FAGA（女性男性型脱毛症）の原因と検査内容

最近、髪のボリュームが減った、分け目が目立つようになったと感じていませんか。それはFAGA（女性男性型脱毛症）のサインかもしれません。

FAGAの原因は加齢だけでなく、ホルモンバランスの乱れや生活習慣など多岐にわたります。

この記事では、ご自身の薄毛の根本原因を理解し、適切な対策を見つける第一歩として、FAGAの主な原因とクリニックで行う専門的な検査方法について詳しく解説します。

女性ホルモンの減少 – 更年期だけじゃないFAGAの引き金

女性の髪の健康は、女性ホルモンによって大きく支えられています。このホルモンバランスが崩れることが、FAGAの最も大きな原因の一つです。

加齢とホルモンバランスの変化

年齢を重ねるとともに、女性の身体には様々な変化が訪れます。特にホルモンバランスの変化は、髪の状態に直接的な影響を与えます。

エストロゲンの役割と減少の影響

女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、髪の成長期を維持し、ハリやコシのある豊かな髪を育む働きがあります。

しかし、加齢、特に30代後半からエストロゲンの分泌量は徐々に減少し始め、更年期を迎える40代後半から50代にかけて急激に低下します。

このエストロゲンの減少が、髪の成長サイクルを短くし、一本一本の髪が十分に成長する前に抜け落ちる原因となります。これがホルモンバランスの乱れによる薄毛の始まりです。

相対的に優位になる男性ホルモン

女性の体内にも、男性ホルモンは少量ながら存在します。エストロゲンが減少すると、相対的に男性ホルモンの影響が強まります。

特に、テストステロンという男性ホルモンが5αリダクターゼという酵素と結びつくと、DHT（ジヒドロテストステロン）という強力な脱毛ホルモンに変換されます。

このDHTが毛根の細胞に作用し、髪の成長を妨げ、薄毛を進行させるのです。

年代別に見る女性ホルモンの変化とヘアサイクルの関係

年代	ホルモン状態	髪への影響
20代〜30代前半	エストロゲンの分泌が活発で安定している時期。	髪の成長期が長く、健康的で美しい髪を維持しやすい。
30代後半〜40代	エストロゲンが減少し始め、ホルモンバランスが揺らぎやすい。	髪のハリやコシの低下、うねりなど、質の変化を感じ始めることがある。
50代以降（更年期）	エストロゲンが急激に減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強まる。	成長期が短くなり、抜け毛が増加。FAGAが顕著になりやすい。

更年期以外のホルモン変動要因

FAGAの原因となるホルモンバランスの乱れは、更年期や加齢だけで起こるわけではありません。若い世代でも、様々な要因でホルモンバランスは変動します。

出産後やピルの使用中止

妊娠中はエストロゲンの分泌量が非常に高くなりますが、出産後には急激に元の状態に戻ります。この急激なホルモン変動により、一時的に抜け毛が急増することがあります。

また、低用量ピルの服用を中止した後にも、同様のホルモン変動が起こり、抜け毛につながるケースが見られます。

ホルモン分泌に影響する生活習慣

過度なストレスや睡眠不足、極端なダイエットによる栄養不足といった生活習慣の乱れも、自律神経やホルモン分泌中枢に影響を与え、女性ホルモンのバランスを崩す原因になります。

これらの要因が、年代を問わずFAGAの引き金となる可能性があります。

遺伝的要因の影響度 – 家族に薄毛の人がいる場合の発症リスク

FAGAの発症には、生まれ持った体質、つまり遺伝的な要因も関わっています。ご家族に薄毛の方がいる場合、ご自身もその体質を受け継いでいる可能性があります。

FAGAと遺伝の関係性

全ての人が同じように薄毛になるわけではありません。遺伝は、FAGAの発症しやすさを左右する重要な要素です。

男性ホルモン受容体の感受性

脱毛ホルモンであるDHTの影響の受けやすさは、毛根にある「アンドロゲン受容体」の感受性によって決まります。この受容体の感受性が高いと、わずかなDHTでも強く反応してしまい、薄毛が進行しやすくなります。

この感受性の高さは遺伝によって受け継がれることが分かっています。

家族歴から見る発症の可能性

ご両親や祖父母に薄毛の方がいる場合、その遺伝情報を受け継いでいる可能性が高まります。特に、母方の家系に薄毛の人がいる場合は注意が必要です。

しかし、遺伝的な要因を持つ全ての人がFAGAを発症するわけではなく、あくまで「発症しやすい体質」を受け継いでいると考え、早期からの対策が重要になります。

遺伝的要因のチェックポイント

家族構成	確認する点	留意事項
父親・父方の祖父	男性型脱毛症（AGA）を発症しているか。	AGAとFAGAは関連する遺伝子があると考えられています。
母親・母方の祖父母	女性の薄毛（FAGA）や髪のボリュームダウンが見られるか。	特に母方の遺伝的影響は大きいと指摘されることがあります。
兄弟・姉妹	同年代の兄弟姉妹に薄毛の傾向があるか。	生活環境が近いため、遺伝と環境の両方の影響を確認できます。

ストレスと生活習慣 – 現代女性に多い薄毛を加速させる要因

遺伝やホルモンバランスといった内的要因に加えて、日々の生活習慣がFAGAを悪化させることは少なくありません。特に現代女性が抱えやすい問題が、薄毛を加速させている可能性があります。

ストレスが招く頭皮への悪影響

仕事や家庭、人間関係など、現代社会はストレスの原因に満ちています。慢性的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、身体に様々な不調をもたらしますが、髪も例外ではありません。

自律神経の乱れと血行不良

強いストレスを感じると、交感神経が優位になり、血管が収縮します。これにより頭皮の血管も細くなり、血行不良を引き起こします。

血流が悪くなると、髪の成長に必要な酸素や栄養素が毛根まで十分に行き渡らなくなり、健康な髪が育ちにくくなります。

活性酸素の増加と頭皮の老化

ストレスは体内で「活性酸素」を過剰に発生させます。活性酸素は細胞を傷つけ、老化を促進する物質です。頭皮の細胞がダメージを受けると、頭皮環境が悪化し、健康な髪を生み出す力が衰えてしまいます。

見直したい毎日の習慣

何気なく続けている毎日の生活習慣が、知らず知らずのうちに髪の健康を損なっているかもしれません。一つひとつを見直すことが、薄毛の進行を食い止める対策につながります。

栄養不足と偏った食事

髪は主に「ケラチン」というタンパク質でできています。過度なダイエットや偏った食事でタンパク質が不足すると、髪の材料が足りなくなります。

また、タンパク質の合成を助ける亜鉛や、頭皮の健康を保つビタミン類が不足することも、薄毛の大きな原因です。栄養不足は、髪の成長を直接的に妨げます。

髪の成長に必要な主な栄養素

栄養素	主な働き	多く含まれる食品
タンパク質	髪の主成分であるケラチンの材料になる。	肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛	タンパク質の合成を助け、ヘアサイクルを正常に保つ。	牡蠣、レバー、牛肉
ビタミンB群	頭皮の新陳代謝を促し、皮脂の分泌を調整する。	豚肉、レバー、うなぎ

睡眠不足による成長ホルモンの欠乏

睡眠不足は美髪の大敵です。私たちは眠っている間に「成長ホルモン」を分泌し、日中に受けたダメージを修復し、細胞の新陳代謝を促します。成長ホルモンは毛母細胞の分裂を活発にし、髪を成長させるために重要な役割を担います。

睡眠時間が不足すると、この成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられてしまいます。

血液検査でわかること – ホルモンバランスと栄養状態の確認

FAGAの原因を正確に特定し、適切な治療計画を立てるためには、まずご自身の身体の状態を客観的に把握することが重要です。血液検査は、そのための基本的かつ重要な検査です。

全身の健康状態を把握する第一歩

血液は全身を巡り、身体のあらゆる情報を含んでいます。そのため、採血によって目に見えない体内の状態、特にFAGAの原因となりうる問題を明らかにすることができます。

FAGAの原因究明における血液検査の重要性

女性の薄毛は、FAGAだけでなく、甲状腺疾患や貧血、膠原病といった他の病気が原因で起こることもあります。

血液検査によってこれらの病気の可能性を調べ、FAGAであるかを正確に診断することは、適切な対策と治療への第一歩です。

主要な検査項目とその見方

FAGAの診断に関連する血液検査では、主にホルモン値と、髪の毛の栄養となる物質の状態を確認します。

ホルモン値の測定

テストステロンやエストラジオール（エストロゲンの一種）などの性ホルモン値を測定し、ホルモンバランスの状態を評価します。

これにより、女性ホルモンの減少や相対的な男性ホルモンの優位性など、FAGAの直接的な原因を数値で確認します。

髪の栄養素となる項目のチェック

髪の成長には、鉄分や亜鉛、タンパク質などの栄養素が必要です。

血液検査でフェリチン（貯蔵鉄）や亜鉛の値を調べることで、栄養不足が薄毛の原因になっていないかを確認します。特に女性は月経により鉄分が不足しがちで、これが抜け毛の一因となることもあります。

血液検査で確認する主な項目

検査項目	何がわかるか	薄毛との関連
性ホルモン	エストロゲンやテストステロンの値からホルモンバランスを確認。	FAGAの直接的な原因であるホルモンバランスの乱れを評価します。
亜鉛	髪の主成分であるタンパク質の合成に必要なミネラルの量。	亜鉛不足はヘアサイクルの乱れや抜け毛の増加につながります。
フェリチン（貯蔵鉄）	体内に蓄えられている鉄分の量。貧血の指標。	鉄欠乏は毛根への酸素供給不足を招き、抜け毛の原因となります。

頭皮の拡大鏡検査 – 毛髪の太さと密度を詳しく調べる方法

マイクロスコープ（拡大鏡）を使って頭皮や毛根の状態を直接観察する検査です。肉眼では見えない部分まで詳しく調べることで、薄毛の進行度や頭皮環境を正確に評価します。

マイクロスコープで見る頭皮の状態

専用のスコープで頭皮を数十倍から数百倍に拡大して観察し、健康状態をチェックします。

頭皮の色や毛穴の詰まりを確認

健康な頭皮は青白い色をしていますが、血行が悪くなると黄色っぽく、炎症があると赤みを帯びます。

また、皮脂や古い角質による毛穴の詰まりも、髪の健やかな成長を妨げる要因です。マイクロスコープでこれらの状態を詳細に確認し、頭皮環境の改善に向けた対策を考えます。

びまん性脱毛症の進行度の評価

FAGAは頭部全体の髪が均等に薄くなる「びまん性脱毛症」として現れることが多いのが特徴です。マイクロスコープで毛髪の密度を計測し、薄毛がどの程度進行しているかを客観的に評価します。

頭皮マイクロスコープ所見の比較

所見	健康な状態	注意が必要な状態
頭皮の色	青白い	赤い（炎症）、黄色い（血行不良）、茶色い（代謝不良）
毛穴の状態	くぼみが明瞭で、詰まりがない。	皮脂や角質で詰まっている。
1つの毛穴からの本数	2〜3本生えている。	1本しか生えていない、または生えていない毛穴がある。

毛髪の質の客観的評価

髪の本数だけでなく、一本一本の髪の質を評価することも、FAGAの診断には重要です。

軟毛化（ミニチュア化）した毛髪の割合

FAGAが進行すると、髪の成長期が短くなるため、髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。その結果、新しく生えてくる髪は細く短い「軟毛」になります。

マイクロスコープで太い髪と細い髪の割合を調べることで、FAGAの進行度を判断します。

遺伝子検査 – AGAリスクと治療薬の効きやすさを予測

FAGAの発症に遺伝が関わっていることは知られていますが、遺伝子検査を行うことで、そのリスクの程度を科学的に評価し、より個人に合った治療計画を立てることが可能になります。

遺伝的リスクを科学的に評価

口腔内の粘膜などを採取するだけの簡単な検査で、生まれ持った薄毛のリスクを調べることができます。

アンドロゲン受容体遺伝子の分析

この検査では、脱毛ホルモンDHTの感受性に関わる「アンドロゲン受容体遺伝子」の塩基配列を分析します。

これにより、遺伝的にどのくらいDHTの影響を受けやすい体質なのか、つまりFAGAの発症リスクが高いのか低いのかを予測します。

治療方針決定の重要な手がかり

遺伝子検査は、単にリスクを知るだけでなく、将来の治療方針を決める上でも非常に役立ちます。

治療薬への感受性を事前に知るメリット

FAGAの治療に用いる薬の効果には個人差があります。遺伝子検査を治療前に行うことで、特定の治療薬が効きやすい体質かどうかを事前に予測できます。

これにより、効果の出にくい治療を避け、最初から自分に合った効果的な治療法を選択できる確率が高まります。これは、時間と費用の無駄を省き、より早く改善を実感するためにとても重要です。

遺伝子検査で予測できること

検査内容	わかること	治療への活用
アンドロゲン受容体遺伝子感受性	DHTに対する感受性の高さ（FAGAの発症リスク）。	リスクの高さに応じた予防・対策の計画立案。
治療薬の感受性遺伝子	特定の治療薬（フィナステリド等）が効きやすい体質か。	効果が期待できる治療薬を優先的に選択し、治療計画を最適化。

引き抜き試験（プルテスト） – 脱毛の活動性を評価する検査

医師が指で数十本の毛髪を軽く引っ張り、抜けた毛髪の本数や状態を調べるシンプルな検査です。現在の脱毛の活動性、つまり「抜けやすい状態」にあるかどうかを評価します。

簡単に行える脱毛状態のチェック

特別な機器を必要とせず、診察室ですぐに行えるのが特徴です。

検査の方法と目的

頭皮の数カ所から、それぞれ50〜100本程度の毛束を指でつかみ、一定の力でやさしく引っ張ります。このとき抜けた毛髪の本数を数え、全体の何パーセントが抜けたかを評価します。

休止期脱毛の割合を把握する

通常、健康な状態であれば、この検査で髪が抜けることはほとんどありません。

もし6本以上抜けるようであれば、成長期を終えて脱毛の準備段階にある「休止期」の毛髪の割合が多くなっていることを示唆し、脱毛が活発な状態（活動期）にあると判断します。

プルテストの評価

• 正常：抜ける毛髪は1〜2本程度。
• 軽度活動性：3〜5本程度の毛髪が抜ける。
• 活動性あり：6本以上の毛髪が容易に抜ける。

検査結果の読み方 – 数値が示すあなたの薄毛タイプ

これまで紹介した様々な検査は、単独で行うのではなく、結果を複合的に組み合わせることで初めて正確な診断が可能になります。

血液検査、頭皮の拡大鏡検査、遺伝子検査などの結果を総合的に解釈し、あなたの薄毛の根本原因を突き止めます。

複数の検査結果を統合的に解釈

医師は、それぞれの検査結果が示す情報をパズルのピースのように組み合わせ、あなたの薄毛の全体像を明らかにします。

原因の特定と重症度の判断

例えば、「血液検査でホルモンバランスの乱れがあり、頭皮検査で軟毛化が進んでいる」場合は典型的なFAGAと診断します。

一方で、「ホルモン値は正常だが、血液検査で鉄分不足が著しく、プルテストで多くの毛が抜ける」場合は、栄養不足による休止期脱毛症が主因である可能性が高いと判断します。

このように原因を特定し、重症度を評価します。

あなたに合った治療計画の立案

正確な診断に基づいて、一人ひとりの原因と症状に合わせた最適な治療と対策の計画を立てます。これにより、効果的で無駄のないアプローチが可能になります。

検査結果の組み合わせと推定される薄毛タイプ

主な検査所見	推定される原因	対策の方向性
ホルモン値の乱れ＋軟毛化＋遺伝的リスク高	遺伝的素因を持つ典型的なFAGA	内服薬や外用薬による積極的な薬物治療を検討。
ホルモン値は正常＋鉄や亜鉛の不足	栄養不足によるびまん性脱毛症	食事指導やサプリメントによる栄養改善が中心。
頭皮の赤みや炎症＋毛穴の詰まり	不適切なヘアケアによる頭皮環境の悪化	シャンプーの見直しや専門的な頭皮ケアを推奨。

検査を受けるタイミング – 早期発見のための受診の目安

「少し抜け毛が増えただけかも」「気のせいかもしれない」と感じて、受診をためらってしまう方は少なくありません。しかし、FAGAは何よりも早期の対策が重要です。

気づいた時が受診のサイン

ご自身で髪や頭皮に少しでも変化を感じたら、それが専門医に相談するタイミングです。自己判断で様子を見ている間に、薄毛が進行してしまう可能性があります。

こんな変化があったら相談を

• 以前より分け目が目立つようになった。
• 髪全体のボリュームがなくなり、地肌が透けて見える。
• 髪にハリやコシがなくなり、スタイリングが決まらなくなった。
• シャンプーやブラッシング時の抜け毛が明らかに増えた。

早期対策の重要性

FAGAは進行性の脱毛症です。放置すれば、毛根の細胞（毛母細胞）が活動を停止し、髪の毛を生み出す力を失ってしまいます。完全に活動を停止した毛根から再び髪を生やすことは非常に困難です。

毛根がまだ生きている早い段階で適切な治療や対策を始めることが、改善への一番の近道です。

よくある質問

検査にはどのくらいの時間がかかりますか？

診察、カウンセリング、頭皮の拡大鏡検査、プルテストなどを含め、初診では全体で60分〜90分程度が目安です。血液検査や遺伝子検査を行う場合は、採血や検体採取に別途数分かかります。

検査は痛いですか？

ほとんどの検査に痛みはありません。頭皮の拡大鏡検査やプルテストは痛みを感じることはありません。血液検査では採血の際に注射針による一瞬の痛みを伴います。

遺伝子検査は頬の内側を綿棒でこするだけですので、全く痛みはありません。

検査や治療に保険は適用されますか？

FAGA（女性男性型脱毛症）の検査や治療は、容姿を改善する目的と見なされるため、原則として健康保険が適用されない自由診療となります。

ただし、薄毛の原因として甲状腺疾患など他の病気が疑われる場合、その病気の診断に必要な検査には保険が適用されることがあります。

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