることが何よりも大切です。
生活習慣の見直しで生え際を守る
生え際の後退対策は、育毛剤や治療薬だけに頼るものではありません。髪の毛は、私たちが日々摂る食事や睡眠、生活リズムの積み重ねによって作られています。
特に20代は生活が不規則になりがちですが、この時期に生活習慣を見直すことは、頭皮環境を健やかに保ち、生え際を守るための重要な土台作りとなります。
髪の成長に必要な栄養素と食事
髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質でできています。したがって、良質なタンピパク質の摂取は非常に重要です。
また、タンパク質を効率よく髪の毛に変えるためには、ビタミンやミネラルの助けが必要です。
髪の健康をサポートする主な栄養素と食材例
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食材例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料となる。 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛(ミネラル) | ケラチンの合成を助ける。新しい細胞の生成に必要。 | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促す。皮脂のバランスを整える。 | 豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、納豆、卵 |
これらの栄養素をバランスよく摂ることが大切です。20代に多いファストフードやインスタント食品中心の食生活は、高脂質・高糖質になりがちで、皮脂の過剰分泌や血行不良を招く可能性があります。
自炊が難しくても、定食を選ぶ、サラダや大豆製品を一品加えるなど、できることから意識してみましょう。
質の高い睡眠の確保
睡眠中は、体の修復や成長を促す「成長ホルモン」が最も多く分泌される時間帯です。この成長ホルモンは、毛母細胞の分裂を活発にし、髪の成長を助ける働きがあります。
20代は夜更かしをしがちですが、睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長に悪影響を及ぼします。単に長く寝るだけでなく、「質の高い睡眠」を確保することが重要です。
- 就寝時間を一定に:体内時計を整えるため、できるだけ毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるよう心がけましょう。
- 寝る前の環境:就寝1時間前からはスマートフォンやPCの画面を見るのを避け、リラックスできる環境を整えましょう。
- 適度な運動:日中の適度な運動は、夜の寝つきを良くする効果が期待できます。
効果的なストレス発散法
ストレスが溜まると、自律神経が乱れて血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、皮脂の過剰分泌などを引き起こすこともあります。
20代は仕事、人間関係、将来のことなど、多くのストレスに直面する時期かもしれません。ストレスをゼロにすることは難しくても、上手に発散する方法を見つけることが大切です。
手軽にできるストレス発散法
| 方法 | 具体的な例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 体を動かす | ウォーキング、ジョギング、筋トレ、スポーツ | 気分転換、血行促進、良質な睡眠 |
| 趣味に没頭する | 音楽鑑賞、読書、映画、料理、ゲーム | 嫌なことを忘れる時間を作る |
| リラックス | 入浴(湯船につかる)、アロマ、深呼吸、瞑想 | 副交感神経を優位にし、心身を落ち着かせる |
自分に合った方法で、こまめにストレスをリセットする習慣をつけましょう。
頭皮環境を整えるヘアケア(シャンプー法など)
毎日のヘアケアも、生え際を守るためにはおろそかにできません。間違ったシャンプー方法は、頭皮を傷つけたり、必要な皮脂まで奪って乾燥させたりする原因となります。
頭皮環境を健やかに保つための正しいシャンプー方法をマスターしましょう。
正しいシャンプーの手順
- ブラッシング:シャンプー前に、乾いた髪を優しくブラッシングし、ホコリや汚れを浮かせ、髪のもつれをほどきます。
- 予洗い(湯シャン):シャンプー剤をつける前に、ぬるま湯(38℃程度)で頭皮と髪を1~2分ほどしっかり洗い流します。これだけで汚れの7割程度は落ちるといわれています。
- シャンプー剤を泡立てる:シャンプー剤を手のひらに取り、少量のお湯を加えてしっかり泡立てます。(頭皮で直接泡立てないこと)
- 頭皮を洗う:泡を髪全体になじませ、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。生え際(M字部分)も忘れずに。爪を立てるのは厳禁です。
- すすぎ:最も重要な工程です。シャンプー剤が残らないよう、ぬるま湯で時間をかけて(最低でも3分程度)しっかりすすぎます。特に生え際や耳の後ろは残りやすいので注意しましょう。
- 乾燥:タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで頭皮から乾かします。自然乾燥は雑菌が繁殖しやすくなるため避けましょう。
また、自分の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌など)に合ったシャンプー剤を選ぶことも大切です。
FAQ
- 生え際の後退は止まりますか?
-
生え際後退の原因がAGA(男性型脱毛症)である場合、残念ながら放置して自然に止まったり、改善したりすることは難しいといわれています。AGAは進行性の脱毛症だからです。
しかし、20代などの早い段階から適切な対策(専門医への相談、治療、育毛剤・発毛剤の使用、生活習慣の見直しなど)を行うことで、その進行を遅らせたり、状態を維持・改善したりすることは十分に可能です。
不安な場合は、まず専門家に相談し、ご自身の状態を正確に把握することをお勧めします。
- 育毛剤はいつから効果が出ますか?
-
育毛剤や発毛剤の効果を実感できるまでの期間には個人差がありますが、一般的には最低でも3ヶ月から6ヶ月の継続使用が必要とされます。
これは、髪の毛が生え変わるヘアサイクルに関係しています。使い始めてすぐに効果が出ないからといって、すぐに使用をやめてしまうのは早計です。
まずは製品の指示に従い、根気強く続けることが大切です。
6ヶ月程度使用しても変化が見られない場合は、製品が合っていないか、別の原因がある可能性も考えられるため、専門医に相談してみましょう。
- 食生活だけで髪は増えますか?
-
残念ながら、特定の食品を食べたからといって、それだけで生え際の後退が改善したり、髪がフサフサに増えたりすることはありません。
しかし、食生活は髪の健康を維持するための「土台」です。髪の毛は日々の食事から摂取する栄養素(タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)を基に作られています。
バランスの悪い食生活が続けば、髪が細くなったり、抜けやすくなったりする原因の一つになります。
AGA対策などと並行して、バランスの取れた食生活を心がけることは、健やかな髪を育む上で非常に重要です。
- 父親がM字はげだと自分も必ずなりますか?
-
AGAの発症には遺伝的要因が関わっているため、父親や母方の祖父がM字はげ(AGA)の場合、ご自身もAGAを発症しやすい体質を受け継いでいる可能性はあります。
しかし、遺伝的要因を持っているからといって、「必ず」M字はげになるわけではありません。発症の有無や進行速度には個人差があります。
逆に、家族に薄毛の人がいなくても発症することもあります。
遺伝はあくまで一つの要因と考え、過度に心配する必要はありませんが、リスクがある可能性を認識し、20代から生え際の変化に注意を払い、必要であれば早期に対策を始めることが賢明です。
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