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成長期脱毛症(抗がん剤の副作用)の治療法と予防

抗がん剤治療は、がんとの闘いにおいて非常に重要な役割を果たしますが、その副作用として現れる脱毛は、多くの女性にとって大きな精神的負担となります。

これは「成長期脱毛症」と呼ばれ、治療の過程で避けがたい変化として認識されています。

しかし、適切な知識を持ち、治療開始前から計画的に対策を講じることで、その影響を軽減し、前向きに治療期間を過ごすことが可能です。

この記事では、成長期脱毛症の原因を深く掘り下げるのではなく、具体的な予防法、医療機関で行う治療、そして日々のケア方法に焦点を当て、皆様が安心して治療に臨めるよう、専門的な観点から分かりやすく解説します。

成長期脱毛症(抗がん剤の副作用)の予防的ケア – 治療開始前からできること

抗がん剤治療が決定したその時から、脱毛への備えは始まります。治療が始まる前の限られた時間を有効に使い、心と身体の準備を整えることが、治療期間中のQOL(生活の質)を維持する上で非常に重要です。

この段階での準備が、脱毛という変化を乗り越えるための大きな支えとなります。

治療開始前の心構えと情報収集

まず大切なのは、脱毛について正確な情報を得て、漠然とした不安を具体的な対策に変えることです。

ご自身の治療で用いる抗がん剤がどの程度の脱毛を引き起こす可能性があるのか、担当医や看護師に確認しましょう。

脱毛が起こる時期や程度を事前に把握することで、精神的な準備ができます。

また、この原因が抗がん剤によるものであり、治療が終了すれば再発毛が始まる一時的な現象であることを理解することも、心を落ち着ける助けとなります。

脱毛に備えた具体的な準備

心の準備と並行して、物理的な準備も進めましょう。脱毛が始まってから慌てないよう、計画的に行動することが大切です。

事前のヘアカットの重要性

髪が長い方は、治療開始前にショートカットやベリーショートにしておくことを強く推奨します。

これは脱毛そのものを防ぐわけではありませんが、長い髪が大量に抜けるという視覚的な衝撃を和らげ、抜け毛の処理や日々のシャンプーの手間を大幅に軽減する効果があります。

また、ウィッグを着用する際にも、短い髪の方が扱いやすく、自然に馴染みます。

頭皮ケア用品の選定

治療中の頭皮は非常にデリケートになります。そのため、普段お使いのヘアケア製品が刺激になることもあります。脱毛が始まる前に、低刺激性で頭皮に優しい製品を準備しておきましょう。

特に、頭皮の乾燥を防ぐための保湿ローションは重要です。

アイテム選ぶポイント具体的な役割
シャンプーアミノ酸系、無香料、無着色、低刺激性頭皮の皮脂や汚れを優しく除去し、清潔に保つ
保湿剤アルコールフリー、敏感肌用、セラミド配合など乾燥やかゆみを防ぎ、頭皮のバリア機能を守る
日焼け止め頭皮用のスプレータイプ、低刺激性紫外線から無防備な頭皮を保護する

外見ケアアイテムの検討

脱毛期間中も自分らしく快適に過ごすために、外見をカバーするアイテムは心強い味方です。ウィッグや帽子は、その代表的なものです。

脱毛が本格的に始まる前に試着などを済ませておくと、いざという時に安心です。

特に医療用ウィッグは、地方自治体によっては購入費用に対する助成金制度が設けられている場合がありますので、お住まいの地域の情報を確認してみることをお勧めします。

頭皮冷却療法による脱毛予防 – 医療機関で行う物理的予防法

近年、抗がん剤による脱毛を完全に防ぐことは難しいものの、その程度を軽減するための積極的な予防法として「頭皮冷却療法」が注目を集めています。

これは、脱毛による外見の変化を少しでも抑えたいと考える方にとって、重要な選択肢の一つです。医療機関で専門の機器を用いて行います。

頭皮冷却療法の働き

この治療法は、抗がん剤を投与する際に、専用のキャップで頭皮を低温に保ちます。頭皮を冷却することで血管が収縮し、毛根周辺への血流が減少します。

その結果、髪の成長を担う毛母細胞に到達する抗がん剤の量を物理的に減らし、細胞が受けるダメージを軽減することで脱毛を抑制する効果が期待できます。

すべての薬剤やがん種に有効なわけではなく、効果には個人差があることを理解しておくことが大切です。

頭皮冷却療法の流れと注意点

頭皮冷却療法は、抗がん剤の点滴治療と同時に行います。治療全体の拘束時間が長くなることや、特有の感覚があることを事前に知っておきましょう。

治療当日の流れ

一般的に、抗がん剤の点滴が始まる前から冷却を開始し、点滴中、そして点滴終了後もしばらくの間、冷却を継続します。合計で数時間にわたって冷却キャップを装着することになります。

治療中は寒気や、キャップによる圧迫感、軽い頭痛を感じることがあります。ブランケットを用意してもらうなど、できるだけ快適に過ごせるよう医療スタッフに相談しましょう。

効果と限界の理解

頭皮冷却の最大の目的は、脱毛を「ゼロ」にすることではなく、「軽減」することです。

臨床研究では、この治療法によって半数以上の方がウィッグを必要としない程度に髪を維持できたという報告もありますが、効果を保証するものではありません。

また、脱毛した場合でも、治療後の再発毛が早まる傾向があるとも言われています。

費用と保険適用の現実

頭皮冷却療法を選択する上で、最も大きな検討事項の一つが費用です。この治療法は、残念ながら現在の日本では公的医療保険の保険適用外であり、全額が自己負担となります。

プラン費用の目安特徴
キャップ購入プラン初期費用+毎回の使用料治療回数が多い場合に割安になる可能性がある
レンタルプラン治療1回ごとの支払い初期費用がなく、気軽に始めやすい

医療費控除の対象について

頭皮冷却療法にかかる費用は、治療の一環として医師が必要と判断した場合には、医療費控除の対象となる可能性があります。

ただし、最終的な判断は税務署が行うため、領収書を保管し、確定申告の際に相談することをお勧めします。

外用薬による治療アプローチ – 頭皮に直接塗布する薬剤治療

抗がん剤治療が終了し、髪が再生を始める時期に合わせて、発毛を促進するための治療を開始することが可能です。その中で最も一般的なのが、頭皮に直接塗布するタイプの外用薬です。

医師の指導のもとで正しく使用することで、より早く、より健康な髪の回復をサポートします。

ミノキシジル外用薬の役割と効果

ミノキシジルは、もともと血圧を下げる薬として開発されましたが、その副作用として発毛効果が認められ、現在では男女問わず薄毛治療に広く用いられています。

頭皮の血行を促進し、毛母細胞に栄養を届きやすくすることで、休止期にある毛根を成長期へと導き、発毛を促す働きがあります。

女性におけるミノキシジルの使用

女性の薄毛治療においても、ミノキシジル外用薬は有効な選択肢です。日本では、女性向けに濃度を調整した1%の製品が市販薬として承認されています。

クリニックでは、患者さんの状態に合わせてより高濃度のものを処方することもあります。使用方法や濃度については、必ず医師の指示に従ってください。

使用開始の適切な時期

抗がん剤治療がすべて終了し、体調が安定してから使用を開始するのが一般的です。多くの場合、最後の抗がん剤投与から1〜2ヶ月後が目安となります。

治療中のデリケートな頭皮に使用すると、刺激や副作用のリスクがあるため、自己判断での使用は絶対に避けてください。いつから始めるかは、頭皮の状態を医師に診てもらった上で決定します。

項目内容注意点
効果血行促進、毛母細胞の活性化効果の発現には個人差があり、継続使用が必要
使用法1日2回、乾燥した頭皮に直接塗布用法・用量を守り、過剰に使用しない
副作用頭皮のかゆみ、かぶれ、初期脱毛など異常を感じたらすぐに使用を中止し、医師に相談

その他の外用薬と育毛剤

ミノキシジル以外にも、さまざまな育毛・発毛成分を含む外用薬があります。例えば、毛母細胞の分裂を促進する成分や、頭皮の炎症を抑える成分などが配合されたものです。

市販の育毛剤も多数ありますが、抗がん剤治療後のデリケートな頭皮には、刺激が強すぎるものもあります。

クリニックで処方される医薬品は、有効性と安全性が確認されているため、まずは専門医に相談することをお勧めします。

内服薬を用いた治療選択肢 – 体内からのアプローチによる改善法

外用薬と並行して、あるいは単独で、身体の内側から発毛をサポートする内服薬による治療も有効な選択肢です。

髪の成長に必要な栄養素を補給したり、発毛を促す成分を摂取したりすることで、より効果的な再発毛を目指します。

発毛をサポートする内服薬

発毛治療で用いられる内服薬には、髪の主成分であるケラチンの生成を助けるアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く配合した複合サプリメントや、血行を改善する薬などがあります。

これらは、頭皮環境を内側から整え、強く健康な髪が育つための土台作りをサポートします。

栄養補助としてのサプリメント

特に重要な栄養素は、髪の材料となるタンパク質(アミノ酸)、細胞分裂を助ける亜鉛、血行に関わる鉄分、頭皮の健康を保つビタミンB群などです。

当クリニックでは、これらの成分を効率よく摂取できるよう、医療機関専用の高品質なサプリメントを処方しています。

栄養素主な働き多く含む食品
タンパク質髪の主成分ケラチンの材料肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉
ビタミンB群頭皮の新陳代謝を促す豚肉、うなぎ、玄米

医師の処方が必要な薬剤

サプリメントだけでなく、より直接的に発毛に働きかける内服薬もあります。例えば、血流を改善して毛根への栄養供給を増やす薬や、ホルモンバランスに働きかける薬などです。

ただし、これらの薬は副作用のリスクも伴うため、必ず医師の診断と処方が必要です。個々の体質や健康状態を考慮した上で、最適な治療法を提案します。

内服薬治療のリスクと注意点

内服薬は全身に作用するため、予期せぬ副作用が現れる可能性もゼロではありません。

治療を開始する前には、医師から効果とリスクについて十分な説明を受け、理解した上で治療に臨むことが大切です。持病がある方や、他に薬を服用している方は、必ず事前に申し出てください。

物理療法と補完的治療法 – 薬物以外の治療手段

薬物治療に抵抗がある方や、さらなる効果を求める方のために、薬を使わない物理的なアプローチや補完的な治療法も存在します。

これらの治療は、外用薬や内服薬と組み合わせることで、相乗効果が期待できる場合もあります。

低出力レーザー治療(LLLT)の可能性

低出力レーザー治療は、特定の波長の弱いレーザー光を頭皮に照射する治療法です。このレーザー光が、毛根の深い部分にある細胞を活性化させ、血行を促進し、発毛をサポートすると考えられています。

痛みや熱さを感じることはほとんどなく、副作用のリスクが非常に低いのが特徴です。

家庭用のヘルメット型デバイスも市販されていますが、クリニックではより出力の高い医療機器を使用し、効果的な治療を行います。

頭皮へのマッサージとその効果

頭皮マッサージは、自分自身で手軽に行える頭皮ケアの一つです。

硬くなった頭皮をほぐし、血行を促進することで、リラクゼーション効果だけでなく、髪の成長に必要な栄養素が毛根に届きやすくなる環境を整えることができます。

正しい頭皮マッサージの方法

シャンプーの際に行うのが効果的です。指の腹を使い、頭皮をこするのではなく、頭蓋骨から頭皮を動かすようなイメージで、優しく揉みほぐします。

側頭部から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上に向かって行うと、血流促進に効果的です。1回数分程度、心地よいと感じる強さで行いましょう。

  • 爪を立てず、指の腹を使う
  • 強くこすらない
  • リラックスした状態で行う
  • 毎日少しずつ継続する

避けるべき間違ったケア

良かれと思って行っているケアが、かえって頭皮にダメージを与えていることもあります。

特に、ブラシで頭皮を強く叩いたり、爪を立ててゴシゴシ洗ったりする行為は、デリケートな頭皮を傷つけ、炎症やさらなる抜け毛の原因となるため、絶対に避けてください。

成長期脱毛症(抗がん剤の副作用)の毛髪再生促進法 – 回復を早める医学的手法

抗がん剤治療後の再発毛を、ただ待つだけでなく、より積極的に、そして医学的根拠に基づいて促進するための専門的な治療法があります。

これらのアプローチは、発毛のスピードを上げ、生えてくる髪の質を高めることを目指します。

再発毛を促すための専門的治療

当クリニックのような専門機関では、ご自身の血液や成長因子を利用した、より高度な毛髪再生医療を提供しています。

これらの治療は、休眠状態にある毛根に直接働きかけ、力強い発毛を促します。

治療法概要期待される効果
Harg療法ヒト脂肪幹細胞由来の成長因子を頭皮に注入毛母細胞の活性化、発毛促進
PRP療法自身の血液から抽出した多血小板血漿を注入自己修復能力を利用した毛根の再生

成長因子導入療法の概要

Harg療法などに代表される成長因子導入療法は、発毛や育毛に有効な様々な「成長因子(グロースファクター)」を、極細の針を用いて頭皮に直接注入する治療法です。

これにより、毛母細胞の働きが活性化され、発毛サイクルが正常化し、健康な髪の成長が促されます。抗がん剤治療後の弱った毛根に直接栄養を届ける、効果的な手段と言えます。

治療後の髪質変化への対応

抗がん剤治療後に生えてくる髪は、以前と髪質が変わり、くせ毛やうねりが強くなることがあります。これは「ケモカール」とも呼ばれ、多くの方が経験する現象です。

この新しい髪質に戸惑うかもしれませんが、多くは一時的なもので、時間が経つにつれて元の髪質に戻っていく傾向があります。再生治療は、こうした髪質の改善にも良い影響を与えることが期待されます。

治療効果を高める生活習慣の改善 – 日常でできる補助的ケア

どのような専門的な治療を受けても、その効果を最大限に引き出すためには、日々の生活習慣が土台となります。

特に食事、睡眠、ストレス管理は、健康な髪を育む上で非常に重要です。クリニックでの治療と並行して、ご自身の生活を見直してみましょう。

栄養バランスの取れた食事

髪は、私たちが食べたものから作られます。特に、髪の主成分であるタンパク質、そしてその合成を助けるビタミンやミネラルをバランス良く摂取することが、質の良い再発毛につながります。

偏った食事や過度なダイエットは避け、多様な食材から栄養を摂ることを心がけましょう。

質の高い睡眠とストレス管理

髪の成長は、主に睡眠中に活発になります。成長ホルモンが最も多く分泌される夜間に、十分な睡眠時間を確保することが大切です。

また、過度なストレスは血管を収縮させ、頭皮の血行不良を招きます。自分なりのリラックス方法を見つけ、心身ともに健やかな状態を保つことが、育毛環境を整える上で重要です。

日常の頭皮ケア

日々のセルフケアは、治療効果を左右する重要な要素です。特に、毎日のシャンプーと、乾燥や紫外線から頭皮を守るケアは欠かせません。

正しいシャンプーの方法

洗髪は、汚れを落とすだけでなく、頭皮の血行を促進するマッサージの機会でもあります。以下の手順で、優しく丁寧に行いましょう。

  • 洗う前にブラッシングで髪のもつれをほどく
  • ぬるま湯で頭皮と髪を十分に予洗いする
  • シャンプーは手のひらでよく泡立ててから髪につける
  • 指の腹で頭皮をマッサージするように洗う
  • すすぎ残しがないよう、時間をかけて丁寧に洗い流す

保湿と紫外線対策の徹底

洗髪後の頭皮は乾燥しやすいため、タオルで優しく水分を押さえた後、刺激の少ないローションなどでしっかりと保湿しましょう。

また、髪が少ないうちは頭皮が直接紫外線のダメージを受けやすくなります。

外出時には通気性の良い帽子をかぶる、頭皮用の日焼け止めを使うなど、対策を徹底することが、健康な頭皮環境を守り、将来のシミや皮膚がんのリスクを減らすことにも繋がります。

カテゴリ具体的な行動目的
食事タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く髪の栄養補給
睡眠1日6〜8時間を目安に質の良い睡眠を成長ホルモンの分泌促進
ケア正しいシャンプー、保湿、紫外線対策健やかな頭皮環境の維持

成長期脱毛症(抗がん剤の副作用)治療の継続管理 – 長期的な治療計画

抗がん剤治療後の発毛は、長い時間をかけて進んでいきます。

一時的な治療で終わらせるのではなく、長期的な視点で頭皮と髪の健康を管理し続けることが、美しい髪を取り戻し、維持するために重要です。

定期的な診察の重要性

髪が生えそろった後も、定期的に専門医の診察を受けることをお勧めします。

プロの目で頭皮の状態をチェックし、マイクロスコープで毛穴の状態や髪の太さを確認することで、ご自身では気づきにくい変化を早期に発見できます。

その時の状態に合わせて、ヘアケア方法や治療内容を調整し、最適な状態を維持するためのアドバイスを行います。

再発毛後のヘアケア

待ちに待った再発毛。新しく生えてきた大切な髪を健やかに育てるためのケアについて解説します。

新しい髪質との付き合い方

前述の通り、生え始めの髪は以前と髪質が異なることがよくあります。

くせが強くなったり、細く柔らかくなったりすることもありますが、その変化も個性と捉え、新しいヘアスタイルを楽しむ機会にすることもできます。

この時期の髪はまだデリケートなので、スタイリング剤も低刺激なものを選び、髪に負担の少ないヘアアレンジを心がけましょう。

ヘアカラーやパーマの再開時期

おしゃれを楽しみたい気持ちはよく分かりますが、ヘアカラーやパーマは頭皮と髪に大きな負担をかけます。再開する時期は慎重に判断する必要があります。

一般的には、抗がん剤治療終了後、少なくとも1年は待つことが推奨されています。再開する前には必ず担当医や、事情を理解してくれる美容師に相談し、頭皮の状態をチェックしてもらってからにしましょう。

期間主なケア内容目標
治療終了〜1年育毛治療、徹底した頭皮ケア、生活習慣の維持力強い再発毛の促進と定着
1年後〜定期的な診察、状態に合わせたケアの継続健康な髪と頭皮の長期的な維持

治療選択の判断基準 – 個人に適した方法の選び方

ここまで様々な治療法やケア方法を紹介してきましたが、どの方法がご自身にとって最適なのか、迷われる方も多いでしょう。

大切なのは、医学的な情報だけでなく、ご自身の価値観やライフスタイル、経済的な状況などを総合的に考慮して、納得のいく選択をすることです。

医師と相談しながら、自分だけの治療プランを組み立てていきましょう。

自身の希望とライフスタイルの考慮

「できるだけ早く髪を伸ばしたい」「費用は抑えたい」「通院は最小限にしたい」など、治療に対する希望は人それぞれです。

また、仕事や家庭の状況など、ご自身のライフスタイルに合った、無理なく続けられる方法を選ぶことが、治療を成功させるための鍵となります。

費用対効果と経済的負担

治療法の多くは公的医療保険の保険適用外であり、自己負担が発生します。それぞれの治療にかかる費用と、それによって得られると期待される効果をよく比較検討することが重要です。

無理な出費は、かえってストレスの原因になりかねません。

助成金制度の活用方法

繰り返しになりますが、医療用ウィッグの購入に関しては、多くの自治体で助成金制度が用意されています。これは経済的負担を軽減する上で非常に有効な制度です。

申請には、治療を証明する書類や領収書などが必要となります。

詳細は、お住まいの市区町村の役所や保健所の窓口、または公式ウェブサイトで「がん患者 アピアランスケア 助成」などのキーワードで調べてみてください。

医師との相談を通じた意思決定

最終的には、専門家である医師と十分に話し合い、ご自身の希望を伝え、医学的な観点からのアドバイスを受けることが、後悔のない選択につながります。医療機関が、一方的に治療法を押し付けることはありません。

患者様一人ひとりの想いに耳を傾け、複数の選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、ご自身で治療法を決定するプロセスをサポートします。

よくある質問 (Q&A)

最後に、患者様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

脱毛はいつから始まり、いつまで続きますか?

脱毛が始まる時期は、個人差や薬剤の種類によりますが、一般的には最初の抗がん剤投与から2〜3週間後です。

脱毛のピークは治療開始から1〜2ヶ月頃で、治療が終了すれば脱毛も止まります。

ウィッグはいつ準備すれば良いですか?また、助成金は使えますか?

ウィッグは、脱毛が始まる前の、まだご自身の髪があるうちに準備することをお勧めします。元の髪型に合わせやすく、精神的な安心にも繋がります。

多くの自治体で医療用ウィッグの購入費に対する助成金制度がありますので、お住まいの地域の情報を確認してください。

頭皮冷却をすれば、全く髪は抜けませんか?保険適用はされますか?

頭皮冷却は脱毛を「軽減」するための治療法であり、完全に抜けなくするものではありません。効果には個人差があります。

また、この治療法は公的医療保険の保険適用外となり、費用は全額自己負担です。

眉毛やまつ毛も抜けますか?対策はありますか?

はい、使用する薬剤によっては眉毛やまつ毛も脱毛することがあります。対策として、脱毛前にご自身の眉の形を写真に撮っておくと、眉を描く際の参考になります。

眉用のテンプレートや、目にゴミが入るのを防ぐための伊達メガネなども有効です。

治療が終われば、髪質は元に戻りますか?

再発毛した髪が、以前と異なる髪質(くせ毛など)になることは珍しくありません。

多くの場合、これは一時的なもので、1〜2年かけて徐々に元の髪質に戻っていく傾向がありますが、完全には戻らないこともあります。

新しい髪質に合わせたヘアケアやスタイリングを楽しむ視点も大切です。

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