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髪が抜ける内臓の病気とは?女性の抜け毛と内科疾患の関係

髪が抜ける内臓の病気とは?女性の抜け毛と内科疾患の関係

最近、抜け毛が増えたと感じる原因は、頭皮の問題だけではないかもしれません。

実は、内臓の病気が抜け毛のサインとして現れる場合があります。特に女性は、ホルモンバランスの変動とも相まって、内科的な不調が髪に影響しやすい傾向があります。

この記事では、抜け毛と関連する可能性のある内臓の病気について、その関係性や注意点を詳しく解説します。

目次

抜け毛と内臓の病気|知っておきたい基礎知識

髪の健康は、体全体の健康状態を映す鏡ともいわれます。

抜け毛が増えるという現象は頭皮環境の悪化だけでなく、体の内側からのSOSサインである可能性も考慮に入れる必要があります。

特に、ある種の内臓の病気は、髪の成長に必要な栄養の供給を妨げたり、ホルモンバランスを乱したりすることで、抜け毛を引き起こす場合があります。

髪の成長と体の健康状態

髪の毛は、毛母細胞が分裂を繰り返して成長します。この毛母細胞の活動には、十分な栄養素と酸素、そして正常なホルモン環境が必要です。

内臓の機能が低下するとこれらの供給が滞ったり、バランスが崩れたりして髪の成長サイクルに異常が生じ、結果として抜け毛が増加する場合があります。

「たかが抜け毛」と放置するリスク

抜け毛を単なる美容上の問題と捉え、放置してしまうのは危険な場合があります。

もし内臓の病気が背景にあるときは、抜け毛はその病気の一症状に過ぎず、根本的な原因に対処しなければ改善は見込めません。そればかりか、元の病気が進行してしまう恐れもあります。

いつもと違う抜け毛のパターンに気づいたら、専門医に相談する勇気を持ちましょう。

女性特有の要因と内科疾患の関連

女性は月経、妊娠・出産、更年期といったライフステージを通じてホルモンバランスが大きく変動します。

このホルモン変動は、甲状腺疾患や貧血といった抜け毛を引き起こしやすい内科疾患の発症とも関連が深いため、特に注意が必要です。

女性の抜け毛の悩みには、婦人科的な視点だけでなく、内科的な視点からの働きかけも重要になるケースがあります。

なぜ内臓の病気が抜け毛を引き起こすのか

内臓の病気が髪に影響を与える経路は一つではありません。体のシステムは複雑に連携しており、一つの不調がドミノ倒しのように他の部分へ影響を及ぼします。

抜け毛という現象も、内臓の機能低下によるさまざまな変化の結果として現れるときがあります。

栄養供給の阻害と毛髪への影響

髪の主成分はケラチンというタンパク質です。健康な髪を育むためにはタンパク質をはじめ、亜鉛や鉄、ビタミン類など多様な栄養素が必要です。

消化器系の疾患などで栄養の吸収がうまくいかない場合や、特定の栄養素が慢性的に不足するような病態では、毛母細胞への栄養供給が滞り、髪が細くなったり、成長が止まって抜け落ちたりします。

髪の成長に必要な主な栄養素と関連する内臓機能

栄養素髪への役割関連する内臓・機能
タンパク質髪の主成分胃腸(消化吸収)、肝臓(代謝)
鉄分酸素運搬、毛母細胞活性化胃腸(吸収)、造血機能
亜鉛タンパク質合成、細胞分裂胃腸(吸収)、免疫機能

ホルモンバランスの乱れによる抜け毛

ホルモンは、体のさまざまな機能を調節する重要な物質です。

甲状腺ホルモンや性ホルモンなどは、髪の成長サイクルにも深く関わっています。

これらのホルモンを分泌する内分泌器官の病気によりホルモンバランスが崩れると休止期脱毛などを引き起こし、抜け毛が増える原因となります。

免疫系の異常と毛包への攻撃

自己免疫疾患のなかには、免疫系が誤って自身の毛包(毛根を包む組織)を攻撃してしまうものがあります。

この攻撃により毛包がダメージを受けると、円形脱毛症のような特徴的な抜け毛が生じます。

全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病でも、皮膚症状の一つとして脱毛が見られるケースがあります。

慢性炎症と頭皮環境の悪化

体内で慢性的な炎症が続いている状態は、頭皮環境にも悪影響を及ぼす可能性があります。

炎症性サイトカインと呼ばれる物質が血流に乗って頭皮に達し、毛包周囲の微小な炎症を引き起こしたり、血行を悪化させたりして、間接的に抜け毛を助長する場合があります。

抜け毛に関連する代表的な内科疾患

抜け毛の症状が現れる可能性のある内科疾患は多岐にわたります。

ここでは、特に女性に比較的多く見られ、抜け毛との関連が指摘される代表的な疾患をいくつか紹介します。

ただし、自己判断は禁物であり、気になる症状があれば必ず医師の診察を受けてください。

甲状腺機能異常(亢進症・低下症)

甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶形の小さな臓器で、体の新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌しています。

このホルモンの分泌が過剰になる甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)でも、逆に不足する甲状腺機能低下症(橋本病など)でも、髪の成長サイクルが乱れてびまん性(広範囲)の脱毛が起こりやすいです。

鉄欠乏性貧血

貧血のなかでも特に多いのが、鉄分の不足によって起こる鉄欠乏性貧血です。

鉄は血液中のヘモグロビンの主成分であり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。

鉄分が不足すると頭皮の毛母細胞にも十分な酸素が供給されなくなり、髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。月経のある女性は特に鉄欠乏に陥りやすいため注意が必要です。

抜け毛を引き起こす可能性のある疾患群

疾患カテゴリー代表的な疾患例抜け毛との関連(主な要因)
内分泌疾患甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症ホルモンバランスの乱れ
血液疾患鉄欠乏性貧血酸素・栄養供給不足
自己免疫疾患全身性エリテマトーデス、円形脱毛症毛包への自己攻撃、炎症

膠原病(全身性エリテマトーデスなど)

膠原病は、免疫系の異常により自分自身の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の一群です。

全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚筋炎などでは、皮膚症状の一つとして脱毛が見られる場合があります。

脱毛のパターンは疾患によってさまざまですが、頭皮の炎症を伴う方もいます。

その他(腎臓病、肝臓病など)

慢性腎臓病や肝硬変などの肝臓病が進行すると、体内の老廃物の排泄がうまくいかなくなったり、タンパク質の合成能力が低下したりします。

これらの状態は全身の栄養状態の悪化につながり、結果として髪の健康にも影響を及ぼし、抜け毛が増える原因となるときがあります。

甲状腺疾患と抜け毛 – 女性に多い注意点

甲状腺疾患は、特に成人女性に多く見られる内分泌系の病気です。

甲状腺ホルモンは髪の毛の成長と維持に深く関わっているため、そのバランスが崩れると抜け毛の症状が現れやすくなります。

ここでは、甲状腺疾患と抜け毛の関係について、女性が知っておきたいポイントを見ていきましょう。

甲状腺ホルモンの役割と髪への影響

甲状腺ホルモンは、全身の細胞の新陳代謝を調節する働きがあります。毛母細胞も例外ではなく、甲状腺ホルモンによってその活動がコントロールされています。

ホルモン量が多すぎても少なすぎても、毛髪の成長期が短縮されたり休止期が延長されたりして、結果的に抜け毛が増加したり髪質が変化したりします。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)と抜け毛

バセドウ病に代表される甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。

これにより新陳代謝が異常に活発になり、髪の毛も早く成長しすぎてしまい、結果的に寿命が短くなって抜けやすくなる傾向があります。

髪が細く柔らかくなる、といった髪質の変化を伴う方も見受けられます。

甲状腺機能異常による主な髪の変化

機能異常主な髪の症状その他の身体症状例
亢進症(バセドウ病など)びまん性脱毛、髪が細くなる、柔らかくなる動悸、多汗、体重減少、眼球突出
低下症(橋本病など)びまん性脱毛、髪が乾燥する、もろくなる、眉毛外側の脱毛倦怠感、むくみ、体重増加、寒がり

甲状腺機能低下症(橋本病など)と抜け毛

橋本病などが原因で起こる甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの分泌が不足します。

新陳代謝が低下するため毛母細胞の活動も鈍くなり、髪の成長が遅れたり、休止期にとどまる毛が増えたりして脱毛が起こります。

髪全体が薄くなるほか、乾燥してパサついたり、眉毛の外側1/3が薄くなるという特徴的な症状が見られる場合もあります。

診断と治療、髪の回復について

甲状腺疾患が疑われるときは、血液検査で甲状腺ホルモン値や自己抗体を調べると診断がつきます。

治療は、亢進症の場合は抗甲状腺薬や放射性ヨウ素治療、手術など、低下症の場合は甲状腺ホルモン薬の内服が基本です。

甲状腺機能が正常化すれば、多くの場合は抜け毛も数ヶ月から半年程度で改善に向かいます。

貧血と抜け毛 – 隠れた原因を見逃さない

「最近なんだか疲れやすいし、抜け毛も増えた気がする…」そんな症状の裏には、貧血が隠れているかもしれません。

特に女性は、月経や妊娠・出産などで鉄分を失いやすく、鉄欠乏性貧血になりやすい傾向があります。

貧血は、髪の健康にも深刻な影響を与えるため、注意が必要です。

鉄欠乏と毛髪の成長への影響

鉄は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分であり、全身の細胞に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。

毛母細胞が活発に分裂し、髪を成長させるためには、十分な酸素と栄養が必要です。

鉄分が不足すると頭皮への酸素供給が低下して毛母細胞の働きが弱まり、髪が細くなったり、成長が途中で止まって抜け落ちたりしやすいです。

女性に多い鉄欠乏性貧血のサイン

鉄欠乏性貧血の症状は、徐々に進行するため気づきにくい場合があります。

抜け毛の増加のほか、以下のようなサインが見られたら注意が必要です。

  • 顔面蒼白、めまい、立ちくらみ
  • 動悸、息切れ
  • 易疲労感、倦怠感
  • 爪がもろくなる、スプーン状になる
  • 氷などを無性に食べたくなる(異食症)

貧血の診断と治療法

貧血の診断は、血液検査でヘモグロビン値や血清フェリチン値(体内の貯蔵鉄を示す)などを測定して行います。

鉄欠乏性貧血と診断された場合、治療の基本は鉄剤の内服または注射による鉄分の補給です。

同時に、鉄分の吸収を助けるビタミンCを多く含む食品や、バランスの取れた食事を心がける指導も行います。

貧血改善のための食事のポイント

栄養素多く含む食品例ポイント
鉄分(ヘム鉄)レバー、赤身の肉、魚(カツオ・マグロなど)吸収率が高い
鉄分(非ヘム鉄)ほうれん草、小松菜、大豆製品、ひじきビタミンCと一緒にとると吸収率アップ
ビタミンC果物(柑橘類、イチゴなど)、野菜(ピーマン、ブロッコリーなど)鉄の吸収を助ける

抜け毛改善までの期間と注意点

鉄剤による治療を開始しても、すぐに抜け毛が改善するわけではありません。体内の鉄分が充足して頭皮環境が整い、新しい髪が成長し始めるまでには、数ヶ月から半年程度の期間が必要です。

治療中は自己判断で鉄剤を中断せず、医師の指示に従って継続しましょう。

また、消化器系の疾患など、鉄欠乏の原因となる他の病気が隠れていないか調べる場合もあります。

自己免疫疾患と抜け毛 – 全身からのSOSサイン

私たちの体には、外部からの異物(細菌やウイルスなど)を攻撃して体を守る「免疫」という仕組みが備わっています。

しかし、この免疫システムに異常が生じ、誤って自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気があります。

これが自己免疫疾患です。自己免疫疾患のなかには毛包を攻撃したり、全身性の炎症を引き起こしたりして、抜け毛の原因となるものがあります。

免疫システムの異常と毛包への影響

毛包は髪の毛を作り出す重要な器官です。

自己免疫疾患によって免疫細胞が毛包を異物と誤認して攻撃すると、毛包が炎症を起こしたり、破壊されたりして、正常な髪の成長ができなくなります。

その結果、円形脱毛症のように部分的に髪が抜けたり、広範囲にわたって髪が薄くなったりします。

代表的な自己免疫疾患と脱毛の関連

抜け毛を引き起こす可能性のある代表的な自己免疫疾患には、以下のようなものがあります。

疾患名脱毛の特徴その他の主な症状
円形脱毛症円形・楕円形の脱毛斑、単発・多発通常、他の全身症状は伴わないことが多い
全身性エリテマトーデス(SLE)びまん性脱毛、前頭部の脱毛、瘢痕性脱毛蝶形紅斑、関節痛、発熱、倦怠感
皮膚筋炎頭皮のびまん性紅斑、脱毛筋力低下、ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候

全身性エリテマトーデス(SLE)における脱毛

全身性エリテマトーデスは、皮膚や関節、腎臓や神経系など全身のさまざまな臓器に炎症が起こる膠原病の一つです。

脱毛も比較的よく見られる症状で、髪全体が薄くなるびまん性脱毛や、前髪の生え際が後退するような脱毛、炎症が強く毛包が破壊されてしまう瘢痕性脱毛(毛が再生しなくなる)などのタイプがあります。

診断と治療方法

自己免疫疾患の診断は、症状や血液検査(自己抗体の有無など)、皮膚生検などを総合的に評価して行います。

治療は病気の種類や重症度によって異なりますが、ステロイド薬や免疫抑制薬などを用いて、異常な免疫反応を抑えるのが基本です。

原疾患の活動性がコントロールされれば、多くの方で脱毛も改善に向かいますが、瘢痕性脱毛の場合は毛の再生が難しい場合もあります。

消化器系疾患・栄養吸収不良と髪への影響 – 見過ごされがちな髪の悲鳴

「しっかり食べているはずなのに、なぜか髪に元気がない…」その背景には、食べたものをきちんと消化・吸収できていない、という消化器系の問題が隠れているかもしれません。

髪の健康は、摂取した栄養素が効率よく体内に取り込まれ、毛根まで届けられて初めて維持されます。

この「栄養の通り道」にトラブルがあると、どんなに良い食事を心がけても髪が栄養不足に陥ってしまうのです。

消化・吸収の仕組みと髪の栄養

私たちが口にした食べ物は胃で消化され、主に小腸で栄養素が吸収されます。

タンパク質はアミノ酸に、炭水化物はブドウ糖に、脂質は脂肪酸とグリセリンに分解されて吸収され、これらがエネルギー源となったり体の組織を作ったりします。

髪の主成分であるケラチン(タンパク質の一種)も、食事から摂取したアミノ酸を元に合成されます。ビタミンやミネラルも、この消化吸収の過程を経て体内に取り込まれます。

慢性的な下痢や便秘と栄養状態

慢性的な下痢が続くと栄養素が十分に吸収される前に体外へ排出されてしまい、栄養不良に陥りやすいです。

逆に頑固な便秘は腸内環境の悪化を招き、有害物質が体内に滞留しやすくなるだけでなく、必要な栄養素の吸収を妨げる可能性も指摘されています。

これらの状態が長く続くと髪に必要な栄養が行き渡らず、抜け毛や髪質の低下につながる場合があります。

消化器系の不調と髪への影響経路

消化器系の不調主な問題点髪への影響
胃炎・胃潰瘍消化能力低下、食欲不振栄養摂取量減少、吸収不良
吸収不良症候群特定または広範な栄養素の吸収障害タンパク質・ビタミン・ミネラル不足
炎症性腸疾患(クローン病など)腸管の炎症、栄養吸収障害、出血鉄欠乏、タンパク質不足、全般的栄養不良

吸収不良症候群と抜け毛

吸収不良症候群とは、特定の栄養素、あるいは広範な栄養素が小腸から十分に吸収できなくなる状態の総称です。

原因はさまざまで、セリアック病(グルテン不耐症)や乳糖不耐症、膵臓の機能不全や小腸の広範囲な切除後などが挙げられます。

吸収されない栄養素の種類によって症状は異なりますが、タンパク質や鉄、亜鉛やビタミンB群などの吸収が障害されると、顕著な抜け毛や髪質の変化が現れる場合があります。

炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)の影響

クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患は、消化管に慢性的な炎症や潰瘍が生じる病気です。

これらの疾患では炎症による栄養吸収の低下や、タンパク質の喪失、出血による鉄欠乏などが起こりやすく、全身的な栄養状態が悪化しがちです。

その結果、髪の毛が細くなったり抜けやすくなったりするだけでなく、成長障害や体重減少なども見られるケースがあります。

これらの疾患の治療により腸管の状態が改善すると、髪の状態も回復する傾向があります。

内科疾患による抜け毛の診断とクリニックでの治療

抜け毛の原因が内科疾患にあるかもしれないと疑われるときは、正確な診断と適切な治療が重要です。

専門機関ではまず詳細な問診と視診を行い、必要に応じて各種検査を組み合わせながら、抜け毛の背景にある可能性のある内科的な問題を探ります。

詳細な問診の重要性

医師が、抜け毛がいつから始まったか、どのようなパターンで抜けるか、他に自覚症状はないか、既往歴や家族歴、服用中の薬や生活習慣について詳しくお話を伺います。

これらの情報は、原因を絞り込む上で非常に重要な手がかりです。

血液検査でわかること

血液検査は、内科疾患のスクリーニングに有用です。

例えば、甲状腺ホルモン値や甲状腺自己抗体、血算や血清鉄、フェリチンや肝機能、腎機能や血糖値、炎症反応や自己抗体などを調べると、甲状腺疾患、貧血、膠原病、栄養状態の異常などの有無を確認できます。

抜け毛の原因検索で行う主な検査項目

  • 血液検査(甲状腺機能、貧血、肝腎機能、炎症反応、自己抗体など)
  • 尿検査
  • 画像検査(必要に応じて:甲状腺エコーなど)
  • 皮膚生検(脱毛部の組織を採取して調べる)

他の専門科との連携

診断の結果、特定の専門的な治療が必要な内科疾患が見つかったときは、内分泌内科や血液内科、膠原病内科や消化器内科など、それぞれの専門医と連携を取りながら治療を進めます。

薄毛治療専門のクリニックは抜け毛治療の専門性を持ちつつ、必要に応じて他の専門科への紹介や情報共有をスムーズに行い、患者さんにとって最も良い治療を提供できるよう努めています。

根本治療と対症療法の組み合わせ

内科疾患が原因の抜け毛の場合、最も重要なのは原因となっている病気の治療(根本治療)です。

原因疾患のコントロールがつけば、多くの場合は抜け毛も改善に向かいます。

しかし、髪の回復には時間がかかるため、その間の精神的なケアや、頭皮環境を整えるための補助的な治療(対症療法)を組み合わせるときもあります。これには、育毛剤の使用や、栄養指導などが含まれます。

髪が抜ける内臓の病気に関するよくある質問

さいごに、内臓の病気と抜け毛の関係について、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

抜け毛がひどいのですが、何科を受診すれば良いですか?

まずは皮膚科、特に抜け毛や薄毛を専門とするクリニックの受診をおすすめします。

問診や視診、必要な検査を通じて、抜け毛の原因が頭皮の問題なのか、あるいは内科的な疾患が疑われるのかを判断します。

内科疾患の可能性が高いと判断されたときは、適切な専門科(内分泌内科、膠原病内科など)を紹介されるか、連携して治療を進める形になります。

内臓の病気が治れば、髪は元通りになりますか?

原因となっている内臓の病気が適切に治療され、コントロールされれば、抜け毛が改善して髪の状態も徐々に回復に向かう方が多いです。

ただし、髪の毛には成長サイクルがあるため、目に見える効果が現れるまでには数ヶ月から半年、あるいはそれ以上の期間がかかる場合があります。

また、毛包自体が強くダメージを受けてしまった場合(瘢痕性脱毛など)は、回復が難しいケースもあります。

血液検査で異常がなければ、内臓の病気の心配はありませんか?

血液検査では多くの情報を得られますが、全ての病気を網羅できるわけではありません。

初期の病変や、特殊な疾患の場合、通常のスクリーニング検査では異常が見つからないときもあります。

症状が続く場合は再度医師に相談し、必要に応じて追加の検査や他の専門医の意見を聞くことが大切です。自己判断せず、不安な点は医師に伝えましょう。

サプリメントで栄養を補給すれば、内科疾患による抜け毛は改善しますか?

特定の栄養素の欠乏(鉄欠乏など)が原因であるときは、サプリメントによる補給が有効な場合があります。

しかし、内科疾患による抜け毛の多くは単なる栄養不足だけでなく、ホルモンバランスの乱れや免疫系の異常などが複雑に関与しています。

そのため、まずは原因疾患の特定と治療が最優先です。サプリメントの使用は医師に相談の上、補助的なものとして考えるのが適切です。

ストレスも内臓の病気や抜け毛に関係しますか?

強いストレスや慢性的なストレスは、自律神経のバランスを乱したり免疫機能を低下させたり、ホルモン分泌に影響を与えたりすることで、間接的に内臓の不調や抜け毛を引き起こす、あるいは悪化させる要因となり得ます。

ストレスが全ての原因ではありませんが、心身の健康を保つ上で、適切なストレス管理が非常に重要です。

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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