髪がよく抜ける女性が今すぐ確認すべき症状と対策法

髪がよく抜ける女性が今すぐ確認すべき症状と対策法

お風呂の排水溝やブラシに絡まる髪が増えたり、髪のボリュームが減ってきた気がしたりと、髪の変化に気づいて来院される方が多いです。

女性にとって髪は大切なものですので、抜け毛が増えると、不安や焦りを感じるのは当然です。

この記事では、女性の抜け毛の原因を紐解き、ご自身で確認できる症状のサイン、そして今日から始められる具体的な対策法までを詳しく解説します。

目次

もしかして危険信号?髪からのSOSサイン

毎日ある程度の髪が抜けるのは自然な現象です。しかし、その量や質がいつもと違うなら、それは頭皮や体からのSOSサインかもしれません。

まずは正常な状態を知り、ご自身の抜け毛と比較してみましょう。

1日に抜ける髪の正常な本数

健康な人でも、1日に50本から100本程度の髪は自然に抜け落ちます。これはヘアサイクル(毛周期)と呼ばれる髪の生まれ変わりの一環です。

髪の毛には成長期、退行期、休止期があり、休止期に入った髪が自然に抜けていきます。

季節の変わり目、特に秋には一時的に抜け毛が増えるケースもあります。

抜け毛の質でわかる頭皮の状態

抜けた髪の毛根部分を観察すると、頭皮の健康状態をある程度推測できます。

正常な抜け毛は、毛根がふっくらと丸みを帯び、白い半透明の膜(毛根鞘)が付着しています。これは寿命を全うした髪の証拠です。

一方で、毛根が細く尖っていたり、黒くべたついた皮脂が付いていたりする場合は注意が必要です。

正常な抜け毛と注意すべき抜け毛

チェック項目正常な抜け毛注意が必要な抜け毛
毛根の形マッチ棒のように丸い細い、ギザギザ、形がない
毛根の色白っぽい・半透明黒い、皮脂で黄色い
髪の太さ太く、しっかりしている細く、短い毛が多い

こんな抜け毛は要注意

1日の抜け毛が150本を超える状態が続いたり、細くて短い髪の毛が多く抜けたりする場合は、ヘアサイクルが乱れている可能性があります。

また、髪全体のボリュームが減った、分け目が目立つようになった、地肌が透けて見えるといった変化も、薄毛が進行しているサインと考えられます。

女性の抜け毛を引き起こす原因

女性の抜け毛は単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って起こるケースが多いです。

ご自身の生活を振り返り、当てはまるものがないか確認してみましょう。

ホルモンバランスの乱れ

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは髪の成長を促進し、ハリやコシを保つ働きがあります。

しかし、妊娠・出産や更年期、過度なダイエットなどによってエストロゲンが減少すると相対的に男性ホルモンの影響が強まり、抜け毛が増加する方が多いです。

ピルの服用中止後にも一時的にホルモンバランスが変化し、抜け毛が気になる場合があります。

女性ホルモンと髪の関係

ホルモン名主な働き髪への影響
エストロゲン女性らしさを作る髪の成長を促進、ハリ・ツヤを保つ
プロゲステロン妊娠を維持するヘアサイクルの維持をサポート

生活習慣の乱れと栄養不足

髪は、私たちが食べたものから作られます。

栄養バランスの偏った食事、特に髪の主成分であるタンパク質や、その合成を助ける亜鉛、ビタミン類が不足すると、健康な髪を育てるのが難しくなります。

睡眠不足や喫煙、過度な飲酒も血行不良を招き、頭皮に十分な栄養を届けられなくなる原因です。

ストレスによる影響

強いストレスを感じると自律神経が乱れて血管が収縮し、頭皮の血行が悪化します。

この血行不良により髪の成長に必要な酸素や栄養が毛根に届きにくくなり、抜け毛につながります。

また、ストレスはホルモンバランスの乱れも引き起こすため、二重のダメージとなる可能性があります。

  • 寝ても疲れがとれない
  • イライラしやすくなった
  • 食欲がなくなったり、逆に増えたりした
  • 何事にもやる気が出ない

不適切なヘアケア

洗浄力の強すぎるシャンプーや、1日に何度も髪を洗う行為は頭皮に必要な皮脂まで奪い、乾燥やかゆみ、フケの原因となります。

逆に、髪を洗わなすぎると皮脂や汚れが毛穴に詰まり、炎症を起こす方もいます。

また、ポニーテールなど髪を強く引っ張る髪型を長時間続けると、毛根に負担がかかり「牽引性脱毛症」を引き起こしやすいです。

びまん性脱毛症とは?女性特有の薄毛の形

特定の部位が薄くなる男性の薄毛とは異なり、女性の薄毛は髪全体が均等に薄くなる「びまん性脱毛症」が特徴的です。

これは多くの女性の髪がよく抜ける原因となっています。

びまん性脱毛症の症状と特徴

びまん性脱毛症は、頭部全体の髪の毛が少しずつ細くなり、密度が低下していく状態を指します。

そのため初期段階では気づきにくく、「なんとなくボリュームが減った」「分け目が広がった気がする」といった自覚症状から始まることが多いです。

進行すると、地肌が全体的に透けて見えるようになります。

他の脱毛症との違い

女性に起こる脱毛症には、ほかにも円形脱毛症や前述の牽引性脱毛症などがあります。

円形脱毛症は自己免疫疾患などが原因で、コイン大の脱毛斑が突然現れるのが特徴です。

びまん性脱毛症はこれらの脱毛症とは異なり、特定の原因が一つに定まらないケースが多いです。

主な女性の脱毛症との比較

脱毛症の種類主な原因脱毛部分の特徴
びまん性脱毛症加齢、ホルモン、生活習慣など複合的頭部全体が均一に薄くなる
円形脱毛症自己免疫疾患、ストレスなど円形・楕円形の脱毛斑ができる
牽引性脱毛症髪が強く引っ張られること生え際や分け目が後退する

びまん性脱毛症になりやすい年代

びまん性脱毛症は30代後半から見られ始め、特に更年期を迎える40代から50代にかけて相談が増える傾向にあります。

これは、加齢と女性ホルモンの減少が大きく関係しているためです。

しかし、近年では20代、30代の若い世代でも、過度なダイエットやストレス、生活習慣の乱れから発症するケースが増えています。

自宅でできる!今日から始める抜け毛対策

専門的な治療も重要ですが、日々のセルフケアが健康な髪を育む土台となります。

今日からすぐに始められる、抜け毛対策のための生活習慣改善のポイントをみていきましょう。

髪に良い栄養素を意識した食事

バランスの取れた食事は、美しい髪の基本です。

なかでも髪の主成分であるタンパク質、タンパク質の合成を助けて細胞分裂を促す亜鉛、頭皮の血行を良くするビタミンE、頭皮環境を整えるビタミンB群を積極的に摂取しましょう。

髪の健康を支える主な栄養素と食材

栄養素主な働き多く含まれる食材
タンパク質髪の主成分(ケラチン)を作る肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類
ビタミンB群頭皮の代謝を促進する豚肉、うなぎ、玄米、ほうれん草

質の良い睡眠をとるための工夫

髪の成長を促す「成長ホルモン」は、睡眠中に最も多く分泌されます。特に、眠り始めの深いノンレム睡眠時に分泌が活発になります。

毎日7時間程度の睡眠時間を確保するとともに、就寝前のスマートフォン操作を控える、リラックスできる音楽を聴くなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。

簡単なストレッチで血行促進

デスクワークなどで同じ姿勢が続くと、首や肩の筋肉が凝り固まり、頭部への血流が滞りがちです。

仕事の合間や入浴後などに、首や肩をゆっくり回すストレッチを取り入れると、頭皮の血行を促進できます。

  • 首をゆっくり前後左右に倒す
  • 両肩を上げて、ストンと落とす
  • 肩甲骨を寄せるように腕を回す

毎日のヘアケアを見直そう

良かれと思って続けているヘアケアが、実は頭皮に負担をかけているかもしれません。

髪と頭皮にやさしいケア方法を身につけ、健やかな頭皮環境を整えましょう。

正しいシャンプーの選び方と洗い方

シャンプーは、頭皮のタイプに合わせて選ぶことが重要です。

乾燥しがちな方はアミノ酸系などマイルドな洗浄成分のものを、皮脂が多い方は石鹸系など、ある程度の洗浄力があるものを選びましょう。

洗髪時はシャンプーを直接頭皮につけず、手でよく泡立ててから、指の腹でマッサージするように優しく洗います。

すすぎ残しは、かゆみや炎症の原因になるため十分に洗い流してください。

シャンプーの主な洗浄成分と特徴

洗浄成分の種類特徴向いている頭皮タイプ
アミノ酸系マイルドで保湿力が高い乾燥肌・敏感肌
高級アルコール系泡立ちが良く、洗浄力が強い脂性肌、スタイリング剤を多用する方
石鹸系洗浄力が高く、さっぱりする脂性肌

ドライヤーの熱から髪を守る方法

髪を濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮トラブルの原因になります。

洗髪後は、まずタオルで優しく水分を拭き取り、その後速やかにドライヤーで乾かしましょう。

ドライヤーは髪から20cm以上離し、同じ場所に熱風が当たり続けないように、常に動かしながら使うのがポイントです。

  • タオルドライでしっかり水分を取る
  • ドライヤーを髪から20cm以上離す
  • 根元から毛先の順に乾かす
  • 最後は冷風で仕上げる

頭皮マッサージのポイント

頭皮マッサージは、血行を促進してリラックス効果も期待できます。シャンプーの際や、就寝前などのリラックスタイムに行うのがおすすめです。

指の腹を使い、頭皮全体を優しく動かすようにマッサージします。爪を立てて頭皮を傷つけないように注意しましょう。

専門医に相談するタイミング

セルフケアは抜け毛予防の基本ですが、症状が改善しないときや、急激に悪化した場合は、専門のクリニックに相談することが重要です。

早期の対応が、改善への近道となります。

セルフケアで改善が見られない場合

食生活やヘアケアを見直し、2〜3ヶ月続けても抜け毛の量に変化がない、あるいはむしろ増えていると感じる場合は専門的な診断が必要です。

自己判断で育毛剤などを使い続けるよりも、一度原因を特定してもらうほうが効率的です。

相談を検討すべき症状のチェック

カテゴリチェック項目
抜け毛の状態1日の抜け毛が150本以上ある状態が続いている
細く短い毛が多く抜ける
頭皮・頭髪の状態分け目が以前より明らかに目立つ
頭皮のかゆみやフケ、赤みが治まらない

急激に抜け毛が増えたとき

ある日を境にごっそりと髪が抜けるなど、急激な変化があった場合は円形脱毛症や、甲状腺疾患など他の病気が隠れている可能性も考えられます。

このような場合は、できるだけ早く皮膚科や女性の薄毛専門クリニックを受診してください。

抜け毛以外の症状がある場合

抜け毛に加えて、強い倦怠感や急激な体重の変化、気分の落ち込みといった体調不良を伴う場合も、内科的な疾患が原因である可能性があります。

まずはかかりつけ医に相談するか、女性の薄毛を専門に扱うクリニックで総合的に診てもらうと良いでしょう。

抜け毛の悩み、誰にも言えない「心の重荷」を軽くするために

抜け毛の悩みは、単に外見上の問題だけではありません。多くの女性が、誰にも打ち明けられないまま、深い心の悩みを抱えています。

ここでは、その心理的な側面に焦点を当て、心が少しでも軽くなるような考え方を探ります。

抜け毛が女性の心に与える影響

髪は「女性の命」ともいわれるほど、女性のアイデンティティと深く結びついています。

抜け毛が増えることで、女性らしさを失ってしまうかのような喪失感を抱き、自信をなくしてしまう方は少なくありません。

鏡を見るのがつらくなったり、人と会うのが億劫になったり、社会生活にまで影響が及ぶときもあります。

「気にしすぎ」と言われて傷ついた経験

勇気を出して家族や友人に相談しても、「まだ大丈夫だよ」「気にしすぎじゃない?」といった言葉で片付けられ、深く傷ついてしまう方もいます。

本人にとっては深刻な悩みでも、周りからは理解されにくいのが抜け毛のつらいところです。この孤独感が、さらに悩みを深刻化させてしまう要因にもなります。

心の負担を軽くする考え方

よくある悩み新しい視点具体的な行動
人の視線が気になる他人は思うほど見ていない素敵な帽子やスカーフを試す
完璧でなければいけないありのままの自分を受け入れる髪以外の自分の長所に目を向ける
一人で解決しようとする専門家を頼るのは賢明な選択まずは専門クリニックの情報収集から

ひとりで抱え込まないことが大切

抜け毛や薄毛は多くの女性が同じように悩み、向き合っています。大切なのは、ひとりで抱え込まず、正しい情報を得て適切な行動を起こすことです。

心を許せる人に相談するのも良いですし、難しいときは専門クリニックのカウンセリングを受けるのも一つの方法です。

無料カウンセリングを行うクリニックも多く、話を聞いてもらうだけでも心が軽くなるケースがあります。

よくある質問

髪がよく抜けると、そのまま薄毛になってしまうのではないかと心配になる方が多いです。

さらに髪のボリュームダウンを感じると、自信をなくしたり、人の視線が気になったりするときもあるでしょう。

薄毛対策は早く始めればそれだけ効果を実感しやすいです。正しいケアで健康的な頭皮と髪を目指しましょう。

1日に何本くらい抜けたら危険ですか?

明確に「何本以上が危険」という基準はありませんが、一般的に1日100本程度までが正常範囲とされます。ただし、これはあくまで目安です。

大切なのは「以前と比べて明らかに抜け毛が増えたか」どうかです。

急に倍以上に増えた、排水溝に溜まる量が目に見えて多くなったなど、ご自身の感覚で変化を感じた場合は注意が必要です。

海藻類は髪に良いと聞きますが、本当ですか?

ワカメや昆布などの海藻類が直接的に髪を生やすわけではありません。

しかし、海藻類には髪の健康維持に必要なミネラルやビタミンが豊富に含まれています。これらの栄養素が頭皮環境を整え、健康な髪が育つのを助けるという意味で「髪に良い」と言えます。

海藻類だけを食べるのではなく、バランスの良い食事の一部として取り入れていきましょう。

髪を短くすると抜け毛は減りますか?

髪を短くしても、ヘアサイクル自体は変わらないため、抜ける本数が直接減るわけではありません。

しかし、髪が短いと一本一本の重さが軽くなるため、毛根への負担が軽減される可能性があります。

また、シャンプーやドライヤーがしやすくなり、結果的に頭皮を清潔に保ちやすくなるというメリットもあります。

市販の育毛剤を使っても効果がありません。

育毛剤は、主に頭皮環境を整えて抜け毛を予防するためのもので、効果を実感するまでには数ヶ月単位の時間が必要です。

また、抜け毛の原因が育毛剤で対応できる範囲を超えている可能性も考えられます。

例えば、ホルモンバランスの大きな乱れや、何らかの疾患が原因である場合、セルフケアだけでの改善は困難です。

効果が見られないときは一度専門のクリニックに相談し、原因を特定することをおすすめします。

クリニックではどのような検査や治療をするのですか?

クリニックでは問診や視診、マイクロスコープでの頭皮チェック、血液検査などを行い、抜け毛の原因を詳しく調べます。

原因に応じて、内服薬や外用薬の処方、頭皮への有効成分の注入治療、生活習慣や食事に関するアドバイスなど、一人ひとりの状態に合わせた複合的な治療計画を立てて進めていきます。

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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