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女性の1日に抜ける髪の毛の本数|正常値と異常の見分け方

女性の1日に抜ける髪の毛の本数|正常値と異常の見分け方

お風呂場の排水溝やブラシに絡まる髪の毛を見て、「1日に抜ける髪の毛の本数が多すぎるのでは?」と不安に感じるときもあるのではないでしょうか。

髪の毛は毎日自然に抜け落ちるものですが、その量が正常範囲なのか、それとも何らかのサインなのかを見分けるのは難しいものです。

この記事では、女性の1日に抜ける髪の毛の正常な本数、異常な抜け毛との見分け方、そして抜け毛が増える原因や対策について、専門医の視点から詳しく解説します。

目次

髪の毛の「寿命」とヘアサイクル

1日に抜ける髪の毛の本数を理解するためには、髪の毛一本一本に寿命があり、一定のサイクルで生え変わっている仕組みを確認しましょう。

この髪の成長サイクルを「ヘアサイクル」と呼びます。

成長期・退行期・休止期とは

ヘアサイクルは、大きく分けて「成長期」「退行期」「休止期」の3つの期間から成り立っています。

成長期は髪が太く長く成長する期間で、全体の約85~90%を占めます。

次に、髪の成長が止まる退行期が約2~3週間続き、その後、髪が抜け落ちる準備をする休止期に入ります。

休止期の髪は全体の約10~15%で、この期間は約2~3ヶ月続きます。

1本1本の髪にも寿命がある

女性の場合、1本の髪の毛の寿命(成長期の長さ)は平均して4~6年と言われています。

この期間を終えると髪は自然に抜け落ち、同じ毛穴からまた新しい髪が生えてきます。

つまり、毎日ある程度の髪の毛が抜けるのは、この自然な生え変わりの一部なのです。

ヘアサイクルの各期間と特徴

期間髪の状態全体の割合(目安)
成長期活発に成長している約85~90%
退行期成長が停止する約1%
休止期抜け落ちる準備期間約10~15%

ヘアサイクルと抜け毛の関係

健康な状態であれば、毎日約50本から100本程度の髪の毛が休止期を終えて自然に抜け落ちると言われています。

これは、新しい髪の毛が下から押し上げるようにして古い髪が抜けるためで、生理的な現象です。

この本数であれば、特に心配する必要はありません。

正常な抜け毛と異常な抜け毛の違い

正常な抜け毛は、毛根部分に「毛球」と呼ばれる丸みを帯びた膨らみがあり、自然な太さを持っています。

一方、異常な抜け毛は毛根が細く尖っていたり、毛球がなかったり、髪の毛自体が細く弱々しかったりする特徴があります。

抜け毛の量だけでなく、質にも注目しましょう。

女性の1日の正常な抜け毛本数は?

「1日に何本髪の毛が抜けるのが普通なの?」という疑問は多くの方が抱くようです。

ここでは、女性の正常な抜け毛の本数について、より詳しく見ていきましょう。

一般的な目安とされる本数

前述の通り、一般的に健康な女性の1日に抜ける髪の毛の本数は、50本から100本程度とされています。

この範囲内であれば、ヘアサイクルに伴う自然な抜け毛と考えて良いでしょう。

ただし、これはあくまで目安であり、個人差があります。

個人差が大きい理由

1日に抜ける髪の毛の本数には個人差があります。その理由の一つは、髪の毛全体の総量です。

日本人の平均的な髪の毛の総数は約10万本と言われていますが、これも人によって異なります。

髪の毛が多い人ほど、自然に抜ける本数も多くなる傾向があります。

抜け毛の本数に影響する要因

要因抜け毛への影響
髪の総本数総本数が多いほど、1日の抜け毛も増える傾向
季節春や秋は抜け毛が増えやすいとされる
年齢加齢とともにヘアサイクルが変化し、抜け毛が増えることも

季節による抜け毛本数の変動

季節によっても、1日に抜ける髪の毛の本数は変動する場合があります。

特に春先や秋口は、動物の毛が生え変わる時期と重なるように、一時的に抜け毛が増えると感じる方がいます。

これは、気候の変化や自律神経のバランスなどが影響していると考えられますが、通常は一時的なものです。

年代による抜け毛本数の変化

年齢を重ねるとともに、ヘアサイクルにも変化が現れます。

成長期が短くなったり、休止期が長くなったりして髪の毛全体のボリュームが減少し、1日に抜ける髪の毛の本数が増えたように感じる場合があります。

更年期以降は、女性ホルモンの影響で変化をとくに実感しやすくなります。

これは異常?抜け毛が増える原因とは

1日に抜ける髪の毛の本数が明らかに増えたり、抜け毛の質が変わったりしたときは、何らかの原因が潜んでいる可能性があります。

女性の抜け毛が増える主な原因について解説します。

ホルモンバランスの乱れ

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、髪の成長を促してハリやコシを保つ働きがあります。

しかし、妊娠・出産や更年期、ストレスや不規則な生活などによりホルモンバランスが乱れると、薄毛や抜け毛を引き起こすときがあります。

特に、女性男性型脱毛症(FAGA)は、ホルモンバランスの乱れが関与していると考えられています。

生活習慣の乱れ

偏った食事による栄養不足、睡眠不足、過度なストレス、喫煙などは頭皮環境を悪化させ、健康な髪の成長を妨げます。

髪の毛はケラチンというタンパク質からできており、ビタミンやミネラルも髪の成長に重要です。

これらの栄養素が不足すると、抜け毛が増える原因となります。

抜け毛につながる生活習慣

乱れた生活習慣髪への影響
偏った食事・無理なダイエット髪に必要な栄養素の不足
睡眠不足成長ホルモンの分泌低下、血行不良
過度なストレス自律神経の乱れ、頭皮の血行不良

間違ったヘアケアと頭皮環境の悪化

洗浄力の強すぎるシャンプー、頻繁なカラーリングやパーマ、頭皮に合わないヘアケア製品の使用は頭皮にダメージを与えて抜け毛を増やす原因になります。

また、頭皮の乾燥や過剰な皮脂分泌も、毛穴の詰まりや炎症を引き起こし、健康な髪の育成を妨げます。

特定の病気や薬の影響

甲状腺機能の異常や膠原病、鉄欠乏性貧血などの病気が原因で抜け毛が増えるケースがあります。

また、特定の薬(抗がん剤、一部の降圧剤など)の副作用として脱毛が起こる場合もあります。

急に抜け毛が増えたときは、これらの可能性も考慮し、医療機関を受診することが大切です。

抜け毛の本数以外にも注目!異常を見分けるチェックポイント

1日に抜ける髪の毛の本数だけでなく、抜け毛の状態や頭皮、髪全体の様子にも注意を払うと異常のサインを早期に捉えられます。

抜け毛の質(太さ、毛根の状態)

正常な抜け毛は、毛根に丸い毛球がついており、ある程度の太さがあります。

しかし、異常な抜け毛は毛根が細く尖っていたり、毛球が小さかったり、髪の毛自体が細く弱々しかったりします。

このような質の悪い抜け毛が増えてきたら注意が必要です。

頭皮の状態(赤み、かゆみ、フケ)

健康な頭皮は青白い色をしていますが、赤みやかゆみ、フケや湿疹などが見られるときは、頭皮環境が悪化しているサインです。

頭皮トラブルは抜け毛を助長するため、早めのケアが重要です。

鏡で頭皮の色や状態をチェックしてみましょう。

頭皮の異常サイン

サイン考えられる状態
赤み炎症、血行不良
かゆみ乾燥、炎症、アレルギー
フケ(乾燥・脂性)ターンオーバーの乱れ、皮脂バランスの異常

髪全体のボリューム感の変化

以前と比べて髪全体のボリュームが減った、髪がペタンとしやすくなった、ヘアスタイルが決まりにくくなった、といった変化も薄毛のサインかもしれません。

1日に抜ける髪の毛の本数に大きな変化がなくても、髪が細くなっている可能性があります。

分け目や生え際の状態

分け目が以前より目立つようになった、地肌が透けて見える範囲が広がった、生え際が後退してきたように感じる、といった方は注意が必要です。

特に頭頂部や前頭部は薄毛が進行しやすい部分なので、定期的にチェックしましょう。

抜け毛で悩む女性へ|日常で見落としがちなサインと心の持ち方

1日に抜ける髪の毛の本数は、日々の生活の中のささいな変化や、女性特有のライフイベントによっても影響を受けます。

ここでは、見落としがちな抜け毛のサインと、悩みと上手に付き合うための心の持ち方について考えてみましょう。

シャンプーやドライヤー時の「いつもと違う」感覚

毎日行うシャンプーやドライヤーの際に「あれ、いつもより指通りが悪いな」「乾かすのに時間がかからなくなった気がする」といった小さな変化を感じるときはありませんか。

これは、髪の毛1本1本が細くなっていたり、全体の量が減っていたりするサインかもしれません。

数値化しにくい感覚的な変化にも注意を向けてみましょう。

枕元の抜け毛や部屋に落ちている髪の毛

朝起きたときの枕元の抜け毛の本数や、部屋の床に落ちている髪の毛の量が以前より増えたと感じるのも、注意すべきサインです。

特に長い髪の女性は、抜け毛が目につきやすいため、変化に気づきやすいかもしれません。

掃除の頻度や、その際の抜け毛の量などを意識してみるのも一つの方法です。

日常で気づける抜け毛の変化

場面チェックポイント
シャンプー時排水溝に溜まる毛量、指に絡まる毛量
ブラッシング時ブラシにつく毛量、切れ毛の有無
起床時枕についている毛の本数

ヘアアレンジ時の気づき

ポニーテールにしたときの毛束が細くなった、髪をまとめたときにお団子が小さくなった、など、ヘアアレンジをする際に以前との違いを感じるケースもあります。

これらの変化は、髪全体のボリュームダウンを示唆している可能性があります。

抜け毛の悩みと上手に付き合うために

抜け毛が増えると、不安やストレスを感じやすくなります。しかし、過度な心配はさらなるストレスを呼び、抜け毛を悪化させる可能性もあります。

まずは正しい情報を得て、冷静に自分の状態を把握することが大切です。

一人で抱え込まず、信頼できる人に相談したり、専門医の意見を聞いたりするのも、心の負担を軽減する助けになります。

抜け毛が気になるときのセルフケアと対策

1日に抜ける髪の毛の本数が気になる場合、まずは日常生活の中でできるセルフケアから始めてみましょう。

バランスの取れた食事を心がける

髪の毛は主にタンパク質からできています。肉や魚、大豆製品や卵など良質なタンパク質をしっかり摂取しましょう。

また、髪の成長を助けるビタミン(特にビタミンB群、C、E)やミネラル(亜鉛、鉄分など)も重要です。

海藻類や緑黄色野菜も積極的に取り入れ、バランスの良い食事を心がけましょう。

質の高い睡眠を確保する

髪の成長を促す成長ホルモンは、主に睡眠中に分泌されます。質の高い睡眠を十分にとることは、健康な髪を育むために重要です。

毎日同じ時間に寝起きする、寝る前のカフェイン摂取やスマートフォン操作を控えるなど、睡眠環境を整えましょう。

睡眠の質を高めるポイント

  • 規則正しい生活リズム
  • 寝る前のリラックスタイム
  • 快適な寝具と寝室環境

正しいシャンプー方法と頭皮ケア

シャンプーは1日1回を目安に、頭皮の汚れを優しく洗い流すように行います。爪を立てずに指の腹でマッサージするように洗い、すすぎ残しがないように丁寧に流しましょう。

シャンプー後は、ドライヤーで頭皮と髪をしっかり乾かすことも大切です。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなります。

ストレスを上手にコントロールする

過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、頭皮の血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こし、抜け毛の原因となります。

適度な運動や趣味の時間、リフレッシュできる習慣を見つけ、ストレスを溜め込まないように心がけましょう。

専門医に相談するタイミングとクリニックでの検査・治療

セルフケアを続けても1日に抜ける髪の毛の本数が減らない、あるいはさらに増えるようなときは、専門医への相談を検討しましょう。早期の対応が、より良い結果につながります。

セルフケアで改善しない場合

数ヶ月間、食生活の改善や正しいヘアケアを試みても、抜け毛の量に変化が見られない、または悪化するようであれば、専門医の診断を受けるのがおすすめです。

自己判断で間違ったケアを続けるよりも、専門的なアドバイスが有効です。

急激な抜け毛の増加を感じたとき

短期間で明らかに1日に抜ける髪の毛の本数が増えた、円形脱毛症のように部分的にごそっと抜ける、といったときは、何らかの病気や急性のストレスが原因である可能性も考えられます。

このような場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

専門医への相談を検討する目安

状況対応のポイント
抜け毛が200本/日以上続く原因究明のため受診を検討
抜け毛の質が明らかに悪い頭皮や毛根の状態をチェック
頭皮に異常(かゆみ、湿疹など)がある皮膚科または薄毛専門クリニックへ

クリニックで行う検査内容

専門クリニックでは、まず問診で生活習慣や既往歴などを詳しく伺います。

その後、視診や触診で頭皮や髪の状態を確認し、マイクロスコープで毛穴や毛根の状態を詳細に観察します。

必要に応じて血液検査を行い、ホルモンバランスや栄養状態、甲状腺機能などを調べるケースもあります。

女性の薄毛治療の選択肢

検査結果と診断に基づき、個々の状態に合わせた治療法を提案します。

治療法にはミノキシジルなどの外用薬、スピロノラクトンなどの内服薬、栄養補助のためのサプリメント、頭皮への注入治療(メソセラピー)、低出力レーザー治療などがあります。

医師とよく相談し、納得のいく治療を選びましょう。

女性の抜け毛に関するよくある質問

さいごに、1日に抜ける髪の毛の本数や女性の抜け毛に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

シャンプー時の抜け毛は特に心配するべきですか?

シャンプー時は、1日の中で最も抜け毛が目立ちやすいタイミングです。

また、洗う際に頭皮をマッサージすると、休止期に入っていた髪の毛が抜け落ちやすくなるため、他の時よりも多く抜けるのは自然なことです。

ただし、排水溝に溜まる量が急に増えたり、以前の2倍以上になったりしたときは注意が必要です。

育毛剤や市販のサプリメントは効果がありますか?

市販の育毛剤の多くは医薬部外品で、頭皮環境を整えたり、今ある髪を健康に保ったりする効果が期待できます。また、サプリメントは髪に必要な栄養素を補給する助けになります。

しかし、これらは「発毛」を促す医薬品とは異なります。

1日に抜ける髪の毛の本数が異常に多いときや、薄毛が進行している場合は専門医に相談し、医薬品による治療も検討するのが良いでしょう。

抜け毛は何歳から気をつけるべきですか?

特定の年齢から気をつけるべき、ということはありません。若い方でも、ストレスや生活習慣の乱れ、無理なダイエットなどが原因で抜け毛が増えるケースがあります。

年齢に関わらず、1日に抜ける髪の毛の本数や髪の状態に変化を感じたら早めに原因を探り、対策を始めることが大切です。

遺伝と抜け毛の関係はありますか?

薄毛には遺伝的な要因が関与することがあります。ご家族に薄毛の方がいる場合、体質的に薄毛になりやすい可能性があります。

しかし、遺伝が全てではありません。生活習慣やヘアケア、早期の治療によって、薄毛の進行を遅らせたり、症状を改善したりできます。

遺伝だからと諦めずに、専門医に相談しましょう。

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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