美髪を目指すときや薄毛が気になるときには、毎日使うシャンプーを良いものに変えたいと考える方も多いのではないでしょうか。
どのような成分が髪にいいのか、逆に悪い成分はあるのか、などシャンプーの成分に着目する方も増えているようです。
自分に合ったものを選ばないと、女性の薄毛や頭皮トラブルの原因になる可能性も否定できません。
この記事では、薄毛治療専門のクリニックが、頭皮と髪のために避けるべきシャンプーの悪い成分と、積極的に取り入れたいいい成分を詳しく解説します。
なぜ女性の薄毛にシャンプー選びが重要なのか
シャンプーは単に髪の汚れを落とすだけのものではありません。
頭皮の健康状態を左右し、それが髪の成長に直接影響を与えるため、特に薄毛に悩む女性にとってシャンプー選びは治療の第一歩とも言えるほど重要です。
頭皮環境と髪の成長の関係
健康な髪は、健康な頭皮という土壌から育ちます。
頭皮の血行が良く、必要な栄養が行き渡り、適度な皮脂と水分が保たれている状態が理想です。
しかし、頭皮環境が悪化すると毛根に十分な栄養が届かなくなり、髪が細くなったり、成長が止まって抜け毛が増えたりする原因となります。
間違ったシャンプーが引き起こす頭皮トラブル
洗浄力が強すぎるシャンプーや、肌に合わない成分を含むシャンプーを使い続けると、頭皮を守るために必要な皮脂まで奪い去ってしまいます。
それによって頭皮が乾燥し、バリア機能が低下します。
その結果、外部からの刺激に弱くなり、かゆみやフケ、炎症などのトラブルを引き起こしやすくなります。
女性の頭皮の特性とシャンプーの選び方
女性の頭皮は男性に比べて皮脂の分泌量が少なく、乾燥しやすい傾向があります。
また、ホルモンバランスの変動によっても頭皮の状態は変化しやすいです。
そのため、洗浄力がマイルドで保湿成分が配合された、頭皮への負担が少ないアミノ酸系シャンプーなどを選ぶことが大切です。
シャンプーの基本構成と洗浄成分の種類
シャンプーの品質は、その大半を占める「水」と「洗浄成分」によって決まります。
どのような洗浄成分が使われているかを知ることが、良いシャンプーを見分ける鍵となります。
水と洗浄成分が主役
シャンプーの成分表示を見ると、最初に「水」と記載されているものがほとんどです。
これは、製品に最も多く含まれている成分を最初に記載するというルールがあるためです。
そして、その次に記載されているのが、シャンプーの心臓部とも言える洗浄成分(界面活性剤)です。
この洗浄成分が、品質や価格を大きく左右します。
主な洗浄成分の種類と特徴
成分の種類 | 洗浄力 | 特徴 |
---|---|---|
アミノ酸系 | マイルド | 頭皮への刺激が少なく、保湿性が高い。 |
高級アルコール系 | 強い | 泡立ちが良いが、刺激が強く乾燥しやすい。 |
石けん系 | 強い | さっぱり感があるが、髪がきしみやすい。 |
アミノ酸系洗浄成分の特徴と役割
アミノ酸系洗浄成分は、人間の皮膚や髪のたんぱく質を構成するアミノ酸から作られています。
そのため肌への親和性が高く、刺激が非常に少ないのが特徴です。
必要なうるおいは残しつつ、余分な皮脂や汚れだけを優しく洗い上げるため、乾燥肌や敏感肌の女性、薄毛が気になる方の頭皮ケアに適しています。
石けん系・高級アルコール系洗浄成分との違い
高級アルコール系は安価で泡立ちが良いため市販のシャンプーに多く使われますが、洗浄力が強く脱脂力も高いため、頭皮の乾燥を招く場合があります。
石けん系はさっぱりとした洗い上がりが特徴ですが、アルカリ性のため髪のキューティクルが開きやすく、きしみやごわつきを感じるケースがあります。
【要チェック】女性の薄毛対策で避けたいシャンプーの悪い成分
頭皮環境を健やかに保つためには、刺激となる成分を避けることが重要です。
シャンプー選びの際に特に注意したい成分を確認しておきましょう。
刺激の強い洗浄成分
「ラウレス硫酸Na」や「ラウリル硫酸Na」といった高級アルコール系の洗浄成分は、非常に洗浄力が高い反面、頭皮への刺激も強い成分です。
必要な皮脂まで取り除いてしまい、頭皮の乾燥やかゆみ、フケの原因となる場合があります。
注意したい洗浄成分
成分名 | 分類 | 注意点 |
---|---|---|
ラウリル硫酸Na | 高級アルコール系 | 刺激が強く、乾燥を招きやすい。 |
ラウレス硫酸Na | 高級アルコール系 | ラウリル硫酸Naより刺激は弱いが注意が必要。 |
オレフィンスルホン酸Na | – | 高い洗浄力で、頭皮の乾燥を招くことがある。 |
これらの洗浄成分は「絶対に使ってはいけない」というわけではありませんが、髪や頭皮のことを考えるのであれば避けたほうが無難です。
頭皮の乾燥を招く可能性のある成分
配合量が多いエタノール(アルコール)は清涼感を与える一方で、揮発性が高く頭皮の水分を奪い、乾燥を助長する場合があります。
成分表示の早い段階で「エタノール」と記載があるものは、乾燥肌の方は注意が必要です。
毛穴詰まりの原因となりうるシリコン
シリコン(ジメチコン、シクロメチコンなど)は、髪の指通りを良くするコーティング剤です。
髪にとっては良い働きをするケースもありますが、すすぎ残しがあると頭皮に蓄積し、毛穴を塞いでしまう可能性があります。
これが、健康な髪の成長を妨げる一因になり得ます。
香料や着色料などの添加物
合成香料や合成着色料、防腐剤(パラベンなど)は、人によってはアレルギー反応や頭皮の刺激を引き起こす原因となります。
頭皮が敏感な状態にある場合は、これらの添加物が含まれていない、できるだけシンプルな処方のシャンプーを選ぶと良いでしょう。
【厳選】女性の頭皮と髪にいいシャンプーの成分
では逆に、どのような成分が含まれているシャンプーを選べばよいのでしょうか。
女性の薄毛対策で積極的に取り入れたい、頭皮と髪に良い影響を与える成分を紹介します。
保湿成分で頭皮のうるおいを保つ
頭皮の乾燥は、バリア機能の低下や過剰な皮脂分泌など、様々なトラブルの引き金になります。
ヒアルロン酸やコラーゲン、セラミドといった保湿成分が配合されたシャンプーは洗いながら頭皮にうるおいを与え、健やかな状態に保つのを助けます。
代表的な保湿成分
成分名 | 主な働き |
---|---|
ヒアルロン酸Na | 高い保水力で、頭皮にうるおいを与える。 |
加水分解コラーゲン | 頭皮の弾力を保ち、保湿する。 |
セラミド | 角質層の水分を保持し、バリア機能をサポートする。 |
血行を促す成分で髪の成長をサポート
髪の成長には、毛根にある毛母細胞に栄養を届けることが必要です。
血行促進作用のある成分は頭皮の血流を良くし、毛母細胞の活性化を助けます。
これにより、ハリとコシのある健康な髪が育ちやすくなります。
血行を促す成分
成分名 | 由来・働き |
---|---|
センブリエキス | リンドウ科の植物から抽出。頭皮の血行を促す。 |
ニンジンエキス | オタネニンジンから抽出。血行を良くし、新陳代謝を促す。 |
ビタミンE(トコフェロール) | 血行を促進し、抗酸化作用も持つ。 |
抗炎症成分で頭皮の炎症を抑える
頭皮のかゆみや赤みといった炎症は、抜け毛の直接的な原因にもなります。
グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)などの抗炎症成分は頭皮の炎症を鎮め、フケやかゆみを防ぐ効果が期待できます。
髪のハリ・コシを補う補修成分
年齢と共に細く弱々しくなりがちな女性の髪には、内部から補修する成分も大切です。
加水分解ケラチンやヘマチンなどは髪のダメージ部分に吸着して補修し、ハリやコシを与えてくれます。
敏感肌・乾燥肌の女性が特に注目したい成分
多くの情報があふれる中で、「自分に合うシャンプーが分からない」と感じる方は少なくありません。
特に頭皮がデリケートな敏感肌や乾燥肌の方は、より慎重な製品選びが必要となります。
刺激を最小限に抑える洗浄成分の選び方
「アミノ酸系なら安心」と一括りにするのではなく、その中でも特にマイルドな洗浄成分を選ぶことが重要です。
例えば、「ココイルグルタミン酸TEA」や「ラウロイルメチルアラニンNa」などはアミノ酸系の中でも特に刺激が少なく、保湿効果も高いとされています。
成分表示を見て、これらの成分が上位に記載されているかを確認しましょう。
特にマイルドなアミノ酸系洗浄成分
成分名 | 特徴 |
---|---|
ココイルグルタミン酸TEA | 非常にマイルド。しっとりとした洗い上がり。 |
ラウロイルメチルアラニンNa | 適度な洗浄力と低刺激性を両立。泡立ちも良い。 |
天然由来の保湿成分とその効果
化学的に合成された成分だけでなく、植物由来の天然エキスにも注目しましょう。
例えば、アロエベラ液汁やカミツレ花エキス、ローズマリー葉エキスなどは保湿効果に加えて抗炎症作用や抗菌作用を併せ持つものも多く、デリケートな頭皮を穏やかに整えてくれます。
なぜ「無添加」だけでは不十分なのか
「無添加」や「オーガニック」という言葉は安心感を与えますが、それだけで安全とは限りません。
何が無添加なのか(例:パラベン、香料、着色料など)は製品によって異なり、天然成分であってもアレルギーを引き起こす可能性があります。
言葉のイメージだけでなく、全成分を自分の目で確認し、合わない成分を把握することが大切です。
パッチテストの重要性と正しい方法
新しいシャンプーを使う前には、パッチテストを行うと良いでしょう。
絆創膏のガーゼ部分にシャンプーの原液を少量つけ、二の腕の内側など皮膚の柔らかい部分に貼り、24時間〜48時間様子を見ます。
赤みやかゆみが出なければ、頭皮に使用しても問題ない可能性が高いです。この一手間が、深刻な頭皮トラブルを防ぎます。
シャンプーの成分表示を確認する際のポイント
シャンプーボトルの裏にある成分表示は、製品の性格を知るための重要な情報源です。
「カタカナばかりで難しい」「何がなんだか分からない」と思ってしまいがちですが、読み解くためのいくつかのポイントを知っておきましょう。
成分表示のルールとは
成分は、配合量の多い順に記載するのが原則です。
つまり、表示の最初の方に書かれている成分ほど、その製品の主成分であり、製品の特性を大きく決めていると考えられます。
水を除いて、最初にどんな洗浄成分が来ているかを確認するのが基本です。
- 全成分表示
- 配合量の多い順に記載
- 1%以下の成分は順不同
自分の髪質や頭皮の状態に合わせた見極め方
成分の良し悪しは、使う人の状態によっても変わります。
例えば、皮脂が多いと感じる方はある程度洗浄力のあるものを、乾燥が気になる方は保湿成分が豊富なものを選ぶなど、自分の頭皮からのサインに合わせて成分を見極めることが、最も合った一本に出会う近道です。
頭皮タイプ別注目成分
頭皮タイプ | 注目したい成分 | 避けたい成分 |
---|---|---|
乾燥 | セラミド、ヒアルロン酸 | 高級アルコール系洗浄成分 |
脂性 | クレイ(泥)、炭 | 油分の多い保湿成分 |
敏感 | グリチルリチン酸2K | エタノール、合成香料 |
普段は肌ほど気にする機会がないかもしれませんが、この機会に自分がどの頭皮タイプに当てはまるのかを確認してみましょう。
正しいシャンプー方法が成分の効果を高める
どんなに良い成分のシャンプーを選んでも、使い方が間違っていては効果が半減してしまいます。
成分の効果を最大限に引き出すための、正しいシャンプーの手順を見ていきましょう。
シャンプー前のブラッシングと予洗い
シャンプー前には、まず乾いた髪を優しくブラッシングしましょう。髪の絡まりをほどき、ホコリや汚れを浮かせられます。
その後、38度程度のぬるま湯で1〜2分かけて頭皮と髪をしっかりと予洗いします。
これだけで髪の汚れの7割程度は落ちると言われ、シャンプーの泡立ちも格段に良くなります。
泡立てと洗い方のコツ
シャンプーは直接頭皮につけず、必ず手のひらでよく泡立ててから髪に乗せます。
洗う際は爪を立てず、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗いましょう。
ゴシゴシと強くこすると頭皮を傷つけ、炎症の原因になるので注意が必要です。
すすぎ残しを防ぐための注意点
シャンプー成分や汚れが頭皮に残ると、かゆみやフケ、ニオイの原因になります。
すすぎは「もう十分かな」と思ってから、さらに1分ほど時間をかけるのが目安です。
なかでも髪の生え際や耳の後ろはすすぎ残しが多い部分なので、意識してしっかりと洗い流してください。
ドライヤーでの乾かし方と頭皮ケア
濡れた髪はキューティクルが開いてダメージを受けやすい状態です。タオルで優しく水分を拭き取ったら、すぐにドライヤーで乾かしましょう。
頭皮から20cmほど離し、同じ場所に熱が集中しないようにドライヤーを動かしながら、根元から先に乾かすのがコツです。
完全に乾いたら、保湿ローションなどで頭皮のケアを行うとさらに効果的です。
よくある質問
「このシャンプーを使えば必ず薄毛が治る」「このシャンプーを使えば必ず髪がきれいになる」といった、特効薬のようなシャンプーはなかなかありません。
また、他の人にとってはとても良いシャンプーであっても、「自分には合わない」というものもあります。
そのため、口コミや評判、おすすめランキングなどは参考程度にとどめると良いでしょう。
「これ!」と思えるシャンプーに出会えるまでにはある程度の本数を試す必要があるかと思いますが、ご自身の髪質や頭皮の状態を確認し、それに合った成分が含まれるシャンプーを選びましょう。
- 薬用シャンプーと一般のシャンプーの違いは何ですか?
-
薬用シャンプー(医薬部外品)は、フケやかゆみを防ぐ、育毛、殺菌などの効果が認められた「有効成分」が一定の濃度で配合されています。
一方、一般のシャンプー(化粧品)は髪と頭皮を洗浄し、清潔に保つことを主な目的としています。
特定の悩みがある場合は、薬用シャンプーが選択肢の一つになります。
- シリコンは本当に髪に悪いのですか?
-
シリコンが一概に「悪い成分」というわけではありません。髪の表面をコーティングして指通りを良くし、摩擦によるダメージから守るという利点があります。
しかし、頭皮に付着してすすぎ残されると毛穴詰まりの原因になり得るため、薄毛が気になる方や頭皮環境を重視する方は、シリコンが含まれていない「ノンシリコンシャンプー」を選ぶほうが安心かもしれません。
- シャンプーは毎日したほうがいいですか?
-
基本的には、その日の汚れはその日のうちに落とすため、毎日シャンプーすることが推奨されます。
ただし、乾燥が非常に強い方や頭皮トラブルがある場合は、状態に応じて2日に1回にするなど調整が必要です。洗いすぎによる乾燥も良くありません。
ご自身の頭皮の状態を観察しながら頻度を決めていきましょう。
- 高価なシャンプーほど効果がありますか?
-
効果なシャンプーのほうが効果がありそうな気がしてしまいますが、価格と効果は必ずしも比例しません。
高価なシャンプーは、質の良い洗浄成分や豊富な美容成分を使用している傾向がありますが、最も重要なのは「自分の頭皮や髪質に合っているか」です。
価格に惑わされず、成分表示をしっかり確認して自分に合ったものを選ぶことが、健やかな頭皮への一番の近道です。
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