老人（加齢）性脱毛症の症状とセルフチェック法

「最近、髪のボリュームが減った気がする」「分け目が目立つようになったかも…」と感じていませんか。それは加齢による女性の脱毛症のサインかもしれません。

この記事では、ご自身の髪や頭皮の状態を正しく把握するための、具体的な症状と簡単なセルフチェック法を詳しく解説します。

変化に早めに気づき、適切な対策を始めるための一歩として、ぜひお役立てください。

気づいていますか – 加齢性脱毛症の初期サイン

加齢性脱毛症は、ある日突然始まるわけではありません。多くの場合、自分でも気づきにくい、ささいな変化から始まります。

特に女性の薄毛はゆっくりと進行するため、初期サインを見逃さないことが、早期の対策や予防につながります。シャンプーの時や鏡を見た時、ふとした瞬間に感じる違和感に注意を向けることが重要です。

髪のハリやコシが失われる

初期の変化として最も多く聞かれるのが、「髪にハリやコシがなくなった」という実感です。

以前はスタイリングが決まっていたのに、最近はペタッとしてしまう、根元の立ち上がりが悪い、といった感覚です。これは加齢に伴い、髪の内部構造が変化し、一本一本の強度が弱まることが原因の一つです。

健康な髪のしなやかさが失われ、全体的に元気がない印象になります。

ハリコシ低下のサイン

チェック項目	健康な状態	ハリコシ低下のサイン
根元の立ち上がり	ドライヤーで乾かすと自然に立ち上がる	立ち上がりが弱く、すぐに寝てしまう
髪の手触り	しっかりとした弾力と密度を感じる	柔らかく、細く、頼りない感触
スタイリングの持続	ヘアスタイルが長時間キープできる	すぐに崩れてしまう、ボリュームが出ない

一本一本の髪が細くなる

髪の「ハリコシ」の低下と同時に起こるのが、髪の軟毛化、つまり髪が細くなる現象です。ヘアサイクル（毛周期）が乱れ、髪が十分に成長しきる前に抜けてしまうことが影響します。

太く健康な髪が減り、細く短い髪の割合が増えることで、全体のボリュームダウンにつながります。髪が細い状態が続くと、地肌が透けて見える原因にもなります。

頭頂部と分け目に現れる典型的な変化

女性の加齢性脱毛症（FAGA：女性男性型脱毛症とも関連）では、男性のAGA（男性型脱毛症）のように生え際が後退することは少なく、頭頂部や分け目を中心に薄くなる「びまん性脱毛」という特徴があります。

そのため、ご自身では気づきにくく、家族や美容師に指摘されて初めて意識する方も少なくありません。

分け目が広がり、頭皮が目立つ

いつも同じ場所で髪を分けている方は特に注意が必要です。鏡を見たときに「以前よりも分け目の幅が広くなった」「地肌の見える面積が増えた」と感じるなら、それは典型的な症状の一つです。

髪が細くなり、密度が低下することで、分け目の地肌がくっきりと目立つようになります。

これを「クリスマスツリーパターン」と呼ぶこともあり、分け目から左右に広がるように薄毛が進行する様子を示します。

分け目の変化チェック

状態	特徴	考えられること
正常	分け目は一本の線に見え、地肌はあまり目立たない	健康な髪密度が保たれています
初期サイン	分け目の線がやや太く見える、地肌が白く光って見える	髪の密度低下や軟毛化が始まっている可能性があります
進行サイン	分け目が明らかに広く、地肌の面積が増えている	加齢性脱毛症が進行しているサインです

頭頂部のボリューム減

頭頂部、いわゆる「つむじ」周りのボリュームがなくなるのも、女性の薄毛のサインです。髪の毛全体の量が減るというより、頭頂部がぺたんとして、地肌が透けて見えるようになります。

髪を結んだときに、以前より毛束が細くなったと感じる方もいます。このボリューム減は、ヘアサイクルの乱れによって太い髪が育ちにくくなることが主な原因です。

抜け毛の量と質 – 正常範囲との見分け方

髪は毎日抜けて生え変わるのが自然な姿です。しかし、その抜け毛の「量」と「質」に変化が見られたら注意が必要です。

正常なヘアサイクルの中での抜け毛なのか、それとも脱毛症のサインなのかを見分ける知識を持つことが、不安の解消と適切な対策につながります。

1日の抜け毛本数の目安

健康な人でも1日に50本から100本程度の髪が自然に抜けます。これはヘアサイクルにおける「休止期」に入った髪が、新しく生えてくる「成長期」の髪に押し出されるためです。

季節の変わり目や体調によって多少変動しますが、排水溝にたまる髪や枕元の抜け毛が明らかに増え、1日に150本以上抜ける日が続くようであれば、注意が必要です。

正常なヘアサイクルと抜け毛の関係

ヘアサイクルの段階	期間の目安	特徴
成長期	2年～6年	髪が太く長く成長する時期。全体の約85～90%。
退行期	約2週間	髪の成長が止まり、毛球が小さくなる時期。全体の約1%。
休止期	約3ヶ月	髪の成長が完全に止まり、自然に抜けるのを待つ時期。全体の約10～15%。

抜けた毛の毛根をチェックする

抜け毛の「質」も重要な判断材料です。シャンプーの時などに抜けた髪を数本集め、毛根部分を観察してみてください。正常な抜け毛は、毛根が白っぽく、マッチ棒の先のように少し膨らんでいます。

これは寿命を全うした健康な髪です。しかし、毛根がなかったり、細く尖っていたり、黒くべたついた皮脂が付着していたりする場合は、ヘアサイクルが乱れているサインかもしれません。

• 正常な毛根: 白く、丸みを帯びてふっくらしている
• 注意が必要な毛根: 形がいびつ、細く尖っている、黒い、皮脂が付着している

髪のボリューム減少が目立つ部位別パターン

加齢による女性の薄毛は、全体的に均一に進行するわけではなく、特定の部位からボリューム減が目立ち始める傾向があります。

ご自身の気になる部位がどのパターンに当てはまるかを知ることで、より具体的な対策を考える手助けになります。

女性に多いびまん性脱毛の特徴

前述の通り、女性の加齢性脱毛症では、髪の毛が全体的に薄くなる「びまん性脱毛」が主流です。

特定の部位が完全になくなるのではなく、全体の密度が低下してボリュームダウンし、地肌が透けて見えるようになります。この症状はゆっくり進行するため、変化に気づきにくいのが特徴です。

FAGA（女性男性型脱毛症）との関連

女性の加齢に伴う薄毛は、FAGA（Female Androgenetic Alopecia）と呼ばれることもあります。男性のAGAとは異なり、女性ホルモンの減少が大きく関わっていると考えられています。

特に頭頂部の分け目部分の髪が細くなり、地肌が目立つようになるのが典型的な症状です。

部位別のボリューム減少度合い

部位	初期の兆候	進行した場合の変化
頭頂部・分け目	分け目が少し広がる、つむじが目立つ	地肌が広範囲で見えるようになる（クリスマスツリー状）
前頭部	髪の立ち上がりが悪くなる	全体のボリュームが減り、生え際が後退したように感じることも
側頭部・後頭部	比較的変化は少ないことが多い	全体的に進行すると、これらの部位も密度が低下する

鏡でできる簡単セルフチェック – 5つのポイント

専門的な機器がなくても、ご自宅の鏡を使って簡単に頭皮と髪の状態をチェックできます。定期的に観察することで、小さな変化にも気づきやすくなります。明るい照明の下で行うのがポイントです。

ポイント1 分け目の幅

まず、いつも通りに髪を分け、その幅を確認します。定規を当てる必要はありませんが、指で触ってみて、以前より地肌を感じやすくなっていないか、鏡で見て幅が広がっていないかを確認しましょう。

可能であれば、分け目を少しずつずらしながら、他の部分の状態も見てみると良いでしょう。

ポイント2 頭皮の色

髪をかき分けて、頭皮の色をチェックします。健康な頭皮は、少し青みがかった白色をしています。

もし頭皮が赤みを帯びていたり、黄色っぽくくすんでいたり、茶色っぽくなっていたりする場合は、血行不良や炎症、皮脂の酸化などが起きているサインです。

頭皮環境の悪化は、健康な髪の成長を妨げる原因になります。

頭皮の色でわかる健康状態

頭皮の色	状態	考えられる原因
青白い色	健康	血行が良く、透明感がある状態
黄色・茶色	注意	皮脂の酸化、血行不良、新陳代謝の低下
赤色	要警戒	炎症、日焼け、シャンプーのすすぎ残しなどによる刺激

ポイント3 髪の生え際

女性の場合、生え際の後退は少ないとされていますが、産毛が増えていないか、生え際の髪が細くなっていないかは確認したいポイントです。

おでこを出して、生え際の髪の密度や太さをチェックしましょう。

ポイント4 髪全体のボリューム

髪を後ろで一つに束ねてみましょう。その時の毛束の太さを手で感じてみてください。以前よりも細く感じたり、ゴムで結ぶ回数が増えたりした場合、全体の毛量が減っている可能性があります。

ポイント5 髪のツヤと手触り

髪を触ったときの感触も大切なチェックポイントです。パサつきやごわつきが強くなっていないか、髪に自然なツヤ（天使の輪）があるかを確認します。

髪のハリコシが失われると、キューティクルが乱れ、ツヤがなくなって手触りも悪くなります。

写真を使った客観的な進行度確認法

毎日の変化はわずかでも、数ヶ月単位で見ると大きな違いになっていることがあります。写真で記録を残すことは、ご自身の状態を客観的に把握し、進行度を確認するための非常に有効な方法です。

クリニックでの相談時にも、医師に状態を正確に伝えるための貴重な資料となります。

正しい撮影の条件

比較のためには、毎回できるだけ同じ条件で撮影することが重要です。記憶だけに頼らず、以下のポイントを守って記録しましょう。

• 同じ場所・同じ照明の下で撮影する（昼間の自然光がおすすめです）
• 頭頂部、分け目、生え際など、気になる箇所を同じ角度から撮影する
• 髪が乾いた状態で、スタイリング剤などをつける前に撮影する
• 月に1回など、撮影する間隔を決めておく

比較する際の注意点

撮影した写真は、少なくとも3ヶ月以上の間隔を空けて比較するのが良いでしょう。短期的な変化に一喜一憂せず、長期的な傾向を見ることが大切です。

写真を見る際は、分け目の幅、地肌の透け具合、髪の密度感などに注目してください。

撮影記録のポイント

撮影箇所	アングル	チェックする点
頭頂部（つむじ）	頭の真上から	つむじ周りの地肌の見え方、髪の密度
分け目	正面から、少し上から	分け目の幅、地肌の色、周辺の髪の太さ
生え際（前頭部）	正面から	産毛の状態、髪の密度

日常生活で気づく髪質の変化サイン

脱毛症のサインは、鏡の中だけでなく、日常生活のふとした場面にも現れます。いつもと違う髪の変化に気づくことが、早期発見のきっかけになります。

スタイリングがまとまりにくい

髪が細くなり、ハリやコシが失われると、髪のうねりやクセが強くなることがあります。その結果、ドライヤーでブローをしてもまとまりにくかったり、ヘアスタイルがすぐに崩れてしまったりします。

特に、トップにボリュームが出にくくなるのは顕著なサインです。

雨の日や湿度の高い日に髪が広がる

健康な髪はキューティクルが整っているため、余分な水分の侵入を防ぎます。しかし、加齢などでダメージを受けた髪は、キューティクルが開きやすくなっています。

そのため、湿度の高い日には空気中の水分を過剰に吸い込んでしまい、髪がまとまりなく広がってしまうのです。以前より湿度の影響を受けやすくなったと感じたら、髪質が変化している証拠かもしれません。

髪質の変化と対策の方向性

感じる変化	髪の内部で起きていること	対策のヒント
パサつき・乾燥	水分保持能力の低下	保湿効果の高いシャンプー・トリートメントの使用
うねり・広がり	キューティクルの乱れ、内部の水分バランスの不均一	髪のダメージ補修、適切な油分補給
ツヤの減少	キューティクルの剥がれ、光の乱反射	キューティクルを整えるヘアケア、頭皮の血行促進

他の脱毛症との見分け方 – 症状の違いを知る

女性の薄毛や抜け毛の原因は、加齢だけではありません。他の脱毛症の可能性も考えられます。症状の違いを知ることで、いたずらに不安になることを防ぎ、適切な対処法を見つける助けになります。

円形脱毛症との違い

円形脱毛症は、自己免疫疾患の一つと考えられており、突然、円形や楕円形に髪が抜けるのが特徴です。

加齢性脱毛症が全体的にゆっくり薄くなるのに対し、境界がはっきりした脱毛斑ができる点で見分けがつきます。大きさは10円玉サイズから、頭部全体に広がるものまで様々です。

牽引性脱毛症との違い

いつも同じ髪型で強く髪を引っ張ることで、毛根に負担がかかり、生え際や分け目が薄くなるのが牽引性脱毛症です。ポニーテールやきついお団子ヘアなどを長期間続けている方に多く見られます。

原因が物理的な刺激であるため、髪型を変えることで改善が見込める点が加齢性脱毛症との大きな違いです。

主な女性の脱毛症との比較

脱毛症の種類	主な症状	進行の仕方
加齢性脱毛症（FAGA）	頭頂部・分け目を中心に全体的に薄くなる	ゆっくりと時間をかけて進行する
円形脱毛症	円形・楕円形の脱毛斑が突然できる	急激に発症することが多い
牽引性脱毛症	髪を引っ張っている箇所の生え際や分け目が薄くなる	物理的な負担の継続により進行する

セルフチェック結果の正しい解釈と次のステップ

セルフチェックでいくつかの項目に当てはまったとしても、すぐに深刻に考える必要はありません。大切なのは、結果を冷静に受け止め、今後の対策を考えるきっかけにすることです。

当てはまる項目が多かった場合

チェックリストの複数の項目に心当たりがあった場合、それはご自身の体が発しているサインです。加齢による変化が始まっている可能性が高いと考えられます。

まずは、生活習慣やヘアケアの見直しなど、ご自身でできる対策から始めてみるのが良いでしょう。

専門家への相談を考えるタイミング

ご自身の判断に迷う場合や、抜け毛が急激に増えた場合、セルフケアを続けても改善が見られない場合は、専門のクリニックに相談することを推奨します。

専門家による正確な診断は、不安を解消し、ご自身に合った治療法を見つけるための第一歩です。

• 抜け毛の量が1日に150本以上続く
• 地肌の透けが明らかに目立つようになった
• セルフケアをしても状態が悪化している気がする
• 薄毛が気になり、精神的なストレスを感じている

早期の対策と予防の重要性

加齢性脱毛症は、一度進行すると元の状態に戻すのが難しい場合があります。そのため、症状が軽いうちに、あるいは気になり始めた段階で、適切な対策や予防を始めることが非常に重要です。

ヘアサイクルの乱れを整え、頭皮環境を健やかに保つことが、美しい髪を長く維持するための鍵となります。

よくある質問

加齢による抜け毛は止められますか？

加齢による変化を完全に止めることは難しいですが、進行を緩やかにしたり、症状を改善したりするための対策や治療法はあります。

頭皮の血行不良を改善するケアや、適切な栄養摂取、専門クリニックでの治療など、様々なアプローチが考えられます。大切なのは、変化に気づいた段階で早めに行動を起こすことです。

市販の育毛剤で対策できますか？

市販の女性用育毛剤には、頭皮環境を整えたり、血行を促進したり、髪にハリコシを与えたりする成分が含まれているものが多く、予防や初期段階の対策としては有効な場合があります。

しかし、薄毛が進行している場合や、ご自身の症状の原因がわからない場合は、まず専門医の診断を受け、症状に合った適切な治療を選択することが重要です。

どのタイミングでクリニックに相談すべきですか？

「少しでも気になったとき」が相談のタイミングです。セルフチェックで当てはまる項目があった、抜け毛が増えた、髪のボリューム減でスタイリングが決まらないなど、どんなささいな悩みでも構いません。

早期に相談することで、より多くの選択肢の中からご自身に合った対策や治療法を見つけることができます。一人で悩まず、ぜひ一度専門家にご相談ください。

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