以前とは違う髪のボリュームに気づき、不安な気持ちを抱えていませんか。「分け目が目立つようになった」「洗髪時の抜け毛が増えた気がする」といった悩みは、多くの女性が密かに抱えています。
いざ相談しようと思っても「病院の何科に行けばよいのか」「皮膚科と専門のクリニック、どちらが自分に合っているのか」という疑問が最初の壁となり、行動を先延ばしにしてしまうケースが少なくありません。
結論からお伝えします。頭皮の炎症や円形脱毛症など明らかな疾患が疑われる場合は「一般皮膚科」、髪全体のボリュームダウンや加齢に伴う変化、美的な改善を望む場合は「薄毛治療専門クリニック」を選ぶことが重要です。
この記事では、それぞれの特徴や治療内容、費用の違いを詳しく解説し、あなたが納得して治療を始められるよう正しい情報をまとめます。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
薄毛の原因と症状から判断する受診すべき医療機関の選び方
自分の症状がどの医療機関に適しているのかを判断するには、まず現在起きているトラブルの原因を見極める必要があります。
抜け毛や薄毛といってもその要因は多岐にわたり、自己判断で間違ったケアを続けると時間を浪費してしまう可能性があります。
一般皮膚科は主に「病気の治療」を行い、専門クリニックは「髪を育てる」や「見栄えの改善」に重きを置いています。
ご自身の症状が「頭皮のトラブル」に起因するものなのか、それとも「ヘアサイクルの乱れ」や「ホルモンバランス」によるものなのかを冷静に観察することが、正しい選択への第一歩です。
頭皮の炎症や急激な脱毛は一般皮膚科が適している
頭皮に明らかな赤みや痒み、フケの大量発生が見られる場合、それは脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患が原因で抜け毛が起きている可能性があります。
また、ある日突然コインのような円形の脱毛斑ができる「円形脱毛症」は、自己免疫疾患の一種として扱います。
このように、病名がつくような頭皮の異常や急性の症状に関しては、健康保険が適用される一般皮膚科での治療が必要です。
皮膚科医は頭皮の状態をマイクロスコープなどで観察し、炎症を抑える外用薬や内服薬を処方して、マイナスの状態をゼロ(健康な状態)に戻す治療を行います。
まずは頭皮環境の正常化が、抜け毛を止めるための確実な手段となります。
全体のボリュームダウンやびまん性脱毛症は専門クリニックへ
一方で、特定の箇所ではなく全体的に髪が細くなり、地肌が透けて見えるような状態は「びまん性脱毛症」や「FAGA(女性男性型脱毛症)」と呼ばれます。
これらは病気というよりも、加齢やホルモンバランスの変化、ストレスや栄養不足などが複雑に絡み合ってヘアサイクルが短くなるために生じます。
こうした症状に対しては、単に炎症を抑えるだけでは発毛を促すのは難しく、髪の成長因子を補ったり、発毛指令を出す細胞を活性化させたりする積極的な取り組みが求められます。
症状別・推奨される受診先の目安
| 自覚症状・悩み | 考えられる主な原因 | 推奨される受診先 |
|---|---|---|
| 突然、円形の脱毛斑ができた | 円形脱毛症(自己免疫疾患など) | 一般皮膚科 |
| 頭皮が赤く痒い、フケが多い | 脂漏性皮膚炎、接触性皮膚炎 | 一般皮膚科 |
| 分け目が広がり、全体的に薄い | FAGA、びまん性脱毛症 | 専門クリニック |
| 髪が細くなりハリ・コシがない | 加齢、ホルモンバランスの乱れ | 専門クリニック |
| 産後の抜け毛が長引いている | 分娩後脱毛症、栄養不足 | 専門クリニック(または経過観察) |
専門クリニックでは、こうした「髪を太く長く育てる」ための多角的な治療メニューを用意しており、美容的な観点も含めた改善を目指せます。
産後の抜け毛や一時的な不調に対する考え方
出産後に多くの女性が経験する「分娩後脱毛症」は、妊娠中に維持されていた髪が一気に抜ける生理的な現象です。
通常は半年から1年程度で自然に回復するケースが多いため、基本的には経過観察で問題ありません。
しかし、1年以上経過しても戻らない場合や、抜け毛の量が異常に多いと感じる場合は、背後に別の要因が隠れている可能性があります。
まずは産婦人科や一般皮膚科で相談するのも一つの手ですが、髪質が変わってしまった、早く元のボリュームに戻したいという希望が強い場合は、専門クリニックで栄養補給を中心とした治療を受けるのも選択肢に入ります。
自分の心の負担を減らすために、どの程度の介入を望むかで受診先を決めると良いでしょう。
一般皮膚科で受けられる治療の特徴とメリット・デメリット
近所のクリニックや総合病院にある皮膚科は、誰でも気軽に受診できる身近な存在です。しかし、薄毛治療に関しては対応できる範囲に明確な線引きが存在します。
皮膚科医は皮膚のスペシャリストですが、すべての医師が薄毛治療に精通しているわけではありません。
一般皮膚科を受診する最大のメリットは、公的医療保険が使える疾患に対して安価で標準的な治療を受けられる点にあります。
一方で、保険診療の枠組みには制限があり、見た目の改善を追求するような治療は行えないという側面も理解しておきましょう。
保険診療の範囲内で行われる標準的な治療
一般皮膚科で行う治療は、厚生労働省が承認した薬や治療法に限定します。
具体的には、円形脱毛症に対してはステロイドやフロジン液などの外用薬、抗アレルギー薬の内服、重症の場合は局所免疫療法などを行います。
脂漏性皮膚炎が原因であれば、抗真菌薬や抗炎症剤を使用して頭皮環境を整えます。
これらの治療は医学的なエビデンスに基づいており、病気の治癒を目的としています。費用負担も3割負担で済むため、経済的なハードルは低くなります。
一般皮膚科における主な治療内容
- ステロイド外用薬の処方(炎症抑制)
- 抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服(痒み・アレルギー対策)
- フロジン液などの血行促進剤の処方
- 液体窒素療法(円形脱毛症などの場合)
- 局所免疫療法(重度の円形脱毛症に対する特殊治療)
- 紫外線療法(エキシマライトなど)
まずはマイナスの状態をゼロに戻す「病気を治す」というスタンスであると理解しておきましょう。
自由診療薬の取り扱いは限定的である場合が多い
最近では、一般皮膚科でもFAGA(女性男性型脱毛症)の治療薬を取り扱う医院が増えてきました。
しかし、あくまで「オプション」としての位置づけである場合が多く、専門クリニックほど薬の種類が豊富ではありません。
例えば、ミノキシジルの外用薬や特定のサプリメントを一種類だけ置いている、といったケースが一般的です。
医師も皮膚疾患の診療がメイン業務であるため、薄毛に関する深いカウンセリングや生活指導まで時間を割くのが難しいのが現状です。
「とりあえず薬だけ欲しい」という場合には便利ですが、多角的な取り組みを求めるには物足りなさを感じる可能性があります。
通いやすさとプライバシーへの配慮の違い
一般皮膚科は風邪や怪我の患者と同じ待合室で過ごすことになります。地域に根ざした病院であればあるほど、近所の人に会う可能性もゼロではありません。
「薄毛の相談に来た」というのを他人に知られたくない女性にとって、これは心理的なハードルとなる場合があります。
さらに、診察時間も限られているため、デリケートな悩みをじっくり相談しにくい雰囲気を感じるときもあるでしょう。
アクセスが良く通いやすいというメリットはありますが、心のケアやプライバシー保護という観点では、専門クリニックに分があると言えます。
薄毛治療専門クリニックならではの強みと独自のアプローチ
専門クリニックは、その名の通り「髪の悩み」に特化した医療機関です。単に薬を処方するだけでなく、患者さん一人ひとりの生活スタイルや体質に合わせたオーダーメイドの治療を提供する土壌があります。
医師やスタッフも薄毛に関する知識を専門的に深めており、症例数も圧倒的に多いため、女性特有の微妙なニュアンスの悩みも汲み取ってくれます。
結果にこだわる姿勢と、治療を継続するための精神的なサポート体制が整っている点が大きな特徴です。
詳細な検査データに基づく科学的な診断
専門クリニックでは、治療を開始する前に詳細な検査を行います。
マイクロスコープで頭皮や毛穴の状態を拡大して見るだけでなく、血液検査を行ってホルモン値や栄養状態(亜鉛や鉄分の不足など)、甲状腺機能などを詳しく調べます。
場合によっては遺伝子検査を行い、将来的な薄毛のリスクや薬の効きやすさを判定するときもあります。
これらの客観的なデータに基づき、なぜ薄毛になっているのか、どの治療法が最も効率的かを科学的に導き出します。
専門クリニックと一般皮膚科の環境比較
| 比較項目 | 一般皮膚科 | 薄毛治療専門クリニック |
|---|---|---|
| 診療の専門性 | 皮膚疾患全般が対象 | 毛髪・頭皮治療に特化 |
| 検査の深度 | 視診や基本的な血液検査のみ | 遺伝子検査やホルモン検査など詳細 |
| 治療の選択肢 | 保険診療メイン、選択肢は少なめ | 内服・外用・注入治療など豊富 |
| プライバシー | 一般患者と同じ待合室が多い | 個室対応や男女別など配慮が手厚い |
| カウンセリング | 診療時間内での簡潔な説明 | 専門カウンセラーによる丁寧な対応 |
感覚ではなく数値に基づいて治療方針を決めるため、納得感を持って治療に取り組むことができます。
発毛を促進するための多角的な治療メニュー
内服薬や外用薬だけでなく、直接頭皮に有効成分を注入する「メソセラピー」や、自分の血液から抽出した成分を利用する「PRP療法」など、再生医療を応用した治療法を選択できるのも専門クリニックの強みです。
内側からのケアと外側からのケアを組み合わせながら、短期間での効果実感を目指します。
特に女性の場合、ホルモンバランスの乱れが影響しているケースが多いため、薬剤だけでなく髪の成長に必要なビタミンやミネラルを配合した医療用サプリメントを併用するなど、体全体のコンディションを整える働きかけも行います。
女性専用の空間づくりとメンタルケア
女性にとって、薄毛の悩みは非常にデリケートです。そのため、多くの専門クリニックでは男性患者と顔を合わせないように動線を分けたり、完全に「女性専用」として運営していたりします。
待合室が個室になっていたり、カウンセリングルームが防音になっていたりと、プライバシーへの配慮は徹底しています。
カウンセラーが在籍しているところも多く、医師には聞きにくい些細な疑問や費用の相談、治療中の不安などを親身になって聞いてくれます。
精神的な安心感を得ながら通院できる環境は、長期戦となる薄毛治療において非常に重要な要素です。
費用面での違いと経済的な計画の立て方
治療を検討する上で、費用の問題は避けて通れません。一般皮膚科と専門クリニックでは、費用の仕組みが根本的に異なります。
この違いを正しく理解していないと、後に「思っていたより高額になった」「効果が出ないのにお金だけかかった」という後悔につながる可能性があります。
継続的な治療が必要な薄毛治療だからこそ、毎月のランニングコストや初期費用について明確なイメージを持っておきましょう。
保険適用外となる自由診療の仕組み
基本的に、美容目的や加齢による薄毛(FAGAなど)の治療は「病気の治療」とはみなされないため、公的医療保険の対象外となり全額自己負担(自由診療)となります。
これは一般皮膚科でミノキシジルやパントガールなどの薬をもらう場合も、専門クリニックで高度な治療を受ける場合も同様です。
自由診療の価格は各医療機関が自由に設定できるため、クリニックによって料金にばらつきがあります。
安さだけで選ぶと薬の濃度が低かったり、逆に高額すぎるローンを組むことになったりするため、料金の内訳(診察料、薬代、検査料、処置料)をしっかり確認する必要があります。
治療費用の目安比較(1ヶ月あたり)
| 治療内容のレベル | 費用の目安 | 主な内訳 |
|---|---|---|
| 現状維持・予防 | 5,000円 〜 10,000円 | 内服薬単剤、または外用薬のみ |
| 発毛促進(軽度) | 15,000円 〜 30,000円 | 内服薬 + 高濃度外用薬 + サプリ |
| 積極的な発毛・改善 | 50,000円 〜 100,000円 | 上記 + 注入治療(メソセラピー等) |
| 検査・初期費用 | 0円 〜 30,000円 | 初診料、血液検査、遺伝子検査など |
専門クリニックの料金相場と内訳
専門クリニックの費用は、治療内容の濃さによって大きく変動します。現状維持や予防を目的とした内服薬のみであれば、表にある通り月額5,000円から15,000円程度が一般的です。
しかし、積極的に発毛を目指すために内服薬と外用薬を併用し、さらにサプリメントを加えると月額15,000円以上かかる場合があります。
注入治療(メソセラピー)などを加えると、さらに費用が追加されます。
多くのクリニックでは、数ヶ月分をまとめて契約することで割引になるプランや、モニター制度を設けています。自分がどこまでの改善を望むかによって、予算を組み立てましょう。
長期的な視点で考えるコストパフォーマンス
薄毛治療は、開始してすぐに結果が出るものではありません。ヘアサイクルの関係上、効果を実感するまでに最低でも6ヶ月程度はかかります。
つまり、提示された月額料金を少なくとも半年、できれば1年以上支払い続ける能力が必要です。
一見高く見える専門クリニックでも、詳細な検査によって「自分に効く薬」を最初から選定できれば、結果的に無駄な治療を繰り返すよりもコストパフォーマンスが良くなる場合があります。
逆に、手軽に始められる皮膚科の薬でも、効果判定が曖昧なまま漫然と飲み続けては意味がありません。
総額でいくらかかるのか、効果が出なかった場合の対応はどうなるのかを事前に確認し、無理のない範囲で計画を立てましょう。
初回カウンセリングと検査の流れ
予約から診断までの具体的な流れを知っておくと、不安なくリラックスして受診に臨めます。
多くの専門クリニックでは、治療契約を結ぶ前に無料カウンセリングを行っています。これは患者さんとクリニックの信頼関係を築くための重要な時間です。
問診とマイクロスコープによる頭皮診断
来院すると、まずは詳細な問診票を記入します。いつ頃から気になり始めたか、家族に薄毛の人はいるか、生活習慣やストレスの有無などを回答します。
その後、専門のカウンセラーや医師がマイクロスコープという拡大鏡を使って頭皮の状態をモニターに映し出します。
一つの毛穴から何本の髪が生えているか、髪の太さは均一か、頭皮の色は健康的かなどをリアルタイムで確認します。
自分では見えない頭皮の現状を目の当たりにすると、薄毛の進行度合いを客観的に把握できます。
主な検査項目とその目的
| 検査の種類 | 確認する主な内容 | 目的 |
|---|---|---|
| マイクロスコープ診断 | 毛髪の密度、太さ、頭皮の色、汚れ | 薄毛の進行度と頭皮環境の把握 |
| 一般血液検査 | 肝機能、腎機能、血球数 | 投薬が可能かどうかの健康チェック |
| ホルモン・栄養検査 | 甲状腺ホルモン、亜鉛、フェリチン | 薄毛の原因特定と栄養状態の確認 |
| 遺伝子検査(任意) | アンドロゲン受容体の感受性など | 将来のリスク予測と薬の効きやすさ判定 |
血液検査で身体の内側の状態を知る
治療薬を安全に服用できるかを確認するために、血液検査は必須です。
肝臓の機能や腎臓の数値に異常がないかをチェックするのはもちろん、薄毛の原因となりうる甲状腺ホルモンの異常や、貧血の有無なども調べます。
女性の場合、鉄分不足(フェリチン値の低下)が抜け毛の原因になっているケースも珍しくありません。
身体の内部情報を正確に読み取ると、薬の処方だけでなく、食事や生活習慣の改善アドバイスも的確に行うことが可能になります。
検査結果が出るまでには数日かかる場合もありますが、即日で簡易検査を行うクリニックもあります。
治療方針の決定と説明
すべての検査結果と患者の希望(予算、通院頻度、目指すゴール)を総合的に判断し、医師がオーダーメイドの治療プランを提案します。
ここで重要なのは、メリットだけでなく副作用のリスクについても十分な説明を受けることです。
例えば、初期脱毛(治療開始直後に一時的に抜け毛が増える現象)が起きる可能性や、多毛症(体毛が濃くなる)のリスクなどです。
納得がいかない場合や不安が残る場合は、その場で契約せずに一度持ち帰って検討する勇気も大切です。良いクリニックは無理な勧誘を行わず、患者さんの意思を尊重してくれます。
処方される薬の種類と成分の違い
女性特有の身体の仕組みに合わせた安全な薬剤の選択が、副作用を防ぎ効果を高める鍵となります。
女性の薄毛治療で使用する薬剤は、男性用のものとは成分や濃度が異なります。男性の薄毛治療薬として有名なフィナステリドなどは、胎児への影響があるため女性には禁忌とされています。
ミノキシジル(内服薬・外用薬)
ミノキシジルは、発毛効果が認められている成分です。血管を拡張させて毛乳頭細胞に栄養を届きやすくし、毛母細胞の分裂を活性化させる働きがあります。
「外用薬」はドラッグストアでも購入可能ですが、クリニックではより高濃度のものを処方する場合があります。
「内服薬(ミノキシジルタブレット)」は体内から血流に乗って成分を届けるため、外用薬よりも発毛効果が期待できますが、動悸やむくみなどの副作用が出やすいため、必ず医師の管理下で服用する必要があります。
女性の薄毛治療で用いられる主な薬剤
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| ミノキシジル内服 | 発毛効果を実感しやすいが、副作用管理が必要 |
| ミノキシジル外用薬 | 頭皮に直接塗布し、毛根を刺激する |
| パントガール | 髪の栄養補給を目的とした医療用サプリメント |
| スピロノラクトン | ホルモンバランスの影響が強い場合に検討される |
| FGF製剤 | 頭皮に注入し、細胞再生を促す成長因子 |
| 亜鉛・鉄・ビオチン | 不足している栄養素を補う |
パントガールなどの医療用サプリメント
パントガールは、世界で初めて「女性の薄毛」に対して効果が認められた内服薬(サプリメントに近い位置づけ)です。
ビタミンB1、パントテン酸カルシウム、ケラチン、L-シスチンなど、髪の成長に必要な栄養素をバランスよく配合しています。
ホルモンに直接作用するわけではないため副作用のリスクが極めて低く、妊娠中や授乳中の抜け毛ケアとしても使用できる場合があります。
髪にハリやコシを与え、細くなった髪を太く健やかに育てる土台作りとして処方されます。
スピロノラクトンやその他のホルモン調整薬
FAGAの原因の一つに、男性ホルモンの影響が考えられる場合があります。
女性の体内にも微量の男性ホルモンが存在しますが、更年期などで女性ホルモンが減少すると相対的に男性ホルモンの影響が強まり、抜け毛が増えるときがあります。
スピロノラクトンは本来利尿剤として使われる薬ですが、抜け毛の原因となる男性ホルモンの働きを阻害する作用があるため、医師の判断により薄毛治療薬として処方される場合があります。
このように、既存の薬を症状に合わせて応用する治療は、専門知識を持つ医師だからこそ可能な処方です。
失敗しないクリニック選びのチェックポイント
長く付き合っていくパートナーとしてのクリニックを選ぶために、確認すべき具体的な基準を設けましょう。
数ある専門クリニックの中から、自分にとってベストな一軒を選ぶのは難しいものです。
ウェブサイトの綺麗な写真や「キャンペーン価格」といった表面的な情報だけで飛びつくと、通院が苦痛になったり、期待した対応が得られなかったりしやすいです。
自分が何を優先したいのか、譲れない条件は何かを整理しておくと良いでしょう。
立地と通いやすさの重要性
薄毛治療は月に1回程度の通院が必要になります。仕事帰りや買い物のついでに寄れる場所にあるか、最寄り駅からのアクセスは良いかといった物理的な利便性は、継続率に直結します。
ビルの入り口が目立たない場所にあるか、エレベーターで他のテナントの客と一緒になりにくいかなど、入る際の心理的なハードルが低い立地であるかどうかも、女性にとっては重要なポイントです。
クリニック選定時の評価シート
| チェック項目 | 確認するポイント | 望ましい状態 |
|---|---|---|
| アクセスの良さ | 自宅や職場からの距離、駅からの徒歩 | 無理なく通える範囲にある |
| 予約の取りやすさ | WEB予約の有無、土日診療の可否 | 自分のライフスタイルに合致する |
| プライバシー | 待合室の構造、スタッフの配慮 | 他人の視線が気にならない工夫がある |
| 説明の丁寧さ | 副作用や総額費用の説明 | メリット・デメリットの両方を提示する |
| 強引な勧誘 | 即日契約を迫るか、持ち帰りを許容するか | 一度持ち帰って検討することを快諾する |
| 治療実績 | 症例写真の豊富さ、開院年数 | 自分と似た症例の改善実績がある |
医師やスタッフの対応と相性
上記の評価シートを参考にしながら、実際の対応も確認しましょう。
どれほど実績のあるクリニックでも、医師が高圧的であったり、事務的な対応しかしてくれなかったりすると不安な気持ちは解消されません。
カウンセリング時にこちらの話を遮らずに聞いてくれるか、質問に対して専門用語を使わずに分かりやすく答えてくれるかを確認しましょう。
また、受付スタッフや看護師の雰囲気も大切です。電話対応やメールの返信の丁寧さは、そのクリニックの患者さんに対する姿勢を映し出す鏡でもあります。
料金体系の明瞭さと解約時の対応
トラブルになりやすいのが料金の問題です。公式サイトに記載されている料金と、実際に提案される見積もりに大きな乖離がないかを確認します。
中には、高額な医療ローンを組むのを前提としたセットプランを強く勧めてくるクリニックもあります。
不必要なオプションを断れる雰囲気があるか、万が一効果が出なかった場合や途中で通えなくなった場合の解約制度(返金規定)はどうなっているかを、契約前に必ず確認してください。
透明性の高いクリニックは、リスクや費用についても包み隠さず説明してくれます。
Q&A
- 市販の育毛剤やシャンプーだけで薄毛は治りますか?
-
市販の育毛剤や育毛シャンプーは、あくまで「頭皮環境を整える」「今ある髪を健康に保つ」が主目的であり、医学的な発毛効果は限定的です。
軽度の抜け毛や予防目的であれば効果を感じる方もいますが、すでに進行している薄毛や、髪の密度を劇的に増やしたい場合には、医療機関での治療が必要になります。
セルフケアで改善が見られないときは、早めに専門医に相談すると良いでしょう。
- 治療を始めると、一生薬を飲み続けなければなりませんか?
-
薄毛治療は、目標とするゴールによって継続期間が異なります。
希望する髪のボリュームまで回復した後、その状態を維持するためには、薬の量を減らしたり種類を変えたりしながらメンテナンスを続けるのが望ましいです。
完全に治療を止めると、再び薄毛の進行が始まる可能性があります。しかし、一生同じ量の薬を飲み続けるわけではなく、医師と相談しながら減薬していくことは可能です。
- 治療の効果はどれくらいで実感できますか?
-
個人差はありますが、一般的には治療開始から3ヶ月から6ヶ月程度で効果を実感される方が多いです。
最初の1ヶ月から2ヶ月は、古い髪が新しい髪に押し出されて抜ける「初期脱毛」が起こるときがあり、不安になる時期かもしれませんが、これは薬が効いている証拠でもあります。
6ヶ月から1年ほど継続すると、髪の太さや密度の変化が見た目にも明らかになってきます。
- ストレスが原因の薄毛でも病院に行くべきですか?
-
行くことをおすすめします。
ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、血流を悪化させるため薄毛の引き金になりますが、一度乱れたヘアサイクルを自然治癒だけで戻すのは難しい場合があります。
また、自己判断でストレスが原因だと思い込んでいても、実際には甲状腺疾患や貧血などが隠れている可能性もあります。
原因を特定し、適切なケアを行うためにも医療機関の受診は大切です。
- カウンセリングだけでも受診して良いのでしょうか?
-
もちろんです。多くの専門クリニックでは、無料カウンセリングを行っており、話を聞くだけでも歓迎しています。
自分の頭皮の状態を知ることは、将来の予防策を考える上でも非常に有益です。治療を始めるかどうかは、カウンセリングで説明を聞き、費用や内容に納得してから決めれば問題ありません。
まずは現状を把握するために、気軽に足を運んでみると良いでしょう。
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