真菌性脱毛症・しらくも（頭部白癬）の原因と検査内容

頭皮のかゆみやフケ、そして気になる脱毛。その原因は、単なる頭皮の乾燥やストレスだけではないかもしれません。

もし、その症状が「真菌性脱毛症」、いわゆる「しらくも（頭部白癬）」だとしたら、正しい原因の理解と適切な検査が必要です。

この記事では、なぜ真菌性脱毛症になるのか、その原因となる白癬菌の正体から、日常生活に潜む感染経路、そして皮膚科で行う専門的な検査内容までを、女性の薄毛治療に携わる専門家の視点から詳しく解説します。

なぜあなたが真菌性脱毛症・しらくも（頭部白癬）になったのか

ある日突然、頭皮にフケやかゆみを感じ、鏡を見ると髪が薄くなっている部分があることに気づく。それは大きな不安を感じる瞬間です。

特に女性にとって、髪は大切な自己表現の一部であり、その変化は深刻な悩みにつながります。

このような症状は、多くの場合、真菌（カビ）の一種である「白癬菌」が原因で起こる頭部白癬、通称「しらくも」かもしれません。

これは決して珍しい疾患ではなく、誰にでも起こりうる頭皮のトラブルです。原因を正しく知ることが、解決への第一歩となります。

ある日突然のフケ、かゆみ、そして脱毛

初期症状として現れるのは、フケやかゆみです。多くの人が、シャンプーが合わない、あるいは頭皮が乾燥しているだけと考えがちです。

しかし、症状が改善しない、あるいは円形に髪が抜け始め、その部分の地肌がカサカサしたり、黒い点々が見えたりする場合は注意が必要です。

これは、白癬菌が毛根の奥深くに侵入し、髪の毛の成長を妨げているサインかもしれません。この状態が「真菌性脱毛症」です。

真菌（カビ）が引き起こす頭皮のトラブル

私たちの皮膚には、さまざまな常在菌が存在し、通常は問題を起こしません。しかし、白癬菌は皮膚の角質層を栄養源とする特殊なカビで、頭皮に感染すると炎症を引き起こします。

この菌は、髪の毛の主成分であるケラチンを好み、毛根に侵入して髪を脆くし、結果として脱毛を引き起こします。

放置すると、炎症が強くなり「ケルスス禿瘡」という状態に進行し、瘢痕が残って永久に髪が生えてこなくなる可能性もあるため、早期の対応が重要です。

女性特有の悩みと真菌性脱毛症の関係

女性はホルモンバランスの変化やヘアケア、ストレスなど、頭皮環境に影響を与える多くの要因を抱えています。しかし、真菌性脱毛症の原因は、これらの内的要因よりも「感染」という外的要因が主です。

ご家族、特に子供や、室内で飼っているペットから白癬菌の感染を受けるケースが少なくありません。ご自身の生活環境を見つめ直し、感染源を特定することが、根本的な解決につながります。

白癬菌の種類と感染メカニズムを理解する

「真菌性脱毛症」と一言で言っても、その原因となる白癬菌にはいくつかの種類が存在します。どの菌に感染したかによって、症状の出方や感染経路が異なる場合があります。

菌の正体とその感染の仕組みを理解することで、より具体的な対策を立てることが可能になります。ここでは、頭部白癬の主な原因菌である「皮膚糸状菌」について掘り下げていきます。

頭部白癬の原因となる皮膚糸状菌とは

皮膚糸状菌は、人や動物の皮膚、毛、爪などを構成するケラチンというタンパク質を栄養として生きるカビの総称です。この菌が頭部に感染した状態が頭部白癬です。

皮膚糸状菌は、その主な宿主によって大きく二つに分類できます。

ヒトを好む菌と動物を好む菌

人から人へ感染するタイプ（好人菌）と、犬や猫などの動物から人に感染するタイプ（好獣菌）があります。

好獣菌による感染の方が、炎症反応が強く出る傾向があり、かゆみや赤み、膿疱といった激しい症状を伴う「ケルスス禿瘡」になりやすい特徴があります。

ご自身のペットとの関わり方も、原因を探る上で重要な手がかりとなります。

主な白癬菌の種類と特徴

菌の種類	主な宿主	主な特徴
トリコフィトン・トンスランス	ヒト	近年、柔道やレスリングなどの格闘技選手の間で集団感染が報告。子供にも多い。
ミクロスポルム・カニス	動物（特に猫、犬）	ペットからの感染が主。強い炎症（ケルスス禿瘡）を引き起こしやすい。
トリコフィトン・ベルコーサム	動物（主に牛）	酪農関係者に見られることがある。炎症が強い傾向がある。

菌が毛髪に侵入する仕組み

白癬菌は、まず頭皮の表面にある角質層に付着します。そこから菌糸を伸ばし、毛穴を通って毛根の内部へと侵入していきます。

毛髪の内部に侵入した菌は、ケラチンを分解しながら増殖し、髪の構造を破壊します。これにより、髪は強度を失い、根元から切れやすくなったり、抜け落ちたりします。これが脱毛の直接的な原因です。

日常生活に潜む真菌性脱毛症・しらくも（頭部白癬）の感染源

白癬菌は目に見えないため、どこで感染したのか特定するのは難しいと感じるかもしれません。しかし、感染源はある程度限られています。

日常生活の中に潜むリスクを知り、適切な対応をとることが、ご自身だけでなくご家族を守ることにもつながります。ここでは、主な感染経路を具体的に見ていきましょう。

人から人への直接的な感染経路

最も一般的なのは、すでに感染している人との接触です。特に、頭や体を寄せ合うような接触は、感染リスクを高めます。

家庭内での感染が多く、特に子供が学校や保育施設で感染し、家庭に持ち帰るケースがよく見られます。

人から感染する主な場面

場面	具体的な状況	注意点
家庭内	添い寝、ハグ、兄弟姉妹との遊び	スキンシップが多いほどリスクは高まる。
スポーツ	柔道、レスリング、相撲などの接触競技	頭部や体が直接触れ合うことで感染が広がる。
学校・保育園	園児同士のじゃれ合い、お昼寝	集団生活では感染が広がりやすい。

ペットが媒介する感染リスク

犬や猫、うさぎなどのペットも白癬菌の感染源となりえます。ペットに脱毛やフケ、皮膚の赤みなどの症状が見られる場合は特に注意が必要です。

ペットを抱きしめたり、一緒に寝たりすることで、菌が人にうつることがあります。ペットに皮膚の異常を見つけたら、早めに動物病院で診察を受けることが重要です。

犬や猫からうつる白癬菌

特に子猫や子犬は免疫力が未熟なため、白癬菌に感染しやすい傾向があります。ペットショップやブリーダーから新しくペットを迎え入れた際に、すでに感染しているケースもあります。

ペットの体に触れた後は、手を洗う習慣をつけましょう。

環境中に潜む間接的な感染源

感染した人やペットから剥がれ落ちた皮膚の角質やフケ、髪の毛には白癬菌が含まれています。これらが付着した物を介して、間接的に感染することもあります。

注意すべき共用の物品

物品	感染リスク	対策
帽子・ヘルメット	直接頭皮に触れるためリスクが高い。	個人専用とし、貸し借りは避ける。
櫛・ブラシ・ヘアアクセサリー	髪の毛やフケが付着しやすい。	定期的に洗浄し、共有しない。
枕カバー・タオル・寝具	睡眠中に長時間接触する。	こまめに洗濯し、清潔に保つ。

感染しやすい人の特徴とリスク要因

白癬菌はどこにでも存在する可能性がありますが、菌に接触した人すべてが感染するわけではありません。感染が成立するかどうかは、その人の体の状態や生活習慣が大きく関わっています。

どのような人が感染しやすいのか、その特徴とリスク要因を知ることは、予防策を考える上で非常に大切です。

免疫力の低下と感染しやすさ

私たちの体には、外部から侵入してきた病原体を排除する免疫という防御機能が備わっています。

しかし、ストレス、疲労、睡眠不足、栄養の偏りなどによって免疫力が低下すると、白癬菌のような病原体に対する抵抗力が弱まり、感染しやすくなります。

また、ステロイド薬の長期使用や糖尿病、その他の基礎疾患がある場合も、免疫機能が抑制され、感染のリスクが高まります。

生活習慣がもたらすリスク

日々の何気ない習慣が、知らず知らずのうちに白癬菌の感染リスクを高めていることがあります。特に、頭皮の衛生状態は重要です。

• 長時間帽子をかぶるなど、頭皮が蒸れやすい環境
• 洗髪後のドライヤーが不十分で、頭皮が湿ったままになっている
• 洗浄力の強すぎるシャンプーで頭皮のバリア機能が損なわれている
• 不衛生な寝具やタオルの使用

子供や格闘技選手に多い理由

頭部白癬は、特定のグループで感染が広がりやすい傾向があります。これは、生活環境や行動様式が感染経路と密接に関係しているためです。

感染リスクが高いグループ

グループ	主な理由	背景
子供（特に幼児・学童）	皮膚のバリア機能が未熟。集団生活での接触機会が多い。	衛生観念が未発達で、物の貸し借りや接触に抵抗がない。
格闘技選手	練習や試合で頭部や皮膚が直接接触する機会が多い。	汗で蒸れた環境が菌の増殖を助長する。
ペットを飼っている家族	動物由来の白癬菌に接触する機会が多い。	ペットとの濃厚なスキンシップが感染経路となる。

皮膚科での基本検査：KOH検査の流れと重要性

頭皮のフケやかゆみ、脱毛といった症状から真菌性脱毛症が疑われる場合、自己判断で市販薬を使うのは禁物です。まずは皮膚科を受診し、専門家による正確な診断を受けることが何よりも重要です。

その診断の第一歩となるのが、「KOH（苛性カリ）検査」という基本的な検査です。

なぜ専門的な検査が必要なのか

真菌性脱毛症の症状は、脂漏性皮膚炎や円形脱毛症、アトピー性皮膚炎など、他の皮膚疾患と非常に似ています。原因が異なれば治療法も全く異なるため、原因を特定するための検査は正しい治療への第一歩です。

特に、真菌性脱毛症の治療には抗真菌薬の内服が必要となる場合が多く、正確な診断なくして治療は開始できません。

KOH検査とは

KOH検査は、皮膚や毛髪に真菌がいるかどうかを顕微鏡で直接確認する、最も基本的で重要な検査です。

KOH（水酸化カリウム）溶液という特殊な液体を使って、皮膚の角質やタンパク質を溶かし、真菌の菌糸や胞子を見やすくします。

検査でわかること

この検査によって、症状の原因が真菌であるかどうかを迅速に判断できます。顕微鏡で白癬菌特有の菌糸や胞子が確認できれば、真菌性脱毛症（頭部白癬）であると診断します。

ただし、この検査だけでは菌の種類までは特定できません。

検査の具体的な流れ

検査は非常に簡単で、痛みもほとんどありません。診察室で短時間のうちに行うことができます。

KOH検査の手順

手順	内容	所要時間
1. 検体採取	症状のある部分のフケや髪の毛を、ピンセットやハサミで優しく採取します。	約1〜2分
2. 処理	採取した検体をスライドガラスに乗せ、KOH溶液を滴下して温めます。	約5〜10分
3. 観察	医師が顕微鏡で菌の有無を観察し、その場で結果を説明します。	約2〜3分

検査を受ける際の注意点

正確な検査結果を得るために、いくつか注意点があります。受診前には、自己判断で抗真菌成分の入ったシャンプーや塗り薬を使用しないでください。

これらの薬剤が原因菌を一時的に隠してしまい、検査で菌が検出されにくくなる可能性があります。また、受診当日は、整髪料などをつけずに、自然な状態で診察を受けるようにしましょう。

培養検査で原因菌を特定する意義

KOH検査で真菌の存在が確認された後、あるいはKOH検査で菌が見つからなかったものの臨床症状から強く感染が疑われる場合に、より詳しく原因菌を調べるために「真菌培養検査」を行います。

この検査は、治療方針を決定する上で非常に重要な情報をもたらしてくれます。

KOH検査だけでは不十分な場合

KOH検査は迅速に菌の有無を確認できますが、菌の数が少なかったり、採取した場所にたまたま菌がいなかったりすると、偽陰性（本当は菌がいるのにいないという結果）となることがあります。

また、どの種類の白癬菌に感染しているのかを特定することはできません。原因菌の種類によって感染源（人なのかペットなのか）の推定や、治療薬の選択が変わってくるため、菌種の同定はとても大切です。

培養検査で原因菌を育てる

培養検査では、KOH検査と同様に採取したフケや髪の毛を、真菌が育ちやすい特殊な培地（栄養分）に植え付け、一定期間、適切な温度・湿度で培養します。

もし検体の中に白癬菌がいれば、培地の上で増殖し、目に見える大きさのコロニー（集落）を形成します。

結果判明までの期間

菌を培養して育てる必要があるため、結果が判明するまでには時間がかかります。通常、2週間から4週間程度の期間を要します。

この間、医師の判断によっては、培養結果を待たずに経験的な治療（内服薬の開始など）を先行させる場合もあります。

原因菌の特定が治療に与える影響

培養検査によって原因菌の種類が特定できると、多くのメリットがあります。

• 感染経路の推定: 例えば、動物由来の菌（ミクロスポルム・カニスなど）が特定されれば、ペットが感染源である可能性が高く、ペットの治療も同時に進めるよう助言できます。
• 治療方針の決定: 菌の種類によっては、特定の抗真菌薬が効きにくい場合があります。原因菌を特定することで、より効果的な内服薬を選択できます。
• 公衆衛生上の意義: 柔道選手などに多いトリコフィトン・トンスランス感染症の場合、集団感染の可能性があるため、所属するチームなどへの注意喚起が必要になることもあります。

培養検査のメリット・デメリット

項目	メリット	デメリット
精度	菌が少数でも検出できる可能性があり、確定診断に有用。	検体採取の部位や方法によっては菌を検出できない場合がある。
情報量	原因となる菌の種類を特定できる。	菌の有無しかわからないKOH検査より情報が多い。
時間	KOH検査で陰性でも診断できる可能性がある。	結果判明まで2〜4週間と時間がかかる。

遺伝子検査による精密な真菌同定

近年、従来の培養検査に加えて、より迅速かつ正確に原因菌を特定する方法として「遺伝子検査」が注目されています。

この先進的な検査は、特に診断が難しいケースや、より的確な治療を求める場合に大きな力を発揮します。

より迅速で正確な原因究明

遺伝子検査は、採取した検体から真菌のDNA（遺伝子情報）を抽出し、それを増幅して解析することで、菌の種類を特定する検査方法です。

培養検査のように菌を育てる必要がないため、結果判明までの時間を大幅に短縮できます。通常、数日から1週間程度で結果が得られます。

また、死んだ菌の断片からでもDNAを検出できるため、培養検査よりも感度が高い場合があります。

遺伝子検査の具体的な方法

採取するのは、KOH検査や培養検査と同じく、症状のある部分のフケや髪の毛です。採取した検体から専門の検査機関でDNAを抽出し、PCR法などの技術を用いて菌に特有の遺伝子配列を解析します。

これにより、非常に高い精度で菌の種類を同定することが可能です。

適切な治療薬選択への貢献

真菌性脱毛症の治療の基本は、抗真菌薬の内服です。しかし、白癬菌の中には、特定の薬剤に対して耐性を持ち、薬が効きにくいタイプも存在します。

なぜ遺伝子検査が治療の精度を上げるのか

遺伝子検査を行うことで、治療を開始する前の段階で、感染している菌の種類を正確に把握できます。

例えば、ある種の菌にはAという薬が効きやすいが、別の菌にはBという薬の方が効果的、ということがあります。

従来の培養検査では結果が出るまでに時間がかかり、その間は経験に基づいて薬を選択せざるを得ませんでした。

しかし、遺伝子検査によって早期に原因菌が判明すれば、最初から最も効果が期待できる内服薬を選択できる確率が上がります。これにより、治療期間の短縮や治療効果の向上が期待できます。

薬の効きにくい菌を見分ける重要性

万が一、治療を開始しても症状の改善が見られない場合、薬が効いていない可能性を考えなくてはいけません。この原因の一つが、薬剤耐性菌への感染です。

遺伝子検査は、こうした耐性菌の可能性を探る上でも重要な手がかりを与えてくれます。治療が難航する前に、より精密な検査を行うことは、最終的に患者様の負担を軽減することにつながるのです。

真菌性脱毛症・しらくも（頭部白癬）の検査結果の見方

皮膚科で検査を受けた後、医師から検査結果について説明を受けます。専門用語が出てくることもあり、一度で完全に理解するのは難しいかもしれません。

ここでは、検査結果が何を意味しているのか、ご自身でも理解を深められるように、結果の見方のポイントを解説します。

検査報告書の読み解き方

検査結果は、通常、報告書としてまとめられます。特に培養検査や遺伝子検査の結果には、検出された菌の正式名称（学名）が記載されます。

検査結果の解釈例

検査項目	結果の例	考えられる解釈と次のステップ
KOH検査	陽性（菌糸・胞子あり）	白癬菌の感染が確定。内服薬による治療を開始します。
KOH検査	陰性（菌なし）	現時点では菌が確認できない。ただし、症状から感染が疑われる場合は培養検査や遺伝子検査を追加します。
培養・遺伝子検査	Microsporum canis 同定	ペット（犬・猫）からの感染が強く疑われます。ペットの診察を勧め、適切な抗真菌薬を選択します。

陽性・陰性の意味するもの

「陽性」という結果は、症状の原因が白癬菌の感染であることを示しています。これにより、医師は自信を持って抗真菌薬による治療計画を立てることができます。

一方、「陰性」という結果は、その検査では菌が見つからなかったことを意味します。しかし、これは「絶対に感染していない」ということではありません。

前述の通り、検体採取の状況によっては菌が検出されないこともあるため、医師は臨床症状と合わせて総合的に判断し、必要であれば再検査や別の検査を提案します。

真菌性脱毛症・しらくも（頭部白癬）と他の疾患の鑑別診断

脱毛やフケ、かゆみを引き起こす病気は、頭部白癬だけではありません。正しい治療を行うためには、これらの似た症状を持つ他の疾患と正確に見分ける「鑑別診断」が非常に重要です。

ここでは、頭部白癬と間違えやすい代表的な疾患について解説します。

似ている症状を持つ他の脱毛症

女性の薄毛の悩みは多岐にわたります。その中でも、特に頭部白癬との鑑別が必要な疾患があります。

• 円形脱毛症: 境界がはっきりした円形・楕円形の脱毛斑が突然現れます。自己免疫疾患が原因と考えられており、真菌感染とは異なります。通常、フケや赤みは伴いません。
• 脂漏性皮膚炎: 皮脂の過剰な分泌と、皮膚常在菌のマラセチア菌の増殖が関与します。ベタついた黄色っぽいフケやかゆみ、赤みが特徴で、脱毛を伴うこともあります。
• 抜毛症（トリコチロマニア）: 自分で無意識に髪の毛を抜いてしまう精神的な要因によるものです。脱毛斑の形が不規則で、毛の長さが途中で切れたようにバラバラになっています。
• アトピー性皮膚炎: 強いかゆみを伴う湿疹が頭皮にも現れ、掻き壊すことで脱毛や皮膚の肥厚が起こります。他の部位にもアトピー症状が見られることが多いです。

鑑別のための追加検査

KOH検査や培養検査で真菌が検出されれば頭部白癬と診断できますが、陰性だった場合には、これらの疾患を念頭に置いた診察を進めます。

ダーモスコピー（特殊な拡大鏡）で毛根の状態を詳しく観察したり、場合によっては血液検査や皮膚の一部を採取する皮膚生検を行ったりして、診断を確定させます。

真菌性脱毛症と他の脱毛症の比較

疾患名	主な症状の特徴	主な原因
真菌性脱毛症（頭部白癬）	フケ、かゆみ、境界明瞭な脱毛、毛が根元で折れて黒い点々に見える。	白癬菌の感染
円形脱毛症	自覚症状なく突然の円形脱毛。フケやかゆみは稀。	自己免疫異常
脂漏性皮膚炎	ベタつくフケ、赤み、かゆみ。びまん性（全体的）な脱毛を伴うことがある。	皮脂、マラセチア菌

よくある質問（Q&A）

美容室やスパで感染することはありますか？

可能性はゼロではありませんが、非常に稀です。多くの施設では、ハサミやクシなどの器具を適切に消毒しており、衛生管理が徹底されています。

ただし、衛生管理が不十分な施設を利用した場合は、リスクとなり得ます。心配な場合は、利用する施設の衛生状態を確認すると良いでしょう。

家族に感染させないためにはどうすれば良いですか？

ご自身が治療を開始すると同時に、ご家族への感染を防ぐ対策が重要です。具体的には、

• タオル、枕カバー、帽子、クシなどの共用を避ける
• 寝具をこまめに洗濯し、掃除機をかけて抜け落ちた毛髪やフケを取り除く
• ご家族、特に子供やペットに同様の症状がないか観察し、異常があれば早めに受診・受診を勧める

といった対策をとりましょう。

検査に痛みは伴いますか？

KOH検査や培養検査、遺伝子検査のための検体採取は、症状のある部分のフケや髪の毛を数本採取するだけですので、痛みはほとんどありません。

チクッとしたり、皮膚をこすったりする感覚はありますが、麻酔が必要なほどの痛みではないのでご安心ください。

妊娠中や授乳中でも検査は可能ですか？

はい、検査自体は問題なく行うことができます。KOH検査や培養検査は、お腹の赤ちゃんや母乳に影響を与えるものではありません。

ただし、診断が確定した後の治療、特に抗真菌薬の内服については、妊娠・授乳中は使用できない薬が多いため、医師と十分に相談して治療方針を決定する必要があります。

まずは原因を特定するために、安心して検査を受けてください。

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