

最近、髪のボリュームが減った、分け目が目立つようになった、と感じていませんか。女性の薄毛は、デリケートで誰にも相談しにくい悩みの一つです。
しかし、その悩みはあなた一人だけのものではありません。薄毛には様々な種類と原因があり、正しい知識を持つことが解決への第一歩となります。
当サイト「女性薄毛治療のいろは」では、女性の薄毛の種類から原因、ご自身でできるチェック方法、そして治療の考え方まで、基本的な知識を分かりやすく解説します。
あなたの髪の悩みに寄り添い、前向きな一歩を踏み出すための情報がここにあります。
女性の薄毛多様な種類と最初のアクション


「女性の薄毛」と一括りに考えがちですが、実はその背景には多くの種類が存在します。
ご自身の状態を正しく知るためには、まずどのような種類があるのかを把握することが大切です。
女性に見られる脱毛症の多様性と、悩んだときに取るべき行動の指針を見ていきましょう。
薄毛・脱毛症は一種類ではない
女性の髪が薄くなる原因は、決して一つではありません。加齢やホルモンバランスの変化だけでなく、生活習慣や特定の疾患、服用している薬の影響など、実に様々な要因が複雑に絡み合って症状として現れます。
そのため、自己判断で「きっとこれだろう」と決めつけてしまうのは、かえって解決を遠ざけてしまう可能性があります。まずは、どれほど多くの脱毛症が存在するのかを知ることから始めましょう。
以下に女性に見られる代表的な脱毛症をまとめました。これだけ多くの種類があるからこそ、専門的な知識を持つ医師による診断が重要です。
女性に見られる脱毛症の種類
専門家への相談が解決の鍵
ご覧いただいたように、女性の脱毛症には非常に多くの種類があります。
中には、背景に甲状腺の病気や膠原病といった全身性の疾患が隠れているケースもあり、その場合は薄毛の治療と並行して原因疾患の治療も進める必要があります。
だからこそ、髪の変化に気づいたら、まずは髪と頭皮の専門家である皮膚科専門医がいる医療機関を受診し、正確な診断を受けることが何よりも重要です。
また、原因を特定するための有効な手段として、郵送で行える遺伝子検査という選択肢もあります。
特にFAGA(女性男性型脱毛症)は遺伝的要因が関わることが知られており、将来的なリスクを事前に把握することは、予防や早期対策を考える上で大きな助けとなります。
いずれにせよ、一人で抱え込まずに専門家の知見を借りることが、健やかな髪を取り戻すための着実な一歩となるでしょう。




もしかして?と感じたら。症状別の特徴とセルフチェック


抜け毛が増えたり、髪の質が変わったりと、薄毛の始まりは些細な変化であることが少なくありません。そのサインを見逃さず、早期に対処するためには、症状ごとの特徴を知ることが役立ちます。
ここでは代表的な薄毛の症状を解説し、ご自身で確認できる簡単なチェック方法を紹介します。
びまん性脱毛症の
サイン


びまん性脱毛症は、特定の部位だけでなく頭部全体の髪が均等に薄くなるのが特徴です。髪の毛一本一本が細く、弱々しくなることで、全体のボリュームが失われたように感じます。
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特定の箇所が禿げるというよりは、「髪全体の密度が低下する」というイメージです。
鏡で髪全体を見たときに、以前よりも地肌が透けて見える範囲が広がっていないか、髪を束ねたときの量が減っていないか、といった点がセルフチェックのポイントになります。
生え際・頭頂部
・分け目の変化


髪全体のボリュームダウンと同時に、特定の部位の変化が気になることもあります。特に生え際、頭頂部、分け目は薄毛のサインが現れやすい場所です。
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生え際が以前より後退してきたように感じる、頭のてっぺん(頭頂部)の地肌が目立つようになった、いつも同じ場所で分けている分け目の幅が広がってきた、といった変化は注意が必要です。
特にFAGA(女性男性型脱毛症)では、頭頂部や分け目を中心に薄くなる傾向が見られます。
定期的にスマートフォンのカメラなどで頭頂部や分け目の状態を撮影し、過去の写真と比較してみるのも有効なセルフチェック方法です。
分娩後脱毛症
(産後脱毛症)


出産を経験した多くの女性が直面するのが、分娩後脱毛症です。妊娠中は女性ホルモンの分泌が活発になり、本来抜けるはずの髪が抜けずに留まっています。
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しかし出産後、ホルモンバランスが急激に妊娠前の状態に戻ることで、留まっていた髪が一気に抜け落ちてしまいます。
これは一時的な生理現象であり、通常は産後半年から1年ほどで自然に回復することがほとんどです。
しかし、抜け毛の量に驚いて強いストレスを感じたり、育児による生活習慣の乱れが重なったりすると、回復が遅れることもあります。
主な症状とセルフチェックのポイント
症状のタイプ | 主な特徴 | セルフチェックのポイント |
---|---|---|
びまん性 | 頭部全体の髪が均等に薄くなる。髪が細くなり、ハリやコシが失われる。 | 髪全体のボリューム感、手触り、地肌の透け具合を確認する。 |
生え際・頭頂部・分け目 | 特定の部位の地肌が目立つようになる。FAGAの可能性も考えられる。 | 鏡や写真で分け目の幅や頭頂部の状態を定期的に比較する。 |
分娩後(産後) | 出産後2~3ヶ月頃から抜け毛が急増する。前頭部や頭頂部で目立つことが多い。 | 出産後の時期と抜け毛の増加が一致するか。半年~1年で回復傾向にあるか。 |


なぜ?薄毛を引き起こす原因と
検査でわかること


薄毛という現象の裏には、様々な原因が潜んでいます。効果的な対策や治療を行うためには、まずその根本原因を探ることが重要です。
ここでは、女性の薄毛を引き起こす代表的な原因と、医療機関で行われる検査について解説します。
女性の薄毛につながる代表的な原因
女性の薄毛は、複数の要因が絡み合って発生することが多いのが実情です。以下に挙げるのは、その中でも代表的な原因です。ご自身の生活習慣や体調と照らし合わせてみましょう。
主な原因
- ホルモンバランスの乱れ
- 生活習慣の乱れと栄養不足
- 精神的なストレス
- 遺伝的要因
- 血行不良
- 不適切なヘアケア
加齢や妊娠・出産、更年期などによる女性ホルモンの変動は、髪の成長に直接的な影響を与えます。また、睡眠不足や偏った食事は、髪の成長に必要な栄養が頭皮まで届きにくくなる原因となります。
過度なストレスは自律神経の乱れを招き、血管を収縮させて血行不良を引き起こすことも知られています。
さらに、強すぎるシャンプーや頻繁なカラーリング、パーマなども頭皮環境を悪化させ、薄毛を助長する可能性があります。
もちろん、これ以外にも薄毛の原因は存在し、個人によってその組み合わせは異なります。


医療機関での検査内容


医療機関では、薄毛の原因を特定するために多角的な検査を行います。
- まず、問診で生活習慣や既往歴、家族歴などを詳しくヒアリングします。
- その後、視診や触診で頭皮の色や硬さ、毛髪の状態を直接確認します。マイクロスコープを用いて毛穴の状態や毛髪の太さを拡大して観察することもあります。
- 甲状腺機能の異常や貧血など、内科的な疾患が疑われる場合は血液検査を実施します。
原因の探求と検査方法
主な原因 | 関連する脱毛症の例 | 医療機関での主な検査 |
---|---|---|
ホルモンバランスの乱れ | FAGA、分娩後脱毛症、びまん性脱毛症 | 問診、血液検査(ホルモン値測定) |
栄養不足・疾患 | 鉄欠乏性貧血に伴う脱毛症、びまん性脱毛症 | 問診、血液検査(貧血、亜鉛など) |
頭皮環境の悪化 | 粃糠性脱毛症、脂漏性脱毛症、牽引性脱毛症 | 視診・触診、マイクロスコープ検査 |
遺伝的要因と遺伝子検査
薄毛の原因の中でも、遺伝が関与する部分は少なくありません。特に「FAGA(女性男性型脱毛症)」は、男性ホルモンの影響に対する感受性の高さが遺伝しやすいと言われています。
ご家族に薄毛の方がいる場合、ご自身もその体質を受け継いでいる可能性があります。
遺伝的リスクを把握するためには、遺伝子検査が有効です。
検査を受けることで、ご自身のFAGA発症リスクの度合いを知ることができ、よりパーソナライズされた予防策や治療計画を立てる際の重要な参考資料となります。
原因がはっきりしない不安を抱え続けるよりも、科学的な根拠に基づいて自身の体質を理解することは、前向きな治療への第一歩と言えるでしょう。




未来の髪のために。女性の薄毛治療の考え方


薄毛の治療には、様々な選択肢があります。しかし、焦って手当たり次第に試すのではなく、ご自身の症状の程度や原因に合わせて、段階的に治療を進めていくことが賢明です。
女性の薄毛治療における基本的な考え方と、治療法の選択順序について解説します。
まずはセルフケアから。育毛剤という選択
薄毛のサインに気づいたとき、まず始めたいのが日々のセルフケアの見直しです。その中心となるのが「育毛剤」の使用です。
育毛剤は、現在生えている髪を健康に保ち、抜け毛を予防することを目的としています。頭皮の血行を促進したり、髪の成長に必要な栄養を与えたりすることで、頭皮環境を整える働きをします。
医薬品である「発毛剤」とは異なり、比較的穏やかな作用のものが多く、ドラッグストアなどでも手軽に購入できます。
薄毛がまだ初期段階である場合や、まずは自分でできることから始めたいという方にとって、育毛剤は最初の選択肢として適しています。


(ミノキシジル外用薬)
一歩進んだ治療へ。発毛剤育毛剤によるセルフケアを続けても抜け毛が減らない、あるいは薄毛が進行すると感じる場合は、次の段階として「発毛剤」の使用を検討します。


女性の薄毛治療で用いられる代表的な発毛剤が、「ミノキシジル」を配合した外用薬です。
ミノキシジルは日本で唯一発毛効果が認められている成分であり、毛母細胞に直接働きかけて毛髪の成長を促し、新たな髪を生み出す効果が期待できます。
第一類医薬品に分類されるため、薬剤師のいる薬局やドラッグストアで購入できます。
ただし、効果がある分、副作用のリスクも伴うため、使用前には必ず説明書をよく読み、用法・用量を守ることが重要です。
治療は慎重に
飲み薬(内服薬)による外用薬を使用しても十分な効果が得られない場合や、薄毛がかなり進行している場合には、医療機関で処方される飲み薬(内服薬)による治療が選択肢となります。
スピロノラクトンやミノキシジルタブレットなどが女性の薄毛治療に用いられることがあります。
内服薬は体の中から作用するため高い効果が期待できる一方、外用薬に比べて副作用のリスクも高くなります。例えば、むくみ、動悸、多毛症、肝機能への影響などが報告されています。
そのため、重度の薄毛ではない限り、いきなり内服薬から治療を始めることは推奨されません。特に、妊娠の可能性がある女性や、他に持病がある方は、服用に際して細心の注意が必要です。
内服薬による治療は、必ず医師の診断と指導のもと、その利益とリスクを十分に理解した上で開始するようにしてください。


治療法の選択肢と特徴
治療の選択肢 | 主な目的・特徴 | 推奨されるケース |
---|---|---|
市販の育毛剤 | 頭皮環境を整え、抜け毛を予防する。現在ある髪の健康維持。 | 薄毛の初期段階、予防目的、セルフケアを始めたい方。 |
発毛剤(ミノキシジル外用薬) | 毛母細胞を活性化させ、新たな発毛を促す。 | 育毛剤で効果が見られない場合、明確に発毛を実感したい方。 |
医療機関の飲み薬(内服薬) | 体内から作用し、より強力な発毛効果を期待する。 | 外用薬で効果が不十分な場合、中等度以上の薄毛の方(医師の診断が必要)。 |


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