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すぐに抜ける髪の毛の原因と女性が行うべき対策法

すぐに抜ける髪の毛の原因と女性が行うべき対策法

シャンプーやブラッシングのたびに、ごっそりと抜ける髪の毛を見て不安になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「最近、髪の毛がすごく抜ける」「このまま薄くなってしまうのでは」と来院される女性は少なくありません。

抜け毛には誰にでも起こる自然なものもありますが、中には注意が必要なサインが隠れているケースもあります。

目次

「髪がすぐ抜ける」と感じる女性が増えている背景

抜け毛はヘアサイクルの一部であり、誰にでも起こる自然な現象です。

しかし、「いつもより明らかに量が多い」「髪の全体のボリュームが減ってきた」と感じる場合、それは頭皮や体が発している何らかのサインかもしれません。

まずはご自身の抜け毛が正常な範囲なのか、注意すべき状態なのかを見極めることが重要です。

正常な抜け毛と異常な抜け毛の見分け方

髪の毛には成長期・退行期・休止期というサイクルがあり、休止期に入った髪が自然に抜け落ちます。

健康な人でも1日に50本から100本程度の髪は抜けており、特にシャンプー時には30本から60本ほど抜けるのが一般的です。

しかし、これを大幅に超える量が毎日続く場合は注意が必要です。抜けた髪の毛根の形も一つの判断材料になります。

抜け毛の状態チェック

状態毛根の特徴判断
正常な抜け毛根本がふっくらと丸い自然なヘアサイクルによるものです。
注意が必要な抜け毛細く尖っている、または白い塊が付着成長途中で抜けている可能性があります。
注意が必要な抜け毛毛根がない、または極端に細い頭皮環境の悪化が考えられます。

女性の抜け毛はいつから気になる?年代別の傾向

女性が抜け毛を意識し始める年齢は様々ですが、ライフステージの変化が大きく影響します。

20代や30代では過度なダイエットやストレス、産後などがきっかけになる方が多く、40代以降は加齢に伴うホルモンバランスの変化が主な要因となる傾向があります。

年代別に見る女性の抜け毛の要因

年代主な要因特徴
20代~30代生活習慣の乱れ、ストレス、産後ライフスタイルの変化が髪に影響しやすい時期です。
40代~50代加齢、更年期によるホルモンバランスの変化女性ホルモンの減少が大きく関わります。
60代以降全体的な加齢、血行不良髪を作る細胞の働きが低下しやすくなります。

「最近抜け毛がひどい」と感じたら確認したいこと

抜け毛の増加に気づいたら、まずはご自身の髪と頭皮の状態を客観的にチェックしてみましょう。

以前と比べて変化している点がないかを確認するのが、原因を探る第一歩です。

  • 地肌が透けて見える範囲が広がった
  • 髪の分け目が目立つようになった
  • 髪の毛1本1本が細く、弱々しくなった
  • 頭皮にかゆみやフケ、赤みがある

女性の抜け毛を引き起こす生活習慣

日々の何気ない習慣が、知らず知らずのうちに頭皮環境を悪化させ、抜け毛の原因となっているケースがあります。

健やかな髪を育むためには、まず生活習慣の見直しと改善が基本です。

栄養バランスの偏りが招く頭皮環境の悪化

髪の毛は主に「ケラチン」というタンパク質でできています。

そのため、過度なダイエットや偏った食事でタンパク質が不足すると、髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。

また、タンパク質の合成を助ける亜鉛や、頭皮の血行を良くするビタミン類も健康な髪の維持に重要です。

健やかな髪を育む栄養素

栄養素主な働き多く含む食品
タンパク質髪の主成分となる肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉
ビタミンB群頭皮の新陳代謝を促す豚肉、うなぎ、マグロ

睡眠不足がホルモンバランスに与える影響

睡眠中は、髪の成長を促す「成長ホルモン」が最も多く分泌される時間帯です。

睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられてしまいます。

また、自律神経の乱れにもつながり、頭皮の血行不良を引き起こす原因ともなります。

過度なストレスと髪の毛の深い関係

強いストレスを感じると自律神経が乱れて血管が収縮し、頭皮への血流が悪くなります。

これによって髪の毛の成長に必要な栄養が毛根まで届きにくくなり、抜け毛が増える場合があります。

また、ストレスはホルモンバランスの乱れも引き起こし、抜け毛を助長する要因です。

誤ったヘアケアが抜け毛を加速させる

良かれと思って行っているヘアケアが、逆に頭皮にダメージを与えているケースも少なくありません。

特に洗浄力の強すぎるシャンプーや、頭皮を強くこするような洗い方は必要な皮脂まで奪い、頭皮の乾燥やかゆみ、抜け毛の原因となります。

  • 1日に何度もシャンプーをする
  • 爪を立ててゴシゴシ洗う
  • 熱すぎるお湯ですすぐ
  • 髪をきつく結ぶ習慣がある

女性特有のホルモンバランスの変化と抜け毛

女性の体は、一生を通じてホルモンバランスが大きく変動します。

女性ホルモンである「エストロゲン」は、髪の成長を促進してハリやコシを保つ働きがあるため、その分泌量の変化は髪に直接的な影響を与えます。

産後の抜け毛(分娩後脱毛症)とその期間

妊娠中はエストロゲンの分泌量が増え、髪の毛が抜けにくい状態になります。

しかし、出産を終えるとホルモンバランスが急激に妊娠前の状態に戻ろうとするため、それまで抜けずにいた髪が一気に休止期に入り、抜け毛が急増します。

これは「分娩後脱毛症」と呼ばれる生理現象で、通常は産後半年から1年ほどで自然に落ち着きます。

更年期における女性ホルモンの減少

40代後半から50代にかけて迎える更年期では、エストロゲンの分泌が大幅に減少します。

これにより髪の成長期が短くなり、全体的に髪が細く、薄くなりやすくなります。

これが、女性男性型脱毛症(FAGA)の主な原因の一つと考えられています。

女性ホルモンの変化と髪への影響

ライフステージホルモンの状態髪への影響
妊娠中エストロゲンが増加髪が抜けにくく、毛量が増えたように感じる。
産後エストロゲンが急激に減少一時的に抜け毛が大幅に増加する。
更年期エストロゲンが大幅に減少髪が細くなり、薄毛が進行しやすくなる。

ピルの服用中止や変更による影響

低用量ピルには、女性ホルモンのバランスを安定させる作用があります。

そのため、ピルの服用を中止したり種類を変更したりすると、体内のホルモンバランスが変動し、一時的に抜け毛が増える方がいます。

これは産後の抜け毛と似た現象で、体のホルモン環境が新しい状態に適応する過程で起こります。

注意が必要な女性の脱毛症の種類

「抜け毛がひどい」と感じる背景には、単なる生活習慣の問題だけでなく、治療が必要な脱毛症が隠れている場合があります。

女性に多い脱毛症の種類と特徴を確認し、ご自身の状態と照らし合わせてみましょう。

びまん性脱毛症の症状と特徴

びまん性脱毛症は、特定の部位ではなく、頭部全体の髪の毛が均一に薄くなるのが特徴です。

髪の密度が全体的に低下し、分け目が目立ったり、地肌が透けて見えやすくなったりします。

加齢やストレス、栄養不足など複数の要因が絡み合って発症すると考えられています。

女性に多い脱毛症の概要

脱毛症の種類主な症状考えられる原因
びまん性脱毛症頭部全体の髪が均等に薄くなる加齢、ストレス、ホルモンバランスの乱れ
女性男性型脱毛症(FAGA)頭頂部や分け目を中心に薄くなる女性ホルモンの減少、遺伝的要因
牽引性脱毛症髪の生え際や分け目が後退するポニーテールなど髪を強く引っ張る髪型

女性男性型脱毛症(FAGA)とは

FAGAは、特に頭頂部の分け目あたりが薄くなるのが特徴的な脱毛症です。

男性のAGA(男性型脱毛症)とは異なり、生え際が後退する方は少なく、完全に脱毛するケースも稀です。

更年期以降の女性ホルモンの減少が主な原因とされ、遺伝的な要因も関与するといわれています。

牽引性脱毛症と円形脱毛症

牽引性脱毛症はポニーテールやお団子ヘアなど、毎日同じ箇所で髪を強く引っ張り続けることで毛根に負担がかかり、その部分の髪が抜けてしまう状態です。

一方、円形脱毛症は自己免疫疾患の一種と考えられており、円形や楕円形に突然髪が抜けるのが特徴です。ストレスが引き金になる場合もありますが、明確な原因はまだ解明されていません。

抜け毛の悩みは精神的なストレスになる

髪の毛が抜けるという悩みは、非常にデリケートな問題です。

特に女性にとって髪は容姿の印象を大きく左右するため、その悩みが深刻な精神的苦痛につながることも少なくありません。

しかし、その悩みを打ち明けられず、一人で抱え込んでいる方が非常に多いのが実情です。

「誰にも言えない」その気持ちがストレスを増大させる

「薄毛の悩みを他人に知られたくない」「相談しても理解してもらえないかもしれない」という思いから、誰にも話せずにいると、その不安や焦りが新たなストレスとなります。

そして、そのストレスがさらに抜け毛を悪化させるという悪循環に陥ってしまうときがあります。この負の連鎖を断ち切ることが、改善への第一歩です。

家族や友人に相談しにくい女性特有の髪の悩み

抜け毛の悩みは、たとえ親しい家族や友人であっても、打ち明けにくいと感じる方が多いものです。

「気にしすぎだよ」と軽く流されてしまったり、逆に心配をかけすぎてしまったりすることを恐れて、つい一人で悩みを抱え込んでしまいます。

女性としての自信を揺るがす問題だからこそ、その繊細な気持ちを共有するのは簡単ではありません。

専門家への相談が心の負担を軽くする第一歩

一人で悩みを抱え続けると、精神衛生上も良くありません。

ご自身の状態を客観的に評価し、正しい知識を持つ専門家に相談すると、抜け毛の原因を特定するだけでなく、精神的な負担を大きく軽減します。

専門家は悩みに真摯に耳を傾け、科学的根拠に基づいた解決策を一緒に探してくれます。

自宅で始められる抜け毛対策セルフケア

専門的な治療を考える前に、まずはご自身の生活習慣を見直し、自宅でできるケアから始めてみましょう。

髪と頭皮に良い食事と栄養素

健やかな髪は、バランスの取れた食事から作られます。

髪の主成分であるタンパク質、その合成を助ける亜鉛、頭皮の血行を促進するビタミンE、細胞の生まれ変わりを助けるビタミンB群などを意識的に摂取するのが大切です。

特定のものばかり食べるのではなく、様々な食材をバランス良く取り入れましょう。

積極的に摂りたい食品

栄養素代表的な食品期待できる働き
大豆イソフラボン納豆、豆腐、豆乳女性ホルモンと似た働きをします。
ビタミンEナッツ類、アボカド血行を促進し、頭皮環境を整えます。
カプサイシン唐辛子知覚神経を刺激し、血行を促します。

正しいシャンプーの方法と選び方

毎日のシャンプーは、頭皮を清潔に保つために重要ですが、やり方を間違えると逆効果になります。

アミノ酸系など、頭皮への刺激が少ない洗浄成分のシャンプーを選び、優しく洗うように心がけましょう。

頭皮をいたわるシャンプーの手順

手順ポイント目的
1. ブラッシング髪が乾いた状態で、毛先の絡まりをほどく。汚れを浮かせ、シャンプーの泡立ちを良くする。
2. 予洗い38℃程度のぬるま湯で、頭皮と髪を十分に濡らす。お湯だけで大半の汚れを落とす。
3. 洗浄とすすぎ指の腹で頭皮をマッサージするように洗い、丁寧にすすぐ。毛穴の詰まりを防ぎ、頭皮を清潔に保つ。

血行を促進する頭皮マッサージ

頭皮の血行が悪いと、髪の成長に必要な栄養が届きにくくなります。頭皮マッサージは、硬くなった頭皮をほぐし、血行を促進するのに有効です。

シャンプーのついでや、リラックスタイムに取り入れてみましょう。

  • 指の腹を使い、頭皮全体を優しく動かすように行う
  • 気持ち良いと感じる程度の力加減で行う
  • 爪を立てて頭皮を傷つけないように注意する

抜け毛対策で期待できること・できないこと

抜け毛の対策を始めるにあたり、セルフケアでどこまで改善が見込めるのか、どの段階で専門家の助けが必要になるのかを正しく理解しておくことが重要です。

過度な期待はせず、現実的な目標を設定しましょう。

セルフケアで改善が期待できる範囲

生活習慣の乱れやストレス、不適切なヘアケアなどが原因の一時的な抜け毛であれば、セルフケアで改善する可能性があります。

頭皮環境が整い、ヘアサイクルが正常に戻ると抜け毛が減少し、髪にハリやコシが戻ってくることが期待できます。

専門的な治療が必要になるケース

セルフケアを数ヶ月続けても改善が見られないときや、抜け毛が進行していく場合、びまん性脱毛症やFAGAといった脱毛症が疑われる場合は、専門のクリニックでの治療を検討する必要があります。

自己判断で間違ったケアを続けると、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあります。

セルフケアと専門治療の選択目安

項目セルフケアでの対応専門治療の検討
対象となる状態生活習慣の乱れによる一時的な抜け毛の増加進行性の脱毛、地肌が明らかに目立つ状態
期間の目安3ヶ月~半年程度続けて様子を見るセルフケアで改善しない、または悪化する場合
取り組み食事、睡眠、ヘアケアの見直し、ストレス管理内服薬、外用薬、注入治療など医学的根拠に基づく治療

治療を始める前に知っておきたいこと

薄毛治療は、すぐに結果が出るものではありません。ヘアサイクルに合わせて髪が成長するには時間がかかるため、根気強く治療を続けることが大切です。

また、治療法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、費用も異なります。

カウンセリングで医師と十分に相談し、ご自身が納得できる治療法を選択しましょう。

女性の抜け毛に関するよくある質問

さいごに、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

抜け毛は何本からが危険なサインですか?

1日に100本程度までは正常範囲とされていますが、これはあくまで目安です。

以前と比べて明らかに「倍以上に増えた」と感じる場合や、数ヶ月にわたって毎日150本以上の抜け毛が続く場合は、注意が必要なサインと考えられます。

量だけでなく、抜けた毛の質や頭皮の状態も合わせて判断すると良いです。

市販の育毛剤に効果はありますか?

市販の女性用育毛剤の多くは、頭皮の血行を促進し、保湿することで頭皮環境を整える「医薬部外品」に分類されます。

そのため、生活習慣の乱れなどによる軽度の抜け毛予防や、頭皮環境の改善には一定の効果が期待できます。

しかし、すでに進行している脱毛症(FAGAなど)を「治療」する効果は認められていません。脱毛症の改善には、医療機関で処方される「医薬品」が必要です。

クリニックでの治療はどのようなことをしますか?

クリニックでは、まず医師による診察とカウンセリングで抜け毛の原因を特定します。その上で、患者さん一人ひとりの症状やご希望に合わせた治療計画を立てます。

治療法は様々ですが、主に内服薬や外用薬、頭皮に直接有効成分を届ける注入治療などを組み合わせます。

治療にはどのくらいの期間と費用がかかりますか?

治療効果を実感できるまでには、個人差はありますが、一般的に半年から1年程度の継続が必要です。これは、ヘアサイクルに合わせて新しい髪が成長するのに時間がかかるためです。

費用は治療内容によって大きく異なります。自由診療となるため、月々数万円からが目安となります。

詳しい費用については初回のカウンセリング時に提示してもらえますので、まずは一度、気軽に相談してみると良いでしょう。

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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