夏の抜け毛が多い時期の対処方法とは

夏抜け毛ひどい, 夏抜け毛増える, 夏抜け毛多い, 夏抜け毛対策

「夏になると、どうしてこんなに抜け毛が増えるのだろう…」シャワーの排水溝や枕にたまる髪の毛を見て、毎年この時期になると不安を感じる方は少なくありません。

夏の抜け毛は単なる季節的な現象なのでしょうか、それとも薄毛が進行している危険なサインなのでしょうか。

この記事では夏に抜け毛がひどくなる具体的な原因から日常でできる効果的な対策、そして見過ごしてはいけないAGA(男性型脱毛症)の可能性までを専門家の視点で詳しく解説します。

正しい知識で夏の頭皮と髪を守りましょう。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

夏に抜け毛が増えるのはなぜ?考えられる4つの原因

夏に抜け毛が増加するのには、いくつかの明確な理由があります。夏の厳しい環境が知らず知らずのうちに頭皮と髪に大きな負担をかけているのです。

紫外線による頭皮ダメージ

夏に降り注ぐ強力な紫外線は肌だけでなく頭皮にも深刻なダメージを与えます。

頭皮は顔の2倍以上の紫外線を浴びるともいわれ、日焼けによって炎症を起こしたり乾燥したりします。この頭皮環境の悪化が毛根の働きを弱め、抜け毛の原因となります。

汗や皮脂による頭皮環境の悪化

高温多湿の夏は汗や皮脂の分泌が活発になります。分泌された汗や皮脂を放置するとホコリなどと混ざり合って毛穴を詰まらせ、雑菌が繁殖しやすい環境を作り出します。

このことが頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎など)を引き起こし、抜け毛を助長します。

夏の頭皮トラブルとその原因

トラブル主な原因
日焼け・炎症紫外線
毛穴詰まり・ベタつき汗、皮脂
血行不良・乾燥冷房

夏バテによる栄養不足

夏の暑さで食欲が落ち、そうめんやアイスなど冷たくて食べやすいものばかりに食事が偏りがちです。

この食生活の乱れは髪の成長に必要なタンパク質やビタミン、ミネラルといった栄養素の不足を招きます。髪の材料が足りなければ、健康な髪は育ちません。

冷房による血行不良と乾燥

室内外の急激な温度差や冷房の効いた環境に長時間いることは自律神経の乱れを引き起こします。自律神経が乱れると血管が収縮し、頭皮の血行が悪化します。

また、冷房は空気を乾燥させるため頭皮の水分も奪われ、バリア機能の低下を招きます。

夏の強敵「紫外線」が頭皮と髪に与えるダメージ

夏の抜け毛対策を考える上で紫外線の影響は決して無視できません。紫外線がどのように頭皮と髪にダメージを与えるのか、具体的に見ていきましょう。

頭皮の「光老化」と炎症

紫外線を浴びることで頭皮の細胞はダメージを受け、老化が進みます。これを「光老化」と呼びます。

頭皮が日焼けすると肌が赤くなるのと同じように軽いやけど状態になり、炎症を起こします。この炎症が毛根の働きを直接的に弱め、ヘアサイクルを乱す原因となります。

髪の毛自体のダメージ(キューティクルの損傷)

紫外線は髪の表面を覆っているキューティクルにもダメージを与えます。

キューティクルが剥がれたり、傷ついたりすると髪内部の水分やタンパク質が流出し、髪はパサつき、切れ毛や枝毛の原因となります。

髪自体が弱くなることも抜け毛の印象を強くする一因です。

紫外線がもたらす主なダメージ

ダメージを受ける場所具体的な影響
頭皮炎症、乾燥、光老化、バリア機能低下
髪の毛キューティクルの損傷、パサつき、切れ毛

効果的な紫外線対策

最も効果的な対策は物理的に紫外線を遮ることです。外出時には通気性の良い帽子や日傘を活用しましょう。

また、髪や頭皮に使えるスプレータイプの日焼け止めも有効です。UVカット効果のあるヘアケア製品を取り入れるのも良いでしょう。

汗・皮脂・冷房|夏特有の頭皮環境の悪化

夏の快適な生活に欠かせない冷房や避けられない汗が、実は頭皮環境を悪化させる要因になっていることをご存知でしょうか。

汗と皮脂が引き起こす毛穴の詰まり

夏にかく大量の汗は皮脂や古い角質、空気中のホコリなどと混ざり合い、毛穴の周りに蓄積します。

この汚れをその日のうちにしっかりと洗い流さないと、毛穴が塞がれ、皮脂がスムーズに排出されなくなります。

詰まった毛穴は炎症やニキビの原因となります。

雑菌の繁殖と炎症のリスク

高温多湿な環境と汗や皮脂という栄養分は頭皮の常在菌であるマラセチア菌などが異常繁殖するのに好都合な条件です。

菌が異常繁殖すると頭皮に炎症が起こり、かゆみやフケを伴う「脂漏性皮膚炎」を発症することがあります。

この炎症が抜け毛の直接的な原因になることも少なくありません。

冷房が招く頭皮の血行不良

夏の室内で冷房が効いているのは快適ですが、体が冷えすぎると血行が悪くなります。特に頭皮のような末端の毛細血管は影響を受けやすく、血流が滞りがちになります。

この血行不良によって髪の成長に必要な酸素や栄養素が毛根に届きにくくなり、髪の成長を妨げます。

  • 体を冷やしすぎない服装の工夫
  • 軽いストレッチやマッサージ

【要注意】「夏だけの抜け毛」と放置する危険性

「夏の抜け毛は毎年恒例だから」「秋になれば治まるだろう」。多くの方がこのように考え、夏の抜け毛を軽視しがちです。

しかしその「季節のせい」という思い込みが、より深刻な薄毛の進行を見逃す原因になっているかもしれません。

抜け毛の「量」に隠された「質」の悪化

夏に抜ける毛をよく観察してみてください。もし抜けた毛の中に細くて短い、頼りない毛が多く混じっているのであれば、それは危険なサインです。

季節性の抜け毛であれば太く成長しきった毛が抜けるのが主です。

しかし未熟な毛が多く抜けている場合、それはヘアサイクルが乱れてAGAが進行していることを示唆しています。

季節性脱毛とAGAの抜け毛の違い

項目季節性の抜け毛AGAの抜け毛
期間一時的(夏~秋)慢性的・通年
毛の質太く、しっかりしている細く、短い毛が多い

夏のダメージは秋に一気に現れる

夏に受けた紫外線や頭皮環境の悪化によるダメージは、すぐには表面化しません。

髪の毛にはヘアサイクルがあるため、ダメージを受けた毛根から生える髪が抜け落ちるのは数ヶ月後の「秋」になることが多いのです。

「秋は抜け毛の季節」と言われるのは、この夏のダメージの蓄積が時間差で現れることも一因です。夏だけの問題と捉えていると、秋になって一気に薄毛が進行したように感じることになります。

「季節のせい」とAGAの進行を見逃すリスク

最も危険なのは「どうせ夏のせいだ」と自己判断し、本来であれば治療を開始すべきAGAの初期症状を見逃してしまうことです。AGAは進行性のため、対策が遅れれば遅れるほど回復は困難になります。

夏の抜け毛が多いと感じたら、それはご自身の頭皮と向き合う絶好の機会です。季節のせいと決めつけず、専門家による客観的な診断を受けることが重要です。

今日から始める夏の抜け毛対策|自宅でできるセルフケア

夏の厳しい環境から頭皮と髪を守るためには日々のセルフケアが基本となります。毎日の生活に少しの工夫を取り入れてみましょう。

正しいシャンプーと頭皮の洗浄

汗をかいた日はその日のうちにシャンプーで汚れをリセットすることが大切です。

ただし、洗浄力の強すぎるシャンプーは頭皮を乾燥させるため、アミノ酸系などの低刺激な製品を選びましょう。

指の腹で頭皮をマッサージするように優しく洗い、すすぎは時間をかけて丁寧に行い、シャンプー剤が残らないようにします。

バランスの取れた食事と水分補給

夏バテ気味でも髪の材料となるタンパク質(肉、魚、大豆製品)や、代謝を助けるビタミン・ミネラル(緑黄色野菜、海藻など)を意識して摂りましょう。

また、汗で失われる水分をこまめに補給することも体内の巡りを良くし、頭皮の健康につながります。

夏に意識したい食事のポイント

栄養素役割多く含む食品
タンパク質髪の主成分鶏むね肉、豆腐、アジ
ビタミンB群皮脂のコントロール、代謝促進豚肉、うなぎ、レバー
ビタミンC抗酸化作用、頭皮の健康維持ピーマン、ゴーヤ、キウイ

質の高い睡眠で頭皮を回復させる

日中に受けた紫外線などのダメージを修復し、髪の成長を促す「成長ホルモン」は睡眠中に分泌されます。

寝苦しい夜でも寝室の環境を整えるなどして質の良い睡眠をしっかりと確保するよう努めましょう。

季節性の抜け毛とAGAを見分けるポイント

「この抜け毛はただの季節的なものか、それともAGAが進行しているのか」と不安に思う方のために、見分けるためのポイントをいくつか紹介します。

抜け毛が続く期間で判断する

季節性の抜け毛は夏から秋にかけての一時的な現象であり、通常は1~2ヶ月程度で自然に落ち着きます。

もし季節が変わっても抜け毛の量が多い状態が続くようであれば、AGAなど他の原因を疑う必要があります。

抜ける毛の質(太さ・毛根)をチェック

先述の通り、抜け毛の質は重要な判断材料です。抜けた毛の中に細く短い毛や毛根の膨らみが小さい毛が多く含まれている場合は、AGAの可能性が高まります。

健康な抜け毛は毛根が白く丸みを帯びています。

薄毛の進行部位に注目する

AGAは主に生え際(M字部分)や頭頂部から進行するという特徴があります。

抜け毛だけでなく、これらの特定部位の地肌が透けて見えるようになってきたらAGAを強く疑うべきです。側頭部や後頭部には影響が出にくいのが一般的です。

不安な場合は専門クリニックへ

これらのセルフチェックはあくまで目安です。最も確実なのは専門のクリニックで医師の診断を受けることです。

マイクロスコープで頭皮の状態を詳細に確認したり、問診で生活習慣を把握したりすることで抜け毛の根本原因を特定し、あなたに合った最適な対策を提案します。

よくある質問

夏の抜け毛に関する、よくある質問にお答えします。

海やプールに入ると抜け毛は増えますか?

海水の塩分やプールの塩素は髪のキューティクルを傷つけ、タンパク質を流出させる原因になります。

また、頭皮への刺激にもなるため、髪や頭皮が乾燥し、抜け毛が増える可能性があります。

海やプールに入った後はできるだけ早く真水でしっかりと洗い流し、丁寧にケアすることが大切です。

夏は暑いのでシャンプーを1日に2回しても良いですか?

過度な洗髪は頭皮に必要な皮脂まで奪い去り、乾燥を招く原因となるため、基本的には1日1回で十分です。

どうしても汗やベタつきが気になる場合は2回目のシャンプーは洗浄力の非常にマイルドなものを選んだり、お湯だけで洗い流す「湯シャン」にしたりするなどの工夫をしましょう。

夏の間に育毛剤を使えば、抜け毛は防げますか?

市販の育毛剤の多くは頭皮環境を整えることを目的とした医薬部外品です。

保湿や血行促進、抗炎症作用などにより、夏の頭皮環境悪化に伴う抜け毛を予防する助けにはなる可能性があります。

しかし、AGAが原因の抜け毛を止める直接的な効果はありません。

夏の抜け毛は秋になれば本当に治まりますか?

原因が紫外線や夏バテなどの一時的なものであれば季節が変わり、生活習慣が整うことで抜け毛は自然に治まることが多いです。

しかし、その抜け毛がAGAの進行サインであった場合は秋になっても治まることはなく、むしろ進行が続いていきます。

3ヶ月以上抜け毛が多い状態が続く場合は一度専門医に相談することをお勧めします。

以上

参考文献

RANDALL, Valerie Anne. Androgens and hair growth. Dermatologic therapy, 2008, 21.5: 314-328.

KATAYAMA, Ichiro, et al. Japanese guidelines for atopic dermatitis 2017. Allergology International, 2017, 66.2: 230-247.

SUZUKI, Kazuhiro, et al. Scalp microbiome and sebum composition in Japanese male individuals with and without androgenetic alopecia. Microorganisms, 2021, 9.10: 2132.

INUI, Shigeki, et al. Clinical significance of dermoscopy in alopecia areata: analysis of 300 cases. International journal of dermatology, 2008, 47.7: 688-693.

YANAGISAWA, Masayuki; SATO, Akio. Long-Term (Over 10 Years) Evaluation of Efficacy and Safety of Finasteride in Japanese Men with Androgenetic Alopecia: Summary of Three Investigations. In: Hair Transplant Forum International. Hair Transplant Forum International, 2022. p. 130-132.

KURE, Katsuhiro; ISAGO, Tsukasa; HIRAYAMA, Takeshi. Changes in the sebaceous gland in patients with male pattern hair loss (androgenic alopecia). Journal of Cosmetic Dermatology, 2015, 14.3: 178-184.

目次