50代を迎え、抜け毛や髪のボリュームダウンに悩む女性は少なくありません。「シャンプーは毎日すべき?」という疑問は、抜け毛対策を考える上で誰もが一度は通る道です。
50代女性の抜け毛は、多くの場合、加齢による頭皮環境の変化が影響しています。そのため、50代の今に合わせたシャンプーの頻度、正しい洗い方、そしてシャンプー選びが重要になります。
この記事では、50代女性の抜け毛の原因を探りつつ、シャンプーは毎日すべきかという疑問に明確にお答えし、今日から実践できる正しいヘアケア方法を詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
50代女性の抜け毛が増える背景
50代女性の抜け毛は、主に加齢による女性ホルモンの減少と、それに伴う頭皮環境の変化が深く関係しています。
若い頃と同じケアを続けていると、知らず知らずのうちに頭皮に負担をかけ、抜け毛を助長している可能性もあります。まずはご自身の体の変化と髪の関係を知ることが対策の第一歩です。
女性ホルモン(エストロゲン)の減少
女性の髪の健康は、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」によって大きく支えられています。エストロゲンは、髪の成長を促進し、ハリやコシを保つ働きを持っています。
しかし、50代になると更年期を迎え、このエストロゲンの分泌量が急激に減少します。
その結果、髪の成長期が短くなったり、髪が細くなったりするため、全体的にボリュームが減少し、抜け毛が目立つようになると考えられています。
頭皮の乾燥と血行不良
加齢に伴い、肌が乾燥しやすくなるのと同じように、頭皮も乾燥しやすくなります。
皮脂の分泌量が減少し、頭皮のバリア機能が低下するためです。頭皮が乾燥すると、フケやかゆみが発生しやすくなるだけでなく、外部からの刺激に敏感になり、健康な髪が育ちにくい環境になります。
また、年齢とともに体の血行も悪くなりがちです。頭皮の血行不良は、髪の成長に必要な栄養素が毛根まで届きにくくなることを意味し、抜け毛や薄毛の大きな原因となります。
頭皮環境の変化が髪に与える影響
| 頭皮の変化 | 主な原因 | 髪への影響 |
|---|---|---|
| 乾燥・かゆみ | 皮脂分泌の減少・バリア機能低下 | 健康な髪が育ちにくくなる |
| 血行不良 | 加齢・運動不足・ストレス | 毛根への栄養不足・抜け毛 |
| 硬化 | 乾燥・血行不良 | 髪の成長を妨げる |
ヘアサイクルの乱れ
髪の毛には「成長期」「退行期」「休止期」というヘアサイクル(毛周期)があります。
健康な髪は、数年続く「成長期」を経て、自然に抜け落ちる「休止期」へと移行します。しかし、女性ホルモンの減少や頭皮環境の悪化により、このヘアサイクルが乱れがちになります。
特に「成長期」が短くなると、髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまうため、抜け毛が増えたと感じるようになります。
ストレスや生活習慣の影響
50代は、仕事や家庭環境の変化など、さまざまなストレスに直面しやすい時期でもあります。
過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させて血行不良を引き起こすため、頭皮環境にも悪影響を与えます。
また、睡眠不足や栄養バランスの偏った食事、運動不足といった生活習慣の乱れも、髪の健康を損ない、抜け毛を加速させる要因となります。
50代女性はシャンプーを毎日すべき?
50代女性の抜け毛対策として、シャンプーは原則として毎日行うことを推奨します。
ただし、これはあくまでも一般的な目安であり、ご自身の頭皮の状態や使用するシャンプーの種類に合わせて頻度を調整する柔軟さも大切です。
洗いすぎを恐れて不潔にするよりも、正しく洗って清潔を保つことを優先しましょう。
毎日洗うべき理由 頭皮を清潔に保つ
シャンプーの最も大切な役割は、頭皮や髪の汚れを落とすことです。頭皮からは皮脂や汗が分泌され、それに加えてホコリや整髪料などが付着します。
これらの汚れを放置すると、皮脂が酸化して頭皮環境を悪化させたり、毛穴を詰まらせたりして、かゆみやフケ、さらには抜け毛の原因となります。
50代女性は皮脂分泌が減るとはいえ、汚れは日々蓄積されます。毎日シャンプーで汚れをリセットし、頭皮を清潔な状態に保つことが、健康な髪を育むための基本です。
洗いすぎが不安な場合の考え方
「毎日洗うと、必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥や抜け毛が悪化するのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。確かに、洗浄力の強すぎるシャンプーでゴシゴシ洗うのは問題です。
しかし、問題の本質は「毎日洗うこと」ではなく、「洗い方」や「使うシャンプー」にあります。
50代の頭皮に合ったマイルドな洗浄力のシャンプーを選び、後述する正しい洗い方を実践すれば、毎日洗っても頭皮への負担を最小限に抑えることができます。
頭皮タイプ別 シャンプー頻度の目安
基本は毎日洗うことを推奨しますが、頭皮の状態によっては頻度の調整も必要です。ご自身の頭皮タイプを見極める参考にしてください。
頭皮タイプごとの特徴と頻度
| 頭皮タイプ | 特徴 | 推奨頻度 |
|---|---|---|
| 普通肌 | 適度な皮脂と潤いがある | 毎日 |
| 乾燥肌 | 皮脂が少なく、かさつきやすい | 毎日(ただし超低刺激シャンプー) or 2日に1回 |
| 脂性肌 | 皮脂分泌が多く、べたつきやすい | 毎日(場合によっては朝晩も) |
毎日洗わない場合のデメリット
シャンプーの頻度を減らしすぎると、どうなるでしょうか。
まず、頭皮に皮脂や汚れが溜まり、毛穴が詰まりやすくなります。酸化した皮脂はニオイの原因になるだけでなく、頭皮の常在菌のバランスを崩し、炎症やかゆみを引き起こすことがあります。
頭皮環境が悪化すれば、当然、髪の成長は妨げられ、抜け毛は改善するどころか悪化する可能性が高くなります。
特に50代は頭皮のターンオーバーも乱れがちなため、汚れを溜め込まないケアが重要です。
50代女性の抜け毛対策 正しいシャンプーのやり方
抜け毛対策には、シャンプーの「量」や「頻度」だけでなく、その「質(洗い方)」が非常に重要です。
50代のデリケートな頭皮を守るため、正しい手順で頭皮への負担を減らし、汚れだけを効果的に落とす洗い方を身につけましょう。
この洗い方を実践するだけで、髪の状態が変わってくることを実感できるかもしれません。
洗う前のブラッシング
シャンプー前には、必ず乾いた髪の状態でブラッシングを行いましょう。毛先のもつれを優しくときほぐし、その後、頭皮から毛先に向かって髪全体をとかします。
このひと手間には、髪や頭皮に付着したホコリやフケなどの大きな汚れをあらかじめ落とす効果があります。
また、頭皮に適度な刺激を与えることで血行が良くなり、シャンプーの泡立ちも格段に向上します。泡立ちが良くなれば、シャンプー剤の使用量を減らすことにもつながり、頭皮への負担軽減にもなります。
予洗い(お湯洗い)の重要性
シャンプー剤をつける前に、まずはお湯だけで頭皮と髪をしっかりと洗う「予洗い」を行います。
38度前後のぬるま湯を使い、1分から2分程度かけて、指の腹で頭皮をマッサージするように全体を濡らしていきます。
実は、この予洗いだけで髪の汚れの7割から8割は落ちると言われています。予洗いを丁寧に行うことで、シャンプー剤の泡立ちが良くなるだけでなく、シャンプー剤が頭皮に残るリスクも減らせます。
シャンプーの泡立て方と洗い方
シャンプー剤は、適量を手にとったら、そのまま頭皮に直接つけるのではなく、必ず手のひらで軽く泡立ててから髪全体になじませます。量が多すぎるとすすぎ残しの原因になるため注意しましょう。
泡立てたら、爪を立てず、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。
洗う順番は、汚れや皮脂が溜まりやすい生え際、襟足、頭頂部から側頭部へと、全体をまんべんなく洗うことを意識します。髪の毛自体は、泡をなじませる程度で十分です。
ゴシゴシと髪同士をこすり合わせると、キューティクルが傷む原因になるため避けましょう。
すすぎ残しは頭皮トラブルの原因
シャンプーの工程で最も重要とも言えるのが「すすぎ」です。
シャンプー剤やコンディショナーの成分が頭皮に残っていると、それが毛穴を塞いだり、頭皮を刺激したりして、かゆみや炎症、抜け毛の原因となります。
洗う時にかけた時間の2倍から3倍の時間をかけるつもりで、念入りにすすぎましょう。
生え際や襟足も念入りに
特にすすぎ残しが多いのが、顔周りの生え際、耳の後ろ、そして襟足です。
シャワーヘッドを頭皮に近づけ、指の腹で頭皮を軽くこするようにしながら、お湯がしっかりと頭皮全体に行き渡るようにします。
「もう十分かな」と思ってから、さらに30秒ほどすすぐくらいが丁度良いでしょう。頭皮にぬめり感がなくなるまで、徹底的にすすぎます。
50代女性の抜け毛対策 シャンプーの選び方
50代女性のデリケートな頭皮には、洗浄成分がマイルドで、頭皮ケアを目的としたシャンプーを選ぶことが重要です。
毎日使うものだからこそ、価格や香りだけでなく、その「中身(成分)」にこだわって選びましょう。
ご自身の頭皮環境を悪化させない、むしろ改善を助けるシャンプーを見つけることが抜け毛対策の鍵となります。
避けたほうがよい洗浄成分
市販されているシャンプーの中には、洗浄力が非常に強い「高級アルコール系(硫酸系)」の洗浄成分を主成分としているものがあります。
これらの成分は泡立ちが良く、洗い上がりがさっぱりしますが、50代の乾燥しがちな頭皮には刺激が強く、必要な皮脂まで奪いすぎてしまう可能性があります。
成分表示に「ラウリル硫酸Na」や「ラウレス硫酸Na」といった記載がある場合は、乾燥肌や敏感肌の方は避けたほうが賢明かもしれません。
おすすめの洗浄成分 アミノ酸系
50代女性の抜け毛対策としてシャンプーを選ぶなら、洗浄成分は「アミノ酸系」がおすすめです。
アミノ酸系洗浄成分は、人間の皮膚や髪と同じタンパク質(アミノ酸)から作られており、弱酸性で肌に優しいのが特徴です。
必要な潤いを保ちつつ、余分な皮脂や汚れだけをマイルドに洗い上げます。泡立ちは控えめな傾向がありますが、頭皮への負担を最小限に抑えることができます。
主な洗浄成分の比較
| 洗浄成分の種類 | 特徴 | 50代女性への適性 |
|---|---|---|
| 高級アルコール系 | 洗浄力が強い・泡立ちが良い | △(乾燥を助長する可能性) |
| 石けん系 | 洗浄力が強い・アルカリ性 | △(髪がきしみやすい) |
| アミノ酸系 | マイルド・弱酸性・保湿性 | ◎(頭皮に優しい) |
頭皮ケア成分(保湿・血行促進)
シャンプーは洗浄成分だけでなく、配合されているその他の成分にも注目しましょう。50代の頭皮には「保湿」と「血行促進」が重要です。
保湿成分としては、「セラミド」「ヒアルロン酸」「コラーゲン」「グリセリン」などが代表的です。これらの成分が頭皮の乾燥を防ぎ、バリア機能をサポートします。
また、「センブリエキス」や「ビタミンE誘導体」などは、頭皮の血行を促進する効果が期待できる成分です。
シャンプーを選ぶ際は、こうした頭皮ケア成分が配合されているかどうかもチェックポイントとなります。
ノンシリコンシャンプーはどうか?
「ノンシリコンシャンプー」が髪に良いというイメージがあるかもしれませんが、シリコン(ジメチコンなど)自体が悪者というわけではありません。
シリコンは髪の表面をコーティングし、指通りを良くしたり、摩擦によるダメージを防いだりする役割があります。
ただし、シリコンが頭皮に残ると毛穴を塞ぐ可能性がゼロではないため、頭皮ケアを重視する場合はノンシリコンを選ぶのも一つの選択です。
大切なのは、ノンシリコンであることよりも、洗浄成分がマイルドで、頭皮ケア成分が配合されていることです。
シャンプー以外の日常生活でできる抜け毛対策
抜け毛対策はシャンプーだけでなく、日々の生活習慣全体で見直すことが、健やかな髪を育むことにつながります。体は食べたもの、行ったことから作られています。
髪も例外ではありません。内側からのケアも同時に進めていきましょう。
栄養バランスの取れた食事
髪の毛は主に「ケラチン」というタンパク質でできています。そのため、まずは良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)をしっかり摂取することが基本です。
しかし、タンパク質だけでは髪は作られません。
タンパク質が髪の毛に変わるのを助ける「亜鉛」(牡蠣、レバー、ナッツ類など)や、頭皮の血行を良くする「ビタミンE」(アーモンド、アボカド、かぼちゃなど)、頭皮環境を整える「ビタミンB群」(豚肉、うなぎ、マグロなど)も重要です。
また、50代女性は女性ホルモンと似た働きをする「イソフラボン」(大豆製品)を意識的に摂ることもおすすめです。特定の食品に偏るのではなく、多くの品目をバランス良く食べることが大切です。
髪の健康に必要な栄養素と食材例
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食材例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン) | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | ケラチンの合成を助ける | 牡蠣、レバー、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の代謝を促す | 豚肉、うなぎ、マグロ、レバー |
| イソフラボン | 女性ホルモン様の働き | 納豆、豆腐、豆乳 |
質の良い睡眠の確保
髪の毛は、私たちが寝ている間に分泌される「成長ホルモン」によって成長が促されます。特に、入眠後の最初の深い眠り(ノンレム睡眠)の時間帯に成長ホルモンは最も多く分泌されます。
睡眠時間が不足したり、眠りが浅かったりすると、成長ホルモンの分泌が妨げられ、髪の成長や頭皮の修復が十分に行われません。
50代になると寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりしやすくなりますが、毎日決まった時間に寝て起きる、寝る前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠の「質」を高める工夫をしましょう。
適度な運動で血行促進
頭皮の健康は血行にかかっていると言っても過言ではありません。適度な運動は、全身の血流を改善し、頭皮の毛細血管にもしっかりと血液(=栄養素)を届ける助けとなります。
激しい運動である必要はありません。ウォーキングやジョギング、ヨガ、ストレッチなど、毎日続けられる程度の有酸素運動が効果的です。
運動はストレス解消にも役立つため、自律神経のバランスを整える意味でも、ぜひ生活に取り入れたい習慣です。
紫外線対策の重要性
顔や腕の紫外線対策はしていても、頭皮の紫外線対策は見落としがちです。
頭皮は顔の2倍以上の紫外線を浴びているとも言われ、紫外線は頭皮の乾燥や炎症を引き起こし、毛根にダメージを与えて抜け毛の原因となります。
外出時には、日傘や帽子を着用する、頭皮用の日焼け止めスプレーを利用するなど、一年を通して紫外線から頭皮を守る意識が大切です。
頭皮マッサージは抜け毛対策になる?
頭皮マッサージは、頭皮の血行を直接的に促進し、リラックス効果も期待できるため、50代女性の抜け毛対策の一環として非常におすすめできるケアです。
硬くなった頭皮をほぐすことで、健康な髪が育つ土壌を整えることができます。高価な器具がなくても、自分の指で簡単に行えます。
頭皮マッサージの期待できる効果
頭皮マッサージの最大のメリットは、血行促進です。頭皮が硬くなっていると感じる場合、それは血流が滞っているサインかもしれません。
マッサージによって頭皮を動かし、毛細血管を刺激することで、髪の毛根にある「毛乳頭」や「毛母細胞」に栄養や酸素が届きやすくなります。
また、頭皮と顔の皮膚は一枚でつながっています。頭皮をほぐすことは、顔のリフトアップや、くすみの改善にも良い影響を与える可能性があります。
さらに、心地よい刺激はリラックス効果を生み、ストレスの緩和にも役立ちます。
正しい頭皮マッサージの方法
頭皮マッサージを行う際は、絶対に爪を立てず、指の腹を使います。頭皮を強くこするのではなく、頭蓋骨から頭皮を「動かす」ようなイメージで行うのがコツです。
まず、両手の指の腹で、生え際から頭頂部に向かって、小さく円を描くようにマッサージします。次に、耳の上(側頭部)に指をあて、同じように頭頂部に向かって引き上げるように動かします。
最後に、襟足(後頭部)から頭頂部に向かっても同様に行います。全体で3分から5分程度、気持ち良いと感じる強さで行いましょう。
頭皮マッサージのタイミング別メリット
| タイミング | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| シャンプー中 | 毛穴の汚れを浮かせやすい | 滑りが良いが、こすりすぎない |
| お風呂上がり | 血行が良い状態で行える | 髪を乾かす前に行う |
| 就寝前 | リラックス効果で睡眠の質向上 | 乾いた状態では摩擦に注意 |
マッサージを行うタイミング
頭皮マッサージは、いつ行っても構いませんが、特におすすめのタイミングが2つあります。
一つ目は、シャンプー中です。シャンプーの泡がクッションとなり、指の滑りが良くなるため、頭皮への摩擦を減らしながら行えます。
毛穴の汚れを浮き上がらせる効果も期待できます。 二つ目は、お風呂上がりの血行が良くなっている時です。
タオルドライ後、育毛剤などを使用している場合は、それを塗布した後にマッサージを行うと、成分の浸透を助ける効果も期待できます。
また、日中の仕事の合間や寝る前など、リラックスしたい時に行うのも良いでしょう。
注意点 強くこすりすぎない
抜け毛を気にするあまり、力を入れすぎたり、長時間やりすぎたりするのは逆効果です。頭皮は非常にデリケートなため、強い力でこすると頭皮を傷つけたり、炎症を引き起こしたりする可能性があります。
また、マッサージによって逆に髪の毛が抜けることを恐れる必要はありません。マッサージで抜ける毛は、すでに休止期に入っている、近いうちに抜ける運命にあった毛がほとんどです。
「気持ち良い」と感じる程度の圧で、優しく行うことが継続のコツです。
間違った抜け毛対策に注意
抜け毛を気にするあまり、間違ったケアを続けていると、かえって頭皮環境を悪化させ、抜け毛を増やしてしまう可能性があります。
良かれと思ってやっていることが、実は逆効果になっていないか、ご自身のケアを見直してみましょう。よくある誤解を知っておくことが大切です。
頭皮を強く叩く・こする
「頭皮を刺激した方が血行が良くなる」と考え、ブラシで強く頭皮を叩いたり、指で強くこすったりする方がいますが、これは非常に危険な行為です。
頭皮を叩くような強い刺激は、頭皮の毛細血管や毛根にダメージを与え、炎症を引き起こす可能性があります。
マッサージは「叩く」や「こする」ではなく、「優しく動かす」が正解です。ブラシを使う場合も、頭皮を傷つけない、クッション性のあるものを選びましょう。
シャンプーを直接頭皮につける
シャンプーの原液を直接頭皮につけてから泡立てていませんか?これは、洗浄成分が頭皮の一箇所に集中してしまい、強い刺激となる可能性があります。
また、泡立ちが悪くなるため、結果的に多くのシャンプー剤を使ってしまったり、ゴシゴシ洗いにつながったりします。
前述の通り、シャンプーは必ず手のひらで泡立ててから、髪全体になじませるようにしましょう。
避けるべき頭皮ケア
- 爪を立てて洗う
- 熱すぎるお湯でのすすぎ
- タオルでの乱暴なゴシゴシ拭き
1日に何度もシャンプーする
頭皮のべたつきやニオイが気になるからといって、1日に2回も3回もシャンプーするのは洗いすぎです。50代女性の場合、皮脂分泌はもともと減少傾向にあります。
必要以上に皮脂を奪ってしまうと、頭皮は潤いを失い、かえって乾燥を招きます。
すると、体は「皮脂が足りない」と勘違いし、余計に皮脂を分泌しようとして、べたつきが悪化するという悪循環に陥ることもあります。シャンプーは基本、1日1回で十分です。
自然乾燥で済ませる
シャンプー後、髪を乾かすのが面倒で自然乾燥にしている方も注意が必要です。髪が濡れたままの状態が続くと、頭皮で雑菌が繁殖しやすくなります。
これがかゆみやニオイ、フケの原因となり、頭皮環境の悪化につながります。また、髪の毛は濡れている時が最もダメージを受けやすく、キューティクルが開いたままの状態になります。
シャンプー後はタオルで優しく水分を吸い取った後、できるだけ速やかにドライヤーで頭皮から乾かすようにしましょう。
ドライヤーの熱もダメージの原因になるため、髪から20cm程度離し、同じ場所に当て続けないように注意が必要です。
Q&A
50代女性の抜け毛やシャンプーに関する、よくあるご質問にお答えします。日々のケアの参考にしてください。
- 抜け毛がひどい場合、シャンプーを変えるだけで改善しますか?
-
シャンプーをご自身の頭皮に合ったもの(例:アミノ酸系など)に変え、正しい洗い方を実践することで、頭皮環境が整い、抜け毛が減る可能性は十分にあります。
しかし、抜け毛の原因はホルモンバランス、食生活、ストレスなど多岐にわたります。
シャンプーの見直しは非常に重要な第一歩ですが、それだけですべてが解決するとは限りません。生活習慣全体の見直しと併せて取り組むことが大切です。
- 頭皮が乾燥しやすいのですが、毎日シャンプーしても大丈夫ですか?
-
乾燥がひどい場合、洗浄力が強すぎるシャンプーを毎日使うのは避けるべきです。
しかし、洗浄力が非常にマイルドなアミノ酸系のシャンプーや、保湿成分が豊富に含まれたシャンプーを選べば、毎日洗っても問題ない場合が多いです。
むしろ、汚れを放置する方が頭皮環境を悪化させます。
シャンプー剤を使わずにお湯だけで洗う「湯シャン」を間に挟む日を作るなど、ご自身の頭皮の状態を観察しながら調整するのも一つの方法です。
- コンディショナーやトリートメントは頭皮につけても良いですか?
-
基本的に、コンディショナーやトリートメントは「髪の毛」を保護し、補修するためのものです。
多くの製品には油分やコーティング剤が含まれており、これらが頭皮に残ると毛穴詰まりの原因になる可能性があります。
毛先を中心に髪の毛だけにつけ、頭皮には直接つかないように注意しましょう。すすぎもシャンプー同様、念入りに行うことが重要です。
- シャンプーは朝と夜、どちらが良いですか?
-
シャンプーは「夜」に行うことを強く推奨します。日中に頭皮や髪に付着した汚れや皮脂、整髪料などをその日のうちにリセットすることが大切です。
また、髪の成長を促す成長ホルモンは夜寝ている間に分泌されます。就寝前に頭皮を清潔な状態にしておくことが、健やかな髪の育成につながります。
朝シャンは、時間がないとすすぎが不十分になりがちで、紫外線対策も不十分なまま外出することにもなるため、避けた方が良いでしょう。
- 育毛剤や発毛剤との違いは何ですか?
-
「シャンプー」は、頭皮や髪の汚れを落とし、清潔にする「洗浄」が目的です。
「育毛剤」(医薬部外品)は、今ある髪を健康に育て、抜け毛を「予防」することを目的とし、主に頭皮の血行促進や保湿を行います。
「発毛剤」(医薬品)は、毛母細胞に働きかけ、新しい髪を「生やす」ことを目的としています。
抜け毛が深刻な場合は、シャンプーでのケアと並行して、これらの使用を検討することも一つの選択肢です。
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