40代女性の抜け毛がひどい原因と対策｜ホルモンバランスの影響

40代を迎えると「お風呂の排水溝にたまる髪の毛の量が増えた」「ブラッシングするたびに、ごっそり毛が抜ける」「髪の分け目がなんだか薄くなってきた気がする」といった髪の変化に不安を感じる女性が増えます。

この記事では、40代女性のひどい抜け毛の主な原因であるホルモンバランスの変化を中心に、考えられる様々な要因と、ご自身でできる対策、そして専門的な治療法までを詳しく解説します。

正しい知識を得て、適切なケアを始めましょう。

40代で抜け毛がひどくなるのはなぜ？ホルモンバランスの変化が大きな要因

40代は女性の身体にとって大きな転換期です。特に女性ホルモンの分泌量が大きく変動し、心身に様々な影響を及ぼします。

その中でも髪への影響は顕著で、抜け毛の増加に直結するケースが少なくありません。

更年期と女性ホルモン「エストロゲン」の減少

女性は40代半ばから卵巣の機能が徐々に低下し始め、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌量が減少していきます。

この閉経前後の約10年間を一般的に「更年期」と呼びます。

エストロゲンは、女性らしい身体つきを保つだけでなく、髪の毛の成長にも深く関わっています。

女性ホルモン（エストロゲン）の年代別分泌量の変化

年代	エストロゲンの分泌量	身体や髪への影響
20代～30代前半	ピーク	髪にハリ・コシ・ツヤがあり、最も健康な状態を保ちやすい。
30代後半～40代	減少し始める	髪の成長期が短くなり始め、抜け毛や髪質の変化を感じることがある。
50代以降	急激に減少	髪のハリ・コシが失われ、薄毛や白髪が目立ちやすくなる。

エストロゲン減少が髪に与える影響

エストロゲンには髪の毛の成長期を持続させ、髪を豊かに育む働きがあります。このホルモンが減少すると、髪の成長サイクルに乱れが生じます。

具体的には、髪が太く長く成長する「成長期」が短くなり、十分に育たないまま「退行期」「休止期」へと移行してしまうのです。

これによって一本一本の髪が細く弱々しくなり（軟毛化）、抜け毛が増加します。

ホルモンバランス以外の抜け毛の原因

40代の抜け毛は、ホルモンバランスの変化だけが原因とは限りません。

複数の要因が複雑に絡み合っている場合がほとんどです。

ホルモンバランスの乱れを基盤としながら、以下のような要因が加わって、抜け毛がさらにひどくなる方も多いです。

• ストレス
• 生活習慣の乱れ（食事・睡眠・運動不足）
• 頭皮環境の悪化
• 特定の病気や薬の影響

抜け毛は本当に年のせい？見過ごされがちな40代特有の要因

「もう40代だから仕方ない」と、抜け毛を年齢のせいだと諦めてしまう方もいるでしょう。

しかし、同年代でも髪が豊かな人はいます。その差はどこにあるのでしょうか。

実は、40代という特有のライフステージが、知らず知らずのうちに髪への負担を増やしている可能性があります。

ここでは、多くの方が見過ごしがちな、40代ならではの抜け毛要因を掘り下げます。

働き盛りのストレスと髪の関係

40代は仕事では責任ある立場を任されたり、家庭では子育てや介護に追われたりと、公私ともにストレスが最もかかりやすい年代です。

過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させます。

頭皮の血管も例外ではなく、血行が悪化すると髪の成長に必要な栄養や酸素が毛根まで届きにくくなり、抜け毛を誘発します。

繰り返してきたヘアカラーやパーマの蓄積ダメージ

ヘアカラーやパーマで20代、30代とおしゃれを楽しんできた方も多いかと思います。しかし、これらの施術は髪だけでなく頭皮にもダメージを与えます。

若い頃は回復力でカバーできていたかもしれませんが、40代になると頭皮のバリア機能も低下しがちです。

これまでのダメージが蓄積し、炎症やかゆみ、乾燥を引き起こして健康な髪が育ちにくい頭皮環境になっている可能性があります。

頭皮への負担が大きいヘアケア習慣

習慣	頭皮への影響	見直しのポイント
頻繁なヘアカラー	化学薬品による刺激、アレルギー反応のリスク	頻度を見直す、頭皮に優しい薬剤を選ぶ
強い洗浄力のシャンプー	必要な皮脂まで奪い、乾燥やバリア機能低下を招く	アミノ酸系などマイルドな洗浄成分のものを選ぶ
頭皮の紫外線対策不足	活性酸素の発生、乾燥、炎症の原因になる	日傘や帽子、頭皮用日焼け止めを活用する

自己流ダイエットによる栄養不足

体型の変化が気になり始め、急激な食事制限などの自己流ダイエットを試した経験がある方も少なくないのではないでしょうか。

髪の毛は主に「ケラチン」というタンパク質でできています。極端な食事制限は、このタンパク質をはじめ、髪の成長に重要なビタミンやミネラルの不足を招きます。

身体は生命維持に必要な臓器へ優先的に栄養を送るため、髪は後回しにされがちです。この栄養不足が、抜け毛や髪のパサつきとして現れます。

「まだ大丈夫」という思い込みが招くこと

抜け毛が増えても「一時的なものだろう」「もう少し様子を見よう」と考えてしまうのも無理はありません。

しかし、女性の薄毛は男性と比べて進行が緩やかなため、気づいた時にはかなり進行しているケースも見受けられます。

特にFAGA（女性男性型脱毛症）の場合、放置すると薄毛の範囲が広がる可能性があります。早期の対策が、将来の髪を守る上で非常に重要です。

40代女性の抜け毛を引き起こす病気

ホルモンバランスや生活習慣だけでなく、特定の脱毛症が原因で抜け毛が増えている可能性もあります。

40代女性に多い代表的な脱毛症について確認しておきましょう。

女性男性型脱毛症（FAGA）の進行

FAGAは、女性の薄毛で最も多い原因の一つです。女性ホルモンのエストロゲンが減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強まることで発症します。

頭頂部や前髪の生え際を中心に、髪の分け目が広がるように薄くなるのが特徴です。

進行性の脱毛症であるためセルフケアだけでの改善は難しく、専門的な治療が必要です。

びまん性脱毛症とは

びまん性脱毛症は、頭部全体が均一に薄くなるのが特徴の脱毛症です。

FAGAのように特定の部位が目立って薄くなるのではなく、全体のボリュームが失われ、地肌が透けて見えるようになります。

加齢やホルモンバランスの乱れ、ストレスや栄養不足など、様々な要因が複合的に絡み合って発症すると考えられています。

FAGAとびまん性脱毛症の違い

項目	FAGA（女性男性型脱毛症）	びまん性脱毛症
薄くなる範囲	頭頂部や分け目が中心	頭部全体が均一に薄くなる
主な原因	ホルモンバランスの変化（男性ホルモンの影響）	加齢、ストレス、栄養不足など複合的要因
進行の仕方	ゆっくりと進行する	比較的短期間で変化を感じることもある

頭皮環境の悪化（乾燥・血行不良）

頭皮は髪を育む土壌です。この土壌の状態が悪ければ、健康な髪は育ちません。

40代になると皮脂の分泌量も減少し、頭皮が乾燥しやすいです。乾燥した頭皮はバリア機能が低下し、フケやかゆみ、炎症を引き起こす原因となります。

また、ストレスや運動不足による血行不良も毛根に栄養を届ける妨げとなり、抜け毛につながります。

生活習慣の乱れ

不規則な生活や栄養バランスの偏った食事、睡眠不足や喫煙、過度な飲酒などは、すべて髪の健康に悪影響を及ぼします。

これらの生活習慣はホルモンバランスや自律神経を乱し、血行を悪化させ、髪の成長を妨げる要因となります。

一つひとつは小さなことでも、積み重なると抜け毛を深刻化させます。

今すぐ始められる！40代からの抜け毛対策【生活習慣編】

専門的な治療も大切ですが、まずはご自身の生活習慣の見直しが基本です。

髪の健康は、日々の積み重ねによって作られます。

髪の成長を支える食事と栄養素

バランスの取れた食事は、健康な髪を育てるための土台です。

髪の主成分であるタンパク質、その合成を助ける亜鉛、頭皮の健康を保つビタミン類を意識して摂取することが大切です。

髪に良い栄養素と多く含む食材

栄養素	主な働き	多く含む食材
タンパク質	髪の主成分（ケラチン）の材料になる	肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛	タンパク質の合成を助け、毛髪の成長を促す	牡蠣、レバー、牛肉、チーズ、ナッツ類
ビタミンB群	頭皮の新陳代謝を促し、皮脂の分泌を調整する	豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、納豆

質の良い睡眠でホルモンバランスを整える

髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。

眠り始めの深いノンレム睡眠時に最も多く分泌されるため、睡眠の「質」が重要です。

毎日決まった時間に就寝・起床する、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控える、リラックスできる環境を整えるなど、質の良い睡眠を確保する工夫をしましょう。

ストレスを溜めないための工夫

ストレスを完全になくすのは現実的ではありませんが、上手に発散する方法を見つけることは可能です。

軽い運動や趣味の時間、親しい友人との会話、アロマテラピーなど、自分が心からリラックスできる時間を持ちましょう。

ストレスによって乱れた自律神経が整い、頭皮の血行改善にもつながります。

適度な運動で血行を促進する

ウォーキングやジョギング、ヨガなどの有酸素運動は、全身の血行を促進するのに効果的です。

血行が良くなるため、髪の成長に必要な栄養素が頭皮の隅々まで行き渡りやすくなります。

激しい運動である必要はありません。日常生活の中に少しでも身体を動かす習慣を取り入れましょう。

効果的なヘアケアの見直し【セルフケア編】

毎日行っているヘアケアも、やり方次第で髪や頭皮への負担になります。

40代のデリケートな頭皮環境に合わせた、優しいケアを心がけましょう。

シャンプーの選び方と正しい洗い方

洗浄力の強いシャンプーは頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥を招きます。

アミノ酸系やベタイン系など、マイルドな洗浄成分のシャンプーを選ぶのがおすすめです。

洗う際は爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないようにしっかりと洗い流しましょう。

シャンプーの洗浄成分比較

成分の種類	特徴	おすすめ度
高級アルコール系	洗浄力が強く泡立ちが良いが、刺激も強い。	△
石けん系	洗浄力は高いが、髪がきしみやすく、アルカリ性で頭皮への刺激も。	△
アミノ酸系・ベタイン系	洗浄力がマイルドで、頭皮や髪への負担が少ない。	◎

頭皮マッサージで血行改善

シャンプー中や育毛剤をつけた後などに、頭皮マッサージを取り入れるのも良い方法です。

指の腹を使って、頭皮全体を優しく動かすようにマッサージします。

硬くなった頭皮をほぐし、血行を促進するため毛根に栄養が届きやすくなります。ただし、力を入れすぎると逆効果になるため注意が必要です。

育毛剤・発毛剤の選び方と使い方

セルフケアの一つとして、育毛剤や発毛剤の使用を検討する方も多いでしょう。

育毛剤は今ある髪を健康に育てる（育毛・脱毛予防）目的、発毛剤は新しい髪を生やす（発毛）目的で使います。

ご自身の目的に合わせて選びましょう。

育毛剤と発毛剤の違い

	育毛剤	発毛剤
目的	今ある髪の毛を健康に育て、抜け毛を防ぐ	髪の毛を新たに生やす
分類	医薬部外品	医薬品
主な有効成分	血行促進成分、抗炎症成分など	ミノキシジルなど（発毛効果が認められた成分）

髪と頭皮に優しいドライヤーの方法

濡れた髪はキューティクルが開いており、非常にデリケートな状態です。自然乾燥は雑菌の繁殖や頭皮の冷えにつながるため、シャンプー後は速やかにドライヤーで乾かしましょう。

頭皮から20cm以上離し、同じ場所に熱が集中しないようにドライヤーを動かしながら乾かすのがポイントです。

8割ほど乾いたら冷風に切り替えて仕上げると、キューティクルが引き締まりツヤが出ます。

それでも抜け毛が止まらない…クリニックでの専門的な治療

生活習慣やヘアケアを見直しても抜け毛が改善しないときや、分け目が明らかに目立つようになった場合は、専門クリニックへの相談をおすすめします。

自己判断でケアを続けるよりも、医師の診断のもとで適切な治療を受けるほうが改善への近道です。

薄毛治療専門クリニックでできること

専門クリニックでは、まずカウンセリングや診察を通じて抜け毛の原因を正確に診断します。

マイクロスコープで頭皮の状態を確認したり、血液検査でホルモンバランスや栄養状態を調べたりする場合もあります。

その診断結果に基づいて、一人ひとりの症状や原因に合わせた治療計画を立てます。

内服薬による治療

身体の内側から薄毛の原因に働きかける治療法です。

代表的なのは「スピロノラクトン」や「ミノキシジル」の内服薬です。

スピロノラクトンは男性ホルモンの影響を抑制し、FAGAの進行を抑える効果が期待できます。ミノキシジルは血管を拡張して血流を改善し、毛母細胞を活性化させて発毛を促します。

外用薬による治療

頭皮に直接塗布して発毛を促す治療法です。最も一般的なのが「ミノキシジル」の外用薬です。

毛根に直接作用し、血行を促進して髪の成長をサポートします。

市販薬にもミノキシジル配合のものがありますが、クリニックではより高濃度のものを処方できます。

主な女性薄毛治療法の比較

治療法	働きかけ	期待できる効果
内服薬（スピロノラクトン）	内側から（ホルモン抑制）	FAGAの進行抑制、抜け毛の減少
内服薬（ミノキシジル）	内側から（血行促進）	発毛促進、髪の成長サポート
外用薬（ミノキシジル）	外側から（血行促進）	発毛促進、抜け毛の減少

注入治療などの選択肢

内服薬や外用薬に加えて、より積極的に発毛を促す治療法もあります。

例えば、髪の成長に必要な栄養素（グロースファクター）を頭皮に直接注入する「メソセラピー」などです。

これらの治療は薬物治療と組み合わせると、より効果を実感できる場合があります。

治療を始める前に知っておきたいこと

専門的な治療は心強い選択肢ですが、始める前にはいくつか知っておくべき点があります。

納得して治療に臨むために、事前に確認しておきましょう。

クリニック選びのポイント

薄毛治療は継続が重要です。そのため、信頼できて通いやすいクリニックを選びましょう。

• 女性の薄毛治療の実績が豊富か
• カウンセリングが丁寧で、質問しやすい雰囲気か
• 治療内容や費用について明確な説明があるか
• プライバシーへの配慮がされているか

治療にかかる費用と期間の目安

女性の薄毛治療は多くの場合、健康保険が適用されない自由診療となります。そのため、費用は全額自己負担です。

治療内容によって費用は大きく異なりますが、月々数万円程度かかるのが一般的です。

また、効果を実感するまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要です。治療は根気強く続ける必要があります。

副作用やリスクについて

どのような薬や治療であっても副作用のリスクはゼロではありません。

例えばミノキシジルには、初期脱毛（治療開始後に一時的に抜け毛が増える現象）や多毛症、動悸やむくみなどの可能性があります。

治療を始める前には、医師から考えられる副作用について十分な説明を受け、理解した上で治療を開始することが重要です。

不安な点があれば、遠慮なく質問しましょう。

よくある質問（Q&A）

さいごに、40代の抜け毛に関して患者さんからよくいただく質問にお答えします。

抜け毛は何本くらいからが危険信号ですか？

健康な人でも1日に50本から100本程度の髪は自然に抜けています。これを「生理的脱毛」と呼びます。

しかし、以前と比べて明らかに抜け毛が増えたと感じるときや、1日に150本以上抜ける日が続くようであれば注意が必要です。

排水溝にたまる髪の量や、枕につく髪の毛の量を意識してみるとよいでしょう。

市販の育毛剤とクリニックの薬は何が違いますか？

最も大きな違いは、配合されている有効成分とその濃度です。

市販の育毛剤（医薬部外品）は主に頭皮環境を整え、今ある髪を健康に保つのを目的としています。

一方、クリニックで処方される発毛剤（医薬品）には、ミノキシジルのように発毛効果が医学的に認められた成分が市販品より高濃度で配合されています。

原因に応じた的確な治療を望むなら、クリニックでの処方薬が有効です。

治療を始めたらすぐに効果は出ますか？

効果を実感できるまでの期間には個人差がありますが、一般的には3ヶ月から6ヶ月程度の継続的な治療が必要です。

髪にはヘアサイクル（毛周期）があり、休止期に入った毛根から新しい髪が生え、成長して目に見える長さになるまでには時間がかかります。

焦らずに、医師の指示に従って治療を続けていきましょう。

家族に薄毛の人はいませんが、それでもFAGAになりますか？

FAGAには遺伝的な要因も関係すると言われていますが、遺伝がすべてではありません。

ご家族に薄毛の方がいなくても、加齢によるホルモンバランスの変化が主な引き金となって発症する可能性は十分にあり得ます。

40代以降、分け目が目立つなどの症状があれば遺伝の有無に関わらず、一度専門医に相談するのがおすすめです。

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