増毛とAGAの関係性|治療選択のポイント

増毛とAGAの関係性|治療選択のポイント

増毛とAGA治療は薄毛という共通の悩みに対する解決策ですが、そのアプローチは全く異なります。

増毛は物理的に髪を増やして即座に見た目を変える手法であり、AGA治療は医学的な根拠に基づき発毛を促す医療行為です。

どちらが良い悪いではなく、求める結果や期間、予算に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。

この記事では増毛とAGA治療の違い、それぞれのメリット・デメリット、そして両者を併用する際の戦略について詳しく解説し、あなたが後悔のない選択をするための判断材料を提供します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

増毛とAGA治療の根本的な違いを理解する

増毛とAGA治療の最大の違いは、アプローチが「物理的」か「医学的」かという点にあり、求める即効性と持続性によって選択すべき手段が明確に分かれます。

増毛は今ある髪に人工毛を結びつけたり、特殊なシートを使ったりして物理的に毛量を増やすため、施術直後から劇的な変化を実感できます。

一方でAGA治療は内服薬や外用薬を用いてヘアサイクルを正常化し、自身の髪を育てることを目的とするため、効果を実感するまでに時間を要します。

この根本的な性質の違いを理解せずに行動を起こすと、期待した結果と実際の効果にギャップが生じ、時間と費用を浪費する原因となります。

増毛は見た目を即座に変える物理的な手段

増毛という手法の本質は、視覚的なボリュームアップを短時間で実現することにあります。自身の髪が成長するのを待つ必要がなく、施術を受けたその日に理想のヘアスタイルを手に入れることが可能です。

例えば、結婚式や同窓会といった重要なイベントが直前に控えている場合や、特定の部分だけが薄くなってしまいヘアセットが決まらないといった悩みに対して、増毛は強力な解決策となります。

人工毛を使用するため、色や太さ、長さを自由に調整でき、現在の自毛に自然に馴染ませる技術も向上しています。

ただし、これはあくまで一時的または物理的な処置であり、自分の髪そのものが生えてきたり、太くなったりするわけではないという点を認識しておく必要があります。

AGA治療は薄毛の進行を抑えて発毛を促す医療行為

AGA(男性型脱毛症)治療は、薄毛の原因となっているホルモンバランスや血流不全に対して医学的に介入する方法です。

クリニックで処方されるフィナステリドやデュタステリドといった内服薬は抜け毛の原因となる物質の生成を阻害し、進行を食い止める役割を果たします。

また、ミノキシジルなどの発毛剤は毛母細胞を活性化させ、新しい髪の成長を促します。

これらの治療は自分の髪を取り戻すという根本的な解決を目指すものですが、魔法のようにすぐに髪が生えるわけではありません。

ヘアサイクルという髪の生え変わり周期に合わせて効果が現れるため、見た目の変化を感じるまでには最低でも3ヶ月から半年、一般的には1年程度の継続が必要です。

目的と即効性における決定的な差

どちらを選択するかは、「今すぐ見た目を変えたいのか」それとも「将来的に自分の髪を維持したいのか」という目的によって決まります。

増毛はカモフラージュとしての側面が強く、即効性においては右に出るものはありません。

対してAGA治療は「再生と維持」であり、時間はかかりますが、成功すればメンテナンスの手間が少ない自毛での生活が可能になります。

多くの人がこの二つの違いをあいまいに捉えていますが、スタート地点での期待値調整を誤ると、治療の途中で挫折したり、増毛のメンテナンス費用に驚いたりすることになります。

まずは自分の優先順位を整理することが、後悔のない選択への第一歩です。

アプローチの違いまとめ

比較項目増毛(結毛・貼り付け等)AGA治療(医療機関)
アプローチ方法物理的に人工毛などを付加する医学的に発毛組織へ働きかける
効果の実感速度施術直後から変化を実感可能早くて3ヶ月、通常6ヶ月以上
持続性と性質定期的なメンテナンスで維持治療継続により自毛が成長

AGA進行中に増毛を行うメリットとデメリット

AGAが進行している状態で増毛を行うことは、見た目のストレスを即座に解消できる大きなメリットがある一方で、頭皮環境への影響や根本解決にはならないというデメリットも抱えています。

薄毛の進行は待ってくれませんが、増毛を行うことで心理的な余裕が生まれ、自信を取り戻すきっかけになります。

しかし増毛はあくまで対処療法であり、AGAの進行そのものを止める力はありません。そのため、増毛をしている安心感からAGAの治療を後回しにしてしまい、気づいた時には自毛がさらに減っていたという事態も起こり得ます。

メリットとデメリットの双方を天秤にかけ、現状の自分にとってどちらが利益大きいかを冷静に判断することが重要です。

薄毛が目立つ部分をすぐにカバーできる利点

AGAの特徴として、生え際や頭頂部など特定の部位から薄くなる傾向がありますが、増毛はこうしたピンポイントの悩みに対して非常に有効です。

全体的には髪があるものの、つむじ周りだけが透けて見えるといった場合、その部分にだけ数百本の増毛を行うことで驚くほど自然にカバーできます。

毎朝のセットで薄い部分を隠すために時間を費やしたり、風が吹くたびに髪型を気にしたりするストレスから解放されるのは、増毛ならではの利点です。

また、かつらのように頭全体を覆うわけではないため、蒸れにくく、周囲に気づかれにくいという点も、社会生活を送る上で大きなプラス要素となります。

根本的な脱毛原因は解決しないという注意点

増毛によって見た目は改善されますが、頭皮の下で起きているAGAの進行メカニズムには一切関与しません。男性ホルモンの影響によるヘアサイクルの乱れは、増毛をしていてもしていなくても進行し続けます。

結毛式増毛の場合、自毛1本に対して数本の人工毛を結びつけますが、土台となる自毛がAGAの影響で抜けてしまえば、結びつけた人工毛も同時に失われます。

つまり、AGAが進行期にある場合、せっかく増毛しても土台となる髪が次々と抜けてしまい、増毛の効果を持続させることが難しくなるリスクがあります。

見た目が改善されたからといって薄毛が治ったわけではないという事実を忘れてはいけません。

頭皮への負担と既存の髪への影響

物理的に髪を増やす行為は、少なからず頭皮や既存の髪に負担をかける可能性があります。

例えば、自毛に人工毛を結びつけるタイプの場合、1本の自毛にかかる重量が増加するため、牽引性脱毛症のような抜け毛を引き起こすリスクがゼロではありません。

また、貼り付け式の増毛では強力な接着剤やテープを使用するため、肌が弱い人は頭皮がかぶれたり、炎症を起こしたりすることがあります。

頭皮環境が悪化すると健康な髪の成長を妨げることになり、結果としてAGAの進行を助長してしまう恐れもあります。

技術の進歩により負担は軽減されていますが、自分の頭皮の状態を見極めながら慎重に行う必要があります。

メンテナンスが必要になりコストがかさむ可能性

増毛は「一度やれば終わり」ではなく、継続的なメンテナンスが必要不可欠です。自毛は伸びるため、結びつけた人工毛の結び目は徐々に頭皮から浮き上がってきます。

これを根元に戻すリペア作業や、抜けてしまった分を補充する追加施術が定期的に発生します。また、人工毛自体も経年劣化するため、定期的な交換が必要です。

これらのメンテナンスには都度費用がかかり、AGA治療薬の月額費用と比較しても高額になるケースが少なくありません。

初期費用が安く見えても、ランニングコストを含めると経済的な負担が大きくなることを事前に想定し、無理のない計画を立てることが大切です。

増毛のメリット・デメリット対照

視点メリットデメリット
見た目・心理面即座に悩みを解消し自信回復根本解決ではない不安が残る
健康・身体面薬の副作用リスクがない頭皮への負担や牽引性脱毛
経済・管理面必要な分だけ調整が可能永続的な維持費が発生する

自分の薄毛タイプに合わせた選択基準

薄毛の進行度合いやタイプによってAGA治療と増毛のどちらが適しているかは大きく異なり、自身の現状を客観的に把握することが正しい選択の鍵となります。

全体的に髪の密度が低下している場合とM字ハゲのように生え際が後退している場合、あるいは頭頂部がカッパのように薄くなっている場合では、有効なアプローチが変わってきます。

一般的に毛根がまだ生きている初期から中期の段階であればAGA治療が奏功しやすいですが、すでに毛根が死滅し、産毛すら生えていないような完全な脱毛部位に対しては、医学的な発毛治療でも限界があります。

自分の薄毛がどの段階にあり、どのエリアをカバーしたいのかを明確にすることで、無駄のない選択が可能になります。

全体的なボリュームダウンにはAGA治療が適している

髪の毛一本一本が細くなり、全体的に地肌が透けて見えるような薄毛の場合、AGA治療による改善効果が高く期待できます。

これは多くの毛根がまだ活動しており、適切な治療によって太く長く成長する余地が残されているからです。内服薬で抜け毛を減らしつつ、外用薬で毛根を刺激することで、全体の密度を底上げすることが可能です。

このタイプの薄毛に対して増毛を行うと広範囲にわたって大量の人工毛が必要となり、費用が膨大なものになる上、結びつける対象の自毛が細いため負担が大きくなりすぎます。

したがって、全体的なボリューム不足を感じている人は、まず医療機関での治療を優先して検討する価値があります。

生え際や頭頂部の局所的な薄毛には増毛が有効

額の生え際(M字部分)や頭頂部のつむじ周辺など特定の範囲だけが薄くなっている場合、増毛はその真価を発揮します。

特に生え際が後退してしまい、産毛もなくなってツルツルの皮膚になってしまっている場合、AGA治療薬を使っても新しい髪を生やすことは非常に困難です。

こうした「毛根が存在しない、あるいは機能を停止している」エリアに対しては、貼り付け式の増毛や残っている周辺の髪を利用した編み込み式の増毛が即座に解決策となります。

自分のコンプレックスとなっている部分だけをピンポイントで隠すことができるため、効率的かつ確実に見た目を改善できる手段と言えます。

進行度合いによる使い分けの判断

AGAの進行レベルによっても、推奨される方法は変わります。初期段階であれば、薬による治療で完全な回復が見込めるケースが多く、増毛の必要性は低いと言えます。

しかし進行が進み、自毛の量が著しく減ってしまった段階では、増毛を結びつける土台すら不足することになります。

このような重度の場合は金具で装着するタイプのかつら(ウィッグ)や、頭皮に直接貼り付けるタイプの増毛、あるいは自毛植毛といった外科的な手段も視野に入れる必要があります。

重要なのは、現在の自分の髪の量と質が希望する増毛法に耐えられるかどうか、そしてAGA治療で回復の見込みがある領域がどれくらい残っているかを見極めることです。

タイプ別推奨アプローチ

薄毛の状態・タイプAGA治療の適合性増毛の適合性
全体的に髪が細い・透ける高い(改善の余地大)低い(負担大・高コスト)
生え際の後退(皮膚化)限定的(発毛困難な場合あり)高い(物理的にカバー可能)
頭頂部の局所的な薄毛中程度(時間はかかる)非常に高い(即効性あり)

増毛とAGA治療の併用は可能か

結論から言えば、増毛とAGA治療の併用は可能であり、互いの欠点を補い合う非常に合理的な戦略となり得ます。

AGA治療には効果が出るまでの「空白の期間」が存在し、多くの患者さんがこの期間の見た目に苦悩します。

この期間を増毛でカバーすることで、精神的なストレスを軽減しながら治療を継続することができます。

また、AGA治療で全体的なボリュームを戻しつつ、どうしても回復しきれなかった生え際などの細かい部分を増毛で整えるという使い方も効果的です。

ただし、併用にはコストの管理と、施術のタイミングに関する綿密な計画が必要です。

治療効果が出るまでの期間を増毛で凌ぐ方法

AGA治療を開始してから実際に髪が増えたと実感できるまでには、半年から1年程度の時間が必要です。

初期脱毛と呼ばれる一時的な抜け毛の増加が起こることもあり、治療開始直後は逆に見た目が寂しくなることさえあります。

この精神的に辛い時期に一時的に増毛を利用して見た目を整えることは、治療を挫折せずに続けるための有効な手段です。

例えば、スプレー式の簡易増毛剤や、着脱が容易な部分ウィッグなどを活用し、自毛が育ってくるまでの「つなぎ」として利用します。

自毛が十分に育ってきた段階で徐々に増毛の量を減らしていけば、周囲に違和感を与えることなく自然に自毛へと移行することが可能です。

併用する際の費用の考え方とバランス

両方を同時に行うとなると、当然ながら費用負担は大きくなります。AGA治療には毎月の薬代がかかり、増毛には初期費用とメンテナンス代がかかります。

予算が無制限にある場合を除き、どちらにどれだけの資金を配分するかを決める必要があります。

おすすめの考え方は、まずはAGA治療をベースとして予算を確保し、残りの予算で最小限の増毛を行うというスタイルです。増毛にお金をかけすぎて治療がおろそかになっては本末転倒です。

また、医療ローンなどを利用してAGA治療の初期投資を平準化し、月々の支払いを管理しやすくするといった工夫も必要になります。期間を区切って予算を組むことで、家計への圧迫を防ぐことができます。

施術を受ける順番とタイミングの調整

併用を行う場合、どちらを先に始めるか、あるいはどのタイミングで組み合わせるかが重要です。基本的にはAGA治療を先行させ、頭皮の状態を整えることを優先すべきです。

治療薬の服用を開始し、頭皮の炎症などが起きていないことを確認してから増毛を行うのが安全です。

特に貼り付け式の増毛を行う場合、頭皮に薬剤を塗布する育毛剤(外用薬)の使用が制限されることがあります。

外用薬が使えないとAGA治療の効果が半減してしまう可能性があるため、医師や増毛サロンの担当者とよく相談し、内服薬のみで治療を進めるのか、通気性の良い増毛法を選ぶのかといった調整を行う必要があります。

増毛の種類とそれぞれの特徴

増毛と一口に言っても、その手法は多岐にわたり、ライフスタイルや薄毛の状態によって選ぶべき種類が異なります。

大きく分けると、自分の髪に人工毛を結びつける「結毛式」、特殊なシートを頭皮に貼り付ける「貼り付け式」、そして糸などを土台にして髪を編み込む「編み込み式」などが存在します。

それぞれにメリットとデメリットがあり、耐久性やメンテナンスの頻度、洗髪のしやすさなどが異なります。

自分の生活習慣、例えばスポーツを頻繁にするのか、ヘルメットを被る仕事なのかといった要素も考慮して最適な方法を選ぶことが、快適な増毛ライフを送るための条件となります。

結毛式(自毛に人工毛を結びつける)

結毛式は現在生えている自分の髪の毛の根元近くに、2本から6本程度の人工毛を結びつけてボリュームを出す方法です。

大手メーカーの多くが主力としている手法で、非常に自然な仕上がりが特徴です。自毛を活かすため、手櫛を通した時の感触も違和感が少なく、普段通りのシャンプーやドライヤーが可能です。

少しずつ増やしていくことができるため、周囲に急激な変化を気づかれにくいという利点もあります。

一方で、土台となる自毛が抜けると人工毛も一緒に落ちてしまうため、効率が悪くなる場合があります。また、自毛が伸びると結び目が上がってくるため、定期的に結び目を根元に戻すメンテナンスが必要です。

貼り付け式(人工皮膚を頭皮に貼る)

貼り付け式は、薄い人工皮膚(ベース)に髪を植え込んだものを、医療用接着剤などで頭皮に直接貼り付ける方法です。生え際の後退が著しい場合や、頭頂部が広範囲に薄い場合に適しています。

最大のメリットは地肌と一体化するため、激しいスポーツや水泳なども可能で、引っ張られても外れる心配がほとんどない点です。生え際のラインも非常にリアルに再現できます。

しかし、常に頭皮にシートが密着している状態となるため蒸れやすく、肌トラブルのリスクがあります。

また、一度貼り付けると自分では外せないタイプが多く、定期的にサロンで剥がして洗浄し、貼り直すというメンテナンスが必要です。

編み込み式(専用の糸で土台を作る)

編み込み式は、残っている自毛に専用の糸を編み込んで土台を作り、その土台にウィッグ(かつら)状の製品を固定する方法です。

24時間着けっぱなしにすることができ、金具で留めるタイプのようなズレや外れる不安がありません。

頭皮との間にわずかな空間ができるため、貼り付け式に比べて通気性が良いのが特徴です。また、ある程度の自毛があれば強固に固定できます。

デメリットとしては、編み込んだ部分の自毛が伸びてくると製品全体が浮いてきてグラグラするため、月に一度程度の編み直しが必要になることです。

編み込み部分の洗浄が難しく、衛生面でのケアに注意が必要です。

主な増毛法の比較

増毛タイプ自然さ・見た目耐久性・固定力適した薄毛タイプ
結毛式極めて自然自毛に依存全体的に薄い・透ける
貼り付け式生え際もリアル非常に強い生え際後退・無毛部あり
編み込み式安定感がある強い広範囲の薄毛・M字

AGA治療薬の種類と期待できる効果

AGA治療を選択する場合、使用される薬剤の特性と効果を正しく理解しておくことが重要です。治療の基本となるのは、抜け毛を抑制する「守り」の薬と、発毛を促進する「攻め」の薬の組み合わせです。

日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度の高いこれらの薬は、多くのクリニックで処方されていますが、副作用のリスクや効果の現れ方には個人差があります。

医師の指導のもと、自分の症状や体質に合った薬を選定し、用法用量を守って継続することが、安全かつ効果的な治療への近道です。

ここでは主要な治療薬とその役割について解説します。

内服薬による進行抑制と発毛促進

AGA治療の主役となるのが内服薬です。代表的な成分として「フィナステリド」と「デュタステリド」があります。

これらは男性ホルモン(テストステロン)が脱毛指令を出す悪玉ホルモン(DHT)に変換されるのを防ぐ働きをします。

これにより、短くなっていたヘアサイクルを正常に戻し、抜け毛を劇的に減らす効果が期待できます。

一方、直接的に発毛を促す内服薬として「ミノキシジルタブレット(内服)」が処方されることがあります。これは血管を拡張し、毛乳頭への栄養供給を高めることで太い髪を作ります。

ただし、ミノキシジル内服薬は全身の多毛や動悸などの副作用リスクがあるため、慎重な医師の判断が必要です。

外用薬による直接的な毛根へのアプローチ

外用薬(塗り薬)の代表格は「ミノキシジル外用液」です。ドラッグストアで市販されている発毛剤の主成分としても有名です。

頭皮に直接塗布することで毛包に直接作用し、細胞の増殖やタンパク質の合成を促進します。内服薬に比べて全身性の副作用リスクが低く、比較的安全に使用できるのが特徴です。

フィナステリドなどの内服薬とミノキシジル外用薬を併用することは、AGA治療の王道パターンとされており、相乗効果によってより高い発毛効果が期待できます。

頭皮のかぶれやかゆみが出ることがあるため、肌の状態を見ながら使用を継続します。

注入治療(メソセラピー)の役割

内服薬や外用薬に加えて、頭皮に直接成長因子(グロースファクター)やミノキシジルなどの有効成分を注入する「メソセラピー」や「HARG療法」と呼ばれる治療法があります。

これは、毛根にダイレクトに栄養を届けることで休止期にある毛根を叩き起こし、発毛のスピードを加速させることを目的としています。

投薬治療だけでは効果が出るまでに時間がかかる場合や、より短期間で結果を出したい場合にオプションとして提案されることが多いです。

注射器や専用の機器を使用するため痛みやコストを伴いますが、治療の立ち上がりを良くするブースター的な役割を果たします。

主要な治療成分一覧

成分名・治療法主な役割・作用期待できる効果
フィナステリド抜け毛の抑制(守り)進行停止・現状維持
デュタステリド強力な抜け毛抑制広範囲の薄毛改善
ミノキシジル発毛促進(攻め)髪を太く・長くする

コストパフォーマンスの比較と長期的な視点

増毛とAGA治療を比較検討する際、最も気になる要素の一つが費用対効果です。

短期的な視点で見れば、増毛は初期費用がかかるもののすぐに結果が出ますが、長期的な視点で見ると継続的なメンテナンス費用が積み重なり、総額が膨らむ傾向にあります。

一方、AGA治療は月々の薬代が必要ですが、ジェネリック医薬品の利用などでコストを抑えることが可能であり、維持期に入れば減薬できる可能性もあります。

生涯にわたって髪の悩みを解決するために、どれくらいの予算が必要になるのかをシミュレーションし、経済的に無理のない選択をすることが、途中で諦めないための重要なポイントです。

初期費用とランニングコストの違い

増毛の初期費用は数万円から数十万円と幅広く、取り付ける量や製品のグレードによって大きく変動します。特にオーダーメイドのかつらや高品質な貼り付け式を選択すると、初期投資は高額になります。

対してAGA治療の初期費用は、診察代と1ヶ月分の薬代で数千円から1万5千円程度で済むケースが大半です。

しかし、増毛の本当のコストはランニングコストにあります。月1回のメンテナンスや製品の買い替えなどで、年間数十万円単位の維持費がかかることが一般的です。

AGA治療も継続が必要ですが、薬の価格は比較的安定しており、オンライン診療などを活用すれば月額数千円以内に抑えることも可能です。

生涯でかかるトータル費用のシミュレーション

10年、20年という長期スパンで考えると、両者の費用差はさらに明確になります。

増毛の場合、年齢とともに薄毛が進行すれば増毛量を増やす必要が出てくるため、コストは右肩上がりになる傾向があります。製品の寿命による買い替えも数年おきに発生し、その都度まとまった出費が必要です。

一方、AGA治療は、ある程度髪が生え揃った後は、その状態をキープするための維持療法へと移行するため薬の量を減らしたり、服用頻度を下げたりすることでコストダウンできる場合があります。トータルで見ると、自分の髪を蘇らせて維持するAGA治療の方が、経済的なパフォーマンスが良いケースが多いと言えます。

精神的な満足度と費用のバランス

コストパフォーマンスは単なる金額の大小だけでなく、得られる精神的な満足度とのバランスで考えるべきです。

いくら安くても毎日鏡を見るたびに薄毛が気になり、自信を持てない状態が続くのであれば、それは良い投資とは言えません。

逆に、多少費用がかかっても、増毛によって即座にコンプレックスから解放され、仕事やプライベートに積極的になれるのであれば、その費用は「自信を買うための投資」として正当化できます。

大切なのは、自分が「いつまでに」「どのような状態になりたいか」を明確にし、その目標達成のために支払う対価として納得できるかどうかを自問することです。

期間別コストイメージ

期間・視点増毛(継続的な施術)AGA治療(投薬メイン)
開始初年度初期費用+月次メンテ(高)検査費+月次薬代(低〜中)
5年後の累計維持費・買替で増加傾向定額または減薬で安定
コストの性質変動費・製品寿命依存サブスクリプション型

増毛とAGAの関係性|治療選択のポイントに関するよくある質問

増毛をするとAGAは進行してしまいますか?

増毛自体が直接的な原因となってAGAの進行スピードを生物学的に速めることはありません。AGAはあくまで体内のホルモンバランスと遺伝的要因によるものです。

ただし、増毛による重みや牽引力が負担となり、抜け毛が増える「牽引性脱毛症」を併発するリスクはあります。

また、増毛で見た目が改善されたことに安心してAGAの治療を行わずにいると水面下で本来のAGAは進行し続けるため、結果として自毛が減ってしまうことになります。

AGA治療薬と増毛のメンテナンスは同時にできますか?

可能です。実際に多くの人がAGA治療薬を服用しながら、増毛サロンに通っています。

ただし、貼り付け式の増毛や頭皮全体を覆うようなかつらを使用している場合、外用薬(塗り薬)の使用が物理的に難しくなることがあります。

その場合は内服薬のみでの治療を選択するか、通気性が良く頭皮に直接触れられるタイプの増毛法を選ぶ必要があります。

医師と増毛サロンの担当者の両方に併用している旨を伝え、適切なアドバイスをもらうことが大切です。

どちらから始めるのが正解ですか?

基本的には、まず医療機関でAGAの診察を受け、治療を開始することをお勧めします。自分の髪が回復する可能性があるのなら、それが最も自然でコストパフォーマンスの良い解決策だからです。

半年ほど治療を続けても効果が不十分な場合や特定の部位だけ改善が見られない場合に、その部分を補う形で増毛を検討するのが合理的な順序です。

ただし、結婚式などのイベントが直近にあり、明日すぐにでも見た目を変えたいという緊急性が高い場合は、増毛を先行させることも間違いではありません。

増毛をやめたくなったらすぐに元に戻せますか?

増毛の種類によります。自毛に結びつけるタイプや編み込みタイプであれば人工毛を取り外す(あるいは自毛ごとカットする)ことで元の状態に戻すことは比較的容易です。

しかし、貼り付け式の場合、剃毛してから装着しているケースがあり、その場合は増毛をやめると剃り上げた部分が露出してしまうため、すぐに元のヘアスタイルに戻すことは難しくなります。

やめる時のリスクや自毛が伸びるまでの移行期間の過ごし方についても、契約前に確認しておくことが重要です。

かつらと増毛の違いは何ですか?

厳密な定義はありませんが、一般的に「かつら(ウィッグ)」は帽子のように着脱可能な製品を指し、「増毛」は自毛や頭皮に固定して24時間過ごせるものを指す傾向があります。

増毛は取り外しの手間がなく、お風呂や寝る時もそのままでいられるため、自分の髪のような感覚で生活できるのが特徴です。

かつらは着脱の手間はありますが、頭皮を洗う際に完全に開放できるため、衛生面を保ちやすいという利点があります。

最近では両者の境界線も曖昧になってきており、自分のライフスタイルに合わせて選ぶことが一般的です。

参考文献

OURA, Hajimu, et al. Adenosine increases anagen hair growth and thick hairs in Japanese women with female pattern hair loss: a pilot, double‐blind, randomized, placebo‐controlled trial. The Journal of dermatology, 2008, 35.12: 763-767.

TAJIMA, Masahiro, et al. Characteristic features of Japanese women’s hair with aging and with progressing hair loss. Journal of dermatological science, 2007, 45.2: 93-103.

KAMISHIMA, Tomoko, et al. Divergent progression pathways in male androgenetic alopecia and female pattern hair loss: Trichoscopic perspectives. Journal of Cosmetic Dermatology, 2024, 23.5: 1828-1839.

HARADA, Kazutoshi, et al. Efficacy of autologous dermal sheath cup cell transplantation in male and female pattern hair loss: A Single‐Arm, Multi‐Center, phase III equivalent clinical study. The Journal of Dermatology, 2023, 50.12: 1539-1549.

MESINKOVSKA, Natasha Atanaskova; BERGFELD, Wilma F. Hair: What is New in Diagnosis and Management?: Female Pattern Hair Loss Update: Diagnosis and Treatment. Dermatologic clinics, 2013, 31.1: 119-127.

TAKAHASHI, Tomoya, et al. The first clinical trial of topical application of procyanidin B‐2 to investigate its potential as a hair growing agent. Phytotherapy research, 2001, 15.4: 331-336.

目次