葉酸はビタミンB群の一種で、体の基本的な機能である細胞分裂や血液を作る働きに深く関わっています。
この大切な栄養素が、実は女性の髪の健康や美しさを保つ上で重要な役割を担っているのです。
この記事では、葉酸が髪の成長や白髪予防にどのように作用するのかを、専門的な観点から分かりやすく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
そもそも葉酸とは?髪の健康に欠かせないビタミンの基礎知識
葉酸という名前は聞いたことがあっても、具体的にどのような栄養素なのか、詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか。
葉酸は、私たちの体が正常に機能するために必要不可欠な水溶性ビタミンB群の仲間です。
新しい細胞が作られる際には必ず必要となり、髪の毛のような日々成長を続ける部分にとっては、その存在が非常に重要になります。
葉酸の働きと体内での役割
葉酸の最も重要な役割は、DNAやRNAといった遺伝情報を持つ核酸の合成を助けることです。
私たちの体は約37兆個の細胞から成り立っており、それらの細胞は分裂を繰り返して新しいものに入れ替わっています。
この細胞分裂の際に、設計図であるDNAを正確に複製するために葉酸が働きます。
髪の毛も、毛母細胞という細胞が分裂を繰り返して作られるため、葉酸が不足すると健康な髪の成長が妨げられる可能性があります。
体内で葉酸が担う主な機能
機能 | 内容 | 髪への関連性 |
---|---|---|
細胞の生産・再生 | DNA・RNAの合成を助け、正常な細胞分裂を促す。 | 毛母細胞の分裂を活性化させ、髪の成長を支える。 |
赤血球の形成 | ビタミンB12と共に、正常な赤血球を作る。 | 頭皮への酸素供給をスムーズにし、毛根を健康に保つ。 |
ホモシステインの代謝 | 動脈硬化のリスクを高めるアミノ酸を分解する。 | 頭皮の血流を良好に保ち、栄養素の運搬を助ける。 |
なぜ「造血のビタミン」と呼ばれるのか
葉酸が「造血のビタミン」と称されるのは、血液の主成分である赤血球の形成に深く関わっているためです。
赤血球は、体中に酸素を運ぶという生命維持に欠かせない役割を担っています。葉酸は、骨髄で赤血球のもとになる細胞(赤芽球)が正常に成熟し、機能的な赤血球になるのを助けます。
葉酸が不足すると、赤芽球が異常に大きくなり「巨赤芽球性貧血」という特殊な貧血を引き起こす場合があります。
この貧血になると頭皮を含む全身の組織に十分な酸素が行き渡らなくなり、毛母細胞の働きが低下してしまいます。
葉酸が不足すると体に起こるサイン
葉酸不足は、すぐにはっきりとした症状として現れにくい場合もありますが、注意深く観察するといくつかのサインに気づけます。
貧血による動悸や息切れ、倦怠感のほか、口内炎や舌の痛み、食欲不振なども見られます。精神的な面では、気分の落ち込みや集中力の低下などが起こる方もいます。
髪に関しては直接的な脱毛症状として現れる前に、髪が細くなる、ツヤがなくなる、切れやすくなるといった質の低下としてサインが現れるケースが多いです。
葉酸不足が引き起こす可能性のある症状
分類 | 主な症状 | 解説 |
---|---|---|
身体的症状 | 疲労感、息切れ、めまい、口内炎 | 主に貧血や粘膜の再生不良が原因で起こります。 |
精神的症状 | 気分の落ち込み、記憶力の低下 | 神経伝達物質の合成にも関わるため、精神状態に影響します。 |
髪の変化 | 細毛、抜け毛、ツヤの減少、白髪 | 細胞分裂の停滞や栄養不足が髪の質に現れます。 |
葉酸の種類と吸収率の違い
食品に含まれる葉酸と、サプリメントなどに使われる葉酸は、実は少し形が違います。この違いが体内での吸収率に影響します。
- ポリグルタミン酸型葉酸
- モノグルタミン酸型葉酸
ほうれん草やブロッコリーなどの食品に含まれるのは「ポリグルタミン酸型葉酸」です。
これは、体内で吸収されるために、一度分解される必要があります。このため、生体利用率は約50%とされています。
一方、サプリメントや栄養強化食品に使われるのは「モノグルタミン酸型葉酸」で、こちらは分解の必要がなく、そのまま吸収されやすい形です。このため、生体利用率は約85%と高くなっています。
食事から摂るのが基本ですが、不足がちな場合はサプリメントの上手な活用も一つの方法です。
葉酸が女性の髪に与える具体的な影響
葉酸は体全体にとって重要な栄養素ですが、具体的に女性の髪に対しては、どのような良い影響を与えるのでしょうか。
ここでは、髪の成長サイクルと葉酸の関わりを詳しく見ていきましょう。
髪の成長を支える細胞分裂の活性化
髪の毛は、毛根の最も深い部分にある「毛母細胞」が分裂を繰り返して生み出されます。この毛母細胞は、体の中でも特に細胞分裂が活発な場所の一つです。
葉酸は、前述の通り細胞分裂時のDNA合成に必要です。つまり、葉酸が十分に供給されると毛母細胞の分裂がスムーズに行われ、髪の毛が力強く成長していく土台が作られます。
逆に葉酸が不足すると細胞分裂のペースが落ち、髪の成長が遅れたり、細く弱い髪しか作れなくなったりする原因となります。
頭皮の血行を促進し栄養を届ける
健康な髪を育てるためには、頭皮の血行が良い状態であることが大切です。血液は、髪の成長に必要な酸素や栄養素を毛母細胞まで運ぶ役割を担っています。
葉酸は、ビタミンB12と共に正常な赤血球の形成を助けて血液の質を高め、酸素運搬能力を維持します。
この働きにより、頭皮の隅々まで新鮮な酸素と栄養が行き渡り、毛母細胞が活発に働くための環境が整います。
血行不良は薄毛の大きな原因の一つであり、葉酸の摂取は血行促進の観点からも髪に良い影響を与えます。
タンパク質の合成を助け、丈夫な髪を作る
髪の毛の約90%は、「ケラチン」というタンパク質で構成されています。私たちが食事から摂取したタンパク質(アミノ酸)が、体内で再合成されてケラチンになります。
葉酸は、このアミノ酸の代謝やタンパク質の合成過程においても補酵素として働きます。
十分な葉酸があるとケラチンの合成が効率的に行われ、髪の内部構造がしっかりとした、ハリやコシのある丈夫な髪が作られます。
葉酸不足はタンパク質の利用効率を下げ、結果として髪質の低下につながる可能性があります。
髪の主成分ケラチンと関連栄養素
栄養素 | 役割 | 多く含む食品 |
---|---|---|
タンパク質(アミノ酸) | ケラチンの主原料となる。 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
亜鉛 | アミノ酸からケラチンを合成する際に必要。 | 牡蠣、レバー、牛肉 |
葉酸・ビタミンB群 | タンパク質の代謝や合成を助ける。 | 緑黄色野菜、レバー |
髪の主成分「ケラチン」との関係
ケラチンは18種類のアミノ酸から構成される複雑なタンパク質です。中でもシスチンというアミノ酸を多く含み、これが髪の強度や弾力性を生み出しています。
葉酸は、メチオニンというアミノ酸からシスチンが作られる過程をサポートします。
このため、葉酸が十分に存在している状態は、しなやかで切れにくい、健康的な髪を維持するために間接的に貢献していると言えます。
髪のパサつきや切れ毛に悩んでいる場合、タンパク質や亜鉛の摂取と合わせて、葉酸の摂取状況も見直してみると良いでしょう。
葉酸と白髪の関係性|本当に予防効果はあるのか
白髪は加齢のサインと捉えられがちですが、若くして白髪に悩む方も少なくありません。
栄養不足が白髪の原因の一つとして挙げられる中で、特に葉酸の役割が注目されています。
白髪が発生する仕組み
髪の毛はもともと色がついておらず、生まれたばかりの髪は白色です。髪の色は、毛根にある「メラノサイト」という色素細胞が作り出すメラニン色素によって決まります。
このメラニン色素が髪の内部に取り込まれて、黒髪や茶髪といったその人固有の髪色になるのです。
白髪は何らかの原因でこのメラノサイトの働きが低下したり、メラノサイト自体が消失してしまったりして、メラニン色素が作られなくなるために発生します。
白髪の主な原因
- 加齢
- 遺伝的要因
- 精神的ストレス
- 栄養不足
メラノサイトの働きと葉酸の役割
メラノサイトがメラニン色素を生成する過程は非常に複雑ですが、この働きを正常に保つためには、チロシンというアミノ酸と、チロシナーゼという酵素が必要です。
そして、これらの活動を支えるためには、細胞自体の健康が前提となります。葉酸は、メラノサイトの細胞分裂や代謝を正常に保って、間接的にメラニン産生をサポートしていると考えられています。
また、頭皮の血行を促進するため、メラノサイトが必要とする栄養や酸素を十分に届けることにも貢献します。
これがメラノサイトの活性維持につながり、白髪の予防に役立つ可能性があります。
葉酸不足が白髪の一因になる可能性
実際に、悪性の貧血患者において白髪が増加し、ビタミンB12や葉酸の投与によって髪の色が改善したという研究報告も存在します。
これは、葉酸不足がメラノサイトの機能不全を引き起こす一因となり得ることを示唆しています。
特に、過度なダイエットや偏った食生活によって葉酸をはじめとするビタミンやミネラルが不足すると、まだ若くてもメラノサイトの働きが衰え、若白髪のリスクが高まる可能性があります。
全ての白髪が葉酸不足によるものではありませんが、予防的な観点から葉酸を十分に摂取する習慣は意義があると言えるでしょう。
白髪予防のために葉酸以外に大切なこと
白髪の予防には葉酸だけでなく、総合的な取り組みが重要です。
メラニン色素の原料となるチロシン(タンパク質)や、メラノサイトの活性化に関わる銅や亜鉛といったミネラルもバランス良く摂取することが大切です。
また、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEは、老化の原因となる活性酸素からメラノサイトを守る働きをします。
これらの栄養素を組み合わせると、より効果的な白髪予防が期待できます。
白髪予防に役立つ栄養素
栄養素 | 期待される働き | 多く含む食品 |
---|---|---|
チロシン | メラニン色素の原料となる。 | チーズ、大豆製品、ナッツ類 |
銅 | メラニン生成酵素(チロシナーゼ)の活性化を助ける。 | レバー、魚介類、ナッツ類 |
ビタミンC・E | 抗酸化作用でメラノサイトを保護する。 | 果物、野菜、ナッツ類 |
ライフステージで変化する女性の体と葉酸の必要量
女性の体は、年代やライフイベントによってホルモンバランスが大きく変動し、それに伴って必要な栄養素も変わってきます。
葉酸は全ての年代の女性にとって重要ですが、その必要性はライフステージごとに異なります。
ご自身の今の状況と照らし合わせ、髪と体の健康のために葉酸とどう向き合うべきかを考えてみましょう。
20代・30代の多忙な毎日と髪への影響
社会人としてキャリアを積んだり、プライベートが充実したりする20代・30代は、多忙な毎日を送る方が多い時期です。
外食が増えたり不規則な生活になったりすると、食生活が乱れ、葉酸をはじめとするビタミン類が不足しがちです。
また、仕事や人間関係のストレスは血行を悪化させ、頭皮環境に悪影響を与えます。この時期に髪の質の低下や若白髪が見られる場合、生活習慣の乱れによる栄養不足が背景にあるかもしれません。
意識して葉酸を多く含む食品を取り入れる工夫が、将来の髪の健康を守るための投資になります。
妊娠・授乳期に特に葉酸が重要な理由
妊娠を計画している女性、または妊娠中・授乳中の女性にとって、葉酸は極めて重要な栄養素です。葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害という先天性異常のリスクを低減することが科学的に証明されています。
このため、厚生労働省は通常の食事に加えて、サプリメントから1日400μgの葉酸を摂取するように推奨しています。
また、妊娠中や授乳中は母体の血液量が増加し、赤ちゃんの成長のためにも多くの栄養が必要となるため、葉酸の需要は非常に高まります。
この時期の葉酸不足は母体の貧血や髪のトラブル(産後脱毛など)にもつながりやすいため、積極的な摂取が大切です。
女性のライフステージ別葉酸推奨摂取量(18歳以上)
ライフステージ | 推奨量(μg/日) | 付加量(μg/日) |
---|---|---|
通常時 | 240 | – |
妊活中・妊娠初期 | 240 | +400(サプリ等から) |
妊娠中期・後期 | 240 | +240 |
授乳期 | 240 | +100 |
※日本人の食事摂取基準(2020年版)より
40代以降のホルモンバランスの変化と髪の悩み
40代以降になると多くの女性が更年期を迎え、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。
エストロゲンは髪の成長を促進してハリやツヤを保つ働きがあるため、その減少は薄毛や抜け毛、髪のうねりといった「エイジング毛」の悩みに直結します。
この時期はホルモンバランスの乱れに加え、加齢による体の機能低下も重なり、栄養の吸収率も悪くなりがちです。
葉酸を含むビタミンB群はホルモンバランスを整えるサポートも期待できるため、これまで以上に意識的な摂取が髪と体の健康維持の鍵となります。
年齢に合わせた葉酸の賢い摂り方
各ライフステージにおいて、まずはバランスの取れた食事から葉酸を摂取するのが基本です。
その上で、20代・30代で外食が多い方はランチにほうれん草のソテーや納豆を加えるなど、一品プラスする工夫をしてみましょう。
妊娠・授乳期の方は推奨されている通り、食事に加えてサプリメントを活用するのが現実的です。
40代以降の方は消化吸収の良い調理法(スープや煮物など)を心がけたり、葉酸の吸収を助けるビタミンCやB6、B12などを一緒に摂ったりするなど、効率的な摂取方法を意識しましょう。
葉酸を効率的に摂取するための食事法
葉酸は毎日の食事から継続的に摂取するのが理想です。どのような食品に多く含まれ、どうすれば効率よく体内に取り込めるのか、具体的な食事法について解説します。
日々の食卓に上手に取り入れて、髪に良い食生活を実践しましょう。
葉酸を豊富に含む食品一覧
葉酸はその名の通り、葉物野菜に多く含まれています。なかでもほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなどの緑黄色野菜は優れた供給源です。
また、レバーや豆類、果物にも豊富に含まれています。様々な食品群からバランス良く摂ると、他のビタミンやミネラルも同時に摂取できます。
葉酸を多く含む食品の例(100gあたり)
食品カテゴリー | 食品名 | 葉酸含有量(μg) |
---|---|---|
野菜類 | 焼きのり | 1900 |
ほうれん草(生) | 210 | |
ブロッコリー(生) | 210 | |
肉類 | 鶏レバー | 1300 |
豆類 | 納豆 | 120 |
果物類 | いちご | 90 |
※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より
調理法で変わる葉酸の摂取効率
葉酸は水溶性で熱に弱いという性質を持っています。そのため、茹でたり煮たりすると栄養素が水分に溶け出し、加熱によって分解されてしまいます。
葉酸を効率的に摂るためには、調理法の工夫が大切です。
生で食べられる野菜はサラダで、加熱する際は蒸し料理や炒め物、スープなど、栄養素の損失が少ない方法を選ぶと良いでしょう。スープにすれば、溶け出した葉酸も丸ごと摂取できます。
バランスの良い食事で相乗効果を狙う
髪の健康を保つためには、葉酸だけを単独で摂取しても十分な効果は期待できません。
髪の主成分であるタンパク質、ケラチンの合成を助ける亜鉛、頭皮の健康を保つビタミンAやビタミンC、血行を促進するビタミンEなど、様々な栄養素がチームのように働いています。
特定の食品に偏るのではなく、主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を心がけると、結果的に葉酸の働きを高め、美髪へとつながります。
葉酸の吸収を助ける栄養素
葉酸が体内で効率よく働くためには、他の栄養素のサポートが必要です。
ビタミンB群の仲間であるビタミンB6とビタミンB12は、葉酸と共に働き、ホモシステインというアミノ酸の代謝に関わります。また、ビタミンCは、葉酸が活性型に変換されるのを助ける働きがあります。
これらの栄養素を一緒に摂ると、葉酸の利用効率を高められます。
例えば、ほうれん草(葉酸)とパプリカ(ビタミンC)を一緒に炒めたり、レバー(葉酸・B12)とピーマン(ビタミンC・B6)を組み合わせたりするのは、理にかなった食べ方です。
サプリメントで葉酸を補う際の注意点
食事だけで十分な葉酸を摂取するのが難しい場合、サプリメントは有効な選択肢となります。
しかし、手軽に利用できるからこそ、選び方や摂取方法には注意が必要です。安全かつ効果的に活用するためのポイントを押さえておきましょう。
サプリメント選びのポイント
市場には多種多様な葉酸サプリメントが出回っています。
選ぶ際には、以下の点をチェックすると良いでしょう。
- 含有量と種類
- 添加物の有無
- 品質管理基準
葉酸の含有量が自分の目的に合っているかを確認します。特に妊活・妊娠中の方は400μgのモノグルタミン酸型葉酸が含まれているものを選びましょう。
また、不要な着色料や甘味料、保存料などが使われていないか、原材料表示の確認も大切です。
GMP認定工場で製造されているなど、品質管理が徹底されている製品は安全性の面で信頼できます。
1日の摂取目安量と上限
葉酸は水溶性ビタミンのため、過剰に摂取しても尿として排出されやすいですが、サプリメントからの摂取には耐容上限量が設定されています。
通常の食品以外からのモノグルタミン酸型葉酸の摂取上限は、成人で1日あたり900〜1000μgです(年齢により異なる)。
この上限を超えて摂取を続けるとビタミンB12欠乏の診断を困難にしたり、過敏症などを引き起こしたりする可能性があるため、サプリメントのパッケージに記載されている目安量を守りましょう。
摂取するタイミングと効果的な飲み方
葉酸サプリメントは医薬品ではないため、基本的にいつ飲んでも構いません。しかし、習慣化するためには、毎日同じ時間帯(例えば朝食後など)に飲むのがおすすめです。
空腹時に飲むと胃腸に負担を感じる方もいるため、食後に水かぬるま湯で飲むのが一般的です。
他のビタミンB群やビタミンCと一緒に配合されているサプリメントを選ぶと相乗効果が期待でき、より効率的です。
他の薬やサプリメントとの飲み合わせ
特定の医薬品を服用している方は、葉酸サプリメントとの飲み合わせに注意が必要な場合があります。
例えば、一部の抗てんかん薬は葉酸の働きを妨げることが知られています。逆に、葉酸が薬の効果に影響を与える可能性もあります。
持病があり薬を服用中の方や、他のサプリメントを併用している方は、自己判断で摂取を始める前に必ず医師や薬剤師に相談してください。
葉酸だけじゃない!美髪を育むための総合的な取り組み
ここまで葉酸の重要性について解説してきましたが、美しい髪は一つの栄養素だけで作られるわけではありません。
栄養や生活習慣、ヘアケアといった多角的な取り組みが、健やかな髪を育む土台となります。葉酸の摂取と合わせて、以下の点も見直してみましょう。
髪に良い栄養素とその働き
葉酸以外にも、髪の健康に欠かせない栄養素はたくさんあります。これらの栄養素をバランス良く摂る心がけが、髪の悩みを根本から改善する鍵となります。
美髪をサポートする主要な栄養素
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料となる。 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
亜鉛 | ケラチンの合成を助け、細胞分裂を促す。 | 牡蠣、レバー、赤身肉 |
ビタミンE | 血行を促進し、頭皮に栄養を届ける。抗酸化作用も。 | ナッツ類、アボカド、植物油 |
ビタミンC | コラーゲンの生成を助け、頭皮の健康を保つ。 | パプリカ、ブロッコリー、果物 |
ストレス管理と睡眠の重要性
強いストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を引き起こします。この状態が続くと、毛母細胞に十分な栄養が届かなくなり、抜け毛や白髪の原因となります。
また、髪の成長は、成長ホルモンが多く分泌される睡眠中に活発になります。質の良い睡眠を十分にとる工夫は、髪を育てる上で非常に重要です。
リラックスできる時間を作り、自分なりのストレス解消法を見つける、そして毎日6〜7時間の睡眠時間を確保するように心がけましょう。
正しいヘアケア習慣の見直し
日々のヘアケアが、知らず知らずのうちに頭皮や髪にダメージを与えているケースも見受けられます。
洗浄力の強すぎるシャンプーは頭皮を乾燥させ、必要な皮脂まで奪ってしまいます。アミノ酸系のマイルドなシャンプーを選び、洗う際は爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。
また、濡れた髪はキューティクルが開いて傷つきやすい状態です。お風呂上がりはすぐにドライヤーで乾かし、熱の当てすぎにも注意が必要です。
頭皮マッサージの効果と方法
頭皮マッサージは硬くなった頭皮の血行を促進し、リラクゼーション効果も期待できる手軽なセルフケアです。シャンプーの際や、リラックスタイムに取り入れてみましょう。
指の腹を頭皮に密着させ、頭皮全体を動かすようなイメージで、気持ち良いと感じる強さでゆっくりと揉みほぐします。
血行が滞りやすい頭頂部や側頭部を重点的に行うのがおすすめです。
薄毛や白髪が気になったら専門クリニックへ相談を
セルフケアを続けても髪の状態が改善しない、あるいは抜け毛が急に増えたなど、深刻な悩みを抱えている場合は、自己判断で抱え込まずに専門のクリニックへの相談を検討しましょう。
専門家による的確な診断が、悩みの解決への近道となります。
自己判断のリスクと専門家の診断の重要性
薄毛や白髪の原因は、これまで述べてきた栄養不足や生活習慣だけでなく、ホルモンバランスの乱れや自己免疫疾患、甲状腺の病気など、医学的な治療が必要な場合もあります。
市販の育毛剤やサプリメントを試す前に、まずは自分の髪や頭皮に何が起きているのかを正確に知ることが重要です。
専門のクリニックでは医師が問診や視診、検査を通じて原因を多角的に分析し、一人ひとりに合った対処法を提案します。
セルフケアと専門的ケアの比較
項目 | セルフケア | 専門クリニックでのケア |
---|---|---|
原因分析 | 自己判断や推測に基づく。 | 医師による問診、視診、精密検査に基づく。 |
対処法 | 市販品(シャンプー、育毛剤、サプリ)が中心。 | 医学的根拠に基づいた治療薬の処方、施術など。 |
効果 | 個人差が大きく、限定的な場合がある。 | 原因に応じたアプローチで高い効果が期待できる。 |
クリニックで受けられる検査とは
女性の薄毛治療専門クリニックでは、原因を特定するために様々な検査を行います。
血液検査では貧血の有無や甲状腺ホルモン、ミネラルの数値をチェックし、栄養状態や内科的な疾患が隠れていないかを確認します。
また、マイクロスコープを使って頭皮の状態や毛穴の詰まり、髪の密度などを詳細に観察する場合もあります。これらの客観的なデータに基づいて、診断を下します。
葉酸摂取と並行して考えるべき治療の選択肢
葉酸の摂取は、あくまで髪の健康を支える土台作りです。すでに薄毛が進行している方や、より積極的な改善を望む方は、クリニックでの治療を検討する必要があります。
女性の薄毛治療には、ミノキシジル外用薬のような発毛を促進する医薬品の処方や、頭皮に直接成長因子を注入する治療、ホルモンバランスを整える内服薬など、様々な選択肢があります。
食生活の改善と専門的な治療を組み合わせると、より効果を実感しやすいです。
早期相談が未来の髪を守る鍵
髪の悩みは放置する時間が長くなるほど、改善にも時間がかかる傾向があります。
「まだ大丈夫だろう」と思わずに、気になった初期段階での専門家への相談が、5年後、10年後の自分の髪を守るために最も重要です。
一人で悩まず、まずはカウンセリングで相談することから始めてみましょう。
葉酸と髪に関するよくある質問(Q&A)
さいごに、患者さんからよく寄せられる葉酸と髪に関する質問にお答えします。
- 葉酸を摂りすぎると副作用はありますか?
-
通常の食事から葉酸を摂りすぎることで副作用が起こる心配はほとんどありません。葉酸は水溶性ビタミンのため、余分な量は体外に排出されます。
ただし、サプリメントなどから合成の葉酸(モノグルタミン酸型葉酸)を長期にわたって過剰摂取(1日1,000μg以上)すると、健康上のリスクが高まる可能性があります。
具体的には、発熱やかゆみなどの過敏症症状や、神経障害のリスクが指摘されています。サプリメントを利用する際は、必ず記載されている1日の目安量を守るようにしてください。
- 効果はどのくらいで実感できますか?
-
髪の毛には「ヘアサイクル」という生まれ変わりの周期があり、成長期、退行期、休止期を繰り返しています。
葉酸の摂取による効果が髪質の改善として目に見えてくるまでには、このヘアサイクルを考慮すると、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要です。
栄養状態が改善されてから新しく生えてくる髪に影響が現れるため、すぐに効果が出なくても焦らず、まずは継続することが大切です。
即効性を期待するのではなく、体質改善の一環として長期的な視点で取り組みましょう。
- 男性にも葉酸は効果がありますか?
-
葉酸は男性の髪の健康にも同様に重要です。葉酸が担う細胞分裂の促進や血行改善、タンパク質合成のサポートといった働きは、性別に関係なく健康な髪の成長に必要です。
男性型脱毛症(AGA)は男性ホルモンが主な原因ですが、頭皮環境や栄養状態が悪ければ、その進行を早めてしまう可能性があります。
食生活の乱れやストレスが多い男性こそ、意識して葉酸を摂取すると薄毛予防の一助となります。
- 食事だけで十分な量の葉酸を摂れますか?
-
バランスの取れた食事を毎日実践していれば、通常時に必要な量(1日240μg)の葉酸を食事だけで摂ることは可能です。
しかし、葉酸は調理による損失が大きいため、意識しないと不足しがちです。
外食が多い方や偏食気味の方、そして妊娠・授乳期のように必要量が大幅に増える場合は、食事だけで十分に補うのは難しいかもしれません。
そのような場合は、補助的なサプリメント活用を検討するのが賢明です。
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