毛根が死滅したか確認・判断する方法|薄毛(AGA)と毛根の寿命

毛根が死滅したか確認・判断する方法|薄毛(AGA)と毛根の寿命

「最近、抜け毛がひどい」「もしかして、もう毛根が死滅してしまったのでは?」そんな不安を抱えていませんか。

薄毛が進行すると、髪の毛を生み出す「毛根」の機能が停止してしまうのではないかと心配になるものです。

この記事では、「毛根が死滅する」とはどういう状態なのか、その原因や確認・判断する方法について詳しく解説します。

また、薄毛(AGA)と毛根の寿命の関係、そして大切な毛根の働きを維持するための対策についても触れていきます。

ご自身の頭皮や髪の状態を正しく理解し、適切なケアを始めるための一助としてください。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

毛根は本当に「死滅」するのか?

薄毛の悩みを持つ方から「毛根が死滅する」という言葉をよく聞きます。しかし、医学的に毛根が簡単に「死滅」することはあるのでしょうか。

この表現が意味する本当の状態と、毛根の基本的な働きについて理解を深めましょう。

毛根の基本的な働き

毛根は、頭皮の内部(真皮層)にある髪の毛の根元の部分を指します。毛根の最も奥深くには「毛球」と呼ばれる膨らんだ部分があり、ここが髪の毛の製造工場です。

毛球の中心には「毛乳頭」があり、毛細血管から栄養や酸素を受け取ります。

その毛乳頭を取り囲むように「毛母細胞」が存在し、毛乳頭からの指令と栄養を受けて細胞分裂を繰り返し、髪の毛を作り出していきます。

つまり、毛根(特に毛母細胞と毛乳頭)が活発に働くことで、私たちの髪は太く長く成長するのです。

「死滅」の本当の意味

一般的に使われる「毛根が死滅した」という状態は、多くの場合、毛根の組織そのものが壊死したり消滅したりした状態ではありません。

そうではなく、「髪の毛を生み出す働きが完全に停止し、回復が見込めなくなった状態」を指すことが多いです。

医学的には、毛根が炎症や外傷で物理的に破壊された場合を除き、AGA(男性型脱毛症)などで毛根が即座に「死滅」することはありません。

休止期との違い

髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、一定期間成長した後は自然に抜け落ち、新しい髪が生える準備期間(休止期)に入ります。

休止期の毛根は一時的に活動を停止していますが、これは「死滅」ではなく、次の成長期に向けた正常な待機状態です。

問題となるのは、この休止期が異常に長引いたり、休止期から成長期へ移行する力を失ったりした場合です。

毛乳頭細胞と毛母細胞の役割

毛根の活動において、毛乳頭細胞と毛母細胞は中心的な役割を担います。毛乳頭細胞が髪の成長に関する指令を出し、毛母細胞がそれを受けて分裂・増殖します。

AGAなどでは、この指令系統や細胞の活動が阻害され、毛母細胞の分裂が鈍くなります。その結果、髪が十分に成長できず、細く短い毛(軟毛)しか作れなくなり、やがてはその活動自体が停止に向かいます。

毛根が機能しなくなる状態とは

毛根が機能しなくなる、つまり「死滅」に近い状態とは、毛母細胞が分裂能力を失い、毛乳頭からの指令にも反応しなくなった状態です。

また、長期間髪の毛が生えない状態が続くと、毛根を包んでいる「毛包」自体が徐々に小さくなり(萎縮)、皮膚組織に埋もれていく(線維化)ことがあります。

こうなると、毛穴が閉じて頭皮がツルツルした見た目になり、育毛剤などのケアを行っても髪の毛を再生させることが極めて困難になります。

この段階を、一般的に「毛根が死滅した」と表現することが多いのです。

毛根が機能停止(死滅)する主な原因

毛根が髪を生み出す働きを止めてしまう背景には、いくつかの複合的な原因が存在します。なぜ毛根は活動を停止してしまうのでしょうか。

ここでは、その主な原因を掘り下げて解説します。

AGA(男性型脱毛症)の影響

成人男性の薄毛の多くは、AGA(男性型脱毛症)が原因です。

これは遺伝的要因や男性ホルモンの影響によって引き起こされる進行性の脱毛症であり、毛根の機能停止に直結する最大の原因の一つです。

DHT(ジヒドロテストステロン)の関与

AGAの発症には、男性ホルモンの一種である「DHT(ジヒドロテストステロン)」が深く関わっています。テストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素と結びつくことでDHTが生成されます。

このDHTが毛根にある受容体と結合すると、髪の成長を阻害する信号が出され、毛母細胞の働きが抑制されます。

ヘアサイクルの短縮化

DHTの影響を受けた毛根は、正常なヘアサイクルを維持できなくなります。通常2年~6年ある「成長期」が、数ヶ月~1年程度にまで短縮されます。

髪が太く長く成長する期間が極端に短くなるため、細く短い産毛のような髪(軟毛化)が増え、最終的には毛根が新たな髪を生み出す力を失い、休止状態から抜け出せなくなります。

頭皮環境の悪化

髪が育つ土壌である頭皮の環境が悪化することも、毛根の働きを妨げる大きな原因となります。健康な髪は、健康な頭皮から生まれます。

血行不良

毛根(特に毛乳頭)は、毛細血管を通じて髪の成長に必要な栄養素や酸素を受け取っています。

しかし、頭皮が硬くなったり、ストレスや喫煙、運動不足などで血行不良に陥ったりすると、毛根に十分な栄養が届かなくなります。

栄養不足の状態が続けば、毛母細胞は活発に分裂できず、髪の毛は痩せ細り、やがては毛根の機能低下を招きます。

皮脂の過剰分泌と毛穴の詰まり

頭皮の皮脂が過剰に分泌されたり、シャンプーのすすぎ残しや古い角質が溜まったりすると、毛穴が詰まりやすくなります。

毛穴が詰まると、皮脂が酸化して「過酸化脂質」という有害物質に変化し、毛根や頭皮にダメージを与え、炎症を引き起こすことがあります。

慢性的な炎症は毛根の働きを弱め、脱毛を促進する原因となります。

生活習慣の乱れ

日々の生活習慣も、毛根の健康状態に密接に関連しています。不規則な生活は、体全体のバランスを崩し、頭皮や毛根にも悪影響を及ぼします。

栄養バランスの偏り

髪の毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。偏った食生活によってタンパク質が不足すれば、健康な髪は作れません。

また、タンパク質の合成を助ける亜鉛や、頭皮の血行を促進するビタミンE、細胞の代謝をサポートするビタミンB群なども重要です。これらの栄養素が不足すると、毛根は正常な活動を維持できなくなります。

栄養素と髪の関係

栄養素主な働き多く含まれる食品例
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉(赤身)
ビタミンB群頭皮の代謝をサポート、皮脂の調整豚肉、レバー、マグロ、納豆

睡眠不足やストレス

髪の成長は、特に睡眠中に活発になります。睡眠中に分泌される「成長ホルモン」が、毛母細胞の分裂を促進するためです。睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられます。

また、過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を引き起こします。

さらに、ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、皮脂の過剰分泌を招くこともあり、毛根にとって良い環境とは言えません。

毛根が死滅したか確認するセルフチェック

「自分の毛根はまだ大丈夫だろうか」と不安に感じた時、専門機関に相談する前に、ご自身で頭皮や抜け毛の状態を確認する簡単なセルフチェック方法があります。

ただし、これらはあくまで目安であり、正確な診断は専門家が行う必要があります。

頭皮の状態を観察する

健康な毛根は、健康な頭皮に宿ります。鏡を使って、ご自身の頭皮の色や硬さをチェックしてみましょう。

頭皮の色

健康な頭皮は、やや青白い色をしています。これは、皮膚の下の毛細血管が透けて見え、血行が良好である証拠です。もし頭皮が赤みがかっている場合は、炎症を起こしている可能性があります。

皮脂の過剰分泌による脂漏性皮膚炎や、シャンプーの刺激などが考えられます。

また、茶色っぽくくすんでいる場合は、血行不良や新陳代謝(ターンオーバー)の乱れが疑われます。これらの状態は、毛根の活動を妨げるサインとなります。

頭皮の色と状態の目安

頭皮の色考えられる状態毛根への影響
青白い健康な状態良好
赤い炎症、皮脂過剰悪影響の可能性(中)
茶色い・黄色い血行不良、糖化、酸化悪影響の可能性(高)

頭皮の硬さ

両手の指の腹を使って、頭皮全体を優しく動かしてみてください。健康な頭皮は柔らかく、弾力があり、頭蓋骨から浮いているような感覚で前後左右によく動きます。

一方、頭皮が硬く突っ張っていて、指で動かそうとしてもほとんど動かない場合は注意が必要です。

これは、頭皮の血行不良や、筋肉(帽状腱膜)の緊張が原因である可能性が高いです。血流が悪いと、毛根に必要な栄養が届きにくくなります。

抜け毛の状態を確認する

シャンプーやブラッシングの際に抜けた毛髪を観察することも、毛根の状態を知る手がかりになります。特に、抜け毛の「太さ」と「毛根部分」に注目してください。

抜け毛の太さと長さ

健康なヘアサイクルを終えて自然に抜けた毛(休止期毛)は、太く、しっかりとしたコシがあります。

一方、細くて短い、産毛のような毛(軟毛)が多く抜けている場合は、AGAなどによってヘアサイクルが短縮し、髪が十分に成長しきる前に抜けてしまっているサインです。

これは、毛根の働きが弱っていることを示しています。Example of stress management * 適度な運動 * 趣味の時間 * リラクゼーション

抜け毛の毛根部分の形状

自然に抜けた健康な髪の毛根(毛球部)は、白く濁っていたり、透明な膜(毛根鞘)が付着していたりして、ふっくらと丸みを帯びています。これは、毛母細胞が寿命を全うした証拠です。

しかし、抜け毛の毛根部分が黒い場合や、尖っていたり、そもそも毛根らしい膨らみがなかったりする場合は、成長期の途中で何らかのダメージを受けて抜けた可能性(異常脱毛)が疑われます。

毛根が弱っている、あるいは頭皮環境に問題があるサインかもしれません。

薄毛の進行パターン

薄毛がどのように進行しているかというパターンも、毛根の状態を判断する材料になります。

AGA(男性型脱毛症)の典型的なパターン

AGAの場合、薄毛の進行には特徴的なパターンがあります。一つは、額の生え際が後退していく「M字型」や「U字型」。もう一つは、頭頂部(つむじ周り)が薄くなる「O字型」です。

これらが同時に進行する場合もあります。これらの特定部位の毛根は、DHTの影響を特に受けやすいため、機能が低下しやすいのです。

もしご自身の薄毛がこれらのパターンに当てはまるなら、AGA対策を考える必要があります。

その他の脱毛症との比較

もし髪が特定のパターンではなく、頭部全体で均一に薄くなっている場合(びまん性脱毛症)や、円形に突然髪が抜けた場合(円形脱毛症)は、AGAとは異なる原因(ストレス、自己免疫疾患、栄養障害など)が考えられます。

原因が異なれば、毛根へのアプローチ方法も変わってきます。

毛根の死滅とヘアサイクルの関係

毛根の活動状態を理解する上で、「ヘアサイクル(毛周期)」の知識は欠かせません。毛根が機能停止(死滅)に至る過程は、このヘアサイクルの乱れと密接に結びついています。

ヘアサイクル(毛周期)とは

髪の毛は、1本1本が独立した寿命を持っており、「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルを繰り返しています。この一連の流れをヘアサイクルと呼びます。

成長期

髪の毛が活発に成長する期間です。毛根の奥深くで毛母細胞が盛んに分裂し、髪の毛が太く長く伸びていきます。

通常、髪全体の約85%~90%がこの状態にあり、その期間は2年~6年ほど続きます。

退行期

毛母細胞の分裂が停止し、髪の毛の成長が止まる期間です。毛球部が萎縮し始め、毛乳頭から離れていきます。この期間は約2週間ほどで、髪全体の約1%がこの状態にあたります。

休止期

髪の毛の成長が完全に止まり、毛根が次の髪を生やす準備に入る期間です。

毛根は浅い位置に移動し、やがてシャンプーやブラッシングなどの軽い力で自然に抜け落ちます(自然脱毛)。この期間は約3~4ヶ月で、髪全体の約10%~15%がこの状態です。

そして休止期が終わると、毛根は再び活動を再開し、新しい髪が成長期に入ります。

ヘアサイクルの各段階

段階期間(目安)特徴
成長期2年~6年毛母細胞が活発に分裂し、髪が成長する
退行期約2週間毛母細胞の分裂が停止し、成長が止まる
休止期約3~4ヶ月髪が抜け落ち、次の成長準備期間に入る

AGAによるヘアサイクルの乱れ

AGAを発症すると、この正常なヘアサイクルが大きく乱れます。特に「成長期」に重大な影響が出ます。

成長期の短縮

前述の通り、AGAの原因物質であるDHTは、毛根に対して「髪の成長を止めろ」という誤った信号を送ります。

これにより、本来なら数年間続くはずの成長期が、わずか数ヶ月から1年程度に短縮されてしまいます。

髪の毛が細くなる(軟毛化)

成長期が短くなると、髪の毛は太く長く成長する時間を失います。その結果、十分に育ちきる前に退行期・休止期へと移行してしまい、細くてコシのない産毛のような毛(軟毛)ばかりになってしまいます。

これが、AGAによる薄毛の見た目の特徴です。

ヘアサイクルが停止するとは

AGAが進行し、毛根が短縮されたヘアサイクルを何度も繰り返すと、毛根は次第に疲弊していきます。毛母細胞の分裂能力は低下し、毛乳頭の働きも鈍くなります。

やがて、休止期を終えても次の成長期に移行する力を失い、髪の毛を生み出す活動を完全に停止してしまうのです。

この「ヘアサイクルが回らなくなった状態」こそが、いわゆる「毛根が死滅した」状態に近いと言えます。毛根(毛包)が萎縮し、新しい髪を生み出すことができなくなった状態です。

毛根が機能停止(死滅)した場合のサイン

毛根がヘアサイクルを回す力を失い、機能停止(死滅)の状態に近づくと、頭皮にはどのようなサインが現れるのでしょうか。

セルフチェックよりもさらに深刻な状態を示す兆候について解説します。

産毛すら生えてこない

薄毛が進行すると、太い髪が細い髪(軟毛)に置き換わっていきます。しかし、その状態がさらに進むと、毛根は軟毛(産毛)を作り出す力さえ失ってしまいます。

鏡で頭皮をよく観察したときに、以前は細い産毛が生えていた部分から、その産毛すらも消え、何も生えていない状態になっている場合、毛根の活動が完全に停止している可能性が非常に高いです。

これは、毛母細胞が分裂を止めてしまったことを意味します。

毛穴が閉じているように見える

髪の毛は毛穴から生えています。毛根が活発に働き、髪の毛が存在している間は、毛穴は開いており、その存在を確認できます。

しかし、毛根が長期間活動を停止し、髪の毛が生えない状態が続くと、毛穴は徐々にその役割を終え、閉じていきます。

頭皮が滑らかでツルツルしている

毛穴が閉じると、頭皮の表面は凹凸がなくなり、滑らかでツルツルとした質感に変わります。

特にAGAが進行した頭頂部や生え際などで、指で触ったときに産毛の感触も、毛穴のざらつきもなく、まるで肌の他の部分のように滑らかに感じる場合、毛根が萎縮し、皮膚組織が変化(線維化)してしまっている可能性があります。

毛穴の凹凸が感じられない

マイクロスコープなどで頭皮を拡大して見た場合、健康な毛穴はくっきりと凹んで見えます。しかし、機能停止した毛穴は、その凹みが浅くなったり、見えなくなったりします。

この状態になると、育毛剤などで外部からケアを行っても、有効成分が毛根に届く経路が失われつつあり、反応を期待するのが難しくなります。

毛根の活動停止が疑われる頭皮の状態

項目健康な状態(目安)機能停止が疑われる状態
毛の有無太い毛や産毛が生えている産毛すら生えていない
毛穴毛穴の凹凸が確認できる毛穴が見えず、滑らかで光沢がある
頭皮の感触適度な弾力がある硬い、またはツルツルしている

長期間、薄毛の状態が変わらない

育毛剤の使用や生活習慣の改善など、様々な薄毛対策を数年単位で続けているにもかかわらず、薄毛の状態に一切の変化が見られない(良くも悪くもならない)場合も、注意が必要です。

これは、対策が不十分である可能性もありますが、すでに対策を施すべき毛根が、反応できない状態(機能停止)に陥っている可能性も示唆しています。

特に、薄毛の範囲が広がったり、細い毛が増えたりする「進行」も止まり、同時に「改善」も見られない状態が長く続く場合は、毛根が休眠状態から目覚める力を失っていることが考えられます。

毛根の寿命を縮めないための対策

毛根が機能停止(死滅)の状態に陥るのを防ぎ、その「寿命」をできるだけ長く保つためには、日々の継続的なケアが重要です。

毛根が元気に活動できる環境を整え、維持するための具体的な対策を紹介します。

頭皮環境を整える

毛根が育つ土壌である頭皮を健康に保つことは、最も基本的な対策です。炎症や血行不良を防ぎ、清潔な状態を維持しましょう。

適切なシャンプー方法

毎日のシャンプーは、頭皮の余分な皮脂や汚れを落とし、毛穴の詰まりを防ぐために必要です。しかし、洗いすぎや強い刺激は逆効果になります。

シャンプーは1日1回を目安にし、アミノ酸系などの低刺激なシャンプー剤を選びましょう。

洗う際は、爪を立てずに指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないよう十分に洗い流すことが大切です。

熱すぎるお湯は頭皮を乾燥させるため、ぬるま湯(38度~40度程度)を使用してください。

頭皮マッサージ

頭皮マッサージは、硬くなった頭皮をほぐし、血行を促進するのに役立ちます。血流が改善すれば、毛根に必要な栄養素が行き渡りやすくなります。

シャンプー中や入浴後など、頭皮が温まっている時に行うのが効果的です。

指の腹を頭皮に密着させ、頭蓋骨から頭皮を引きはがすようなイメージで、優しく円を描いたり、掴んで持ち上げたりするようにマッサージします。気持ち良いと感じる程度の強さで行いましょう。

生活習慣を見直す

体の内側からのケアも、毛根の健康を左右します。不規則な生活は、髪の成長を妨げる要因となります。

バランスの取れた食事

髪の毛は、私たちが食べたものから作られます。特に髪の主成分であるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)は必須です。

また、タンパク質が髪に変わるのを助ける亜鉛(牡蠣、レバー、ナッツ類)や、頭皮の健康を保つビタミンB群(豚肉、マグロ、納豆)、血行を良くするビタミンE(アーモンド、アボカド)などをバランス良く摂取することが重要です。

外食やインスタント食品が多い方は、栄養バランスを見直す必要があります。

質の高い睡眠

毛母細胞の分裂、すなわち髪の成長は、主に睡眠中に分泌される成長ホルモンによって促されます。特に、入眠から最初の3時間(ノンレム睡眠の深い段階)に成長ホルモンは多く分泌されます。

睡眠時間が不足したり、眠りが浅かったりすると、髪の成長が滞る原因になります。

毎日6~7時間程度の十分な睡眠時間を確保し、就寝前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。

ストレス管理

過度なストレスは自律神経を乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を招きます。また、ホルモンバランスの乱れにもつながります。

ストレスを完全になくすことは難しいですが、自分なりの解消法を見つけて溜め込まないことが大切です。

適度な運動をする、趣味に没頭する時間を作る、ゆっくり入浴するなど、心身ともにリラックスできる時間を持つよう心がけてください。

育毛剤の活用

セルフケアと並行して、育毛剤を活用することも毛根の働きをサポートする有効な手段です。

育毛剤の役割と選び方

育毛剤の主な役割は、「今ある髪を健康に育てる」ことと「抜け毛を防ぐ」ことです。

血行促進成分(センブリエキスなど)や、毛母細胞の働きを助ける成分、頭皮の炎症を抑える成分(グリチルリチン酸2Kなど)が含まれています。

ご自身の頭皮の状態(乾燥肌か、脂性肌か)や、悩みの原因(血行不良が気になる、フケやかゆみがあるなど)に合わせて、適切な育毛剤を選びましょう。

継続使用の重要性

育毛剤の効果は、ヘアサイクルと関係しているため、すぐに現れるものではありません。

毛根に成分が作用し、髪が成長して目に見える変化として現れるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要です。

短期間で「効果がない」と諦めず、根気よくケアを続けることが、毛根の寿命を延ばす鍵となります。

育毛剤と発毛剤の違い

種類分類主な目的
育毛剤医薬部外品頭皮環境を整え、抜け毛予防・育毛促進
発毛剤第一類医薬品新しい髪を生やし、髪を成長させる(AGA治療)

AGAと毛根の機能停止

男性の薄毛の大きな原因であるAGA(男性型脱毛症)は、毛根の機能停止、いわゆる「死滅」に直結する問題です。

AGAの特性を理解し、いかに早く対策を講じるかが毛根の寿命を左右します。

AGAは進行性の脱毛症

AGAの最も恐ろしい特徴は、「進行性」であるという点です。一度発症すると、自然に治ることはなく、放置すれば薄毛はゆっくりと、しかし確実に進行していきます。

DHTの影響を受け続ける毛根は、ヘアサイクルを短縮させられ、産毛(軟毛)しか作れなくなり、やがてはその産毛すら生み出す力を失い、機能停止(死滅)の状態へと向かっていきます。

早期発見・早期対策の重要性

毛根が完全に機能停止し、毛穴が閉じてしまった状態から髪を再生させることは、現代の医療技術をもってしても極めて困難です。だからこそ、AGAは早期発見と早期対策が何よりも重要です。

「少し生え際が後退したかも」「つむじが薄くなった気がする」と感じた、まだ毛根が活力を失っていない初期段階で対策を始めることが、毛根の寿命を守る最大のポイントです。

AGAの進行パターン(ハミルトン・ノーウッド分類)

AGAの進行度合いは、「ハミルトン・ノーウッド分類」という指標で示されることが多く、I型からVII型まであります。数字が大きくなるほど進行している状態を示します。

ご自身の状態がどの段階にあるかを知ることは、対策を考える上で参考になります。

専門家への相談

セルフチェックでAGAの疑いがある、あるいは抜け毛が減らない、薄毛が進行していると感じたら、自己判断で育毛剤を試すだけでなく、一度、皮膚科やAGA専門のクリニックなど、髪の毛の専門家に相談することをお勧めします。

専門家は頭皮の状態や毛根の状態を詳細に診断し、それがAGAなのか、他の原因なのかを判断してくれます。

毛根がまだ生きている(活動能力が残っている)うちに、適切なアドバイスや治療を受けることが、将来の髪を守ることにつながります。

AGA治療と毛根

AGAは専門機関で治療を受けることが可能です。治療は、毛根の機能停止を防ぐ上で大きな役割を果たします。

AGA治療の主なアプローチ

アプローチ主な働き
5αリダクターゼ阻害AGAの原因(DHT)の生成を抑える内服薬(フィナステリド、デュタステリド)
毛母細胞の活性化毛根に直接働きかけ、発毛を促す外用薬(ミノキシジル)

治療薬の働き

AGA治療では、主に「5αリダクターゼ阻害薬」の内服薬や、「ミノキシジル」の外用薬が用いられます。内服薬は、AGAの根本原因であるDHTの生成を抑え、ヘアサイクルの短縮に歯止めをかけます。

これにより、抜け毛が減り、毛根が弱るのを防ぎます。一方、ミノキシジル外用薬は、毛根の血流を改善し、毛母細胞に直接働きかけてその活動を活性化させ、発毛を促す働きがあります。

これらは、まだ活動能力が残っている毛根に対して有効な手段です。

治療の継続

AGA治療も育毛剤と同様に、継続が力となります。治療薬によってヘアサイクルが正常化し、毛根が再び太い髪を育てるようになるまでには時間がかかります。

また、治療を中断すると、DHTの生成が再開し、毛根は再び攻撃を受け、AGAが進行してしまう可能性があります。

毛根の寿命を守るためには、専門家と相談の上、根気よく治療やケアを続けることが重要です。毛根が「死滅」する前に、手を打つことが何よりも大切なのです。

よくある質問

毛根が死滅したら、もう髪は生えてこないのですか?

一般的に「毛根が死滅した」と表現される、毛根(毛包)が完全に萎縮し、毛穴が閉じて皮膚が線維化してしまった状態からは、残念ながら髪の毛が再生することは極めて困難です。

AGAなどが進行し、頭皮がツルツルした状態になってしまった場合がこれにあたります。ただし、単にヘアサイクルの「休止期」が長引いているだけであれば、毛根自体はまだ活動能力を残している可能性があります。

この段階であれば、適切なケアや治療によって再び髪が生えてくる可能性は残されています。自己判断せず、専門家に状態を見てもらうことが重要です。

抜け毛が多いと毛根が死滅している証拠ですか?

抜け毛が多いことが、直ちに毛根の死滅を意味するわけではありません。健康な人でもヘアサイクルにより1日に50本~100本程度の髪は自然に抜け落ちます(休止期毛)。

問題となるのは、その抜け毛の「質」です。

もし、細くて短い産毛のような毛(軟毛)の抜け毛が著しく増えている場合、それはAGAなどによってヘアサイクルが乱れ、毛根が弱っているサインです。「死滅」の手前の危険信号と言えます。

太く長い毛が抜けている場合は、ヘアサイクルが正常である可能性もありますが、量が異常に多い場合は他の脱毛症も考えられます。

育毛剤で死滅した毛根は復活しますか?

育毛剤(医薬部外品)の主な目的は、頭皮環境を整え、血行を促進し、今ある髪を健康に育て、抜け毛を予防することです。

残念ながら、すでに完全に活動を停止(死滅)してしまった毛根を「復活」させる(=再生させる)働きは、育毛剤にはありません。

育毛剤は、あくまでまだ活動能力が残っている毛根や、弱っている毛根に対して、その働きをサポートするためのものです。毛根が死滅する前の、早期の段階で使用することが効果的です。

毛根の寿命は何年くらいですか?

1つの毛根が生涯で繰り返すヘアサイクル(成長期→退行期→休止期)の回数には限りがあり、一般的に15回~20回程度と言われています。

仮に1回のヘアサイクル(主に成長期)が平均4年だとすると、4年×15回=60年となり、理論上は生涯にわたって髪の毛が生え続ける計算になります。

しかし、AGAを発症すると、この1回のヘアサイクルが数ヶ月~1年程度に極端に短縮されます。

短いサイクルを早く繰り返すことになるため、毛根がヘアサイクルを終える回数の上限に早く達してしまい、結果として毛根の「寿命」が短くなり、髪を生み出す力を失ってしまうのです。

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