抗がん剤治療という大きな挑戦に臨む中で、副作用として現れる脱毛は、多くの女性にとって深い悩みの種となります。
特に「成長期脱毛症」は、治療開始後比較的早い時期に始まるため、心の準備ができないまま変化に直面することも少なくありません。
しかし、ご自身の身体に起こる変化のサインを早期に知り、適切に観察することで、不安を和らげ、主体的にケアに取り組むことができます。
この記事では、ご自身でできる症状のセルフチェック法を中心に、脱毛の初期症状から回復までの変化、そして心の準備について、専門的な視点から詳しく解説します。
成長期脱毛症(抗がん剤の副作用)の初期症状 – 見逃しやすいサインを知る
抗がん剤治療を開始して間もなく、髪や頭皮にはごく僅かな変化が現れ始めます。これらは脱毛が本格化する前の重要なサインですが、日常の中では見過ごしてしまうことも少なくありません。
ここでは、多くの方が経験する初期症状に焦点を当て、ご自身の変化にいち早く気づくためのポイントを解説します。
抜け毛の質と量の変化
ブラシや枕に残る髪の毛
朝起きたときやブラッシングの際に、いつもより抜け毛が多いと感じるかもしれません。これは成長期脱毛症の最もわかりやすい初期サインの一つです。
この段階ではまだ量はそれほど多くないかもしれませんが、毎日継続的に観察することが、変化を早期に捉える上で重要です。
正常なヘアサイクルで抜ける毛とは異なり、抗がん剤治療による抜け毛は、治療が始まってから急に増えるという特徴があります。
細く短い毛の増加
抜けた毛をよく観察してみてください。普段抜けるような太く長い毛だけでなく、まだ成長途中だったはずの細く短い毛が混じっていることに気づくかもしれません。
これは、活発に分裂していた髪の毛母細胞が、抗がん剤の副作用の影響を受け始め、正常に髪を成長させられなくなったサインです。このような質の変化は、脱毛が近づいていることを示唆しています。
頭皮の感覚的な違和感
ピリピリ・チクチクとした刺激感
脱毛が始まる前触れとして、頭皮に軽い痛みや、髪の根元が引っ張られるような違和感、あるいはピリピリとした刺激感を覚えることがあります。
これは「毛髪痛」とも呼ばれる症状で、治療の影響で頭皮の神経が敏感になっている兆候です。特に症状を感じやすいのは、髪をとかす時やシャンプーの時、寝返りをうった時などです。
軽いかゆみやむずむず感
頭皮の乾燥や、薬剤による軽い炎症反応の初期段階として、かゆみやむずむず感を感じることがあります。
この時点から、洗浄力がマイルドな低刺激のシャンプーへの切り替えを検討することも、今後の頭皮トラブルを防ぐための一つの対策となります。
ただし、かゆみが強い場合や赤みを伴う場合は、掻きむしらずに早めに医療者に相談しましょう。
髪全体のボリュームダウン
スタイリングがしにくくなる
髪全体のハリやコシがなくなり、普段通りにセットしてもすぐにペタッとしてしまうことがあります。これは、目に見える脱毛が始まる前の兆候として、髪一本一本が薬剤の影響で弱り始めている状態を示します。
髪に力が入らない、まとまりにくいといった変化は、ご自身が最も気づきやすいサインかもしれません。
頭皮の変化と感覚症状 – 脱毛前に現れる体感的な変化
脱毛が目に見えてわかる前から、頭皮は薬剤の影響を受けて変化し始めています。触れたり感じたりすることでわかるこれらのサインは、今後の頭皮ケアの指針を立てる上で非常に重要です。
ここでは、ご自身の感覚で捉えられる頭皮の変化について詳しく見ていきましょう。
頭皮の感覚過敏
触れると痛い「接触痛」
シャンプーやブラッシングだけでなく、枕に頭を乗せたり、手で軽く触れたりするだけで痛みを感じるようになります。これは頭皮が非常にデリケートになっている証拠です。
痛みを我慢して強い刺激を与えると、頭皮の炎症を悪化させる可能性もあるため、すべての動作を優しく行うことを心がけてください。
温度変化に対する敏感さ
シャワーの温度やドライヤーの風が、いつもより熱く、または冷たく感じることがあります。これは頭皮の知覚が過敏になっているためです。
シャワーはぬるめに設定し、ドライヤーは頭皮から離して冷風を使うなど、刺激を避ける工夫が必要です。
頭皮の色や状態の変化
頭皮の赤みや発疹
薬剤による炎症反応として、頭皮がうっすらと赤みを帯びることがあります。部分的に、あるいは全体的に赤くなることもあり、かゆみを伴うことも少なくありません。
このような状態の時は、頭皮を清潔に保つことが重要ですが、ゴシゴシ洗うのは禁物です。また、掻きむしると皮膚を傷つけ、細菌感染の原因にもなるため注意が必要です。
頭皮の乾燥とフケの増加
頭皮のバリア機能が低下し、水分が蒸発しやすくなるため、乾燥が進みます。その結果、皮脂の分泌バランスも崩れ、細かいフケのようなものが見られることがあります。
パラパラと落ちる乾いたフケは、乾燥が原因であることが多いです。このサインが見られたら、保湿を意識した頭皮ケアを本格的に始めるタイミングと言えるでしょう。
感覚症状と精神的ケアの関連性
不快感によるストレス
頭皮の痛みやかゆみといった不快な症状は、それ自体が大きなストレスとなり、気分を落ち込ませたり、眠りを妨げたりすることがあります。
これは身体的な問題だけでなく、心の健康にも影響します。したがって、これらの症状への対処は、精神的ケアの観点からも非常に重要です。
不快感を我慢せず、リラックスできるアロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたりして、心穏やかに過ごす時間を見つけることが大切です。
頭皮の感覚症状セルフチェックリスト
症状 | はい / いいえ | 頻度(毎日 / 時々など) |
---|---|---|
髪の根元に痛みを感じる | ||
頭皮がむずがゆい | ||
ドライヤーの風やシャワーがしみるように感じる | ||
頭皮に赤みがある |
髪質の変化パターン – 抜け始める前の髪の状態変化
薬剤は毛髪を作り出す毛母細胞に直接作用するため、脱毛が始まる前から髪そのものの質にも変化が現れます。
ご自身の髪に触れ、その手触りや見た目の変化を観察することで、脱毛の進行度合いをある程度予測できます。
髪のハリ・コシの低下
髪が細く、弱々しくなる
髪の主成分であるタンパク質の合成が、薬剤の影響で妨げられます。その結果、新しく生えてくる髪だけでなく、今ある髪一本一本も内部構造が脆くなり、細く弱々しくなっていきます。
そのため、全体的にボリュームが失われたように感じ、髪が地肌に張り付くような印象になることがあります。
切れ毛や枝毛の増加
髪の強度が低下することで、ブラッシングやシャンプー、タオルドライといった日常のわずかな刺激でも、髪が途中からプツッと切れてしまう「切れ毛」が増加します。
特に髪が濡れているときはダメージを受けやすいので、優しく扱う必要があります。毛先が裂ける「枝毛」も同様に増える傾向にあります。
髪の手触りの変化
パサつきや乾燥
髪の表面をうろこ状に覆っているキューティクルが、薬剤の影響でダメージを受けて剥がれやすくなります。
キューティクルが乱れると、髪内部の水分を保つ力が弱まり、髪がパサついて指通りが悪くなります。これまで使っていたトリートメントの効果を感じにくくなることもあります。
艶(つや)の喪失
髪の艶は、キューティクルが整っていて光を均一に反射することで生まれます。キューティクルがダメージを受けると、髪の表面がざらつき、光が乱反射するため、艶がなくなって見えます。
髪が健康を失っているサインとして、見た目にも分かりやすい変化の一つです。
脱毛前の髪質の変化の記録
変化のポイント | 以前の状態(例) | 現在の状態(記入例) |
---|---|---|
髪全体のボリューム | ふんわりしていた | ペタッとして地肌が透けて見える |
指通りの滑らかさ | サラサラだった | 毛先が引っかかる |
髪の艶 | 天使の輪ができていた | パサパサで光沢がない |
成長期脱毛症(抗がん剤の副作用)の進行段階 – 時期別の症状変化
成長期脱毛症は、治療の期間に応じて段階的に進行します。いつ、どのような変化が起こるのか、その全体像を把握しておくことは、心の準備と具体的な対策を立てる上で役立ちます。
ただし、使用する薬剤の種類や量、そして個人の体質によって症状の現れ方には大きな個人差があることを念頭に置いておきましょう。
治療開始から2~3週間 脱毛開始期
急激な抜け毛の始まり
多くの場合、最初の抗がん剤投与から2~3週間後に、脱毛が本格的に始まります。シャンプー時や朝起きた時に、これまでに経験したことのないほどの量の髪が抜けるようになります。
この時期は、視覚的な変化に最もショックを受けやすく、精神的ケアが特に重要になります。ご家族や友人に気持ちを話したり、医療スタッフに相談したりして、一人で抱え込まないようにしましょう。
脱毛開始期に備えておくと安心なこと
- 就寝時のヘアキャップやタオルの準備(抜け毛の飛散防止)
- 掃除の手間を減らすための排水溝ネットや粘着カーペットクリーナー
- 外出用のウィッグや帽子の着用シミュレーション
治療開始から1~2ヶ月 脱毛進行期
全体的な脱毛の進行
脱毛開始からさらに時間が経つと、頭髪の大部分が抜け落ち、頭皮がはっきりと見えるようになります。
脱毛の範囲は頭髪だけでなく、顔の印象に大きく関わる眉毛・まつ毛や、鼻毛、脇毛などの体毛にも及ぶことがあります。
この時期は、外見の変化が最も大きいため、アピアランスケアを積極的に活用して、自分らしい生活を維持することが大切です。
例えば、ウィッグでおしゃれを楽しんだり、帽子とアクセサリーをコーディネートしたりするのも良いでしょう。
脱毛進行期のケアのポイント
ケアの対象 | 具体的な行動 | 目的 |
---|---|---|
頭皮 | 低刺激の保湿剤で毎日ケアする | 乾燥・かゆみ・炎症の防止 |
精神面 | アピアランスケアの専門家に相談する | QOL(生活の質)の維持、自信の回復 |
全身 | 栄養バランスの取れた食事と十分な睡眠 | 治療を乗り切るための体力維持 |
治療終了後1~3ヶ月 回復初期
うぶ毛の発現
無事に治療が終わり、体から抗がん剤の副作用の影響が薄れてくると、回復への第一歩として、まず細く柔らかいうぶ毛が生え始めます。
これは、休んでいた毛母細胞が再び活動を始めた嬉しい兆しです。最初はまばらにしか生えてこないかもしれませんが、焦らずに見守りましょう。
治療終了後6ヶ月以降 回復・成熟期
本格的な発毛と髪質の変化
うぶ毛が生えそろった後、次第にしっかりとした髪が伸びてきます。しかし、以前とは異なり、強いくせ毛になったり、逆にくせ毛が直毛になったり、白髪が増えたりと、髪質が変化することが少なくありません。
この変化も個人差が大きく、多くは一時的なものですが、数年続く場合もあります。新しい髪質に合わせたヘアケアやスタイリングを楽しむ気持ちで向き合うと、前向きに過ごせます。
自宅でできる脱毛状況の確認方法 – 日常的なセルフチェックの手順
日々の暮らしの中でご自身の状態を客観的にチェックすることは、変化への早期対応と医療者への正確な情報伝達に繋がります。
ここでは、特別な道具を使わずに、誰でも簡単にできるセルフチェックの方法を紹介します。
ピローテスト(枕テスト)
朝起きたときの抜け毛を数える
毎朝、枕やシーツに落ちている抜け毛の本数を数える、あるいは量を比較する簡単な方法です。正確な本数を数えるのが難しければ、「昨日より多い/少ない」といった感覚的な記録でも構いません。
白い枕カバーなど、同じ色の寝具を使うと、抜け毛の量の変化がより分かりやすくなります。この方法は、日々の抜け毛の増減を手軽に把握するのに役立ちます。
ヘアプルテスト(毛髪牽引試験)の応用
指で優しく髪を引く
皮膚科で脱毛症の診断に用いる検査を、ご自宅で応用する方法です。清潔な指で、頭頂部や側頭部など、数か所の髪を20〜30本程度つまみ、毛先に向かって優しく、常に一定の力で引きます。
このとき何本の髪が抵抗なく抜けるかを確認します。脱毛が進行している時期は、軽い力で多くの髪が抜けます。頭皮を傷つけないよう、決して強く引きすぎないよう注意してください。
ヘアプルテストの目安
抜けた本数 | 脱毛の可能性の目安 |
---|---|
1〜2本 | 正常なヘアサイクルの範囲内 |
3〜5本 | 脱毛が始まっている可能性あり |
6本以上 | 成長期脱毛症が進行中と考えられる |
注:このテストはあくまで目安です。正確な診断は医療機関で行います。
洗髪時の抜け毛チェック
排水溝に集まる毛の量を確認
洗髪は、一日のうちで最も抜け毛が目立つタイミングです。シャンプー後の排水溝にたまる髪の毛の量を毎回確認しましょう。
手のひらに集めて量を比較したり、スマートフォンで写真を撮って記録したりすると、日々の変化が客観的にわかり、医療者に相談する際の資料としても活用できます。
鏡を使った頭皮と髪の観察ポイント – 見るべき箇所と注意点
鏡を使って頭皮や髪の状態を直接見ることは、セルフチェックの基本です。しかし、ただ漠然と眺めるのではなく、どこを、どのように見るべきかを知っておくことで、より多くの情報を得ることができます。
手鏡と洗面台の鏡などを合わせ鏡にすると、後頭部や見えにくい部分もチェックできます。
頭皮の色と健康状態
全体の色のチェック
健康な頭皮は、少し青みがかった白色をしています。治療の副作用で炎症が起きると、ピンク色や赤みを帯びてくることがあります。
また、血行不良になると黄色っぽくくすんで見えることも。頭皮全体の色合いを均一にチェックすることが大切です。
脱毛の進行パターン
生え際と分け目の変化
脱毛は、生え際や分け目など、もともと髪の密度が低い部分から目立ち始めることが多いです。以前のご自身の写真と比較すると、その変化が分かりやすいかもしれません。
分け目の幅が広がってきた、生え際が後退してきたように感じたら、それは脱毛が進行しているサインです。
全体的な密度の低下
部分的な脱毛だけでなく、頭部全体の髪の密度が均一に低下していないかを確認します。髪をかき分けて、地肌の見える範囲が以前より広がっていないかをチェックします。
特に頭頂部は自分では見えにくいため、ご家族に協力してもらうか、合わせ鏡を上手に使いましょう。
鏡を使った観察の記録項目
観察場所 | チェックポイント | 日付と所見(記入例) |
---|---|---|
頭頂部 | 分け目の幅、地肌の透け具合、色 | 6/20 分け目が5mmほど広がった気がする。少し赤い。 |
生え際(額) | 後退の有無、うぶ毛の状態 | 6/25 M字部分の髪が薄くなった。 |
側頭部 | 耳周りの脱毛の有無 | 6/28 耳の上が特に抜けている。 |
成長期脱毛症のセルフチェック記録法 – 変化を正確に把握する方法
感じたことや観察したことを記録に残すことは、ご自身の状態を客観的に把握し、不安を整理するために非常に有効な手段です。
また、その記録は、医師や看護師に症状を正確に伝えるための貴重な資料となります。
写真による記録
定点観測の重要性
人間の記憶は曖昧なため、写真で記録を残すことは最も客観的な方法です。毎週同じ曜日、同じ時間帯など、決まったタイミングで、同じ場所、同じ照明、同じ角度から頭部の写真を撮影しましょう。
正面、左右の側面、頭頂部、後頭部など、複数のアングルから撮っておくと、変化を多角的に比較できます。
写真撮影のポイント
- 自然光の入る明るい場所で撮影する
- 背景は白い壁など、ごちゃごちゃしていない場所を選ぶ
- 他の人に撮ってもらうか、セルフタイマーでピントをしっかり合わせる
ノートやアプリを使った日記形式の記録
記録すべき項目
専用のノートやスマートフォンのメモアプリなどを活用し、日々の変化を記録します。
日付、その日の体調、抜け毛の量(「多い」「少ない」や5段階評価など)、頭皮の症状(かゆみ、痛み、赤みの有無など)、髪質の変化、行った頭皮ケア(使用したシャンプーや保湿剤など)、そしてその日の気持ちなどを簡潔に記録しましょう。
精神的ケアとしての記録の活用
脱毛に対する不安や、外見の変化による辛い気持ちも、正直に書き出すことをお勧めします。
感情を文字にして外に出すことで、気持ちが整理され、自分を客観視できるようになります。これは有効な精神的ケアの一つです。
同時に、回復の兆し(うぶ毛を発見した日など)を見つけたときの喜びも記録しておくと、後で見返したときに大きな励みになります。
セルフチェック記録ノートの例
日付 | 抜け毛の量(5段階評価) | 頭皮の状態・気持ち |
---|---|---|
6月15日 | 2(少し増えた) | 頭皮に変化なし。まだ大丈夫かなと少し安心。 |
6月22日 | 4(明らかに多い) | シャンプーが怖い。頭皮がピリピリする。帽子を検索。 |
6月29日 | 5(ごっそり抜ける) | 朝起きて枕を見てショック。明日ウィッグを買いに行く。 |
眉毛・まつ毛・体毛の症状とチェック方法 – 頭髪以外の脱毛症状の確認
抗がん剤の副作用による脱毛は、頭髪だけに限りません。顔の印象を大きく左右する眉毛・まつ毛や、その他の体毛にも影響が及ぶことがあります。
これらの変化にも目を向け、アピアランスケアを含めた準備をしておきましょう。
眉毛の脱毛チェック
眉頭・眉山・眉尻の変化
眉毛は全体的にまんべんなく薄くなることが多いですが、人によっては特に眉尻から抜けていく傾向があります。毎日のメイクの際に、鏡で形や濃さの変化を確認しましょう。
「いつもより描き足す部分が増えた」「眉マスカラが乗りにくくなった」といった小さな変化がサインです。
アピアランスケアとしての眉メイク
脱毛が始まる前に、ご自身の眉の形を写真に撮っておいたり、アイブロウペンシルでガイドラインを描いて練習したりしておくことをお勧めします。後で眉を描く際の素晴らしいお手本になります。
これは、自分らしさを保つための有効なアピアランスケアの一環です。
まつ毛の脱毛チェック
本数と長さの確認
まつ毛が抜け始めると、目にゴミが入りやすくなったり、光をまぶしく感じたりといった機能的な問題も出てきます。
ビューラーを使った際に、いつもより多く抜けたり、切れやすくなったりしていないか、洗顔後にタオルに付着する本数が増えていないかなどを確認します。
機能面での対策
まつ毛の脱毛対策として、伊達メガネやフレームの大きいメガネ、色の薄いサングラスなどを活用すると、ホコリよけや眩しさの軽減に役立ち、同時に眉やまつ毛の脱毛を自然にカバーする効果も期待できます。
頭髪以外の脱毛ケア
部位 | 症状のサイン | ケア・対策のポイント |
---|---|---|
眉毛 | 薄くなる、まだらに抜ける | アイブロウペンシル、眉ティント、アートメイクの相談 |
まつ毛 | 抜ける、短くなる、切れやすくなる | メガネの活用、刺激の少ないアイメイク、つけまつ毛(要パッチテスト) |
鼻毛 | 鼻が乾燥する、鼻水が出やすい | マスクの着用、室内の加湿、ワセリン等での鼻腔内の保湿 |
症状の記録と医療者への報告方法 – 効果的な情報共有のコツ
セルフチェックで得た情報は、あなたにとって最適な治療やケアを受けるための重要な手がかりです。
診察の際に、ご自身の状態を的確に医師や看護師に伝えることで、より質の高いサポートを受けることができます。
伝えるべき情報の整理
「いつから、どこが、どのように」を具体的に
「最近、抜け毛が増えた」と漠然と伝えるのではなく、「1週間前から、シャンプーのたびに手のひらに一杯くらいの髪が抜けて、頭皮がピリピリします」のように、具体的な情報として整理しておきます。
「いつから(時間的経過)」「どこが(部位)」「どのように(症状の質と程度)」の3点を意識すると、情報が整理しやすくなります。
質問事項の事前準備
聞きたいことをリストアップしておく
診察時間は限られています。緊張して聞きたかったことを忘れてしまわないように、脱毛に関する不安や疑問点は、事前にメモにリストアップしておきましょう。
例えば、「この脱毛の期間はどのくらい続きますか」「この頭皮の痛みに対する対策はありますか」「回復期に気をつけることは何ですか」など、具体的な質問を用意しておくとスムーズです。
医療者への質問リスト例
- 今後の脱毛の進行予測について
- 頭皮冷却療法の適応や効果について
- 推奨されるシャンプーや保湿剤について
- 精神的ケアについて相談できる窓口の有無
精神的な不安も率直に伝える
心のつらさも大切な症状の一つ
身体的な症状だけでなく、脱毛による外見の変化がどれほどつらいか、どのような気持ちでいるかといった精神的ケアに関する側面も、遠慮なく伝えましょう。
医療者は、身体的な苦痛だけでなく、心の苦痛にも寄り添いたいと思っています。気持ちを言葉にすることで、適切なサポート(専門カウンセラーの紹介など)に繋がることもあります。
よくあるご質問(FAQ)
抗がん剤治療中の脱毛は、多くの方が経験する副作用ですが、その症状や進行には個人差があります。
ご自身の身体の変化にいち早く気づき、適切に対処していくためには、日々のセルフチェックがとても重要です。
もし、ご自身の症状について、より詳しく知りたい、専門的な視点からのアドバイスが欲しいと感じたら、「成長期脱毛症の原因と検査法 」をご覧いただき、ご自身の状態をより深く理解するための一助としてください。
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