年齢を重ねるごとに気になる髪のボリュームダウンや、繰り返すカラー・パーマによる深刻なダメージに悩む方が少なくありません。
そんな女性特有の髪の悩みに、ヘマチントリートメントが効果的です。
この記事では、ヘマチンが持つ修復力と、その効果を最大限に引き出す正しい使い方を詳しく解説します。
ヘマチントリートメントとは何か
ヘマチントリートメントは、近年その優れた毛髪修復効果で注目を集めているヘアケア製品です。
特にダメージを受けた髪や、ハリ・コシを失った髪に対して効果的と言われています。
このトリートメントの主成分である「ヘマチン」は、血液中のヘモグロビンを構成する成分の一つで、特有の性質を活かして髪の健康を多角的に支えます。
ヘマチンの成分と由来
ヘマチンは、血液の赤い色素であるヘモグロビンをヘムとグロビンに分離し、ヘムを電気的に処理して抽出する成分です。
動物由来の成分であり、非常に高い安全性を持ちます。化粧品原料としてのヘマチンは、主に豚の血液から精製されます。
この成分は、髪の主成分であるケラチンタンパク質と強く結合する性質を持ち、髪の内部から補強する働きをします。
ヘマチンが髪に与える基本的な働き
ヘマチンは髪に対して複数の有益な働きをします。
まず、髪のダメージホールを埋め、強度を高めます。また、カラーリングやパーマの際に残留しやすいアルカリ成分を除去し、施術によるダメージを軽減します。
さらに、紫外線吸収作用や消臭効果も期待できるため、髪と頭皮を健やかに保つのに役立ちます。
ヘマチンの主な作用
- ケラチンタンパク質との結合
- ダメージ部分の補修
- 残留アルカリの中和・除去
- 紫外線ダメージの軽減
他のヘアケア成分との違い
一般的なトリートメント成分が髪の表面をコーティングして手触りを良くするのに対し、ヘマチンは髪の内部に浸透し、タンパク質と結合して構造そのものを強化する点が大きな違いです。
シリコンやオイル系の成分とは異なり、根本的な髪質改善を目指す方に適しています。
代表的なヘアケア成分とヘマチンの比較
成分 | 主な働き | 特徴 |
---|---|---|
ヘマチン | 内部補修、強度向上、アルカリ除去 | ケラチンと結合、持続性 |
シリコン | 表面コーティング、指通り改善 | 即効性、洗い流すと効果減 |
植物オイル | 保湿、ツヤ出し | 天然由来、重さが出やすい場合も |
ヘマチントリートメントの歴史と進化
ヘマチンがヘアケアに応用され始めたのは比較的古く、美容業界ではその効果が以前から認識されていました。
当初は主に業務用として、パーマやカラーリングの前処理・後処理剤として美容室で活用されていました。
近年、その優れた効果が一般にも知られるようになり、ホームケア用の製品も多数開発されています。
技術の進歩によりヘマチンの抽出・精製技術も向上し、より高品質なヘマチンを配合した製品が登場しています。
女性の髪の悩みにヘマチンが注目される理由
女性の髪の悩みは多岐にわたりますが、特に年齢による変化や繰り返されるヘア施術によるダメージは深刻です。
ヘマチンは、これらの問題に対して有効な働きかけができるため、多くの女性から支持を得ています。
加齢による髪質の変化とヘマチンの役割
年齢を重ねると髪は細くなり、ハリやコシが失われがちです。これは、毛髪内部のタンパク質量の減少や、頭皮の血行不良などが影響します。
ヘマチンは髪の主成分であるケラチンタンパク質と結合し、髪を内側から強化するため、失われたハリ・コシを取り戻す手助けをします。
また、頭皮環境を整える働きも期待でき、健やかな髪の育成をサポートします。
加齢に伴う主な髪の変化
変化 | 主な原因 | ヘマチンによる期待 |
---|---|---|
細毛・軟毛化 | タンパク質減少、ホルモンバランス | 内部補強、ハリ・コシ付与 |
ボリュームダウン | 毛髪の弱体化、頭皮の弾力低下 | 根元の立ち上がりサポート |
うねり・パサつき | 水分バランスの乱れ、キューティクル損傷 | ダメージ補修、まとまり向上 |
カラーやパーマによるダメージとヘマチン
おしゃれを楽しむために欠かせないカラーリングやパーマですが、これらは髪に大きな負担をかけます。
薬剤に含まれるアルカリ成分は髪のキューティクルを開き、内部のタンパク質を流出させやすくします。
ヘマチンは、この残留アルカリを除去して薬剤によるダメージを軽減する効果があります。
また、ダメージホールを埋めて補修して施術後も美しい髪を保つサポートをします。
ダメージヘアの主な原因
- 化学的処理(カラー、パーマ)
- 熱によるダメージ(ドライヤー、アイロン)
- 紫外線
- 物理的摩擦
ストレスや生活習慣と髪の健康
現代社会においてストレスは避けられない要素の一つです。過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、頭皮の血行不良を引き起こす場合があります。
また、不規則な生活習慣や偏った食事も、髪の健康に悪影響を与えます。
ヘマチン自体が直接これらの根本原因を解決するわけではありませんが、頭皮環境を整えて髪の成長をサポートすることで、間接的にこれらの影響を受けにくい髪質へと導く可能性があります。
ヘマチンによる頭皮環境への働きかけ
美しい髪は健康な頭皮から育ちます。ヘマチンには頭皮の毛穴に詰まった皮脂や汚れを吸着し、除去する働きがあると言われています。
また、抗酸化作用により頭皮の老化を防ぎ、活性酸素の影響を軽減する効果も期待されます。
これらの働きにより頭皮環境が整い、フケやかゆみの予防、さらには健やかな髪の育成につながります。
ヘマチントリートメントの具体的な効果
ヘマチントリートメントを使用すると髪には様々な良い変化が現れます。その効果は多岐にわたり、多くの髪の悩みに対応できる可能性があります。
髪の強度アップとハリ・コシ改善
ヘマチンが髪内部のケラチンタンパク質と結合することで、髪の芯から強化します。髪一本一本にハリとコシが生まれ、全体としてボリューム感のあるしっかりとした髪質へと導きます。
細毛や軟毛で悩む方にとって、特に実感しやすい効果の一つです。
ヘマチンによる毛髪強化のイメージ
状態 | 髪内部(イメージ) | 髪の外観・手触り |
---|---|---|
ダメージ毛 | タンパク質流出、空洞が多い | 細く、弱々しい、切れやすい |
ヘマチン処理後 | ヘマチンが空洞を埋め、結合 | 太く、強く、ハリ・コシがある |
ダメージ部分の補修とキューティクル保護
カラーやパーマ、紫外線などでダメージを受けた髪はキューティクルが剥がれたり、内部のタンパク質が流出したりしています。
ヘマチンはこれらのダメージホールに入り込み、髪の成分と結合して補修します。
また、キューティクルのめくれを抑え、髪の表面を滑らかに整えて外部刺激からの保護効果も高めます。
白髪予防や育毛サポートの可能性
ヘマチンには、白髪の原因の一つであるメラニン色素の生成を助ける酵素「チロシナーゼ」を活性化させる働きがあると言われています。
このため、継続的な使用により白髪の発生を遅らせる効果が期待されます。
また、頭皮環境を整えて毛母細胞の働きをサポートすることで育毛効果も期待できると考えられていますが、これらは補助的な役割であり、専門的な薄毛治療とは異なります。
残留アルカリ除去と薬剤ダメージ軽減
パーマやカラーリング剤に含まれるアルカリ成分は施術後も髪に残りやすく、これがダメージを進行させる原因となります。
ヘマチンは残留アルカリを中和し、除去する効果に優れています。それによって薬剤による髪への負担を軽減し、施術後の髪の状態をより良く保てます。
アルカリ除去の重要性
項目 | 説明 |
---|---|
残留アルカリの影響 | キューティクルを開いたままにし、タンパク質や色素の流出を招く。髪の乾燥やパサつき、色持ちの悪化につながる。 |
ヘマチンの役割 | アルカリを中和し、速やかに除去することで、髪のpHバランスを正常に戻し、ダメージの進行を抑制する。 |
自宅でできるヘマチントリートメントの正しい使い方
ヘマチントリートメントの効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方を理解することが重要です。
日々のケアに一手間加えると、髪が見違えるように変わる可能性があります。
シャンプー後の適切な塗布方法
シャンプー後、髪の水気をよく切ります。タオルドライで余分な水分を取り除くとトリートメント成分が薄まらず、より効果的に浸透します。
ヘマチントリートメントを適量手に取り、髪の中間から毛先を中心に、ダメージが気になる部分には特によく揉み込むようになじませます。
頭皮に直接つける必要はありませんが、髪の根元近くまで塗布しても問題ない製品が多いです。
効果を高める放置時間と洗い流し方
製品によって推奨される放置時間は異なりますが、一般的には5分から10分程度置くと効果的です。この間、蒸しタオルやシャワーキャップで髪を覆うと、浸透力が高まります。
放置後はぬるま湯で丁寧に洗い流します。髪にヌルつきが残らない程度に、しかし有効成分を全て洗い流してしまわないように優しくすすぐのがポイントです。
トリートメント効果を高めるポイント
- 塗布前にしっかり水気を切る
- ダメージ部分に重点的に塗布
- 適切な放置時間を守る
- 蒸しタオルなどで加温する
使用頻度の目安と継続の重要性
ヘマチントリートメントの使用頻度は、髪の状態や製品によって異なります。
ダメージが特に気になる場合は最初のうちは毎日、あるいはシャンプーごとに行い、状態が改善してきたら週に2~3回程度に調整するのが一般的です。
ヘマチンの効果は継続すると安定し、髪質改善につながるため、根気強く続けることが大切です。
他のヘアケア製品との併用について
ヘマチントリートメントは多くのシャンプーやコンディショナー、アウトバストリートメントと併用できます。
ただし、相性の問題が全くないわけではありません。特に、洗浄力の強すぎるシャンプーは、ヘマチンが髪に定着するのを妨げる可能性があります。
アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選ぶと良いでしょう。併用する製品の特性を理解し、トータルで髪に良いケアを心がけることが重要です。
ヘマチントリートメントを選ぶ際のポイント
市場には様々なヘマチントリートメントが出回っており、どれを選べば良いか迷うこともあるでしょう。いくつかのポイントを押さえて、自分の髪に合った製品を見つけましょう。
ヘマチン濃度と品質の見極め方
ヘマチンの効果は濃度に大きく左右されます。しかし、多くの製品で具体的な濃度表示はされていません。
一つの目安として、成分表示の順番があります。一般的に成分表示は配合量の多い順に記載されるため、ヘマチンが上位に記載されている製品は、比較的高濃度である可能性があります。
また、信頼できるメーカーの製品や、美容室専売品なども品質が高い傾向にあります。
配合成分との相乗効果をチェック
ヘマチン単独でも効果はありますが、他の有効成分と組み合わせるとより効果が期待できます。
例えば、保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸など)、補修成分(ケラチンPPT、シルクPPTなど)、植物エキスなどが一緒に配合されていると多角的なケアが可能です。
自分の髪の悩みに合わせて、どのような成分がプラスされているか確認しましょう。
製品選びのチェック項目
チェック項目 | 確認ポイント | 期待できる効果 |
---|---|---|
ヘマチンの記載位置 | 成分表示の上位か | ヘマチン濃度が高い可能性 |
保湿成分 | セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン等 | うるおい、まとまり |
補修成分 | PPT(ケラチン、シルク等)、ペリセア等 | ダメージ補修、強度向上 |
自分の髪質や悩みに合った製品選び
ヘマチントリートメントと一口に言っても、仕上がりの質感は製品によって異なります。しっとりまとまるタイプ、サラサラで軽い仕上がりになるタイプなど様々です。
自分の髪質(硬い、柔らかい、太い、細いなど)や、どのような仕上がりを求めるか(ボリュームアップしたい、広がりを抑えたいなど)を考慮して選びましょう。
テスターやトライアルサイズがあれば、試してみるのも良い方法です。
口コミや評判だけでなく成分表示を確認
製品を選ぶ際に口コミや評判は参考になりますが、それだけに頼るのは避けましょう。個人の髪質や使用感は異なるため、他人に合ったものが自分にも合うとは限りません。
必ず成分表示を確認し、どのような成分が配合されているのか、自分の髪の悩みに働きかけられる成分が含まれているかを見極めることが重要です。
不明な点があれば、メーカーや販売店に問い合わせるのも一つの手です。
クリニック・サロンでのヘマチントリートメントとホームケアの違い
ヘマチントリートメントは自宅でのケア(ホームケア)が一般的ですが、美容クリニックや専門サロンでは、より高濃度で効果的な施術を受けられます。
それぞれの違いを理解し、自分に合ったケア方法を選びましょう。
専門家による診断と施術のメリット
クリニックでは医師や毛髪診断士などの専門家が、マイクロスコープなどを用いて髪と頭皮の状態を詳細に診断します。
その上で、個々の状態に合わせたヘマチントリートメントや他の施術を提案します。
プロの技術による丁寧な塗布や浸透促進の処置は、ホームケアでは得られない効果を引き出します。
高濃度ヘマチンの効果と持続性
クリニックやサロンで使用されるヘマチントリートメントは、市販品に比べてヘマチン濃度が非常に高いものが多いです。この高濃度ヘマチンが髪の深部まで浸透し、より強力な補修効果を発揮します。
また、専門的な技術で髪への定着を高めるため、効果の持続性もホームケアより効果を実感しやすい傾向があります。
クリニック・サロン施術とホームケアの比較
項目 | クリニック・サロン施術 | ホームケア |
---|---|---|
ヘマチン濃度 | 高濃度の場合が多い | 製品により様々 |
浸透技術 | 専門機器や技術を用いる | 自己塗布 |
持続性 | 比較的高い | 日々のケアで維持 |
専門機器を用いた浸透促進
クリニックやサロンでは、スチーマーや超音波アイロンなどの専門機器を用いて、ヘマチンやその他の有効成分を髪の深部まで効率的に浸透させるところがあります。
これらの機器を使用すると手で塗布するだけでは届きにくい髪の内部まで成分を届け、トリートメント効果を高めます。この点がホームケアとの大きな違いの一つです。
他の治療との組み合わせによる相乗効果
薄毛や深刻なダメージヘアの場合ヘマチントリートメント単独よりも、他の治療法と組み合わせるほうが、より効果を実感しやすいです。
例えば、育毛メソセラピーや内服薬・外用薬治療、LED照射などと併用すると、頭皮環境の改善と毛髪の強化を同時に進められます。
クリニックでは、こうした複合的な方法を提案できるのがメリットです。
ホームケア製品のアドバイスと選び方
クリニックやサロンでの施術後にその効果を長持ちさせ、さらに髪質を改善していくためには、適切なホームケアが重要です。
クリニックやサロンでは施術効果を高めるための専用ホームケア製品を推奨したり、市販品の中から個々の髪質に合った製品の選び方をアドバイスしたりします。
専門家のアドバイスに基づいた製品選びは、より効果的なケアにつながります。
ヘマチントリートメントに関するよくある質問
さいごに、ヘマチントリートメントに関してよくいただく質問をまとめます。
- 効果を実感できるまでの期間は?
-
髪質やダメージの度合い、使用する製品によって異なりますが、多くの場合は数回の使用で手触りの変化やまとまりやすさを実感できます。
ハリ・コシの改善や根本的な髪質改善には、1ヶ月から3ヶ月程度の継続使用が目安となるケースが多いです。焦らず、じっくりとケアを続けましょう。
- 副作用やアレルギーの心配は?
-
ヘマチン自体はもともと体内に存在する成分から作られるため、安全性の高い成分とされています。通常の使用方法であれば、副作用の心配はほとんどありません。
ただし、他の配合成分に対してアレルギー反応が起こる可能性はゼロではありません。使用前にパッチテストを行うか、敏感肌の方は成分をよく確認し、少量から試すことをお勧めします。
万が一、異常を感じた場合はすぐに使用を中止し、専門医にご相談ください。
- 妊娠中や授乳中でも使用できますか?
-
ヘマチン自体は比較的安全な成分ですが、妊娠中や授乳中は体がデリケートな時期ですので、念のためかかりつけの医師にご相談の上で使用することをお勧めします。
特に香料や他の添加物が多く含まれる製品は、体調に影響を与える可能性も考慮し、慎重に選びましょう。
- 男性にも効果がありますか?
-
ヘマチントリートメントは男性の髪の悩みにも効果が期待できます。男性も加齢による髪質の変化、パーマやカラーによるダメージ、頭皮環境の悩みなど、女性と共通する問題が多くあります。
ハリ・コシを与えたり、頭皮環境を整えたりする効果は、性別を問わず役立ちます。薄毛や抜け毛の悩みに対しては、専門的な治療と併用する形でのサポートが考えられます。
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