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更年期の抜け毛はいつまで続く?女性ホルモン減少と髪の関係

更年期の抜け毛はいつまで続く?女性ホルモン減少と髪の関係

鏡を見るたび、シャンプーをするたびに気になる抜け毛に、「もしかして更年期の影響?」「この状態はいつまで続くのだろう…」と不安に感じる女性が多いようです。

40代後半から始まることの多い更年期は、女性ホルモンのバランスが大きく変化し、髪にもさまざまな影響が現れる時期です。

この記事では、更年期の抜け毛の原因、特に女性ホルモンとの関係、そして「いつまで続くのか」という疑問にお答えします。

目次

更年期とは?身体に起こる変化と抜け毛の始まり

「更年期」という言葉はよく耳にしますが、具体的にどのような時期で、身体にどんな変化が起こるのでしょうか。

そして、それがなぜ抜け毛につながるのか、基本的な知識から確認していきましょう。

更年期の定義と期間

更年期とは、一般的に閉経を迎える時期の前後約10年間を指します。

日本人女性の平均閉経年齢が50歳前後であるため、多くの場合は45歳から55歳くらいがこの期間に該当します。

ただしこれはあくまで平均であり、個人差が大きいため、40代前半から更年期の兆候を感じる方もいれば、50代後半になってからという方もいます。

この期間は卵巣の機能が徐々に低下し、女性ホルモンの分泌量が不安定になりながら減少していくのが特徴です。

女性ホルモンの変動とその影響

女性の健康と美容に深く関わる女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。

エストロゲンは、丸みを帯びた女性らしい体つきを維持するだけでなく、自律神経の安定や骨密度の維持、そして髪の毛の成長やハリ・コシを保つためにも重要な役割を担っています。

更年期に入りエストロゲンの分泌量が急激に減少すると、ホルモンバランスが崩れ、ほてりやのぼせ、イライラや不眠、肩こりや抜け毛といった、さまざまな心身の不調(いわゆる更年期症状)が現れやすいです。

抜け毛が気になり始めるサイン

更年期の抜け毛は急に大量に抜けるというよりも、徐々に進行するのが一般的です。

以下のような変化に気づいたら、それは更年期による抜け毛のサインかもしれません。

  • シャンプーやブラッシング時の抜け毛の量が明らかに増えた。
  • 髪全体のボリュームが減り、地肌が透けて見えるようになった。
  • 髪の毛一本一本が細く、弱々しくなった気がする。
  • 分け目が以前より目立つようになった。
  • 頭皮が乾燥しやすくなったり、逆にかゆみやフケが出やすくなったりした。

これらのサインは、女性ホルモンの減少が髪の成長サイクルや頭皮環境に影響を与え始めている可能性を示しています。

他の更年期症状と抜け毛の関連

更年期に見られる抜け毛は単独で発生するケースもありますが、他の更年期症状と密接に関連していることも少なくありません。

例えば、不眠やストレスは自律神経のバランスを乱し、頭皮への血流を悪化させて、結果として髪の成長に必要な栄養が届きにくくなり抜け毛を助長します。

また、気分の落ち込みや食欲不振が続けば栄養バランスも偏りがちになり、髪の健康に悪影響を与えます。

このように、様々な更年期症状が複合的に絡み合い、抜け毛の問題を深刻化させます。

なぜ更年期に抜け毛が増えるの?女性ホルモンとの密接な関係

更年期に多くの方が抜け毛に悩まされる主な理由は、女性ホルモン、特に「エストロゲン」の急激な減少にあります。

エストロゲンが髪の健康にどのように関わっているのか、そしてその減少がどのようなメカニズムで抜け毛を引き起こすのかを詳しく見ていきましょう。

エストロゲンの減少と髪の成長サイクルの乱れ

髪の毛には、「成長期(髪が太く長く成長する期間)」、「退行期(成長が止まり、毛根が縮小する期間)」、「休止期(髪が抜け落ちる準備期間)」という一定のサイクル(毛周期またはヘアサイクル)があります。

エストロゲンは、この「成長期」を長く維持し、髪の毛を健康に育てる働きをしています。

しかし、更年期に入りエストロゲンの分泌量が減少すると髪の成長期が短縮され、十分に成長しきる前に退行期・休止期へと移行してしまう髪が増えます。

その結果、細く短い毛が多くなり、全体のボリュームダウンや薄毛、抜け毛の増加として現れるのです。

髪に対するエストロゲンの主な役割

エストロゲンの働き髪への具体的な効果減少による主な影響
成長期の維持・促進髪が太く長く成長する期間を保つ成長期が短縮し、細く短い毛が増加
コラーゲン生成促進髪のハリ・ツヤ、頭皮の弾力維持髪のパサつき、頭皮の乾燥・硬化
血行促進作用毛母細胞への栄養供給をサポート栄養不足による髪の成長不良

頭皮環境の変化と血行不良

エストロゲンの減少は、頭皮のコラーゲンやヒアルロン酸の生成量も低下させます。

そのため頭皮が乾燥しやすくなり、バリア機能が低下して、かゆみやフケといったトラブルが起こりやすくなります。

また、更年期には自律神経のバランスも乱れやすく、血管が収縮して頭皮の血行が悪化しがちです。

血行不良になると髪の成長に必要な酸素や栄養素が毛根の毛母細胞まで十分に届かなくなり、健康な髪が育ちにくくなり、抜け毛を促進する一因となります。

男性ホルモンの相対的増加と影響

女性の体内にも、副腎や卵巣でごく微量の男性ホルモンが作られています。通常はエストロゲンの働きが優位なため、男性ホルモンの影響はあまり表に出ません。

しかし、更年期になりエストロゲンが大幅に減少すると、体内の男性ホルモンの割合が相対的に高まります。

男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)は毛乳頭細胞にある受容体と結合すると、髪の成長を抑制する信号を出すことが知られています。

このため、特に頭頂部や前頭部の髪が薄くなる「女性男性型脱毛症(FAGA)」に似た症状が現れる場合があります。

髪質の変化|細くなる、ハリ・コシが失われる

エストロゲンの減少は、髪の毛そのものの質にも大きな変化をもたらします。

髪の主成分であるケラチンタンパク質の合成がスムーズに行われなくなったり、髪内部の水分を保持する力が弱まったりして、髪の毛一本一本が細く弱々しくなってしまいます。

その結果、以前のようなハリやコシ、ツヤが失われて、全体的にボリュームのない、まとまりにくい髪質に変化したと感じる方が多いです。

切れ毛や枝毛が増えるのも、この髪質の変化が一因です。

更年期の抜け毛はいつまで続くの?終わりのサインはある?

「この抜け毛は一体いつまで続くのだろう…」というのは、更年期の抜け毛に悩む多くの方が抱く切実な疑問です。

終わりが見えない不安は辛いものです。ここでは、更年期の抜け毛が続く期間の目安や、改善に向かう可能性のあるサインについて解説します。

更年期症状が落ち着く時期と抜け毛の関係

一般的に閉経後数年が経過し、女性ホルモンの分泌量が少ない状態で身体が安定してくると、ほてりやイライラといった典型的な更年期症状は徐々に落ち着いてくる傾向があります。

抜け毛に関しても、このホルモンバランスの安定に伴い、進行が緩やかになったり少しずつ改善の兆しが見られたりすることが期待できます。

しかし、これはあくまで一般的な目安であり、抜け毛の改善時期や程度には大きな個人差がある点を理解しておきましょう。

更年期の主な期間と身体の変化

期間年齢の目安女性ホルモンの状態と主な身体症状
更年期前期(プレ更年期)40代前半~40代半ばエストロゲンが揺らぎながら徐々に減少し始める。月経不順、軽い体調不良など。
更年期(閉経期)40代後半~50代前半エストロゲンが急激に減少。閉経を迎える。ほてり、発汗、不眠、抜け毛などの症状が強く出やすい。
更年期後期(ポスト更年期)50代後半~エストロゲンが低いレベルで安定。多くの更年期症状は軽減するが、骨粗しょう症や脂質異常症のリスクは高まる。抜け毛は落ち着く方もいれば、続く方も。

抜け毛が改善に向かう目安

抜け毛が「完全に止まる」という明確なサインを特定するのは難しいですが、以下のような変化が見られたら、症状が改善方向へ向かっている可能性があります。

  • シャンプー時やドライヤー使用時の抜け毛の量が明らかに減ってきた。
  • 細く弱々しかった髪に、少しずつハリやコシが戻ってきたように感じる。
  • 分け目や頭頂部に、短い新しい毛(産毛のような毛)が生えてきているのを確認できる。
  • 頭皮の乾燥やかゆみ、フケなどのトラブルが以前より少なくなった。

これらの変化は、乱れていたヘアサイクルが整い始め、頭皮環境が改善されてきた兆候と考えられます。焦らず、日々の小さな変化に目を向けましょう。

個人差が大きい抜け毛の期間

更年期の抜け毛がいつまで続くかは、残念ながら一概には言えません。

女性ホルモンの減少の度合いや遺伝的な体質、生活習慣(食事、睡眠、ストレスなど)、行っているヘアケアや治療の内容など、非常に多くの要因が複雑に影響し合うためです。

数年で自然に落ち着く方もいれば、閉経後も長期間にわたって抜け毛に悩まされる方もいます。

大切なのは、他人と比較するのではなく、ご自身の状態を正確に把握して適切な対策を根気強く続けることです。

抜け毛が止まらない場合の注意点

更年期が過ぎても抜け毛の量が減らない、あるいはむしろ悪化しているように感じるときは、単なる更年期によるホルモンバランスの変化だけが原因ではない可能性も考えられます。

例えば、甲状腺機能の異常(甲状腺機能低下症など)や膠原病、鉄欠乏性貧血といった他の病気が隠れている場合や、薬剤性の脱毛、あるいは間違ったセルフケアが症状を深刻化させているケースもあります。

不安が続くようであれば、自己判断せずにできるだけ早く女性の薄毛治療を専門とするクリニックを受診し、医師に相談すると良いでしょう。

「もしかして私だけ?」更年期の抜け毛で感じる孤独と不安

更年期の抜け毛は見た目の変化だけでなく、女性の心にも大きな影響を与えます。

「周りの人は誰もこんなに悩んでいないのに、どうして私だけ…」「誰にも相談できず、一人で抱え込んでいる」そんな孤独感や焦り、不安を感じている方も多いです。

誰にも相談できない抜け毛の悩み

髪は「女性の命」とも言われるほど、女性らしさや自信と深く結びついています。

そのため、抜け毛や薄毛の悩みは非常にデリケートで、親しい友人や家族にさえ、なかなか打ち明けられない方が多いのが実情です。

「老けたと思われるのではないか」「魅力がなくなったと感じられるのではないか」といった恐れから、一人で悩みを抱え込み、精神的につらくなってしまうケースは少なくありません。

しかし、年齢を重ねる中で、同様の悩みを抱える女性は実は多くいらっしゃいます。

情報過多で混乱する自己判断の危険性

インターネットやSNS上には、更年期の抜け毛に関する情報が溢れています。

様々な育毛剤やサプリメント、シャンプーやマッサージ法などが紹介されていますが、その中には医学的根拠が乏しいものや、個人の体験談に基づいた偏った情報も少なくありません。

これらの情報に振り回されてあれこれ試しても効果が出ず、時間とお金を浪費してしまうだけでなく、かえって頭皮環境を悪化させてしまう方も見受けられます。

誤った自己判断に繋がりやすい情報

  • 「○○を飲んだらフサフサに!」といった誇大な広告
  • 科学的根拠の不明な民間療法
  • 個人の成功体験のみを強調したレビュー

これらの情報に惑わされず、正しい知識に基づいて判断することが重要です。

不安を抱え込まず専門医に相談する勇気

もし抜け毛のことで深く悩み、誰にも相談できずに苦しんでいるのなら、一人で抱え込まず、勇気を出して専門医にご相談ください。

女性薄毛治療専門クリニックの医師やスタッフは悩みを真摯に受け止め、医学的な観点から抜け毛の原因を正確に診断し、あなたに合った治療法やケア方法を一緒に考えます。

専門家に相談するのは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、早期に適切な取り組みを始めるほうが、改善への最も確実な道筋となるのです。

抜け毛を悪化させるNG習慣と生活改善でできること

更年期の抜け毛はホルモンバランスの変化が大きな要因ですが、日々の何気ない生活習慣が、知らず知らずのうちに症状を悪化させている場合もあります。

ここでは、特に注意したいNG習慣と、今日からでも始められる生活改善のポイントを見ていきましょう。

髪と頭皮に負担をかけるヘアケア

良かれと思って行っている毎日のヘアケアが、実は髪や頭皮に大きな負担をかけている場合があります。

特に洗浄力の強すぎるシャンプーの使用、ゴシゴシと力を込めて洗う行為、頻繁なカラーリングやパーマ、高温のドライヤーを長時間髪に当て続けるといった習慣は、頭皮を乾燥させたり髪のキューティクルを傷つけたりして、抜け毛を助長する原因となります。

見直したいヘアケア習慣

NG習慣の例髪・頭皮への影響改善のポイント
熱いお湯でのシャンプー頭皮の必要な皮脂まで奪い、乾燥を招く38℃程度のぬるま湯で洗う
爪を立てて頭皮を洗う頭皮を傷つけ、炎症や雑菌繁殖の原因に指の腹で優しくマッサージするように洗う
自然乾燥や濡れたまま寝る雑菌が繁殖しやすく、頭皮トラブルの原因に洗髪後は速やかにドライヤーで根本から乾かす

睡眠不足や食生活の乱れの影響

髪の毛の成長には、睡眠中に多く分泌される成長ホルモンが深く関わっています。

慢性的な睡眠不足は、この成長ホルモンの分泌を妨げ、髪の健やかな成長を阻害します。

また、髪の主成分はタンパク質であり、そのほかビタミンやミネラルといった栄養素も髪の健康維持に必要です。

ファストフードやインスタント食品に偏った食事、極端なダイエットによる栄養不足は髪に必要な栄養が行き渡らず、抜け毛や髪質の低下を招きます。

ストレスが抜け毛に与える影響

過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させてしまいます。

これにより頭皮の血行が悪化し、髪の毛根にある毛母細胞に十分な酸素や栄養が供給されにくくなり、結果として抜け毛が増えるときがあります。

また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与えるため、更年期の症状全般を悪化させる要因ともなり得ます。

自分なりのストレス解消法を見つけ、溜め込まないようにする工夫が大切です。

今すぐ見直したい生活習慣

抜け毛対策として、そして更年期を健やかに過ごすために、今日から意識して見直せる生活習慣があります。

これらを少しずつでも取り入れると、髪と頭皮の環境改善、さらには全身の健康増進につながる可能性があります。

健やかな髪を育むための生活習慣

  • 質の良い睡眠を毎日6~7時間確保する。
  • タンパク質、ビタミン、ミネラルを意識したバランスの良い食事を3食規則正しく摂る。
  • ウォーキングやストレッチなど、適度な運動を習慣にする。
  • 趣味の時間を持つ、深呼吸をするなど、自分に合ったリフレッシュ方法を見つける。

小さなことでも継続すると大きな変化へと繋がります。

更年期の抜け毛対策|食事で見直すべき栄養素

健康な髪を育み、維持するためには、毎日の食事が非常に大きな役割を果たします。

特に更年期は、女性ホルモンの変動によって栄養の吸収や代謝にも変化が生じやすいため、意識して摂取したい栄養素があります。

髪の成長をサポートするタンパク質

私たちの髪の毛の約80~90%は、「ケラチン」というタンパク質で構成されています。そのため、丈夫で健康な髪を作るためには、良質なタンパク質の摂取が基本中の基本です。

肉類(特に赤身や鶏むね肉)や魚介類、卵や大豆製品(豆腐、納豆など)、乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)に豊富に含まれています。

これらの食品を毎日の食事にバランス良く取り入れましょう。

良質なタンパク質を多く含む食品

食品カテゴリー代表的な食品摂取のポイント
動物性タンパク質鶏むね肉、鮭、卵、豚ヒレ肉脂質の少ない部位を選び、多様な種類から摂取
植物性タンパク質豆腐、納豆、豆乳、レンズ豆食物繊維やイソフラボンも同時に摂取可能
乳製品牛乳、ヨーグルト、チーズカルシウムも補給できるが、脂質に注意

女性ホルモンと似た働きをするイソフラボン

大豆や大豆製品に多く含まれる「大豆イソフラボン」は、その化学構造が女性ホルモンのエストロゲンと似ているため、体内でエストロゲン様作用(エストロゲンと似た働き)をすることが知られています。

エストロゲンの分泌が急激に減少する更年期に大豆イソフラボンを積極的に摂取すると、ホルモンバランスの乱れを穏やかにし、抜け毛の進行を緩やかにする効果が期待できます。

納豆や豆腐、味噌や豆乳、きな粉などから手軽に摂取可能です。

血行促進と頭皮環境を整えるビタミン・ミネラル

ビタミンやミネラルはタンパク質が髪の毛に変わるのを助けたり頭皮の血行を促進したり、活性酸素から頭皮を守ったりと、髪の健康維持に多岐にわたって貢献します。

特に重要なのは、ビタミンEやビタミンC、ビタミンB群や亜鉛、鉄分などです。

これらは緑黄色野菜や果物、ナッツ類や海藻類、レバーなどに多く含まれています。

髪の健康に特に重要なビタミン・ミネラル

栄養素主な働きと髪への効果多く含む代表的な食品
ビタミンB群(特にB2, B6, ビオチン)頭皮の代謝促進、皮脂バランス調整レバー、魚介類、緑黄色野菜、ナッツ類
亜鉛ケラチンの合成、細胞分裂の活性化牡蠣、牛肉(赤身)、レバー、チーズ、大豆製品
鉄分毛母細胞への酸素運搬、不足すると抜け毛の原因にレバー、赤身の肉、ほうれん草、ひじき、あさり

バランスの取れた食事の重要性

特定の栄養素だけを大量に摂取するのではなく、様々な食品から多様な栄養素をバランス良く摂るのが最も重要です。

主食(ごはん、パン、麺類)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品)、副菜(野菜、きのこ類、海藻類)をそろえ、彩り豊かな食事を心がけると、髪に必要な栄養素を過不足なく補給できます。

インスタント食品や加工食品、外食に頼りすぎず、できる範囲で手作りの食事を取り入れる工夫も健康な髪を育むためには大切です。

クリニックでの専門的な抜け毛治療という選択肢

食事や生活習慣の改善、セルフケアを続けても抜け毛の悩みが改善しないときや、より積極的かつ効果的な対策を望む場合には、女性の薄毛治療を専門とするクリニックでの治療が有効な選択肢となります。

専門医による正確な診断のもと、医学的根拠に基づいた治療を受けるとより確実な改善が期待できます。

専門医による正確な診断の重要性

一口に「抜け毛」と言っても、その原因は多岐にわたります。

更年期によるホルモンバランスの変化が主な原因であると考えられても、実際には他の要因(例えば、甲状腺機能の異常、鉄欠乏、自己免疫疾患など)が隠れていたり、複合的に絡み合っていたりするケースも少なくありません。

専門医は、詳細な問診や視診、血液検査や頭皮のマイクロスコープ検査などを通じて、抜け毛の根本的な原因を的確に診断します。

この正確な診断が、効果的な治療計画を立てる上での最も重要な第一歩となります。

内服薬・外用薬による治療法

クリニックでの抜け毛治療では、主に医学的に効果が認められている内服薬や外用薬を使用します。

代表的なものとしては、女性の薄毛(FAGA)治療に用いられるミノキシジル(外用薬・内服薬)、スピロノラクトン(内服薬:男性ホルモンの影響を抑える)、各種ビタミン剤やミネラル剤、アミノ酸製剤(髪の栄養補給)などがあります。

これらの薬剤は医師の処方が必要であり、市販されている育毛剤などと比較して、より効果が期待できる傾向があります。

主な治療薬の種類と一般的な特徴

薬剤の種類期待される主な効果使用方法の例
ミノキシジル(外用・内服)毛母細胞の活性化、血行促進による発毛促進頭皮への塗布、または経口摂取
スピロノラクトン(内服)男性ホルモン(アンドロゲン)の作用を抑制経口摂取(主にFAGAの場合)
サプリメント(医師処方)髪の成長に必要なビタミン、ミネラル、アミノ酸などを補給経口摂取

上記は一般的な情報であり、実際の処方は医師の診断に基づいて決定されます。副作用のリスクも考慮し、必ず医師の説明を十分に受けてください。

頭皮への直接アプローチ|注入療法など

薬物療法に加えて、発毛・育毛効果のある有効成分(成長因子、ミノキシジル、ビタミンなど)を、注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する治療法(育毛メソセラピー、HARG療法など)もあります。

この治療法は、有効成分を毛根にダイレクトに届けられるため、内服薬や外用薬だけでは効果が不十分な場合や、より早期の効果を期待する場合に選択されます。

施術時の痛みが心配な方のために、痛みを軽減する工夫(冷却、麻酔クリームなど)を行っているクリニックも多いので、事前に相談してみると良いでしょう。

治療開始のタイミングと期待できる効果

抜け毛や薄毛の治療は一般的に、症状が進行しすぎる前、つまりできるだけ早期に開始するほど良好な結果が得られやすいと言われています。

毛根が完全に活動を停止してしまう(線維化する)前に治療を始めることが重要です。

治療効果には個人差があり、効果を実感できるまでには通常、数ヶ月から半年程度の期間が必要です。焦らず、医師の指示に従って根気強く治療を継続しましょう。

治療の経過や効果については、定期的な診察を通じて医師としっかり共有し、必要に応じて治療方針を調整していきます。

更年期の抜け毛|自分でできるセルフケアと限界

専門的なクリニックでの治療と並行して、あるいは治療を検討する前の段階で、自分でできるセルフケアも抜け毛対策には有効です。

しかし、セルフケアだけで全ての抜け毛問題が解決するわけではなく、その効果には限界がある点も理解しておく必要があります。

頭皮マッサージの方法と効果

頭皮マッサージは、頭皮の血行を促進して毛根に栄養を行き渡りやすくする効果が期待できます。また、頭皮の緊張を和らげ、リラックス効果をもたらすためストレス軽減にもつながります。

ただし、力を入れすぎたり爪を立てたりすると、かえって頭皮を傷つけてしまう可能性があるため、指の腹を使って優しく行うと良いです。

シャンプー時や育毛剤を塗布した後など、リラックスできるタイミングで行うのがおすすめです。

簡単なセルフ頭皮マッサージの流れ

  1. 両手の指の腹を使い、生え際から頭頂部に向かって、小さな円を描くように優しく揉みほぐす。
  2. 側頭部(耳の上あたり)を両手で包み込むように持ち、頭皮全体をゆっくりと引き上げるように動かす。
  3. 後頭部(首の付け根あたり)から頭頂部に向かって、指圧するように優しく押していく。

各ステップをそれぞれ1~2分程度、気持ち良いと感じる強さで行いましょう。

育毛剤・発毛剤の選び方と注意点

ドラッグストアやオンラインで手軽に購入できる育毛剤や発毛剤は種類が非常に多く、どれを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。

一般的に「育毛剤」は主に頭皮環境を整え、フケやかゆみを抑えたり、抜け毛を予防したりする目的で使用される医薬部外品が多いです。

「発毛剤」は、毛母細胞に直接働きかけて新たな髪の毛を生やす効果が期待できる医薬品(主にミノキシジル配合のもの)を指します。

ご自身の目的や頭皮の状態に合わせて選ぶのが大切ですが、効果には個人差があります。

市販の育毛剤と発毛剤の主な違い

項目育毛剤(医薬部外品など)発毛剤(第1類医薬品など)
主な目的抜け毛予防、育毛促進、頭皮環境改善新たな髪の発毛、壮年性脱毛症における発毛
有効成分の例センブリエキス、グリチルリチン酸ジカリウムなどミノキシジルなど(濃度に規定あり)
購入場所ドラッグストア、通販など薬剤師のいる薬局・薬店(要情報提供)

特に発毛剤を使用する際は薬剤師の説明をよく聞き、用法・用量を守ることが重要です。また、効果が見られない場合は専門医に相談しましょう。

ストレスケアとリラックス方法

前述の通り、ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、血行不良を引き起こすなどして、抜け毛の大きな原因の一つとなります。

日常生活の中でストレスを完全に排除するのは難しいですが、上手にコントロールし、心身をリラックスさせる方法を見つけることは可能です。

軽い運動(ウォーキング、ヨガなど)、趣味の時間を持つ、アロマテラピーを取り入れる、ゆっくりと入浴する、親しい友人や家族と話すなど、自分に合ったリラックス方法を日々の生活に取り入れましょう。

質の高い睡眠を確保する工夫も、ストレス軽減と髪の健康には非常に効果的です。

セルフケアで改善が見られない場合の判断

数ヶ月間、食事や生活習慣の改善、頭皮マッサージや市販の育毛剤の使用といったセルフケアを真面目に取り組んでも抜け毛の量が減らない、あるいは薄毛が進行しているように感じるときは、セルフケアだけでは対応が難しい状態である可能性が高いです。

そのようなときは、自己判断でさらに高価な商品を次々と試したり効果のないケアを漫然と続けたりするのではなく、できるだけ早く女性の薄毛治療を専門とするクリニックを受診し、医師に相談することをおすすめします。

専門医は髪と頭皮の状態を正確に把握し、適切なアドバイスやより効果的な治療法を提案してくれます。

よくある質問

更年期の抜け毛に関して、クリニックの患者さんからよくいただくご質問とその回答をまとめました。

更年期の抜け毛は必ず誰にでも起こるのですか?

必ずしも全ての女性に深刻な抜け毛が起こるわけではありません。

更年期に女性ホルモン(エストロゲン)が減少する点は共通していますが、その影響の現れ方、特に抜け毛の程度や発症するかどうかには大きな個人差があります。

遺伝的な要因、元々の髪質や毛量、長年の生活習慣やストレスの度合い、ヘアケアの方法などが複雑に関係しています。

しかし、多くの方が程度の差こそあれ、髪のボリュームダウンや髪質の変化を感じやすい時期であるのは確かです。

抜け毛対策は具体的にいつから始めるべきですか?

抜け毛が気になり始めたら、「まだ大丈夫だろう」と放置せずに、できるだけ早めに対策を始めることをおすすめします。

髪の毛の成長サイクルを考えると一度弱ってしまった毛根が回復するには時間がかかりますし、進行が進むほど改善も難しくなる傾向があるためです。

特に40代に入ったら、将来のホルモンバランスの変化を見据えて、髪と頭皮に優しい生活習慣を意識したり、頭皮ケアに関心を持ったりすると予防にもつながります。

具体的な対策については自己判断せずに、まずは専門医に相談するのが最も確実で安心な方法です。

市販の育毛シャンプーに「発毛」効果はありますか?

市販されている「育毛シャンプー」の多くは頭皮環境を整え、フケやかゆみを抑えたり、髪にハリやコシを与えたりして健康な髪が育ちやすい環境を作るのを目的としています。

しかし、シャンプーだけで「新たな髪を生やす(発毛させる)」という直接的な効果を期待することは難しいと考えられます。

医薬品として発毛効果が認められている成分(例:ミノキシジル)が配合された「発毛剤」とは区別して考える必要があります。

育毛シャンプーはあくまで頭皮ケアの一環と捉え、抜け毛の原因に直接働きかけるものではないことを理解しておきましょう。

選ぶ際は、ご自身の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌など)に合ったもの、刺激の少ないアミノ酸系やベタイン系の洗浄成分が使われているものなどがおすすめです。

クリニックで治療を始めたら、すぐに効果は出ますか?

抜け毛・薄毛治療の効果が現れるまでには、残念ながらある程度の時間が必要です。

髪の毛には成長サイクル(毛周期)があり、治療によって新しい健康な髪が育ち始め、それが目に見える形で太く長く成長して抜け毛が減ったと実感できるようになるまでには、早くても3ヶ月から6ヶ月程度、場合によってはそれ以上かかるケースもあります。

すぐに効果が出ないからといって自己判断で治療を中断してしまうと、それまでの努力が無駄になってしまう場合もあります。

医師の指示に従って根気強く治療を継続し、定期的な診察で効果判定や治療方針の確認を行うのが何よりも大切です。不安な点や疑問点は、遠慮なく担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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