つむじハゲの症状と他の薄毛との違い|正しい診断方法

つむじハゲの症状と他の薄毛との違い|正しい診断方法

鏡を見るたび、つむじ周りの地肌が以前より目立つように感じる方もいるのではないでしょうか。

「これって普通のつむじ?それとも薄毛の始まり?」という不安は、多くの女性が抱えるデリケートな悩みです。

この記事では、ご自身のつむじが健康な状態なのか、あるいは治療を考えた方がよい「つむじハゲ」なのかを判断するための具体的な見分け方を解説します。

さらに、他の女性の薄毛との違いや原因、専門クリニックで行う正しい診断方法までまとめます。

目次

もしかして「つむじハゲ」?女性が抱える頭頂部の不安

ふとした瞬間に撮影された写真や、美容室の鏡越しに自分の頭頂部を見て、「あれ?」と気になった経験を持つ女性は少なくないようです。

つむじはもともと地肌が見える部分ですが、その範囲が広がったり、髪の毛が細くなったりすると、「つむじハゲかもしれない」という深刻な悩みに変わります。

この悩みは、見た目の問題だけでなく、自信の喪失にもつながりかねない重要な問題です。

つむじが気になる瞬間

日常生活の中で女性が特につむじの状態を意識するのは、合わせ鏡で後頭部をチェックした時や、強い日差しの下で頭皮の透けを感じた時などです。

また、家族や友人から「つむじ、薄くなった?」と何気なく指摘され、深く傷ついてしまうケースもあります。

こうした経験が、一人で抱え込む悩みの始まりになることも多いのです。

正常なつむじとの境界線

そもそも、どこからが「ハゲ」で、どこまでが「正常」なのでしょうか。この境界線が曖昧なため、多くの女性は不確かな情報に振り回され、余計なストレスを抱えてしまいます。

正常なつむじは、毛流れの中心として地肌がある程度見えるのが自然な状態です。

しかし、その見え方には個人差があり、一概に「何センチ見えたら危険」と断定するのは難しいのが実情です。

なぜ女性のつむじは目立ちやすいのか

女性の髪は男性に比べて細く、一本一本のボリュームが少ない傾向にあります。

そのため、同じ本数でも地肌が透けて見えやすく、特につむじ周りの薄さが際立って感じられるときがあります。

また、加齢やホルモンバランスの変化は髪のハリやコシを失わせ、つむじ部分の印象をさらに弱々しく見せる要因となります。

髪型の変化とつむじ

髪型・習慣つむじへの影響対策
分け目を変えない同じ部分に負担が集中定期的に分け目を変える
ポニーテール頭皮が引っ張られる強く結びすぎない
ヘアアイロンの使用頭皮の乾燥・熱ダメージ頭皮から離して使用する

正常なつむじと危険なつむじハゲの見分け方

ご自身のつむじの状態を客観的に把握するために、いくつかのチェックポイントがあります。

スマートフォンなどで写真を撮り、以下の項目と見比べてみると良いでしょう。ただし、これはあくまでセルフチェックの目安であり、最終的な判断は専門医に委ねることが重要です。

地肌の見える範囲と色

まず確認したいのが地肌の見える範囲です。健康なつむじは渦の中心から地肌がうっすらと見える程度ですが、つむじハゲが進行すると、その範囲が明確に広がって見えます。

また、頭皮の色も大切なサインです。健康な頭皮は青白い色をしていますが、血行不良や炎症があると、赤っぽくなったり、黄色っぽくくすんだりする場合があります。

頭皮の色でわかる健康状態

頭皮の色状態考えられる原因
青白い健康的血行が良好
赤い炎症・うっ血日焼け、刺激、血行不良
茶色・黄色代謝の低下皮脂の酸化、生活習慣の乱れ

髪の毛の太さと密度

つむじ周りの髪の毛と、後頭部や側頭部など他の部分の髪の毛の太さを比べてみてください。

つむじハゲの兆候として、頭頂部の髪だけが細く弱々しくなっているケースがあります。これは「軟毛化」と呼ばれ、薄毛が進行しているサインの一つです。

同時に、全体の密度が低くなり、地肌がより透けて見えるようになります。

つむじの渦の明瞭さ

健康なつむじは、髪の毛がはっきりとした流れを作り、渦が明瞭です。一方、薄毛が進行すると、髪の毛がまばらになるため、渦の形がぼやけて不鮮明になります。

以前と比べてつむじの渦がはっきりしなくなったと感じるときは、注意が必要かもしれません。

つむじハゲと間違えやすい他の女性の薄毛タイプ

「つむじが薄い=つむじハゲ」と一括りに考えがちですが、女性の薄毛にはいくつかのタイプがあり、それぞれ原因や対処法が異なります。

代表的な薄毛のタイプとの違いを理解することは、適切な治療への第一歩です。

FAGA(女性男性型脱毛症)

FAGAは女性の薄毛で最も多い原因の一つで、男性のAGA(男性型脱毛症)と同様にホルモンの影響で髪の成長期が短くなり、軟毛化が進む症状です。

特に頭頂部や分け目の部分から薄くなる傾向が強く、つむじハゲもFAGAの一症状として現れるケースが非常に多いです。

進行性の脱毛症であるため、早期の対策が大切です。

びまん性脱毛症

びまん性脱毛症は、頭部全体が均一に薄くなるのが特徴です。特定の部位だけでなく、全体のボリュームダウンが気になる場合にこのタイプを疑います。

加齢やストレス、栄養不足や誤ったヘアケアなど、複数の要因が複雑に絡み合って発症する場合が多いとされています。

つむじだけでなく、全体的に髪が細くなったと感じるときは、こちらに該当する可能性があります。

主な女性の薄毛タイプ比較

脱毛症のタイプ主な症状特徴
つむじハゲ (FAGA)頭頂部・つむじの地肌が目立つ局所的に進行することが多い
びまん性脱毛症髪全体のボリュームが減少特定の部位に限らず全体的に薄くなる
牽引性脱毛症分け目・生え際が後退する髪を強く結ぶ習慣がある人に多い

牽引(けんいん)性脱毛症

いつも同じ場所で髪をきつく結んでいたり、分け目を固定していたりすると毛根に継続的な負担がかかり、その部分の髪が抜けてしまうのが牽引性脱毛症です。

この脱毛症は、つむじそのものよりは、分け目や生え際に現れる例が多いですが、つむじ周辺で髪を結ぶ習慣がある場合は症状が重なって見えることもあります。

女性のつむじハゲを引き起こす原因

女性のつむじ部分の薄毛は単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発生します。

ご自身の生活を振り返り、当てはまるものがないか考えてみましょう。

ホルモンバランスの乱れ

女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は、髪の成長を促進し、ハリやコシを保つ働きがあります。

しかし、加齢やストレス、出産や不規則な生活などによってエストロゲンの分泌が減少すると、相対的に男性ホルモンの影響が強まり、薄毛につながりやすいです。これがFAGAの主な発症要因です。

生活習慣の乱れと栄養不足

髪の毛は、私たちが食べたものから作られます。なかでもタンパク質やビタミン、ミネラルは健康な髪の育成に必要です。

過度なダイエットによる栄養不足や、外食やインスタント食品に偏った食生活は、髪に十分な栄養を届けられなくなり、薄毛の原因となります。

また、睡眠不足は髪の成長を妨げるため、質の良い睡眠を十分にとる工夫も大切です。

髪の健康に影響する生活習慣

要因髪への影響改善のポイント
食生活の偏り栄養不足で髪が細くなるタンパク質、ビタミン、亜鉛を意識
睡眠不足成長ホルモンの分泌が減る6時間以上の質の良い睡眠を目指す
喫煙血管収縮による血行不良禁煙を心がける

ストレスの影響

過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させます。

頭皮の血行が悪くなると髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛根まで届きにくくなり、抜け毛や薄毛を引き起こす一因となります。

仕事や家庭での悩みなど、現代社会でストレスを完全になくすのは非常に難しいですが、上手に発散する方法を見つけることが重要です。

頭皮環境の悪化

間違ったヘアケアも薄毛の原因になり得ます。洗浄力の強すぎるシャンプーで頭皮の皮脂を取りすぎたり、逆に洗い残しで毛穴を詰まらせたりすると頭皮環境が悪化し、健康な髪が育ちにくくなります。

また、カラーリングやパーマの頻度が高い場合も、頭皮や髪へのダメージが蓄積し、薄毛のリスクを高めるときがあります。

なぜ自己判断は危険?専門クリニックでの正しい診断が重要な理由

「たぶん大丈夫だろう」「もう少し様子を見よう」といった自己判断は、薄毛の悩みを深刻化させる可能性があります。

特に進行性の脱毛症の場合、時間が経つほど改善が難しくなるため、早期に専門家の視点を取り入れることが何よりも大切です。

原因の特定が治療の第一歩

前述の通り、女性の薄毛の原因は多岐にわたります。自己判断で市販の育毛剤を試しても、原因と合っていなければ期待する効果は得られません。

専門クリニックでは問診や視診、場合によっては血液検査などを通じて薄毛の根本原因を特定します。この正確な原因究明こそが、効果的な治療への最短ルートです。

隠れた病気の可能性

まれに、薄毛の背景に甲状腺疾患や膠原病(こうげんびょう)、貧血といった全身性の病気が隠れているケースがあります。

これらの病気は単なるヘアケアでは改善せず、専門的な治療が必要です。クリニックでの診断は、こうした病気の早期発見につながる可能性も秘めています。

クリニックでの主な診断方法

診断方法内容わかること
問診生活習慣、病歴、ストレスなどをヒアリング薄毛の背景にある要因を推測
視診・触診医師が頭皮や髪の状態を直接確認頭皮の色、硬さ、毛量、脱毛範囲
マイクロスコープ検査特殊なスコープで頭皮や毛穴を拡大して観察毛穴の状態、髪の太さ、皮脂の量

医学的根拠に基づく治療の選択

専門クリニックでは医師の監督のもと、医学的根拠に基づいた治療を提供します。

内服薬や外用薬の処方、頭皮への直接的なケアなど、一人ひとりの症状や原因に合わせたオーダーメイドの治療計画を立てます。

これは、エステサロンや自己流のケアでは決して得られない、医療機関ならではの強みです。

生活習慣に潜むつむじの薄毛リスク

ホルモンバランスや遺伝だけでなく、日々の何気ない習慣が知らず知らずのうちにつむじ周りの頭皮に負担をかけている場合があります。

「自分のことかも」と感じる項目がないか、一度立ち止まって考えてみましょう。

「ながらスマホ」と首の凝り

長時間、下を向いた姿勢でスマートフォンを操作する習慣がある方も多いでしょう。この姿勢は首や肩に極度の緊張を与え、「ストレートネック」を引き起こします。

首周りの筋肉が凝り固まると頭部への血流が滞り、頭皮が栄養不足に陥ります。

特に頭のてっぺんにあるつむじは、血行不良の影響を受けやすい部分です。寝る直前までベッドでスマホを見ている方は特に注意が必要です。

血行不良を招くNG習慣

習慣身体への影響頭皮への影響
長時間のデスクワーク肩や背中の凝り頭部への血流悪化
下を向いてのスマホ操作首の凝り、ストレートネック頭頂部への栄養供給の阻害
運動不足全身の血行不良頭皮を含む末端の血流低下

良かれと思ってやっている「洗いすぎ」

頭皮のべたつきを気にするあまり、一日に何度もシャンプーをしたり、爪を立ててゴシゴシ洗ったりしている方も見受けられます。

過剰な洗浄は、頭皮を守るために必要な皮脂まで奪ってしまいます。皮脂を失った頭皮は乾燥し、バリア機能が低下します。

この状態になると、外部からのわずかな刺激にも敏感になり、かえって皮脂を過剰に分泌しようとして頭皮環境の悪循環を招きます。

  • シャンプーは1日1回まで
  • 指の腹で優しく洗う
  • 熱すぎるお湯は避ける

「糖質」の多い食事と頭皮の糖化

甘いお菓子やジュース、白米やパンなどの精製された炭水化物を摂りすぎていないか振り返ってみましょう。

体内で余った糖質がタンパク質と結びつくと、「糖化」という現象が起こり、AGEs(終末糖化産物)という老化促進物質が生成されます。

このAGEsが頭皮で増えると、頭皮が硬くなったり、黄ぐすみしたりする原因となります。硬い頭皮では健康な髪は育ちにくく、薄毛のリスクを高めます。

クリニックでの診断から治療開始までの流れ

実際にクリニックを受診することに決めた場合、どのような流れで進むのかを知っておくと、不安も和らぎます。

ここでは、一般的な女性薄毛治療専門クリニックでの初診から治療開始までの流れを説明します。

予約と事前準備

まずは、電話やウェブサイトから初診の予約をします。多くのクリニックでは無料カウンセリングを実施しているので、気軽な相談から始められます。

受診当日は、普段の生活習慣や髪の悩みについて話せるように、事前に質問したいことなどをメモしておくとスムーズです。

カウンセリングと問診

専門のカウンセラーや医師が悩みを丁寧にヒアリングします。

いつから薄毛が気になり始めたか、生活習慣や過去の病歴、服用中の薬やご家族の髪の状態などを詳しく伝えてください。この情報は、原因を特定するための重要な手がかりとなります。

医師による診察と検査

次に、医師が頭皮や髪の状態を直接確認します。マイクロスコープを使って毛穴の状態や髪の密度をチェックし、脱毛の範囲や進行度を客観的に評価します。

必要に応じて、ホルモンバランスなどを調べるための血液検査を行う場合もあります。これらの診察結果を総合的に判断し、あなたの薄毛のタイプと原因を診断します。

治療法の選択肢

治療法概要期待される効果
内服薬薄毛の進行を抑制し、発毛を促す薬を服用FAGAの進行抑制、発毛促進
外用薬発毛効果のある成分を頭皮に直接塗布頭皮の血行促進、毛母細胞の活性化
注入治療髪の成長に必要な成分を頭皮に直接注入発毛・育毛効果の促進

治療計画の提案と決定

診断結果に基づき、医師からあなたに合った治療計画が提案されます。治療法の内容や期待できる効果、期間や費用などについて、詳しく説明を受けます。

メリットだけでなく、考えられる副作用やリスクについてもきちんと説明があるはずです。すべての内容に納得した上で、治療を開始するかどうかを決定します。

つむじハゲに関するよくある質問

さいごに、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。他にも疑問や不安な点があれば、カウンセリングの際に遠慮なくご質問ください。

つむじは遺伝しますか?

薄毛になりやすい体質は、遺伝的要因が関係する場合があります。ご両親や祖父母に薄毛の方がいる場合、ご自身もその体質を受け継いでいる可能性はあります。

しかし、遺伝がすべてではありません。生活習慣やヘアケアなど、後天的な要因も大きく影響するため、適切な対策を行うと薄毛の進行を抑制したり、改善したりすることは十分に可能です。

市販の育毛剤ではダメなのでしょうか?

市販の育毛剤は、主に頭皮環境を整えたり血行を促進したりしながら「今ある髪を健康に保つ」ことを目的としたものが多く、医薬部外品に分類されます。

一方で、クリニックで処方される治療薬(医薬品)は、発毛を促す有効成分が配合されており、「新しい髪を生やす」効果が認められています。

初期の薄毛であれば市販の育毛剤で効果を実感できる方もいますので、試してみる価値はあります。

ただ、原因や症状の進行度によっては市販品でのケアでは不十分な場合があるため、一度専門医に相談することをお勧めします。

治療を始めたらすぐに効果は出ますか?

髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」という生まれ変わりの周期があり、効果を実感するまでには時間がかかります。

治療を開始してから抜け毛の減少や産毛の発生といった初期の変化を感じるまでに3ヶ月、見た目の変化として効果を実感するまでには、少なくとも6ヶ月程度の期間を見るのが一般的です。

焦らず、根気強く治療を続けていきましょう。効果が出ているか不安であれば、遠慮せず医師に相談すると良いです。

治療に副作用はありますか?

クリニックで処方する医薬品には、効果がある一方で、副作用のリスクが伴う可能性もゼロではありません。

例えば、内服薬による初期脱毛(治療開始初期に一時的に抜け毛が増える現象)や、外用薬による頭皮のかぶれなどが報告されています。

多くのクリニックでは、治療開始前に医師が考えられる副作用について丁寧に説明し、治療中も定期的な診察で患者さんの体調をしっかり管理しますのでご安心ください。

参考文献

YE, Yujie, et al. Diagnosis and differential diagnosis of tertiary androgenetic alopecia with severe alopecia areata based on high‐resolution MRI. Skin Research and Technology, 2023, 29.7: e13393.

STARACE, Michela, et al. Female androgenetic alopecia: an update on diagnosis and management. American journal of clinical dermatology, 2020, 21: 69-84.

STEFANATO, Catherine M. Histopathology of alopecia: a clinicopathological approach to diagnosis. Histopathology, 2010, 56.1: 24-38.

HENNING, Ania; ALDRICH, Nely; WEAVER, Joshua. Square alopecia on the vertex scalp. International Journal of Dermatology, 2021, 60.7.

ROSSI, Alfredo, et al. Conditions simulating androgenetic alopecia. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2015, 29.7: 1258-1264.

ALESSANDRINI, A., et al. Common causes of hair loss–clinical manifestations, trichoscopy and therapy. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2021, 35.3: 629-640.

STRAZZULLA, Lauren C., et al. Alopecia areata: disease characteristics, clinical evaluation, and new perspectives on pathogenesis. Journal of the American Academy of Dermatology, 2018, 78.1: 1-12.

ZHANG, Xingqi, et al. Female pattern hair loss: clinico-laboratory findings and trichoscopy depending on disease severity. International journal of trichology, 2012, 4.1: 23-28.

この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

目次