重金属検査で脱毛原因解明 – 水銀・鉛の影響とは

重金属検査で脱毛原因解明 - 水銀・鉛の影響とは

何を試しても改善しない薄毛の悩み、その原因は食生活や遺伝だけでなく、体内に蓄積した「重金属」かもしれません。

水銀や鉛、カドミウムなどの有害金属は、知らず知らずのうちに私たちの体に入り込み、髪の成長を司る毛母細胞の働きを妨げ、脱毛を引き起こすことがあります。

この記事では、重金属がなぜ脱毛につながるのか、どのような経路で体内に侵入するのかを詳しく解説します。

さらに、原因を特定するための重金属検査の種類、方法、費用、そして検査後の対策まで、専門的な情報をわかりやすく提供します。

目次

そもそも重金属とは何か

私たちの健康や髪の状態に影響を与える重金属について、基本的な知識から理解を深めましょう。重金属と聞くと、漠然と体に悪いものというイメージを持つ方が多いかもしれません。

しかし、すべての重金属が有害なわけではなく、中には生命維持に必要なものも存在します。ここでは、重金属の定義や種類、そしてなぜ体内に溜まってしまうのかを解説します。

私たちの身近に存在する重金属

重金属は、自然界に広く存在する元素の一部です。特定の密度以上の金属元素を指し、その種類は多岐にわたります。

例えば、土壌や水中にも微量の重金属は含まれており、私たちは日常生活の中で常にそれらに触れています。

問題となるのは、産業活動などを通じて環境中に放出された特定の有害金属が、食物連鎖などを通じて濃縮され、私たちの体内に高濃度で取り込まれる場合です。

大型の魚に含まれる水銀や、古い水道管から溶け出す鉛などがその代表例です。これらは、私たちの意図しないところで、食事や水、呼吸を通じて体内に侵入し、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

有害金属と必須ミネラルの違い

有害金属と必須ミネラルの違い

重金属は、体への影響によって「有害金属」と「必須ミネラル」に大別できます。有害金属は、たとえ微量であっても体に害を及ぼすもので、水銀、鉛、カドミウム、ヒ素、アルミニウムなどが含まれます。

これらは体内で重要な働きをする酵素の活動を阻害したり、細胞にダメージを与えたりします。一方で、必須ミネラルも重金属の一種ですが、生命活動を維持するために一定量必要なものです。

鉄、亜鉛、銅、セレン、マンガンなどがこれにあたります。これらは赤血球の生成、免疫機能の維持、そして健康な髪の成長に深く関わっています。

しかし、必須ミネラルであっても過剰に摂取すると、逆に健康を害することがあるため、バランスが重要です。

有害金属と必須ミネラルの主な例

分類主な元素体への影響
有害金属水銀、鉛、カドミウム、ヒ素神経毒性、腎機能障害、細胞機能の阻害などを引き起こす。
必須ミネラル亜鉛、鉄、セレン、銅不足すると貧血や免疫力低下、脱毛などを引き起こす。
過剰摂取で有害銅、マンガンなど必須ミネラルでも、過剰になると他のミネラルの吸収を妨げる。

なぜ体内に蓄積するのか

有害金属が体内で問題となる大きな理由は、その排出の難しさにあります。

私たちの体には、肝臓や腎臓などを中心とした解毒・排出機能が備わっていますが、有害金属の多くは、この機能でスムーズに処理できません。

特に、脂肪組織や骨、脳などの特定の組織に親和性が高く、一度入り込むとそこに長く留まり、徐々に蓄積していく性質があります。

例えば、水銀は脳や神経系に、鉛やカドミウムは骨や腎臓に蓄積しやすいことが知られています。

このようにして長期間にわたり体内に留まり続けた有害金属が、慢性的な体調不良や、原因不明の脱毛といった症状を引き起こす一因となるのです。

重金属が引き起こす脱毛の仕組み

毛母細胞に及ぶダメージ(重金属が成長期を阻害するイメージ)

体内に蓄積した有害金属は、どのようにして髪の健康を損ない、脱毛を引き起こすのでしょうか。その影響は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。

ここでは、重金属が毛髪の成長に与える具体的な影響について、細胞レベルでの働きから解説していきます。

毛母細胞への直接的なダメージ

髪の毛は、毛根の最深部にある「毛母細胞」が分裂を繰り返すことによって作られます。

この毛母細胞は、体の中でも特に細胞分裂が活発な場所の一つであり、それゆえに有害物質の影響を非常に受けやすいという特徴があります。

体内に侵入した有害金属、特に水銀や鉛は、毛母細胞の活動に必要な酵素の働きを阻害します。これにより、細胞分裂のエネルギー産生が滞り、正常な分裂ができなくなります。

その結果、新しく作られる髪の毛が細くなったり、十分に成長する前に抜け落ちてしまったりする「成長期脱毛」と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。

栄養素の吸収阻害と代謝異常

亜鉛とカドミウムの拮抗(受容体の取り合いの抽象図)

健康な髪を育てるためには、亜鉛や鉄、セレンといった必須ミネラルが欠かせません。しかし、有害金属はこれらの必須ミネラルの吸収や働きを妨げる性質を持っています。

化学的な性質が似ているため、本来ミネラルが結合すべき体内の受容体(レセプター)に有害金属が先に結合してしまう「拮抗作用」が起こるのです。

例えば、カドミウムは亜鉛の吸収を阻害します。亜鉛は毛母細胞の分裂や、髪の主成分であるケラチンの合成に重要な役割を担っているため、亜鉛不足は直接的に脱毛につながります。

このように、有害金属は髪に必要な栄養素が届くのを邪魔し、間接的に脱毛を促進させます。

ホルモンバランスの乱れ

髪の成長サイクルは、男性ホルモンや女性ホルモンといった性ホルモンの影響を大きく受けます。

一部の有害金属は「環境ホルモン(内分泌かく乱物質)」として作用し、体内の正常なホルモンバランスを乱すことが知られています。

例えば、体内で女性ホルモンに似た働きをすることで、本来のホルモンの分泌や作用を狂わせてしまうのです。ホルモンバランスが乱れると、ヘアサイクル(毛周期)にも異常が生じます。

髪が太く長く成長する「成長期」が短くなり、逆に髪が抜ける準備段階である「退行期」や「休止期」が長くなることで、全体の毛髪量が減少し、薄毛が目立つようになります。

脱毛に関連する主な重金属とその影響源

重金属名主な影響源脱毛への影響
水銀 (Hg)大型魚、歯科用アマルガム毛母細胞の活動阻害、ミネラルの吸収妨害
鉛 (Pb)古い水道管、排気ガス、塗料ヘモグロビン合成阻害による血行不良、栄養不足
カドミウム (Cd)たばこの煙、汚染された米や水必須ミネラル(特に亜鉛)の吸収を強く阻害する

体内に重金属が侵入する主な経路

私たちはどのような日常生活の中で、気づかないうちに有害金属を体内に取り込んでいるのでしょうか。その侵入経路は多岐にわたり、食事や呼吸、皮膚接触など様々です。

ここでは、私たちの生活環境に潜む重金属の侵入経路について具体的に見ていきましょう。リスクを知ることで、予防策を講じる第一歩となります。

食事から摂取するケース

食物連鎖によるメチル水銀の生物濃縮(大型魚リスクの可視化)

最も一般的な侵入経路は、日々の食事です。特に問題視されるのが、食物連鎖による生物濃縮です。

工業排水などに含まれるメチル水銀がプランクトンに取り込まれ、それを小さな魚が食べ、さらに大きな魚が食べるという連鎖の中で、水銀の濃度は数万倍にも濃縮されます。

そのため、マグロやカジキ、キンメダイといった大型の魚を頻繁に食べる習慣がある人は、水銀の摂取量が多くなる傾向があります。

また、ヒ素はひじきなどの海藻類に、カドミウムは米や玄米、貝類に多く含まれることがあります。

もちろん、これらの食品が直ちに危険というわけではありませんが、特定の食品に偏った食生活は、特定の重金属の蓄積リスクを高める可能性があることを認識しておくことが大切です。

重金属を多く含む可能性のある食品

重金属含まれる可能性のある主な食品注意点
水銀マグロ、カジキ、クジラなど大型の魚介類特に妊婦は摂取量に注意が必要。
カドミウム米、玄米、貝類(特に内臓)、甲殻類バランスの取れた食事が重要。
ヒ素ひじき、米ぬか、一部の井戸水ひじきは水戻しで含有量を減らせる。

大気汚染や生活環境からの影響

生活環境由来の暴露:水道管・排気・喫煙の抽象

食事だけでなく、私たちが吸い込む空気や、日常的に使う水にも重金属は含まれています。自動車の排気ガスや工場の煤煙には、かつては鉛が含まれていました(現在は無鉛ガソリンが主流)。

また、たばこの煙には多くの有害物質と共にカドミウムが含まれており、受動喫煙でも体内に取り込んでしまいます。

さらに、古い住宅では鉛製の水道管が使用されている場合があり、水道水に鉛が溶け出すリスクも指摘されています。

家庭内で使う調理器具や食器類、安価なアクセサリーなどにも、基準値を超える有害金属が使われているケースがあり、生活環境全体に注意を払う必要があります。

職業や趣味による特定の曝露リスク

特定の職業に従事している人や、特殊な趣味を持つ人は、一般の人よりも高濃度の重金属に曝されるリスクがあります。

例えば、塗装業や印刷業、バッテリー製造、金属加工などの現場では、鉛やカドミウム、水銀などを扱う機会が多くなります。

また、趣味で絵画(特に油絵の具)やステンドグラス、陶芸などを行う人も、顔料に含まれる鉛やカドミウムに触れる可能性があります。

これらの環境にいる場合は、適切な保護具の使用や換気を徹底するなど、意識的な対策が求められます。

歯科治療で使う金属の影響

歯科アマルガムからの水銀蒸気(口腔内の微量曝露)

過去に受けた歯科治療が、重金属蓄積の原因となっている場合もあります。特に「アマルガム」と呼ばれる歯科用充填材は、約50%が水銀で構成されています。

アマルガムは安価で加工しやすいため、以前は虫歯治療で広く使われていました。

口の中は常に温かく、噛むことによる摩擦や酸性の飲食物によって、アマルガムからごく微量の水銀が気化し、体内に吸収され続ける可能性があります。

現在では使用頻度が減っていますが、過去に治療した銀歯がアマルガムである可能性は否定できません。気になる場合は、歯科医に相談し、材質を確認することをお勧めします。

薄毛の原因を探る重金属検査の概要

原因不明の脱毛や体調不良が続く場合、体内の重金属蓄積を疑ってみる価値があります。その状態を客観的に評価するのが「重金属検査」です。

この検査を受けることで、どの種類の金属が、どの程度体内に溜まっているのかを数値で把握できます。ここでは、重金属検査の目的や種類、そしてどのような人が検査を検討すべきかについて解説します。

重金属検査でわかること

重金属検査の最大の目的は、体内に蓄積している有害金属の種類と量を特定することです。

水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、アルミニウムといった代表的な有害金属だけでなく、亜鉛、鉄、セレン、マグネシウムなどの必須ミネラルの過不足も同時に測定できます。

これにより、単に「何が溜まっているか」だけでなく、「何が足りないのか」という栄養状態のバランスも評価することが可能です。

脱毛の原因が、有害金属の過剰蓄積によるものなのか、それとも髪の成長に必要なミネラルの不足によるものなのか、あるいはその両方なのか、原因を多角的に探るための重要な手がかりを得られます。

主な検査方法の種類と特徴

重金属検査の全体像(毛髪・爪・血液・尿)

体内のミネラルバランスを調べる検査にはいくつかの方法があり、それぞれに特徴があります。採取する検体によって、測定できる内容や、それが示す体の状態(過去の蓄積か、最近の曝露かなど)が異なります。

自分の目的や体の状態に合わせて、適切な検査方法を選択することが重要です。一般的に行われるのは、毛髪、爪、血液、尿などを用いた検査です。

主な重金属検査方法の比較

検査方法採取する検体わかること
毛髪ミネラル検査髪の毛過去数ヶ月間の長期的なミネラルの蓄積状態
血液検査血液比較的最近(数日〜数週間)体内に取り込まれた金属の量
尿検査尿現在、体外に排出されている金属の量

検査を受けるべき人の特徴

重金属検査は、すべての人に必要というわけではありません。しかし、以下のような特徴に当てはまる場合は、一度検査を検討してみる価値があるかもしれません。

  • 原因不明の脱毛、薄毛に長年悩んでいる
  • 皮膚炎やアレルギー、慢性的な疲労感などの不調がある
  • マグロなどの大型魚を週に何回も食べる習慣がある
  • 歯科治療でアマルガム(銀歯)を入れている
  • 喫煙習慣がある、または家族に喫煙者がいる

医療機関での検査の流れ

重金属検査は、主に栄養療法や予防医学を専門とするクリニックや一部の皮膚科などで受けることができます。

一般的な流れとしては、まず医師による問診が行われ、生活習慣や食事内容、自覚症状などについて詳しくヒアリングします。

その上で、どの検査が適切かを判断し、検体の採取を行います。毛髪検査であれば、後頭部の根本付近の髪を少量カットするだけです。

血液や尿検査も、一般的な健康診断と同様の方法で採取します。採取した検体は専門の分析機関に送られ、後日、医師から結果の説明を受けることになります。

代表的な重金属検査の方法を詳しく解説

重金属検査にはいくつかの種類があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

どの検査が自分の状態を知るために最適なのかを判断するため、ここでは代表的な検査方法である「毛髪ミネラル検査」「爪検査」「血液検査」「尿検査」について、その特徴をさらに詳しく掘り下げて解説します。

毛髪ミネラル検査

毛髪ミネラル検査の採取方法(後頭部から数センチ採取)

脱毛や慢性的な不調の原因を探る目的で最も広く用いられているのが、毛髪ミネラル検査です。髪の毛は、血液中の成分を取り込みながら少しずつ伸びていきます。

そのため、髪の毛を分析することで、過去数ヶ月から半年といった長期間にわたる体内のミネラルバランスを知ることができます。

いわば、体の栄養状態や有害金属の蓄積が記録された「記録テープ」のようなものです。採取が簡単で、体に負担がかからない点も大きなメリットです。

後頭部の内側から、根本数センチの髪を少量カットするだけで検体として使用できます。

この検査は、現在進行形の急性中毒ではなく、長期的な有害金属の蓄積状態や、慢性的な必須ミネラルの過不足を評価するのに非常に適しています。

爪検査

爪検査は、毛髪ミネラル検査と似た特徴を持つ検査方法です。爪も髪の毛と同様に、体内のミネラルを排泄する経路の一つであり、血液中の成分を反映しながら成長します。

そのため、爪を分析することでも、長期的なミネラルの蓄積状態を評価することが可能です。毛髪が短くて採取が難しい方や、カラーリングやパーマの影響を避けたい場合に選択されることがあります。

ただし、一般的には毛髪検査の方がデータが豊富で、結果の解釈がしやすいとされています。採取方法は、手や足の爪を切り、それを検体として提出します。

血液検査と尿検査の違い

血液検査は、血管内を循環している「今」のミネラル状態を反映します。そのため、ごく最近に摂取した、あるいは曝露した有害金属の量を調べるのに適しています。

急性中毒が疑われる場合などには非常に有効な検査です。しかし、体は有害な金属を速やかに血液中から排出しようとするため、慢性的な蓄積を評価するには不向きな場合があります。

一方、尿検査は、体外に排出されている金属の量を測定します。腎臓の機能を経て、どのくらいの有害金属が体の外に出せているかを知る指標となります。

キレート剤という特定の薬剤を投与した後に尿を採取する「キレーションチャレンジテスト」では、体内にどのくらい有害金属が蓄積しているかを、より正確に評価することもできます。

各検査のメリットとデメリット

検査方法メリットデメリット
毛髪ミネラル検査長期間の蓄積がわかる、検体採取が容易外部からの汚染(シャンプー等)の影響を受ける可能性
血液検査最近の曝露状態が正確にわかる慢性的な蓄積の評価には不向き、採血が必要
尿検査現在の排出能力がわかる、非侵襲的一日の中での変動が大きい、蓄積量の評価は間接的

検査結果の正しい見方と解釈

検査を受けて結果が出ても、その数値が何を意味するのかを正しく理解できなければ対策にはつながりません。

検査結果は、単に高いか低いかを見るだけでなく、専門家と共に多角的な視点から解釈することが重要です。ここでは、検査結果を読み解く上での基本的なポイントを解説します。

基準値と自分の数値を比較する

検査結果の読み方:基準範囲とバランス感(過不足の俯瞰)

検査結果の報告書には、各ミネラル項目の測定値と共に「基準値」や「参考基準範囲」が記載されています。まずは、自分の数値がこの基準値の範囲内に収まっているか、それとも外れているかを確認します。

有害金属であれば、基準値を超えている場合に蓄積が疑われます。必須ミネラルであれば、基準値を下回っている場合は欠乏、上回っている場合は過剰摂取の可能性があります。

ただし、この基準値はあくまで一般的な目安であり、個人の年齢、性別、体質、生活習慣によって最適なバランスは異なります。

基準値からわずかに外れているからといって、すぐに深刻な問題があるとは限りません。

複数の金属のバランスを考える

重要なのは、個々の数値だけでなく、ミネラル全体のバランスです。前述したように、ミネラル同士には互いに影響し合う「拮抗作用」があります。

例えば、亜鉛と銅はバランスを取り合っており、銅が過剰になると亜鉛の働きが抑制され、亜鉛欠乏と同様の症状が出ることがあります。

また、有害金属であるカドミウムが高い数値を示している場合、同時に亜鉛が低い数値になっているケースが多く見られます。

このように、複数の項目を関連付けて見ることで、体内で何が起きているのかをより深く理解することができます。専門家は、こうしたミネラル間の相互作用を考慮しながら、結果を総合的に判断します。

専門家による結果の評価の重要性

重金属検査の結果は、自己判断で解釈するのが非常に難しいものです。数値の背後には、食生活、生活環境、遺伝的体質など、様々な要因が隠されています。

そのため、必ず検査を実施した医療機関の医師や、栄養学に詳しい専門家から説明を受けることが大切です。

専門家は、問診で得られた情報と検査結果の数値を照らし合わせ、なぜそのような結果になったのか、その背景にある根本的な原因は何かを分析します。

そして、その人に合った具体的な改善策、例えば食事内容の指導や必要なサプリメントの提案、生活習慣の見直しなどをアドバイスしてくれます。

検査はゴールではなく、あくまで自分自身の体を知り、健康を取り戻すためのスタート地点なのです。

検査後の対策とデトックス

デトックスと生活改善:食品・発汗・腸内ケア

検査によって体内の重金属蓄積やミネラルバランスの乱れが明らかになった場合、次に行うべきは具体的な対策です。

体内に溜まった有害金属を排出し、不足している栄養素を補う「デトックス」と「栄養療法」が中心となります。

ここでは、検査後に取り組むべき対策について、自分でできることから専門的な治療までを紹介します。

蓄積した重金属を排出する考え方

体内に蓄積した有害金属を排出(デトックス)するための基本的な考え方は、以下の二つのアプローチから成り立ちます。

  • 新たな有害金属の侵入を防ぐ(防御)
  • 体内に溜まった有害金属の排出を促す(排出)

まずは、これ以上有害金属を体内に取り込まないように、原因となる食事や生活習慣を見直すことが第一です。

その上で、体の解毒・排出機能を高める栄養素を積極的に摂取し、蓄積された金属が体外へ出ていくのをサポートします。この両輪を回していくことが、効果的なデトックスにつながります。

食生活の見直しでできること

デトックスの基本は、日々の食生活の改善です。有害金属と結合して体外への排出を助ける「キレート作用」を持つ栄養素や、肝臓の解毒機能を高める成分を意識的に摂取することが有効です。

例えば、ニンニクや玉ねぎに含まれるイオウ化合物、パクチー(コリアンダー)やブロッコリースプラウトなどは、デトックス効果が期待できるとして知られています。

また、有害金属の吸収を抑え、排出を促すためには、亜鉛やセレンなどの必須ミネラルや、食物繊維を十分に摂ることも重要です。

バランスの取れた食事を基本としながら、これらの食材を積極的に取り入れてみましょう。

デトックス効果が期待できる栄養素と食品

栄養素・成分主な働き多く含む食品
イオウ化合物有害金属と結合し排出を助けるニンニク、玉ねぎ、ニラ、ブロッコリー
亜鉛、セレン水銀などの有害金属の毒性を軽減する牡蠣、レバー、ナッツ類、玄米
食物繊維腸内で有害金属を吸着し便として排出する野菜、きのこ、海藻、玄米

専門医の指導によるキレーション治療

重金属の蓄積レベルが非常に高い場合や、食事療法だけでは改善が難しい場合には、専門医の管理下で「キレーション治療」という、より積極的なデトックス治療が行われることがあります。

これは、DMSAやEDTAといった「キレート剤」と呼ばれる薬剤を点滴や内服で投与する方法です。キレート剤は、血中で有害金属と強力に結合し、尿として体外に排出させる作用を持ちます。

非常に効果的な治療法ですが、同時に必須ミネラルも排出してしまう可能性があるため、必ず専門的な知識を持つ医師の診断と指導のもとで行う必要があります。

自己判断でのキレート剤の使用は絶対に避けてください。

生活習慣の改善ポイント

食事以外の生活習慣を見直すことも、デトックスをサポートする上で重要です。汗をかくことも、微量ながら有害金属を排出する経路の一つです。

適度な運動やサウナ、岩盤浴などで発汗を促すことは、血行を促進し、新陳代謝を高める効果も期待できます。また、腸内環境を整えることも大切です。

便は有害金属の最大の排泄ルートであり、便秘がちな人は体内に毒素を溜め込みやすくなります。発酵食品や食物繊維を十分に摂り、快便を心がけましょう。

良質な睡眠を確保し、ストレスを溜めないことも、体の解毒・修復機能を正常に保つために必要です。

重金属検査に関するよくある質問

検査に痛みはありますか?

毛髪ミネラル検査や爪検査、尿検査の場合、痛みは全くありません。毛髪検査は髪の毛を根本から少量カットするだけで、採血のように針を刺すことはありません。

血液検査の場合は、通常の健康診断と同様の採血を行いますので、針を刺す際にチクッとした痛みを感じます。

検査費用はどのくらいかかりますか?

重金属検査は、基本的に健康保険が適用されない自由診療となります。

そのため、費用は医療機関によって異なります。一般的な毛髪ミネラル検査の場合、検査項目にもよりますが、1万5千円から3万円程度が目安です。

血液検査や尿検査、あるいは複数の検査を組み合わせる場合は、さらに費用がかかることがあります。事前に医療機関に確認することをお勧めします。

保険は適用されますか?

前述の通り、薄毛や慢性疲労の原因を探る目的で行う重金属検査は、病気の診断ではないため、原則として公的医療保険の適用外となります。費用は全額自己負担です。

ただし、明らかに急性の中毒症状が見られるなど、医師が治療のために必要と判断した場合は、保険が適用されるケースも稀にあります。

結果はどのくらいでわかりますか?

検体を採取してから結果が出るまでの期間は、検査機関や医療機関によって異なりますが、一般的には2週間から4週間程度かかります。

採取された検体は、専門の分析機関で精密な機器を用いて分析されるため、ある程度の時間が必要です。結果が出たら、予約を取って医師から直接説明を受けるのが一般的です。

子供でも検査を受けられますか?

はい、お子様でも検査を受けることは可能です。

特に、アトピー性皮膚炎や発達に関する悩みなどがある場合に、原因の一つとしてミネラルバランスを調べるために検査が行われることがあります。

ただし、お子様の場合は成長段階にあるため、結果の解釈にはより専門的な知識が求められます。小児の栄養療法に詳しい医師に相談することが重要です。

Reference

YU, Vicky, et al. Alopecia and associated toxic agents: a systematic review. Skin Appendage Disorders, 2018, 4.4: 245-260.

KALES, STEFANOS N.; CHRISTIANI, DAVID C. Hair and metal toxicity. Hair in toxicology: an important bio-monitor, 2005, 125-158.

AZIZ, Abeer M. Abdel; HAMED, Sameera Sh; GABALLAH, Mohammad A. Possible relationship between chronic telogen effluvium and changes in lead, cadmium, zinc, and iron total blood levels in females: a case-control study. International journal of trichology, 2015, 7.3: 100-106.

PIGATTO, Paolo Daniele, et al. Alopecia areata and toxic metals. Skin Appendage Disorders, 2020, 6.3: 177-179.

SAMRA, Tara; LIN, Rachel R.; MADERAL, Andrea D. The effects of environmental pollutants and exposures on hair follicle pathophysiology. Skin Appendage Disorders, 2024, 10.4: 262-272.

YAVUZ, Ibrahim Halil, et al. Assessment of heavy metal and trace element levels in patients with telogen effluvium. Indian journal of dermatology, 2018, 63.3: 246-250.

OZAYDIN-YAVUZ, Goknur, et al. Alopecia areata different view; heavy metals. Indian Journal of Dermatology, 2019, 64.1: 7-11.

PETERS, Jane B.; WARREN, Michelle P. Reversible alopecia associated with high blood mercury levels and early menopause: a report of two cases. Menopause, 2019, 26.8: 915-918.

DE CARVALHO MACHADO, Carolina; DINIS-OLIVEIRA, Ricardo Jorge. Clinical and forensic signs resulting from exposure to heavy metals and other chemical elements of the periodic table. Journal of clinical medicine, 2023, 12.7: 2591.

LANSDOWN, Alan BG. Physiological and toxicological changes in the skin resulting from the action and interaction of metal ions. Critical reviews in toxicology, 1995, 25.5: 397-462.

目次
育毛剤ランキング 予約 アクセス