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産後の前髪はげと薄毛の対処法|スカスカ状態を改善する方法

産後の前髪はげと薄毛の対処法|スカスカ状態を改善する方法

出産という大仕事の後、ふと鏡を見ると前髪が薄くなった、地肌が透けて見えると悩んでいる女性も多いのではないでしょうか。

産後の抜け毛は多くの方が経験しますが、前髪の変化は目につきやすいです。産後の抜け毛が起こると事前に分かっていても、実際に目の当たりにすると深刻な悩みにつながるのも無理がありません。

この記事では、産後の前髪の薄毛やスカスカ感の原因と、ご自身でできる対策、そして専門的な治療法について詳しく解説します。希望を持って正しいケアを始めましょう。

目次

産後の抜け毛はなぜ前髪が目立つのか

産後の抜け毛は「分娩後脱毛症」とも呼ばれ、多くの方は産後2~3ヶ月頃から始まり、半年から1年程度で自然に回復する傾向があります。

しかし、前髪部分の薄毛が特に気になる方が多いのには、いくつかの理由があります。

ホルモンバランスの急激な変化

妊娠中は女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が増加し、髪の毛の成長期が通常よりも長く維持されます。これにより、本来なら抜けるはずの髪の毛が抜けずに留まっている状態になります。

しかし、出産を終えるとこれらのホルモンの分泌量が急激に減少し、妊娠中に成長期が延長されていた髪の毛が一斉に休止期に入り、結果として抜け毛が増加します。

なかでも生え際は、ホルモンの影響を受けやすい部分と言われています。

ヘアサイクルの正常化過程

髪の毛には成長期、退行期、休止期というサイクルがあります。

産後は、妊娠中に成長期が維持されていた髪の毛が一気に休止期に入り、その後新しい髪の毛が生えてくるまでの移行期間にあたります。

前髪は他の部位に比べて髪の毛が細く、密度も低いため、このヘアサイクルの影響が視覚的に顕著に現れやすいのです。

視線が集まりやすい部位

前髪は顔の印象を大きく左右する部分であり、自分自身も他人からも最も目につきやすい場所です。

そのため、少しの変化でも気になりやすく、薄毛やスカスカ感が強調されて感じられる場合があります。

他の部位も同様に抜けていても、前髪の変化に最も敏感に反応してしまうのは自然なことです。

ホルモン変化とヘアサイクル

時期ホルモン状態髪の状態
妊娠中エストロゲン増加成長期が延長、抜けにくい
産後エストロゲン急減多くの髪が休止期へ移行、抜けやすい
産後数ヶ月~1年ホルモン正常化ヘアサイクルも徐々に正常化

産後の前髪がスカスカになる原因

産後の前髪がスカスカになってしまう背景には、ホルモンバランスの変化以外にも、育児による生活習慣の乱れや精神的なストレスなどが複雑に関与しています。

栄養不足と血行不良

出産による体力消耗や、その後の授乳、慣れない育児による睡眠不足は母体の栄養状態に影響を与えます。

特に髪の毛の成長に必要なタンパク質や亜鉛、鉄分やビタミン類が不足すると、健康な髪が育ちにくくなります。

また、疲労やストレスは血行不良を引き起こし、頭皮へ十分な栄養が届きにくくなるため、薄毛を助長する要因です。

睡眠不足と生活リズムの乱れ

新生児のお世話は昼夜を問わず続くため、産後の母親は慢性的な睡眠不足に陥りがちです。

睡眠中には成長ホルモンが分泌されて細胞の修復や新陳代謝を促しますが、睡眠が不足するとこれらの働きが低下します。

夜中の赤ちゃんのお世話による不規則な生活リズムも自律神経のバランスを乱し、頭皮環境の悪化や抜け毛の増加につながる場合があります。

育児によるストレスの影響

初めての育児に対する不安、社会からの孤立感、自分の時間が持てないことへの焦りなど、産後の母親は様々な精神的ストレスにさらされます。

過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させます。そのため毛根への栄養供給を滞らせ、抜け毛を促進する可能性があります。

産後の身体的・精神的変化

要因髪への影響具体的な状況
栄養不足髪の成長に必要な栄養素の欠乏授乳、偏った食事
睡眠不足成長ホルモンの分泌低下夜間の頻回な授乳、赤ちゃんの夜泣き
精神的ストレス血行不良、ホルモンバランスの乱れ育児不安、環境の変化

自分でできる産後の前髪薄毛対策

産後の抜け毛や前髪の薄毛はつらいものですが、日常生活の中でできる対策も多くあります。諦めずに、できることから少しずつ取り組んでみましょう。

バランスの取れた食事を心がける

髪の毛は主にタンパク質(ケラチン)でできています。良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)をしっかり摂取するのが重要です。

また、髪の成長を助けるビタミン(特にビタミンB群、C、E)やミネラル(亜鉛、鉄分)も積極的に摂りましょう。

特定の食品に偏らず、多様な食材をバランス良く食べる工夫が健康な髪を育む基本です。

髪に良い栄養素と主な食品

栄養素主な働き多く含む食品例
タンパク質髪の主成分肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類
鉄分頭皮への酸素供給レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき

質の高い睡眠の確保

産後の睡眠不足は避けられない部分もありますが、可能な範囲で質の高い睡眠を確保する工夫をしましょう。

短時間でも深く眠れるように寝る前のカフェイン摂取を避けたり、寝室の環境を整えたりするのが有効です。

家族の協力を得て、まとまった睡眠時間を確保できる日を作るのも良いでしょう。

頭皮マッサージと正しいヘアケア

頭皮マッサージは血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくする効果が期待できます。指の腹を使って、優しく揉みほぐすようにマッサージしましょう。

また、シャンプーは低刺激性のものを選び、洗いすぎに注意してください。ゴシゴシと強く洗うと頭皮を傷つけ、かえって抜け毛を増やす原因になります。

赤ちゃんのお世話で自分の髪を乾かしている時間がもったいないと感じる方も多いですが、洗髪後はドライヤーで根本からしっかり乾かし、頭皮を清潔に保ちましょう。

  • シャンプー時の注意点
  • 爪を立てずに指の腹で洗う
  • すすぎ残しがないように丁寧に
  • ドライヤーは頭皮から20cm以上離す

産後の抜け毛が気になるときに前髪をつくる際の注意点

薄くなった前髪をカバーするために、新たに前髪をつくることを考える方もいるでしょう。しかし、産後のデリケートな時期にはいくつかの注意点があります。

美容師への相談の重要性

産後の髪の状態を理解している経験豊富な美容師に相談することが大切です。

現在の髪質や抜け毛の状況、頭皮の状態を考慮して適したスタイルを提案してくれます。

無理に髪を引っ張るようなスタイルや、頭皮に負担のかかる施術は避けるように伝えましょう。

髪や頭皮に優しいスタイリング

新しい前髪をつくった場合でも、日々のスタイリングには注意が必要です。

きつく結んだり、強い力でブラッシングしたりすると、ただでさえ弱っている髪や毛根にダメージを与えてしまいます。

パーマやカラーリングも、産後しばらくは控えるか、頭皮への刺激が少ない方法を選ぶようにしましょう。

一時的なカバーとしての工夫

前髪の薄さが気になるけれど、本格的なスタイルチェンジには抵抗がある場合、ヘアバンドや帽子、ウィッグなどを活用するのも一つの方法です。

これらは物理的に気になる部分を隠せるだけでなく、おしゃれのアクセントにもなります。

ただし、長時間の使用による蒸れは頭皮環境を悪化させる可能性があるので、通気性の良いものを選び、適度に外すようにしましょう。

スタイリング剤選びのポイント

種類特徴注意点
ワックス(ソフトタイプ)自然な毛流れを作るつけすぎると重くなる
スプレー(軽め)スタイルをキープ頭皮に直接かからないように
ヘアオイル保湿、まとまり根元を避けて毛先中心に

産後の前髪はげはいつまで続くのか

産後の抜け毛、特に前髪の薄毛がいつまで続くのかは、多くの方が気にする点ではないでしょうか。

個人差はありますが、一般的な傾向と回復の目安について確認しておきましょう。

一般的な回復期間の目安

産後の抜け毛は、一般的に産後2~3ヶ月頃から始まり、産後6ヶ月頃にピークを迎えるケースが多いです。

その後、徐々に抜け毛は減少し、新しい髪の毛が生え始めます。

多くの場合は産後1年~1年半程度で元の毛量に近いくらいまで回復しますが、完全に元通りになるまでにはさらに時間がかかる方もいます。

回復が遅れるケースとその要因

十分な栄養が摂れていない、極度の睡眠不足が続いている、強いストレスを感じ続けているなどの場合、髪の毛の回復が遅れやすいです。

また、高齢出産の方や、元々貧血気味だった方なども、回復に時間がかかる傾向が見られます。

甲状腺機能の異常など、他の病気が隠れている可能性も稀にあります。

焦らず気長にケアを続ける

髪の毛の成長には時間がかかります。すぐに効果が出なくても焦らず、バランスの取れた食事や質の良い睡眠、適切なヘアケアといった基本的なケアを気長に続けることが大切です。

日々の小さな努力が、数ヶ月後の髪の状態につながります。

産後脱毛症の一般的な経過

時期状態
産後2~3ヶ月抜け毛が目立ち始める
産後4~6ヶ月抜け毛のピーク
産後6ヶ月~1年徐々に抜け毛が減少し、新しい髪が生え始める
産後1年~1年半多くの場合、元の毛量近くまで回復傾向

前髪の見た目だけじゃない!産後の心のケア

産後の抜け毛、特に目立つ前髪の変化は見た目の問題だけでなく、母親の心にも大きな影響を与える場合があります。

「どうして私だけこんなに抜けるの?」「女性らしさが失われたように感じる」といった不安や自己肯定感の低下は、決して珍しいことではありません。

ここでは、そんな心の負担を少しでも軽くするための考え方や取り組みを紹介します。

「自分だけではない」という安心感

まず知っておいてほしいのは、産後の抜け毛は多くの女性が経験するということです。程度の差こそあれ、ホルモンバランスの変化による影響は誰にでも起こり得ます。

一人で悩まず、同じ経験をした友人や産院の助産師、専門医などに話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になる場合があります。

SNSなども上手に活用しながら「自分だけじゃないんだ」と分かると、大きな安心感につながるでしょう。

変化を受け入れて今できることに集中する

鏡を見るたびにため息をついてしまう気持ちはよく分かります。しかし抜け毛のピーク時は、どうしても一時的に髪が薄くなる時期です。

この変化をある程度受け入れ、「今はそういう時期なんだ」と割り切ることも時には必要です。

そして、悲観するだけでなく、今できる食事改善やヘアケア、ストレス対策などに意識を向けると前向きな気持ちを保つ助けになります。

専門家への相談も心の支えに

どうしても不安が強い、抜け毛が異常に多いと感じるときは、一人で抱え込まずに専門のクリニックに相談しましょう。

医師に髪や頭皮の状態を診てもらい、医学的な観点からアドバイスを受けると具体的な解決策が見つかるだけでなく、「専門家が見てくれている」という安心感が得られます。

心のケアに繋がる行動

  • 信頼できる人に話を聞いてもらう
  • 同じ悩みを持つ人の体験談を読む
  • 気分転換になる趣味の時間を作る
  • 専門機関に相談する勇気を持つ

心の負担を軽減する工夫も、健やかな髪を取り戻すためには重要な要素です。

クリニックでの専門的な前髪薄毛治療

セルフケアだけでは改善が見られないときや、より積極的な治療を望む場合には、女性の薄毛治療専門クリニックでの相談を検討しましょう。

専門医による診断のもと、一人ひとりの状態に合わせた治療法を提案します。

専門医による正確な診断

まずは、薄毛の原因を正確に特定するのが治療の第一歩です。

産後のホルモンバランスの変化によるものなのか、栄養状態や生活習慣が大きく関わっているのか、あるいは他の疾患が隠れていないかなどを、問診や視診、血液検査や頭皮マイクロスコープ検査などを用いて総合的に診断します。

この診断結果に基づいて、適した治療計画を立てます。

内服薬・外用薬による治療

医学的根拠に基づいた内服薬や外用薬による治療は、薄毛治療の基本の一つです。

例えば、ミノキシジル外用薬は毛母細胞を活性化させ、発毛を促進する効果が期待できます。また、髪の成長に必要な栄養素を補給するサプリメントや、頭皮の血行を改善する内服薬などが処方されるケースもあります。

これらの薬は医師の指導のもと、正しく使用することが重要です。授乳中には使用できない薬剤もあるため、必ず医師に相談してください。

主な治療薬の種類と特徴

薬剤の種類主な効果使用方法(例)
ミノキシジル外用薬発毛促進、毛母細胞活性化頭皮に直接塗布
栄養補助サプリメント髪に必要な栄養素補給内服
血行促進薬頭皮の血流改善内服

頭皮への直接的なアプローチ

より直接的に頭皮環境を改善し、発毛を促す治療法として、注入療法などがあります。

成長因子や栄養成分を豊富に含んだ薬剤を頭皮に直接注入する治療は、毛母細胞の活性化や血行促進効果が期待できます。

これらの治療は、セルフケアや内服・外用薬だけでは効果を実感しにくい方にも選択肢の一つとなります。

産後の前髪はげに関するよくある質問(Q&A)

さいごに、産後の前髪の薄毛や抜け毛に関して、患者さんから寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。

産後の抜け毛はいつ頃から始まって、いつ頃終わりますか?

一般的に、産後2~3ヶ月頃から抜け毛が目立ち始め、産後半年くらいでピークを迎える方が多いです。

その後、徐々に新しい髪が生え始め、産後1年~1年半程度で気にならなくなる方が多いですが、個人差があります。

前髪だけが特に薄くなるのはなぜですか?

前髪や生え際はホルモンの影響を受けやすく、また髪が細いため、産後のホルモンバランスの変化による抜け毛の影響が視覚的に目立ちやすい傾向があります。

ご自身でも鏡で確認しやすいため、より気になりやすい部位です。

授乳中でも薄毛治療はできますか?

授乳中は使用できる薬剤に制限があります。例えば、ミノキシジルの内服薬は通常推奨されません。

しかし、外用薬やサプリメント、頭皮マッサージや低出力レーザーのようなケアなど、授乳中でも可能な治療法はありますので、まずは専門医にご相談ください。

医師がお母さんと赤ちゃんへの影響を考慮し、安全な治療法を提案します。

食生活で気をつけることはありますか?

髪の主成分であるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)や、髪の成長を助けるビタミンB群、亜鉛や鉄分などをバランス良く摂取する心がけが大切です。

特に産後は栄養が偏りがちなので、意識して多様な食品を摂るようにしましょう。

産後の抜け毛がひどく、このままはげてしまうのではないかと心配です。

産後の抜け毛は一時的なものであるケースがほとんどで、多くの場合は時間とともに回復します。

しかし、抜け毛の量が異常に多い、長期間改善しない、または精神的なストレスが大きい場合は、一度専門医にご相談ください。

適切な診断とアドバイスにより不安を軽減し、早期の改善を目指せます。

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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