シャンプーしても頭がかゆい女性へ。原因(乾燥・皮脂)と正しいシャンプー法

シャンプーしても頭がかゆい女性へ。原因(乾燥・皮脂)と正しいシャンプー法

毎日きちんとシャンプーしているのに、頭がかゆい。そんな悩みを抱える女性は少なくありません。

シャンプーしても頭がかゆい場合、その原因は頭皮の「乾燥」や「皮脂の過剰分泌」、あるいは「間違ったシャンプー方法」にある可能性が高いです。

頭皮はデリケートなため、洗浄力の強すぎるシャンプーや、すすぎ残し、熱いお湯での洗浄などが刺激となり、頭皮環境のバランスを崩してしまいます。

この記事では、なぜシャンプーしてもかゆみが出るのか、その主な原因である乾燥と皮脂の問題を深掘りし、頭皮環境を整えるための正しいシャンプー法、そして自分に合ったシャンプーの選び方まで、詳しく解説します。

かゆみの悩みから解放され、健やかな頭皮を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

なぜ?毎日シャンプーしても頭がかゆい主な原因

毎日シャンプーをして頭皮を清潔に保っているつもりでもかゆみが出るのは、頭皮の「バリア機能」が低下している重要なサインです。

頭皮が本来持つべき防御力が弱まり、外部からのわずかな刺激にも敏感に反応して、かゆみを引き起こしている状態と考えられます。

頭皮のバリア機能とは?

頭皮のバリア機能とは、肌の最も外側にある角質層が持つ、外部の刺激(紫外線・乾燥・化学物質・雑菌など)から内部を守り、同時に内部の水分が蒸発するのを防ぐ「盾」のような役割のことです。

この機能は、角質細胞間脂質(セラミドなど)や天然保湿因子(NMF)、そして適度な皮脂によって形成される皮脂膜によって維持されています。

このバランスが整っていると、頭皮は潤いを保ち、健やかな状態を維持できます。

しかし、何らかの理由でこのバリア機能が低下すると、頭皮は無防備な状態になり、かゆみやフケ、炎症などのトラブルを引き起こしやすくなります。

かゆみを引き起こす内的要因と外的要因

頭皮のかゆみを引き起こす要因は、体の内側と外側の両方に存在します。内的要因としては、ストレス、睡眠不足、不規則な食生活による栄養バランスの乱れ、ホルモンバランスの変化などが挙げられます。

これらは自律神経や免疫系に影響を与え、頭皮のターンオーバー(生まれ変わり)を乱したり、皮脂の分泌バランスを崩したりします。

外的要因としては、間違ったシャンプー習慣、洗浄力の強すぎるヘアケア製品の使用、紫外線によるダメージ、エアコンなどによる空気の乾燥、ヘアカラーやパーマによる化学的刺激などがあります。

シャンプーしてもかゆい場合、特にこの外的要因、中でも毎日のシャンプー習慣そのものを見直すことが重要です。

女性ホルモンの影響と頭皮環境

女性の頭皮環境は、女性ホルモン(特にエストロゲンとプロゲステロン)のバランスと密接に関連しています。エストロゲンは髪の成長を促進し、肌の潤いやコラーゲン生成をサポートする役割があります。

一方、プロゲステロンは皮脂の分泌を促す作用があります。生理周期、妊娠・出産、更年期などでホルモンバランスが変動すると、頭皮の状態も変化しやすくなります。

例えば、生理前に皮脂が増えてベタつきやかゆみを感じやすくなったり、更年期にエストロゲンが減少し頭皮が乾燥しやすくなったりします。

こうしたホルモンのゆらぎも、シャンプーだけでは解決しにくいかゆみの一因となることがあります。

あなたはどっち?頭皮のかゆみを引き起こす2大要因「乾燥」と「皮脂」

頭皮のかゆみの背景には、主に「乾燥」と「過剰な皮脂」という、一見すると正反対の2つの大きな原因が潜んでいます。どちらが自分の主な原因かを見極めることが、かゆみ対策の第一歩です。

誤った対策は、かゆみをさらに悪化させる可能性もあるため注意が必要です。

乾燥性頭皮の特徴とかゆみの出方

乾燥性頭皮は、皮脂と水分の両方が不足している状態です。バリア機能が著しく低下しているため、外部からの刺激に非常に敏感になっています。

シャンプー後、特に髪を乾かした後に強いかゆみやつっぱり感を感じることが多いのが特徴です。フケが出る場合、カサカサとした細かく白いフケ(乾性フケ)が見られます。

空気の乾燥する冬場や、エアコンの効いた室内に長時間いると、かゆみが強くなる傾向があります。

洗浄力の強いシャンプーを使い続けることで、必要な皮脂まで奪い去り、乾燥を助長しているケースが非常に多いです。かゆみの出方は、チクチク、ムズムズとした持続的なかゆみであることが多いです。

脂性頭皮(皮脂過剰)の特徴とかゆみの出方

脂性頭皮は、皮脂が過剰に分泌されている状態です。シャンプーしてもすぐに(半日〜1日程度で)髪や頭皮がベタつき、頭皮全体にジワジワとしたかゆみを感じることがあります。

この過剰な皮脂をエサにして、頭皮の常在菌であるマラセチア菌などが異常繁殖すると、その代謝物が頭皮を刺激し、かゆみや炎症(脂漏性皮膚炎など)を引き起こすことがあります。

フケが出る場合、ベタベタとした湿り気のある、黄色っぽいフケ(脂性フケ)が見られるのが特徴です。皮脂の酸化によるニオイも気になりやすいです。

皮脂が多いからと1日に何度もシャンプーしたり、ゴシゴシ洗いすぎたりすると、かえって皮脂分泌を促す悪循環に陥ることもあります。

自分は乾燥肌?脂性肌?簡易セルフチェック

どちらのタイプか迷う場合は、シャンプー後の頭皮の状態で判断するのが一つの目安です。

頭皮タイプ簡易チェック法

チェック項目乾燥性頭皮の可能性脂性頭皮の可能性
シャンプー後の感覚つっぱり感、かゆみを感じるさっぱりするが、数時間でベタつく
フケの状態カサカサした細かいフケベタっとした湿ったフケ
日中の頭皮乾燥してかゆいベタつきやニオイが気になる
髪の状態パサつきやすい根元がペタンとしやすい

上記はあくまで目安です。複数の特徴が当てはまる場合もあります。

混合肌(インナードライ)の可能性も

顔の肌と同じように、頭皮にも「混合肌(インナードライ)」の状態が存在します。これは、頭皮の内部(角質層)は乾燥しているのに、それを補おうとして表面の皮脂分泌が過剰になっている状態です。

この場合、「ベタつくのにかゆい」「フケも出る」といった、乾燥性と脂性頭皮の両方の悩みが現れることがあります。

このタイプの方が皮脂のベタつきだけに着目して洗浄力の強いシャンプーを使い続けると、内部の乾燥がさらに進み、バリア機能が低下してかゆみが悪化するという悪循環に陥りやすいです。

水分と油分のバランスを整える、丁寧な保湿ケアが重要になります。

間違ったシャンプーが原因かも?かゆみを悪化させるNG習慣

頭皮のかゆみに悩む女性の中には、良かれと思って続けている毎日のシャンプー習慣が、逆にかゆみを引き起こし、悪化させているケースが少なくありません。

頭皮のバリア機能を守るため、今すぐ見直したいNG習慣を解説します。

洗浄力が強すぎるシャンプーの使用

市販されているシャンプーの中には、泡立ちを良くし、汚れをしっかり落とすために、洗浄力が非常に強い「高級アルコール系(ラウレス硫酸Naなど)」の洗浄成分を主成分としているものがあります。

これらのシャンプーは、汚れだけでなく、頭皮を守るために必要な皮脂まで根こそぎ洗い流してしまうことがあります。

特に乾燥肌や敏感肌の方が使用すると、バリア機能が破壊され、乾燥とかゆみが一気に悪化する最大の原因となります。

洗い上がりが「さっぱり」を超えて「キュッキュッ」とする場合は、洗浄力が強すぎる可能性があります。

すすぎ残しによる頭皮への刺激

シャンプーやコンディショナー、トリートメントの成分が頭皮に残ってしまう「すすぎ残し」は、かゆみの大きな原因です。

特に髪の生え際、耳の後ろ、首筋(襟足)などは、意識してすすがないと成分が残りやすい場所です。

これらの洗い残った成分が毛穴に詰まったり、頭皮に付着し続けたりすることで、刺激となり、かゆみや炎症、雑菌の繁殖を引き起こします。

シャンプーにかける時間の2倍から3倍の時間を目安に、指の腹で頭皮を優しくこするようにしながら、ぬめり感が完全になくなるまで丁寧にすすぐことが大切です。

熱いお湯でのシャンプー

40℃を超えるような熱いお湯でシャンプーをすると、一瞬さっぱりして気持ちが良いかもしれませんが、頭皮には大きな負担となります。

熱いお湯は、頭皮に必要な皮脂を過剰に奪い去り、急激な乾燥を引き起こします。また、熱そのものが頭皮への刺激となり、炎症やかゆみを誘発することがあります。

さらに、熱によって頭皮が乾燥すると、体は「皮脂が足りない」と判断し、かえって皮脂の分泌を過剰にしてしまうこともあります。

シャンプーに最適な湯温は、体温より少し高めの38℃前後の「ぬるま湯」です。

爪を立ててゴシゴシ洗う

かゆいからといって、爪を立てて頭皮をゴシゴシと力強く洗うのは絶対にやめてください。

爪を立てることで頭皮の表面に無数の細かい傷がつき、そこから刺激物が侵入したり、雑菌が繁殖したりして、かゆみや炎症がさらに悪化します。

また、強い摩擦は頭皮のバリア機能を物理的に破壊してしまいます。

頭皮は顔の肌よりもデリケートな部分もあると認識し、シャンプーは「指の腹」を使って、優しくマッサージするように洗うことを徹底してください。

頭皮を傷つける洗い方の例

NGな洗い方頭皮への影響
爪を立てて洗う頭皮に傷がつき、炎症の原因となる
強い力でこする摩擦によりバリア機能が低下する
シャンプーブラシで叩くように洗う刺激により炎症やかゆみを誘発する

頭皮環境を整える「正しいシャンプー法」完全ガイド

頭皮のかゆみを抑え、健やかな頭皮環境を取り戻すには、毎日のシャンプーの方法を根本から見直すことが非常に重要です。

汚れはきちんと落としつつ、頭皮への負担は最小限に抑える「正しいシャンプー法」の具体的な手順を丁寧に解説します。

シャンプー前の「予洗い」が最も重要

シャンプーをつける前に、まず38℃程度のぬるま湯で頭皮と髪をしっかりと濡らす「予洗い」を行います。

この予洗いだけで、髪についたホコリやチリ、頭皮の余分な皮脂や汚れの約7割から8割は落とすことができると言われています。

予洗いを丁寧に行うことで、その後のシャンプーの使用量を減らすことができ、泡立ちも格段に良くなります。結果として、シャンプーによる頭皮への負担を軽減し、すすぎ残しも防ぎやすくなります。

指の腹を使って頭皮を軽くマッサージするようにしながら、1分から2分ほどかけて、頭皮全体にお湯を行き渡らせてください。

泡立てネット活用法。シャンプーは直接頭皮につけない

シャンプーの原液を直接頭皮につけると、その部分だけ成分が濃くなり、強い刺激になったり、すすぎ残しの原因になったりします。

シャンプーは必ず手のひらで取るか、可能であれば洗顔用の泡立てネットを使って、空気と水分を含ませながらしっかりと泡立ててください。

きめ細かい弾力のある泡を作ることで、泡がクッションとなり、洗髪時の髪同士の摩擦を防ぎ、頭皮への刺激を和らげます。

泡立てるのが苦手な方は、最初から泡で出てくるタイプのシャンプーを選ぶのも良い方法です。

指の腹を使った「マッサージ洗い」

十分に泡立てたシャンプーを髪全体になじませたら、爪を立てず「指の腹」を使います。

生え際から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上に向かって、頭皮を優しく動かすようにマッサージしながら洗います。

ゴシゴシと強くこするのではなく、毛穴の汚れを泡に溶かし出すようなイメージで行います。特にかゆみがある部分は、力を入れずに泡を乗せて優しくなでる程度に留めましょう。

頭皮全体を洗い終えるのに、1分から2分程度が目安です。髪の毛自体は、泡をなじませるだけで汚れは十分に落ちますので、強くこする必要はありません。

時間をかけるべき「すすぎ」のポイント

シャンプーにおいて、洗うこと以上に重要なのが「すすぎ」です。シャンプー剤やコンディショナーの成分が頭皮に残ると、それが刺激となってかゆみやフケ、ニオイの原因になります。

洗う時にかけた時間の2倍から3倍の時間を目安に、徹底的にすすぎましょう。

特に、泡が残りやすい耳の後ろ、もみあげ部分、襟足、髪の生え際は、指の腹で頭皮に触れながら、ぬめり感が完全になくなるまで丁寧に洗い流してください。

シャワーヘッドを頭皮に近づけると、水圧で効率よくすすぐことができます。

タオルドライとドライヤーの正しい手順

シャンプー後の濡れた頭皮は非常にデリケートです。また、濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすく、かゆみやニオイの原因になります。

まず、吸水性の高いタオルで、頭皮の水分を優しく押さえるように拭き取ります(タオルプレッシング)。ゴシゴシと擦るのは厳禁です。髪の毛はタオルで挟み込むようにして水分を取ります。

その後、すぐにドライヤーで乾かします。ドライヤーは頭皮から20cm以上離し、同じ場所に熱風が当たり続けないように小刻みに動かしながら、まず頭皮と髪の根元から乾かしていきます。

全体の8割から9割程度乾いたら、最後に冷風を当ててキューティクルを引き締めると、髪のダメージを防ぎ、まとまりが良くなります。

正しいシャンプーの手順まとめ

手順ポイント目安時間
予洗い38℃程度のぬるま湯で頭皮と髪をしっかり濡らす1〜2分
泡立て手のひらやネットで、きめ細かい泡を作る
洗う指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗う1〜2分
すすぎ生え際や襟足まで、ぬめりがなくなるまで徹底的に3分以上
乾燥タオルで優しく水分を取り、すぐにドライヤーで乾かす

かゆみ対策はシャンプー選びから。女性のための成分チェック

頭皮のかゆみ対策には、正しい洗い方と同時に、自分の頭皮タイプに合ったシャンプーを選ぶことが不可欠です。

特に注目したいのは、シャンプーの洗浄力と刺激性を左右する「洗浄成分(界面活性剤)」です。また、頭皮の潤いを守る「保湿成分」も重要です。

乾燥肌向けシャンプーの選び方

乾燥によるかゆみに悩む方は、まず現在お使いのシャンプーの洗浄力が高すぎないか見直してください。

必要な皮脂まで奪い去らない、マイルドな洗浄力のシャンプーを選ぶことが最優先です。

成分表示を見て、「ラウレス硫酸Na」や「ラウリル硫酸Na」、「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」などが成分表示の最初の方(水(精製水)の次)に記載されているシャンプーは、洗浄力が強い傾向があるため、避けた方が賢明です。

代わりに、「アミノ酸系」や「ベタイン系」の洗浄成分を主成分としたシャンプーを選びましょう。

また、セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、グリセリンなどの保湿成分が豊富に配合されているものが望ましいです。

乾燥肌が避けたい洗浄成分の例

成分系統主な成分名表示例
高級アルコール系ラウレス硫酸Na、ラウリル硫酸Na
オレフィン系オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
石けん系石けん素地、カリ石ケン素地、脂肪酸Na

脂性肌向けシャンプーの選び方

皮脂によるベタつきやかゆみに悩む方は、余分な皮脂や汚れをきちんと落としつつも、頭皮への刺激が強すぎないシャンプーを選ぶ必要があります。

皮脂を落としたいからといって、洗浄力が強すぎるシャンプーを使い続けると、かえって皮脂が過剰に分泌される悪循環を招くため注意が必要です。

「石けん系」のシャンプーは洗浄力が高く、さっぱりとした洗い上がりを好む方に向いていますが、アルカリ性で髪がきしみやすいため、リンスやコンディショナーでのケアが重要です。適度な洗浄力を持つ「高級アルコール系」も選択肢になりますが、その中でもアミノ酸系やベタイン系の成分と組み合わせるなど、マイルドに調整されている製品を選ぶと良いでしょう。

また、皮脂のバランスを整える成分や、殺菌・抗炎症成分(ピロクトンオラミン、グリチルリチン酸2Kなど)が配合された薬用シャンプー(医薬部外品)も有効な選択肢です。

敏感肌・かゆみが強い時の選択肢「アミノ酸系」

現在かゆみが強い方、乾燥肌・敏感肌の方は、まず「アミノ酸系」の洗浄成分を主成分としたシャンプーを試してみることをお勧めします。

アミノ酸系シャンプーは、人間の皮膚や髪と同じアミノ酸(タンパク質)から作られており、弱酸性で頭皮への刺激が最もマイルドな洗浄成分の一つです。

汚れは優しく落としながらも、頭皮に必要な潤いや皮脂は残してくれるため、バリア機能の回復をサポートします。泡立ちが控えめな製品もありますが、予洗いをしっかり行えば問題なく洗えます。

主なアミノ酸系洗浄成分の例

  • ココイルグルタミン酸TEA
  • ラウロイルメチルアラニンNa
  • ココイルメチルタウリンNa

頭皮の潤いを守る保湿成分

シャンプーを選ぶ際は、洗浄成分だけでなく、どのような保湿成分が配合されているかもチェックしましょう。

特に乾燥によるかゆみがある場合は、頭皮の水分を保持し、バリア機能をサポートする成分が重要です。

注目したい保湿成分

保湿成分の例期待できる役割
セラミド(ヒト型セラミドなど)角質層の水分を保持し、バリア機能を強化する
ヒアルロン酸Na高い保水力を持ち、頭皮に潤いを与える
グリセリン、BG基本的な保湿剤として、水分を保持する
植物エキス(アロエベラ液汁など)保湿作用や抗炎症作用が期待できる

シャンプー以外の日常生活で見直したいかゆみ対策

頭皮のかゆみは、シャンプー習慣だけでなく、日々の生活習慣全体が大きく影響しています。

体の内側から健やかな頭皮を育むために、食事、睡眠、ストレス管理など、日常生活で見直したいポイントを解説します。

栄養バランスの取れた食事

健やかな頭皮や髪は、私たちが食べたものから作られています。栄養バランスが偏ると、頭皮のターンオーバーが乱れたり、皮脂の分泌が過剰になったりします。

特に、脂っこい食事や糖質の多い食事、刺激物ばかりを摂取していると、皮脂の分泌が促され、かゆみの原因となります。

頭皮環境を整えるためには、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが大切です。

頭皮ケアに必要な栄養素の例

栄養素期待できる役割多く含む食品例
タンパク質髪や皮膚の主成分肉、魚、卵、大豆製品
ビタミンB群皮脂バランスの調整、代謝のサポート豚肉、レバー、うなぎ、青魚、納豆
ビタミンA・C・E抗酸化作用、血行促進、頭皮の健康維持緑黄色野菜、果物、ナッツ類

質の高い睡眠の確保

睡眠不足は、頭皮環境にとって大敵です。私たちが眠っている間、特に「睡眠のゴールデンタイム」(入眠から約3時間)には、成長ホルモンが活発に分泌されます。

この成長ホルモンは、日中に受けた頭皮や髪のダメージを修復し、肌のターンオーバーを促進する重要な役割を担っています。

睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、この修復作業が十分に行われず、頭皮のバリア機能が低下し、かゆみや乾燥などのトラブルを引き起こしやすくなります。

毎日6〜7時間程度のまとまった睡眠時間を確保し、就寝前のスマートフォン操作を控えるなど、質の高い睡眠を心がけましょう。

ストレスマネジメント

過度なストレスは、自律神経のバランスを崩します。自律神経のうち、緊張状態の時に優位になる「交感神経」が働き続けると、血管が収縮して頭皮の血行が悪くなります。

血行不良になると、頭皮に十分な栄養や酸素が行き渡らなくなり、ターンオーバーが乱れたり、バリア機能が低下したりします。

また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、皮脂の過剰分泌を引き起こすこともあります。

日常生活でストレスをゼロにすることは難しいですが、適度な運動をする、趣味の時間を持つ、リラックスできる入浴法を取り入れるなど、自分なりの方法でストレスを上手に発散させることが重要です。

紫外線対策の重要性

顔や腕の日焼けは気にしていても、頭皮の紫外線対策は見落としがちです。頭皮は体の最も高い位置にあり、髪の毛で守られているとはいえ、分け目やつむじの部分は直接紫外線を浴び続けています。

紫外線を浴びた頭皮は、日焼けによって炎症を起こすだけでなく、乾燥が進み、バリア機能が低下します。また、活性酸素が発生し、頭皮の細胞がダメージを受けてしまいます。

これらすべてがかゆみや炎症の原因となります。

外出時には帽子をかぶる、日傘をさす、頭皮用の日焼け止めスプレーを使用するなど、年間を通して紫外線対策を行うことが、健やかな頭皮を保つために必要です。

それでもかゆみが治まらない時に考えるべきこと

正しいシャンプー法を実践し、生活習慣を見直しても、頭皮のかゆみが一向に改善しない、あるいは悪化する場合は、セルフケアの範囲を超えた別の原因が隠れている可能性があります。

無理をせず、専門家への相談も検討しましょう。

皮膚科専門医への相談

2週間以上セルフケアを続けてもかゆみが改善しない場合や、かゆみが非常に強い場合、フケが大量に出る場合、赤み・湿疹・ただれなどが見られる場合は、速やかに皮膚科専門医を受診してください。

自己判断でケアを続けると、症状を悪化させてしまう可能性があります。

専門医であれば、マイクロスコープなどで頭皮の状態を正確に診断し、かゆみの根本原因を特定して、適切な治療薬(ステロイド外用薬や抗真菌薬など)を処方してくれます。

自分の頭皮タイプを正確に知るためにも、一度専門医の診断を受けることは有益です。

考えられる頭皮の疾患(脂漏性皮膚炎など)

シャンプーしてもかゆい原因が、単なる乾燥や皮脂過剰ではなく、特定の皮膚疾患である可能性もあります。代表的なものに「脂漏性皮膚炎」があります。

これは、皮脂の多い部分(頭皮、顔のTゾーンなど)に起こる湿疹で、皮脂をエサにする常在菌(マラセチア菌)が異常繁殖することが一因と考えられています。

ベタついたフケとかゆみ、赤みを伴うのが特徴です。その他にも、アトピー性皮膚炎が頭皮に出ている場合や、乾癬(かんせん)、しらみなど、さまざまな原因が考えられます。

これらは専門的な治療が必要です。

ヘアカラーやパーマの影響

ヘアカラー剤やパーマ液に含まれる化学物質(ジアミン色素、アルカリ剤など)は、頭皮にとって非常に強い刺激となります。

施術中や施術後に一時的にかゆみが出るだけでなく、施術を繰り返すことで頭皮のバリア機能が徐々に破壊され、慢性的な乾燥や敏感状態を引き起こすことがあります。

もし、ヘアカラーやパーマをした後からかゆみが始まった、あるいは強くなったと感じる場合は、それが原因である可能性が高いです。

美容師に相談し、低刺激の薬剤に変えてもらう、頭皮に薬剤をつけない「ゼロテク」で施術してもらう、施術の頻度を空けるなどの対策が必要です。

アレルギー(接触性皮膚炎)の可能性

シャンプーやトリートメント、スタイリング剤、育毛剤など、頭皮に触れる何らかの製品に含まれる特定の成分に対してアレルギー反応(接触性皮膚炎)を起こしている可能性もあります。

この場合、原因となっている製品の使用を中止しない限り、かゆみは改善しません。急にシャンプーを変えたタイミングでかゆみが出た場合などは、その製品が合わない可能性を疑いましょう。

原因物質を特定するためには、皮膚科でパッチテストを受けることが有効です。かゆみが出た場合は、新しい製品の使用をすぐに中止し、シンプルなケアに戻して様子を見てください。

シャンプーしても頭がかゆい悩みに関するよくある質問

シャンプーしても頭がかゆい女性から寄せられる、よくあるご質問にお答えします。

フケも一緒に出る場合はどうしたらいいですか?

フケには、頭皮の乾燥が原因の「乾性フケ」(カサカサと細かい)と、皮脂の過剰分泌が原因の「脂性フケ」(ベタッと湿っている)があります。

まずご自身のフケがどちらのタイプか観察してください。乾性フケの場合は、洗浄力のマイルドなアミノ酸系シャンプーに変え、保湿成分(セラミドなど)配合のローションなどで頭皮の保湿ケアを行ってください。

脂性フケの場合は、余分な皮脂を洗い流しつつ、皮脂の常在菌(マラセチア菌)の繁殖を抑える抗真菌成分(ミコナゾール硝酸塩など)が配合された薬用シャンプーを試す価値があります。

どちらか判断がつかない、あるいはフケの量が異常に多い場合は、脂漏性皮膚炎などの可能性もあるため、皮膚科医に相談してください。

育毛剤やトリートメントがかゆみの原因になることはありますか?

はい、可能性はあります。

特に育毛剤には、アルコール(エタノール)が高濃度で配合されている製品があり、それが頭皮の水分を奪って乾燥させたり、敏感な頭皮に刺激となったりして、かゆみを引き起こすことがあります。

また、トリートメントやコンディショナーは、本来髪の毛をコーティングするためのものです。

これらの成分が頭皮に付着し、すすぎ残されると、毛穴を塞いだり刺激になったりしてかゆみの原因となります。

トリートメント類は頭皮につかないよう、毛先中心に使用し、徹底的にすすぐことを心がけてください。

もし特定の製品を使い始めてからかゆみが出た場合は、使用を一時中断してみてください。

シャンプーは朝と夜、どちらが良いですか?

一般的には、夜(就寝前)のシャンプーを推奨します。理由は2つあります。

1つ目は、日中に頭皮や髪に付着した皮脂、汗、ホコリ、スタイリング剤などの汚れを、その日のうちにリセットし、頭皮を清潔な状態にしてから休むことができるためです。

汚れが付着したまま寝てしまうと、雑菌が繁殖しやすく、かゆみの原因になります。

2つ目は、夜(特に就寝中)は成長ホルモンの分泌が活発になり、頭皮のターンオーバー(生まれ変わり)やダメージ修復が行われる時間帯であるため、シャンプーで頭皮環境を整えておくことが、その働きをサポートすることにつながるからです。

朝シャンは、必要な皮脂まで洗い流してしまい、無防備な状態で紫外線などを浴びることになるため、かゆみがある場合は避けた方が無難です。

かゆい時に頭皮を冷やしても良いですか?

かゆみが我慢できない時に、一時的にかゆみを鎮める目的で、水で濡らして固く絞ったタオルや、タオルで包んだ保冷剤などを頭皮に軽く当てることは問題ありません。

冷やすことで炎症による熱感が和らぎ、かゆみの知覚が鈍くなるため、一時的に楽に感じることがあります。ただし、これは対症療法であり、かゆみの根本的な解決にはなりません。

また、冷やしすぎると頭皮の血行不良を招く可能性もあるため、短時間にとどめてください。

爪を立てて掻きむしるよりは良い対処法ですが、まずは保湿ケアやシャンプーの見直しなど、かゆみの原因を取り除くケアを優先してください。

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