クエン酸は、適切に使うことで髪の毛や頭皮環境に良い効果を期待できます。
特にシャンプー後のアルカリ性に傾いた髪を、クエン酸の酸性で中和し、キューティクルを引き締める働きは、髪の指通りを良くしツヤを与える上で重要です。
また、頭皮のpHバランスを健やかな弱酸性に整える手助けもします。
この記事では、クエン酸が髪や頭皮にもたらす具体的な効果、そして自宅で簡単に試せる「クエン酸リンス」や「クエン酸シャンプー」の正しい作り方、使用上の注意点まで詳しく解説します。
ヘアケアに新たな一手間を加えたい方はぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
クエン酸が髪と頭皮にもたらす効果とは?
クエン酸は、髪と頭皮を健やかな状態に保つためのサポートをします。主な働きは、シャンプーによってアルカリ性に傾いた髪のpHを弱酸性に戻し、開いたキューティクルを引き締めることです。
この働きが、髪のきしみを抑え、なめらかな指通りに導きます。また、頭皮環境を整える効果も期待できます。
髪のキューティクルを引き締める
私たちの髪は、一番外側を「キューティクル」というウロコ状の組織が覆うことで、内部の水分や栄養素を守っています。
このキューティクルは、髪が濡れたり、特にシャンプー(多くのものがアルカリ性)で洗われたりすると開きやすい性質があります。
キューティクルが開いたままの状態は、非常にデリケートです。内部の水分が蒸発しやすく、パサつきや乾燥の原因となります。
また、髪同士が摩擦で絡み合い、切れ毛や枝毛を引き起こすこともあります。
クエン酸は酸性(pHが低い)の性質を持っています。
シャンプー後のアルカリ性に傾いた髪にクエン酸水(クエン酸リンス)を使うと、髪のpHが中和され、アルカリ性から本来の弱酸性(pH4.5〜5.5程度)に戻ります。
このpHの変化によって、開いていたキューティクルがキュッと引き締まるのです。キューティクルが整うと、髪の表面がなめらかになり、外部の刺激からも守られやすくなります。
頭皮のpHバランスを整える
髪だけでなく、健康な頭皮も弱酸性の状態が保たれています。この弱酸性の環境は、皮膚の常在菌のバランスを保ち、外部からの雑菌の繁殖を防ぐ「バリア機能」の役割を担っています。
しかし、洗浄力の強いシャンプーや、洗いすぎ、ストレス、体調不良などによって頭皮がアルカリ性に傾くと、このバリア機能が低下します。
その結果、頭皮が乾燥しやすくなったり、逆にかゆみやフケ、ニオイの原因菌が繁殖しやすい環境になったりすることがあります。
クエン酸をリンスとして使用し、頭皮にも適度に触れさせることで、頭皮のpHバランスを弱酸性に整える手助けをします。
頭皮環境が安定することは、健やかな髪を育むための土台作りとして非常に重要です。
主なシャンプーの種類とpHの目安
| シャンプーの種類 | 主な特徴 | pHの傾向 |
|---|---|---|
| 石けんシャンプー | 洗浄力が高い。さっぱり感。 | アルカリ性 |
| 高級アルコール系 | 市販品に多い。泡立ちが良い。 | 弱アルカリ性〜中性 |
| アミノ酸系シャンプー | マイルドな洗浄力。保湿力。 | 弱酸性〜中性 |
水道水のカルシウムを中和する
私たちが日常的に使用している水道水には、カルシウムイオンやマグネシウムイオンといったミネラル分が含まれています。
これらのミネラル分は、特に石けんシャンプーを使った場合に、シャンプーの洗浄成分(石けんカス)と結びつきやすい性質があります。
この石けんカスが髪に付着すると、ゴワゴワとした手触りや、きしみの原因になります。また、髪のツヤが失われたように見えることもあります。
クエン酸には「キレート作用」と呼ばれる働きがあります。これは、カルシウムイオンなどの金属イオンと結びつき、その働きを弱める力です。
クエン酸リンスを使うことで、髪に付着したこれらのミネラル分や石けんカスを取り除きやすくし、洗い上がりのゴワつきやきしみを軽減する効果が期待できます。
フケやかゆみを抑える可能性
クエン酸で頭皮環境を弱酸性に保つことは、フケやかゆみの予防につながる可能性があります。前述の通り、頭皮がアルカリ性に傾くとバリア機能が低下し、乾燥や雑菌の繁殖を招きやすくなります。
これがフケやかゆみの一因となることがあります。
クエン酸でpHバランスを整えることは、これらの頭皮トラブルが起こりにくい環境を維持するのに役立ちます。
ただし、フケやかゆみの原因は様々であり、脂漏性皮膚炎など特定の疾患が原因である場合、クエン酸の刺激が逆効果になることもあります。
あくまでもセルフケアの一環として、もし使用して異常を感じた場合はすぐに中止し、専門医に相談することが大切です。
クエン酸リンスで期待できる「髪への効果」を深掘り
クエン酸リンスを使用する最大のメリットは、髪の仕上がり、特に手触りや見た目の改善にあります。
キューティクルを引き締め、水道水の影響を緩和することで、髪本来の状態に近づけます。
指通りがなめらかになる理由
髪がなめらかだと感じるのは、キューティクルが整然と並んでいる状態です。クエン酸リンスは、シャンプーでアルカリ性に傾いて開いたキューティクルを引き締め、髪の表面を滑らかにします。
ウロコが開いてザラザラしていた表面が、閉じて平滑になるイメージです。
その結果、髪同士の摩擦が減少し、手ぐしを通した時のひっかかりや絡まりが少なくなります。
特に、髪が長い方や、石けんシャンプーを使用してきしみを強く感じる方にとって、この指通りの改善効果は実感しやすいでしょう。
髪にツヤを与える
髪のツヤは、光の反射によって生まれます。髪の表面、つまりキューティクルがきれいに整列して閉じていれば、光は一定方向にきれいに反射し、それが「天使の輪」のようなツヤとして認識されます。
逆に、キューティクルが開いていたり、ダメージで剥がれていたりすると、光は乱反射してしまいます。その結果、髪はツヤがなく、パサついて見えてしまいます。
クエン酸リンスによってキューティクルが引き締まると、髪の表面が滑らかになり、光の反射が整います。この作用によって、髪に自然なツヤが戻る効果が期待できるのです。
また、水道水のミネラル分によるくすみを取り除くことも、ツヤ感のアップに貢献します。
カラーやパーマの持ちをサポート
ヘアカラーやパーマの施術は、薬剤の力で髪をアルカリ性に傾け、キューティクルを開いて行います。施術後、髪は非常にデリケートな状態にあり、キューティクルが開きやすいままになっています。
この状態でシャンプーを繰り返すと、キューティクルが開くたびに、髪内部に定着させた色素や、形状を記憶させた成分が流出しやすくなります。これが色落ちやパーマの「だれ」を早める原因です。
クエン酸リンスをアフターケアに取り入れることで、髪を弱酸性に保ち、キューティクルの開きを抑えることができます。
その結果、色素や成分の流出を穏やかにし、カラーやパーマを長持ちさせるサポート効果が期待できます。
ただし、施術直後は髪が非常に不安定なため、美容師のアドバイスに従い、適切なタイミングで使用を開始することが重要です。
クエン酸が「頭皮環境」に与える影響
クエン酸の効果は髪だけにとどまらず、その土台である頭皮環境にも良い影響を与えます。
健やかな髪は健やかな頭皮から育つため、頭皮のpHバランスを意識することは、育毛を考える上でも大切です。
頭皮の弱酸性を保つ重要性
健康な頭皮のpHは、髪と同様に弱酸性(pH4.5〜5.5)です。この弱酸性の状態は、皮膚表面の皮脂膜によって維持されています。
皮脂膜は、汗と皮脂が混ざり合ってできる天然の保湿クリームであり、頭皮の水分蒸発を防ぐと同時に、雑菌の繁殖を抑えるバリア機能も果たしています。
しかし、洗浄力の強すぎるシャンプーで皮脂を取りすぎたり、体調の変化で皮脂の分泌バランスが崩れたりすると、頭皮はアルカリ性に傾きやすくなります。
アルカリ性の環境では、黄色ブドウ球菌やマラセチア菌といった、かゆみやフケ、ニオイの原因となる菌が増殖しやすくなります。
クエン酸リンスは、シャンプー後にアルカリ性に傾いた頭皮のpHを、速やかに弱酸性に戻す手助けをします。
この働きによって、頭皮のバリア機能を正常に保ち、トラブルの起きにくい健やかな状態を維持するサポートをします。
過剰な皮脂や汚れへのアプローチ
クエン酸は、頭皮のpHを整えるだけでなく、古い角質や皮脂汚れに対しても穏やかに作用します。
クエン酸には、タンパク質(古い角質)や皮脂汚れを分解しやすくする働きがあるため、通常のシャンプーでは落としきれなかった毛穴の詰まりや、ベタつきの軽減に役立つことがあります。
ただし、クエン酸自体の洗浄力は非常に穏やかです。頑固な皮脂汚れを強力に落とすものではなく、あくまでも頭皮環境を整える過程で、汚れが蓄積しにくい状態を作るサポートと考えるのが良いでしょう。
頭皮のベタつきが気になる場合、クエン酸リンスを頭皮にもいきわたらせ、軽くマッサージするように(こすらずに)なじませてから洗い流す方法も試す価値があります。
頭皮のニオイが気になる方へ
頭皮のニオイは、多くの場合、過剰に分泌された皮脂が酸化したり、雑菌が皮脂を分解したりする際に発生するガスが原因です。
特に、頭皮がアルカリ性に傾いて雑菌が繁殖しやすい環境になると、ニオイも発生しやすくなります。
クエン酸には、pHを弱酸性に保つことで雑菌の繁殖を抑える「静菌作用」が期待できます。また、クエン酸自体にも消臭効果があるとされています。
クエン酸リンスを継続して使用することで、頭皮環境が改善し、結果として気になるニオイが軽減される可能性があります。
ニオイの原因がはっきりしない場合や、クエン酸リンスを使用しても改善が見られない場合は、他の原因(食生活やホルモンバランス、あるいは疾患)も考えられるため、専門家への相談も検討してください。
頭皮のpHバランスが崩れる主な要因
| 要因 | 具体的な内容 | 頭皮への影響 |
|---|---|---|
| シャンプー | 洗浄力の強すぎるもの、アルカリ性のもの(石けん等) | 必要な皮脂まで除去し、アルカリ性に傾ける |
| 洗いすぎ | 1日に何度もシャンプーする | 皮脂膜の再生が追いつかず、乾燥やバリア機能低下を招く |
| 生活習慣 | ストレス、睡眠不足、脂っこい食事 | ホルモンバランスが乱れ、皮脂の分泌が過剰または不足する |
自宅で簡単!「クエン酸リンス」の作り方と使い方
クエン酸リンスは、ドラッグストアや100円ショップなどで手に入るクエン酸(粉末)を使えば、誰でも簡単に作ることができます。経済的で、添加物を気にせず使える点も魅力です。
準備するもの
クエン酸リンス作りに必要なものは非常にシンプルです。まずは基本の材料を揃えましょう。
- クエン酸(食品用または薬局方グレード推奨)
- 水(水道水または精製水)500mL
- 空のペットボトルやボトル容器(500mL用)
- 計量スプーン(小さじ)
クエン酸は、「掃除用」と「食品用(または薬局方)」が販売されています。
掃除用は純度が低い場合や、他の成分が含まれている可能性があるため、必ず「食品用(食用)」または「薬局方」と記載のある、純度の高いものを選んでください。
基本のクエン酸リンスの作り方(レシピ)
基本的なクエン酸リンスの作り方は「水にクエン酸を溶かすだけ」です。濃度が非常に重要ですので、必ず目安量を守ってください。
作り方(500mL分)
- 清潔なペットボトルや容器に、水(ぬるま湯でも可)を500mL入れます。
- クエン酸を小さじ半分〜1杯程度(約2.5g〜5g)入れます。
- フタをしっかり閉めて、クエン酸の粉末が完全に溶けるまでよく振ります。
これで完成です。濃度は髪質や使用感の好みによって調整してください。初めての方は、髪への刺激を考慮し、小さじ半分(約0.5%濃度)の薄めのものから試すことをお勧めします。
クエン酸リンスの濃度目安
| クエン酸の量 | 水の量 | おおよその濃度 |
|---|---|---|
| 小さじ半分(約2.5g) | 500mL | 約0.5%(初めての方・敏感肌向け) |
| 小さじ1杯(約5g) | 500mL | 約1.0%(標準) |
正しいクエン酸リンスの使用手順
クエン酸リンスは、通常のリンスやコンディショナーとは使用するタイミングや目的が少し異なります。正しく使って効果を実感しましょう。
- シャンプー:まずは通常通りシャンプーをし、泡をしっかりと洗い流します。特に石けんシャンプーを使用した後は、きしみを強く感じることがあります。
- クエン酸リンスを塗布:洗面器にお湯を張り、作ったクエン酸リンスを適量(例えば50mL程度)溶かします。そこに髪全体を浸すか、もしくはボトルから直接、髪と頭皮全体にいきわたるようにゆっくりかけ流します。
- なじませる:髪全体にいきわたったら、手ぐしで髪をときながら、優しくなじませます。ゴシゴシこする必要はありません。髪がアルカリ性から中和されると、指通りがスッと変わる瞬間がわかります。
- すすぎ:クエン酸リンスをなじませた後は、必ずシャワーでしっかりと洗い流します。クエン酸が髪や頭皮に残っていると、刺激になったり、逆に髪を傷めたりする原因になります。
- (必要な場合)トリートメント:クエン酸リンスは、あくまでも髪のpHを整え、キューティクルを閉じるものです。髪内部に栄養を補給したり、油分でコーティングしたりする「トリートメント」や「コンディショナー」とは役割が異なります。クエン酸リンスですすいだ後、毛先のダメージが気になる場合は、上からトリートメントを重ねて使い、再度すすいでください。
使用頻度の目安
クエン酸リンスの使用頻度は、お使いのシャンプーの種類や髪の状態によって異なります。
石けんシャンプー(アルカリ性)を使用している場合は、シャンプーのたびに毎回クエン酸リンスで中和することが推奨されます。石けんシャンプーとクエン酸リンスはセットで考えるのが基本です。
一方、弱酸性のアミノ酸系シャンプーなどを使用している場合、髪は元々アルカリ性に傾きにくいため、クエン酸リンスは必須ではありません。
ただし、水道水のミネラル分によるゴワつきが気になる場合や、髪のツヤ出し目的で、週に1〜2回のスペシャルケアとして取り入れるのは良い方法です。
話題の「クエン酸シャンプー」の作り方
クエン酸リンスだけでなく、最近では「クエン酸シャンプー」も注目されています。
これは、クエン酸をシャンプーに混ぜたり、クエン酸自体を洗浄の補助として使ったりする方法です。
クエン酸シャンプーとは?
一般的に「クエン酸シャンプー」と呼ばれるものには、大きく分けて2つのタイプがあります。
- 今使っているシャンプーにクエン酸を混ぜる方法
- 重曹シャンプー(アルカリ洗浄)のアフターケアとしてクエン酸リンスを使う方法(湯シャンの一環)
ここでは、より手軽に試せる「1.今使っているシャンプーに混ぜる方法」と、その応用としての「クエン酸シャンプー原液」の作り方を紹介します。
クエン酸シャンプーの作成方法
クエン酸シャンプーも、クエン酸リンスと同様に簡単に作ることができます。ただし、作り置きには適さないため、使う分だけ作るのが基本です。
方法1:いつものシャンプーに混ぜる
- 手のひらにいつも通り1回分のシャンプーを取ります。
- そこに、クエン酸の粉末をひとつまみ(ごく少量、耳かき1杯程度)加えます。
- 手のひらの上でシャンプーとクエン酸をよく混ぜ合わせ、水かぬるま湯を加えて泡立ててから、いつも通りシャンプーします。
この方法は、シャンプーの洗浄力を少しマイルドにし、洗い上がりのきしみを軽減する効果が期待できます。特に石けんシャンプーの泡立ちや洗い上がりを改善する目的で使われることがあります。
方法2:クエン酸シャンプー(洗浄用)を作る
これは、シャンプー剤の代わりとして、またはシャンプー前の予洗いとして使う方法です。
- 水(またはぬるま湯)100mL
- クエン酸小さじ1/4程度
これをスプレーボトルなどに入れ、シャンプー前の乾いた頭皮や、ベタつきが気になる部分にスプレーし、軽くマッサージしてからお湯ですすぎ、その後、通常通りシャンプーします。
頭皮の余分な皮脂や汚れを浮き上がらせる効果を期待するものです。
通常のシャンプーとの違い
通常の(界面活性剤が入った)シャンプーの主な目的は「洗浄」です。泡の力で皮脂や汚れを包み込み、水で洗い流します。
一方、クエン酸シャンプー(特に方法2)は、クエン酸の酸性の力で皮脂や角質を「浮かせる」「柔らかくする」というアプローチです。
洗浄力そのものは非常に穏やかであり、一般的なシャンプーの代わりとして毎日使うと、洗浄力不足で皮脂が残り、かえって頭皮トラブルを招く可能性もあります。
クエン酸シャンプーは、あくまでも頭皮のコンディションを整えるための補助的なケアや、湯シャン(お湯だけで洗髪すること)のバリエーションの一つとして捉えるのが適切です。
ケア方法の比較
| ケア方法 | 主な目的 | 適したタイミング |
|---|---|---|
| 通常のシャンプー | 頭皮・髪の洗浄 | 毎日の洗髪時 |
| クエン酸リンス | pH調整、キューティクル引き締め | シャンプー(特にアルカリ性)の後 |
| クエン酸シャンプー | 頭皮のpH調整、皮脂の軟化 | シャンプー前、または湯シャン時 |
クエン酸を髪や頭皮に使う際の注意点
クエン酸は食品にも使われる安全性の高い成分ですが、ヘアケアに使う場合はいくつかの注意点があります。誤った使い方は、髪や頭皮を傷める原因になるため、必ず守ってください。
濃度が高すぎることのリスク
最も重要な注意点が「濃度」です。クエン酸は強い酸性物質であり、濃度が高すぎると、髪や頭皮に深刻なダメージを与えます。
髪はタンパク質でできており、強い酸性に触れると「酸ヤケ」と呼ばれる状態になり、タンパク質が変性して硬くなってしまいます。
その結果、髪はゴワゴワになり、ツヤを失い、元に戻らなくなってしまいます。また、頭皮にも強すぎる刺激となり、炎症や乾燥、ただれを引き起こす危険性があります。
クエン酸リンスとして使用する濃度は、必ず0.5%〜1.0%程度(水500mLに対して小さじ半分〜1杯)を守ってください。「効果を高めたい」と濃度を上げることは絶対にやめてください。
目に入らないように注意する
クエン酸水溶液が目に入ると、強い痛みを感じます。リンスやシャンプーとして使用する際は、目をつぶるなどして、絶対に目に入らないよう細心の注意を払ってください。
もし誤って目に入ってしまった場合は、すぐに大量の清潔な水で洗い流し、痛みが続く場合や違和感が残る場合は、速やかに眼科医の診察を受けてください。
肌が敏感な方のパッチテスト
クエン酸は刺激が少ないとされていますが、人によっては肌に合わない場合もあります。特に肌が敏感な方、アトピー体質の方、頭皮に湿疹や傷がある方は、使用に注意が必要です。
初めて使用する前には、必ずパッチテストを行ってください。
腕の内側などの柔らかい皮膚に、作成したクエン酸リンスを少量塗り、数時間〜24時間放置して、赤み、かゆみ、発疹などの異常が出ないかを確認します。
頭皮に傷や炎症がある場合は、治癒するまで使用を控えてください。
すすぎ残しがないようにする
クエン酸リンスを使用した後は、シャワーで十分にすすぎ流すことが大切です。
クエン酸の成分が髪や頭皮に残っていると、それが刺激となったり、日光(紫外線)と反応して髪や頭皮にダメージを与えたりする可能性があります。
特に、髪の生え際や耳の後ろ、首筋などはすすぎ残しやすい部分です。意識して、ぬるつきが完全になくなるまで、しっかりとお湯で洗い流してください。
クエン酸使用時のチェックポイント
| 項目 | 確認内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 濃度 | 0.5%〜1.0%の範囲か? | 高濃度は髪と頭皮を傷めるため |
| 使用箇所 | 頭皮に傷や湿疹はないか? | 刺激となり、症状を悪化させるため |
| すすぎ | 髪や頭皮に残っていないか? | 残留成分が刺激やダメージの原因になるため |
| 目 | 目に入らないよう注意しているか? | 強い痛みを伴い、目を傷つけるため |
クエン酸リンスが合わないと感じたら
クエン酸リンスは多くのメリットが期待できるヘアケアですが、残念ながらすべての人に合うわけではありません。使用中に違和感を覚えたら、無理に続けないことが大切です。
使用を中止するサイン
以下のような症状が現れた場合、クエン酸リンスが肌や髪質に合っていないか、濃度が高すぎる可能性があります。すぐに使用を中止してください。
- 頭皮のかゆみ、ヒリヒリとした刺激感
- 頭皮の赤み、湿疹
- フケが以前より増えた
- 髪が逆にゴワゴワ、ギシギシする(酸ヤケの可能性)
- 髪が以前よりパサつく、乾燥する
使用を中止しても症状が改善しない場合や、症状が強い場合は、皮膚科専門医に相談してください。
頭皮や髪の状態を確認する
クエン酸リンスが合わないと感じた場合、まずはご自身の頭皮や髪の状態を客観的に見直してみましょう。
もともと頭皮が乾燥しがちな方の場合、クエン酸の収れん作用(引き締める作用)が強く出て、乾燥を助長してしまうことがあります。
また、ヘアカラーやパーマによるハイダメージ毛の場合、キューティクルがすでに大きく損傷しているため、クエン酸の刺激に耐えられず、きしみやゴワつきを感じやすいこともあります。
このような場合は、クエン酸によるpH調整よりも、トリートメントによる内部補修や油分の補給を優先する方が良い場合もあります。
他のヘアケア方法の検討
クエン酸リンスの目的は、主に「アルカリ性の中和」と「キューティクルの引き締め」です。
もし石けんシャンプーを使っているためにクエン酸リンスを試したのであれば、シャンプー自体を洗浄力がマイルドな弱酸性のアミノ酸系シャンプーに変える、というのも一つの解決策です。
また、髪のダメージがひどい場合は、クエン酸リンスを一旦お休みし、市販のダメージケア用トリートメントやヘアマスク、洗い流さないトリートメント(ヘアオイル、ヘアミルク)などで、集中的に保湿と補修を行うことをお勧めします。
自分の髪質や頭皮の状態を正しく理解し、その時々で必要なケアを選択することが、美しく健やかな髪を保つ上で重要です。
合わない場合の対策
| 症状 | 考えられる原因 | 対策 |
|---|---|---|
| かゆみ・赤み | 刺激、アレルギー | 即時使用中止、皮膚科相談 |
| ゴワつき・きしみ | 高濃度(酸ヤケ)、髪のダメージ | 濃度を下げる、使用中止、保湿ケア強化 |
| 乾燥・パサつき | 収れん作用が強すぎる、乾燥肌 | 濃度を下げる、使用頻度を減らす、保湿ケア強化 |
Q&A
- クエン酸は毎日使っても大丈夫?
-
お使いのシャンプーによります。石けんシャンプー(アルカリ性)を使用している場合は、中和のために毎回(毎日シャンプーするなら毎日)使用するのが基本です。
ただし、弱酸性シャンプーをお使いの場合、毎日使用する必要は特にありません。
水道水のミネラル対策などで使う場合も、髪や頭皮の様子を見ながら、週に数回程度から試すのが良いでしょう。使いすぎて乾燥を感じるようであれば頻度を減らしてください。
- 食用と掃除用のクエン酸はどちらを使えばいい?
-
必ず「食品用(食用)」または「薬局方」と記載されているものを使用してください。
掃除用のクエン酸は、純度が低い場合や、洗浄効果を高めるために他の成分が混入されている可能性があります。
肌や頭皮に直接触れるものですので、安全性が確認されている高純度のものを選ぶことが大切です。
- クエン酸リンスの後にトリートメントは必要?
-
クエン酸リンスは、髪のpHを整えてキューティクルを閉じる役割がメインであり、髪内部に栄養を補給したり、油分でコーティングしたりするものではありません。
そのため、クエン酸リンスだけでは毛先のまとまりや保湿が足りないと感じる方は、クエン酸リンスをしっかりとすすいだ後、毛先を中心にトリートメントやコンディショナーを使用することをお勧めします。
両方の良い点を活かすことができます。
- クエン酸リンスで髪がキシキシするのですが?
-
いくつかの原因が考えられます。一つは「濃度が高すぎる」ことです。酸性が強すぎると髪がタンパク変性を起こし、硬くゴワゴワになります。
まずは濃度を薄くして(水500mLに小さじ半分以下)試してください。もう一つは、髪のダメージが進んでいる場合です。
ダメージホールが多い髪は、キューティクルが引き締まる際にきしみを感じやすいことがあります。
この場合は使用を中止するか、トリートメントを併用して保湿を強化してください。
- 保存はどのくらいできますか?
-
クエン酸リンスは、防腐剤などが入っていないため、長期保存には向きません。
特に水道水で作った場合は雑菌が繁殖しやすいため、作ったリンスは遅くとも2〜3日以内、できればその日のうちに使い切るのが理想です。
毎回作るのが面倒な場合は、スプレーボトルなどに濃いめの原液を作っておき(例:水100mLにクエン酸10g)、使用時に洗面器のお湯で薄めて使う方法もありますが、この原液も冷蔵庫で保存し、1〜2週間程度で使い切るようにしてください。
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